【堕天】死を穢すもの
おおくまねこ
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シナリオID:3012
オープニング
コスナー一族は、聖地に住むケンタウロス達の墓守の一族の一つである。深い森を越えた先にある、丘の上に位置するこの集落には、ケンタウロス達の共同墓地がある。ここには、今年の冬に【天馬葬】で天に送られた、大族長レミーラも眠っている。コスナー一族は帝国からの聖地返還後、平和な日々を送っていた。だが、この地にも邪悪な者達の影が迫りつつあった……。
「あれは、なんだ……? 鳥にしては妙に大きいような……」
見張り番のケンタウロスは、遠くの方からこちらに飛んでくる鳥の群れの姿を認め、目を凝らした。
「……鳥じゃない。……なんだあれは。首のない竜!?それに、……背に乗っているのは、人間か?」
この集落を目指して飛んできているのは鳥ではなく、頭が欠けた竜の死体であった。
「三本腕の、女……?」
その時、ケンタウロスは翼竜の背に乗っていた女と目が合った気がした。嫌な予感がしたケンタウロスは警笛を吹き、急いで仲間達を呼び集めた。
その頃、首無し竜の背にいた女は、翼竜のゾンビに乗っていた部下達と相談をしていた。
「まもなく、墓守の一族の集落に着きますが。いかがなさいますか、グリゼルダ様」
「全部、材料にしなさい。降伏させようにも、ケンタウロスは人の言葉なんて分からないのでしょう? ケンタウロスの相手はお前達に任せるわ。私は先に『用事』を済ませます」
「御意」
「嗚呼、待っていて、ウィリアム! 今度こそジャマが入らないように準備を済ませたら、また貴方を迎えに行くから!」
●急報
「はあ、はあ、はあはあ。着いた、ぞ……」
「緊急事態」の旗を振り、ランランの集落に駆けこんできた若いケンタウロスは、そう呟くと、ばたりと倒れた。
「スーホ、落ち着いてください。まずは息を整えて。一体何があったんです?」
レミーラの後継者である、新族長ランランはスーホに水を渡し、彼の呼吸が整うのを待った。
「俺は……伝令……集落……襲われた……」
スーホが言うには、彼の集落が『三本腕の女』が率いる怪物の群れに襲われたのだという。足の速いスーホはこの危機を他の里に知らせる為、ここまで走ってきたのだという。事情を聴いたランランは、すぐに決断を下した。
「分かりました、すぐに応援を――いや、先に『帝国族』に知らせましょう。確か、レミーラ様がバルディオンと交わした約定にはこういうときの為のルールがあったはずですから」
――聖地を攻撃する人間がいた場合、帝国の駐屯地に知らせること。
「恐らく、そいつらは前に聖地を襲った連中の仲間です。きっと、『冒険者族』も一緒に来てくれます」
●緊急出動
その日、シルトラース帝国はランランの通報を受け、すぐに冒険者ギルドに依頼を出した。
――速やかにケンタウロスの墓守の集落に赴き、集落を襲った者達の正体と目的を突き止めよ。
解説
マスターより
リプレイ
「来てくれてありがとうございマス。冒険者族の戦士タチ」
ギルドから文字通り帝国の駐屯所に飛んできた冒険者達はすぐにケンタウロスの通訳のランランと、墓守の一族の伝令スーホと合流した。
「ランランさんはお友達だから。お友達を、手伝うのは、当然です」
エルは訥々と呟いた。
「すぐ行きたいけど、作戦が必要です。ランランさん、スーホさん、コスナー一族のこと、教えてください」
エルはランランとスーホに、集落や墓場の地形などについて尋ねた。スーホはかなり簡略化したものであるものの、大急ぎで現地の地図を描いてくれた。
「さあ、急ぎまショウ!」
冒険者達は二人のケンタウロスの道案内を受けながら、墓守の一族の集落を目指した。ケンタウロスの二人の脚力に追いつくため、冒険者達も馬での移動だ。移動しながら冒険者達はランランとスーホ(人語は分からないのでランランの通訳を介してだが)に詳しい事情を聴くことにした。
