【幻秋】欠落を抱えた子らと、秋のおくりもの
菊華 伴
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シナリオID:3272
オープニング
●セディが選出された理由
雨が降る中、セディ・キャロルはメドゥの指先の構成員の子ども達だけで結成された『デゼスポワル』に関する資料に目を通していた。
彼らが預けられた先での状況などが、事細かに描かれた資料。そこには、時に痛々しい物も書かれていた。
夜に悪夢で起きる子供、何かしらの失敗をすると自傷する子、怒鳴り声などに異様に反応し恐怖する子……。彼らは、かつて心に数多の傷を抱えながらも、生きる場所を得るべく破壊工作などを行っていたのだ。
その作戦などで更に心の傷を負った子も少なくはないだろう、と推測される行動もあった。その事に胸を痛めながらも、セディは読み進める。
バルディオン等上層部からセディは子供たちを教え導く役と、『駒』たちの上司という立場を託された。彼も『デゼスポワル』の子供たちと似た境遇だったからか、はたまた、子供の面倒を見るのが上手いとみられたが故か……。セディは、その子ども達を心から大切に思い、時に優しく、時に厳しく寄り添ってきた。
里の人々の優しさと、彼のお陰で子ども達の異常な反応は少しずつ減っては来ている。だが、その中で……彼は、直感のようなものが働いた。
(この子たちは……何かしら、『欠けている』気がする。それが、徐々に埋まってきた子もいるのかもしれない)
●レビジュの告白
翌朝。セディは食堂でレビジュ・バトーと偶然合う。
色んな意味で毒物に詳しいレビジュは、時折要人が訪れた際の毒見役も担当している。その為、食堂で食事を取ることはどちらかと言えば珍しい。
互いに挨拶を交わし、食事をとりながら何気ない会話を重ね……、セディはそっと自分の予測を口にした。それを聞いたレビジュは僅かに考え、小さく頷く。
「さすが、というべきかなぁ、キャロル先生。僕も、なんとなくそれを考えていた事なんだ」
レビジュはそう言いながら、目の前のパンケーキに切り目を入れた。そして、一切れ口に運び、咀嚼の後飲み込んで頷いた。
「僕も、前々から考えていたんだ。もしかしたら『メドゥの指先』のみんなって、《何かが足りない》のかもしれないって。しかもその《何か》はバラバラなんじゃないかなーって」
レビジュはどこか影のある瞳で欠けたパンケーキを見つめ……カトラリーを置くと静かに胸を押さえた。
「僕の場合は、多分『叱ってくれる大人』か『道徳心』が欠けていたんだと思う。……あの子は『家族』」
レビジュの言葉に、セディは静かに考察する。
子ども達の『欠落』が埋まっていく。それはとても喜ばしい事だ。しかし、才能のある子どもはいずれ帝国の密偵として、兵士として採用されていく。
(その中で、新たに欠落がうまれなければいいが……)
セディは不安を覚えながらも己の朝食を再び口にし始めた。
●越冬用の物資と、『災い払う笛吹き』
「越冬用の物資ですか」
バルディオンに呼ばれたセディは、傍らで真面目な顔を作るレビジュと共にその話を聞いた。バルディオンは静かに頷く。
「今年も、一部の村落が酷い不作だと報告が上がっている。殿下と話し合った結果、エーテル浄化者の派遣と、物資を届けに行く事になった。その一隊として、『子ども達』の力も借りたく思う」
丁度、レイウェスト・バルタスは王国にいる。バルディオンは彼と書簡のやり取りをし、そう決断したそうだ。物資の当てはある、と静かに付け加えると、何故か脳裏に長身のとある商人の顔がセディの脳裏に浮かんだ。
その上で、セディは知識から帝国のとある地域で語られるおとぎ話『災い払いの笛吹き』を思い出した。
その地域ではかつて沢山のネズミに困っていた。そこに通りかかったのが一人の笛吹き。笛吹はねずみをどうにかしましょう、と言い、人々はお礼をすることを約束する。
笛吹が不思議な曲を奏でるとネズミたちは笛吹きについていき、やがて川へとみんな飛び込んだ。ネズミ問題が解決し、地域の人々は笛吹きを可能な限り持て成した。
笛吹きはそんな人々に感謝し、楽しい曲を奏で、地域の人々と一緒に踊ってお祝いした。
「子どもたちに手伝わせるということは、私の好きにしてよいのですね?」
「あぁ。地域の人たちを笑顔にできるならば、やり方は任せよう」
セディの言葉に、バルディオンは静かに頷いた。
「レビジュ、もちろん手伝ってくれるよね?」
「勿論!」
セディとレビジュのやり取りを聞きながら、バルディオンもまた穏やかな眼差しで頷いた。
数日後、砦に『デゼスポワル』の子供達が集う。
子ども達は皆馬車に乗り込み、物資が必要になる村落へと向かっていく。馬車に揺られ、子ども達は皆、笛吹きの恰好の話をしたり、『笛吹きの話』について話したりととても楽しそうだ。
また、エーテル浄化者であるブリザラ・ヒャダル及びコトヌシ・エルタニンの護衛と子ども達の護衛及び手伝いに冒険者達にも依頼が出された。子ども達やコトヌシと縁のある冒険者もそうでない冒険者も和やかな雰囲気の中、とても楽しそうにしている。
そんな楽しそうな声を聴きながら、レビジュは小さく微笑みながら口元を綻ばせる。セディはどこかご機嫌な様子のレビジュを不思議に思いながらも、予定を確認していた。
――それは、そんな秋の日の話。
解説
今回は【幻秋】という事で
・越冬用の物資を届ける
・エーテル浄化儀式を手伝う
・ささやかな食事会に参加する
上記より1つを選んで行動してください。2つ以上選ぶと描写が極端に減りますのでご了承ください。
>越冬用の物資を届ける
不作の為越冬が厳しい村に物資を届けます。今回は『災い払いの笛吹き』の恰好をした子供達を連れ届けに行きます。村の人々は疲れていますが、子供達の姿に癒されるかもしれません。
今回、物資はとあるガタイのいい商人が準備してくれたので安全です。
序に村の人の困りごとを解決するのもアリです(壊れた物を修理する、なくしものを探す、など)。
>エーテル浄化儀式を行う
今回は広範囲に行う為、2名で行います。今回は祈るだけではなくちょっとしたお祭りムードになるように、歌を歌うようです。村の人々も即席の楽器で盛り上げようとしてくれます。
ブリザラとコトヌシの息が合うように楽しく盛り上げましょう。伝承にのっとって笛を奏でても面白いかもしれませんね。
>ささやかな食事会に参加する
村の人々は少しでもお礼をしようと、食事を用意してくれました。流石にご馳走とは呼べませんが、味はとても美味しいそうです。村の人々と共に美味しく頂きましょう。
登場NPC
レビジュ・バトー
どうにか憂いが減った薬師(及び帝国の『駒』)。今回は物資を届ける序に、調合した薬を渡しに行くようです。また、食事会にも参加します。
ブリザラ・ヒャダル
エーテル浄化者の一人。最近力が強くなった気がする。新米のコトヌシという後輩が出来てちょっと嬉しい。食事会にも参加します。
コトヌシ・エルタニン
エーテル浄化者の一人。新米であり、努力家。ブリザラは年下だが先輩として慕っています。食事会にも参加します。
セディ・キャロル
『デゼスポワル』だった子ども達の上司であり先生的存在。物資を届ける際代表者として村側の代表者と話し合います。食事会にも参加します。
