【泥乱】ギシュム族集落防衛戦
岩岡志摩
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シナリオID:3092
オープニング
ギシュム族の集落は若手戦士達を中心として、防戦準備に追われている。
先の帝国近衛連隊による雲霞鳥(うんかちょう)への攻撃は失敗に終わった。
雲霞鳥達は巣より無数に湧き出て、空を埋め尽くすかのようにして周囲へ進撃している。
そう遠くないうちに、この集落にも雲霞鳥の群れが押し寄せるのは確実だった。
ヴァーロゥム達は帝国近衛連隊の者に雲霞鳥への陽動を頼まれ、冒険者達の助けも借りてその役割を全うしたものの、その後起きたことに衝撃を受ける。
――征竜の巫女イネスは偽者だった。
――語っていた話もまた、その大半が偽りのもの。
その事実を前に、ヴァーロゥムがイネスに向けていた感情は失望へと変わる。
失意のままヴァーロゥムも防戦準備に従事するが、ある出来事が彼の立ち直りを促すことになる。
●取引
それは集落内における有力者会議での話から端を発した。
メイレと名乗るその女性は、少し前に雲霞鳥への陽動を行っていたヴァーロゥム達と接触し、自身の魔獣を狩った件で支払いを求めたことがある。
その際に襲来した雲霞鳥の群れを、救援に駆けつけた冒険者達と共に撃退した。
その後冒険者達との交渉で、ヴァーロゥム達を集落まで護送し今に至る。
既に大酋長アシムベート・グリオウは集落の守りを若手戦士達に託し、手勢と共に出陣したため、集落に残る有力者達がヴァーロゥムと共に応対していた。
そしてメイレは代金としてある人物の身柄引き渡しを求める。
メイレの話では、その人物「プドル」は過去ターミル族と騙り、ある貴族の義勇兵に加わっていたという。
その後プドル達義勇兵は、メイレの故郷を含め周辺の集落や村で暮らす人々に犯罪者の汚名を着せ、虐殺した。
メイレはその証拠を提示する。
確かにプドルという人物はこの集落で暮らしている。
しかしターミル族を騙り他所の地で虐殺を働いた話など、有力者もヴァーロゥムも聞いていない。
証拠が本当だとしても、現段階でトラブルになっている相手はヴァーロゥム個人で、集落全体ではない。
そうした意見が主流となり、メイレの要求は却下された。
メイレはその決定を受け入れ、静かに会議の場から去るのを見たヴァーロゥムは、その後を追いかける。
ヴァーロゥムは、メイレの双眸が異様な光を宿していたことに気づいていた。
●対峙
そしてヴァーロゥムは、ちょうど人通りの少ない小道でメイレに追いつき、呼び止める。
既にメイレは、先の会議で仇と名指ししたプドルが暮らす家屋近くまで迫っていた。
「今お前と揉めているのは俺個人だ。個人の問題を集落全体に広げないでくれ」
これ以上ギシュム族全体を巻き込まないよう、ヴァーロゥムは釘をさす。
「あの会議での話が本当だとしても、同胞に手を出す真似は俺が許さない」
――その場所で起きた犯罪は、その地を治める領主が裁く。
そんな建前を横に置き、ヴァーロゥムはあえて自身の意思で語る。
「この防衛戦が終わるまで、俺は集落で暮らす同胞達を一人たりとも死なせない。それが大酋長より俺達若手に託された使命だ」
それはイネスの嘘が明らかとなり、打ちのめされても変わらない、ヴァーロゥムの信念だった。
「族長候補と言われたこともあるが、俺はその器じゃないだろう。できること、託されたことを全うするしか能がない若造だ」
――だからせめて、その使命は全うしたい。
「もしそいつを殺したいというのなら――俺を倒してからにしろ」
自分の言動がメイレの怒りに火を注ぐ結果になりかねないことを、ヴァーロゥムは承知している。
それでもヴァーロゥムは集落が滅ぼされることも、何かを言い訳にして同胞を見殺しにすることも容認できなかった。
