【甘壇】飴とキャラメルがあるじゃない!

菊華 伴

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シナリオID:2805

オープニング

●チョコも無い! 宝石も無い! どうしよ?
「「…………」」
 ここは帝国南部のとある街『キャラメリ』。ここでは今年の『甘輝祭』の準備をしていた。しかし、カカオと宝石がエドゥノーグのダンジョンでドロップしなくなった云々で少ししか確保できていない状況に陥っていた。
「これは由々しき事態である」
 それを危機的状況と判断したヒューマンの商人、ナバルジャなのだが、彼も腰痛が酷くて動くことが出来ず、どう手を打とうか考え中であった。

 ナバルジャばかりに頼ってはいけない、とスタミナのないハーフリングの秘書・アズルノは冒険者をしている妻や同僚数名と共にエドゥノーグのダンジョンへ来ていた。
「な、なんですかこれ……!」
 授恵者の一人が声をあげる。モンスターを倒したら、砂糖が沢山入った袋をドロップしたのだ。しかも、沢山。これには、アズルノ達も少し驚く。
 アズルノは一袋あけ、味見してみる。
「しかし、とても綺麗なお砂糖ですね……」
 彼の見立てでは、高純度の砂糖……しかも飴づくりに適している気がした。
 そこで閃いたのは、飴細工やキャラメルなどである。
「そうですよ! チョコレートや宝石が無いなら新たな物を生み出せばいい!! この砂糖で飴やキャラメルを作りましょう! 飴細工とかで『甘輝祭』を盛り上げるのです! ナバルジャ様も言っているではありませんか! 常に創意工夫をせよ、と!!」
 アズルノはぐっ、と拳を握り締め、冒険者達にも力を借りようと考えた。

●甘いお祭りの為に!
「と、いう訳でこの依頼が出たんだ」
 ギルド職員のハーフリング、カタバミ・ナルカミが依頼について冒険者達に提示する。それは、帝国南部にある『キャラメリ』というお菓子の街に砂糖を届け、試作品をつくるという物。
 飴細工の他、飴やキャラメルを使った『甘輝祭』に相応しいお菓子を作りたいという事である。また、飴で「食べられる宝石」も作る試みがされるらしい。
「今回は僕たちも手伝うよ」
 そう言ったのは帝国の薬師(兼業駒)のレビジュ・バトー。話によると元々社会科見学の一つとして、ここでのお菓子作り体験を予定していたそうだ。
「と言う事で」
「よろしくおねがいします」
 カタバミとレビジュはぺこり、と頭を下げ冒険者達に協力を頼むのだった。

解説

チョコや宝石が無ければ、飴で盛り上げればいいじゃない。 ということで、今回は帝国南部のお菓子の街を舞台にお菓子作りシナリオと相成ります。 舞台:キャラメリ 帝国南部にある、お菓子の街 復興事業の一環としてチョコレートを使ったイベントを予定していたが頓挫。その代わり沢山入手できた砂糖とナッツ類でイベントを行う。目指すは新たなる流行。 原材料についてはアズルノが、ダンジョンでドロップした沢山の上質なお砂糖やらナッツやらを手配済み。失敗しても大丈夫です。 また、表向きは商品開発のお手伝いという依頼です。その他はご自由に。 このシナリオで出来る事(あくまで例なので、参考程度に) ・新商品開発 ・飴細工にチャレンジ ・ナッツと砂糖や飴を使ったお菓子にチャレンジ ・子ども達のお菓子作りを見守る(手伝う) ・試食は任せろ~! ・仲良くなりたいNPCと交流しちゃう? それではよろしくお願いします。 登場NPC(カタバミとレビジュ以外) アズルノ ナバルジャの秘書。今回は彼の代わりにイベントを取り仕切ったりしている。 セディ・キャロル レビジュ達の上官。お菓子は好きだが、ほろ苦い物も好き。 ※元メドゥの指先構成員の子ども達も参加します。今まで登場したブリザラやグリッタ、ホークアイ、ネインもプレイングに記載があれば登場します。 ※ナバルジャは、腰が痛いので今回は会場にこれません。 「む、無念である……」 ただ、ちょっとしょんぼりしているので会場のお菓子を送ると喜ぶでしょう。

