【呑竜】憧れの黄金像。ともだちとの勉強会
馬車猪
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シナリオID:3295
オープニング
巨悪相手の戦場だったのに、格好良い王子様の像は今日も凜々しく建っている。
「僕学園に入るっ」
「わたくしもっ」
きゃっきゃと騒ぐ子供達に、微笑ましいものを見る目と作業の邪魔なんだけどなという目が同時に向けられる。
興奮した子供達はそんな視線に気づけない。
一緒に勉強する約束を交わし、うきうきした足取りで付き添いの大人と共に去って行った。
●
静養を名目に怠惰を貪っていたエルヴィラ・バデーニが珍しく裏のない笑顔になる。
同腹で腹黒くない妹が来たので可愛がりたいのだ。
「おねえさまおねがいがあります」
まだ8歳。
しかし公爵家の令嬢だ。
言葉遣いに少したどたどしい部分はあるが、ドレスの着こなしも令嬢としての所作も十分に美しい。
「ジョセフくんといっしょにがくえんにいきたいです!」
無邪気な子供の態度ではない。
妹は狩人の目をしていた。
「少し待って頂戴」
エルヴィラは高速で思考を始める。
ジョセフというのは妹と歳が近いリーラント伯爵家嫡子のことだ。
年齢の割には聡いらしいが、超難関の学園編入試験を今すぐ突破できるほどではない。
「あなたもしっかりお勉強をしなくてはね?」
この妹は馬鹿ではないが天才でもない。
エルヴィラと同じように、金とコネでかき集めた有能教師陣に鍛えられてようやく自力合格の可能性がある程度だ。
「でもジョセフくんがくえんにいってるもん! ずるい!」
8歳児がぷんぷんする。
婚約者は特別な用事がなくてもパンクリアース学園に入り浸っている。
食事や勉強の光景を楽しげに語る彼は可愛らしく格好も良いがちょっとだけ憎らしい、らしい。
(叔母から事業を引き継いだだけのはずだけどこの子に言っても納得しないでしょうね。さて……)
あの伯爵家は貴族派に属しているので沈み行く船ではある。
しかし瑕疵らしい瑕疵はないので沈没するまでの猶予はあり、豊かな領地だけでなく他国とのコネもおそらく持っているので時代の波を乗り切れる可能性もある。
何より重要なのが、口煩い小姑がいないということだ。
総合するとかなり美味しい獲物である。
「いいわ。力を貸してあげる」
エルヴィラは、妹の恋路を応援することに決めた。
●
リーラント伯爵領。
王都の近くまで攻め込んだり、冒険者に撃退されたりと騒動を起こす貴族の支配地域である。
刈り取りの終わった広大な麦畑はのんびりとした風情があるが、ずらりと並んだ養鶏場からは元気な鶏の鳴き声が聞こえ忙しく働く領民の姿も多く見える。
そんなあれこれを継ぐことになっている少年が延々と手紙を書き続けている。
教師は相手が赤いインクで添削する。
ふみゅんと鳴かれても容赦はしない。
次期伯爵が無能だと本人も周囲も地域全体も困ってしまうからだ。
「若、大勢に手紙を送りすぎでは」
それはそれとして気遣いもする。
素直に慕ってくる物理的にも可愛らしい容姿の7歳児というのは、実際に接してみるとかなり強烈なのだ。
「みんなと約束したの」
むん、と胸を張ると柔らかいピンクの髪がさらりと揺れる。
(公爵令嬢に伯爵令嬢に……この歳で色男ですか)
教師がちらりと生徒を見ると、別の相手宛の手紙にとりかかっていた。
「同性だと文面が楽でいいよねー」
貴族派に属する家の令息達への手紙だ。
将来ライバルになるか友人になるかそれ以外になるかは分からないが高確率で長い付き合いになるし境遇も似ている。
令嬢宛の手紙とは違って気安さがあった。