だからヴァーロゥムは、メイレに立ち向かう。
「俺の同胞に手を出してみろ。その首を叩き斬ってやるぞ!」
間違っていることは、はっきりと「違う」と言える意志の強さと。
状況に呑まれることなく、自身の死も覚悟の上で集落にいる人々を守ろうとする姿と共に。
「プドルだけがこの集落やリザードマン全ての意思だと思うな。この世界はそこまで狭くない」
ヴァーロゥムはそう言ったが、1つ勘違いをしていた。
「よく言った」
突然ヴァーロゥムを称賛する声が届く。
それはヴァーロゥムを追い、事態を見守っていた若手戦士達の声だった。
その場に集まった若手戦士達はヴァーロゥムを守るように、メイレと対峙している。
どんなにヴァーロゥムが打ちのめされても彼を慕い、共に歩む若手戦士達もいる。
ヴァーロゥムは一人ではなかった。
「……いつもそうだ」
メイレは押し殺したような呟きのあと、激情に燃える瞳を若者達に向け――。
「いつも貴方がたは片方の言い分しか信じない!」
感情を爆発させた。
●奇縁
メイレの叫びと迫力を前に、ヴァーロゥムや周囲の若者達は思わず身をすくめる。
「そんな言葉を並べ立てて私たちを排除し、都合が悪いことはなかったことにしたがる!」
メイレの怒号はその周囲にも響き、思わず人々の手が止まる。
「散々奪いつくして、貴方がたの所業を美談に変えられ、大切な人達を犯罪者だと貶められて殺された私が反撃してはいけないと言い続けた!」
ヴァーロゥム達には叫びの内容が理解できなかったが、その近くでメイレの叫びを聞いたある人物が、密かにその場から逃げ出す。
その人物こそ今しがたメイレが名指ししたプドルだった。
「貴方がたは理不尽を押し付けることが許されて、私たちだけ理不尽を返すことが許されないなど――」
メイレはその場にいる全員へとむき出しの感情を叩きつける。
「断じて、認められるか!」
その叫びをヴァーロゥムが真っ向から受け止めると、メイレは徐々に静まっていく。
「――そう言いたいところですが」
それまでの激情が嘘のように、メイレは顔に手を当て深々とため息をつく。
少し時間をおいて、メイレは言った。
「いいでしょう。あの仇に手を出すのは控えます」
その答えを聞いたヴァーロゥムはメイレとの交渉を再開し、ある約束を取り交わす。
――この集落の危機が去るまでの間、両者は共同で雲霞鳥達と交戦し集落を守る。
――代金は集落の防衛が達成された後、その分も含め金銭で支払う。
「どちらにしても、死なれたらこちらも困りますので」
メイレはその1点を理由として、動員できる配下と共に一時協力する道を選んだ。
その間にもギシュム族集落では防衛準備が再開し、近隣の冒険者ギルド支部にも使者を向かわせ、増援要請を行う。
後ほどメイレの増援としてやってきた者達の内、スアと名乗った女性はヴァーロゥムにこう言った。
「もしかしたら、あの方に気に入られたのかもしれないわね」
ギシュム族集落の防衛戦が始まろうとしていた。
●選択肢
今回の選択肢は以下の2つになります。
1:集落外北側でヴァーロゥム達と共に敵を迎撃。
2:集落外東側でロコと共に敵を迎撃。
●今回の敵
雲霞鳥×多数(通常個体が複数。大型個体4体)
一定数以上集まった雲霞鳥は薄い靄に包まれ、この靄によって雲霞鳥達は強化される。
今回の雲霞鳥達は既に薄い靄を纏い、大型の特異個体によって能力がさらに向上している模様。
大型個体は空を飛ばず地上を高速で走行する。
全ての個体が嘴や爪で攻撃し、遠距離攻撃はしない。
PL情報:参加人数によって倒すべき雲霞鳥(通常個体)が増える。
解説
マスターより
リプレイ
