学び舎の門に花を添え

コースケ

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シナリオID:2946

オープニング

●新学期
 リーンエス王国の王都グランスパーダにあるパンクリアース学園。
 元々は王国貴族、騎士の子息子女や、他国の有力者を始めとする裕福な者が学ぶ名門校であったが、新学園長フォルトゥナ・アルヴァ・クラティアスの改革により、「貴族のための学園」から「開かれた学園」へと変わりつつある。
 その成果か、今年の新入生には貴族や商人の子息子女だけでなく、シルトラース帝国崩壊後に目覚めた冒険者の姿も去年に続き見受けられていた。
 そんな新入生を眺めながら、在校生であるガーデニング愛好会(通称:庭愛会)の会長であるリエル・サンウッドはぐっと拳を握って宣言する。

「さあ、今年も新入部員の勧誘の季節がやって来たわ。部員(=労働力&部費)獲得のため頑張りましょう!」
「気持ちは分かるんですけど、貴族の子女としてその様子はどうかと思うんですが……」

 そんなリエルの横で、特殊作物研究部(通称:特作研)の部長、セネシオ・リネンシスが呆れたように呟くが、リエルは改める気は無い様である。

「でも、特作研(そっち)も人が減ってるんだし、真剣に人を集めないと存続が危ないんじゃない?」
「それはそうなんですが……」

 庭愛会は園芸部、特作研は農業研究会から派生した部活であり、どちらも本家より人数の少ない弱小部活動であるため、部員が少なければ活動に支障が出る。
 庭愛会は学園の敷地内にある憩いの森の一つの管理を担当し、特作研は郊外にある農場で作物の研究をしているため、人手は多ければ多い方が良いのだ。

「今のところは互いに協力しあって対応してるけど、大がかりな事をするならもっと人手が欲しいし。前は他の部活にも応援頼めたんだけどなあ」
「すみません。僕は先輩みたく交流広くないので……」
「私も土を弄ってくれる友達は多くないのよね……」

 揃って卒業した先代の特作研部長の抜けた穴の大きさにため息を付く。そんな二人の所へ、新入生らしい明るい金髪の少年が向かって来るなり声を上げた。

「お前が姉様をたぶらかした男か!」
「えっ? す、すいません?」
「ちょっと、誤解されるでしょ!?」


●歓迎会のお誘い
「そういう事があったのですね」

 学園内の憩いの森の一角で、庭愛会と特作研の顧問である年配の女性教員、カメリアの前にリエルとセネシオ、金髪の少年が立っていた。
 セネシオをリエルの恋人と勘違いした金髪の少年ことエリク・サンウッド――つまりリエルの弟――が詰め寄って騒ぎになり、顧問の耳に入ってその説明をしていたのだ。

「エリクさん、貴方も王国貴族の子息としていずれ領地を守って行かなければなりません。軽率な行動は控えます様に」
「……はい」

 カメリアに窘められ、しおらしくエリクが俯く。一時の感情に走りはしたが、根は素直な少年らしい。

「それに、リエルさんの選ばれた方は良い方です。この憩いの森も、リエルさんとその方が部長を務める、ガーデニング愛好会と特殊作物研究部が周りの手を借りて造成し、管理して来たものです」
「ここを姉様達が?」

 エリクが見渡す憩いの森は中央に小川が流れ、それを境に様々な木々が植えられている。それらを縫って遊歩道が設置され、日当たりの良い場所には花壇もあり、三色菫(パンジー)の鮮やかな花や、風鈴草(カンパニュラ)の淡い青や白が風に揺れていた。

「立派でしょう? 実際に会う事は出来ませんけれど、これらを見てどんな人物か想像する事は出来るでしょう」
「……はい。姉様、カメリア先生のおっしゃる様に、その方は立派な方なのですね」
「え? ええ、勿論よ?」

