【屍涯】熱砂に眠る秘密【畢命】
炙りとろ左門
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シナリオID:3235
オープニング
【屍涯宮】と古き因縁を持つ魔術師集団【月の塔】の塔主【月の砂】は、彼らの目的を以下のように語った。
「おそらく、【エレウシスの階】を利用するつもりでしょう。……ええ、ですからあなたが方々を探す必要はありません。私の旧知に、その場所を知る者がいますから」
● 砂海の監視哨
ちり、と肌が焼けるような感覚があり、ロヴェルは僅かに眉を顰めた。
「も、もう少しで終わるから」
表情も見えていないだろうに、ロドスはそう辿々しく言葉を紡ぐ。ロヴェルの背に触れる小さな手からはエーテルが伸び、蠢きながら魔紋を刻んでいた。
「――よし、終わり。お疲れさま」
術式が綻びたそばから補修する、その作業は決して楽なものではない。ロドスは額の汗を拭うと、前屈みになっていた姿勢を楽にした。
「……感謝する」
ロヴェルがぽつりと呟けば、ロドスは首を横に振った。
「じ、自分のためだから……。君の治療に手を貸すことも、条件のひとつだし」
王国の安寧を脅かす【屍涯宮】の一員として、ロドスにもまた生死問わずの判断が下されていた。しかし組織の情報提供によって減刑され、今回さらに、キーリから頼まれて『ロヴェルの治療』が追加された。
ロヴェルもまた司法取引によって減刑を得た罪人のひとりだったが、敵の死霊術師の支配下にあると見なされたために処分の対象となっていた。それが単なる『口実』に過ぎないのならばまだひっくり返すこともできるだろうと、ロドスはキーリの頼みを引き受けたのだ。
「僕は……多分、だめだろうけど。治療が済めば、少なくとも君はこれ以上難癖をつけられな――」
ロドスが言い終わらないうちに、部屋の縄暖簾がかき分けられる。二人が振り返ると、そこには目を瞠ったキーリが立っていた。
「あ……!」
ロドスは慌てて、ロヴェルを脱いだ服で隠した。治療のため、彼は上半身に何も身につけていなかったのだ。キーリは頬を染め、「ごめんなさい!」と叫ぶと退室する。
「……」
二人の間に沈黙が降りる。ややあって、ロドスは恐る恐る尋ねた。
「君たちって夫婦、なんだよね。一応」
「……」
「もしかしてまだ――」
「治療が済んだのなら、外に出る」
ロヴェルはシャツに袖を通すと、日除けの外套を掴む。ロドスは哀れなほど小さくなりつつも、彼の武器である細剣を手渡した。
「セウェルスと君の魂や意識を完全に切り離すのに一番大事なのは、親しい人とできるだけ長く過ごすことだよ」
====
「あれ。そんなに慌ててどうしたの」
全速力で走ってきたキーリに驚き、王国騎士アレクシスは小首を傾げた。キーリは肩で息をしながら、真っ赤な頬を押さえる。
「なんでもありません!」
「そ、そう?」
強い日差しの下、アレクシスはキーリを軒下へと移動させた。
シラー砂漠にあるこの監視哨を、道案内役と落ち合う場所に指定したのはモニーだ。先方もすでに承知の上と聞いているが――。
「一応監視哨の視察と捕虜の監視ということでついてきているけど……道案内をしてくれるっていう一族の人、まだ落ち合えないのかい?」
「クレオンですね」
キーリは宿のある方向を振り返った。指定の場所に辿り着いて三日、相手が現れる気配はない。
【屍涯宮】が王国領土から完全に脱したと看做されれば、これ以上追うことはできない。時間がかかれば呼び戻されることもありうる。なにしろ王都の情勢は現在、混迷している。キーリとアレクシスが焦るのも無理はないと言えた。
「【隠叡の一族】……古代遺跡の守護者、か」
アレクシスは考え込む。モニーからの話には未だ半信半疑ではあるが、決着の時が近づいているのは理解していた。
「この戦いに決着がついたとして、君はどうする?」