マスターより

甘い物、お好きですか? 担当MSは、大好きです。 という訳で今回は、飴とキャラメルで新たな風を……! となっていますが自由度高めです。 なんならPC同士でいちゃこらしても無問題です(但し結婚適齢期なのに縁のないセディが羨ましがります)。 宜しくお願いします。 カタバミ「甘い物は好きだが……やはり蜂蜜が……」 レビジュ「ボクはチョコも飴も好きだよ」

リプレイ


●甘い香りに、仄かな企みを混ぜて

 ――帝国南部・キャラメリ。
 冒険者達と『デゼスポワル』(元メドゥの指先構成員)の子ども達は、案内された広い厨房に目を丸くしていた。
 皆、手を洗い清潔なエプロンと帽子や三角巾を付けている。それを確認したカタバミ・ナルカミは笑顔で彼らの前に立った。
「今回、材料はロア商会がたくさん用意しています。だから、失敗を恐れず作ってください」
 それに心強い味方もいる、とちらりと冒険者ギルドや今回指導などしてくれるキャラメリの職人たちを見て言えば冒険者たちが苦笑する。
「さて、今回はお菓子作りか……。腕が鳴るぜ」
 アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが楽し気に微笑めば、キオルティスはふむふむ、と説明を頭の中で思い出しながら材料を見比べる。
「新商品開発かぁ。そこまで仰々しくはないけれど、新商品開発の一端とか……開発の手休めとか。子供たちが簡単に作れる、手軽なモノを作ってご覧に入れようかな?」
 そうキオルティスが言えばイズル・M・ヴォルゴールは小さく苦笑していた。彼自身は、人並み程度の料理の腕なのだとか。
「新作お菓子の提案は出来そうもないし、俺は子供達のお菓子作りを見守ろう。ほら、飴やキャラメルの時点で火を使うの確定だからさ」
 気を引き締めないと、とイズルはこぶしを軽く握る。確かに冒険者たちの他に大人がいるとはいえ、やけどの可能性はあるものだ。
 一方、沢山の砂糖を見たヨル・スレイマンは目を輝かせていた。
「実は、砂糖がたくさんあったら一度作ってみたいものがあったんだ!」
 作ってみていいか、と問えば今回のイベントの主催代理であるアズルノが「もちろん」と頷く。わくわくとした様子で「作るぞ!」と気合を入れているヨルの姿を見、ナハシュは「試食は任せろ!」と頷いた。
(皆、どんなお菓子を作るのかな? あぁ、めちゃくちゃ楽しみだなぁ)
 元々試食目的でやってきたナハシュは周りの面々が語るお菓子の話を聞き、表情を緩ませた。が、ここで彼はある事に気づく。
(それだけだと他の奴らが作ってる間暇なんじゃね……?)
 それはさすがになぁ、と考えたナハシュは材料を見ながらしばし考える。そして、ぽそっと
「俺も、なにか新商品? 考えるかな……」
 と三角巾を整えながら呟やけばヨルも笑顔で「何を作るか楽しみにしているよ」と頷いた。

 少し離れた場所では、ヴィナスも楽し気に材料を見ていた。
「新商品開発は、昔から好きだったんだよね」
「昔から?」
 ヴィナスの友達であるシルヴィア・A・カペルが首を傾げていると、彼は小さな声で以前は弟と同じように商人をしていたことを話し、小さく笑う。
「ちょっと家庭事情もあって、家業から離れていたんだけど……こっそり復帰しようと思ってね」
 と茶目っ気交じりに話せばシルヴィアは優しい笑顔で頷いた。
「君が君自身の道を選び取った事は喜ばしい。本当におめでとうっ。……という事は、今回は復帰してすぐの仕事という訳だね?」
 ヴィナスがどんな商品を考えるのか、楽しみにしている、とシルヴィアが言えばヴィナスは「そうだね」と頷く。
 シルヴィアはヴィナスの弟とも友達だ。だから、話さなくても複雑な事情があった事を察してくれるだろう。彼はそう考えた。
「腕は鈍っていると思うけれど、こういう仕事がギルドであって良かった……」
 そう、優しい笑顔を零しながら。