 話題を振られたリエルの脳裏にあんなこと(侵略的植物合戦)やこんなこと(決闘騒動)が浮かぶが、誤魔化すためにコクコクと頷く。

「折角ですし、エリクさんにも歓迎会に参加して貰ってはどうですか?」
「歓迎会?」

 聞き返すエリクに、カメリアはこの憩いの森で、新入生歓迎会と称した花見を兼ねたお茶会を催し、新入部員獲得を目指す計画を立てている事を説明する。

「……そういう事なら、参加させて貰おうかな」

 チラッとリエルを見て参加を表明するエリクに、カメリアは満足そうに頷いた。

「はい。よろしくお願いいたします。良い学園生活が送れますよう、教員として尽力させて頂きますね」

解説

ガーデニング愛好会と特殊作物研究部による部活紹介を兼ねた新入生歓迎会を、パンクリアース学園内の憩いの森で行います。 学園生、聴講生どちらでも参加出来ます。 『歓迎する側』『歓迎される側』どちらでの参加も歓迎です。特に制限はありませんので、お好きな方で参加して下さい(学園の二年生以上が歓迎される側でも大丈夫ですよ!) 歓迎する側の場合、庭愛会か特作研の部員、もしくは協力者ということになります。軽食やお菓子、お茶を出したり、植物について語るなど、得意な事でもてなして頂ければ。 ●人物 リエル・サンウッド リーンエス王国南部に領地を持つ貴族派貴族、サンウッド子爵家の長女でパンクリアース学園5年生の16歳。 ガーデニング愛好会(通称:庭愛会)の会長であり、明るい金髪を動きやすいよう後ろで結んだ快活な少女で、誰にでも親切に接するため男女問わず人気がありますが、卒業した特殊作物研究部の前部長と結婚の約束をしています。 歓迎会では全体の指揮を取ります。 セネシオ・リネンシス リーンエス王国東部に領地を持つ中立派貴族、リネンシス男爵家の次男でパンクリアース学園4年生の15歳。 特殊作物研究部(通称:特作研)の部長であり、研究者気質の内気な少年で前に出ることは苦手。 歓迎会では裏方で調理担当。 エリク・サンウッド リエルの弟でパンクリアース学園1年生の12歳。 学園卒業と共に王党派貴族の元へ嫁ぐ姉が心配で無理を言って学園に入学して来た。姉に近付く男へは威嚇から入る。 授恵者でクラスはウォーリアだがまだまだ修行中。 歓迎会ではもてなされる方。 カメリア パンクリアース学園教員で庭愛会の顧問だったが、仲の悪かった特作研が庭愛会と和解したため今年度から特作研の顧問も兼任することになった。温和な性格で多少の問題は生徒の自主性に任せて見守る主義。 その他、庭愛会と特作研のモブ部員達(少数) 足りないところに入ります。 ●憩いの森 テニスコート2面分ほどの敷地に、水車で汲み上げられた水が流れる小川があり、中央に中洲のような休憩スペースがあります。 小川を挟んで西に針葉樹、東は広葉樹中心に植えられており、東側には小鳥用の巣箱あり。 花壇には三色菫や風鈴草等、果樹のスペースには木苺とブルーベリーが花を咲かせています。苔桃の花はもう少し先で、桜は植えたばかりなので開花は来年以降です。 木製の遊歩道とベンチやテーブル、屑籠が各所に設置されています。

マスターより

お世話になっております。コースケです。 新学期ということで、部員獲得に燃える庭愛会と特作研による新入生歓迎会シナリオです。 新入生に限らずお茶を飲んでも良いですし、庭愛会と特作研の応援も歓迎です。 また、希望すれば『ガーデニング同好会』か『特殊作物研究部』どちらかへの入部も可能です。プレイングに書いていただければ、称号として付与させて頂きます。 学園内での立ち位置の一つとしてどうでしょう? PCはパンクリアース学園関連の設定がなくても、聴講生として学園内で行動したり、部活動への参加もできるので、どんな方も気兼ねなく参加して頂けたらと思います。この機会にパンクリアース学園に接してみるのも如何でしょうか。 質問などありましたら、ちゃっかり紛れ込んでいる何でも屋のオッターが答えます。 それでは、よろしければご参加お願いいたします。

リプレイ

●陽春
 朝晩はまだ冷えるとはいえ、登った日の下で肌は汗ばむほどの陽気となっていた。
 木々の間から小鳥の鳴き声が聞こえ、見上げれば黒い背に目の上とお腹が黄色い小鳥が見える。

