【北乱】市長強襲作戦
おおくまねこ
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シナリオID:2969
オープニング
「領民の諸君。残念ながらリブラネスタの陰謀により、我々レグルはエラトゥーン都市同盟からの離脱を勧告されている。しかし、連中の主張する『レグルは犯罪組織と癒着している』という主張は事実無根だ。我々はそれを証明するために戦い続けなければならない!」
湾岸都市レグルの市長レンダー・リンドブルムは拡声紋具を片手に、自らの正当性を声高に主張していた。だが、『レグルはメドゥの指先と癒着している』という指摘は陰謀ではない。レグルの市長は実際にメドゥの指先の手指幹部『赤の中指』と取引関係にあり、奴隷商人が領内で商売をすることも黙認していた。それらは全て、独裁者であるリンドブルムの咎であった。
「何言ってやがる! リンドブルム! お前は市長を降りろ!」
「そうだそうだ! 我々の生活をおびやかす市長なんてもういらない!」
リンドブルムの専横的な政治に嫌気が差していた市民は口々に怒りの声を上げた。今回の告発で、レグル市民たちの怒りは限界に達したのだ。市民たちの中には、市長に向かって石を投げつける者さえいた。
「今、石を投げたものを捕まえろ。この私に罵声を浴びせた者達も、全員投獄だ!」
「ハッ!」
領主の傀儡である衛兵たちは直ちに警棒を振りかざし、市民たちの方へと突撃した。たちまち乱闘が始まり、広場に無数の血が流れた……。
●冒険者ギルドにて
「エラトゥーン都市同盟評議会から緊急依頼です。都市同盟の加盟都市・湾岸都市レグルの市長を捕縛・あるいは殺害していただきたいとのことです」
踊る子熊亭の内勤職員、ヤマダは剣呑な依頼をルーキーたちに提示すると、冒険者達の表情がこわばった。湾岸都市レグルといえば、エスト・ポーラの支持を表明しており、リブラネスタと敵対している都市である。いわば、リブラネスタの政敵だ。それを、都市同盟評議会が排除したがっているということなのか。
「レグルの市長、リンドブルムは先月、とある依頼人が行った調査により、不祥事が発覚し、都市同盟の強制捜査を受けることが決定しています。しかし、レグルは街を封鎖し、強制捜査部隊と徹底抗戦を行うことを選択したようです。実に嘆かわしいことです」
ヤマダははあ、とため息を吐いた。
「議決通りならば、都市同盟から精鋭部隊がレグルに送り込まれるはずなのですが……残念ながら議長都市であるリブラネスタはエスト・ポーラと睨み合いの真っ最中です。他の都市の多くはリブラネスタとエスト・ポーラの争いを静観する構えです。そういった事情があり、今都市同盟の正規軍をレグルに送り込むことは難しいのですよ」
ヤマダはそう言って、肩を竦めた。
「そこで我々の出番です。我々冒険者の精鋭部隊で城に突入し、領主リンドブルムを捕縛してください。抵抗された場合はやむをえません。殺すしかないでしょう。政治的にはかなり微妙なオーダーですが、リンドブルムの調査に関しては、政治ではなく司法の話です。冒険者ギルドが介入してもギリギリ『中立』は守られる。評議会の決定の代行ですからね」
ヤマダはそこまで言った後、「まあ、市長が素直に連行されるとは思えないので、まず間違いなく殺し合いになると思いますが」と付け加えた。
「依頼の背景は以上です。それともう一つ。リンドブルムは老いたりとはいえ、かつてはリーンエス王国騎士に匹敵するとまで謳われた方です。仮にも一国の統治者ですし、メドゥの指先とのつながりもある以上、どんな隠し玉を持っているかわかりません。できれば精鋭を送り込みたい。腕に自信のある方々が依頼を受けてくださることを期待しておりますよ」
解説
マスターより
リプレイ
草木も眠る丑三つ時。夜闇に紛れ、七名の冒険者達がレグルの街に姿を現した。その目的は、レグルの独裁者であるレンダー・リンドブルムを捕縛することである。彼らが突入の入り口に選んだのは、レグルの港だ。レグルは城塞に囲まれた都市だが、構造上、ここだけは城壁が途切れているのだ。
「市長の城は……ここからだと南か」
だが、冒険者の中でレピド・クロサイトだけは港の真北にある城壁に配置されていた。あえてここから街に侵入し、騒ぎを起こすことで警備兵達の注意を引きつけることが狙いである。気配を隠し、存在を悟られずに敵の懐に潜りこむことにかけてシーフの右で出るクラスはない。二本の足だけで城壁を垂直によじのぼったレピドは、あっさりと街の中への侵入を果たした。手近な民家の屋根の上に降り立ったレピドは、頭に叩き込んでおいた地図と照らし合わせ、自分の現在位置をイメージする。
(市長の城は……あっちだな)
そしてレピドは、自分が入ってきた北の城壁目掛け、勢いよくピンを抜いた閃光塗弾を投げつけた。さらに、上空に向かってもう一つ。仲間達への合図だ。
カッ!
