【古砦】奪還への一歩

七海真砂

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シナリオID:2936

オープニング

「今こそ『古砦都市シャルト』を奪還すべき時ではないでしょうか、殿下」

 その日、レイウェスト・バルダスの元を訪れたのは、各地の役人や武官の集まりであった。所属がバラバラな彼らに共通しているのは、全員がその首元に、赤い布の首飾りを付けていること。
 それは彼らが首捧派――シルトラース帝国の歴史に名を残す大英雄、『首刈帝』クジンリーネ・バルダスを武の女神として崇めている信奉者たち――であることを意味していた。

「シャルト。建国王イェーラウ・バルダスの御世に砦が築かれ、発展していった都市だな」
「はい。そして我らの間ではこうも言い伝えられております。クジンリーネ様の愛した都市である、と」
 一説によれば、このシャルトの砦から眺める景色を、クジンリーネは大層気に入っていたという。だが、『天霧りに消ゆる幽界樹』の出現によって、シャルトもまた崩壊した。生き残りの難民が、ほとんど存在しないほどに……。

「無論、我らはクジンリーネ様のことだけを理由に、シャルトの奪還を奏上に参ったのではありません。シャルトは帝都シルトラースに程近い場所にありますから、帝都奪還の為の拠点を確保するという意味でも、シャルトを取り戻す価値があるのではと愚考いたします」
「ふむ……」
 彼らの意見は一理ある。バルディオンが彼らの謁見を取り次いだのも、それゆえのことだろう。
「昨年の末には、幽界樹の黒い霧を無力化する紋具も開発されたと伺っております。長い冬も終わり、遠征には良い時期。まさに、機が熟したのではないでしょうか」
 帝国魔導院エスタル支部長であった、クライス・アクバーが開発した『凝黒紋具』のことも聞き及んでいるようだ。これを使えば、この南部鎮守都市ヴィントを奪還した時よりも容易に、シャルトを奪還できるだろう。

「わかった。検討してみよう」
「ありがとうございます」

 そうしてレイウェストは検討を重ねた上で、一つの結論を出す。
 ――古砦都市シャルトの奪還のために兵を動かす、と。

●奪還への一歩
「という訳で、まずは古砦都市シャルトの南側に拠点を確保することになりまして。冒険者の皆さんにも加勢を依頼したいというのが、殿下や首捧派の皆さんの意見なんです」
「ほうほう」
 冒険者ギルドに依頼を持ってきた、兵士ナルディの説明を聞いて頷いたのは、クーネ・ルウことクーネさんであった。
「シャルトか……」
「何か覚えていらっしゃるんですか?」
「ああ、いや、うーん、覚えているような覚えていないような」
 自称・記憶喪失のクーネさんだからか、どうにもハッキリしない答えが返って来る。それよりも、とクーネさんは言った。
「拠点というのは? あの『黒い霧』の外側に作るんだろう?」
「あ、はい。『凝黒紋具』を使うにも、その為の場所を確保しなければいけませんので」
 クライス・アクバーから使用の許可は取ってある。あとは、実際にシャルトへ切り込んで、外周部にいるクリーパーを倒し、安全なエリア――拠点を確保する必要があるだろう。

「冒険者の皆さんにお願いしたいのは主に二つ。まずは偵察ですね。外周部の状況を確認して、拠点に良さげな場所を選定して欲しいんです」
 現地にいるクリーパーの数や能力など、多くのことが不明な状態だ。そのような状況下での偵察には、冒険者達の力を借りるべきだろうと、レイウェスト達は判断したらしい。
「その上で、クリーパーを討伐し、拠点の確保をお願いします。同行する兵士は四百名ほど、彼らはそのまま拠点の護衛任務に就きますので、協力して任務に当たっていただけましたら、と思います」
「なるほど、なるほど」
 兵士ナルディの説明を聞いて頷いたクーネさんは「私も行こうかな」と呟く。
 すると、ナルディの向こう側で、一人の老女が顔を輝かせた。
「まあ! クーネさんのご活躍は北の同志からも聞いておりますわ! ご一緒いただけるとは心強い!」
「……あなたは?」
「これは失礼しました。とある街で役人をしております、アンゼリカと申します。今回の奪還作戦に記録係として同行させて頂く者です」
 会釈をして陽気に笑う、アンゼリカの首には、赤い布の首飾りが付いていた。