その他、今まで登場した『デゼスポワル』の子供達(ぐりった&ホークアイの双子姉妹やネインなど)もプレイングにあれば登場します。ただし、シトラス、ガク、スケアクロの3人は「冒険者としての仕事中」な為登場しません。
それではよろしくお願いします。
マスターより
「今回は、物資を届けるんだ! 越冬するための大事な物資だよ」
ほのぼのシナリオです。皆さんで秋を満喫しつつのんびりしましょう。
『デゼスポワル』の子供達と交流するのもよし、村の人の困りごとを解決するもよし、音楽で盛り上げるもよし、です。
ちなみに、コトヌシは帝国の暮らしにもだいぶ慣れました。
エーテル浄化も何回かこなしています。ですが、『デゼスポワル』の子供達については「『メドゥの指先』から保護されたのち、帝国兵見習いとなった子ども達」とだけ聞いています(犯罪行為をやっていた事は知りません)。
リプレイ
●秋の日に笛の音響き……
――帝国南部・セヤン村
このセヤン村を含め、複数の集落では越冬が厳しいほどの不作であった。
越冬用の物資を運び、セヤン村近隣のエーテルを浄化するべく、ヴァイセントラフ砦から『デゼスポワル』の子供達(+α)が派遣された。冒険者達はその護衛である。
「みんな、服は着替えた?」
「「はーい!!」」
子ども達に呼びかけるのは、レビジュ・バトー。その傍らには、彼らの先生であり上司であるセディ・キャロルの姿も。
「今回は、この村含め4か所を回ります。ここで二手に分かれ……」
説明を聞いている間、冒険者達は静かに見守る。子ども達は真剣な目で説明をする二人を見、話を聞いていた。
ベルク・オスマットやナタリア・フィッツジェラルド等の初期の頃から知っている者たちは、彼らの成長を心から感じ取る。
やがて説明が終わると、子供達は物資を乗せた馬車と共にそれぞれ村へと向かうのだった。
「実にいい顔をするようになった。が……『欠落』か」
ベルクの言葉に、ナハティガル=ラーは僅かに眉を上げ、資料を思い出した。
「そういえば、『メドゥの指先』の構成員達は皆、何かが『欠落』しているという話だったな」
彼の言葉にベルクは静かに頷く。
「放置できん話とは言え、時間をかけて埋まるものか分からん。……少しでも埋まるよう努力していくしかなかろう」
そういいながら彼女はさっさと『笛吹き』の恰好をする。それにナハティガルは僅かに首を傾げようとしてぽん、と内心で手を叩く。ベルクは子供達に混じっても遜色のない身長をしていた(ちなみに、セディも違和感のなさに目を見張っていた)。
ベルクは「念のため」と言うと子ども達に混じり歩き出す。ナハティガルは頷きながらもちらりと子供達を見た。
(今の所は、『デゼスポワル』として、なんとか居場所を得られてるようだが……)
しかし、彼らは皆帝国の監視下にあり、才能があれば密偵や兵士になる。本人の選択はそこにあるかまでは分からなかったが、ナハティガルは僅かに遠い目をする。
(それを好機、呪縛のどちらで捉えるかは、本人達次第だがな)
ナハティガル自身も似たような境遇であるが故、他人事とは思えない。だが、彼らは皆、本当にいい顔をしていた。
子ども達の話によると、数名の年長者達は既に帝国の兵士や密偵になっているという。それにナハティガルは「そうか」と静かに頷きつつ、僅かに瞳を細めた。
(どうやら、彼らは『好機』と取っているようだな)
「どこも、色々大変だね……。王国も帝国も傷が増えていく」
そう、ため息交じりに呟いたのはトゥーリ。彼女は前の依頼で傷を負っていた。まだその傷は癒えていないが、それでもできる事をと前もって村に入っていた。
村の代表はトゥーリからの連絡に感謝の意を表し、彼女は雪が深くなると手が出しにくい外回りや大物の修理を手伝っていた。確かに傷は痛むが、無理はしないとセディ達と約束している。
今、彼女は器用に手を動かし窓枠の修理をしているところだった。
「こんなものかなー? うん!」
窓枠がガタつかない事を確認し、嬉しそうに顔を綻ばせる。傍らでは、同じく山羊のハーフビーストだろう老婆が「ありがとうございます」と笑顔で
木工や建築の知識を得ている彼女にとっては、やりやすい作業だったらしく子ども達が来る頃には半分ほど終えていた。
笛吹の恰好をした子供達が、馬車と共に現れる。彼らと共に来たベルクとナハティガルは、道中に異変もなく少し安堵しているようにトゥーリには見えた。
物資を受け取るべく集まった大人たちの対応をナハティガルとセディが行っている間、ベルクは子ども達に混じり荷物を運んでいた。
大半の村の人々は純粋に子どもたちの様子に和んだり、一緒に荷物を運んだりしている。感謝の意を表し、共に動く姿は見ていて胸が暖かくなる。だが……。
「おいおい、こんなガキども連れてきてどうするつもりだ? まさか置いてくんじゃなかろうな?」
と疑いをかけてくる者や不審そうな目をする者達もいる。ずいずいと来る男の前に、ベルクが立ちはだかった。
「我らは、レイウェスト殿下とバルディオン将軍の命で物資を届けに来た。事が終われば砦に帰還する」
軍人めいた口調の小柄な少女に言われ、男は渋い顔になる。ベルクの言葉が響いたのか、胡乱な目をしていた者達も視線をそらした。
(少しは、動きやすくなったか)
表立ったトラブルに発展する前に止められたのは僥倖だ。ベルクは子供達と共に荷物を決められた場所へと運び入れるのだった。
「よかった! 2件ほど雨漏り修理を手伝ってくれると嬉しいな。他にもやる事がいっぱいみたい!」
トゥーリが手を振って答える。ナハティガルは数名の子ども達に対し「手が空いているなら手伝え」と声をかけた結果、4,5人の子ども達が彼と共に行動していた。
「井戸のロープを交換しよう。ちょっと解れてきている」
「ここの屋根を修理しておこうよ。ちょっと外れそう」
ナハティガルが井戸のロープを手にとり、考えていると屋根の方を見ていた少年が「これみて」と指をさす。
「俺、あっちの葉っぱが詰まった溝を掃除してくる」
「どれだけ雪が降るかはわからないけれど、やっておいた方がいいよね?」
子ども達もまた、自分からできる事を探し始める。一方、荷物を運んでいた子ども達もまた、トゥーリと共に他にできる事がないか確認していた。
ベルクの言葉で信用したのか、他にいちゃもんを付けてくるような者はいなかった。彼女はこっそりと安堵の息をつき、他の子ども達と共に井戸の修理に混じる。
井戸のロープを交換し、村の人と共に井戸回りの掃除をする。どこか和やかな空気の中、先ほどいちゃもんを付けてきた男も掃除に加わる。
トゥーリと数名の子ども達は村の女性たちに混じり、服の修繕を手伝っている。
屋根修理を行いながら、ナハティガルは子どもたちの様子を見、確かな成長を感じ取っていた。
捕らえられたばかりの頃、か細いイメージがあった子ども達は、預けられた先でヒトとして聊か逞しくなった。
(地に足の着いた、という言葉が合うような気がするな)
あの頃の不安に満ちた目の子ども達はもう、いない。
ナハティガルは、そう確信した。
「え? もういいの?」
「ちょうど大掛かりな物も減ったし、あとは休んでいて欲しい」
トゥーリはセディにそう言われ、目を丸くする。彼はまだ傷が癒えていないトゥーリを気遣っているらしい。
「まだ傷が痛むなら、隣の村で健康診断をしているフィッツジェラルド殿に具合を見てもらう事も出来るが、どうする?」
「もう治りかけだし、大丈夫。まだ動けるよ!」