「若、気になる令嬢はいますか?」
「うん? そういうのはまだいいかな」
7歳児には姉がいた。
実際は叔母だが年齢は10歳差であり、人格的にも能力的にも存在感が強い女性だった。
そんな女性を間近で見て育った彼は好きな女性のタイプがかなり独特だ。
「活発なひとがいたらよかったんだけどねー」
彼の活発の基準は、単身で亜人の里を蹂躙して高笑いする程度であった。
●
「エルヴィラ・バデーニ様からの依頼になります」
ウィリアム現王子もうすぐ公爵の第1夫人が内定している貴族令嬢だ。
「依頼内容は貴族の子供達相手の家庭教師です」
場所はバデーニ家が所有する邸宅の1つ。
ここに男女それぞれ数名の子供達が集まって勉強する、ということになっているが実質はお茶会だ。
「パンクリアース学園を目指したくなるような講義や研究成果の紹介、技術の披露などを行って欲しいという依頼ですね」
料理やお菓子を振る舞っても良いし、料理やお菓子から農業や経営についての講義に発展しても構わない。
「依頼人の希望は他にもあります」
職員が声を小さくする。
「子供達の中には親が貴族派の子がいます」
ヒューマンが至上で他の種族はゴミ同然、などと思っている子は幸いなことにいないが家族の影響で無意識に差別している子ばかりだ。
「貴族派貴族の次代が集権派なら取り込みや切り崩しが楽になるので可能なら集権派的な思想教育をお願いします、とのことです」
非ヒューマンに対する嫌悪感を軽減できるだけでも大きな成果になる。
「長々と説明しましたが要するに家庭教師依頼です。お子様達に皆さんのすごさを見せてあげてください」
職員はそう言って一礼し、説明を終えるのだった。
解説
マスターより
リプレイ
「ディオール家のローザリカと申します」
設備の整った教壇に立ったのはローザリカ・L・ディオールだ。
教室には態度の悪い子供もいたが、生き物として格上の相手を前に強気を維持するのは不可能だ。
「パンクリアース学園の6学年、生徒会では会計も務めさせていただいておりますわ」
しかも実績持ち。
1領主が王なら王国は超絶巨大帝国であり、その選良候補が集う学園でその年の上位1桁以内という箔は非常に強い。
言うまでもなく容姿所作衣装に化粧に宝飾品に至るまで高位の貴族令嬢として完璧だ。
「私からは我がディオール家の特色でもある商業にまつわることに絡めたお話を……」
女児にもどちらが上か納得させる形で自己紹介と挨拶を終えて講義に移る。
「学園には商人やその卵も多く通っているし、貴族目線では青田買いの場という側面もある。領内の商売や、他領との交易など領地経営にも……」
ローザリカが普段の口調に切り替えても実績に裏打ちされたカリスマが説得力を強く感じさせる。
「自分に歩み寄ろうとしない相手を信頼できようはずもないし、何もわからない相手を御せるはずもない。例えば……そうだね。どうせわからないんだから適当にふっかけてやろうだとか。見下してくるような相手に従ってやるつもりはないだとか、気持ちはわかるだろう?」
桃髪の子供を含む極少数が食い入るような目つきで聞いている。理解できるだけの頭と経験があるのだろう。
「取引は対等な相手としか成り立たない。そしてその為の各専門分野の知識を学ぶ機会が得られるのも学園だ。多様な立場の学生、専門的な講義、様々な経験や人付き合いができる部活動。どれも皆の確かな力と楽しい思い出になるだろう」
ローザリカは子供の集中力と体力の残り具合を確認する。
(休みが必要か。彼ら彼女らの未来に少しでもいい風が吹けばいいが)
ヒューマンで貴族令嬢なローザリカに対しては、特に反発は存在しなかった。
●