白い閃光が辺りを塗り潰し、兵士たちが騒ぎ出したことを確認した後、レピドは足早に市長の城を目指して駆けて行った。
●レグル突入
「北の方で何か光った。レピドがやってくれたみてえだ」
城壁によじ登り、街の様子を伺っていたハヤト=ガラン=ヴォルファングは手で合図をすると、街の内側に降り立った。
「オレにも聞こえた。始まったみてえだな。急ごうぜ」
アーテミシアは聴覚に神経を集中し、周囲に人気が無いことを確認してから、岩陰から飛び出した。夜間迷彩として、マントは漆黒のものを選んでいる。
「全盛期の市長は船を破壊できるほどの剣腕の持ち主だったようです。足場を崩される可能性も考慮すべきかもしれません。また、百人規模の海賊でも歯が立たなかったとも。たとえ強力な授恵者でも、まともにやりあえば大軍団相手ではエーテルの消耗が激し過ぎるはず。市長は強力な範囲攻撃を使用できるのかもしれません」
アーテミシアに続いて岩陰から出てきたリコリス・アデュラリアは、以前街で聞いた情報をから推測した市長の情報を仲間達に伝えた。
「皆さん、地図は頭に入っていますね? 万が一逃げられた場合の逃走ルートも今一度イメージしておいてください」
グレイブ・ヤードはギルド職員からもらった地図を思い出していた。閉鎖前のこの街の地形は道中に何度も確認した。方角さえ見失わなければ、道に迷うことはないだろう。
「私、こういうのは得意じゃないのよね。でもこれなら、何とかなりそう」
シンディー・ホシカは少しでも動きやすくするため、鎧以外の装備一式を丸ごと袋に入れてマジカルポケットに収納していた。
「市長なのに、罪のない市民を平然と傷つける命令を下すなんて」
シンディーはリンドブルムの暴政に憤りを感じていた。リブラネスタとレグルの政治的な関係はさておいても、市長を捕縛または抹殺するべき、という方針に異論はない。
(そこまで潔癖症ってわけじゃないから。暗殺めいた依頼内容だけれど、特に抵抗はないの)
「素直に連行されるとは思えない、ですか……で、あるなら。……嫌、なんですけどね」
ラティア・ミゼリアはため息をついた。だが、仕事は仕事だ。ラティアは孤高者の宗波で地形や周囲の気配を探りつつ、慎重に城を目指して進んでいく。レピドが陽動を起こしてくれたおかげか、冒険者達は街の兵士にはほとんど遭遇しないまま、城の近くまで到達することができた。しかし、市長の住む城の城門の前には、多数の兵士が集まり、物々しい警備体制が敷かれていた。レピドが騒ぎを起こした町の北側に兵士を出動させつつも、市長の居城の防御はきっちり固めていたようだ。
「市長サマは噂通りの人柄みてぇだな。街の人間が何人死のうが、自分の安全だけは確保したいんだろうぜ」
アーテミシアは唾を吐いた。
「兵士の詰め所を襲撃しようかとも思いましたが、すでに城の防御は固められた後ですか。これは、急いだ方がよさそうですね。もたもたしていると市長が逃げてしまうかもしれません」
グレイブは嘆息した。
●城内での戦い
「侵入者だ! リンドブルム市長をお守りしろ!」
突入した冒険者達を迎え撃つ為、城の近衛騎士達が出動してきた。軽装備だった街の警備兵達とは異なり、金属の甲冑で防御を固めた熟練の騎士達だ。しかし、授恵者の大軍などは一介の市長がそうそう用意できるものではない。ほとんどが非授恵者だった城の近衛騎士達は、鎧袖一触で蹴散らされていった。
(私の今の力量でできることを!)