「……風が、気持ち、いい……ですね」
「はい。それに、新緑の香りも心が落ち着きます」

 中央を流れる小川脇の遊歩道を歩きながら、ミゼリア・L(レーテラ)・ステュクスと、コルネリウス・アーラが森を抜ける風に目を細める。
 パンクリアース学園の一年生であるミゼリアは、友人であり、同じ新聞部の仲間であるコルネリウスの誘いで森の案内を受けていた。
 ガーデニング愛好会(以下:庭愛会)にも所属するコルネリウスが、綺麗に花を咲かせた三色菫(パンジー)と風鈴草(カンパニュラ)を満足げに紹介し、ミゼリアも無表情ながらじっと食い入るように眺めているところを見ると、彼女なりに楽しんでいるらしい。

「三色菫や風鈴草は、先日春に向けて植えたもので、どちらも私の好きな花なんです」
「なる……ほど。……お花も、きれいですが……お花を背景にしているコルネリウスさん……いつもよりも、さらに……きれい……です」
「……もう!」

 コルネリウスは顔を赤くして声を上げる。ホムンクルスであり、その前の記憶が失われたミゼリアの精神年齢は幼子に近く、真っ直ぐな言葉は受けとる方が気恥ずかしい。
 だが、美しい花を背に好きなものについて語るコルネリウスの笑顔は、木漏れ日に浮かび上がって非常に絵になっていたのも事実である。

「……気に入って貰えたなら嬉しいです。季節ごとに色々なお花が咲くように植えているので、いつ訪れても楽しいですよ」
「はい。楽しみ……です。……わたしは、新聞部で、コルネリウスさんと一緒にいられて……とても、嬉しいですし……いまも、こうして一緒におさんぽ、できて……とても、幸せ……です」
「……私も嬉しいですけど、誰にでもそんなことを言ってはいけませんよ? 特に男性には!」
「……?」

 垂れ下がった耳まで赤くしたコルネリウスの言葉に、ミゼリアは首を傾げた。


(……土の匂いはどこも同じね)

 遊歩道を歩くアウレーリア・フォン・ネーベルベルクは、匂いに紐付けられた記憶を思い出していた。
 授恵者に目覚める前は病弱であったアウレーリアにとって、外との繋がりは中庭の花壇と窓の外の麦畑だけであり、微かな土の匂いで今は無き故郷への感傷が呼び起こされる事に驚きもしたが、それらを表に出さず足を進める。
 やがて憩いの森の入口で声を上げている人物が目に止まる。どうやら園芸系の部活が新入生に勧誘を行っているようだ。

「……そうね、王国の農業技術を学び祖国に持ち帰る為、ということにしましょう」

 アウレーリアは従者の言葉を思い出し、そちらへ歩き出した。


●憩いの森の入口で
「こちらガーデニング同好会と、特殊作物研究部でーす。お茶とお菓子で休憩されていきませんかー?」
「……お願いします」

 庭愛会会長のリエル・サンウッドが声を上げている。隣に立つ特殊作物研究部(以下特作研)部長のセネシオ・リネンシスはこういう事は苦手だったが、リエルに引っ張り出されていた。

「見学、よろしいでしょうか?」
「あっ……うん。二人、良いか?」
「大丈夫ですよー!」

 ネーヴェ・グラヌローザと、アルフィー・リッパーの申し出にリエルは笑顔で対応し、憩いの森の中に置かれた席へ案内される。

「新緑の香りが気持ちいいですわね。散策にも良さそうです」
「凄いな、自然になじんでいるのに手入れが行き届いて生き生きとしている」
「本当に……隅々まで手入れを行うのは労力の他に技術も要するでしょうに、本当に凄いですわ」

 初めてここを訪れる二人は、周囲の木々や草花を眺めながら椅子に座る。五枚の白い花弁の木苺(ラズベリー)や、ブルーベリーの白やピンクの釣鐘型の花が風に揺れ、まだ若木が多いとはいえ多くの木々が梢を伸ばし、新緑の葉を繁らせていた。
 手入れには大きな労力と愛情が必要だろう事を想像し、ネーヴェも感嘆の声を上げる。

