サウゼルの薬師

おおくまねこ

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シナリオID:3209

オープニング

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「エピスと申します。私の村が悪徳商人に目を付けられて危機に陥っています。どうか助けてください」
 その日、ゴールディ自治区の冒険者ギルドを訪れた依頼人は怪我をしており、腕をギプスで固定していた。名はエピス。ホブゴブリンの女性で、薬師をして生計を立てているのだという。

「私は薬師をして生計を立てております。この腕は、何者かに襲われて出来た怪我です。少し、私の話を聞いていただけますか?」
 エピスは腕に怪我をした経緯を語り始めた……。

●
「月光花を、あるだけ貰いたいんだが」
「え、月光花ですか? ありますけど、全部?」
「ああ、可能な限りたくさん分けて欲しい。いくらでも出すから」
 
 突然現れた恰幅のいいゴブリンの言葉に、エピスはきょとんとした。月光花とは、サウゼル大樹海で取れる薬草の名だ。「捨てる場所がない」と言われるほど優秀な薬草だが、サウゼル大樹海以外の場所ではあまりとれない貴重な品である。とはいえ、サウゼル大樹海のすぐ近くに住むエピスにとっては身近な草なので、村人にこの薬草を使った薬を処方する際は、かなり良心的な価格に設定している。男の態度にきな臭いものを感じたエピスは尋ねてみた。

「あの、あなたの村で疫病が流行っているとかなら、薬を作りますけど……」
「いや、薬ではなく月光花が欲しいんだ」
「……」
「ええと……」
 エピスが戸惑っていると、ゴブリンは見せつけるように、ドン、と金貨の詰まった袋をカウンターの上に置いた。

「私はラグロイ商会の社長なのだ。つまり、金持ちだ。代金はこの場で現金で支払おう。相場の2倍……いや、3倍出してもいい。もし君が月光花の群生地を知っているなら、その情報も言い値で買い取ろう。こんな寂れた村ではなく、シルバードに引っ越すことだってできる額だ」

 それは、ゴールディに住むゴブリンにとってはとても魅力的な提案だった。ゴールディ自治区はゴブリンの国だが、首都シルバード以外の地域の治安は非常に悪い。首都シルバードもマフィアファミリーが抗争を繰り広げているので他の国と比べれば決して治安が良いとは言えないのだが、文明人らしい暮らしができるシルバードに憧れるゴブリンは多い。

「その……ありがたい申し出ですが、お断りします。あなたにはお売りできません」
 だが、エピスは丁重に男の申し出を辞退した。出会ってまだ数分だが、エピスはこの男とは、相容れないものを感じていた。
「何故だ!?」
「私はお金の為だけに薬師をやっているわけではありません。全部売ってしまうと、村の人も困りますから……」

 エピスが薬師をしているのは、薬師として最期まで人々に尽くした、今は亡き師(ゴブリン・ロード)の志を継ぐためだ。それに、お金持ちになったからと言って、この村を捨てることはできない。ここは自分が生まれ育った土地であり、師が愛した土地でもあるからだ。

「5倍でもいいぞ」
「いえ、そういうことではなくてですね……」
「チッ。……分かった。出直そう」

 男は舌打ちすると、すごすごとエピスの家から出ていった。エピスが薬草の採取の途中で石を投げつけられ、右腕を骨折したのはそれから数日後のことであった。

●
「それからしばらく、樹海には近づいていません。その……また襲われたらと思うと、怖くて……」
 エピスはうなだれた。片腕を怪我しているのであれば、仕事どころか日常生活にも差し支えるだろう。程度にもよるが、エピスの骨折は魔法ですぐ治るような怪我でもない。

「ラグロイ商会のこと、少し調べました。どうやら、ラグロイ商会の地元の村では貴重な薬が高騰しているみたいで……きっと、連中が買い占めてるんだと思います。皆さん、どうか、ラグロイの悪事を暴いてください」

●
 ここは、エピスの村の隣の村。周囲の景観を完全に無視して建てられたシャルガネ風の武家屋敷では、悪徳商人ラグロイと、彼と懇意にしているマフィアの頭目、マダム・パラソルが密会をしていた。