魔甲と杖を装着したシンディーは、タイダルストリームで非授恵者の騎士達をまとめて吹き飛ばした。
「市長はどこだ!?」
「最上階に引きこもっているか、地下の隠し部屋にでも逃げているか……どちらも考えられますね」
城の内部情報は厳重に秘匿されていたが、冒険者達は運よく城の見取り図を入手することができた。常日頃から民衆の反感を育てていた市長を殺そうと考える者は他にもいたのようだ。
(あるいは、レジスタンスの方々の仕業だったのかもしれませんね)
リコリスは地図をリークしてくれた者の正体についてそう推測していた。
「恐らく、上の方だと思います……宗波で調べました……明らかに、上の方が警備が厳重です。あの……間違っていたらごめんなさい」
ラティアが自信なさげに言った。
「よし! 俺は念のために下を一通り探してから上に向かう。みんな、先に行っててくれ」
ハヤトは仲間達と別れ、一階の探索をすることにした。そして、上の階に進んだ冒険者達は、多少騎士達との戦いで消耗しつつも、最上階の謁見の間で待ち構えていたリンドブルム市長とついに相対した。
●
「よくぞここまで来たな。賊共め。褒美に、私自ら淀の果てに送ってやろう」
数十名の近衛騎士達に囲まれて立っていた豪華な鎧を着た男は老人ではなく、若々しい姿の青年だった。
「しかしまぁ、噂に聞きましたが随分とおかしいアンチエイジングをなさったようで」
グレイブはため息を吐いた。
「市長は老人のはずよね。吸血鬼かしら?」
シンディーが誰にともなく問いかけると、リコリスが首を横に振った。
「いえ、恐らく違います。吸血鬼の瞳は必ず真紅に染まる。しかし、あの男の瞳の色は黒です」
その言葉を聞き、リンドブルムは冷笑した。
「そんなものと一緒にするな。私はただ若返っただけだ。神具の力でな。だが、強さは吸血鬼以上かもしれんぞ。よもや、私の異名を知らぬわけではあるまい」
『海賊狩りの王』リンドブルムは、身の丈よりも大きな大剣を軽々と片手で振り回し、水平に構えて笑った。
●冒険者 VS 『海賊狩りの王』リンドブルム
「さあ来い! 賊共! 格の違いを教えてやる!」
リンドブルムは黒い大剣を振り上げ、冒険者達に向かって吠えた。
「やっぱり、こうなるんですね……」
ラティアは近衛騎士相手に矢を放つ。炸裂した光の矢の破片は、近衛騎士の集団へと飛び込み、3人の騎士を吹き飛ばした。巻き込まれてもまだ立っているのは一人のみ。おそらくは彼のみ授恵者だったのだろう。
「その程度か!」
リンドブルムはラティア目掛け、漆黒の大剣『黒骨』を突き出した。距離は優に十メートル以上離れていたが、竜巻状のエーテルが空間を抉り、間にいた近衛騎士ごとラティアをズタズタに切り刻んだ。
「すみませ……」
深手を負わされたラティアは地面に膝を付いた。グレイブはラティアにヒールをかけながら、騎士達へと問いかける。
「おやおや。まさか、平気で味方ごと攻撃するとは……。貴方達はこれでいいのですか? 何の為にその立場になったのですか、何か守りたい何かがあったからではないのですか?」
「だ、黙れ! 賊共め! 我らは先祖代々リンドブルム家に仕えし騎士! 主を裏切ることなどできぬ!」
騎士の一人はグレイブへと反論しながら、冒険者達との距離を詰め、剣で切りかかってきた。騎士達の攻撃で最前列にいたアーテミシアが攻撃の矢面に立たされ、集中攻撃を受けたが、パーティでとびぬけて頑強なアーテミシアにはほとんどダメージが入らなかった。数体の騎士はアーテミシアの脇をすり抜け、後衛のリコリス、シンディー、そして瀕死のラティアへと迫る。
「さてと、こりゃ面倒だな……早いとこ済ませちまわねえと、街の後始末が面倒になっちまうか」
アーテミシアは何らかの外法で若返ったと思しき市長を見てぼやくと、斧を振り上げながら突進し、騎士の人壁の強行突破を試みた。
「どけ!」