ふと、アレクシスはキーリに尋ねた。【屍涯宮】との因縁に決着をつけたとしても、問題は山積している。平穏な人生とはいかないだろう。
「決まっています」
だが、キーリはアレクシスの予想を裏切り、即答した。
「結婚式を挙げます。書面で済まされたので」
キーリは頬を膨らませ、アレクシスは顔を上げた先に見つけた人影に表情を消した。しかしキーリはそれに気づかない。
「別に規模の大きい宴席を希望しているわけではありません。なんなら二人だけでも構わないんですから。でも絶対に真っ白なドレスを着て、指輪も作ってもらって、それから」
アレクシスは慌てて、死角となる位置からキーリを小突く。
「なんですかアレクシス、淑女に対してそのような――」
キーリはアレクシスの必死な様子にようやく気づき、その視線の先を辿る。そうして本日二度目となる悲鳴をあげた。
====
一方その頃――。
古代遺跡【エレウシスの階】の守護者クレオンは、皮膚の奥まで焼かれる痛みに悲鳴を飲み込んだ。
「蠍野郎には効かなかったが――人間は当然、燃えるからな」
〈華炎灯し〉イェリアス=フォーティア。【屍涯宮】の幹部であるこの死霊術師は、遺跡を離れたクレオンたちを襲撃したのだ。
「なのに、魂までは焼き切れねえ。どれだけ苛烈な炎を求めても……」
イェリアスが求めた炎は、太陽のように暖かなものではない。魂を浄化するという類のものでもない。必要なのは、理をも燃やし尽くす炎。
「お前……」
クレオンは脂汗を浮かべながら、イェリアスを睨みつける。隠れ里の家族は無事なのか、それを確かめるためにはこの男を倒さねばならない。同行していた里の戦士たちはすでにイェリアスの炎で燃え尽き、なんとか息をしている者たちも、あとどれほどもつか。
クレオンは弾かれたように立ち上がると、味方が取り落とした曲刀を手に斬りかかった。
「魔術師であるならば……!」
「近づきゃいいだろう、って?」
イェリアスは触媒に使った杖を投げ捨てた。そして自ら、間合いに踏み込む。
「残念だが、殴る方も得意でね」
武人の知覚を上回る速度で振り抜かれた拳が、クレオンの鳩尾に叩き込まれた。クレオンはそのまま砂丘を滑り落ち、身悶える。内臓ごと焼かれるような痛みに最早、立ち上がることもできない。
「……?」
花の香りがする。クレオンはあまりに場違いなそれに、揺れる目を凝らした。
赤い花びら。砂漠では見ない花だ。炎のような色、形。
「足りねえな」
頭上から声がする。そしてもう一輪、毟られた花が砂と風に巻き込まれて消えていく。
「あァ――来た」
だがその時、心底退屈そうにしていた男の声が弾んだ。
「やろうぜ、冒険者。お前らなら、燃やし甲斐があるからな」
解説
マスターより
リプレイ
「私たちをひとりで相手取るつもりかい?」
「始末するだけの数と時間が、多少増えただけだからな」
降伏勧告は跳ね除けられ、シルヴィアは軍刀を抜いた。
時間はかけられない――それが集った冒険者たちが出した結論だった。体力を奪われながらの持久戦の結果は目に見えている。且つ相手は永きに渡り研鑽を積み、そも死霊術を極めるような埒外の存在であるからして。
ふと、シルヴィアはイェリアスの風体に目を留めた。これまでイェリアスから花香を微かに感じることはあっても、彼はセウェルスのように目立つところに花を飾っているわけではなかった。彼が忌々しげに首筋から毟り取ったそれは、これまでの邂逅でも目にすることのなかったものだ。
「かわいそうに、花が泣いている」
無惨に握り潰され、散った花弁が砂風にさらわれる。それを弔うように、シルヴィアは詩を紡いだ。シルヴィアにとって、花とは美しく気高いものであり、好ましくも世界から途切れることのなかったものだから。
しかし、ナタリア・フィッツジェラルドは別の考えに至っていた。長く雪薔薇と関わってきたことと、彼女が培ってきた戦術眼が、そのひらめきの一助となった。