「……その、ありがとな。付き合ってくれて」

 突然しゅんと猫耳と尻尾を垂らし済まなさそうに礼を言うアルフィーに、ネーヴェはその不安を払拭するよう笑みを向ける。

「実は私(わたくし)も、部活動がどのようなものか興味ありましたの。ですが1人ですとなかなか勇気が出ないもので、良い機会を頂けて嬉しいですわ。お陰でこんな素敵な場所を見付けられましたもの」

 その言葉に耳と尻尾をピン、と立て喜びが表に出るアルフィーに再び微笑んでいると、給仕としてローザリカ・L(リベラ)・ディオールがやって来る。

「ネーヴェ君じゃないか。良く来てくれたね。ゆっくりしていってくれたまえ」
「ローザリカ様もこちらの所属でしたのね? お邪魔させて頂いてますわ」

 ローザリカは会計、ネーヴェは庶務と、共に現在の生徒会役員であり、予期せぬ出会いに笑顔で挨拶を交わす。

「君達も見学かい?」
「はい。今日はアルフィーさんと見学に来ましたの」

 その言葉に、少し距離を置いていたアルフィーはネーヴェを見やるが、微笑みで促され意を決して口を開く。

「あの……俺、ガーデニングに興味があって! ここを管理してるのあんた達だろう? 良かったら、俺にも教えて欲しいんだ」

 人見知りなアルフィーが、必死に自分の気持ちを言葉にするのをネーヴェが見守っている。その眼差しにチラリと目をやり、ローザリカは頷いて笑顔を見せる。

「そういう事なら大歓迎だ。後で会長達にも紹介しよう。とりあえず今はお茶を楽しんでいくといい」
「ありがとう! その、良かったら鉢植えとかやってみたい」

(アルフィーさん、頑張りましたわね)

 そんなアルフィーを、ネーヴェは終始笑顔で見守っていた。


「接客側(ホスト)はこちらなので、気兼ね無くお茶会を楽しんで頂ければ」
「まあ。そういう事でしたら、お言葉に甘えさせて頂こうかしら?」

 庭愛会に所属するジュスト・ヴェルジーが対応しているのは、とある王国貴族の令嬢達であった。
 ヴェルジー伯爵家の令息であり、今期のパンクリアース学園副会長でもあるジュストを見かけてここを訪れた令嬢達は、憩いの森とジュストの関係について質問を投げかける。

「そう言えば、ご領地は翡翠の園と呼ばれる程の雅景と伺っておりますわ」
「こちらの森はそちらを参考にされたのでしょうか?」
「その名を貴女方がご存知とは光栄ですね。ですが、ここはフィルエス大森林を参考に、故郷を離れ学園に通う生徒の落ち着ける場となるよう造られた憩いの森なのです。……勿論、こうして貴族が使うこともね?」
「なるほど。学園が開かれていると聞いて不安でしたけれど、思っていたより楽しい学園生活になりそうですわね?」

 茶目っ気を見せてウインクするジュストに笑いかけ、令嬢達は肩の力を抜いてお茶会を楽しむ事にしたようだ。


「皆は花々は好きかな?」

 ローザリカも別の貴族の対応に回っていた。自身の体験を元に、自らが育てた植物が育ち花開く時の喜びを語り、興味を持ってくれそうな相手にはそれ以外の活動についても説明する。

「ディオール様はその様な体験をされているのですね」
「ああ。得られるものはたくさんだ。興味を持っていただけたなら嬉しく思う」

 そう言って、ローザリカはクッキーの皿に白い花を添えた。

「これは?」
「苺の花だよ。苺には先見の明という花言葉もあってね、君の入部を期待しているよ?」


●主と従者
「ふむ。あの二人感じが変わったな」
「そうですね。良い傾向だと思います」
「そうでしょうか? 先程もディオール様が給仕の格好をしようとするのを、ヴェルジー様が止めていた様ですが……」

 ジュストとローザリカの様子を、ナタリア・フィッツジェラルドとコルネリウス、セネシオが眺めていた。

「そういう所は変わらなくても、お互いが大切な人だという実感があれば余裕も出てくるものですよ。お二人は正式に婚約を発表されたんだから」
「そういうものでしょうか……?」