解説

●古砦都市シャルト  黒い霧に覆われていて、あまり詳しい状況は見えませんが、だいたい瓦礫の山になっています。 ●偵察について  だいたい次のようなことが判ります。 1:南側の外周部には小さな川が流れていて、クリーパーが徘徊している様子が見られます。今回確保する拠点は、しばらく使うことになる為(予定)、水場の近くに確保すると便利かもしれません。ただし水場に近い方がクリーパーも多いようです。 2:諸々の情報から、『天霧りに消ゆる幽界樹』はシャルトの西部の一角に生えていると推測されます。西寄りに拠点を確保すると、今後行う奪還作戦の難易度が下がるかもしれません。ただし、西寄りになればなるほどクリーパーの数が多く、強くなる傾向があり、今回の拠点確保の難易度そのものは高くなります。 3:クリーパーは多種多様なものがいます。おおむね小型ですが、西にいくにつれて中型が増えていきます。  上記を踏まえて、拠点の位置「川の近くor遠く」「西or東」を決めてあげてください。 ●同行する人達 ・クーネさん  宝剣マフダルという、つよつよな剣を持っているおねーさん。長く戦うと疲れるのでもう戦えない~とか言う。 ・アンゼリカ  シャルト奪還の記録を付けにやってきたおばーさん。戦闘では多分役に立たないので一番後ろにいる。 ・兵士の皆さん  前衛後衛は半々くらい。仮に五十人ずつ八つの部隊に分かれているが、再編成してもOK。皆さん協力的なので、作戦や要請があれば聞いてくれます。

マスターより

 こんにちは、七海真砂です。  【古砦】という連作が始まりました。  やることは、わかりやすく『都市の奪還』です。  今回は『拠点を確保できれば成功、できなければ失敗』。わかりやすいですね。  難易度は『難しい』ですが、解説欄にある通りで、『確保する拠点の位置をどこにするか』で更に変わります。  その上でクリーパーを討伐するわけですが、クーネさんや兵士の皆さんもいますので、うまくいい感じに協力して戦うのがポイント……かもしれません。  その他、拠点を作るのに必要そうなことがあれば、プレイングでどうぞ。  それではご参加、お待ちしています。