先の帝国近衛連隊による雲霞鳥(うんかちょう)の巣への攻撃は失敗に終わり、雲霞鳥達は文字通り雲霞のごとく巣より湧きだし、周囲への進撃を始めていた。
その一部はここギシュム族が暮らす集落にも押し寄せてきたが、救援要請に応じた冒険者達が、ギシュム族の若手戦士ヴァーロゥム達と共に雲霞鳥達を迎え撃つ。
最初に戦端がひらかれたのは、集落北側だった。
靄を纏う雲霞鳥達が飛来し、地上からも大型個体が地面を蹴立てて突っ込んでくる。
「さて、いかに大型で高速で走れようとも、足を潰せばいかようにでも料理できよう」
ベルク・オスマットは大型個体に狙いを定め、まずはその機動力を潰しにかかる。
「脚させ潰せば集落に被害が出ることを抑制できるし、放置しても問題なくなるはずだ」
突破させないことを心に定めたベルクは、狐惑乱舞によって常に止まることなく動き続ける。
相手を惑わし、狙いを絞らせない攪乱戦術を駆使したベルクは身を低くして、地を這うような動きで大型個体との距離を詰めていく。
ベルクは大型個体からの蹴りを真横に跳んで躱すと、神材の短剣に不可視のエーテルを纏わせて刃を形成し、大型個体へと斬りつける。
ベルクの斬撃は大型個体の身を斬り裂くとともに、刃を形成していたエーテルが大型個体へとまとわりついて、その身を急速に蝕み始める。
その結果を確認したベルクは、狐惑乱舞を駆使して大型個体から距離を置いた。
ベルクが大型個体と激突する間に、他の冒険者達はヴァーロゥムと共に他の雲霞鳥達との交戦を始める。
「……偽りの巫女イネス。すごく綺麗な人だったそうですし、所謂傾国の美女……ですね」
ふとラティア・ミゼリアは征竜の巫女を名乗っていたイネスのことを考える。
イネスはその美貌だけでなく、巫女という偽りの立場とその弁舌によって、リザードマンの若者達から支持を集めていた。
(不謹慎とわかってはいるけれど、少しだけ憧れます)
――私は無駄に大きいだけなので。
その部分だけは内心の呟きに留め、ラティアは意識を眼前へと引き戻す。
「……不謹慎はここまで。集落のため、頑張ります」
ラティアはヴァーロゥム達に同じ方角への攻撃を呼びかけ、自身もハートスナイパーの弦を引き絞る。
――私みたいなのでも、いないよりマシなはず。
ヴァーロゥム達より矢を放つ響きが湧き上がり、靄の中にいる雲霞鳥達へと殺到する中、ラティアもエーテルを籠めた光の矢を撃ち放つ。
ラティアが放った一射は、そのまま雲霞鳥達の中へ撃ち込まれて炸裂し、無数の光破片と化して周囲にいる雲霞鳥達へとその威力を炸裂させた。
攻撃を浴びた雲霞鳥達が血霧を撒いて失速し、地面に叩きつけられる中、アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトも追撃をかける。
「雲霞鳥共め! 墜としまくってやるぜ!」
味方の攻撃で地面に叩き落された雲霞鳥達は一部まだ息があったものの、アルベルトは自身の戦略眼より飛行する敵を倒すのが良策と判断していた。
「集落の人々を護ってみせるぜ」
そのままアルベルトは竜骨の長弓を頭上で飛行する雲霞鳥達に向け、竜鉄製の鏃がついた矢へとエーテルを収束させて、鋭く射出する。
破壊力を増したアルベルトの一射は狙い通り雲霞鳥の1体を射抜き、貫かれた雲霞鳥は血を撒いて落下し、地面に叩きつけられそのまま絶命する。
「群れると強化されるのですから、多少の危険は冒してでもダメージを与えていきましょう」
そしてトーラも前に出て雲霞鳥達を迎え撃つ。
既にトーラは天眼を駆使して宙を飛ぶ雲霞鳥達の数や位置、その動きを把握すると、可能な限り多くの雲霞鳥を捕捉できる位置まで移動していた。
「射程一杯に入り次第、爆炎を放ちます!」
トーラは予め周囲にいる仲間やヴァーロゥム達へ大声で自身の行動を伝え、味方を巻き込まないよう留意しながら、射程に捉えた雲霞鳥達へと巨大な炎弾を撃ち放つ。