(久しぶりに会ったが、やはり逞しいな、ランラン……)
テテリカは疾走するランランの後ろ姿に見惚れてしまったが、すぐにそんな場合ではないと気を取り直し、手綱を強く握った。
「ランラン殿、敵の特徴を教えてくれ」
(そろそろいい加減想像がつくようになったが、問題はどれが出張って来たかだな)
ベルク・オスマットはケンタウロスを攻撃しているのは十中八九メドゥの指先だろうと予想していた。その問いに、ランランはスーホとケンタウロス語でやり取りした後で返答した。
「ケンタウロスの動く死体たくさん。空飛ぶ竜と、首のない竜。それと、三本腕がある、人間のオンナ」
「三本腕?? よりにもよってあいつか!? 大人しくウィリアム王子にでも愛を囁いてろ!!」
ベルクは悪態を吐いた。冒険者ギルドからの依頼書には「ギルドに情報を持ち帰ることを最優先すること」という付記があった。依頼主である帝国が「三本腕の女」の存在を考慮に入れているとすればその付記にも合点がいく。もし、その女がベルクの予想通りの相手であれば、十人そこらの人数ではあまりに危険な相手だからだ。
「どうやら、『青の親指』である彼女が来たようね」
(三本腕の女……そんな外見は、グリゼルダしか思い浮かばないわ。死霊術師の彼女が、墓地を襲撃するなんて悪い予感しかしない)
ロゼットは胸騒ぎを隠せなかった。思えば、グリゼルダは以前もケンタウロスのような形状のキメラゾンビを使役していた。もし、彼女が本物のケンタウロスの死体に目をつけていたのだとすれば? きっと、悍ましいことが起こるだろう。
「さて、ケンタウロスの内輪で片付く問題か、帝国の介入が必要になってくる大問題か……今はただ、世の流れの動きを決める為にやるべき事をやるまでだ。本機で皆殺しにするつもりが仕損じたか、それとも敢えて何かを見せたいから泳がせたか……真相はどっちなのだろうな」
馬の背で揺られながら、ナタリア・フィッツジェラルドは敵の目的について思案していた。
「ランラン殿、現地についたらレミーラ婆さんの遺骸を焼かせてもらうぞ」
「ナゼ!?」
ベルクがランランと並走しながら話しかけると、ランランは大きな声を出した。
「ケンタウロスにはあまりなじみのない術かもしれんが……敵は死体を操る外法の使い手だ。あの婆さんの亡骸を放置しておくと、ゾンビになって敵になってしまう可能性が高いのだ」
「ソンナ……」
焦燥に駆られつつ、冒険者達は墓守の集落へと急いだ。
●
「アンデッドの使役…メドゥがよくやる手口ですが」
ヴィルヘルミナは天眼でコスナー一族の集落の様子をよく観察した。聞いていた通り、墓守の集落は凄惨な有様になっていた。首のない竜のゾンビと、翼竜のキメラゾンビと、たくさんのケンタウロスのゾンビたちが暴れ回り、ケンタウロスの住居を攻撃していたのだ。だが、幸いなことに、この集落のケンタウロス達は全滅していなかった。ケンタウロス達は数件の家の中に立てこもり、籠城作戦を取ったり、遮蔽物をうまく利用しながら逃げ回り、ゾンビ達を分散ことで命を繋いでいた。
「グリゼルダめ……酷ぇ事しやがる……! グリゼルダはどこだ!?」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは漆黒の大剣を構え、ゾンビたちに向かって叫んだ。すると、ゾンビたちはこちらに気付いたのか、何割かが振り向いた。
「敵はアンデッドの群れか。――ならば使役している死霊術師が近くに居る筈。アンデッド共を見渡せる場所に隠れていそうだが……」
ナハティガル=ラーは周囲の様子に目を配った。グリゼルダを含め、死霊術師らしき人物はどこにもいない。
(いない、だと?)