ジュスト・ヴェルジーが自己紹介を終えると、男児と女児はローザリカとの距離を見てとても強く落胆した。
家としての強さも個人としての実績も持つジュストは爽やかな態度で、しかし冷静に子供達を見る。
(理解の度合いと頭の出来で教室を分けるべきかもしれないな)
公爵令嬢が後ろ盾の茶会の面もあるので実行は難しい。
ジュストは馬鹿な子でも理解できる程度に内容を噛み砕いて説明する。
まず大前提として人類を構成するそれぞれの種族について。
王国とそれ以外の国や地域についての解説は地図や図を用いて分かり易くして、その上でこれまでの王国や世界のざっくりとした歴史、現在の王国内派閥まで解説していく。
「一番新しい派閥が集権派という訳だね。集権の意味は分かるかな?」
花を持たせるためにエルヴィラの妹に答えさせることもする。
ジュストはただ知識を詰め込むだけの授業ではなく子ども達が自分達の目線でも考えられるような授業を目指し、結果としてかなり過酷な授業になっている。
「確かジョセフ君の伯母上は帝国で活躍していたね」
子供の興味を引きそれ以外の子供も刺激する手際はまさしく辣腕貴族のそれだ。
貴族派の令息であるボリスやヨナタンには、それぞれの理解度と性質を見極めて不安を指摘し解決法を示さず示唆して宥めすらする。
「知識、技術、人脈、どれもこれから磨いて、築きあげていけば良い。学園は纏めてそれらを手に入れられる一番の早道だと思うから。俺は来年で卒業してしまうけれど、皆の入学を楽しみにしているよ」
反発心を抱かせずに圧倒するのは理想ではあるが難しいはずなのに、ジュストは見事にやりとげていた。
●
「熱いからきをつけてねー……」
食欲を刺激する香りが強すぎて最も差別意識が強い子供もアルマ・ヴァレンタインに敵意を向けない。
深皿には鶏肉と羊肉の料理が取り分け用の小皿と一緒に。平皿の上には可愛らしくも少しおどろおどろしい形の南瓜を使ったお菓子とパンが並んでいる。
人類全体でもかなり上位の料理技術を持つアルマの作品は贅沢に慣れた子にも魅力的な品だった。
「授業と授業の間の軽食タイムだよー……」
アルマの指揮に従いメイド達が食事の準備を整える。
「と思ったけど授業もはじめよー! これって餌だったりお世話の仕方だったりとかボク達がいろいろ改良して好評の特産品になったんだよー」
リーラント伯の嫡子である桃髪7歳児が、頬をリスのように膨らませたまま真顔で頷く。
「こっちの羊さんは鶏さんよりゆっくり育つから数年前の成果が今でてきたんだよー……!」
数年前の依頼の成果だ。
具体的に何をしたか1番良く知っているので、営業秘密をぼかしても非常に内容が濃い授業になる。
「甘露アリさんもすこーし前に新? 発見されて流通に乗ったものだし、いまあるものを改善したり領内をよーく探してみたりしたら発見があるかもねー……」
嫡子ほど真剣に聞いている。
(よーしよし。みんなウィリアム黄金像を本心から格好良いと思う感性らしいから心配してたけど食は保守的だねー……)
快調に喋っているアルマは、狙って作った料理が大好評で内心安堵していた。
食後のお茶が配膳される。
貴族の子等より明らかに上品に食べ終えたゲルダ・クラインは、子供達の警戒心が最も緩んだタイミングで授業を開始する。
「黄金像、素敵ですよね。実はわたしも建造のお手伝いをさせていただきまして」
共通の話題を使って親近感を抱かせる。
「一時間ごとに両腕がこう動くんです」
ゲルダの動作1つ1つが洗練されている。
武の才能があるならゲルダの戦士としての強さにも気付いて慄然としたはずだ。
「夜になると目から光線が出て周囲を照らす仕掛けも……」
子供はこういう話が大好きだ。