アーテミシアは騎士達は多勢だったが、ほとんどは非授恵者だ。アーテミシアは難なく騎士を体ごと弾き飛ばし、リンドブルムの元まで辿り着いた。
「邪魔よ!」
シンディーは叫びながら、騎士達へと杖を向けた。空間にエーテルの波紋が走り、固まっていた騎士達を巻き込んで空間が大爆発を起こす。この一撃で、後衛に迫っていた騎士達はまとめて吹き飛ばされた。
「降伏してください。市長にこのまま従えば同罪ですが、少なくとも私達の邪魔をしなければまだ減刑嘆願は可能です。彼の捕縛や撃破に貢献したのなら、私達はギルド経由で然るべき者に報告します。罪に問われる事も無くなるのではないでしょうか」
リコリスは騎士達へと降伏を呼び掛けつつ、リンドブルムに魔錆を放つ。リコリスのエーテルをまともに浴びたリンドブルムは、エーテルの輪郭をぶれさせていった。
●
「こいつら、強い! 授恵者以外は下がれ!」
近衛騎士の隊長らしき男が叫んだ。しかし、その直後、リンドブルムが相反する命令を叫ぶ。
「だめだ、死ぬ気で賊と戦え! 私をみすみす殺させる気か!?」
「しかし……!」
がしゃあああああん!
その時、窓が粉々に砕け、謁見の間に赤い影が飛び込んできた。
「すまん、遅くなった」
謁見の間に突入してきたレピドは、リンドブルムの足を狙って暗針を一突きした。
「!」
針はリンドブルムの脛に突き刺さり、レピドのエーテルがリンドブルムを蝕んでいく。だが、人間離れした異様な硬さを感じ、レピドの顔が強張った。
(硬い! 針がほとんど刺さっていない!)
「奴らの妄言に耳を貸すな! 私がいなくなったら誰がこの街を守るのだ!? 敵前逃亡は家族ともども死罪に値する罪だぞ!」
リンドブルムは見るからに士気が下がっている騎士達を怒鳴りつけながら、大剣をぶんぶん振り回した。レピドとアーテミシアは咄嗟に防御態勢を取る。ハヤトは、攻撃の直後に大きく距離を取っていたため、攻撃の射程範囲外に逃れていた。
(避けきれない!)
レピドはエーテルで全身を硬化させ、市長の攻撃に備えた。しかし、市長の大剣はレピドの胴を易々と切り裂き、レピドに深手を負わせた。アーテミシアも薙ぎ払いに巻き込まれたが、彼女のダメージはレピドと比べると遥かに軽傷だ。
「固まるな! 一か所に集まっていれば魔法の餌食だ!」
まだ脱落していない騎士達は散開し、シンディー、グレイブ、リコリスへと襲い掛かっていく。すでに市長と隣接しているアーテミシアやレピドの方には行かないのは、市長の攻撃に巻き込まれることを警戒しているからかもしれない。
「民草の血を流す事を肯定する市長で良いのですか? 主が間違っていると思うのなら、諫めるのもまた忠義ではないのでしょうか」
グレイブは騎士達にそう呼びかけながら、傷が深いレピドを優先して再びヒールをかけた。騎士達の攻撃力はさほど高くはない。今一番危険なのは、市長の攻撃を二度受けたレピドであった。
「フン、中々いいブツ持ってンじゃねえか。バラバラにしたらいい素材になりそうだぜ」
アーテミシアはリンドブルムが大振りした隙を狙い、脚を狙って斧を力一杯打ち込んだ。
「ふん!」
市長はエーテルの鎖を伸ばすと、手近にいた騎士を手繰り寄せ、盾にした。アーテミシアの斧の直撃を受け、騎士は悲鳴を上げて地面に倒れた。
「おいおい、そこまで腐りきってンのか……」
「賊が何を言う。この街を守るための尊い犠牲だ」
アーテミシアが呆れ顔で呟くと、市長は臆面もなく言い放った。
「まだよ!」
シンディーは今度は爆炎を放ち、市長の周りにいる騎士達を焼き焦がす。二度の魔法攻撃により、ほとんどの騎士達は地面に倒れ伏した。
「仕方ありませんね」
リコリスは嘆息し、市長の周囲にメテオライトを降らせた。降り注ぐ光の雨に打たれ、リンドブルムの体が鮮血に濡れた。
●
「うらぁ! これでも喰らいやがれ!」