直後、宙に火焔の花が咲いた。
爆風を伴う爆炎が周囲を席巻し、効果範囲内にいた雲霞鳥達をまとめて薙ぎ払う。
その身を引き裂かれた雲霞鳥達は血飛沫を上げて落下し、地面に落ちていった。
●東での戦い
集落北側に続き、東側にも靄の向こうから雲霞鳥と思しき集団が押し寄せてくる。
「正面、熱源多数――来るわよ!」
そしてロゼットもサーマルアイを駆使して周囲の温度を視覚化することで、靄の中にいる雲霞鳥達を視認した。
「やはり東側が本命のようだな」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングは天眼を駆使することで、雲霞鳥達の動向を把握していた。
「俺も確認できたぞ。今この場にいる敵で全てだ」
ナハシュも天眼を駆使して雲霞鳥達の数や動きを調べ、敵の増援は来ないことを把握すると、周囲の味方に報せていく。
ここでハヤトは近くで佇むメイレに向け、声をかける。
「何を考えてんのかは知らねぇが、共闘している限りは味方だ。よろしくな!」
ハヤトを含め、この場にいる冒険者達はメイレの正体がメドゥの指先幹部『黄の小指』であることを知っている。
その一方でハヤトが有する軍神の祝福は、メイレを敵に回すよりも共闘するのが最適との答えを導き出していた。
「この状況で貴方がたを敵に回す余裕はありませんからね」
メイレはハヤトに対し、敵対しないと応じる。
「よっしゃ! 派手に暴れてブレイブファング傭兵団の実力を、ギシュム族若手の目にも焼き付けてやるぜ!」
それを聞いたハヤトは戦意ある笑みや叫びと共に、瞬間的な加速によって先陣を切った。
「まずは大型個体の討伐が先だな」
ナハシュもハヤトと連動する形で動き出す。
まずハヤトが閃光塗弾のピンを抜いて投擲すると、やや遅れて缶は強烈な閃光を伴い破裂した。
まともに閃光を見たのか、大型個体の突進する速度が鈍くなったが、その隙に乗じてハヤトが一気に大型個体との距離を詰める。
そしてナハシュも陽炎を発動してその姿が一瞬揺らぎ、次の瞬間には大型個体の至近まで移動していた。
そのままハヤトが魂に宿る獣性を解き放って、紅の竜巻と化したような連撃を大型個体へと見舞う。
ハヤトの身が旋回し、双神刀 紅狗璃と天狼の蹴甲が交互に繰り出されて大型個体の身を斬り裂き、蹴撃を撃ち込み、再び斬り裂くと、側面よりナハシュが大型個体へと迫る。
「神髄をお見せしよう」
ナハシュの呟きと共に二刀流による超高速三段連撃が繰り出され、まず神材の短剣が大型個体の脚部を貫いた。
素早く抜き取り、竜爪の短剣で斬り裂き、再度神材の短剣で刺す。
既にハヤトから勇牙雷龍撃を受けていた大型個体は、ナハシュの連撃で命を絶たれ、ナハシュが短剣を引き抜くと同時に地面へと倒れ伏す。
「まずは飛行している雲霞鳥を迎撃する」
セロンガード・シュタインドルフは大型個体への対処をハヤトやナハシュ達に任せると、自身は天眼や超視覚を駆使して捕捉できた雲霞鳥達を排除し始める。
セロンガードも、メイレことロコとは共闘する方針で動いていた。
「こちらへ向かう雲霞鳥には全弾撃ち込む」
そしてセロンガードはダマスカス鋼の短弓を上に向け、弓弦の響きと共にエーテルを籠めた光の矢を放つ。
セロンガードより放たれた一射は雲霞鳥達の中と吸い込まれると、その場で炸裂して周囲に光の破片がまき散らされ、範囲内にいた雲霞鳥達をまとめて切り裂いた。
損傷を受けた雲霞鳥達が落下し、地面に叩きつけられる中、ロゼットはテレパスを駆使し始める。
(アルヒ。北側の回復役をお願いするわ)
(了解した)
ロゼットはテレパスを介し、アルヒ・ラスカスへ北側への支援を要請すると、続けてディノにもテレパスで意思を伝える。
