【幻秋】妖精ジュールとお茶会

七海真砂

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シナリオID:3265

オープニング

 カツ、カツ、カツ、カツ……。
 夜、どこからともなく現れた人影が、笑う。
「お前も、強くなりたいのか? では、わらわが相手になろう」
 王侯風の衣装を翻した女の手元で、赤く妖しく煌めくのは一本の剣。
 それは『征竜の虹宝剣』に、とてもよく似ていた。
「――いくぞ」
 嬉しそうに笑って、宝剣を構える女の顔。それは――。

●帝国兵、襲撃される
 古砦都市シャルト。『天霧りに消ゆる幽界樹』の幽界分樹が出現したことで崩壊したこの地は、幽界分樹が打倒され、徘徊するクリーパーの多くが討伐されたことで、復興への道を歩んでいた。
 今は、そう遠くないうちに来るであろう『帝都奪還』に向けて、拠点作りが精力的に進められている。
 そんな中……。

「クーネさんが兵士を襲っている……?」
 そんな馬鹿な、と話を聞いた老婆――アンゼリカは瞬いた。
 クーネさんは今、用事があってケンタウロスの聖地へ出向いていて、シャルトには不在だし……シャルトにいたとしても、意味もなく兵士を襲うような事をするはずがない。
「ええ。ですが実際に怪我人が続発しておりまして」
「何か裏があると考えた方が良いのでしょうねえ」
 只事ではない、何かが起こっている。そう判断したアンゼリカは、冒険者の皆さんのお力を借りましょう、と提案する。

「妖精ジュール、ですか」
「はい。最近目撃されるようになった、新種の妖精? のようで」
 冒険者ギルドへと赴いたアンゼリカは、そこで妖精ジュールについての話を聞いた。
 おそらく、『妖精ジュール』がクーネさんの姿に化けているのではないか――と。
(確かに、妖精ジュールの特徴は兵士の皆さんの証言と重なりますわね。共通しているのは『どこからともなく現れる』こと、そして『強さを求めるかを問いかけてくる』こと。そして、強くなりたいと答えると、嬉しそうに笑いながら襲い掛かって来ること――)
 妖精ジュールは『強いもの』に化けるようだから、クーネさんに化けるというのも、解らなくはないかしら、とアンゼリカは呟く。
 けれど、その一方でよく分からない事もある。

「クーネさんに化けているのだとしたら、服装が違いますわ。クーネさんはいつも遊牧民族風の衣装を纏っていますけれど、目撃談によると、襲って来たクーネさん? は王侯風の衣装を纏っていたそうですのよ。それから武器も違いますわ。クーネさんといえば長大な骨剣……『宝剣マフダル』をお持ちですけれど、襲ってきたクーネさん? は、征竜の虹宝剣に似た赤い宝剣を持っていたそうですから……。……どういうことでしょう???」
 謎ですわね、と唸るアンゼリカ。

●妖精ジュールとお茶会
 ともあれ、それが妖精ジュールだというなら、これ以上兵士に被害が出ないよう穏便に立ち去って貰いたい。
 なんでも妖精ジュールは、お菓子やフルーツなどの甘い物をあげて機嫌をとると、仲良く遊んでくれることもあるらしい。ここはお菓子を用意してお茶会を催し、穏便に穏便に何とかしたいものだ。
「ですので、わたくし、これからクッキーとマフィンを焼いて、お茶会を開こうと思いますの。冒険者の皆様には、万が一の護衛を兼ねて、このお茶会に参加して頂きたいのですわ」
 お茶会にはクーネさん? に化けた妖精ジュールに同席して貰わなければならない。お菓子を手に、妖精ジュールを探すこともお願いしたいとアンゼリカは言う。
「お菓子を一緒に作る方、お茶会会場の準備を手伝ってくださる方も歓迎いたしますわ。せっかくですからね、楽しいお茶会にいたしましょう」