「マダム。今月分のみかじめ料です」
「いつもすまないね。おや、先月より多いじゃないか」
 渡された金貨袋の重さにマダムは思わず口元を緩めた。

「心ばかりのサービスでございます。あの、田舎娘(エピス)の腕を折ってくれたのは貴女様でしょう?」
「おや、知ってたのかい。あいつがいるとあんたの商売のジャマになりそうだったからね。ちょいと部下に脅かすように命令したのさ。監視してる奴の話じゃ、それっきり、樹海には近づいてないみたいだね」
 マダムと呼ばれたゴブリナはスパー、と紫煙を吐いた。ラグロイ商会は薬の高額転売だけでなく、様々な悪事に手を染めている。屋敷には悪事の証拠がたくさんあるため、地元のマフィアをファミリーごと抱き込み、屋敷を厳重に警護させているのだ。

「素晴らしい! お心遣い痛み入ります。さすがは美しく聡明なマダムだ。私の経営手腕(ちから)と、マダムの暴力(ちから)が合わさればまさに無敵です。これからも、共存共栄して行こうではありませんか」
「ああ。アタシらもこんな片田舎のマフィアで終わるつもりはない。せいぜい甘い汁を吸わせてもらうよ、フフフ……」

解説

目標:悪徳商人を成敗する。 舞台:サウゼル大樹海近くのゴブリンの村 依頼人:ホブゴブリンの薬師エピス ●登場NPC エピス 非授恵者 依頼人。優れた薬師だが悪徳商人に目をつけられ、腕を折られた。 ラグロイ・エチーゴ 非授恵者 薬を買い占め、高額で転売している悪徳商人。シャルガネ文化に傾倒しており、武家屋敷のような御殿を立てている。戦闘に巻き込まれた場合、煙玉を投げて逃亡する。見つかった場合は冒険者を買収しようとする。マダム・パラソルに気があるらしい。 ラグロイ商会 ラグロイが経営している商会。かなり儲かっている会社だが、麻薬の密売や、マフィアを使った地上げなども行っているなどの黒い噂も絶えない。最近のトレンドは薬の高額転売。 屋敷には転売のみならず、悪事の証拠がたくさんあるので、ラグロイはマフィアファミリーを丸ごと一つ雇って厳重な警備をしている。 用心棒の先生 ウォーリア LV45 ラグロイに雇われたシャルガネの戦士。シャルガネのサムライを自称しているが実際には農民出身。ただし、腕は確か。武器は屋内でも取り回しのよい小太刀。 マダム・パラソル キャスター マフィア『ブラッディパラソル』の女頭目。ラグロイと毎晩のように密談をしている。仁義とかにはあまり興味のないタイプのマフィア。脳筋ではなく、絡め手にも長けた魔術師。なお、ナイスバディな美人ゴブリナである。 ブラッディパラソルファミリー 数十名 ラグロイが屋敷の警備に雇ったマフィア。全員非授恵者。見張りが数名外におり、侵入者を察知すると屋敷の中から大量に出てくる。ちなみにファミリーのトレードマークは血染の日傘。 ●ラグロイの屋敷について シャルガネの武家屋敷のような構造をしている。一階建てで、広い中庭がある。場所はエピスの村の隣の村。

マスターより

こんにちは。おおくまねこです。今回は薬の高額転売を行っている悪徳商人を成敗しにいく依頼となります。

リプレイ

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 ギプスで腕を固めたエピスの痛々しい姿に、ギャメルは胸を痛めていた。
(もしオレらの家でいっしょに暮らしてたら、エピスはこんなめにあわずに済んだはずだよな)
 ギャメルはつい出かけた「すまねぇ」という言葉を飲み込む。
(ここでオレが謝るのは、苦渋の選択をした母さんとエピスの養育者に失礼だよな。兄として、冒険者として、オレが言えるとすりゃこれだ)
「任せときな。またエピスが安心して働けるようにするぜ」

「随分と狡い真似をするものですね。大人しく手を引いてくれれば良かったのですが」
 ヴィルヘルミナはラグロイ商会の狼藉にため息をついた。
「小鬼(ゴブリン)が小鬼(ゴブリン)を食い物にする。――それが現実、か」
 ナハティガル=ラーは沈痛な面持ちで呟いた。依頼人の話を聞く限り、恐らく今回の一件に、メドゥの指先やら、帝国過激派やらは関わってはいない。これはただ、ゴールディという国に『蛆(うじ)』が湧いた――それだけの話だろう。