トゥーリがそう言えば、セディは少し考え……「やっぱり無茶はいけない」と言って彼女へ休憩するようにと飲み物を渡し、敷物を引いて座らせた。
ベルクは子ども達に混じり、年少を装い村の人達と交流しながら作業をしていた。村の人々はごく自然に彼女を子どもと見、色々と話してくれる。
そこでの小さな悩みなどを、ベルクはメモにとり、後からセディに相談しようと考えた。緊急の物、ゆっくり考える必要がある物、そこまで重要でない物と仕分けした上で。
(こういった事も大事なはずだ)
彼女は「若いのに偉いね」と言われながら村の人たちの話を熱心に聞き続けた。
一方その頃。別の村にも越冬用の物資が到着していた。
レビジュが代表者と話している様子を、アリア・ティーダは穏やかな様子で見つめている。
レビジュの傍らには、ナタリア・フィッツジェラルドがおり、厳しい冬を乗り切る為の諮問と答申を行っていた。
トゥーリ達が向かった村には医者がおり、薬師たちが作った薬を渡すだけでよかった。が、彼らが訪れた村には医者がいない可能性があった為ナタリアがこちらに赴いていた。
本来は帝国軍医であったナタリアだが、未知を求める本能から学者の真似事までするようになり、色々な知識を得ていた。
村長からいくつか聞き取りを行ったレビジュが、肩を竦めながらナタリアに報告する。
「お医者さんいなくなったって……。念のため薬についてのレジュメを村長さんに渡しておこう」
「それがいいだろう。私も、防寒具をしても乗り切れない時のサバイバル技能も伝授しておこうと思う」
その後は出張診療所をひらこう、と考えるナタリアであった。
「はいはーい! 物資はこっちに運ぶよ。丁寧に扱おうね~」
アリアは物資の搬入を手伝っていた。中には大きい物もあり、それは率先して運ぶ。
共に働きながら、彼女は子ども達の様子を観察していた。
アリアの目には、子ども達が前に比べいきいきとしていることに気付いた。やはり健全な生活を送れるようになり、彼らのがんばりにより生活水準も少しずつ上がってきているからだろうか?
子供達とふれあいながらも、アリアもまた確かな成長を感じ取っていた。
とその時。ナタリアが彼女を呼んだ。
「ティーダ、村の人たちの中でお年寄りや体調が悪い人、持病を持っている人を先に案内してほしい。できるか?」
「うん、いいよ! ナタリア君も診察よろしくー!」
アリアは出張診療所の事を村の人々に宣伝し、子供達に案内の手伝いをお願いした。
ナタリアは診察をする前にレビジュを呼び、必要な薬の判断を手伝ってもらうことにした。診察が始まれば、真剣な顔で患者たちに向き合う。
(全体的に、栄養失調気味だ。不作の影響なんだろうな)
別の場所ではエーテル浄化の儀式が行われている。そっちに行った弟、キリアン・フィッツジェラルドを始めとする面々が上手くやっているだろうか、とナタリアの脳裏に過ぎる。が、振り払って診察に集中する。
彼女は、傍に控えたレビジュに時折相談し、薬を選んでもらう。患者たちは皆、有難そうにそれを受け取るので「きちんと飲んでくださいね」と優しく付け加える。
穏やかに過ぎていくその光景を見つめていたレビジュが外を見ると、村の人から何かを聞き取っているアリアたちをみつける。ふとアリアと目があうと、彼女は手を振ってくれた。少しうれしくなったレビジュもまた、そっと手を振った。
ある程度仕事を終え、のびをしているとアリアが「おつかれさま」と労ってくれた。
「そうだ、レビジュ君。この前、カイン君を探しに行った際の冗談を覚えてる?」
そう問いかけるアリアに、少年は小さく頷く。
エルフの乙女は、優しく瞳を細めつつも考えながら口を開いた。
彼女は考える。帝国に仕えて貰う事でこの子たちの立場が保障出来るのは理解してる。しかし、裏だけに留めていたら、また同じ闇を繰り返してしまわないだろうか、と。
「それで考えてみたんだ、ここらで表の場所を。それでみんなが。各地と人を自分の目で見て考えれる仕事を誂えるのはどうかなって。長く見守れるような……、そうだね、表向きは帝国直属の孤児院かつ、仕事で復興や商売を行う商会・公団なんか時勢的にもいいんじゃないかな?」
レビジュはその言葉に目を見開くも、暫くの間考え……、その上でアリアを見上げる。
「アイデアとしては、面白いよ! でも、上司に相談してみないと……だね。上司からもっと上の人たちに提案してもらうしかないかなぁ」
ロバの耳をぴくり、と動かしながらレビジュが考える姿を、アリアは微笑ましく見つめていた。
(しかし)
診察が一息ついたナタリアは、天幕から出て村の周りを見渡す。
風に乗って音楽が聞こえた事に表情を僅かに緩めた彼女だったが、冷たい風に頬を撫でられると僅かに表情を引き締めた。
(今年の冬も厳しくなるかもしれないな)
地質的に善さげな所があれば温泉を掘り起こした方が……、と考えてしまうが「博打もいいとこだね」と首を振る。しかし本当に温泉を掘り当てることが出来たならば、観光資源になりそうだ、とも思う。
「温泉……か」
ナタリアは、ちょっとだけ暖かい湯が恋しくなった。
この調子で越冬物資は配達され、整備も整った。村の人々は帝国と子供達、冒険者達に感謝した。
その様子を見ていた子ども達と共に見つめていた冒険者達であったが、セディは僅かに不安そうな目をしていた。それが、ベルクには少し気になった。
「どうした?」
「……少し嫌な予感がしただけだ。心配をかけた」
彼女の問いかけにセディは苦笑し謝罪をしたが……、どことなくその不安はぬぐえていないような気がした。
そんな一面もあったが、特に大きなトラブルもなく物資は村々に届けられた。冬の備えも出来、これで一先ずは安心と言った所だろうか。
●秋の旋律と、祈りの時間
村落への物資配達が行われている頃。儀式の会場となった休耕地では、慌ただしく準備をしていた。
儀式のスタートを心待ちにしている人々の中、リザードマンの少年はエルフの青年と共に儀式の手順を確認していた。
「歌の方は大丈夫?」
「とりあえずは。歌は、覚えるのが早いので」
ブリザラ・ヒャダルの問いかけに、コトヌシ・エルタニンが静かに頷く。
彼らを取り囲むのは演奏を担当する村人たち及び冒険者達。広範囲の浄化と聞き、フォローに入る彼らの目にはやる気が漲っていた。
「いよいよですね」
「えぇ」
トーラが笛を構えながら呟けば、傍らのキリアンも頷く。
「それにしても、浄化儀式の要では1名だそうですが、2名で行うとは大がかりですね」
「今回は『豊穣の雫』がありませんし、浄化する範囲も広いと聞いています。早急な支援が必要と上層部が判断して2名つける事にしたそうです」
キリアンの呟きに、トーラは兵士たちの会話等から聞き取った事を伝える。キリアンの目には、確かに痩せたように見える土地が広がっているように見えた。「これも、幽界樹によるエーテル枯渇の影響ですよね……」と、ぽつり、トーラが零す。
「僕は笛の演奏に自信がありますが、トーラさんはどうですか?」
「演奏を習ったことはありませんが、音楽とは『音を楽しむ』事だそうですし、楽しもうと思います」
キリアンの問いかけに、トーラは笑顔で頷く。
本番前に、彼女は少し練習をしていた。確かに、笛を吹いて綺麗な音がでたら嬉しくなる。それが続くよう、綺麗な音が出た時の感覚を忘れないようにしていた。
(その時の感覚を思い出せば、きっと……!)