 お菓子作りの準備に取り掛かる中、レティシア・レインフィールはカタバミに2、3相談すると彼と幾人かの職人やアズルノと共にとある部屋へ。彼女は別のアプローチから攻めてみようと考えたようだ。
「新商品の『食べられる宝石』は大変興味深いのですけれど、宝石なら包装にも工夫を凝らすのはいかがでしょう?」
 そうやって彼女は試作品として用意した軽く装飾した小箱を見せる。
「例えば、小箱に入れる事で宝石箱を演出されるなどどうでしょう? 食べた後は小物入れになりますので贈った相手に喜ばれそうです」
 その提案に、大人たちは感心したように頷く。カタバミもまた「それはそれで素敵ですね」と目を輝かせる。
 これなら既存品から選んでもらうほか、セミオーダー、オーダーメイドと幅を広げられるのでは? とレティシアは貴族にうける視点から広げてきたようだ。

 和やかな空気の中始まった新商品開発。
 果たして、どんなお菓子が登場するのだろうか?

●お洒落な贈り物を
「この箱、底にお手紙や小さな贈り物を忍ばせられるような細工ができたら素敵ですね。密かに想いも込められて素敵かもしれません」
 レティシアは、町の商人たちと作戦会議を行っていた。
 彼女は新商品開発だけではなく、売り出し方への工夫を考えたのだ。
 宝石らしく宝石箱風の箱で売り出すならば、と彼女は現在の貴族たちの流行や、貴族達に人気が出そうなデザインを考えて提案してみる。
(可愛らしいデザインだけではなく、シンプルなタイプも用意しておきましょうか)
 レティシアの狙いは宝石不足で困っている宝飾系の職人たちやお店の人々。彼ら向けの仕事ができればより多くの人間が幸せになるのでは? と考えたのである。
 結果的に言えば彼女の狙いは当たった。宝飾関連の職人たちは彼女の提案にめちゃくちゃ乗り気だった。
「箱の材料を考えたらコストは抑えられる。そのうえで美しいものを用意できればこの街の名物にできるだろう」
「貴族の流行は王国、帝国で違う可能性もある。帝国の貴族たちの流行は押さえているつもりだが、王国貴族たちの流行を知ることができるのは僥倖だ」
 レティシアの提案が、宝飾職人たちの職人魂に火をつけた。彼女に感謝の意を表しつつ、活気ある様子で話し合う彼らを、レティシアは照れ交じりの微笑みで見つめるのだった。


●新商品開発は、わくわく!
 ヨルは材料の中から砂糖と寒天を手に取った。果物などを手にしていたキオルティスがそれに気づく。
「もしかして、琥珀糖を作るのかい?」
「実は、前から作ってみたかったんだ。どこかの貴族を中心に食べられている菓子だと聞いてね」
 ヨルがわくわくした様子でそういえば、キオルティスは少し考える。元々、彼も『食べられる宝石』について考えており、色んな旅先で見て来た中では琥珀糖が近い物だと考えていたのだ。
「奇遇だね。それじゃあ、一緒に作ってみようか!」
「子ども達も誘おう」
 二人は材料をそろえると早速年長の子ども達と共に作ってみることに。
 寒天と砂糖を煮溶かしたところで、キオルティスが持ってきたものをカバンから取り出しながら「どんな色にするかが、悩ましいところだよね……」と考えていると、ヨルは焦がしたカラメルを鍋に混ぜていた。
「おぉ、なんかアンバーみたいだね」
「綺麗だねぇ」
「アンバーはアミュレットとしても良い石だからね。キャラメル味だし、キャラメリ糖って名前にしてもいいかも?」
 キオルティスと子ども達が感心している傍で、ヨルはその中にナッツを沈めていた。
「それじゃあ、こっちはルビーに、サファイア、トパーズかな?」
 キオルティスが用意したのはクチナシにザクロ、バタフライピーである。バタフライピーを入れると美しい青色になるが……。
「わぁ! これはこれでとってもきれいだね!!」
「こっちにレモン汁を入れると色が変わるんだよ。そうだね、他の色を入れてもいいかもしれないね」
 バタフライピーを入れたものにレモン汁を加えて見せると、青から紫へと変わっていく。子ども達から歓声があがり、キオルティスは嬉しそうに目を細めた。その傍ら、ヨルは「混ざりきらない状態で固めるのもいいかもしれない」と考えながら見つめる。
「これで、あとは乾かせば完成だよ。少し時間がかかるけど」
「完成が楽しみだね」
 ヨルの言葉にレビジュは目を輝かせた。
 琥珀糖は固まるまで時間がかかる。キオルティスは持ってきたイチゴやミカン等の果物をきれいに洗い、カットすると砂糖をお湯で煮て冷ます。
「熱いから気を付けてね」
 串に刺した果物を子ども達に配り、キオルティスは飴に潜らせてお手本を見せる。子ども達も慎重に果物をとろとろの飴に潜らせ、バットの上に。
「綺麗……」「乾いたらぱりぱりになるのかな?」
 子ども達もキラキラした果物を見ながら興味深そうに見つめる。
「これは綺麗だね。フルーツの飴掛けかぁ」
「こういうのもお洒落かなってね」
 ヨルはキラキラ輝く果物を見、興味深そうにそれを見つめた。