密かに天井を移動して謁見の間に侵入していたハヤトは、市長の頭上に急降下し、食用油が入ったビンをリンドブルムへと叩きつけた。瓶は割れ、中身の油がリンドブルムの腕へと降りかかる。
「こんくれぇハンデ貰ってもバチは当たらねぇだろ!?」
「チィ!」
リンドブルムは舌打ちした。常人離れした握力のおかげで武器を落とすことは免れたが、全く影響なしとまではいかなかったようだ。
●
「足手まといになるわけには……」
(範囲攻撃だとアーテミシアさんを巻き込んでしまう……)
グレイブの回復魔法で持ち直したラティアの弓から、重力波を帯びた矢がリンドブルムへと放たれる。矢はリンドブルムの肩に突き刺さり、彼の体にラティアのエーテルが纏わりついた。
「調子に乗るなよ!! 『神風』!」
リンドブルムは八相の構えを取ると、大剣で虚空を突いた。その瞬間、竜巻状のエーテルが直線状に巻き起こり、レピドとリコリスがリンドブルムに攻撃に巻き込まれた。激しく傷ついたレピドはついに膝を付く。リコリスは咄嗟に暴風の障壁を身に纏い、竜巻の軌道を逸らして回避した。
「我々も正しいとは限りませんが、しかし、民を悪戯に傷つける為政者を肯定してよいのですか?」
グレイブは諦めずに騎士達に問いかけながら、ヒーリングオーラを飛ばした。
「フン、大したパワーだけど巨人やら小山みてえなデカブツに比べりゃそこまででもねえや。腰でもヤッてんじゃねえのか、オッサンよ!」
アーテミシアは吠えながら、再びリンドブルムに破脚砕を撃ち込んだ。今度はエーテルが浸透し、リンドブルムの動きが鈍った。
「命が惜しければ投降しなさい、リンドブルム。今ならまだ間に合います」
リコリスは冷たく告げると、リンドブルムへと魔弾を叩きつけた。
「あんな市長への義理立てなら、ここまで戦ったことで十分でしょ! 退いて!」
シンディーは騎士達へと呼び掛けながら、リンドブルムへとフリーズボルトを浴びせた。凍てつくエーテルの矢を受け、リンドブルムの下半身が凍り付く。
「お、俺はもう嫌だ!」
「俺もだ! あんたらにも、市長様にも殺されたくなんかない! 家で家族が待ってるんだ!」
冒険者達の粘り強い説得に、ついに騎士達の一部が離反した。武器を捨て、部屋の出口へと逃走を始めたのだ。冒険者達はあえて逃げる騎士達は追いかけず、リンドブルムを逃がさないことに集中した。
「貴様らぁ~! 後で一人残らず処刑してやる!」
リンドブルムは怒りに震え、叫んだ。
●
「うらぁああああ!」
「市長様ッ……!? うわああああ!」
「な……! てめえの部下を盾にしやがった、だと!?」
ハヤトの攻撃を代わりに受けさせられた騎士は鎧を砕かれ、血を吐いて倒れた。レピドはリンドブルムの凶行に驚きつつも、リンドブルムの腕に暗針を突き立てる。今度は先ほどよりも深く針を穿つことができた。
「……一応聞くが、アンタらもこのままリンドブルムの盾になるつもりか? 邪魔するなら構わず斬るぞ、こちらは」
レピドがため息を吐くながら問うと、まだこの場に残っていた騎士達もついに戦意を失ったのか、棒立ちになってしまった。
●暴君の結末
激しい戦いだった。まだ立っていた騎士達も戦いをやめ、市長と冒険者達の戦いを見守っていた。負傷で一時的に戦線離脱していたレピドも復帰し、多勢に無勢となったリンドブルムは、いよいよ疲労の色が見え始めていた。
「もう、代わりに攻撃を受けてくれる者はいないようですよ」
リコリスが杖を向けると、周囲のエーテルが杖の先端に収束した。限界以上の出力の魔弾が市長を直撃し、リンドブルムはついに血を吐いた。
「おのれ、今日の恨みは忘れんぞ! 『秘剣・大嵐』!」
リンドブルムは渾身の力で大剣を地面へと叩きつけた。その瞬間、謁見の間自体が崩壊し、冒険者達も、騎士も、リンドブルムすらも階下へと落下していく。高所から落下した衝撃が戦場にいた者達を襲い、続けて、破壊された天井や床が上から降り注いできた。この暴挙により、戦闘不能となっていた騎士達はほとんどが瓦礫の下敷きになり、絶命してしまった。