そんな二人の様子を見ながら、イズル・M・ヴォルゴールもまたヴァイオリンの調整を行う。その目はとても真剣だ。そして、歌唱で参加するレティシア・レインフィールの姿も。彼女は他の演奏者と打ち合わせをしていた。
そして、とうとう儀式の時を迎える。
エーテル浄化能力者であるブリザラとコトヌシは背中合わせになり、儀式の時を待つ。
(僕とて姉さんと同じ帝国の公僕。恥ずかしい姿を見せる訳にはいかないのは、将軍にセディ殿、それに子供たちと、とにかく沢山の人達ですから)
キリアンは気を引き締め、笛を構えた。
――シャン!
どこかで鈴がなり、キリアンとトーラは同時に笛を奏ではじめる。それに合わせ太鼓も鳴り始めた。
ゆるりと、ヴァイオリンの音色が合わされば、つむじ風を思わせるような音色が、笛や太鼓の音に合わせ踊るような旋律を奏でる。次に加わったのは、嫋やかな歌声。ふわりと程よく混じり、演奏に花を添える。
ブリザラとコトヌシもまた、音色に合わせて舞を舞う。真剣な顔つきで舞えば、なんとなく大地が元気になっていくイメージが脳裏に浮かぶ。
はじめはゆっくりと流れていた音楽が、徐々にテンポを上げる。踊る二人もより楽しそうに笑い、そこに手拍子のはじける音。トーラが楽器を持っていなかった村人に頼み、儀式に参加してもらっていたのだ。
トーラは笛を奏でた。最初はキリアン達の演奏についていくのがやっとだったが、徐々に上手くなっていき、キリアンに合わせることが出来た。
(一緒に演奏するって、楽しいですね!)
そう思いながらちらりと踊りを舞う二人を見れば、額に汗が浮かんでいた。真剣な眼差しをしていた二人だが、徐々に演奏と歌のお陰で表情が明るくなる。
「これで、上手くいけばいいが……」
ふと思いを漏らしたイズルだったが、なんとなく感じる活気に口元を綻ばせた。
演奏も終盤になり、二人の浄化能力者が祈りを捧げる。
最初はゆっくりと、だが、徐々に速度を上げて広がっていくような気配。そんなイメージが冒険者の脳裏に広がる。
演奏が終わり、暫く目を瞑り祈りに集中していた二人だったが、ややあってブリザラがゆっくりと立ち上がった。コトヌシも少しふらつきつつだが立ち上がる。
「儀式は成功したよ。ねっ?」
ブリザラの言葉にコトヌシが頷けば、演奏に加わった者達は歓声を上げた。キリアンたちも顔を見合わせ安堵していると、二人が冒険者達に向かって手を振っていた。
レティシアは、しばし人々の喜ぶ様子を静かに見つめていた。しかし手を振る二人の様子で我に返り、優しく手を振り返す。それにならい、他の冒険者達も手を振った。
秋の風が、優しく頬を撫でる。賑やかな声が村にも響き、物資を運んだ先で手伝いを行っていた面々も、自然と笑顔になっていた。
●ささやかな秋色の宴
演奏会も終わると、小規模だが温かな雰囲気の食事が始まる。
物資の運搬に携わった者たちも加わり、会場から楽しい笑い声が聞こえる。
一仕事終えたナタリアは、その料理に思わず「あたたかくて心も癒される」と呟き、キリアンも笑顔で相槌を打つ。その傍らではアリアがレビジュと話しながら料理に舌鼓を打っていた。
年少を装っていたベルクは村の人々から「よく食べなさいね」と多めに食事を渡され、その様子を見ていたトーラとナハティガルは「なるほど」と納得。一方、トゥーリは子ども達と触れ合いながら楽しく食事をしていた。
子供達もセディもまた、出されたささやかなご馳走が美味しかったのだろう、とても幸せそうな顔をしていた。
そんな中、イズルがにこやかに歩み寄る。
「食事が楽しくなる曲を弾こうか。何がいい?」
彼が問いかけると、子供達は祭りの際使用された曲を強請ったり、夏の思い出等のリクエストしたり。
「もちろんいいよ。じゃあ、まずは……」
イズルは笑顔で応じ、楽し気に曲を奏でる。そうしながらも、彼はちらりと子供達を見、胸の痛みを覚えた。
(責任から離れ、誰かに丸投げ同様の状態で本当にいいのかな……。無責任に助けて、誰かの負担を増やすだけになってないか?)