(へぇ、そういうのもあるんだ)
 ナハシュはヨルとキオルティスが作っている琥珀糖を見て目を見開く。彼は「じゃあ、こういうのもうけるかな?」と早速作業に入った。
 手際よく飴を作ると、ある程度冷めたところで練っていく。因みに熱さ対策に痛覚遮断(ペインキル)を使っている上、火傷したら治癒(ヒール)するつもりだ。
(こういった所は便利だよな、冒険者ってさ)
 なんて思いながらガラス細工のふいご道具を消毒し、程よく練れるようになった飴をその先に丸めてつけて膨らませる。
「面白いですね!」
 様子を見ていたアズルノが作業に見入り、メモを取る。その様子が子どもっぽくて、ナハシュは内心で苦笑しつつも飴の固まり具合を確認した。
「いいかな?」
 ほどよく固まったところで、飴の中に甘露アリのシロップや煮詰めて冷ましたワイン、紅茶風味のシロップ、蜂蜜などを入れてみる。
「最後に縁だけ溶かして、飴で蓋をすれば、できあがり」
 ナハシュが想像しているよりも、ずっと綺麗なお菓子ができあがる。ずっと観察していたアズルノは「おぉ! 素晴らしい!!」と興味津々な様子で名前を聞いてくる。
「名前かー。……飴ボンボン?」
 ナハシュは少し首を傾げながら出来上がったものを見つめるのだった。

「ナッツと砂糖……。まずはヌガーかな?」
「私はフロランタンを作ってみよう」
 ヴィナスとシルヴィアは手際よくナッツを砕きながらそれぞれ作ろうとしている物について話し合う。
 ヴィナスは鍋で煮溶かした砂糖と蜂蜜にメレンゲを入れ、さらにローストしたナッツ類を入れて固める。今回は通常の物と紅茶入りの二種類を作ってみるそうだ。
 シルヴィアの方もナッツをキャラメルでコーティングした後、紅茶を練りこんだクッキー生地に乗せ、オーブンへ。その間に砂糖、蜂蜜、水飴をつかったアーモンドトッピングも作っておく。
「なかなか本格的だな」
 カタバミが興味深そうに見つめていると、「出来上がってからのお楽しみだよ」とヴィナスは微笑んだ。
 ヴィナスはもう一品作れるかも、とトロトロしたキャラメルを作り始める。
「これは、挟もう」
 そして砕いたナッツ類を少し加えて混ぜ合わせ、こんがり焼けたクッキーでサンドに。これにシルヴィアは「実においしそう」と瞳を細める。
「形を可愛くしたら、甘輝祭の贈り物にいけるかと思うよ」
「確かに、人気がでそうだね」
 シルヴィアはクッキーにキャラメルを挟みながら、楽しそうに頷いた。