リプレイ

「帝都奪還の足がかりですね。有用な拠点になるよう頑張りましょう!」
「ああ。今の俺に出来る限りの力を尽くすぜ」
 トーラの言葉に、アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが頷き返す。シャルト奪還が上手くいけば、きっとレイウェストの役に立つ。その為にも、と二人の目には力がこもる。
「水場に近い場所が良いだろうな」
「そうね。最優先で考えて良いと思うわ」
 ナタリア・フィッツジェラルドとアウレーリア・フォン・ネーベルベルクは、現地に川があることを知ると、その付近に拠点を設けるのが良いだろうと当たりをつける。
 渇きを癒すことは勿論、衛生面を考慮しても潤沢な水が手に入る環境は欠かせないだろうと、二人は互いに持つ知識から結論付けていた。
「しばらく使うとはいえ、そこまで長期で使うわけでもない……となると、わざわざ水場から離して作るのは非効率か」
 確かにな、と頷いたベルク・オスマットは、川の手前側に拠点を作れないだろうかと提案する。川を挟むことでより川を活用でき、安全を確保できるのではと考えてのことだ。
「ええ。川自体を防衛線としましょう」
 アウレーリアもそれには賛成だった。詳しい位置は現地を確認してからになるだろうが、
「敵戦力は慎重に確認しましょう。一時的に制圧できても、のちに耐えきれず壊滅しては意味がないわ。そうね……一般兵の部隊、50名程で遭遇戦に対処できる程度、が目安かしら……」
「賛成です。余力は残しておいた方が良いでしょうから」
 全力で進むのではなく、余裕を残せる位置に拠点を設けるという方針には、エイル・アーティライトも頷く。周辺を掃討するとなると兵士達も相応に疲弊するだろうし、拠点の維持という点からも、全力で道を切り拓くというのは懸念が大きい。
(そうね……この方針なら、兵士の人達が大損害を受けるような戦いには、ならないと思うし)
 弓の手入れをしながら、ユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアは無言で皆の話に耳を傾ける。大まかな方針は大丈夫そうだと判断すると、「じゃあ詳しい方針を擦り合わせておきましょう」と各部隊の隊長や仲間達に呼びかける。
「私は弓兵一部隊と一緒に後方支援に入るわ。弓での支援と、あとは飛行型のクリーパーの対処ね」
 見かけたら最優先で対処するわ、と告げるユニスに、「じゃあ私は前衛の皆さんと一緒に」とトーラが声を上げる。ハヤト=ガラン=ヴォルファングが一番新兵の多い部隊の隊長と打ち合わせをする一方、エイルは「具体的な指揮はお任せしますが」と前置きしつつ、行動の方針を伝えておく。
「クーネさんは、中型以上のクリーパーが複数同時に現れた時に備えてほしい。だけど兵士の人たちの損害が大きくなる状況だと判断したら、その時点で動いてもらう……どう?」
「うむ、そうしようか」
 ユニスに呼びかけられたクーネさんが頷き返す。それまで寝ていてもいいですよ、というエイルの言葉に、思わず笑ったのは、出立前の様子を記録していたアンゼリカだ。