(ディノには東側で遊撃役を頼むわね)
(承知しました)
テレパスを介し、アルヒとディノより承諾の意思が届いたところでロゼットも攻勢に移る。
「ロコ、いえメイレと共闘になるなんてね」
ロゼットは少し前にヴァーロゥム達を救助する際、成りゆきで共に雲霞鳥を撃退したことがあるため、メイレと共闘することに抵抗は少ない。
「集まっている場所は……あのあたりね」
ロゼットはサーマルアイを駆使し、雲霞鳥達が多く集まっている個所を見つけ出すと、その方角へと竜石の短杖を向ける。
そのままロゼットは自身の周囲に多数の小さい光弾を顕現して解き放ち、小光弾の群れは雨のように雲霞鳥達へと降り注ぐ。
ロゼットの攻撃を浴び、その身を穿たれた雲霞鳥達は靄の中で血飛沫を散らし、地面へと落下していく。
「政治的な話は今回あんまり興味がないのだ」
ストレガ・L・リベルガストラは、ヴァーロゥムとメイレ達がどのような約束を交わし、今に至ったのかなどの経緯は歯牙にもかけない。
「メドゥの指先でも今だけは味方。それだけなのだ」
ストレガとしてはその事実だけで十分だ。
「遅滞戦闘はありがたいのだ」
だからストレガはメイレの配下達が実施している遅延戦術について、素直に感謝する。
「では小さな群れから片付けるのだ」
ストレガは自身の戦術眼をもとに、セロンガードやロゼットの範囲攻撃によって地面に落ちた雲霞鳥達の数体を射程に捉えていく。
そのただ中へとストレガは稲妻のような光が荒れ狂う空間を顕現し、空間内の稲光が雲霞鳥達に絡みついてその移動を鈍らせる。
そのままストレガは雲霞鳥達のいる空間へと輝くエーテルをすさまじい速度で収束させていく。
そして次の瞬間爆発が巻き起こり、周囲にいた雲霞鳥達をまとめて引き裂いた。
既にセロンガードやロゼットの攻撃で損傷を受けていた雲霞鳥達は、その一撃で生命を刈り取られて力尽き、骸と化していった。
さらにメイレの範囲攻撃が空より撃ち落とされた雲霞鳥達を切り刻み、屠っていく。
●北側撃破
集落北側を襲った雲霞鳥達は、冒険者達とヴァーロゥムら若手戦士達に押し返され、突破できずにいた。
ベルクが先に付与した真・死齎刃は、大型個体の生命を着実に蝕み続けている。
大型個体はその嘴で猛然と突いてくるが、ベルクは跳躍して大型個体の攻撃を躱す。
「次はその目と鼻を潰す。首はその後だな」
ベルクは突き出された大型個体の頭部めがけて落下し、再び短剣に不可視のエーテルを纏わせ、大型個体の頭部へと斬りつける。
ベルクの攻撃は狙い通り大型個体の頭部へと命中し、片方の目を斬り裂くとともに、刃を形成していたエーテルがまとわりつき、その身を蝕んでいく。
そのまま着地したベルクは狐惑乱舞を駆使して大型個体より飛び退くと、入れ違いにラティアがハートスナイパーを大型個体へと向ける。
「これより大型に攻撃します。一時退避してください」
「了解だ。それでも倒れなかった場合は、我が後を引き受ける」
ラティアより大型個体から離れるよう促され、ベルクがそのまま大型個体より距離を置くと、ラティアは弦を引き絞る。
「ハートスナイパーはよく飛ぶので、この位置からでも安全に敵を削っていけるはずです」
ラティアは矢の先端に強力な重力波のエーテル力場を収束させて撃ち放ち、大型個体へと突き刺さる。
炸裂した重力波エーテルが大型個体へと纏わりついて動きを鈍らせ、既にベルクの真・死齎刃にその身を蝕まれていた大型個体はついに生命が尽きて倒れ、沈黙する。
「空に残る雲霞鳥から撃ち落とせ。同じ敵へ攻撃を集中させるんだ」
アルベルトはヴァーロゥム達に指示を飛ばし、ヴァーロゥム達は弓を駆使して空に残る雲霞鳥達を撃ち落としていく。
射抜かれた雲霞鳥の1体が叫喚を発し、アルベルトめがけて落下してきた。