「なんてことを……」
ラティアは惨状に目を覆いつつも市長を探した。
「みんな、無事か!? あの野郎、逃がすかよ!」
咄嗟に壁に張り付き、落下を防いでいたハヤトは背を向けて逃げるリンドブルムへと急降下し、背後から足を斬りつけた。リンドブルムの背にはグレイブが隙を見て当てて置いたヒカリゴケがくっついていた。冒険者達はすぐにリンドブルムを発見し、瓦礫の隙間を通って逃げようとする彼に追いついた。
「お楽しみはこれからだぜ。途中で帰るとかつれねえな、ええ?」
アーテミシアはリンドブルムの体にエーテルの鎖を巻き付け、逃亡を阻止した! 冒険者達の集中攻撃を受け、リンドブルムの体が血に染まっていく。そして、リンドブルムの背から、ブロード・ソードの刃が生え、鮮血の花が咲いた。リンドブルムの心臓を背中から刺し貫いたのは――リンドブルムの部下であった騎士の剣だった。
「馬鹿な……なぜ、だ……この、裏切り者め……」
リンドブルムは自分を背中から貫いた男を恨めしげに見ながら、ばたばたともがき、動かなくなった。その直後、リンドブルムが付けていた腕輪がパキンと音を立てて割れ、リンドブルムはみるみるうちにしわくちゃになっていった。
「……馬鹿野郎が」
ハヤトは息絶えた老人を見下ろしながら言った。
「みんな死んでしまった……。市長。誰だって、死にたくなんて無いのです」
リンドブルムを殺した男は虚ろな表情でそう告げると、武器を捨てて両手を上げた。
「我々は投降する。その代わり、生存者を捜索する間、連行は待ってもらえないか?」
「ええ、いいわ。私達はあくどい市長をとっ捕まえに来たんだから……」
シンディーが答えると、他の冒険者達も頷いた。こうして、冒険者ギルドによるレグル市長の逮捕劇は「市長死亡」という形で幕を閉じたのだった。
マスターコメント
ミドルシナリオ難しい 報酬:多い7 / 6〜10人
2023年05月21日 23時32分58秒 公開
相談掲示板
ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 後押し、ごり押しなど可能なようにしましょう
キャスターのシンディーよ。 前回の調査の縁で依頼を受けたわ 私では市長との直接対決は厳しそうだから、周囲の護衛の騎士達の対処に回るつもりよ 市長と戦える人たちが、市長との戦いに集中できるようにしたいわ。
ウォリアーのアーテミシアだ。 ンじゃ、オレは市長の相手すっか。物理攻撃なら何とでもなるし
依頼の成立がちょっと怪しいけど 侵入経路と時間帯だけは、話しておく? ・城壁に切れ目のある港部分から侵入 ・時間帯は夜に というのが順当なのかなって
これで成立……だな。 レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 逃亡防止に非常用の脱出路は抑えておいたほうがいいよな。 なので宗波は持ち込むつもりだ。 戦闘については相性不利な相手だが、それほどの強敵だと純粋に手数も必要だろうと考えると少々悩ましいところ。
>周囲の護衛に関して 彼らに引いてもらう、というか足止めというか 「潜入に合わせて別の場所に誘導する」というのは可能ですかねえ・・・? タイミング的に例えば造船所でのストライキとかそういうのを「住民の皆さんに行ってもらう」とか >侵入時間帯 まぁ夜かなあとは思います。 それを踏まえて視界確保の手段はあったほうがよさそうですね? >侵入箇所 正面は不可能と言われましたからねえ、城壁の切れ目のところが確かにベターでしょうか? 水経由(水路や海経由での侵入)はできる方が限られそうですしねぇ。 >逃亡対策 水上歩行はまじめにどうしようもないですかね・・・? 対抗策あります?