「俺の真似をしてみるんだ。……そうそう、中々筋がいいな」
 アルベルトは、ものは試しとばかりに子ども達とナッツのキャラメリゼを作っていた。教え方がいいのだろう、子ども達はおいしくできたナッツのキャラメリゼを見て嬉しそうにしている。
「やけどした子はいないかい?」
 手伝いながら気をはっていたイズルが、念のために問いかける。この時点では誰もけがせず調理ができたようで、イズルもアルベルトも安堵した。
 ある程度琥珀糖を作ったヨルが見回りに加わったのも効果があったかもしれない。
「そうだ、お菓子の新商品について話があったが、何かアイデアはあるかい?」
 アルベルトがそれとなく話題を出すと、子ども達は彼だけでなくイズルとヨルも巻き込んで話し合い。
「んー、キャラメリゼにお塩入れたら、ちょっとしょっぱくなる?」
「僕は甘さ控えめのが食べたいなぁ」
 ヨルが子ども達に話を聴くと、そんな声が聞こえてくる。ほかにも
「クッキーで挟んだら固いかな? 美味しい気がする!」
「クッキーじゃなくて、スポンジケーキに挟むのは?」
 とイズルに言ってくる子も。アルベルトはうんうんと頷いた。
「試してみるのは、面白いと思う。……そうだなぁ、もう少し柔らかめにしてクッキーやケーキに挟んだりするのはアリかもしれない」
 アルベルト達はそれとなく他の冒険者にも相談してみようと考えた。
「あ、そうだ。こんなのもどうだい?」
 いい物を持ってきた、とイズルが見せたのはおいしそうなリンゴ。これに、レビジュ・バトーが瞳を輝かせる。
「これもキャラメリゼするの?」
「キャラメル煮、かな。林檎ご馳走するって言ったろ?」
 イズルが笑みを浮かべてそういえば、レビジュの瞳がさらにキラキラ。周りの子ども達も興味を持ったのか、同じように目をキラキラさせる。アルベルトはその様子を見、指を鳴らした。
「リンゴのキャラメル煮をケーキに挟んでも美味しいんじゃないか?」
「故郷でも、パンケーキに乗せたり混ぜ込んだりするけど……」
 イズルが焦がさぬよう気を付けながら混ぜつついう。その傍から、子ども達は「それ食べたい!」と声を上げた。
「うーん、リンゴ足りるかなぁ。今日持ってきたのは生食用だから、商品で出すなら加熱用ので作った方がおいしい見栄えになるかも?」
「僕は生のリンゴの方が好きだったけど、こっちに来てからはそういうのも、好きになったんだ。だから嬉しいな」
 レビジュは普段よりニコニコしながらいい、3人は少し考える。
「よし、後でみんなが出してくれたアイデアのを作ってみようか」
 アルベルトの言葉に、子ども達は「さんせーい!」と楽し気に声を上げた。

 ここで一旦休憩時間に入る。
 イズルは出来上がったリンゴのキャラメル煮を鍋から出す前にレビジュを呼んだ。
「これはどうするの?」
「ケーキに混ぜて焼くよ。俺の故郷の……姉上達がよく作ってくれた物だ」
 そういいながら、イズルは一口分をフォークでさし「見つかると沢山の味見の一口に食べ尽くされちゃうからね」とレビジュに渡すと「いいの?」ときょとんとしながらも嬉しそうに礼を述べ口にするのだった。

●楽しく甘いひと時
 暫くして、程よい固さのヌガーとフロランタンが完成。試食してみれば、どちらも程よい甘さと香ばしさがおいしかった。
「うん、口の中で甘さがゆっくり解けていくのは幸福感があるよ」
 ヴィナス特製のヌガーを口にし、シルヴィアは嬉しそうに頬を緩める。ヴィナスもシルヴィア特製のフロランタンを口にし、表情を緩めた。
「美味しい! 料理は日々やると上達するっていうからね」
 シルヴィアは、当初調理に関して不慣れであったが、冒険者になってから調理を学んだ結果人並みの腕前になっていた。彼女はヴィナスの言葉にほんの少し照れながら「ありがとう」と礼を言う。
「いい匂いだな。俺も試食していいか?」
 通りがかったナハシュが問いかけると、二人ともフランクに許可をくれた。早速口に運んだヌガーの程よい口当たりも、フロランタンの香ばしさも実に美味しくて。ナハシュは無邪気な笑みを浮かべた。
「どっちも美味いな! あぁ、そうそう! 俺も作ってみたんだ。感想を聞かせてくれないか?」
 と、お手製のシロップ入りの飴を渡すと、二人とも驚いた様子だった。
「これは、ワインを煮詰めた物だね。実に甘くておいしい」
「こっちは紅茶風味のシロップ……。見た目もお洒落だし、これはご婦人方にうけそうだ」
 シルヴィアが思わず微笑み、ヴィナスは飴を観察しながらうんうんと頷く。ナハシュは思いのほか好感触であることにちょっと驚いていた。