 こうして、ちょっと一風変わったお茶会が始まろうとしていた。

解説

 妖精ジュールを招いて、お茶会を開きましょう。  妖精ジュールはクーネさん? に化けているようです。クーネさん? は、遭遇すると強くなりたいか尋ねてきます。ここで強くなりたいと答えると、クーネさん? に襲われます。  戦闘してもいいですし、しなくてもいいのですが、クーネさん? をお茶会に連れて来て下さい!  お茶会にはアンゼリカおばあちゃんが焼いたクッキーとマフィン、あと紅茶が出る予定です。お茶会をもっと盛り上げてくださるプレイング大歓迎! です!  クーネさん?(妖精ジュール)は、普通にお喋りができますので、何かいい感じにお喋りするのも良いと思います!  妖精ジュールが穏便に立ち去ってくれる等、シャルトの騒動が解決したら成功です! よろしくお願いします! ●アンゼリカ  シャルト奪還の記録を付けにやってきた、役人のおばーさん。  首捧派という、『首刈帝』クジンリーネ・バルダスを武の女神として崇めている信奉者の一人で、そのことを示す赤い布の首飾りを身に着けている。 ●クーネさん  自称記憶喪失のおねーさん。本人は不在です(お茶会が終わる頃に帰って来るかも?)。

マスターより

 こんにちは、七海真砂です。  今回のシナリオは、妖精ジュールとお茶会! 折角の機会ですので、色々やりつつお茶会を楽しんで頂けたらと思います!  それではご参加、お待ちしています。

リプレイ

「妖精ジュール……、穏便に、お茶会……。戦闘、より、その方が、いい」
 うん、と頷いたエルは、調理場として使われているスペースに持ってきた荷物を置いた。ストレガ・L・リベルガストラは、「おおっ氷砂糖があるのだ」と目ざとくそれを見る。
「……使、う?」
「助かるのだ。これでまずクッキーを作るのだ」
 オーブンを温めるのも兼ねて、採って来たクルミを焼き始めると、ストレガはその間に生地を混ぜ始める。
「ココア味? いいわね、プレーンな物だけよりも賑やかになって」
 ココアパウダーを混ぜるストレガの様子に、うんうんと嬉しそうに微笑むアンゼリカ。その手元でもボウルの中身がかき混ぜられている。
「じゃあ、飲み物、を……」
 エルはチョコレートを湯煎すると、連れてきた乳牛から絞ったミルクと混ぜ合わせてホットチョコレートの準備をする。お菓子のお供だから、甘さは程々に整えて。お茶会の直前に温めればよいだけの状態にすると、残ったチョコレートとフルーツカクテルを手に取って。
(ちょっぴりドライにして……チョコ掛けドライフルーツ、とか?)
 フルーツはそのまま出しても良いけれど、もう一工夫して出せないだろうか、とエルは更に準備に取り掛かった。
「クッキーを焼く間に、今度はパウンドケーキの準備をするのだ」
 砕いたクルミを混ぜ合わせ、成形した生地をオーブンに入れたストレガは、南瓜を剥いて濾し始める。マフィンはまた別の味にしましょう、とアンゼリカが手にしたのはサツマイモで、一口大に切ったそれを鍋で甘く煮ていく。
「席のセッティングできたよ~!」
 その間に、お茶会の会場を整えていたトゥーリが顔を出す。シャルトは物資の乏しい場所だけれど、綺麗な布を敷いたり、摘んできた野の花を飾ることで、ささやかだけれど『特別感』のあるテーブルを用意できていた。
「ちょうどクッキーが焼けたのだ。これをお願いするのだ」
「らじゃー!」
 早速、出来上がったお菓子を運んで、会場に並べていくトゥーリだった。