ラトニアの体に咲いていた薔薇は、リジーに主導権が戻ったあとは枯れ落ちた。【屍涯宮】の死霊術師が身につける花とその香り。それが単に、所属を示す魔術的な装身具でないのだとしたら。
その時、イェリアスの姿がぶれた。
揺らめく炎がごとく増えた影にナタリアは目を細める。イェリアスたちはすでに動き出していた。冒険者たちもそれに応じる。その時間がゆっくり進むように感じられるほどに、ナタリアは集中していた。
(考えろ! ……何かが……)
引っかかる。これまで培ってきた【戦術眼】が導き出した答えを肯定するだけの材料が、まだひとつ、足りない。
シルヴィアの譚詩曲が味方を鼓舞する。ナタリアの体にもその力が流れてきた。それに応じるように伝家の大鎌を振り上げ、
「――あっちが本物、だな」
スー・ルーが判断を下すと同時に、ナタリアの【超視覚】が同じものを捉える。
イェリアスの首元にあった蕾のひとつが、こぼれるようにひらく。それを認識した次の瞬間、身が焼き切れるかと思うほどの熱に襲われた――。
====
焼き切れ、遠のきかけた意識を、イズル・M・ヴォルゴールは強く手繰り寄せる。イェリアスの攻撃を受けたのだということを理解した後の行動は早かった。
イズルはクレオンのそばに駆け寄り、手を伸ばす。指先が熱い皮膚に触れた瞬間、エーテルを流し込んでその生命力を活性化させる。クレオンの表情が歪んだが、痛覚が復旧する程度にまで回復したと判断し、さらに【ヒール】で治療を続ける。
「皆は……!」
クレオンの状態が安定すると、イズルは顔を上げた。ナタリアの【ホーリー・リチュアル】の効果もあってか仲間たちはまだ倒れていない。この間に救護を進めるべく、イズルは立ち上がった。
その脇を、ローザリカ・L・ディオールが駆け抜ける。
「なるほど、字の如く陽炎というわけか」
強い日差しによって出来る影もなく、移動によって砂が舞い上がることもない。外見だけであれば見極めは厳しいが、注意深く観察すれば看破できる。
それから導き出される結論として、閃光塗弾によるマーキングは本体相手でなければ意味をなさないだろう。
ローザリカは不敵に笑み、大きく踏み込んだ。
「前回は後れを取ったが、僕は負けるのが嫌いでね」
陽炎には目もくれず、イェリアス本人と真正面からぶつかる。
「言っとくが、俺は女だろうと手加減はしねえからな」
イェリアスが拳を作り、ローザリカは脚にエーテルを流して応えた。
「僕もそのつもりだ。だが、見惚れてくれるなよ。面倒な男がいるんでね」
ローザリカとイェリアスがエーテルの火花を散らした横で、フリューリングスルフト=ティエラが蹴りつけた地面が崩れた。
狙うは陽炎だ。そこからさらに増えるというわけではなさそうだが、瞬時の判断を鈍らせるものははやめに処理しておくのが良い。
ひらりと舞う。吹く風に逆らうも従うも、フリューの頓着するところではない。彼女自身が緋色の風となって、陽炎を翻弄する。
「最後まで、派手に遊ぼう!」
この苛烈な炎よりも緋く、赫く、鮮やかに輝く。その先の彼に追いつくには、それが必要だ。
一撃を【エーテルバリア】で防がれる。だがそれは予想していた。もう一撃で腕を飛ばすように振り抜く。揺らめく影は、しかし確かにエーテルの干渉を受けて引き裂かれた。
『情熱的なことで』
あくまで幻影の類であるはずの陽炎の表情が歪む。それに、フリューは笑って応えた。
「運命って、決めちゃったさぁ」
胎の毒が死を齎すよりも疾く、夙く、残りわずかの命を燃やしてでも、終幕を目指したい。
そのためには、この炎を超えなくては。
振りおろした一撃が幻影の太ももを深く切り裂く。肉を裂く類の手応えは感じないが、フリューにとっては瑣末なことだ。
『運命、ね。アイツはそれを疎んでいたように記憶しているが……』
言葉を残して幻影が解ける。そのまま仲間のもとへ駆けつけようとしたフリューの行手を、しかし、同じゆらめきが塞いだ。