「ランラン、ケンタウロスに俺達は味方だと伝えてくれ!」
セリオス・オーガストは通訳個体のランランに向かって叫んだ。ケンタウロスは人類と異なる言語を話す種族だ。この中で人語を理解し、ケンタウロス語に訳すことができるのは、特異個体であるランランだけである。
「分かりまシタ!」
ランランはケンタウロス語で、救援に来たことを伝えてくれたようだ。
「俺は死霊術師を探す。皆はケンタウロス達の救援を頼む」
テテリカはそう言い残すと、相棒のベニテングと共に集落の端の方へと消えていった。
(俺も死霊術師を探す。見つけたら連絡するよ)
(分かりました、ラーさん)
テレパスでナハディガルのメッセージを受け取ったリディリディ・トゥラ・イェレミースは自身もテレパスで返答した。
「ゾンビ共が来るぞ!」
セリオスは襲い掛かってきたゾンビ達を迎撃すべく、弓を構えた。
●コスナー一族の集落での戦い
「こいつらを操っている連中はどこだ!」
ベルクは宗波を走らせ、死霊術師を探した。すくなくとも、高所などの見える位置には死霊術師はいない。
(自動操縦ということか? いや、まだ分からん)
訝しむベルクをよそに、空から翼竜のキメラゾンビが急降下してきた。ベルクはすぐにその場から飛びのき、降ってきた翼竜の爪を回避する。翼竜のキメラゾンビは獲物を攫ったトンビの如く、すぐさま空中へと離脱した。
「ぐっ……なるほどな、一撃離脱戦法を行う強襲型か」
もう一体の翼竜キメラゾンビの爪を受けた堅甲で受け止めたナタリアは顔を歪めつつ、自身にヒールをかけた。
(こちらを攻撃するときにだけ接近してくる厄介な相手であっても、やりようはある)
「死霊術師はどこだ?」
セリオスはベルクを襲っている翼竜のキメラゾンビ目掛け、最大の一撃をお見舞いした。極大の光の矢が翼竜の翼を貫き、翼竜が一瞬墜落しかけたが、翼竜は墜ちず、空にとどまった。
(どうやら物理的手段で飛んでいるわけではないようだな)
セリオスは舌打ちすると、次の矢を放つ準備を始めた。
「姿が見えないわね。ゾンビの操作を妨害して、隠れてる術師を焦らせてやるわ」
ロゼットは精神を集中し、ジャマーを放った。すると、周囲100メートルにあらゆる精神感応スキルを妨害する念波が広がった。影響を受けたゾンビたちの動きは一瞬静止したが、多少ぎこちない動きながらも、戦闘を再開した。
(ケンタウロスさんたちは、あの、家の中?)
ランランの側で弓を構えたエルは聞き耳を立てて周囲の気配を探る。おそらく民家の中にいると辺りをつけたエルは民家に群がっているケンタウロスのゾンビに向けて矢を放った。矢はゾンビ達の眼前で破裂し、光の破片がゾンビ達を傷つけた。
「空飛ぶゾンビですか。厄介ですね」
ヴィルヘルミナは神材から鍛えた名刀『月虹』を一閃し、ナタリアと交戦していた翼竜のゾンビを狙った。放たれた衝撃刃は弧を描いて飛び、翼竜の胴を深々と切り裂いた。生きている生物なら即死レベルの重傷だがそこはゾンビ。翼竜のキメラゾンビは平然と活動を続けていた。
「翼を狙ったつもりでしたが、素早いですね。ならば、真っ二つにするのみです」
(翼竜のキメラゾンビですか……キメラゾンビとは幾度か相対していますね。そしてそれを作った者には心当たりがあります。そこは予想できますが、後はなぜ集落を襲ったのかですね。調査したいところですが、この様子では落ち着いて調べられません。少しだけでも数を減らしたいところです)
リディリディは空にいる翼竜のゾンビたちを一瞥すると、ケンタウロスのアンデッド目掛け、メテオライトを唱えた。空から降り注ぐ光の雨に撃ち抜かれ、ケンタウロスのゾンビたちはバラバラに粉砕されていく。
(この集落の調査はしたいですが、あまりゆっくり戦っている暇はないかもしれません。もしグリゼルダが出現すれば、撤退を考える必要があるでしょう)
「穢された死から解放してやる!」
アルベルトは首のないドラゴンのゾンビへと突進すると、渾身の一太刀を叩きこんだ。稲妻の如き威力で撃ち込まれた黒剣は竜の鱗を切り裂き、どす黒い血が胴からこぼれた。
(しかし、なぜこいつには首がない? グリゼルダなら他の魔獣の首をくっつけるぐらいはできるはずなのに)
アルベルトは一瞬、目の前にいる敵の有り様に疑問を頂いたが、すぐに戦闘に意識を集中した。ぶぉん、と、首無し竜の腕が振られ、アルベルトは瞬間的に全身を硬化させた。
ギギィン!