「……あれが噂のクーネさん? ですね!」
 その頃トーラは、五感を総動員して頭上から周囲を俯瞰しながら辺りを探し回り、クーネさん? の姿を見つけ出していた。その前方に回り込むと、クーネさん? の姿を見つめる。
「力が、欲しいか?」
「欲しいです!」
 トーラに向かって尋ねてくる声に対し、高らかに宣言すると、セルリアンエッジとシアンブレードを構える。その返答にクーネさん? はふっと笑って武器を構える。
「では、わらわが相手になろう」
「いきます!」
 トーラは素早く魔矢を飛ばすと、疾風足で距離を取る。遠距離攻撃を持たない相手であれば、これで戦いを優位に運べると判断しての戦略だった――が、
「なるほど、剣を見てそう判断したか」
 クーネさん? が武器にエーテルを込めると炎が迸る。それを足元に振るえば、一瞬のうちにトーラを包囲するかのように炎の壁が辺りを走った。
「これは……」
 ただの炎ではない。移動を大幅に阻害するような力が込められていることを直感すると、トーラはすぐさま一つ目の作戦を捨てた。
 それなら――。
 反対に、至近距離まで踏み込んでの接近戦へ持ち込む。セルリアンエッジとシアンブレードの刃を短く整えて、クーネさん? の懐に入りながら超高速三段連撃を繰り出すトーラの動きに、クーネさん? も素早く反応して武器に再びエーテルを込める。
「ッ!」
 眼前に迫る刃を、トーラはアクセラレイターで回避する。当たると思われたその一撃を見事に避けた身のこなしに、虚を突かれたように一瞬の隙ができるのをトーラは見逃さない。
「やはり、首を狙って来ましたね!」
「ふふ……やるな!」
 再び超高速三段連撃を繰り出すトーラに、クーネさん? は笑ってその攻撃を敢えて受けた。直後、その手の武器が煌めきながらトーラの腹部に叩きつけられる。その寸前でトーラは何とか攻撃の軌道を見切って回避するが、
(先程の一撃といい、今の一撃といい、当たっていたら一発で持って行かれてますね、これ……!)
 クーネさん? の攻撃が命中したら、その瞬間に勝敗は決するだろうと覚悟する。と、その時。
「加勢させて頂いても?」
「! どうぞ!」
 現れたのは、月喰いを構えたヴィルヘルミナだった。その様子にクーネさん? は目を細める。
「わらわは構わんぞ。一人でも、二人でも……三人でも」
「気付いていたか」
 トーラ達の戦いを見ながら、クーネさん? の動きを分析し、戦術を組み立てていたナハティガル=ラーが呟く。一応、物陰を通って背後を取ろうとしていたのだが、察知されてしまっていたらしい。
(それにしても……)
 見れば見るほど女はクーネさんそっくりで、その手にある武器も『征竜の虹宝剣』に酷似している。それらの特徴からナハティガルが想起したのは、ある一人の人物であった。
「ジュール。その姿……クーネではなく、化けているのは『首刈帝』だな?」
「うん? 確かにわらわが『首刈帝』クジンリーネ・バルダスである。……なんちゃって!」
 最後はちょっと茶目っ気を出して答えると、妖精ジュールは武器を振り上げた。エーテルによって煌めくその一撃を、ヴィルヘルミナは魔壁の腕輪から現れたエーテルの障壁で受け止めようとする。それを打ち破ってもなお止まらない衝撃が、ヴィルヘルミナに襲い掛かった。
「っ、これは――強い……ですが」
 全身のエーテルを静め、身体ごと腕を捻ったヴィルヘルミナは反対に神速の一撃を繰り出すと共に、エーテルを一気に開放した。威力を重視したとても鋭い一撃が、妖精ジュールに叩き込まれる。
 それを見たナハティガルは、今が好機だと一気に動いた。
 傷付いた妖精ジュールの側面に回り込むと、超高速三段連撃を刻み込んだ。燃え上がるように眩く輝いた短剣が、目にも留まらぬ速さで妖精ジュールを攻め立てていく。
「やるな。しかし」
 逃がさない。
 反対に繰り出された妖精ジュールの一撃が、猛烈なスピードでナハティガルを斬る。攻撃の軌道を見定めても、見切りきれない一撃を前に、ナハティガルは膝をついた。