子供達は、確かに救われ、成長し、今ここで笑っている。だが、あの時抱きしめたあの少年は、ここに居る子どもたちよりも細かった。
演奏を終え、しばし子ども達を見ていたイズルだったがレビジュに声をかけられ我に返る。
「みんな、イズルさんの演奏を楽しんでたよ。ありがと」
「ううん、楽しんでもらえたらそれでいいんだ」
微笑んだイズルだが、レビジュにはそれが少し曇っているように見えたのだろう。不思議に思いながらイズルの目を見る。
「何か、考え事? それとも、何か悩んでいるの?」
「ちょっと、気になる事があってね」
イズルが掻い摘んで少し話すと、レビジュは少し考えながら口を開く。
「結局、僕らは手の届く範囲でしか、色々出来ないんだもの。だからこそ、手を貸し合うんでしょう? 自分に出来ないことは他の人に相談する、力を借りる。冒険者のそういう姿を見て、僕は学んだよ」
そうでしょう? というような眼差しに、イズルは小さく苦笑した。
「そうだよな」
二人はふと、遠くを見る。
なんとなく、思うは遠くにいるあの子の事。
(自分には、説教とか御高説とかは似合わないし、今度会う時は、兄弟みたいに接しよう)
今となりにいるレビジュに接するように。
イズルは今度こそ心からの笑みで頷いた。
イズルの演奏を聴きながら、レティシアはセディや子ども達と食事を楽しんでいた。さり気ない成長を見て心が温まる一面もあり、彼女は自然と優しい顔になる。
だが、ここにいる子ども達はかつて『メドゥの指先』に所属していた。という事は、皆、何か欠落があるという事だ。
(メドゥの右腕の方もそう仰っていたので間違いはないでしょう)
その事をセディに話すと、彼は「あぁ」と少し真面目な顔で頷いた。レビジュがそう予想していたことも聞き、レティシアはそっと胸を抑える。彼女自身も『欠落』を抱えており、過去にとある幹部から勧誘されたことがある。
(……私の欠落はそこでは埋まらない)
己が勧誘を受けたことは伏せ、レティシアは静かに『レビジュの考察』を聞いていた。
「レビジュ様の考察の通り、『メドゥの指先』の人々は何らかの『欠落』があるそうですね。高位の幹部から得られた情報にもあります。……でも、ここにきてそれが埋まり始めたことは、喜ばしく感じます」
「でしょ? みんな、前よりいい顔するようになったんだよ」
そこに現れたレビジュが、イズルに席を進めるとレティシアの方に歩み寄る。
レティシアは思う。目の前にいる少年の『欠落』も、もしかしたら埋まり始めているのではないか、と。それとなく小声で問えば、レビジュは小さく頷いた。
「殿下がご婚約されたのは喜ばしい事だよ。可能ならお祝いに花を贈りたいぐらいだって子供達も言っていたし」
レティシアが何気なく振った話題に、セディは静かに頷き、周りの子供達も「お祝いしたいね」とか「そうなったら、王国のお姫様が帝国に嫁ぐの?」と興味深そうにしたり。
賑やかになる彼らの様子を見、レティシアは微笑みの下で寂しさを覚える。
今の状況が落ち着けば、彼女自身も婚姻する。そうなれば、今のように帝国を訪れる事も難しくなる。
だから、強く思う。今のうちに彼らや帝国の為に力を貸そうと。
「レティシアさんは、何か聞きたい曲はあるかい?」
ふいにイズルが問いかける。レティシアは少し考えたが、自分より子どもたちのリクエストを優先してほしい、と頼む。
そして、彼が他の子ども達からのリクエストを聞き、優しい子守唄を奏でるのを聞きながら……、大森林の方を見た。
(あの方の事は気掛かりですがこの場で訊ねるような事ではありませんね)
僅かに首を振り、レティシアは改めて子ども達の輪に意識を向けた。
●時期に来る冬に、遠い何処かにいる友に思いを馳せて
こうして、とある秋の日は過ぎていく。
子ども達と冒険者達は村の人々に見送られ、ヴァイセントラフ砦へと戻っていく。その道の途中、ふわりと冷たい風が頬を撫でた。
「今年も、雪が沢山降るのかな。雪は苦手だな」
リザードマンであるブリザラが、辟易とした顔をするとナタリアは苦笑した。
「だが、工夫すれば暖かく過ごせる。コートなどの確認をしておくといい」
「セディ先生からもらったマフラーと手袋もあるし、あったかく過ごせるよ!」
そう、子供たちの中から声が上がればセディの耳がほんのりと赤くなる。
「照れているのか」
ベルクがポツリと言えば、セディは僅かに頷き、少女が「かわいい」と小さな声で呟く。
一方、ナハティガルとレティシアは念のために周囲を警戒し、魔獣などに備える。後で交代しましょう、とトーラが言えば傍らでキリアンが頷いていた。
トゥーリが転寝をしている辺りでは、比較的年少の子ども達が一緒に眠っている。その様子にコトヌシが微笑み、毛布を掛ける。イズルはその様子を穏やかな顔で見つめていたが、ふと僅かに曇り始めた空に気付く。
「冬の到来が早いかもしれないって、村の人たちが言ってたよ。……そうなったらこの辺りは馬車で来づらくなるって」
アリアが村で聞いたことを漏らせば、傍らのレビジュが遠くなる村を見つめたまま「今度は春になるのかな」と小さく呟いた。
馬車に揺られ、冒険者達は見張りを交代しながら砦への道を行く。
どんどん曇っていく空の下、子ども達は「雪はまだかな?」「まだでしょ?」等話しながら空を見、冬の話を始める。
そんな様子を見ながら、冒険者達は今日訪れた村の人々が無事に冬を乗り越えられるよう祈るのだった。
(終)
――帝国南部・セヤン村
このセヤン村を含め、複数の集落では越冬が厳しいほどの不作であった。
越冬用の物資を運び、セヤン村近隣のエーテルを浄化するべく、ヴァイセントラフ砦から『デゼスポワル』の子供達(+α)が派遣された。冒険者達はその護衛である。
「みんな、服は着替えた?」
「「はーい!!」」
子ども達に呼びかけるのは、レビジュ・バトー。その傍らには、彼らの先生であり上司であるセディ・キャロルの姿も。
「今回は、この村含め4か所を回ります。ここで二手に分かれ……」
説明を聞いている間、冒険者達は静かに見守る。子ども達は真剣な目で説明をする二人を見、話を聞いていた。
ベルク・オスマットやナタリア・フィッツジェラルド等の初期の頃から知っている者たちは、彼らの成長を心から感じ取る。
やがて説明が終わると、子供達は物資を乗せた馬車と共にそれぞれ村へと向かうのだった。
「実にいい顔をするようになった。が……『欠落』か」
ベルクの言葉に、ナハティガル=ラーは僅かに眉を上げ、資料を思い出した。
「そういえば、『メドゥの指先』の構成員達は皆、何かが『欠落』しているという話だったな」
彼の言葉にベルクは静かに頷く。
「放置できん話とは言え、時間をかけて埋まるものか分からん。……少しでも埋まるよう努力していくしかなかろう」
そういいながら彼女はさっさと『笛吹き』の恰好をする。それにナハティガルは僅かに首を傾げようとしてぽん、と内心で手を叩く。ベルクは子供達に混じっても遜色のない身長をしていた(ちなみに、セディも違和感のなさに目を見張っていた)。