 コルネリウスの言葉にセネシオは首を傾げる。しかし、以前のジュストとローザリカなら互いの婚約者に異性が近付く事に過敏に反応していただろう。
 そんな所に、咳払いと共にナタリアが弟子兼主君と仰ぐアウレーリアが苦笑いをして声をかける。

「うちの従者はここに人間観察をしに来ているのかしら?」
「まさか。日々研鑽も積んでいるとも」

 アウレーリアの問いにおどけて答えるナタリアは、庭愛会と特作研双方に籍を起き、一年前にこの憩いの森を造る以前からリエル達に関わって来ており、園芸関係の知識はそれなりに蓄えている。

「それなら、幾つか聞かせて貰いたいのだけれど。まず、『特殊』作物とはどういうものかしら?」
「一般に栽培されている作物とは違う性質を持つ作物だ。例えば、サウゼル竹という大樹海産の植物がある。原産地のものは筍と呼ばれる新芽でもアクが強く食用には適さないが、王国の肥沃な大地で適した肥料を与えれば食用に適した作物として利用出来る上、丈夫で成長も早く工芸に利用出来る等利点も多い。特作研とはそういったものを研究する部活だな」

 ナタリアは専門用語を避け、初心者でも理解出来るよう心がけて回答する。

「なるほど。では、農業研との違いと強みは?」
「特作研(こちら)の方が規模が小さく、特殊な作物を扱っている事だろう。部費や人員、使える施設が少ない欠点もあるが、その分農業研究会(あちら)より挑戦的な研究を行える強みがある。例えば荒れた寒冷地でも育つ作物を発見・改良するなら、特作研の方が実行し易いだろう」

 互いの目的を意識したナタリアの返答に、アウレーリアは満足そうに頷く。そして、次の質問を投げかけた。

「役立つ研究成果は出そう? それと、会計状況と改善計画についても説明を」


「質問というより査定ですね……」
「大変そう……です」

 アウレーリアの質問責めに、セネシオとリエルも応援に対応しているが……、

「部費や人員が少なく苦しいなら、合併してしまえば良くないかしら?」
「えっ!? ええと、協力はしてますけどそれぞれやることは違うので……」
「そうですね。それに、部を纏めても部費が倍になる保証は無いですし」
「会計や活動を整理して、プラスに持ち込む方法は模索したのかしら?」
「うっ……!」

 中々苦戦している様子であった。


●ティータイム
「終わった……!!」
「…………」
「お疲れさまです」

 宣伝を終えたリエルが解放感に浸り、セネシオはぐったりと椅子にもたれ掛かっている。
 それを労ってコルネリウスが紅茶を出し、アルフィーとアウレーリア達入部希望者へ声をかける。

「紅茶以外にもおすすめのハーブティーなど、お好みのものがあればお淹れしますよ?」
「それじゃあ、そのお勧めを頂こうかしら」
「じゃあ俺も……」
「私もお邪魔させて頂いて宜しかったのでしょうか?」

 アルフィーに同席したネーヴェが申し訳なさそうにしているが、コルネリウスは隣の席のミゼリアを見て頷く。

「アルフィーさんのお友達なら歓迎しますよ? それに、私も友達を呼んでますから」
「そうでしたの。では、お言葉に甘えさせて頂きますね?」

 互いに笑みを交わして頷き合うと、ネーヴェもお勧めのハーブティーを頼んでコルネリウスがお茶を煎れる。
 やがて全員にお茶が行き渡り、お茶請けのお菓子やアルフィーが持参した弁当などに手を伸ばしながら話に花を咲かせる。

「六学年で生徒会副会長も務めているジュスト・ヴェルジーだ。依頼が縁で婚約者共々昨年からガーデニング愛好会に協力させて貰っているよ」
「同じく六学年、生徒会会計でもあるローザリカ・L・ディオール。どうぞよろしく」
「!? あ、はい。こちらこそ姉さ……姉がお世話になっています!」

 リエルの弟であるエリクの警戒する視線に気付いていたジュストは、物腰柔らかくエリクに笑いかけ、ローザリカは自己紹介をしながら婚約者を酷評する。

「ここには彼と共に入部させて貰ってね。どうにも信用ならない笑顔の蝶のような男ではあるが、婚約者である僕がしっかりと他の花には寄り付かないよう見張っているから安心して貰っていい」
「???」