アルベルトは冷静に雲霞鳥を見据えながら、ウンボイクザームを構えると輝くエーテルを自身に収束させ、瞬間的に守りを固めてその攻撃を受け止める。
攻撃を放った雲霞鳥はそのまま地面に落下し、攻撃を受け止めたアルベルトは後方にいるトーラの動きを確認すると、範囲攻撃に巻き込まれないよう雲霞鳥より距離を置く。
「今射線を開けるぞ! 俺が攻撃した後に残りの雲霞鳥を仕留めるんだ」
「承知しました。可能な限り数を減らしていきます」
アルベルトとトーラは短くやり取りを交わすと、まず瞬間的な加速によって雲霞鳥達から離れ、トーラも疾風足を駆使しながら最適な位置へと駆け抜ける。
そしてアルベルトは矢にエーテルを収束させると、雲霞鳥へと撃ち放つ。
アルベルトより鋭く射出された一射は雲霞鳥の1体を深々と貫き、増大した破壊力によって生命を断たれた雲霞鳥は血霧を撒いて横転し、動かなくなる。
「接近される前にまとめて始末しましょう」
トーラも最適な位置に陣取ると、神材の杖を突き出した。
わずかな溜めの後、轟音とともに巨大なエーテル光波が撃ち放たれ、射線上にいた雲霞鳥達をまとめて貫いた。
エーテル光波に呑み込まれた雲霞鳥は、光の中でその身が微塵に砕け、絶命する。
光が消えた後、残る雲霞鳥達も全て討ち取られ、集落北側の安全は確保された。
●東も全滅
一方集落東側では、冒険者達と雲霞鳥達の激突が続いていた。
「敵の強化を減らすためにも、あの大型特異個体は最優先で倒すのが妥当なところだな」
「そうだな。俺はもう1体に対応している味方の援護に向かうぞ」
ハヤトとナハシュは短いやり取りの後、ハヤトが大型個体の1体へと駆け出し、ナハシュは別の大型個体へと向かう。
通常の雲霞鳥達に対しては、セロンガードとメイレが迎撃を続け、集落への突破を許さなかった。
その間にも、ハヤトは巧みな身のこなしによって大型個体を翻弄し続ける。
大型個体の嘴がハヤトへと振り下ろされると、攻撃の軌道を瞬時に見定め真後ろへ飛び退き。大型個体の頭部はハヤトの眼前へと差し出される形になった。
「隙だらけだな。今度は俺の攻撃だぜ」
そのままハヤトの身が再び紅を纏う竜巻と化したかのような連撃を繰り出し、血の竜巻を起こす。
その中でハヤトの双刀と蹴甲が躍動し、大型個体の身へと斬撃と蹴撃を交互に浴びせ、その生命を削っていく。
「閃光塗弾を使うぞ! 俺がいる方角から目を逸らすんだ!」
ここでナハシュがセロンガードやロゼット、ストレガ達に向け大声で合図を送る。
ロゼット達の視線が逸れたのを確認したナハシュはピンを抜き、閃光塗弾を大型個体へ投擲する。
やや遅れて缶が強烈な閃光を伴って破裂し、まともに閃光を見たためか、大型個体はその場に立ち止まり、付近を飛んでいた雲霞鳥達も失速したのか高度を下げる。
その隙に乗じてナハシュは瞬間的な加速を披露して、一気に大型個体へ肉薄すると、両手に握る短剣を交互に繰り出し、二刀流による超高速三段連撃を浴びせかける。
3度刺し貫かれた大型個体が血霧を撒いてよろめく中、それまで雲霞鳥達に向け炸光矢4を撃ち込んでいたセロンガードも、ナハシュが攻撃した大型個体に短弓を向ける。
「大型個体の撃破が先。他の雲霞鳥はその後で始末する」
天眼と超視覚を駆使し、戦場全体を見渡したセロンガードは、先に大型個体を倒した方がいいと分析していた。
「高度を落とした雲霞鳥から倒すこと。地上に叩き落せばいい」
セロンガードは自身が大型個体と交戦する間、雲霞鳥達への迎撃をメイレに任せるため、簡単な指示を出す。
「妥当なところですね」
メイレはセロンガードの指示に従うそぶりを見せる。
そのままロコの身が赤い光で包まれると、宙に無数の斬撃が奔り、雲霞鳥達を切り刻んでいく。