幻影からさらに幻影が生まれることはないが、術者がいる限りそれが尽きることはない。
新たに現れた幻影は、複雑そうな表情でフリューを見つめている。
『いつから考えを変えたのやら。それともお前が変えたのか? ……まァ、それほど興味があるわけじゃねえけどな。ここで燃え尽きる程度なら、それまでだ』
幻影がエーテルを手繰る。奔る炎の中を、フリューは駆け抜けた。
● 炎華の生涯
「あの花、魔法を使う直前に開く――いや、成長しているように見える」
癒やしの力を周囲に満たしながら、ナタリアはイェリアスの元に向かおうとするシルヴィアへ声をかけた。そして、さらに言葉を続ける。
「花はただ美しいだけではない、それは君もよく理解しているはず。ベレスでも、そうだった」
シルヴィアはナタリアの言わんとしていることを察し、表情を引き締めた。
「……心しておく。クレオンたちを頼むよ」
そう答え、シルヴィアはローザリカたちの加勢へ向かう。その背中を複雑な表情で見送ったあと、ナタリアはイズルを振り返る。
「そちらは?」
「おかげさまで大丈夫だけど……!」
イズルはクレオンを助け起こしながら、フリューが戦っているほうへと首を巡らせた。
生成される幻影はフリューに上手く取り付いている。このままでは攻めあぐねてしまう。
「なら、こっちで請け負う。見分け方があるんだろう?」
意識がはっきりしてきたらしいクレオンが、剣の柄を握りしめた。そしてまだ起き上がれるほどには回復していない戦士を二、三人示して続ける。
「悪いが、あいつらも治してくれるだろうか。全員で囲めば、分身程度であれば相手にできるはずだ」
「あなたたちを助けたのは、戦わせるためじゃ……!」
「生き残るために、必要だ」
クレオンの申し出に、イズルはぐっと唇を噛んだ。ナタリアに目で意見を求めると、ナタリアは呆れたようにため息をついた。
「狙われているのは卿であるが?」
「本体を叩けなきゃジリ貧だ。それに、助けてもらった命は決して粗末にしないと約束する」
「……私が指揮を執ろう。生存率も上がるはずだ」
ナタリアはそう受け入れ、イズルへと目配せする。
「残る者の治療はこちらで。君はシルヴィアたちに加勢してもらえるだろうか」
「……わかった。気をつけて」
イズルは思案ののちにクレオンを立たせ、持っていた戦槌を空高く掲げた。
「わかりやすいのは好きだぜ」
スールはイェリアスの戦い方をそう評価する。対してスールは今回、ローザリカのサポートに徹していた。【スタティックフィールド】でイェリアスの機動力を制限した後は、ローザリカを巻き込まない程度に爆炎で足元を狙い、砂を巻き上げる。
巻き上げられた砂は大気中に飛散し、幻影の姿を鈍らせる。それを原理ではなく、現象として理解する。
「ああくそ、めんどくせえ!」
「ぐっ――!」
思うように戦えないことに痺れを切らしたイェリアスは、ローザリカにエーテルをまとわせた拳を叩き込んだ。ローザリカは咄嗟に腕を前で組んで頭と心臓を庇ったが、びりびりと体全体に伝わる衝撃に膝をつく。
「ローザリカ!」
シルヴィアはローザリカの状態を気にしつつも、クレオンたちへ射線が通らないよう上手く立ち回る。そしてイェリアスの横っ腹へ【エーテルブロー】を叩き込んだ。
「君は、その炎で何がしたいんだい?」
【エーテルバリア】でそれを相殺したイェリアスに、シルヴィアは疑問に思っていたことを尋ねる。
「君からは、彼ほどの執念を感じない」
イェリアスにも目指すところはあるのだろう。【屍涯宮】の面々が、数百年の永きに伏してまで成し遂げたかったことがあるはずなのだ。それに殉ずる意思を見せたのは三人。ラトニアはともかく、クレトスとダモスはどちらかといえば兄弟子本人に執着している様子だったが。
「ハ――なんだと思う?」
「教えてくれないのかい? つれないね」
互いに間合いを取る。もっとも、イェリアスのほうは大して動けはしない。そこへスールの放った呪詛が命中した。