「ふふっ、冗談を言える余裕があるなら、大丈夫そうですわね」
 頼もしくて何よりです、と微笑んだアンゼリカは皆の様子の記録に徹し、作戦の内容などに口を挟んでくる事は無かった。

 そうしてナタリアの呼びかけで一度補給を行い、一行は万全の状態を整えて先へ進む。
「いるな。確実に仕留めていくぞ」
「ええ。皆さん、頭上にも気を付けて」
 弓を構えたアルベルトの言葉に頷き、ユニスは上空に目をやる。数は少ないが、鳥のような姿をしたクリーパーの影が見える。それらを射程に捉えると弓兵達は一斉に射撃を開始し、クリーパーを狙う。
「穴を作らないように足並みを合わせて前進し、倒していきましょう!」
 トーラが注意を呼び掛ける中、前衛の兵士達も進む。攻め込まれるような穴を作らないように意識し、反対に敵を包囲しながら仕留めに掛かる。その間に、射撃によって集中攻撃を受けた飛行型のクリーパーが力尽き、落下していく。
(この辺りにいる小型クリーパーであれば、兵士の皆さんに任せて大丈夫そうですね)
 竜石の長杖から魔法を放ちつつ、エイルは兵士達の力量を確認していく。クリーパーの数がそれほど多くないのもあるだろうが、この様子なら、力は温存しても大丈夫そうだ。
「川の方にもいますね……あの辺りまで一度倒してしまいましょうか」
「そうね。調査も兼ねて行きましょう」
 少し先に見える川の様子を見やったトーラに、アウレーリアが頷くと、「んじゃ、連携を崩さないように気を付けて進むぞ!」とハヤトが呼びかける。その声に呼応するように、兵士達が進んだ。
「クリーパーを相手取る時は、俺ら授恵者だって単独での戦闘は避けるんだ。攻撃役、防御役、支援役……役割分担をしながら協力して進み、戦い、敵の隙を突く!」
 クリーパーとの戦い方を伝授するように呼び掛けながら、ハヤト自身も焔雷獣の拳爪蹴牙で敵を蹴り飛ばす。そこに間髪置かず兵士達の攻撃が続くと「おーし、この調子だぜ!」と攻勢を仕掛けていく。
「顔を出していた奴らは仕留めたぜ」
「ありがとう!」
 川に向けて矢を放っていたアルベルトの声に礼を告げ、トーラは水中の気配を手繰る。
 いる――見つけ出した敵に向かってトリプルファングを繰り出せば、跳ねた魚型クリーパーに向けて後続の兵達が続く。そうして兵士達と共に一帯のクリーパーを倒しきると、アウレーリアは脳裏の地図をアップデートする。
「ここより東の偵察はもういいわね。西側だけお願い」
「おう、任せときな!」
 ハヤトは頷くとトーラと共に偵察に出る。あとは、具体的にどの辺りに拠点を設けるかの目星をつけておきたいからだ。
「今のうちに怪我人の手当てをしてしまおう。ちょうど、あそこに生えている薬草が使えそうだ」
 その間に、ナタリアは川辺に生えていた薬草を摘みながら、兵士達の傷の手当てをして回る。エイルも周囲の兵士の様子を確認するが、負傷者といっても軽傷の者ばかりだ。
(この練度であれば、中型との戦闘もある程度いけそうだけれど……)
 ローテーションを意識した布陣に切り替えた方が、消耗を抑えられるかもしれない。エイルは各部隊の隊長に、布陣の仕方を工夫できないだろうかと相談していった。