硬質の音が響き、アルベルトの鎧にヒビが入った。
「ウオオオオオ!」
籠城している墓守のケンタウロス達を攻めていたケンタウロスゾンビ達の半数ほどは、蹄を鳴らし、槍を振り上げて冒険者達へと突進してきた。生前ほどではないにしろ、ケンタウロスのゾンビ達は素早い。人類より遥かに速い速度で距離を詰めてきた。前に飛び出していたアルベルトは突っ込んできたケンタウロス達に包囲され、槍で集中攻撃を受けた。だが、アルベルトの黒い鎧は強固で、ケンタウロスのゾンビ達の攻撃はほとんど効いていない。
●
「グリゼルダがいれば、わめきながら突っ込んで来そうなものだが……奴はいないのか?」
ベルクは訝しみながら村を走り抜け、再び宗波を放った。今度の狙いは村の奥にあった森だ。木の上に死霊術師が潜んでいると予想しての一手だったが、今度も空振りだった。
「くそ、どこだ! 視界を気にしていないなら、隠れられる場所はいくらでもあるが……」
「やはり弓は使えないようだな……槍を持たされているのか」
ナタリアはゾンビ達の動きをよく観察していた。ゾンビたちが持つ槍はケンタウロスらしい原始的な槍ではなく、人類の間で流通している洗練された十字槍だ。死霊術師が持たせたのだろう。墓はすでに掘り返された後かもしれない。
「ギィー!」
翼竜のキメラゾンビは再びナタリアを襲うが、ナタリアはまた堅甲でダメージを抑えた。
(よし、そこだ……)
「アルベルト! 竜の相手をお願い!」
ロゼットはアルベルトごと、首無し竜のゾンビを光の結界の内側に閉じ込めた。首無し竜はドラゴンにしては小柄とはいえ、かなりサイズが大きい。光縛封の内側では、身動きすることも困難なはずだ。
「任せろ!」
アルベルトはそう答えると、首無し竜の懐に潜り込み、大剣を叩きつけた。首無し竜はアルベルトに反撃せんと鉤爪を振り上げたが、途中で結界に引っかかってしまい、アルベルトには届かなかった。
「ギィー!」
「ちっ」
甲高い鳴き声と共に急降下してきた翼竜のキメラゾンビは、セリオスの肩の肉を抉った。ゾンビは攻撃直後にすぐさま空中に逃れたが、セリオスは矢で翼竜を追撃した。収束したエーテルにより破壊力を増した矢は翼竜の頭に突き刺さり、顔面を丸ごと吹き飛ばした。だがゾンビうゆえに、翼竜が止まる気配はない。
「やっぱり、あそこですね」
エルは捜波を民家に放った。思った通り、何人かのケンタウロスは民家の中にいた。エルはもう一度炸光矢を放ち、民家に群がっていたケンタウロスを吹き飛ばした。
「ランランさん、あそこに墓守の人達がいます」
「分かりまシタ!」
「あそこにケンタウロスがいるのですね」
ランランは籠城戦を行っていたケンタウロスの救援に向かった。リディリディはランランの後についていき、空間爆砕で民家に群がっていたケンタウロスゾンビ達にトドメを刺した。もちろん、家の中にいた味方のケンタウロス達は無傷だ。直後、窓からケンタウロスの一体が顔を出し、ランランとケンタウロス語でやりとりをした。
『同胞! どうなっている!?』
『大丈夫、この人間達は味方です!』
「ウオオオ!」
「ケンタウロスよりこちらを脅威と見ましたか」
(やはり、どこかから私達を見ていますね)
村のあちこちに散っていたケンタウロスゾンビ達が冒険者達の方に集まってきた。ゾンビの槍を肩に受けたヴィルヘルミナは刀に大きく纏った闘気でゾンビ達を攻撃し、数体をまとめてバラバラにした。
●
(死霊術師はこちらから見えるような位置にはいない。完全に隠れていると考えた方がよさそうだ)
死霊術師を探し、村中を奔走していたテテリカだったが、高所にも建物の陰にも死霊術師はいなかった。ならば、もう可能性は二つしかない。村の外から遠隔操作を行っているか、あるいは、物理的に見えようのない位置に隠れているかだ。
「ここか?」
テテリカは民家の壁をサーマルアイで凝視した。かすかだが、周りと温度が異なっている。
(ケンタウロスが隠れている可能性もあるが……)
テテリカは民家の壁に手加減した矢を撃ち込んだ。すると、破壊された壁の裏には、明らかにケンタウロスではない、人相の悪い三人の男達がいた!
「ついに見つけたぞ!」
●
(――えるか? 聞こえるか? リディリディ)
(ラーさん?)