「てめっ……」
スールとしてはわかりやすいほうが好みだ。イェリアスもそうだろう。だからこそ、スールの攻め方は効果覿面だった。イェリアスの気が逸れたその一瞬の隙を、ローザリカは見逃さない。
体の内側から燃やされるような苦痛に耐え、ローザリカは間合いへ踏み込む。直後にイェリアスの拳が側頭部を狙って振り抜かれ、がつんとローザリカの視界が揺れた。
――が。
「淑女に対しても本当に容赦がないな。だからこれは――仕置きだ!」
燃えるように赤い髪を靡かせて見舞ったのは、淑女神拳ケレス流【天岳颯衝】。つまるところは後ろ蹴りだが、下段から上段へ振り抜かれた一撃は相手の顎を打ち抜いて、頭を揺らす。
「魔術師を相手にするためにわざわざ格闘戦を選んだんじゃない」
【ライフアンカー】によって得られた猶予は、その思惑通りにイェリアスをよろめかせる。
「僕が蹴りを得意としているからだ」
そして、彼女のために場所を譲る。
こちらへ真っ直ぐに向かってくるフリューは、服も髪もところどころ焦げ付いていた。イェリアスはその接近を感じ取ると、憎々しげにフリューを睨みつける。
【エーテルバリア】は打ち止めだ。幻影もナタリアの指揮によって次々と無力化されている。であれば、受けるしかない。
フリューの【トリプルファング】が炎を切り裂いた。三段目がイェリアスの胸を深く切り裂く。
「「足りない……!」」
フリューとイェリアスの声が重なった。決定打には後一歩届かず、踏みとどまったイェリアスは死者の魂を焚べる。強引に術式を組んだせいか、イェリアスが伸ばした右腕が消えた。
その光景に、シルヴィアは目を瞠る。空になったローブの袖から溢れたのは花だ。
「いけない、イェリアス!」
彼が止まらないこともわかっていた。シルヴィアはそれでも声を張り上げる。
その直後、スールの放った魔法がイェリアスの背後を起点に爆発した。
砂煙が視界を奪う。散った花弁はまるで火の粉のように煌めき、やがて燃え尽きた――。
● 決戦の地へ
戦いが終わり、イズルはクレオンとともに遺品を集めると死者へ短い祈りを捧げた。魂がすでにそこにないことは予想ができた。イェリアスが最後に焚べた魂は、おそらく彼らのものだろうから。
魂の在処に関わるイズルの問いについて、イェリアスは短く答えた。
『知れば、穏やかに生きることは叶わない』
そのイェリアスのそばには、シルヴィアがついていた。
「魂を焼き尽くせるだけの炎に、なりたかった」
そう先の問いに答え、イェリアスはシルヴィアを見やる。砂まみれの袖の中がどうなっているのか、シルヴィアは敢えて確かめることはせず、言葉を待った。
「そうすればアイツも――馬鹿みたいな望みを追わずに済んだ。……かもしれないな」
「イェリアス……」
シルヴィアが用意した水を、イェリアスは固辞する。
「とっとけ。アンタを生かす水だ」
「だからこそ、だよ」
澱みないシルヴィアの答えにイェリアスは少し驚いた様子で、最期に呆れたように笑って手を伸ばし――その指先が届く前に、散った。
「……君の願いを、覚えているから」
風に攫われる前に一輪、花がらを拾う。シルヴィアはそれをハンカチにつつみ、懐へしまった。
安全な監視哨に一度引き返し、冒険者たちは机を囲む。だがクレオンはひどく焦っている様子だった。
「悪いが、すぐに戻らなければ。死霊術師は二人だった。残る金髪の男に……里はすでに襲われているかもしれない」
クレオンとその同胞たちは、【エレウシスの階】を守護する役目を果たしていたという。その昔にある隠者が光の階をのぼり天上へと至ったという伝承が残るその遺跡について、ロドスは「実態はエーテル整流器」と語る。
「……つまり?」
スールは隣に立つロヴェルに解説を求めた。
「伝承の真偽はともかく、エーテル変換の効率を上げるために利用するつもりだろう」
ロヴェルはそう言いつつ、難解な魔術式が書き連ねられた紙を机上に広げる。