「中型が増えて来たな……アウレーリアが言っていた目安を考えると、この辺か?」
「そうですね。あそこ、少し小高くなっていますけど、どうでしょう」
 拠点を設けるなら、地形的に向いているのではないかと目星を付けながら、ハヤトとトーラは周辺の様子を確認していく。
 クリーパーは、小型のものならば二人だけで撃破できるかもしれないが、中型となると厳しい。その為、中型クリーパーは迂回し、感知された場合は疾風足で振り切りながら偵察を進める。
 結果、最終的に結構な距離を駆け回りながら、ハヤトとトーラは帰還していた。
「なるほど、丘は確かに利用できそうだ」
 ベルクは頷くと、トーラが目算した川幅を確認する。それほど広くは無いから、簡易な橋ならば割とすぐに掛けられるだろう。
「丘までは最短距離を進んでいきましょう。ほぼ真西へ進む形ね。途中にいるクリーパーと、丘の周囲にいるクリーパーを掃討すれば、一定の安全が確保できるはずだわ」
「よし。行けそうか?」
 アウレーリアが話を纏め、ナタリアが兵士の皆を振り返る。偵察の間、十分な休息を取ることができた兵士達は、部隊長を筆頭に力強く頷き返す。
「真西側には樹木型のクリーパーが多数見られました。根を伸ばして動き回るタイプのようでしたから、足元からの攻撃にも気を付けてくださいね」
「弱点的な偏りは掴めなかったから、バランス良く布陣しながら狙うのが良さげだな。中型も、速度は大したこと無かったから、落ち着いて対処すれば大丈夫だぜ」
 トーラとハヤトが見かけたクリーパーの情報を皆で共有しながら西へ進めば、程無くしてクリーパーに遭遇する。再びユニスらが射撃の構えを取り、先制攻撃を仕掛けながら前進していく。
「これは……根か!」
 ベルクは微かな違和感を感じ取り、地中を這いながら進んで来た根を回避する。ハヤトはすぐさま藍玄の忍刀を抜きながら跳躍し、まるで竜巻と化したかのような連撃を振り下ろして反対に根を切り刻んでいく。
「ローテーションを生かして、体勢を立て直しましょう」
 前に出たエイルが氷嵐を巻き起こしてクリーパーを呑み込む、その隙にアルベルトやハヤト、アウレーリア達が無事な兵士を先へ行かせて、攻撃に当たらせる。
「怪我は、深くは無いようだな」
 その間にナタリアが根を受けた兵士の様子を確認し、すぐさまローテーションの後方へ送り込む。ローテーションが回ってくるまでの時間で、応急処置は間に合うだろう。
「この臭い……」
「中型、来るわ!」
 樹木型のクリーパーとは違う匂いをハヤトが嗅ぎ取るのと、ユニスの目がそれを捕えたのは、ほぼ同時のことだった。駆けてくるのは周囲のクリーパーよりも一回り大きな、狼に似たクリーパーだ。
 迎え撃つように弓兵の射撃が降る中、ナタリアが巻き起こした大爆発が礫を飛び散らせる。そこへ、部隊一つ分の兵士が向かうと苛烈な連続攻撃でクリーパーを追い込んでいく。
 だが、同時に、その反撃によって浅く無い傷が兵士達に刻まれていく。
「下がってください、後は引き受けます!」
 すかさずトーラが前に出て、超高速三段連撃を放つ。ハヤトも小型クリーパーを周囲に兵士に任せて駆けつけると、ヒット&アウェイを意識した高機動戦闘スタイルで間合いを取り、反撃を躱しながらクリーパーと相対する。
「新手は熊っぽいのと、鷲っぽいのですか……クーネ様、お願いできます?」
「任せろ、叩き斬って来るさ」
 アーケインストリームを放ったアウレーリアは、その向こう側から近付いて来る中型クリーパー二体を見据えながらクーネさんに告げる。頷き返して宝剣マフダルを抜いたクーネさんは、真正面から突っ込むと振りかざした宝剣マフダルで熊型クリーパーを一刀両断にし、そのまま更に跳び上がって鷲型クリーパーを斬る。
「流石ですね」
 アウレーリアは小さく呟く。今の姿は、後方にいるアンゼリカからも見えただろうか。
(適度にクーネ様には花を持たせましょう。ここからは、戦意高揚の演出も必要でしょうし……)
 それでいいですよね、と荷物に混ぜておいた踊首刈人形に向かって、アウレーリアはそっと念じるとまた魔法を唱える。