ナハティガルから途切れ途切れの思念を受け取り、リディリディはナハティガルに強く思念を込めて返答した。
(良かった、繋がったか。死霊術師は、村の東の民家の――)
そこでまた、テレパスが途切れた。だが、その先の言葉を聞く必要はなかった。東にあった民家の内側から閃光が炸裂し、中から死霊術師たちが飛び出してきたからだ。ナハティガルの閃光塗弾に追い立てられた死霊術師たちは目を抑えながら、態勢を立て直そうとしていた。
「そこにいたか! 死霊術師共め!」
ベルクは村を疾走し、あっという間に死霊術師のすぐ近くまで駆け抜けた。ゾンビたちは死霊術師たちが混乱しているせいか、何もすることなく、ぼうっとしていた。
「ようやく尻尾を見せたな」
ナハティガルは不敵に笑うと、死霊術師の一体に肉薄し、神材の双剣での三連撃を叩きこんだ。死霊術師は即死し、輪斬りになって地面に崩れ落ちる。
「そんなところに隠れていたとはな、視覚はゾンビの眼球でも借りていたのか?」
ナタリアは冷笑すると、停止した翼竜に魔弾を叩きこんだ。翼を根本から引きちぎられた翼竜ゾンビはさすがに飛べなくなったのか、地面へと落下した。
「民家の中に隠れていたなんてね!」
ロゼットは光縛封から解放され、停止した首無し竜に近づくと、祭棍で腕を一突きした。命中と同時に棍の先端からエーテルがあふれ出し、爆発したエーテルが首無し竜の腕を吹き飛ばした!
「お前の主人は今忙しいようだな! これで決めるぜ!」
アルベルトは全霊を攻撃に集中し、首のない竜目掛け、大剣を振り下ろした。鈍い衝撃音と共に首無し竜は真っ二つに両断され、それ以上動かなくなった。
「誰かが死霊術師を見つけたらしいな。今がチャンスだな」
「死霊術師はやはりグリゼルダではなかったようですね」
セリオスとヴィルヘルミナは停止している翼竜にトドメを刺した。
「くっ、ここまでか!」
一瞬で仲間二人を葬られた死霊術師はこのままでは危ないと判断し、森の方へと逃走を開始した。しかし、一瞬で追いついたベルクとナハティガルが死霊術師を後ろから攻撃し、意識を刈り取った。その瞬間、村を襲っていた全てのゾンビが機能停止し、もの言わぬ骸に戻った。
「ケンタウロスさん。もう、大丈夫です」
エルは武器を降ろし、負傷しているケンタウロスにヒールをかけた。
●ケンタウロス達の話
民家に隠れていた三人の死霊術師が全滅したことで、ゾンビ達も機能停止し、戦闘は終結した。しかし、襲撃犯の指揮をとっていたはずのグリゼルダは最後まで姿を見せなかった。
「生存者を探そう。負傷している者は手当をするからここに集めてくれ」
ナタリアはランランに伝言を頼み、直ちにケンタウロス達の治療を始めた。
「彼らの話を聞きたい。ランラン、通訳を頼む」
ランランは生き残っていたケンタウロス達の話を聞き、その言葉を冒険者達に訳した。
『最初に襲ってきたのは、首のない竜の死体と、翼竜の死体達だった。俺達が大慌てで敵を追い払おうとしていたら、墓の方からぞろぞろと、死んだはずの同胞達がやってきて……戦っているうちに、いつの間にか倒れた奴まで敵に味方するようになって……あんな恐ろしい戦いは初めてだった……』
ランランの質問に答えたケンタウロスの青年はまだ震えが収まらないのか、ガタガタと震えていた。
「三本腕の女を見たか?」
『ああ、見た。けど、そいつは降りてこなかった。集落を素通りして、墓の方に行っちまったよ』
(我々が倒した死霊術師たちは恐らく、墓守のケンタウロス達の目を引くための囮か。グリゼルダはやはり墓の方に用があったのだろう)
ケンタウロス達の話を聞いたナタリアは難しい顔をしながら、聞いた内容をメモした。
●死霊術師への尋問
ケンタウロス達の生存者の手当を終えた後、冒険者達はランランとスーホの立ち合いの元、生き残りの死霊術師の尋問を始めた。死霊術師は厳重に拘束され、目も塞がれていた。ロゼットはジャマーを発動し、万が一にも死霊術を使われないように警戒していた。この村には、そこら中に死体があるのだから……。
「メドゥの手の者か。――貴様等の指揮官の名と目的を言え」
叩き起こした死霊術師にナハディガルが尋ねると、死霊術師は口を開いた。
「我らの主は青の親指、グリゼルダ様だ。目的? すでに達成している」
「だから目的を言え! グリゼルダはどこにいる!?」
ベルクが死霊術師に蹴りを入れると、捕縛された死霊術師は含み笑いを漏らした。
「あの方は、ケンタウロスの特異個体の死体を持って一足先に帰られた。『最強のキメラゾンビを作る』……そうおっしゃっていた……私も、ぜひ見てみたかった……ハハハハハ!」
死霊術師が高笑いすると、全身が蒼い炎に包まれた!