ベルクは「念のため」と言うと子ども達に混じり歩き出す。ナハティガルは頷きながらもちらりと子供達を見た。
(今の所は、『デゼスポワル』として、なんとか居場所を得られてるようだが……)
しかし、彼らは皆帝国の監視下にあり、才能があれば密偵や兵士になる。本人の選択はそこにあるかまでは分からなかったが、ナハティガルは僅かに遠い目をする。
(それを好機、呪縛のどちらで捉えるかは、本人達次第だがな)
ナハティガル自身も似たような境遇であるが故、他人事とは思えない。だが、彼らは皆、本当にいい顔をしていた。
子ども達の話によると、数名の年長者達は既に帝国の兵士や密偵になっているという。それにナハティガルは「そうか」と静かに頷きつつ、僅かに瞳を細めた。
(どうやら、彼らは『好機』と取っているようだな)
「どこも、色々大変だね……。王国も帝国も傷が増えていく」
そう、ため息交じりに呟いたのはトゥーリ。彼女は前の依頼で傷を負っていた。まだその傷は癒えていないが、それでもできる事をと前もって村に入っていた。
村の代表はトゥーリからの連絡に感謝の意を表し、彼女は雪が深くなると手が出しにくい外回りや大物の修理を手伝っていた。確かに傷は痛むが、無理はしないとセディ達と約束している。
今、彼女は器用に手を動かし窓枠の修理をしているところだった。
「こんなものかなー? うん!」
窓枠がガタつかない事を確認し、嬉しそうに顔を綻ばせる。傍らでは、同じく山羊のハーフビーストだろう老婆が「ありがとうございます」と笑顔で
木工や建築の知識を得ている彼女にとっては、やりやすい作業だったらしく子ども達が来る頃には半分ほど終えていた。
笛吹の恰好をした子供達が、馬車と共に現れる。彼らと共に来たベルクとナハティガルは、道中に異変もなく少し安堵しているようにトゥーリには見えた。
物資を受け取るべく集まった大人たちの対応をナハティガルとセディが行っている間、ベルクは子ども達に混じり荷物を運んでいた。
大半の村の人々は純粋に子どもたちの様子に和んだり、一緒に荷物を運んだりしている。感謝の意を表し、共に動く姿は見ていて胸が暖かくなる。だが……。
「おいおい、こんなガキども連れてきてどうするつもりだ? まさか置いてくんじゃなかろうな?」
と疑いをかけてくる者や不審そうな目をする者達もいる。ずいずいと来る男の前に、ベルクが立ちはだかった。
「我らは、レイウェスト殿下とバルディオン将軍の命で物資を届けに来た。事が終われば砦に帰還する」
軍人めいた口調の小柄な少女に言われ、男は渋い顔になる。ベルクの言葉が響いたのか、胡乱な目をしていた者達も視線をそらした。
(少しは、動きやすくなったか)
表立ったトラブルに発展する前に止められたのは僥倖だ。ベルクは子供達と共に荷物を決められた場所へと運び入れるのだった。
「よかった! 2件ほど雨漏り修理を手伝ってくれると嬉しいな。他にもやる事がいっぱいみたい!」
トゥーリが手を振って答える。ナハティガルは数名の子ども達に対し「手が空いているなら手伝え」と声をかけた結果、4,5人の子ども達が彼と共に行動していた。
「井戸のロープを交換しよう。ちょっと解れてきている」
「ここの屋根を修理しておこうよ。ちょっと外れそう」
ナハティガルが井戸のロープを手にとり、考えていると屋根の方を見ていた少年が「これみて」と指をさす。
「俺、あっちの葉っぱが詰まった溝を掃除してくる」
「どれだけ雪が降るかはわからないけれど、やっておいた方がいいよね?」
子ども達もまた、自分からできる事を探し始める。一方、荷物を運んでいた子ども達もまた、トゥーリと共に他にできる事がないか確認していた。
ベルクの言葉で信用したのか、他にいちゃもんを付けてくるような者はいなかった。彼女はこっそりと安堵の息をつき、他の子ども達と共に井戸の修理に混じる。
井戸のロープを交換し、村の人と共に井戸回りの掃除をする。どこか和やかな空気の中、先ほどいちゃもんを付けてきた男も掃除に加わる。
トゥーリと数名の子ども達は村の女性たちに混じり、服の修繕を手伝っている。
屋根修理を行いながら、ナハティガルは子どもたちの様子を見、確かな成長を感じ取っていた。
捕らえられたばかりの頃、か細いイメージがあった子ども達は、預けられた先でヒトとして聊か逞しくなった。
(地に足の着いた、という言葉が合うような気がするな)
あの頃の不安に満ちた目の子ども達はもう、いない。
ナハティガルは、そう確信した。
「え? もういいの?」
「ちょうど大掛かりな物も減ったし、あとは休んでいて欲しい」
トゥーリはセディにそう言われ、目を丸くする。彼はまだ傷が癒えていないトゥーリを気遣っているらしい。
「まだ傷が痛むなら、隣の村で健康診断をしているフィッツジェラルド殿に具合を見てもらう事も出来るが、どうする?」
「もう治りかけだし、大丈夫。まだ動けるよ!」
トゥーリがそう言えば、セディは少し考え……「やっぱり無茶はいけない」と言って彼女へ休憩するようにと飲み物を渡し、敷物を引いて座らせた。
ベルクは子ども達に混じり、年少を装い村の人達と交流しながら作業をしていた。村の人々はごく自然に彼女を子どもと見、色々と話してくれる。
そこでの小さな悩みなどを、ベルクはメモにとり、後からセディに相談しようと考えた。緊急の物、ゆっくり考える必要がある物、そこまで重要でない物と仕分けした上で。
(こういった事も大事なはずだ)
彼女は「若いのに偉いね」と言われながら村の人たちの話を熱心に聞き続けた。
一方その頃。別の村にも越冬用の物資が到着していた。
レビジュが代表者と話している様子を、アリア・ティーダは穏やかな様子で見つめている。
レビジュの傍らには、ナタリア・フィッツジェラルドがおり、厳しい冬を乗り切る為の諮問と答申を行っていた。
トゥーリ達が向かった村には医者がおり、薬師たちが作った薬を渡すだけでよかった。が、彼らが訪れた村には医者がいない可能性があった為ナタリアがこちらに赴いていた。
本来は帝国軍医であったナタリアだが、未知を求める本能から学者の真似事までするようになり、色々な知識を得ていた。
村長からいくつか聞き取りを行ったレビジュが、肩を竦めながらナタリアに報告する。
「お医者さんいなくなったって……。念のため薬についてのレジュメを村長さんに渡しておこう」
「それがいいだろう。私も、防寒具をしても乗り切れない時のサバイバル技能も伝授しておこうと思う」
その後は出張診療所をひらこう、と考えるナタリアであった。
「はいはーい! 物資はこっちに運ぶよ。丁寧に扱おうね~」
アリアは物資の搬入を手伝っていた。中には大きい物もあり、それは率先して運ぶ。
共に働きながら、彼女は子ども達の様子を観察していた。
アリアの目には、子ども達が前に比べいきいきとしていることに気付いた。やはり健全な生活を送れるようになり、彼らのがんばりにより生活水準も少しずつ上がってきているからだろうか?