「これがセウェルスたちが用いるだろう魔術式だ。これを、」
そして広げた紙の上から澱みなくペンを滑らせた。
「……このように上書きすることで破綻させる」
「魔術師なら誰でも扱えそうか?」
スールが顎を擦って尋ねると、ロヴェルは柔和に目を細める。
「そのように設計はしている。希望するなら、教えよう」
冒険者たちがこれまでにロヴェルとロドスの両名を確保したことで、対抗手段が完成した。交わされるやり取りを見て、まだ希望は残っているようだとキーリは胸を撫で下ろす。
「では、すぐに向かいましょう――」
セウェルスが遺跡を手に入れる前に間に合えば良し、叶わずとも儀式は止めねばならない――キーリがそう口を開いた直後、天地が一瞬、大きく揺らいだ。
その場にいた全員が異変を確信する。実際には、空も地面も揺れていない。大気や大地のエーテルが大きく乱れたのを感じ取ったのだ。
一行は慌てて建物の外へ出た。人々のざわめきと視線の先、夕闇の中、細い光が天に向かってまっすぐ伸びている。
天への扉は叩かれた。ぬるい風が災いを運んでくる。
まるで塔のように輝く光の近くで、宵星が輝いていた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2023年10月05日 10時55分59秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのローザリカ、よろしく頼もう。 純粋な戦闘ではあるが分身のせいで強敵が実質2体。 戦力を平等に分けるのか、あえて偏らせて片方ずつ仕留めていくかを決めるべきかな? 見抜くのは極めて困難そうだが、戦場的には他に必須な一般スキルもなさそうだし 余裕があれば魔術知識や看破などで見抜けるか各自試してもいいのかもしれない。 死霊術師との長期戦は此方が不利。 別の相手(前々回のクレトス)ではあったが実際に悔しい思いもしたし、 僕は極力攻めに回りたいと今のところは考えている。 もちろん、作戦を相談しながら柔軟に動きは変更予定だ。改めてよろしく頼もう。
No.2
よぉ、俺だ。 久しぶりに別行動にならなくていいやつか?わかりやすくていい。 俺としちゃ、見分けがつかないなら片方確実にぶん殴る方が好みだが、 何人でも出てくるってんならずっとハズレを引くこともあるってこと……だよな? 誰か、本物に印つけておけるような何か持ってねぇかな、そしたらわかりやすく殴れんのによ……
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 >〈陽炎〉の分体 本体が持つ能力は使えないようだし、敢えて接近戦を挑むことで〈華炎〉等のスキルを使用するか否かを確かめる……という手もあるかもしれない。イェリアスは近接戦闘が得意なタイプで、〈華炎〉使用にデメリットも無いのなら使わないのは怪しいし。 イェリアスの各能力はまだ私達には分からないだろうから、戦闘中に確認していく事になるかな。汎用スキル等を使って見抜けるか試してみるのも賛成だよ。 >戦力を平等に分けるのか、あえて偏らせて片方ずつ仕留めていくか 分体はキャスターとしてのスキルも使えないのかな? 本体との判別が難しいようだから、どちらと戦う事になっても対応出来るように平等に分けるのが良さそうだと思ったよ。 失敗条件が「クレオンの死亡」だから、クレオンを守る人も必要そうだ。 >本体に印 ショップに売っているインクを掛ける、というのが見た目に一番分かり易いかもしれない。格闘術が得意なようだから避けられる可能性もあるけれど……。 私も今回は出来れば攻めに回りたいなと考えているよ。 勿論今後の相談次第で変更予定だ。