「薬師って言ってもいろんな人いるからね……」
 トゥーリは肩を落とした。彼女は親友の医学者を思い浮かべていた。彼は高い職業倫理観を持ち、同族の未来を憂いる高潔な医師であり、薬師だ。それとは根本的に異なる、ラグロイ商会のあまりにも汚い手口にトゥーリは落胆を隠せなかった。

「エピスちゃん、その腕、自分で手当したのならおじさんにも診せてもらいたいな」
 ディレイン・オールドケイジは一歩前に進み出た。
「え? は、はい。自分で処置しましたけど……」
 エピスはディレインの言葉が予想外だったのか、戸惑っているようだ。

「薬師としての腕が気になるというか……悪い意味じゃなくてね。悪い奴に抗える気概のある人は向上のための苦労も惜しまないでしょ、そんな人の技術を見るのはおじさんのためにもなるって話」
 ディレインは柔和な笑みを浮かべた。
「ヒールで治せるなら今治すぞ。オレも診たい」
(痛かったろうな……折れた骨が変な風に治っちまうと厄介だよな)
「ワタシも、『リヴァーオブヴァイタル』なら用意してきました」
 すると、ギャメルとトゥーリもずずいっと前に出てきた。エピスは別室に連行され、急遽診察を受けることとなった。

「これでよし、と」
 ヒーラー三名がエピスの骨折を確認したところ、変な風にくっついたりはしていなかった。ヒールをかけておいたので、五日もすれば動かせるようにはなるだろう。

●
 エピスの診察を終えたヒーラー組が戻ってくると、 マフィアファミリーに籍があるハヤト=ガラン=ヴォルファングと、パン屋店主のルアンナ・ミュラー(血の気の多い冒険者達)は早くもラグロイの屋敷への討ち入りの相談をしていた。

「ずいぶんと悪どい商売してくれるみてぇじゃねーか。こいつぁマフィア(ヴァイオレットレオン)の出番だな! カチコミだ!」
「転売ヤー滅ぶべし、慈悲は無い!!」
 そこで、理知的なゴブリンであるストレガ・L・リベルガストラが口を挟んだ。
「まあ待つのだ。ラグロイを締め上げるなり、そいつの屋敷をひっくり返すなりすれば、たぶん悪事の証拠は掴めるであろう。だが、万が一空振りだったら大問題になるのだ。ここはひとつ、討ち入り前に外堀りを埋めておこう」
 ストレガは討ち入り自体は否定しなかったが、まずは情報収集をすることを提案した。その言葉に冒険者達は頷き、まずはラグロイ商会についての情報を集めることにした。

●
「連中の狙いが月光花とその群生地にあるのであれば、エピスさんの動向を見張ったり後を尾けたりする者がいるかもしれません」
「その可能性はありますね。月光花の群生地の様子も確認しておいた方がいいでしょう。待ち伏せされているかも。エピスさん、協力していただけますか?」
「はい、分かりました」

 トゥーリとヴィルヘルミナはエピスと一緒に、月光花の群生地の状況を確認することにした。目的は二つ。一つは、エピスに監視がついているかの確認。もう一つは、月光花の群生地にラグロイ商会が張り込みをしているなら、そこで返り討ちにして悪事の証拠を掴むことだ。

「もし見張りがいるなら、エピスが樹海に入ろうとする時に追跡しようとしてくるはずです。ハヤトさん、ヴィルヘルミナさん、お願いします」
「よし、俺はエピスを尾行すればいいんだな? 任せとけ」

 トゥーリはエピスと共に樹海をうろつく役だ。エピスは骨折しているし、一人付き添いがいる程度ならそこまで不審には思われないだろう。だがトゥーリは囮で、本命はハヤトとヴィルヘルミナの二人だ。この二人がエピスとトゥーリを尾行することはエピス本人にも知らせていない。
 ……。
「やっぱついてたな、監視」
「ええ、そのようです」
 ハヤトがぼそぼそと小声でしゃべると、ヴィルヘルミナがその声を拾った。もっとも、ハヤトには聞こえていないので一方通行のやり取りだが。やはりエピスにはラグロイ商会の監視がついていた。鼻の利くハヤトと、超聴覚を装備してきたヴィルヘルミナは遠距離からの尾行であっさりと監視者の存在を看破した。