「なるほどね。なら、これはどうかな?」
 次の瞬間、妖精ジュールの周囲に現れたのは、光輝を放つ六角形の柱だった。頭上よりも遥か上まで覆うように聳え立つ柱に、むむっと妖精ジュールが苦い顔をする。
「これ壊すの面倒なんだよな」
「ジュール君でも、簡単にとはいかないようだね」
 妖精ジュールを閉じ込めたのは、ヨル・スレイマンだ。ヴィルヘルミナは傷を回復しながら、彼の手にパウンドケーキやチョコレートの入った箱があることに気付く。
「よーう、やってんなぁ!」
「君達も強くなりたいのかな?」
 ヨルと、その傍らで笑うナハシュに目を向け、問いかける妖精ジュールだったがナハシュは首を振る。
「ジュールとバトるのは、こないだやったから俺はもういいや!」
「得体のしれないものに与えられる力はちょっとね」
「得体のしれない……」
 更に続くヨルの言葉に、妖精ジュールはちょっと切なげな顔をした。
「まあ、その。運動はこの程度にしまして……お茶会へお越しになりませんか?」
 曖昧に笑って、力が欲しいかの返答は避けながら、レティシア・レインフィールが誘う。
「お茶会?」
「おう。テリーズ・トラ・トリュースってな!」
 怪訝そうな妖精ジュールに、ナハシュは甘露アリの蜜を掛けた、どんぐりクッキーを差し出す。見るからに甘そうなお菓子に、妖精ジュールの目がキラッと輝いた。
「……動いたらお腹も空いたでしょうし、いかがですか?」
「こういうお菓子が色々あるよ」
 月喰いを構えるのを止めたヴィルヘルミナも一緒になって誘えば、ヨルが持って来たお菓子を取り出して見せる。妖精ジュールはすぐさまお菓子に釘付けになりつつも、「修行はもういいのか?」と冒険者達を見る。
「ああ……決着はついたようなものだしな」
 立ち上がったナハティガルが応える。せっかくだし茶飲み話でもどうだ、と呼びかける声に、トーラもまた頷いて同意を示す。
 妖精ジュールと戦うことを望んだ三人が、揃ってお茶会へと促した効果もあったのか、妖精ジュールは頷くと「では伺おう」と招待に応じた。

「いらっしゃいませ!」
 お茶会の会場を皆が訪れると、トゥーリがすぐさま主賓はこちらへどうぞ! と妖精ジュールをセッティングした席へ招く。色々なお菓子が少しずつ盛り合わせになったお皿が置かれたその席に、座りながら妖精ジュールはホクホク顔だ。
(のほんとしてるけど、あれ相当に強いよね……ホントだったら手合わせをお願いしたかったんだけどな~!!)
 そんな妖精ジュールの様子を見つつ、今一度残念がるトゥーリである。
「あらまあ、本当にクーネさんそっくり!」
 妖精ジュールが来たと聞いて顔を出したアンゼリカが目を丸くし、ホットチョコレートを運んできたエルと頷き合う。そんな彼女達の方へ、「あれはどうやら『首刈帝』に化けているらしい」とナハティガルが説明すると、アンゼリカは声を失った。
「…………!!!!!!!」
 震えながら、崩れ落ちそうになるのを耐えている。妖精が化けているとはいえ、神と崇める首刈帝の姿が目の前にあるというのは、衝撃的かつ感動的だったようだ。
(そんなに……)
 首捧派という宗教には明るくないエルだが、アンゼリカの様子に、彼女達の信仰の在り方を垣間見た気がした。
「……服装が違う、のは、そもそも、クーネさんじゃなかった、から?」
「じゃないかな、ボクが変身したのはクジンリーネ・バルダスだよ」
 ホットチョコレートを置きつつ尋ねるエルに、妖精ジュールは口調を崩して答える。
「肖像画でも見て化けたのかな?」
「ちょっと違うけど、そんな感じー」
 ヨルが差し出すフォークを受け取りつつ、「昔ちょっと見たんだよね」と答えた妖精ジュールは、パウンドケーキを頬張って幸せそうだ。
「ジュール様は、なぜクジンリーネ様のお姿を選ばれたのですか?」
 この姿であることに、何か意味があるのではと考えたレティシアは、確かめるように問いかけてみる。ホットチョコレートを一口飲んで、その味わいを楽しみながら、妖精ジュールは「んー」と、アンゼリカの方をちらりと見る。
「強いものなら何でも良かったんだけど……喜ぶ人がいるかも? と思って!」
 どうやら妖精ジュールには、『誰かに喜んでもらいたい』という意識があったらしい。
「では首刈帝に特別詳しいという訳では無いのか」
「そだねー」
 ああいう人の方がボクよりも詳しいと思うよ、とナハティガルの問いにもアンゼリカの方を見ている。「んじゃ、強けりゃ何にでも変身できるのか?」とナハシュが聞けば、「できるできる」と妙に自信たっぷりで頷く妖精ジュールである。
「じゃあさ、そもそもなんで力試しみたいなこと、しに来たの?」
 お菓子を作り続けているストレガと、その手伝いに入ったヴィルヘルミナが作り上げたマドレーヌを追加で運んできたトゥーリが、それを配りながら首を傾げた。
「試してる訳じゃないよ、強くなって欲しいだけ!」
 できたてのマドレーヌに手を伸ばし、幸せだなぁと妖精ジュールは呟く。
「そういえば、強くなりたいかと問いかけていらっしゃいましたものね」
「うん、うん。だって強くなれば幸せになれるでしょ」
 相槌を打つようにレティシアが告げた言葉に、妖精ジュールが頷き返す。
「君みたいに、強くなろうとしないのは……可哀想だよね……」
 なんだか心底労わるような視線を向けた先はヨルである。さっき、強くなりたいかと尋ねられた時に、得体のしれない力だからと断ったからだろうか。
 ――どうも妖精ジュールには、妖精ジュールなりの価値観があり、それに基づいて行動しているようだ。嘘をついているような気配はなく、いろいろと善意でやっているような節を感じる。
(裏は、特に無いようですね)
 誰かと約束を交わし、このような行為に出ているのではないかと考えたレティシアだったが、そのような何者かの関与も薄そうに見えた。