子供達とふれあいながらも、アリアもまた確かな成長を感じ取っていた。
とその時。ナタリアが彼女を呼んだ。
「ティーダ、村の人たちの中でお年寄りや体調が悪い人、持病を持っている人を先に案内してほしい。できるか?」
「うん、いいよ! ナタリア君も診察よろしくー!」
アリアは出張診療所の事を村の人々に宣伝し、子供達に案内の手伝いをお願いした。
ナタリアは診察をする前にレビジュを呼び、必要な薬の判断を手伝ってもらうことにした。診察が始まれば、真剣な顔で患者たちに向き合う。
(全体的に、栄養失調気味だ。不作の影響なんだろうな)
別の場所ではエーテル浄化の儀式が行われている。そっちに行った弟、キリアン・フィッツジェラルドを始めとする面々が上手くやっているだろうか、とナタリアの脳裏に過ぎる。が、振り払って診察に集中する。
彼女は、傍に控えたレビジュに時折相談し、薬を選んでもらう。患者たちは皆、有難そうにそれを受け取るので「きちんと飲んでくださいね」と優しく付け加える。
穏やかに過ぎていくその光景を見つめていたレビジュが外を見ると、村の人から何かを聞き取っているアリアたちをみつける。ふとアリアと目があうと、彼女は手を振ってくれた。少しうれしくなったレビジュもまた、そっと手を振った。
ある程度仕事を終え、のびをしているとアリアが「おつかれさま」と労ってくれた。
「そうだ、レビジュ君。この前、カイン君を探しに行った際の冗談を覚えてる?」
そう問いかけるアリアに、少年は小さく頷く。
エルフの乙女は、優しく瞳を細めつつも考えながら口を開いた。
彼女は考える。帝国に仕えて貰う事でこの子たちの立場が保障出来るのは理解してる。しかし、裏だけに留めていたら、また同じ闇を繰り返してしまわないだろうか、と。
「それで考えてみたんだ、ここらで表の場所を。それでみんなが。各地と人を自分の目で見て考えれる仕事を誂えるのはどうかなって。長く見守れるような……、そうだね、表向きは帝国直属の孤児院かつ、仕事で復興や商売を行う商会・公団なんか時勢的にもいいんじゃないかな?」
レビジュはその言葉に目を見開くも、暫くの間考え……、その上でアリアを見上げる。
「アイデアとしては、面白いよ! でも、上司に相談してみないと……だね。上司からもっと上の人たちに提案してもらうしかないかなぁ」
ロバの耳をぴくり、と動かしながらレビジュが考える姿を、アリアは微笑ましく見つめていた。
(しかし)
診察が一息ついたナタリアは、天幕から出て村の周りを見渡す。
風に乗って音楽が聞こえた事に表情を僅かに緩めた彼女だったが、冷たい風に頬を撫でられると僅かに表情を引き締めた。
(今年の冬も厳しくなるかもしれないな)
地質的に善さげな所があれば温泉を掘り起こした方が……、と考えてしまうが「博打もいいとこだね」と首を振る。しかし本当に温泉を掘り当てることが出来たならば、観光資源になりそうだ、とも思う。
「温泉……か」
ナタリアは、ちょっとだけ暖かい湯が恋しくなった。
この調子で越冬物資は配達され、整備も整った。村の人々は帝国と子供達、冒険者達に感謝した。
その様子を見ていた子ども達と共に見つめていた冒険者達であったが、セディは僅かに不安そうな目をしていた。それが、ベルクには少し気になった。
「どうした?」
「……少し嫌な予感がしただけだ。心配をかけた」
彼女の問いかけにセディは苦笑し謝罪をしたが……、どことなくその不安はぬぐえていないような気がした。
そんな一面もあったが、特に大きなトラブルもなく物資は村々に届けられた。冬の備えも出来、これで一先ずは安心と言った所だろうか。
●秋の旋律と、祈りの時間
村落への物資配達が行われている頃。儀式の会場となった休耕地では、慌ただしく準備をしていた。
儀式のスタートを心待ちにしている人々の中、リザードマンの少年はエルフの青年と共に儀式の手順を確認していた。
「歌の方は大丈夫?」
「とりあえずは。歌は、覚えるのが早いので」
ブリザラ・ヒャダルの問いかけに、コトヌシ・エルタニンが静かに頷く。
彼らを取り囲むのは演奏を担当する村人たち及び冒険者達。広範囲の浄化と聞き、フォローに入る彼らの目にはやる気が漲っていた。
「いよいよですね」
「えぇ」
トーラが笛を構えながら呟けば、傍らのキリアンも頷く。
「それにしても、浄化儀式の要では1名だそうですが、2名で行うとは大がかりですね」
「今回は『豊穣の雫』がありませんし、浄化する範囲も広いと聞いています。早急な支援が必要と上層部が判断して2名つける事にしたそうです」
キリアンの呟きに、トーラは兵士たちの会話等から聞き取った事を伝える。キリアンの目には、確かに痩せたように見える土地が広がっているように見えた。「これも、幽界樹によるエーテル枯渇の影響ですよね……」と、ぽつり、トーラが零す。
「僕は笛の演奏に自信がありますが、トーラさんはどうですか?」
「演奏を習ったことはありませんが、音楽とは『音を楽しむ』事だそうですし、楽しもうと思います」
キリアンの問いかけに、トーラは笑顔で頷く。
本番前に、彼女は少し練習をしていた。確かに、笛を吹いて綺麗な音がでたら嬉しくなる。それが続くよう、綺麗な音が出た時の感覚を忘れないようにしていた。
(その時の感覚を思い出せば、きっと……!)
そんな二人の様子を見ながら、イズル・M・ヴォルゴールもまたヴァイオリンの調整を行う。その目はとても真剣だ。そして、歌唱で参加するレティシア・レインフィールの姿も。彼女は他の演奏者と打ち合わせをしていた。
そして、とうとう儀式の時を迎える。
エーテル浄化能力者であるブリザラとコトヌシは背中合わせになり、儀式の時を待つ。
(僕とて姉さんと同じ帝国の公僕。恥ずかしい姿を見せる訳にはいかないのは、将軍にセディ殿、それに子供たちと、とにかく沢山の人達ですから)
キリアンは気を引き締め、笛を構えた。
――シャン!
どこかで鈴がなり、キリアンとトーラは同時に笛を奏ではじめる。それに合わせ太鼓も鳴り始めた。
ゆるりと、ヴァイオリンの音色が合わされば、つむじ風を思わせるような音色が、笛や太鼓の音に合わせ踊るような旋律を奏でる。次に加わったのは、嫋やかな歌声。ふわりと程よく混じり、演奏に花を添える。
ブリザラとコトヌシもまた、音色に合わせて舞を舞う。真剣な顔つきで舞えば、なんとなく大地が元気になっていくイメージが脳裏に浮かぶ。
はじめはゆっくりと流れていた音楽が、徐々にテンポを上げる。踊る二人もより楽しそうに笑い、そこに手拍子のはじける音。トーラが楽器を持っていなかった村人に頼み、儀式に参加してもらっていたのだ。
トーラは笛を奏でた。最初はキリアン達の演奏についていくのがやっとだったが、徐々に上手くなっていき、キリアンに合わせることが出来た。
(一緒に演奏するって、楽しいですね!)
そう思いながらちらりと踊りを舞う二人を見れば、額に汗が浮かんでいた。真剣な眼差しをしていた二人だが、徐々に演奏と歌のお陰で表情が明るくなる。
「これで、上手くいけばいいが……」
ふと思いを漏らしたイズルだったが、なんとなく感じる活気に口元を綻ばせた。
演奏も終盤になり、二人の浄化能力者が祈りを捧げる。
最初はゆっくりと、だが、徐々に速度を上げて広がっていくような気配。そんなイメージが冒険者の脳裏に広がる。
演奏が終わり、暫く目を瞑り祈りに集中していた二人だったが、ややあってブリザラがゆっくりと立ち上がった。コトヌシも少しふらつきつつだが立ち上がる。
「儀式は成功したよ。ねっ?」
ブリザラの言葉にコトヌシが頷けば、演奏に加わった者達は歓声を上げた。キリアンたちも顔を見合わせ安堵していると、二人が冒険者達に向かって手を振っていた。
レティシアは、しばし人々の喜ぶ様子を静かに見つめていた。しかし手を振る二人の様子で我に返り、優しく手を振り返す。それにならい、他の冒険者達も手を振った。
秋の風が、優しく頬を撫でる。賑やかな声が村にも響き、物資を運んだ先で手伝いを行っていた面々も、自然と笑顔になっていた。
●ささやかな秋色の宴
演奏会も終わると、小規模だが温かな雰囲気の食事が始まる。
物資の運搬に携わった者たちも加わり、会場から楽しい笑い声が聞こえる。
一仕事終えたナタリアは、その料理に思わず「あたたかくて心も癒される」と呟き、キリアンも笑顔で相槌を打つ。その傍らではアリアがレビジュと話しながら料理に舌鼓を打っていた。
年少を装っていたベルクは村の人々から「よく食べなさいね」と多めに食事を渡され、その様子を見ていたトーラとナハティガルは「なるほど」と納得。一方、トゥーリは子ども達と触れ合いながら楽しく食事をしていた。
子供達もセディもまた、出されたささやかなご馳走が美味しかったのだろう、とても幸せそうな顔をしていた。
そんな中、イズルがにこやかに歩み寄る。
「食事が楽しくなる曲を弾こうか。何がいい?」
彼が問いかけると、子供達は祭りの際使用された曲を強請ったり、夏の思い出等のリクエストしたり。
「もちろんいいよ。じゃあ、まずは……」
イズルは笑顔で応じ、楽し気に曲を奏でる。そうしながらも、彼はちらりと子供達を見、胸の痛みを覚えた。
(責任から離れ、誰かに丸投げ同様の状態で本当にいいのかな……。無責任に助けて、誰かの負担を増やすだけになってないか?)