「立ち居振る舞いからして、ただのマフィアだな。どうする?」
「襲ってくる気配が無いならば、討ち入り決行直前に捕縛しましょうか。しばらくは泳がせておきましょう」
「だな。見張りが急に消えたら警戒されちまうだろうし」

●
「流れの商人のフリをして色々聞いてきたよ。ラグロイ商会が高価な薬の高額転売を行っていることは間違いないようだ」
 ディレインは深いため息を吐いた。ディレインやナハティガルが近隣の村や商人ギルドで事実確認を行った結果、確かに薬が高騰したり、品薄になったりしていた。一方、ラグロイ商会傘下の薬屋では、品薄になった薬が相場の5倍、ひどいものは10倍ほどの値段で売られていた。

「ラグロイ商会と組んでいるマフィアについても調べてきたのだ。ブラッディパラソルはブラックデスの系列の組で、この辺りを統治しているマフィアらしい。……思ってたよりさらに酷かったのだ」
「……つまり、本来なら商会を止めるべき立場であるはずのマフィアが、一緒になって甘い汁を吸っているというわけですか」
 ストレガの言葉に、ヴィルヘルミナは目を細めた。
 ――ゴールディはブラックデスを頂点とする五大マフィアが国を取り仕切っており、地方自治も五大マフィアや、その傘下のファミリーがやっているのだが、辺境では地元の代官もといマフィアがやりたい放題やっていたりすることも珍しくない。

「……ラグロイはクロで間違いねえみたいだな。シルバードまで通報しに行くって手もあるけど、今回は後回しでいいよな?」
「ええ、そんな悠長なことをやってたら親玉が逃げちゃうかもですし、私達で屋敷に直談判(殴り込み)しに行きましょう」
 ハヤトが尋ねると、ルアンナは鼻息を荒くしている。
「屋敷の場所はすでに調べてある。今夜行くか?」
 ナハティガルが問うと、冒険者達は皆頷いた。

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「金を工面してきたんだ。ラグロイに合わせてくれよ」
 ギャメルは、ラグロイの屋敷の前にやってきた。正門の前には見張りのマフィアが二人。そして頑丈そうな門が行く手を遮っている。
「なんだ、貴様は?」
(警戒されてる。催眠術は無理だな。なら……)
 ギャメルはリュックを下ろし、ごそごそといじりはじめた。警戒したマフィア達がギャメルを注視した瞬間、背後から忍び寄っていたハヤトとナハティガルがマフィア達の後頭部をぶん殴り、意識を刈り取った。

「――反応を複数捕捉した。三十……いや、四十人はいるだろう。うまく連中の注意を引いてくれ」
 ナハティガルはエーテルを飛ばし、屋敷の中の気配を探る。そして、屋根伝いに屋敷の奥へと進んでいった。
「では、始めましょう」
 ヴィルヘルミナは閃光塗弾を構え、いつでも投げられるようにスタンバイしている。

「派手にいきます! タマぁ、殺(と)ったるわ!!」
 ルアンナは杖を振りかざし、光の蝶の大軍を召喚した。蝶は次々と屋敷に突撃し、門を粉々に粉砕した。するとたちまち、ガラの悪いゴブリン達が屋敷の中から次々と飛び出してきた。
「てめえら、どこの組のモンだ!?」
「それだけの人数でウチに上等こくたぁ、覚悟はできてんだろうな!?」
「これでもお医者さんだからねえ……薬草の買い占めや高額転売なんてする奴ら、黙って見過ごすわけにはいかないんだよね。しでかしたコトの重さ、わかってもらおっか」
 ディレインは目を細め、祭刀を握り締めた。

●
「組長! カチコミです!」
「なんだって!? どこの組だい!?」
「不明です! 数はたった数名! ですが、凄腕です!」
「チッ! 出会え! 出会え! しっかり働きな、タダ飯喰らい共!」
 マダムは部下達に指示を飛ばした。
(おそらく冒険者だな。くそ、エピスの見張りは何をしてたんだい)