「縛られた状態で自害だと!? 奴を止めろ!」
セリオスが叫んだ。
「そうはさせるか!」
ナタリアは慌ててヒールをかけた。死霊術師は意識を失い、焼死体のような有様となったが、なんとか一命は取り留めていた。この場でこれ以上尋問をすることは不可能だろう。
「この男にはまだいろいろと聞きたいことがあります。後はギルドか帝国の尋問のプロあたりに任せましょう」
太刀を鞘に納め、ヴィルヘルミナが言った。
●消えたレミーラ
「スーホさん、レミーラさんの、お墓に案内して下さい」
エルに促され、スーホは立ち上がった。冒険者達は全員でケンタウロス達の墓地に急いだ。
冒険者達はすぐにレミーラの墓場に直行したが、そこはあちこち掘り返され、空の棺が大量に転がる悲惨な有様となっていた。せめてもの救いは、野ざらしの死体がなかったことぐらいか。
『先代族長殿はここに葬られていたはずだが……』
掘り返され、空の棺が転がる地面のくぼみを指差し、スーホが呟いた。
「レミーラ様……」
ランランは言葉を失い、震えていた……。
●エピローグ
ケンタウロスの墓守の集落の襲撃の傍らで、レミーラの遺体がグリゼルダによって強奪された。周りのケンタウロスのゾンビが捨て駒同然の扱いだったことから、敵の目的はレミーラの遺体だったと考えられる。冒険者達はそう結論し、ギルドに報告書を提出した。帝国の駐屯所を去り、自分の部族に帰る際、ランランはこう言い残した。
「レミーラ様の亡骸を奪われたままにはしておけまセン。私は、そのグリゼルダとかいう奴を探し出しマス!」
マスターコメント
ミドルシナリオ難しい 報酬:多い10 / 6〜10人
2023年06月14日 01時24分08秒 公開
参加者
相談掲示板
ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 成立しましたね。定員まであと一人ですか。 情報さえ持ち帰る事ができれば依頼の目標は達成みたいですが、個人的には死霊術師だけは始末しておきたい所ではあります。 放っておくと好き勝手されますしね。後々の状況も悪化しそうですし。 他のゾンビは状況次第でしょうか、減らせるだけ減らせればそれに越した事は無いですが数が数なので。 死霊術師は隠れているようなので、襲い来るゾンビを捌きながら探す所からですか。 探査系のスキルがあれば多少は楽になりそうですが。
シーフのナハティガル=ラーだ。――宜しく頼む。 >方針 敵は可能な限り始末しておきたい所ではあるな。 情報に関しては(最悪の場合)、伝令役にギルドまで走ってもらう方向でも良いかもしれん。 個人的な始末の優先度としては、死霊術師>首無し竜のゾンビ>その他……だろうか? >個人 現地到着後に【宗波】で死霊術師と思われる者達を索敵する予定だ。
テテリカ、シューター。よろしく頼む。 ・集落を襲った者達の正体と目的を突き止める。 ・敵の殲滅は依頼されていない。 ・ギルドに情報を持ち帰ることを最優先すること。 という依頼だな。 普段の戦いよりも、安全な撤退について具体的な計画を立てた方がいいかもしれんな。 情報を確保し、追跡能力の高い敵を倒したら、戦闘を切り上げることを提案する。 もちろん違う意見もあるだろうが、俺としては撃破優先順はこうなる。 翼竜(機動力が高い)、死霊術師(知性、指揮能力)>人馬ゾンビ(機動力が高そう)>首無し竜(這って移動、鈍重) >個人行動 死霊術師の索敵、翼竜ゾンビへ弓で攻撃をする。
ヒーラーのロゼットよ。よろしくね。 >方針について 解説には目的が2つ並んでいるように見えるわ。 依頼人:シルトラース帝国および、ケンタウロス 依頼内容:敵の正体と目的を突き止める(優先) 依頼人:新人族長ランラン 目標:墓守の集落を救援する 「救援」も要請されているからには、ゾンビの殲滅も考える べきじゃないかな? その上で、戦力的に殲滅が難しいなら、 殲滅より情報を優先してください、という意味かなって。 参加者が6人なら最低限の戦闘で撤退、という方針も有りと 思うのだけど、満員10人なら墓守一族との共闘も視野に 入れれば、かなり戦えるんじゃないかしら。どう思う? >敵の死霊術士について 死霊術士の撃破だけど「正体と目的を突き止める」なら、 彼らは殺害ではなく、生け捕りする必要はないかしら。 3人とは言わないけど、喋れる人間が1人は必要かなって。 簡単には喋らないでしょうけど、ゾンビは情報源にならないし、 他の調査をするにもゾンビを殲滅しないと難しくないかな。