メイレの動きを確認したセロンガードは、番えた矢に強力な重力波のエーテル力場を収束させると、大型個体へと撃ち放つ。
宙を閃き飛んだセロンガードの一射は大型個体へと突き刺さり、炸裂した重力波エーテルが大型個体に纏わりつくことで、その動きを鈍らせていく。
ここでロゼットがロコに向け治癒の光を飛ばし、消費した生命を回復した。
「援護ありがとうございます」
メイレは慇懃に礼を述べると、雲霞鳥へと向き直る。
「危ういバランスだけど、この事態を上手く乗り切れたら――」
そう言いかけてロゼットは口をつぐみ、接近する大型個体を正面から迎え撃つ。
大型個体が至近に迫ったところで、ロゼットはダマスカス鋼の祭棍に眩く光輝くエーテルを収束させ、大型個体へと素早い一撃を叩き込む。
ロゼットの一撃が大型個体に命中した瞬間、祭棍へと収束させたエーテルが開放され、爆発的な衝撃力をその身へと炸裂させる。
「このままいけば大型も射程に届きそうなのだ」
それまで雲霞鳥と交戦を続けてきたストレガは、ハヤトと交戦を続けている大型個体もこちらに流れてきていることに気づく。
「決めたのだ」
ストレガは自身の戦術眼から次の行動を導き出し、ハヤトに支援を申し出る。
「今から敵の動きを鈍らせるから、その間に仕留めてほしいのだ」
ストレガからの申し出を、ハヤトは快諾する。
「了解だ。あんたの攻撃が終わった後、こいつを仕留めさせてもらうぜ」
ハヤトの答えを聞いたストレガは青藍に光る錨と鎖を顕現し、大型個体へ投擲する。
ストレガより放たれた錨は大型個体に命中するなりその鎖が絡みつき、大型個体の移動を阻害していく。
移動力が低下した大型個体は、その後ハヤトからの猛攻に耐え切れず絶命し、地面に横転する。
そしてナハシュやセロンガード、そしてロゼットも三方向から残る大型個体を攻め続け、集中攻撃を浴びた大型個体は生命が尽きて倒れ、骸と化す。
大型個体が全滅したことで、強化する存在がいなくなった雲霞鳥達は、冒険者達によって押し包まれ、討ち取られていった。
●防衛成功
雲霞鳥達の屍が散乱する現場で、ストレガは集落が受けた損害を確認する。
「討ち漏らしがないことも確かめておくのだ」
ストレガが調べた結果、ギシュム族の集落へと押し寄せた雲霞鳥達は、大型個体も含めすべて撃破されたことが判明する。
「それにしてもギシュム族にとんでもないロクデナシが潜んでいたものだ」
ベルクは今回ロコが身柄の引き渡しを求めたプドルというリザードマンについて、不快な気持ちを抱いている。
ベルクは【蠱毒】事件の際にロコがディズル大湿地帯で大暴れをして、ターミル族を始め多くの被害が出たことを知っていた。
「その原因には十分な対応をしてもらいたいものだな」
間接的であっても、プドルも元凶の一人だとベルクは認識していた。
トーラは合流したヴァーロゥムに対し、今後予定しているメイレとの交渉に立ち会う旨を伝える。
「できれば、プドルには正しい裁きを受けさせたいです」
このときトーラもまた、ベルクと似たようなことを考えていた。
「ギシュム族の方も同じ考えではないでしょうか?」
ヴァーロゥムはトーラの話に頷きを返す。
「俺も詳しいことはあいつから聞いていないが、そのつもりだ」
少なくとも自身はトーラと同じ考えだと、ヴァーロゥムは打ち明ける。
ここでアルヒから、トーラやヴァーロゥムにある情報が伝えられる。
「その件に関してだが、今私の方でも話を進めている」
アルヒの説明によると、プドルたち元義勇兵の身柄を犯罪の証人として引き受ける貴族が現れたらしい。
その貴族は義勇兵達の黒幕とみなされているヴィガ・リスタ子爵と対立関係にあり、子爵を潰すことができるなら全ての責任を負うともアルヒに確約していた。
そのためアルヒもその貴族との間で話を進めているとのことだ。