「ま、マダム! 私はどうすれば……」
 怯えた様子のラグロイはマダムの服の袖を掴んだ。
「アンタは倉庫にでも隠れてな。アタシらは外に出て迎撃してくる。アンタの用心棒を貸せ!」
「は、はい! 分かりました!」

●
 ――数分後、屋敷の入り口には一矢報いることもなく戦闘不能となったゴブリン達が積み重なっていた。

「やあ同胞、ストレガなのだ。マフィアではないが冒険者が来た意味お解りだろう。悪政を為すマフィアの存在は看過できない。ゴールディに住む同胞として秩序を為さん」
 頃合いを見て、ストレガは屋敷の天井を狙い、【氷嵐】を炸裂させた。凍てつく冷気の嵐は屋根瓦を木端微塵に粉砕し、天井に大穴を開けた。
「証拠は掴んでいる。手を出さなければ生かして帰せる。マダムパラソルとラグロイの身柄を渡すのだ」
「ううっ!?」
 ストレガの魔法の威力にビビるゴブリン達。すかさず、トゥーリはゴブリン達目掛けてメテオライトを叩きこんだ。光の雨に撃ち抜かれ、哀れ、ゴブリン達は無惨な肉塊に……ならなかった。破壊されたのは屋敷だけだ。トゥーリが放った光の雨は、屋敷の壁や床だけを穴だらけにしていた。
「降伏して。次は当てる」
「こいつら、授恵者だ! 俺達じゃ勝てねえ!」
 すっかりビビったゴブリン達は蜘蛛の子を散らすように屋敷から逃げ出そうとした。しかしその時、屋敷の奥から、ヒステリックな女ゴブリンの声が響く。

「何逃げようとしてんだい、この役立たず共が! お前達、それでもマフィアかい!」
 ヒュオッ!
 女の怒号に紛れて放たれた、空気を切り裂く鋭い音を聞き、先頭にいたハヤトが咄嗟に身を躱す。すると、すぐ後ろにいたヴィルヘルミナが旋風に切り裂かれ、戦衣が血に染まった。
「……気を付けて下さい。この二人は手練れのようです」

 現れたのは、サムライ然とした出で立ちの剣士と、(屋内なのに)日傘を差した妖艶なゴブリナだった。
「曲者共め。成敗いたす!」
「子分達をずいぶん可愛がってくれたみたいじゃないか。まとめてお返しさせてもらうよ!」
「成敗はこっちの台詞だ! ガランに代わって成敗してやらぁ!!」
 ハヤトは大地を蹴り、勢いよく用心棒の剣士へと突っ込む。が、急にコース変更し、マダムの方へ突撃した。

「本命はこっちだ! 超高速鷲掴みバイパー!!」
 ハヤトの腕が蛇のようにうねり、マダムの豊満な胸元へと伸びる。しかし、ハヤトの腕はエーテルバリアによって阻まれ、鷲掴みの夢は儚く散った。
「このセクハラ野郎!」
「くそっ!」
 マダムの怒号にハヤトは舌打ちし、横っ飛びでマダムから距離を取った。
「こいつら、けっこう強そうだぞ! 油断は無しで!」
 ギャメルは警告を発しながら、ヴィルヘルミナにヒールをかける。たちまち傷が塞がっていった。

「斬!」
 用心棒はヴィルヘルミナの横をすり抜け、横一文字に刀を振るう。巻き起こった衝撃波により、ギャメルとディレインが切り刻まれた。
「この用心棒は危険ですね」
 ヴィルヘルミナは用心棒に突進すると、太刀を唐竹割に振り下ろした。白銀の刃は用心棒の肩口から腰までを一気に切り裂き、血の花が咲いた。
「み、見事……!」
 その鮮やかな太刀筋に見惚れたのか。用心棒はそう呟いてこと切れた。