「ああ、美味しかった。ご馳走様」
 妖精ジュールはカップを置くと、満足そうに言いながら姿を変えた。赤白ストライプの三角帽をかぶった、コロンとした白い球体状の――元の姿に戻ったらしい。
「楽しかったよ~。じゃあボク、そろそろ行くね」
「あの、ジュール様」
 レティシアはお土産にと、チョコレートなどを詰めた籠を渡しながら、次はどちらへ向かうのですか、とやんわり尋ねる。行先によっては、今回のようなトラブルが起こらないように約束ができれば、と考えてだった。
「決めてないー。あ、でもクジンリーネの姿になるのはもう止めておくね。なんだか混乱させちゃったみたいだから」
 次また強くなりたい人に会ったら、何か別の姿になるよ、と言う妖精ジュールの言葉を聞く限り、あまり心配する必要は無さそうだ。「そうだね、それがいい」とヨルも頷いて、
「この時期はどこも菓子を出してくれるから。気が向いたらまたおいで」
「いいねー、またお茶会しよう!」
 ストレガ達が腕によりをかけたお菓子がすっかり気に入ったらしく、ニコニコ笑ってふよふよ漂い、妖精ジュールはどこかへと去っていった。
「なあなあ、誰か絵の得意な奴いる?」
 と、聞こえたのは妖精ジュールの声……ではなく。妖精ジュールの姿をじっくり観察し、卓越した変装技術で同じ姿に化けたナハシュの声だった。その姿は、妖精ジュールの言うクジンリーネ・バルダスに瓜二つである。
「この姿を描いて貰ったら、フィギュアも再現できるだろ? 多分。この剣も一緒にさ」
 謎の宝剣を掲げてポーズを決めるナハシュである。
「それでしたら、絵の上手い兵士に頼みましょう……きっと描いて下さいますわ」
 お茶会に同席した者達の中に、絵の上手い者はいなかったが、ここシャルトには数百名の兵士が滞在している。心当たりがあるらしいアンゼリカが、お茶会用に作ったお菓子の残りをいくらか抱えて、いそいそと兵士を呼びに向かう。
「――な……」
 それと入れ替わるように、シャルトへ戻って来たクーネさんがナハシュを見て絶句し、事情を聴いて「そんな馬鹿な信じられない」とよろよろよろめきながら、「ちょっと風に当たって来る」とまた出ていった。

「……姫妖まで真似るか、あの妖精」
 ぽつりと呟かれたクーネさんの声を聞いた者は、ごくわずかであったという。

マスターコメント

 お疲れ様でした!  妖精ジュールはお茶会を楽しみ、シャルトを去っていきました。騒動は無事に解決です。ありがとうございました!
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準9 / 4〜25人

2023年10月30日 14時35分23秒 公開

大成功

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0