子供達は、確かに救われ、成長し、今ここで笑っている。だが、あの時抱きしめたあの少年は、ここに居る子どもたちよりも細かった。
演奏を終え、しばし子ども達を見ていたイズルだったがレビジュに声をかけられ我に返る。
「みんな、イズルさんの演奏を楽しんでたよ。ありがと」
「ううん、楽しんでもらえたらそれでいいんだ」
微笑んだイズルだが、レビジュにはそれが少し曇っているように見えたのだろう。不思議に思いながらイズルの目を見る。
「何か、考え事? それとも、何か悩んでいるの?」
「ちょっと、気になる事があってね」
イズルが掻い摘んで少し話すと、レビジュは少し考えながら口を開く。
「結局、僕らは手の届く範囲でしか、色々出来ないんだもの。だからこそ、手を貸し合うんでしょう? 自分に出来ないことは他の人に相談する、力を借りる。冒険者のそういう姿を見て、僕は学んだよ」
そうでしょう? というような眼差しに、イズルは小さく苦笑した。
「そうだよな」
二人はふと、遠くを見る。
なんとなく、思うは遠くにいるあの子の事。
(自分には、説教とか御高説とかは似合わないし、今度会う時は、兄弟みたいに接しよう)
今となりにいるレビジュに接するように。
イズルは今度こそ心からの笑みで頷いた。
イズルの演奏を聴きながら、レティシアはセディや子ども達と食事を楽しんでいた。さり気ない成長を見て心が温まる一面もあり、彼女は自然と優しい顔になる。
だが、ここにいる子ども達はかつて『メドゥの指先』に所属していた。という事は、皆、何か欠落があるという事だ。
(メドゥの右腕の方もそう仰っていたので間違いはないでしょう)
その事をセディに話すと、彼は「あぁ」と少し真面目な顔で頷いた。レビジュがそう予想していたことも聞き、レティシアはそっと胸を抑える。彼女自身も『欠落』を抱えており、過去にとある幹部から勧誘されたことがある。
(……私の欠落はそこでは埋まらない)
己が勧誘を受けたことは伏せ、レティシアは静かに『レビジュの考察』を聞いていた。
「レビジュ様の考察の通り、『メドゥの指先』の人々は何らかの『欠落』があるそうですね。高位の幹部から得られた情報にもあります。……でも、ここにきてそれが埋まり始めたことは、喜ばしく感じます」
「でしょ? みんな、前よりいい顔するようになったんだよ」
そこに現れたレビジュが、イズルに席を進めるとレティシアの方に歩み寄る。
レティシアは思う。目の前にいる少年の『欠落』も、もしかしたら埋まり始めているのではないか、と。それとなく小声で問えば、レビジュは小さく頷いた。
「殿下がご婚約されたのは喜ばしい事だよ。可能ならお祝いに花を贈りたいぐらいだって子供達も言っていたし」
レティシアが何気なく振った話題に、セディは静かに頷き、周りの子供達も「お祝いしたいね」とか「そうなったら、王国のお姫様が帝国に嫁ぐの?」と興味深そうにしたり。
賑やかになる彼らの様子を見、レティシアは微笑みの下で寂しさを覚える。
今の状況が落ち着けば、彼女自身も婚姻する。そうなれば、今のように帝国を訪れる事も難しくなる。
だから、強く思う。今のうちに彼らや帝国の為に力を貸そうと。
「レティシアさんは、何か聞きたい曲はあるかい?」
ふいにイズルが問いかける。レティシアは少し考えたが、自分より子どもたちのリクエストを優先してほしい、と頼む。
そして、彼が他の子ども達からのリクエストを聞き、優しい子守唄を奏でるのを聞きながら……、大森林の方を見た。
(あの方の事は気掛かりですがこの場で訊ねるような事ではありませんね)
僅かに首を振り、レティシアは改めて子ども達の輪に意識を向けた。
●時期に来る冬に、遠い何処かにいる友に思いを馳せて
こうして、とある秋の日は過ぎていく。
子ども達と冒険者達は村の人々に見送られ、ヴァイセントラフ砦へと戻っていく。その道の途中、ふわりと冷たい風が頬を撫でた。
「今年も、雪が沢山降るのかな。雪は苦手だな」
リザードマンであるブリザラが、辟易とした顔をするとナタリアは苦笑した。
「だが、工夫すれば暖かく過ごせる。コートなどの確認をしておくといい」
「セディ先生からもらったマフラーと手袋もあるし、あったかく過ごせるよ!」
そう、子供たちの中から声が上がればセディの耳がほんのりと赤くなる。
「照れているのか」
ベルクがポツリと言えば、セディは僅かに頷き、少女が「かわいい」と小さな声で呟く。
一方、ナハティガルとレティシアは念のために周囲を警戒し、魔獣などに備える。後で交代しましょう、とトーラが言えば傍らでキリアンが頷いていた。
トゥーリが転寝をしている辺りでは、比較的年少の子ども達が一緒に眠っている。その様子にコトヌシが微笑み、毛布を掛ける。イズルはその様子を穏やかな顔で見つめていたが、ふと僅かに曇り始めた空に気付く。
「冬の到来が早いかもしれないって、村の人たちが言ってたよ。……そうなったらこの辺りは馬車で来づらくなるって」
アリアが村で聞いたことを漏らせば、傍らのレビジュが遠くなる村を見つめたまま「今度は春になるのかな」と小さく呟いた。
馬車に揺られ、冒険者達は見張りを交代しながら砦への道を行く。
どんどん曇っていく空の下、子ども達は「雪はまだかな?」「まだでしょ?」等話しながら空を見、冬の話を始める。
そんな様子を見ながら、冒険者達は今日訪れた村の人々が無事に冬を乗り越えられるよう祈るのだった。
(終)
マスターコメント
おまたせしました。
こちら、秋の物資配達&エーテル浄化の儀式お疲れさまでした。
おかげで村落の人々は越冬できそうです。
また、子供たちとの交流もありがとうございました。
きめ細やかな気配りもあり、大成功です。
また縁がありましたら宜しくお願いします。
イベントシナリオ普通 報酬:標準9 / 6〜25人
2023年10月30日 15時10分59秒 公開
大成功