「……冗談じゃないよ! こんな化け物共だったとは!」
 一瞬で用心棒が殺されたことに驚いたマダムは、重力場を放つと、踵を返して屋敷の奥へと逃げ去ろうとした。
「逃がさない!」
 トゥーリはマダムの背中目掛けてメテオライトを放つ。すでにエーテルバリアを浪費していたマダムは背中に光弾の直撃を受け、甚大なダメージを受けた。
「マダム! 逃がすと思いますか?」
 ルアンナはダッシュでマダムを追いかけながら、勢いよく雷の槍を投げつけた。
「ぎゃああああ!!」
 直撃を受けたマダムは黒焦げになり、地面に倒れて動かなくなった。
(あれ、死んじゃった?)
 マダムは捕縛しようと思っていたルアンナはあせった。だが、すかさずディレインがマダムにヒールをかけたため、マダムの心臓は再び動き出した。
「ごほっごほっ」
「彼女にはまだ聞かなければいけないことがあるからね。まあ、どうせしょっぴくんだけどさ」
 ディレインはビクビク痙攣しているマダムを冷たい目で見下ろした。

●
(表の方は片付いたようだな。静かになった。……妙だ。ぽつんと、一人分だけの生命反応がある……これは、倉庫か?)
 エーテルで周囲の気配と地形を探りながら、慎重に屋敷を捜索をしていたナハティガルは妙な気配に気づき、倉庫の中へと突入した。するとそこには、よく肥えたゴブリンがブルブル震えていた。

「貴様、いくらで雇われた!? 三倍、いや、五倍! 出そう! 儂の用心棒に……」
 ナハティガルはラグロイの言葉を無視し、顔面を殴りつける。
「あびゃ!」
「アンタがラグロイだな。殺されたくなければ、神妙に縛についてもらおうか」

●
「ラグロイとマダムは無事捕縛されたよ。これで、もう薬の高額転売なんてなくなるだろう」
 ディレインはエピスににっこりと笑いかけた。
「皆さん、本当にありがとうございました」
「エピス、その腕はもういいのか?」
「はい、お陰様で」
 ギャメルが問いかけると、エピスは完治した手を閉じたり開いたりした。
「また転売ヤーが出たらギルドにご一報を。潰しに来ますので!」
 ルアンナはぶんぶんと杖を素振りしながら言った。

「月光花の群生地……もう悪用されないように何かした方がいいんじゃないかな……」
 トゥーリがぽつりと呟くと、ストレガも頷いた。
「警備レンジャーでも派遣してもらえるように報告書に書いときゃいいんじゃね? 今回の一件は代官の不祥事だ。ブラックデスの幹部も目を通すだろ」
「そうだね。書いとこう」
 トゥーリは頷いた。
「いつかはゴールディも暮らしやすい国になるといいですね」
「ああ、俺達ゴブリンもそう願っている」
「うむ、法の支配や倫理の浸透には時間がかかる。地道にコツコツやっていくしかないのだ」
 ヴィルヘルミナの言葉に、ナハティガルとストレガは頷いた。

マスターコメント

これにて一件落着!
ショートシナリオR

ショートシナリオR易しい 報酬:標準8 / 4〜8人

2023年09月21日 09時57分10秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ギャメル

    ヒーラーのギャメルだぜ。みんな、よろしくな。 買い占めとか転売ってのは許せねぇよなー! それが薬みたいに、命にかかわるもんならなおさらだぜ! さて、どういう作戦でいこうかな。 今のところ思いついてんのは、薬を買いたがってるフリをして、ラグロイ商会が高額転売してるってのを確定情報としてつかむ、とかかな。

  2. ナハティガル=ラー

    シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 >方針 俺はエピスから得た情報を元に、周辺の村や町で月光花を取り扱う商人達から情報収集してみるつもりだ。 ラグロイ商会による高額転売が確定できたら、帳簿等の物的証拠を押さえる為にラグロイの武家屋敷に侵入する方向になるだろうか?

  3. ナハティガル=ラー

    ……すまない、依頼で重体となってしまった。 情報収集や物的証拠の捜索などには差支えないと思うが、戦闘となった際は足手纏いにならぬよう隠蔽状態からの支援が中心になると思う。 大変申し訳ないが、宜しく頼む。

  4. トゥーリ

    トゥーリだよ、よろしくね! ナハティガルさんはお大事に…… ラグロイ商会の悪事の証拠を一回抑えてから、改めて成敗する流れかな? 証拠を抑えられれば商会にダメージは与えられそうだけど、やっぱり本人を捕まえるのが一番かな…… となると、調査とか囮みたいな活動がメインになるのかな! ワタシはどっちでも(すぐに討ち入る流れでも)構わないよ!