 一方、キオルティスとヨルが作った琥珀糖の方も固まってくる。
「もう少し長く乾かすと、見た目がより石っぽくなると聞いているよ」
 キオルティスは出来上がった琥珀糖を見ながら考える。子ども達の調理体験が休憩中な為様子を見に来たヨルは、出来上がりに「予想以上に綺麗だね」と目を細めた。
「子ども達の休憩が終わったらカットしよう」
「それは楽しそうだね」
 ヨルとキオルティスは楽しそうに笑うと、琥珀糖を一緒に作った年長の子ども達を呼んでくることにした。

 休憩をはさんで、子ども達のフォローにレティシアも入る。
 彼女は子ども達の成長の妨げや楽しみを奪う事にならないよう、〈教導〉していく。
「アルベルトさん達と一緒に、キャラメリゼを作ったんだよ!」
「あとでレティシアさんも食べてね!」
「ええ、楽しみにしていますよ」
 レティシアは子ども達の言葉に微笑みながら、子ども達の話を聞いていた。
 彼女が教えてくれたのは型に砂糖を煮溶かした物を流し込んで作る飴である。今回は、花びらや葉を象った飴を作り、あとから組み合わせてみよう、という事になっている。こっちは年少の子ども達が中心だ。
「なかなかよくできてるな」
 引き続き火傷対策としていつでも治癒できるようスタンバイしていたイズルが、冷ましている最中の飴をみて言う。
「皆さん、注意点を守って丁寧に行っていましたから」
 レティシアがそう褒めれば、何人かの子ども達が照れたように笑う。
 いよいよ飴の花を作る段階になると、アルベルトも子ども達をフォローする合間に飴の花にチャレンジ。
 「職人の方のように一から作り上げる緻密な飴細工は難しいですから……」という事で考えたやり方なのだが、パズルみたいだと子ども達からは好評だった。
 一方、琥珀糖の方には年長の子ども達があつまる。琥珀糖をカットするのだ。ヨルが作ったキャラメリ糖も、キオルティスが作った色とりどりな物もしっかり冷めて固まっていた。
「慎重に……、慎重に……」
 せっかく作ったのだから、と子ども達もやや緊張気味に切っていく。と、宝石のような断面が見えた。
「おいしそう! いい匂い!」
「ナッツがいい模様になってるね」
 子ども達の声にヨルも同感の笑みを浮かべる。キオルティスが作った琥珀糖もとてもきれいにできていた。
 キャラメリ糖を見つめていたレビジュに、ヨルは穏やかに行った。
「護符としてのアンバーは『夢の実現』という意味もある。だからまあ、いいことがあるといいね」
「ありがとう。ヨルさんにも、ね」
 レビジュは、小さく微笑みながら頷いた。

 次は、アルベルトを中心に、少し塩を入れて甘さを調整したキャラメリゼや柔らかめにしたキャラメルを挟んだプチケーキなども作ってみる。
「結構難しいね」
「あぁ、たれちゃう!」
 子ども達はトロトロしたキャラメルに手間取っていたが、アルベルト達冒険者が適度にフォローすることで程よい量を挟むことができた。まぁ、たまにちょっと溢れ気味なのができるのもご愛敬か。
「見た目が可愛いですね」
 レティシアが出来上がったケーキを見、優しく微笑む。
「みんな、よくできてるな。お茶が入ったら試食してみよう」
 アルベルトの言葉に、子ども達は笑顔で頷いた。