ヒーラーのイズル・ヴォルゴールです。 このシリーズは大変興味がありましたが参加の機会に恵まれず、今回純戦闘との事で失礼ながら参加しました。 よろしくお願いします。 現状ピュアヒーラーの宣言がまだないのでまずはそちらに。 失敗条件にあるクレオンさんの回復にまずは全振りします。他の戦士の方の回復は範囲回復他考えておきます。 敵はスキルで精巧な分体を作れるそうなので、一番真似しがたい匂いで探せたらと思ったので超嗅覚を積んでおきます。
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 今回は半分以上がヒーラーで、最大参加人数は6名か…… 分身の識別はそれこそ看破くらいでしかなく、炎の魔術である以上サーマルアイによる識別は極めて困難と言えよう。 分身の見栄えは精巧とはいえスキルの行使は出来ないから、強いて希望的観測を言えば声とかを発しない所を見抜いて識別出来れば善いものだが…… 攻撃面の強化に際してはインフィニティロアの温存の為にも輝刃でも使って無理矢理力押しという事にして、他にはクレオンを護る為にスケープセイントの持参を考えておく。
シーフのフリューリングスルフトさぁ、フリューって呼んでもらえると嬉しいさぁ。 よろしくね! 分身かぁ、厄介やね。平等に分けてどちらにも対応出来るようにってのもええと思うし。 けど長期戦は不利やとも思うから、人数も少ないし、短期決戦集中攻撃で片方を確実に倒してからっていうのも良い気がして……迷うさぁ。 うちは近接攻撃しか出来ないから、希望は攻撃側で。 本体だったらガンガン攻撃するし、分身やったらサポートやフォローさせないように回避集中で張り付くっていうのを考えてるさぁ。
イズルが範囲回復を、ナタリアがスケープセイントと輝刃(とインフィニティロアかな?)を持って行ってくれる事、有難い。 >持って行く予定のスキル イェリアスはキャスターだから時間稼ぎにはならないかもしれないけれど、一手は封じられる筈だと光縛封を考えているよ。もう一つの特性スキルは速攻を目指して物魔撃のアークインパルスを持っていこうかな。 アクションスキルはヒールと、輝足か魔錆。汎用スキルはイェリアス判別用の洞察と砂地対策にバランス感覚の予定だ。どれもまだ考え中だから変更するかもしれない。 イェリアスの本体と分体、何方の対応になるかが分からないのが悩ましいね……分体出現の瞬間を見られたら良いけれど、炎や砂煙で目くらましされそうな気もする。 私は目の前にいるイェリアスを叩いて、倒せたらもう一人のイェリアス討伐に加勢するつもりだ。もし班分けするなら、イェリアス対応のA班・B班とクレオン護衛班かな。今回は冒険者の人数が少なめだし、集中攻撃で片方を確実に倒してからという短期決戦も良いなと思うから今後の相談次第で。
クレオン殿の回復や、支援について助かるよ。頼りにさせて貰いたい。 本体に物理的に印を付けるのも試みて損はないと思う。 僕の攻撃手段は近接格闘になるから接近時に閃光塗弾をぶつけられないか試してみようかな。 攻め手に欠けてしまうよりは片方ずつ確実に、の意見が多いだろうか。 本体を見分けるための工夫も各自する方針だしそれで作戦を固めても良さそうに思ったよ。 >持っていく予定のスキル 片方ずつ仕留めるのであれば、最初の1体は速攻をかけたい。 少人数で1体を抑え続けるのは苦しい戦いだろうから。 ゆえに、ライフアンカーを自身にかけて無理矢理でも攻撃を押し通そうと思っている。 攻撃の主力は 究極的説法(物理)で、それが切れたら鋭撃。 それ以外のスキルは装甲防御を持つかヒールを持つかで悩み中。 相手がデバフも豊富なキャスターだから解呪あたりも悩ましいんだが 今回は攻撃に集中して削り切る動きをしたいので僕が持ち込む優先度は低いかな、と。