自然と盛り上がって質問も飛び出し話も弾む。
「冒険者の皆様がアイディアを出し合って、ヴェルクリエやドワーフ王国の職人さんたちが文字通り手を取り合って……様々な障害を乗り越えて作られたのです」
ゲルダが説明を終えると自然と拍手が沸き起こる。
すげーすげーと鳴いている男児までいる。
「ありがとうございます」
ゲルダも黄金像には思い入れもある。
黄金像に憧れる子供達と直接触れ合うのは、当初予想していたよりも心弾む経験であった。
休憩が終わればお勉強だ。
教室に戻るとメイドや従者が万事準備を整えている。
(勉強の進度がばらばらです)
数年後には編入試験を狙えそうな子供もいれば同年齢の庶民とあまり変わらない子までいる。
ゲルダは叱るようなことも無理矢理褒めることもせず、問題の背景の解説や本人が分からないと申告した箇所の解説を行うことで子供が自力で答えに辿り着けるようなフォローする。
それは簡単なようで実際に行うと苦行に近い。
常人なら胃か表情筋の痛みに苦しむような状況でも、ゲルダは真摯に子供達に向き合いその学力を伸ばしていく。
(少しは打ち解けることができたと思いますし、黄金像の建造にヒューマン以外も関わっていたことを知って少しでも考えて頂ければ)
選択肢を広げていって欲しいと考えるゲルダであった。
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「しょーぶだジョセフ!」
「負けないよ!」
庭と表現するにはあまりに広い演習場に飛び出す子供2人。
十分な栄養と運動で育てられた男児達は、特に活発な庶民のそれと比べても素早く力強い。
「よし、今日はみんなに剣術の稽古を行う!」
その程度の能力ではアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトの足下にも及ばない。
大剣っぽい木刀を取り上げるのも細剣っぽい木刀を取り上げるのも、アルベルトにとっては攻撃ですらないただの作業だ。
「筋肉のおにーさ……アルベルト卿おひさしぶりです。ねーさまとうまくいってますよねっ!」
桃髪7歳児がかなり深刻な表情だ。
アルベルトの婚約者である桃髪7歳児の叔母は一般的に好かれる性格と正反対なのだ。心配にもなる。
「ジョセフ君、君が義理の甥っ子であっても贔屓はしないし、手加減はしないぞ」
アルベルトは年上の余裕を見せる。
婚約者を実質悪く言われたので少しだけきつい訓練を課してしまったかもしれないが許容範囲のはずだ。
「ボリスくんだったね。ここで剣術を身に着ければアリナも君に惚れるかもな?」
小声で囁く。
アルベルトが見本として見せた斬撃は美しく、それ以上に重武装でも安定したままの体幹が実に良い。
他国を甘く見る傾向がある者も、アルベルトの武の実力を過小評価はしない。
(俺も7~8歳はこんな感じだったかな?)
もっと真剣だった気もするがとりあえず今は関係ない。
新兵ですらない子供が無理なく強くなれるよう、慎重に負荷をかけていく。
(本当に、あれをかっこいいと思うのか)
ベルク・オスマットはかなり衝撃を受けている。
(我にとってはモデルに関係なく黄金像自体がナンセンスだが……。国も階層も違えば文化も違うか)
また1つ学びを得て人材のとしての価値を1つ上げる。
(……共通した文化もあるようだな)
目を向けずに女児達の様子を探る。
主にジョセフを応援する女児達の間の雰囲気もやりとりも良く知っている。マウントの取り合いと牽制合戦だ。
(狙いはセニャの甥御か。バデーニとリーラントが結びつくのは帝国にとっても王国にとっても予定外の……うん?)