●さぁ、試食の時間(ティータイム)を楽しもう
 大体のお菓子が出来上がり、試食の時間に。冒険者達と子ども達は出来上がったものを見て皆目を輝かせたり、楽し気な声を上げる。
「これはヌガーで、こっちがフロランタン……。この香ばしい香りがいいね」
「よかったら、試食してみる?」
 キオルティスがヴィナスとシルヴィアが手掛けたお菓子を興味深そうに見る。そこでヴィナスが取り出したのは、柔らかめのキャラメル(ナッツ入り)を挟んだクッキーである。
 試食してみると、程よいねっとり感と砕いたナッツの風味が美味しい一品だった。他の冒険者や子ども達の反応も上々である。
 次に、キオルティスは子ども達が作った飴の花の出来にほっこり。
「こっちのキャラメルを挟んだケーキも、いい感じだね」
「塩を入れたキャラメリゼも、うまくできている。琥珀糖も美味しい。みんな、よくがんばったね」
 キオルティスがケーキを一口食べて表情を緩め、イズルが子ども達を褒める。試食し、喜ぶ子ども達の様子を見るアルベルトの表情もとても優しい。
 お菓子作り中も、やり方が分からなかった子どもに「俺の真似をするんだよ」と手本を見せていたが、その顔と同じだとヨルは微笑んだ。
 彼は出来上がった琥珀糖の一部をラッピングし、「沢山出来たらね。君も食べるだろう?」とおすそ分け。ナハシュはぱっ、と表情を明るくする。
「それじゃあ、交換しようぜ! 俺のはだいぶ甘い筈だ、安心していい」
「!? ありがとう」
 ナハシュお手製の飴を貰ったヨルは少々ドキッとしてしまった。と、いうのもヨルの意中の相手というのがナハシュであるが故である。彼は必死に平静を保って飴を受け取る。
(君はもしかしてついに甘輝祭に菓子を渡すことの意味を知って……!)
 ふとナハシュをみると、彼はニコニコとして子ども達のお菓子を試食し、お礼にお手製の飴を上げている。
(いや、知らない。あれは全然知らない顔だねっ!!)
 ヨルは内心で叫びながらも、貰った飴を大事に食べようと頬を緩めた。

 試食会では紅茶やコーヒーが入れられる。
 それを飲みながらみんなでほっこりおやつタイム。イズルお手製のリンゴケーキもだされ、子どもたちは幸せそうに食べていた。
「レティシア殿、どうしましたか?」
 裏方作業に徹していたレビジュ達の上司、セディ・キャロルは自分の名前が呼ばれたことに少し驚く。
「遅くなりましたが、お手本として作ったものをお渡ししようかと。こちらはレビジュ様の分ですよ」
「え? 僕にも?? ありがとう」
 レビジュも目を丸くしたが、喜んで受け取りセディと顔を見合わせ微笑み合う。レティシアはそんな二人に優しい笑みを見せるのだった。

 商人たちも出来たお菓子を試食し、それらを試しにお店で出してみることに。レティシアの提案で琥珀糖と飴ボンボンはちょっとおしゃれな箱に入れての販売となり、それが貴族に受けた。箱の底にメッセージを入れるスペースを作ったのも受けた理由のようだ。
 また、フロランタンなどをはじめとするお菓子も人気が出て、イベントは成功した。リンゴのキャラメル煮も人気が出たのだとか。
「我輩も、美味しい思いをさせてもらった。ごちそうさま」
 報告書をまとめていたカタバミは、ニコニコ顔のまま書類を持っていくのだった。

(終)

マスターコメント

菊華です。 少々遅くなりましたが、ようやくおとどけです。 今回は皆さんの素敵な案によりキャラメリはどうやらお菓子の街としての復興が進みそうです。 また、売り出し方についてに言及があり、おかげで宝飾職人さんも喜んでいます。 また縁がありましたら宜しくお願いします。
ミドルシナリオ

ミドルシナリオ普通 報酬:多い8 / 6〜8人

2023年03月08日 13時07分32秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ナハシュ

    揃ってた! シーフのナハシュだ!試食は任せろ!!

  2. ヨル・スレイマン

    ヨル・スレイマン。宜しくね。 砂糖とナッツがあるならいろいろ作れそうではある。新商品開発で少し考えてみようかなと思っているよ。

  3. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。今回はよろしくね。 新商品の開発について考えてみようと思っているよ。 皆にとって素敵な一日になりますように。

  4. イズル・M・ヴォルゴール

    イズル・M・ヴォルゴールです。よろしく。 お菓子を考えるにはあまり得意じゃないみたいだ。なので、子ども達のお菓子作りを見守ろうと思う。

  5. キオルティス

    シーフのキオルティス。今回は宜しくね! 簡単なお菓子を作ってみたり、OPの「食べられる宝石」に絡んでみようと思っているよ。 楽しい一日になるといいね!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0