間が空いて申し訳有りません。 初手はクレオンさんをリヴァーオブヴァイタルで回復します。 周囲に他の戦士がいる時は範囲回復、いない時はクレオンさんをヒール4で追い回復等、生命が全快になるように努めます。 クレオンさん回復後は一緒に村の戦死の回復に移行しようと思ってますが、皆さんへの回復に手が回るか不安な事と、あと同行した村の戦士の皆さんの回復タイミングが遅れてしまう等、少し課題は残っています。 一番の問題は回復に寄せるとキャスター以下の生命になるので防御スキルを持ちたいので状態回復スキルはどなたかにお願いしたく思います。
改めて、皆の方針は了解。 では私はイズルの回復が追い付かなかった際の保険に改めてスケープセイントで少しでも余裕を持たせたり、攻めに出るローザリカのサポートに輝刃を付帯といこう。 命中に補正が全くかからないという意味では輝腕も持っていく事も考えるが、どうしたものかな…… 今回、シルヴィアやローザリカ、フリューが攻撃役を買って出る以上、イェリアスの華炎への備えとしてハイパーヒーリングオーラかホーリーリチュアルで回復支援をするつもりだが。 どちらも発動タイミングが異なるものだから、こっちもこっちで考えさせられる。 そこに関しては回復役のイズルと連携しつつだな……ヒール4を取り下げて堅甲で対魔法に備えるのも選択肢に入れるつもりで。
短期決戦を目指し最初の一体は速攻を掛ける旨、了解だ。 >ヒーラーの皆の特性スキル ローザリカがライフアンカーと究極的説法(物理)、イズルがリヴァーオブヴァイタル、ナタリアがスケープセイントとハイパーヒーリングオーラ又はホーリーリチュアルの予定だね。 それなら私は初手で皆にインフィニティロアを付与しよう。もう一つのスキルは攻撃役の回復の一助になるようサイドヒールに変更で。BSに罹患した場合のために解呪も持って行くね。 キャスター相手にBSが付与出来るか悩ましいのもあるし、魔錆は止めて攻撃も兼ねた毒撃にしようと思う。エーテルブローも持って行く予定だ。
短期決戦、最初の1体は速攻やね。 イズルさん、クレオンさんの回復対応ありがとうさぁ。 片方を速攻で撃破するとして、もう片方を自由にさせないよう、皆が速攻をかける方とは逆の方に張り付きに行こうと思うさぁ。 ブンブン飛び回ってクレオンさん達の方へ行ったりもう片方のフォローの邪魔&片方撃破までの時間稼ぎは出来る……はず……。やと思う。たぶん。
出発も近いのにすみません。 OPを読んでて「内臓ごと焼かれるような痛み」というのがスリップを表してた場合、他の方のBS解除をお願いすると作戦である速攻に支障が出ると思いました。 なので、範囲回復を取り下げ「サルベーションオール」に変更します。 クレオンさんは回復次第俺と一緒に行動、他の倒れてる戦士の回復に務めると同時に、死霊術師と戦う皆さんの回復をしようと思います。
No.14
一体ぶん殴ってもう一体にいく、了解だ。 取りあえず俺は……自分に近い方から殴るからな。 見分けられそうなの看破か超嗅覚ぐらいなんだよ ヴォルゴールが鼻きくなら俺は看破の方が良いか? 足場悪ぃだろうし片方はバランス感覚しときてぇんだよな。 スキル。 カースと、魔霞と、魔糸。爆炎とエーテルバリア、あとなんか……魔道の潮流? いつもならスタティックフィールド持ってくけど、今回は移動阻害要らねぇ気がするんだよな
先日の私の書き込み、イズルの範囲回復について抜けていたみたいでごめんね……! イズルのスキル変更について、了解だよ。サルベーションオールを持って行ってくれるなら、私は解呪をやめて戦闘用のスキルにしよう。 元々ヒールは持って行くつもりだったし、サイドヒールについてもアークインパルスに戻すかも。出発まで色々考えてみるね。 看破は「隠蔽されたモノ、隠れた存在などを感知・看破する際に補正が得られる」スキルだったかな。 戦場は見晴らしの良い砂地というのと、格闘が得意なイェリアス(と分身)が隠れるかが悩ましい所だ。ただ絶対隠れないとは言い切れないし、それぞれ違うスキルを持って行った方が見分けられる可能性が高くなるかも。スールの持って行きたい方で良いと思うよ。