ベルクはちょっとした学者並みにある政治知識をもとに情報を分析する。
(垣間見えるヒューマン至上主義を除けばかなりの良縁かもしれん。貴族派から抜けても集権派の中枢近くがケツ持ちに付くなら次代どころかその次も安泰な可能性もあるか)
レイウェストの臣であるベルクは、情とは無関係に巧く利用するつもりだ。
「ガキはガキなりに色々と考えているものだな……。まさに社会の縮図とでも言うべきか」
ナハティガル=ラーは敢えて口にする。
武力でも顔面偏差値でも存在感がある彼がそうすると子供達が怯えるほどの圧力になるが今はそれこそが必要だ。
アルベルトが笑顔で親指を立てる。
ナハティガルはうなずいて引き継ぎを了承する。
「せっかく集まったんだ。ガキはガキ同士遊ばせてやろう」
剣を振って肉体的に疲れている男児達と精神的に疲れている女児達を素早く確認する。
(デカイ口を叩くだけのことはあるか)
素質も心身の鍛えられ具合も悪くはない。
ナハティガルはメイドと従者達に着替えについて細かく注文をつけ、実行させた。
「つかまえたっ」
「だめっ」
「足並みあわせてー」
基本的には鬼同士が手を繋ぐだけの鬼ごっこだ。
それだけで通常の鬼ごっことと比べて難易度は急上昇。身体能力だけでは勝てない別の遊びへと変わる。
「体力は勿論、戦術・戦略が必要となる遊戯だ」
ナハティガルは自身の圧力を意識した上で制御する。
自身を甘く見るのは御免だが敵意を向けられたい訳でもない。
人付き合いや体力が苦手な子への圧を減らすことで支援して、頭と体を鍛える機会を提供する。
「遊びとしての勝者は最後まで逃げ延びた奴だ。もっとも」
ナハティガルは口元だけで笑ってみせる。
「各々の目的も各々の目的も果たせれば最良だな」
女児達の気配が鋭く、強くなる。
(後はガキの体力が尽きるまで審判だな)
口元に、自然な笑みが浮かんでいた。
●
「先に言っておくが自種族や自国、自領、自派閥優先は悪いことじゃなく当たり前であるからな? ただそれに浸り思考停止するのがダメであり、優位にあらんとするなら努力せよ。努力せず生まれとヒューマン優越思想に浸り努力を怠った果てにこの国の膿となったのが例の連中だ」
講義するベルクの後ろではナハティガルが相関図を用意している。
「現存する国家勢力としては王国が最大だが、非ヒューマンが主流な勢力も多い。……我が顔を出した瞬間表情をゆがめた者がいるが、今後は表に出さず内に秘める術を学ぶことを勧めよう。相手に渡す情報を選ぶのは社交や交渉に限らず基礎の基礎だぞ」
差別の是非と関係なく正しいことを言うベルクに、子供達は終始圧倒されていた。
「皆さん理解されたようですね。次は王国史について学んで参りましょう」
レティシア・レインフィールが講義を引き継ぐ。
お伽噺めいた王国の始まりから現在の出来事である竜喰らい討伐まで、子供に理解できる程度に内容を簡略化しても時間がかかる。
途中で帝国崩壊を始めとした王国と関わりの深い他国の出来事についても言及する必要があるので授業に必要な時間も子供の負担も大きくなる。
(内容をより平易に)
全員を褒めて伸ばすためには難易度の調整も必要だ。
途中で学園出身者や学園そのものの変遷についても語る。
「同じヒューマンや貴族でも得手不得手はあるように、他種族や貴族でない者にもそれぞれ得手不得手があります。たとえば、今私達が着飾りお茶会をするにも多くの人材が必要です」
命じるだけなら簡単だ。
命じて良い成果を出させることや命じた人材を必要以上に消耗させないことは大変だ。
「誰も大切にしてくれない方よりも、優しくしてくれる方の為に尽くしたいと思うものでしょう?」
レティシアの講義は、優れた講義であると同時にヒューマン至上主義の傾向が自然に薄れていく巧みな工作でもあった。
「まあ『貴族派』『王党派』『集権派』の特徴と歴史、関係性くらいは覚えておけ」
ナハティガルは極力普通の態度を維持する。
(個人的には、ガキどもに特定の思想を刷り込むのは気が進まんな)
冒険者の内心の葛藤は気づかれないまま勉強会は終わり、すぐに子供達の親の間で話題になった。
●
表情を意識して作る必要があるほどエルヴィラは上機嫌だ。
自身の出した依頼で貴族子弟の学力が向上し全体的に集権派の傾向が強まるというのは、小さな戦の勝利よりも価値がある成果だ。
「定期的に此度のような入学希望者の学園見学も兼ねた勉強会を……」
気を抜くと、レティシアからの進言に身を乗り出しそうになりそうだ。
エルヴィラにとって、案もその案を立案できるレティシアも価値が大きい。
冒険者の引き抜きが禁止されていなければ逃げられない状況を整えた上で自身の部下にしようとしたはずだ。