ふむ…現場の状況を収拾しつつ、情報も集めてくれと。ダメなら情報だけでも…と。 依頼人の項目が二つもあると紛らわしいですね。 些か短慮でしたね。申し訳ないです。 最悪、現場の惨状と伝令の方が言っていた『三本腕の女』が率いてきたという話を聞ければ、その方との面識があれば襲撃者の正体の方はあたりが付けられそうです。 目的の方は生け捕りに出来たなら死霊術師から吐かせたい所ですけど。相手が素直に吐いてくれればよいのですが。 集落の状況次第で死霊術師の捜索と、ケンタウロス達の救援で手分けした方が良いでしょうか。竜系のゾンビは荷が重そうですし。 術師が固まっているのかばらけているのか、彼ら自体の戦闘能力はどれくらいか分からないのが困りものですね。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 人馬族には悪いが、出来るならレミーラ婆さんの遺骸は焼いておきたいところだな。 このまま残しておくと、ゾンビ化した婆さんとこんにちはすることになりかねん。 死霊術士の発見と正体を暴くのを優先する。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 皆さん情報のまとめありがとうございます。 俺は、首無し竜のゾンビをメインにアンデッド対策に向かうつもりだ。
エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 わたし、は、ケンタウロス達の救援、に、行きたい、です。 レミーラさん、の、お墓、も、気には、なり、ます、けど…。
遅れて済まない。ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 殲滅ではなく目的の精査が趣旨ではあるが、ヒーラー不足を感じて参じた。 空中に居るゾンビに攻撃を当てるともなれば、高度も射程に影響を及ぼすのなら必然的にある程度の接近をしなければならないか。 一撃離脱型である事や尻尾が攻撃手段ともなれば、相手が仕掛けてくる時がこちら側からの攻撃のチャンスといえようか……肉を切らせて骨を断つというか。 私からも翼竜ゾンビの攻撃支援に立ち、適宜回復に努める次第だ。
>解説に目的ふたつ 私も迷ったけど、敵対していた帝国軍とケンタウロスからは、 「ケンタウロスの救援を」とは言い出しにくかったのかしら。 ランランという若い族長は、気にせず救援を求めた、とか。 >行動 私はケンタウロスの救援を主にしたいかな。 ナタリアが翼竜なら、首無竜か人馬のゾンビを優先しましょうか。 エル、アルベルト、ナタリア、ロゼットは 今のところケンタウロスの救援側に手を挙げているわね。 ベルク、ナハティガルは死霊術士の捜索を優先するようで、 テテリカは術士の索敵と、翼竜の対処を挙げているわ。
敵を減らした方がケンタウロス達にとってプラスとなるのには同意する。 ただ、メタ的な読みにはなってしまうが、殲滅が依頼されていないのは殲滅が困難な敵の強さということもありそうだ。 気にしすぎかもしれないし、実際は違うかもしれないが、一応俺は敵の強さを倒し切るのが困難なものとして想定している。 撤退について、俺の方でプレイングに盛り込みたいが特に問題はないだろうか? 情報入手とケンタウロスの安全確保ができた後に、このまま戦い続けても倒しきれないと判断したら撤退を提案しようと思っている。
>殲滅は依頼されてない 帝国側としてはまずは情報を優先していることが大きいでしょうね。依頼を出した時点では何者かの手勢に襲撃を受けた事しか知りませんし。 ケンタウロス側としては既にかなりの被害を受けてますから、早く助けてほしい感じでしょうが。 実際、竜型ゾンビ以外にもケンタウロスのアンデッドが数十体と兵力差がありますから、割と無茶な部類ですし。 死霊術師が健在なら生き残りがやられて、さらにゾンビを増やされる可能性もあるので。 >撤退 私は問題ありません。可能な限り戦うにしても、無理だと判断した時に逃げる余力は残しておく必要がありますし。 >対応 翼竜の対応をしようかと、動き回られると厄介ですし早めに片づけたいので。 その後は戦況を見て判断しようと思います。