>「住民の皆さんに行ってもらう」 今の状況だと、反抗的な住民にどんな乱暴な鎮圧をするかわからないし。 極力、関係の無い人たちへの被害が出そうな手段は取りたくないわね。
逃亡に関してはスキルで拘束するか逃げ道塞ぐしかねえだろ。 破脚砕とバーバリアンデスチェーンである程度は出来るけど前者は効くかわからねえし、後者は射程4で2マス引き寄せるのを1回するだけだから決め手にかけるか。 オブジェクト召喚で道塞ぎって言う手も無くはないけど。 住民に陽動してもらうってのも効果的な手ではあるぜ。こっちの人手を割かないで済むってのが一番でかい。現状人手が足りねーしな・・・
>住民の皆さんに動いてもらう こちらの都合だけではなく、あちら(住民)の感情的に何か行動の筋道がなければ危険な暴動につながるのではないか、というのも考えているのですよね。 現状で不満は相当たまっているようですし、今回ので血も流れましたので、いつ爆発してもおかしくはないのではと。 住民たちが城に突撃するようなことになれば、おそらく容赦はしないでしょう、それは問題ですので城から遠ざけたいといいますか・・・。 巻き込まれにくくするために港でストライキという形で兵も強行しづらい形を作れないかと。 バリケードなどで時間を稼ぎ、負傷もし辛くするとか。 とはいえ、今まで関わっていない私が言うのもおかしいのでやめておきます
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! なかなかの強敵が相手みてーだな。 アーテミシアと一緒にリンドブルムの野郎をぶっ潰しに動くぜ。 ヒーラーのグレイブの回復が生命線になりそーだからな、よろしく頼むぜ! それにシンディーが護衛騎士を相手してくれんならリンドブルムに集中出来るから助かるな! それと、聞くところによりぁレグルの民衆の不満は限界っぽいからな。 巻き込まねーためにも城から離れたとこで騒いで貰ってた方がわりかし安全かもしんねーと思うぜ。
人手が足りねえ こりゃ人数ギリギリまで市長に回すしかねえな。 騎士やら衛兵は住民使って引っ掻き回すか。 固まって抗議させるより少数で罵声を挙げさせて、衛兵が集まってきたらバラバラに逃げてまたあちこちで同じことをさせるか。 ま、これやるにしても誰か一人は音頭取ってもらう必要はあるが
>レグルの民衆 出来るだけ巻き込みたくないが、協力を得たい状況でもある……難しいな。 グレイブのストライキ案は個人的には良いと思った。 城から港は一望出来る以上港の動きを城側は無視出来ないが、崖があるから城からはある程度距離はある(ので巻き込み辛い)、筈。 >侵入時間帯 夜で良いと思う。 >侵入箇所 素早く壁をよじ登る手段がなければよじ登る時を狙われるし、基本城壁の切れ目に賛成。 ……俺単独で壁歩きで壁を登って閃光塗弾を投げ込むとかして陽動してみるか? >逃亡対策 あくまで水上「歩行」だから戦闘中は足を重点的に狙うようにするとか……あとは非常用の脱出路を見つけたら何かで塞ぐ……?