「意図的に集権派的な思想教育を施しては抵抗があるでしょうし先ずは広い視野を持って頂く事から始めては如何でしょう。
この試みが成功すればエルヴィラ様の評判は上がり夫である殿下や集権派の評価にも繋がるかと」
じっと見つめられたレティシアが微かに困惑する。
公爵令嬢の名に恥じぬ演技力でも強い欲望が隠し切れていない。
「勉強会では同じく入学前のアリナ様にもご協力して頂く事で……」
レティシアの提案は気味が悪いほどスムーズに受け入れられていく。
全てが終わり立ち去る冒険者に対する見送りは、非常に熱烈なものになった。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:多い8 / 4〜8人
2023年10月30日 10時46分50秒 公開
相談掲示板
シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 ガキはガキなりに色々と考えているものだな……。 正に社会の縮図とでも言うべきか。 >行動 個人的には『非ヒューマンに対する嫌悪感』を少しでも軽減したい所ではあるな。 今の所、演習場で試合形式の遊戯(『隠れん坊』等)で汗を流しつつ、戦術や戦略の大切さを教示する方向で考えている。 >集権派的な思想教育 これに関してはどうする? ……個人的には、ガキ供に特定の思想を刷り込むのは気が進まんな。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー ウィリアム黄金像を本心から格好良いと思う感性…文化がちが~~う! のでボクはお料理やお菓子作りに専念してようかなあと
キャスターのジュストだ、よろしく。 いやぁ、幼くても既に(女の)戦いは始まっているんだねぇ……。 >集権派的な思想教育 これに関しては非ヒューマンに対する嫌悪感を少しでも緩和するのと並行して、集権派っていうのがどういうものなのかを説明する位で良いのではと考えているよ。 >自行動 主に集権派の解説を始め子ども達が理解できるレベルに噛み砕いて政治の初歩や世界情勢を学べるような講義をする予定。
ゲルダです。よろしくお願いしますね。 黄金像について、様々な種族の方々が手を取り合って建てられた――という経緯がありますので、どういう風に黄金像が建てられたかについていろいろお伝えすることで、少しでも異種族への嫌悪感が薄くなってくれればな、と思っています。 思想教育についても、ジュスト様がおっしゃる通りで、集権派としての考えを押し付けるのではなく、子どもたちの「選択肢を広げる」ためのものなのかなと考えていました。 ですので、思想を強制するものではなくて、「こういう考え方もあるよ」ということを、自然にお教えできればよさそうかなと。
ヒーラーのローザリカ、学園生としてもよろしく頼もう。 微笑ましい、という感想だけでは収まらないのがなんともね。 >集権派的な思想教育 『非ヒューマンに対する嫌悪感を軽減できるだけでも大きな成果になる』ともあるし ジュストやゲルダ君と同意見かな。 >自行動 悩ましいが自分の得意分野の商業関連から講義ができればと思っている。 学園は人脈づくりや才ある人物の青田買いをする場という側面もある。 貴族の他に商人も多く通う学園だし多少の知識はどこかで役立つかな、と。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ・・・思想教育とかそういう難しいことは良く分からないんだ・・・すまん。 今回は、剣術の稽古を通して強き肉体と清き心を教えることができればよいと思っている。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 非ヒューマンへの嫌悪感軽減というか。 ヒューマン至上主義は構わないがそれはそれとして非ヒューマンを上手く利用することを覚えた方が排斥するより得、という風に意識誘導すればいいかと考えている。 実際問題王国以外は帝国と都市同盟くらいか?ヒューマンが主流派なのは、その二国とて別に非ヒューマンが劣勢と言う訳でもないしな。 露骨すぎるヒューマン至上主義は将来的に損にしかならないとなれば少しは考えてくれるだろう。。。
ごきげんよう。 ヒーラーのレティシア・レインフィールと申します。 ご挨拶が遅くなり、大変失礼致しました。 皆様、よろしくお願い致します。 講義に関しましては王国の始まりから現代まで 関連した他国や学園の変化を交えて子供向けに簡略化したものを予定しております。