 慣れた者なら何時ものじゃれ合いと受け流すのだが、初対面かつ12歳の少年には混乱を招いたようで、コルネリウスが助け船を出した。

「お二人ともエリクさんを戸惑わせないで下さいね? 申し遅れましたが、私はコルネリウスといいます。リエルさんの弟さんなんですね。いつもお姉様にお世話になっています」
「あ、はい。此方こそ、……うわあぁあ!?」

 柔らかく笑うコルネリウスにどぎまぎするエリクだったが、コルネリウスの友人のミゼリアがひょい、と覗き込むと、エリクはぎょっとして椅子から転げ落ちた。
 ミゼリアの体型と身に纏う漆黒の襤褸布(かつてドレスだったもの)は12歳の少年には刺激が強すぎた。

「大丈夫、です……?」
「ち、近……!」
「血……? お怪我なら、治しま、しょうか……?」
「ミゼリアさんっ!? 大丈夫ですから一旦離れましょう!」

 心配して身を寄せたミゼリアに、顔を真っ赤にしたエリクが近いと訴えるが通じず、コルネリウスが押さえて事なき(?)を得た。

「あの子、性癖歪まないと良いけど……」
「少年はこの先苦労するな」

 隣の席ではリエルがこめかみを押さえ、ナタリアは呑気にカップを口に運んでいた。


●歓迎会を終え
「ありがとうございます。ようこそガーデニング愛好会へ!」
「よろしく」

 活動の結果、何人かの一般生徒が入部を決め、リエルとセネシオも幸先の良い新年度のスタートを喜んでいた。

「俺、もっとガーデニングのこと勉強したい。花で一杯にしたい場所があるんだ! だから……入れて貰えるか?」
「大歓迎ですよ! 気候や土壌を調べて、そこに合ったお花を一緒に選びましょう!」
「…………」

 お茶の後、鉢植えを体験したアルフィーも庭愛会へ入部を伝え、一緒に体験もしたネーヴェがにこにことそれを見守っている。

「私は特殊作物研究部へ入部させて貰うわ」
「ありがとうございます。寒冷地で育つ食料なら、甘薯の品種改良とか良いかも知れませんね」

 アウレーリアは先程の質問から吟味した結果、特作研へ入部を伝える。

(どちらも貴族のお遊びの延長だけど、双方部長の熱意は本物ね)

 それなら、より実用性の高い特作研の方が良いだろうとの考えだった。


●帰路
「これ、やるよ。一緒に来てくれたお礼」
「良いんですの?」

 頷くアルフィーがネーヴェに渡したのは、白い蕾の付く苗を植えた鉢だった。花壇用のペチュニアを、アルフィーが気に入って一株鉢に植えさせて貰ったものだ。

「教わった通りやったから、きっと花は咲くと思う。もし咲かなかったらごめんだけど……」
「いいえ。きっと咲きますわ。アルフィーさんが一生懸命植えたんですもの。ありがとうございます。大切にしますね?」

 不安そうに視線を落とすアルフィーに向かい、ネーヴェは今日一番の笑顔を見せた。

マスターコメント

お待たせしました。 アルフィーさんと数名の一般生徒がガーデニング愛好会へ、アウレーリアさんと少数(ガーデニング愛好会よりは少ない)の一般生徒が特殊作物研究部へ入部となりました。 元々はリエル一人だった庭愛会も安泰ですね。これも皆さんのお陰です。ありがとうございます。 特作研はこれ迄の出番の偏りから人は居ない様に見えますが、開始時は数人居た想定なので行間に潜んでる(セネシオとかその筆頭)と思います。王国は農業が盛んな所なので家業のために学園で農業を学ぶ貴族も居るでしょう。 緩く続いてる話なので確約は出来ませんが、世界の情勢を見ながら次はベリー類の収穫など出来たらと考えておりますので、無事に公開出来ましたら遊びに来ていただけると嬉しく思います。 ご参加ありがとうございました。リプレイ楽しんでいただければ幸いです。
ショートシナリオ

ショートシナリオ易しい 報酬:少ない8 / 4〜8人

2023年05月11日 11時54分35秒 公開

大成功

相談掲示板

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0