(彼女がメドゥの指先から離脱する可能性も、作ることはできるのかしら……)
一連の話を聞いていたロゼットは、内心そのような感情を抱く。
ロゼットもロコの抱える全ての事情を知っているわけではない。
幹部クラスであるロコの離脱がまず不可能であることも、ロゼットは承知している。
それでもロゼットはロコが他の道を選ぶ可能性について、思案を続けていた。
マスターコメント
イベントシナリオ難しい 報酬:標準9 / 6〜25人
2023年07月22日 18時46分17秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのロゼットよ。 毎度ながら、いっぺんに依頼が増えるわね。 とりあえず、東側への加勢を予定するわ。 戦力としては強いのでしょうけど、ひとりはね。 >選択肢 1:集落外北側でヴァーロゥム達と共に敵を迎撃 2:集落外東側でロコと共に敵を迎撃。 ロゼット
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 今回はシンプルに鳥共を迎撃する任務だもんな。 俺は東側で地上を走ってるっつー大型個体をメインに潰しに行くつもりでいんぜ!!
シーフのナハシュだ。今回はよろしく。 とりあえず東側で考えちゃいるが、人数によっては北に移ろうとも思ってるぜ。
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! では、わたしは北側に行きますね。数が多いので、杖を持って魔法でなぎ払って行こうと思います。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺は北側に行くぜ、弓で雲霞鳥を墜としまくるぜ! >選択肢 1:集落外北側でヴァーロゥム達と共に敵を迎撃 トーラ アルベルト 2:集落外東側でロコと共に敵を迎撃。 ロゼット ハヤト=ガラン=ヴォルファング ナハシュ
ラティア・ミゼリア、シューターです。 よろしくお願いします…… ひとまず北側で考えていますが…… 場合によっては移動もできますので、言ってもらえれば…… >選択肢 1:集落外北側でヴァーロゥム達と共に敵を迎撃 トーラ アルベルト ラティア 2:集落外東側でロコと共に敵を迎撃。 ロゼット ハヤト=ガラン=ヴォルファング ナハシュ
明日が出発だから、今の配置でいかせてもらうわね。 ハヤト、ナハシュはよろしくね。 味方NPCの増援は、ヒーラー不在の北側にアルヒを、 人数が少ない東側にディノの加勢をお願いしておくわ。
>ロゼット おう!こっちこそよろしく頼むぜ!! いっちょ派手に暴れてやろーじゃねーか!!
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 北側で大型の相手に回る。 >選択肢 1:集落外北側でヴァーロゥム達と共に敵を迎撃 トーラ アルベルト ラティア ベルク 2:集落外東側でロコと共に敵を迎撃。 ロゼット ハヤト=ガラン=ヴォルファング ナハシュ
NPCについても了解した!特に異論はねえしロゼットもハヤトもよろしくだ。 とりあえず基本は大型狙い、他閃光弾で敵の目くらましや命中低下等狙えてら良いと思ってるぜ。 使う時は大声なりなんなり相図は出すつもりだ。そんな感じでよろしく。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 2のほうで小さいのを迎撃するのだ。 >選択肢 1:集落外北側でヴァーロゥム達と共に敵を迎撃 トーラ アルベルト ラティア ベルク 2:集落外東側でロコと共に敵を迎撃。 ロゼット ハヤト=ガラン=ヴォルファング ナハシュ ストレガ