 僅かな休息を挟みながら進軍は続けられた。進むにつれて樹木型のクリーパーにも中型が混ざるようになり、後方まで伸びてくる根の攻撃を防ぎながら戦いを続ける。
「同じ樹木型でも、特性は個々違うようですね」
 エイルは魔法攻撃を放った手応えや、攻撃を仕掛けて来る敵の動きなどからそれを見定めると、あるクリーパーには緑色の光弾を飛ばして物理装甲を劣化させ、あるクリーパーには筋力を衰えさせるエーテルを撃ち放ち、敵の弱体化を試みていく。
 一方、仲間に向けて笑んだのはナタリアだ。
「そろそろ疲労を感じる頃合いだろう? だが――」
 強力なエーテルの波動を開放し、皆のエーテルを急激に増幅・上昇させる。その瞬間、範囲内にいた者達の身体から、太陽光に似た黄金色の光が立ち登る。
「よっしゃ! いっちょ活躍してくるとすっかな!」
 伸びてくる根を軽やかに避けながら距離を詰めて、ハヤトは勇牙雷龍撃をクリーパーの胴へ叩き込んだ。後ろからアルベルトの放つ鋭い矢が突き刺さり、トーラも巧みな身のこなしで攻撃を繰り出して離脱する。
「さあ、墜ちなさい」
 アウレーリアの放った緋色の幻日がクリーパー達を燃やしていく中、ユニスの矢が新手を攪乱し、そのあらゆる攻撃を回避しながらハヤトの蹴りがクリーパーを貫く。
「後ろには通しませんからね!」
 トーラは脇に回り込んで攻撃を仕掛け、味方が攻撃を繰り出すための隙を作る。そこに、隊長格からの指示を受けて兵士達が雪崩れ込む。
「来るぞ、構えろ!」
 ハヤトの声に盾を構えた兵士が前に出、攻撃を防ぎながら槍や弓、魔法攻撃を放つ。更にローテーションで前に出た前衛が一気に攻撃を仕掛けた。この戦いの間にも、兵士達が中型クリーパーとの戦いに慣れて、練度をあげていることがわかる。
 そんな彼らと共にクリーパーを仕留め、一行は丘の上まで辿り着く。
「後は、登って来ようとする連中を、一通り退ければ終わりだな」
 ベルクは周囲の気配を探り、物陰に潜んでいるクリーパーがいないかを探して回る。その間にも丘の周辺から攻めてくるクリーパーを一体、また一体撃破し……一行は丘の周辺を制圧すると、久方ぶりに一息ついた。
「怪我はヒールと応急処置で何とかなりそう?」
「はい。拠点防衛の任につくには十分な範囲でしょう」
 ユニスの問いかけに、ここまでの道中で親しくなった部隊長達が頷き返す。十分に動ける者達は早速、天幕を立てて拠点の設営に入る。
「後は向こう側に渡るための橋か。木材はそこの倒木を使わせて貰おう」
 アルベルトは手際よく設計図を引くと、必要な木材の量にあたりをつけて、橋を作るための手筈を整える。その間にナタリアは報告の内容を纏め、一度ヴィントへ戻る準備を進めていった。
「柵も地形を生かして設置するのが良さそうだな」
 ベルクは敵を防ぐ為、丘の周囲に柵を立てるべく準備を進める。通常の柵だけでなく、馬防柵も設けられないだろうかと丸太を研ぐのは、仮想敵がクリーパーだけでは無いからだ。
「……後々のことを考えれば、だ。帝都よりも南にあり、ヴィントとオルセンの間の街道を睨めるこの場所を、中継地兼警備所として整備できれば、色々と役に立ちそうだからな」
 今も独立した勢力を保っている、北部鎮守都市オルセン。
 オルセンと早々に武力衝突するような可能性は、おそらく低い。だが、あくまでも『低い』のであって、『無い』とは言い切れないと、ベルクは考えている。
 で、あれば。
 オルセンに少しでも圧を掛けられる機会があるのであれば、そうしておきたいところだった。
(イダ妃や帝国過激派を相手にするのとは違って、オルセンとは第三の道もあるかもしれないしな……)
 そうした先々の可能性も見据えた上で、ベルクはこの拠点に守りを重ねていく。
「その辺りは、皇子とコンラート次第だろうなあ」
 ベルクの考えをどこまで読んだのやら。クーネさんは呟いて、「さしあたって私達が向かうべきは、あの辺りか」と廃墟シャルトを見つめる。方角は北西――漂う黒い霧の向こう側には、『天霧りに消ゆる幽界樹』の幽界分樹があるはずであった。