No.13
あ、あの・・・。遅れてすみません。 キャスターのリディリディです。 よ、よろしくお願いします。 えと、主目的が情報を持ち帰ることで複目的が救援というような依頼なのですね。 情報収集時に障害となるでしょうから、こちらが動きやすいくらいには殲滅が必要そうです。 死霊術師は少し厄介ですね。 墓守の集落ということですから、ゾンビを呼び出すのには適しているかもしれません。 もしもすべての敵を殲滅するのなら、死霊術師は早めに探した方が良さそうです。 ケンタウロスのアンデッドが多いようですし、BSよりも範囲効果の魔法を準備していきます。 情報入手した後でしたら、私も撤退には異を唱えません。
>テテリカ >撤退 そういうことなら私も異論ないわ。ケンタウロスを置いて、 私たちだけ撤退するようなのは少し、気が咎めたから。
>殲滅は依頼されてない 『依頼内容』には情報収集しか記載されていないが、『目標』にはケンタウロスの救援と記載されているな。 この人数の冒険者が集められた事、難易度から想定すると『殲滅は無理でも、集落が持ち堪えられる程度には敵を減らす。且つ情報も持ち帰る』事が求められていると認識している。 >個人 では、死霊術師(一名)は出来るだけ捕縛を目指そう。 現在地を特定したら(誰か持っていく者が居る場合)テレパス、笛などで報せる予定だ。 >味方NPC ランラン達(親衛隊、スーホを含めると6名)&墓守の一族の生き残りには、主にケンタウロスのアンデッド数十体の相手をして貰った方が良いだろうか? 弓が使えるのなら翼竜に対応して貰う手もあるが……。
>味方NPC 翼竜の回避が、たぶん一般人には高い水準なのだと思うから、 数でくる人馬アンデッドをお願いしてみる方が良いかな、と。
ん…反応遅くあんッてすまん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず今のところ出てる方針で異論はない。 翼竜が二体いるからヴィルヘルミナやテテリカ同様俺もそちらの対処に向かうとする。あとは俺も索敵で死霊術士の探索だな。早めに見つけて対処できるようにしておきたいところだ
実際、集落を襲った連中の正体を突き止める事が趣旨ならば、助けて生き残りとなったケンタウロス達が多い程証言や手掛かりは集まる事になる。 それらを照らし合わせるなり繋いでいけば、大きな手掛かりにもなる筈。 筆記用具でメモるつもりだから翼竜との戦闘がてら、アンデッドのデータ収集とも行きたい所だが、生き残りの証言も纏めてみよう。 ことアンデッドと実際に交戦して得た情報は、後の指標にもなる筈。
>味方NPC では、ランラン達と墓守の一族の生き残りにはケンタウロスのアンデッドの相手をして貰う方向で良いだろうか? >個人 現地到着後に【宗波】で死霊術師達を索敵。 現在地を捕捉したら、テレパスor閃光塗弾or笛などで報告するので駆け付けられそうな者は来て貰いたい。 可能な限り捕縛を目指すが――生捕りが難しいようなら撃破に切替える。 索敵の過程でアンデッド共が集まって来た時は、その対処も行なうつもりだ。
No.20
そうですね・・・。 光縛呪は一応準備しておきますので、テレパスを頂いたらそちらに向かうようにしますね。 ケンタウロスのゾンビがある程度NPCで対応できるようでしたら私も翼竜に参戦してみます。 ダメージを与えるというより、魔糸を放って回避能力を下げてみますね。
明日が出発ね。 私は首無竜ゾンビへの攻撃を主に、 次点で人馬ゾンビを対応するケンタウロス達の 回復とかにあたる。術師と翼竜は他に任せるわ。 撤退になった場合は、光縛封で首無竜ゾンビを 囲って足止めするつもり。 >味方NPC >人馬アンデッド対応 私は異論ないわ。私の方でもランランを通して、 対応をお願いする旨をプレイングに入れておくわ。