私達が相手をするのは「リンドブルムの近衛騎士 多数」 民衆相手なら一般兵士で十分だって判断されて、近衛騎士は留めおかれてしまった可能性もあると思うの 難癖付けてるみたいに感じてしまうなら申し訳ないとは思うわ でも依頼の成功のために、一般人を囮とか陽動で利用して傷つく可能性のあることをやらせるというのは、冒険者として恥ずかしいことじゃないの? って感じるのよ
シューターのラティア・ミゼリアです、よろしくお願いします…… この依頼、どうしようか悩んでたんですけど……人手が足りないって聞こえた気がしたので、いないよりはマシかなって……邪魔だったらごめんなさい…… 私は、その……貧弱なので、領主との直接対決には不安がありますから、護衛の対処をメインに、孤高者の宗波で脱出路探しのお手伝いとかもしようかな、と…… 領主と直接戦え、とかこれをやってほしい、とかありましたら、言ってくだされば考えます……
乗り込んだ先に騎士がいるならそれはそれで相手すりゃいいよ。 ただ領主の相手するには4人程度じゃキツイから、なるべく襲撃に人数割きたい。 人手はなんぼでも歓迎するぜ というか依頼の内容は領主の捕殺であって住民の安否は入ってない。受付は言及してないし解説にも入ってない。順序が逆だな。 恥云々は価値観の違いだからオレは何も言わねー まあ成功度上げるにもその辺の要素があるかもしれねえし、陽動できて合図があれば突入するタイミングも図りやすいか。 とりあえず夜、切れ目から突入するのは決まりだな。
まぁ一案としては出しましたが私はそれに固執するものでもないので、 流していただいて構いませんよ? やることには変わりはないのです。 人出が増えるに越したことはないのですけどね >確認までに そういえばこの都市の地図というか経路関係は大丈夫なのでしょうか? 逃亡時に追いかけるにしても地理関係はある程度抑えたほうがいいような気もしますが
恥ずかしいと思うかは時と場合と個人の考え方によるのでなんとも…… ……ただ、反対意見はあってもいいしそれを出してくれるのはとてもありがたい事だと思う。 そこを擦り合わせる為に相談しているんだしな。 >経路関係 情報(OP)をみた感じ町の封鎖をしたのは最近の事のようだ、であれば街の大雑把な地図くらいはあるのではないだろうか。 >個人行動 先にも言ったが潜入時の壁歩き&閃光塗弾での陽動。 それと戦闘時は手数がいるだろうリンドブルムに当たろうかと。
肝心なことを書き忘れた…… 俺もグレイブ案はいいなとは言ったが、反対意見がある以上その案に固執するつもりはない。
オレのアレも確実性には欠けるからなあ 確実に注意を惹けるならそっちでも構わないぞ というかその辺の音頭を誰が取るかが問題か?
とりあえず回復として範囲回復系(ヒーリングオーラorホーリーリチュアル)の準備でしょうかね? 広範囲技が多そうですし、後者はちょっと時間かかるので問題かもですが。 個別回復をそれぞれに使うとしたら結構なラウンド使いそうですし 一応特性とアクションで一つ位は自衛用スキルは持っておきたいですから。 ところでエンライト(照明スキル)はご入用です? 皆さん暗視があるのであればヒール3と入れ替えますけど
あ……暗視は用意していきますね。 私なんかがグレイブさんの手を煩わせる訳には…… あとから入った私が、偉そうなことを言うのはどうかと思うんですけど…… 私は、依頼を受けておいて駄目でした、となるのは嫌です。そして今回、アーテミシアさんが仰るように住民の安否は問われていない。 ですので、住民に被害を出さない理想、大成功を追うより確実な成功を考えたい。ですので、依頼を受けた以上、住民を巻きこんだほうが成功に近付くならそうすべきと思います。 ……とはいえ、ここまでいっておいて掌を返すようですが、このことで揉めるくらいなら住民の利用に関してはいっそすっぱり切った方がいいかな、と…… 音頭を誰が取るかとか、人手の問題があるのは事実ですし……
暗視は私も用意するわね。
とりあえずヒーリングオーラのセットはしております。 後かなりの駄目元ですが、騎士達への呼びかけを入れております。 傀儡かもしれませんが、この状況をきっかけがあれば打破してくれる意思を持つ方もいらっしゃるのでは、と。 いくら独裁でも、実際に民を傷つけるような行動をしたのですし これでいいのかと内心迷っている人がいれば、あるいはと。 善性があることに期待、ですけどね