マスターコメント

 お疲れ様でした!  シャルトの南側に、まずは拠点となる場所を確保できました。  この場所を活用しながら、シャルト奪還作戦は続きます。よろしければ、また次回お会いいたしましょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人

2023年05月06日 16時24分49秒 公開

成功

相談掲示板

  1. トーラ

    シーフのトーラです。 よろしくお願いします! 都市シャルト奪還の準備ということですが、まずは拠点を何処に置くかで難易度が変わって来ますし、出来ればそこのすり合わせが出来たらなと考えています。 西側に行くほど難易度が高く、川から離れればクリーパーとの遭遇率が下がるそうですけど、纏めるとこのような感じでしょうか。 ・東側&川の近く(難易度高&危険度大) ・東側&川の遠く(難易度高&危険度少) ・西側&川の近く(難易度低&危険度大) ・西側&川の遠く(難易度低&危険度低)

  2. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルトだ。 よろしくな。 難易度も危険度も高くて良いぜ・・・と、言いたい所だったが、別依頼で重体になってしまったので無理が出来ない。 申し訳ない。 積極的に前線に立つ事は、控えようと思っているぜ。

  3. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    キャスター、アウレーリアです。宜しく。 まず、水辺の確保は頑張った方が良いかと思います。 拠点を設置して留まるなら水の供給は不可欠ですし、安全だからと川の遠くに展開しても水汲みに近付かなければならない事には変わりないのです。なら、少人数で敵地を行き来するよりはこの機会に安全確保してしまいましょう。 敵との遭遇頻度が上がっても必要兵力の蓄積まで拠点が機能すれば良いのですが、大軍を投入するなら猶のこと衛生には気を配らねばなりませんので。 東西については勿論西であるほど良いのですけど、拠点を防衛維持できないほどの敵戦力が出現する場所を選ぶわけにはいきません。これは私達抜きでも支えられるかどうか、が基準です。 なかなか「えいや」で決められるものでもありませんし、一度威力偵察を行って敵の抵抗強度を確かめ、その結果次第でどこまで進むか決めるというので如何でしょうか。

  4. エイル・アーティライト

    エイル・アーティライトです。 どうぞよろしくお願いします。 水辺近くの確保について同意します。 随伴する兵士の人数も多く、拠点を維持するには水辺から離すより近い位置を確保した方が後々苦労しないで済みます。 東西どちらにするかはこちらもアウレーリアの基準に同意。 既に戦力が欠けてるので東寄り推奨ではありますが、クリーパーの強さを測りながら様子を見てみるのは良いと思います。 また確保する場所を決めたらその周囲を掃討する必要性もあると思いますので余力は残しておく必要もあると思います。

  5. ナタリア・フィッツジェラルド

    ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 兵力に関しては真人間も少なからず存在する以上、水の確保の重要性に関してはリアやアーティライトと同意見だ。 対クリーパーの威力偵察において後のドクトリン構築や奪還計画の要とするべく、戦闘能力やその質、特殊能力の有無も事細やかに紙に記載してレポートとして提出すべきか。 衛生面の課題もそうだが、拠点構築の為の繋ぎの重要性という点においてもサバイバル知識も重要視しておきたい所。 大人数の確保は必ずしも為されるかどうかは怪しい所だが、必要とあらばゲルも持って行こう。

  6. ユニス・ソロアーヌ・アクエリリーア

    シューターのユニスよ。 よろしく。 「基本は水辺近くで東寄り。でも一当たりしてみて、その拠点の場所を西により近づけるかどうかを決める」という理解でいいなら、私もそれに一票ね。 私はシューターとして、後衛の弓兵隊50人と共に。 弓兵隊と共に後衛からの弓での援護と、飛行型のクリーパーを最優先対象にした弓射という方針を考えているわ。 個人の意見だけれど。 「自分はソロで身軽に戦う」「兵士を率いたり、一緒に戦う」のどちらにするかも表明した方がわかりやすいと思うわ。

  7. トーラ

    なるほど。水は水路を作るなどして確保出来ないかと考えていたのですけれど、まず現地の偵察をしてからという事ですね。 それでしたら宗波と看破を持ち込んで索敵能力を強化しておきます。 アルベルトさんとベルクさんはお大事に……!

  8. ベルク・オスマット

    シーフのベルクだ、よろしく頼む。 我も現行案に一票を。 水路は高低差があれば楽だが、ないと作るのが面倒だからな。 元々が奪還までのつなぎなのだから、手間をかけるのは割に合わん可能性もある。 とりあえず無理ができんので土木と看破、宗波を持っていく。

  9. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    改めて、ウォーリアのアルベルトだ。 俺も、今出ている案に賛成だ。 今回は、拠点を確保する場所の目星をつけるための『戦術眼』と拠点を建築するための『建築・土木』スキルを持っていくぜ。 ・・・あと、戦闘では弓矢を装備して後衛から攻撃するぜ・・・ 本当に申し訳ない。

  10. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 俺も水辺の近くに拠点設置ってので異論はねぇぜ! 西か東かはどっちでも構わねぇがある程度俺達で中型やらのクリーパーを排除しときゃいいんだろ? 俺は斥候がてら周辺の様子を威力偵察して情報を持ち帰るつもりでいんぜ。 その後はある程度兵士を率いてクリーパーとの戦い方ってのも伝えておきてぇな。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0