  5. ルアンナ・ミュラー

    キャスターのルアンナです。ナハティガルさんはお大事にして下さいね…! 腹黒商人ラグロイとマダムパラソルは生きたまま監獄に送りたいですね。その他は叩きのめしますけど。

  6. ディレイン・オールドケイジ

    ヒーラーのディレイン・オールドケイジ。よろしく。 お医者さんをやってる身としては、薬の買い占めも高額転売も、何やってくれてんのって感じなんでまあ頑張りますよ。 毎晩のように密談してるって話だから、屋敷にお邪魔すればラグロイもマダムもいるのかな。 ラグロイは戦闘始まったら逃げようとするみたいだから、そこをナハティガル君におさえてもらうのもありかなって思ったよ。

  7. ヴィルヘルミナ

    ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 随分と傍迷惑な方々ですね。 ナハティガルさんは重体ですか。お大事に。 商会の中を調べれば証拠は沢山みたいですね。 ひとつでも押さえれば、向こうも黙ってはいないでしょうから。先に手を出させれば叩きのめす大義名分は立ちますね。 証拠を押さえて、ラグロイとマダムを確保すれば良い感じでしょうか。

  8. ギャメル

    ナハティガル、お大事にな! ラグロイは強くないけど、逃げられねぇよう注意だな。 初手の光縛封でラグロイや他の敵を閉じ込めても楽に戦えそう。魔法で壊されちまう可能性もあるんで、過信は禁物だけどな~!

  9. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。よろしくなのだ。 戦いはするのだが用心棒とマダム以外は非授恵者であることには注意しなければならんのだ。 加減しないと殺してしまうのだ。特にラグロイ。

  10. ストレガ・L・リベルガストラ

    まあ、マフィアが他人の腕折っといて慈悲も何もないのだが、ラグロイだけは生かして捕らえねばとな。

  11. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! ナハティガルは大丈夫か? 無理すんなよ。 悪徳商人と悪徳マフィアの成敗が任務だな! まずは証拠押さえてから一網打尽にする感じか? んじゃ、俺は用心棒のサムライとやらをシノビの技でギャフンと言わせてやんぜ!!

  12. ギャメル

    >非授恵者の敵 うん、ストレガの注意点は大事だな! あとは、異変に気づいた見張りが騒ぎ立ててる間にラグロイがさっさと逃げちまう、みたいな展開になるとリカバリーがキツイかもな。 見張りに気づかれない、または、こっそり無力化する用意があると、良い感じだな。 具体的な方法は考え中〜。

  13. ギャメル

    オレの個人行動はこんな感じになりそうだぜ。 見張り対処 金を工面してきた客のフリして、見張りに接近 ヒュプノシスで無力化して、拘束と猿轡 ついでに服や日傘も奪っとく 戦闘 初手でラグロイに招霊呪怨縛(束縛&呪い) 退路を塞ぐ位置に移動

  14. ディレイン・オールドケイジ

    屋敷の中から大量に出てくる前に、こちらから突入って感じかな? 大御所は奥のほうや広い部屋にいそうな気がするし、そこまで行く間に遭遇した構成員にはおとなしくなってもらおうかな。物理的に。

  15. ナハティガル=ラー

    すまん、前回の発言から間が空いてしまった。 >行動 前回の発言同様、 ①エピスから得た情報を元に、周辺の村や町で月光花を取り扱う商人達から情報収集。 ②ラグロイ商会による高額転売が確定&武家屋敷の所在が判明したら、宗波で武家屋敷の構造調査&索敵。皆と情報共有。 ③隠蔽状態宣言。物的証拠を押さえる為にラグロイの武家屋敷内を捜索。 以上の流れを予定している。 物的証拠の捜索と確保が主体となる。 戦闘になった際、用心棒やマダムに対してはタナトスバイトによる不意討ち、非授恵者に対しては素手や短剣の柄頭で無力化を試みよう。 何とか皆の足を引っ張らぬよう細心の注意を払って行動するつもりだ。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0