【天馬】【ソーレ】垣根のあるお付き合い
紀藤トキ
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シナリオID:2778
オープニング
ケンタウロスの大族長、レミーラを送る生前葬。人には縁の遠い祭事ながら、彼らにとっては大事な式典であるらしい。長年の敵であった人類のレイウェストすら招かれていたが、彼らの中では『敵対しているものでも敬意を表すほどに偉大』という事になるのだそうだ。
「この書面を見るに、先日ソーレ村の北の森にしばらく滞在していた人馬集団を呼びたいという事でしょうか、タキ殿」
帝国南部のソーレ村は、催事の舞台となるケンタウロスの聖地からはそれなりに遠い。アロイスは、本来なら関係ない筈のそんな催しについての説明を読み、普段と違う丁寧口調でそう述べた。そのアロイスへ、無言で【はい】のフリップを掲げた人馬が一体。『亜人語会話』のスキルを持つ授恵者が亜人の会話を何となく感覚で理解するのとは違い、彼は語学に優れた才能を示す特殊個体である。聞くだけならば、人の言葉をほぼ理解しているそうだ。
「日程的にはもう始まっているようですが……。最初や最後に居なければならない、というような物ではないのですか? 途中参加も歓迎、と」
アロイスにそう問われ、再び【はい】のフリップが上がる。事情の説明のための書面の他に、彼は【いいえ】【わからない】のフリップを持参し、意思疎通を行っていた。秋の終わりごろにソーレ村の北にやってきたケンタウロスたちは、聖地に残るレミーラ達とは別の派閥であるらしい。新生派という訳でもなく、メドゥの左腕による聖地襲撃とそれに伴う混乱の前から大平原を闊歩していた武闘派部族のようだ。人類代表のレイウェスト程ではないが、レミーラ達から見れば『偉大な族長に敬意を示す敵』の枠になるのだろう。
「なるほど。では少し確認の為に席を外します。……あの集団は、全員が授恵者相当の強さがあった。リーダー個体はかなり強い。接触の際は冒険者に護衛を依頼すべきか。冬だから、冒険者ギルドに依頼を出す為だけに街へ出るのも面倒だが」
席を中座したアロイスが、歩きながらそう思案する。
「……ケンタウロスにもいろいろあるんですね。まあ、人にも王国と帝国があるのだから不思議はないですが」
後を任された村長のボウノがそんな事を言った。人間の視点から言えば帝国領でケンタウロスが勝手に過ごしているという事になるのだが、ケンタウロス側から見れば誰の者でもない野山を自由に移動しているという事になるのだろう。ただ、冒険者との勝負に負けた事で部族の人馬はソーレ村については一目置いたようで、森から出て行ってほしいという意志を理解すると素直に立ち去った。しばらく距離感のある歓談をしていると、元部下達から状況を確認したアロイスが戻って来る。
「村の狩人に拠れば、森から出て行って、その後は少し離れた山地で冬を越したようです。少し時間を貰えれば、行先も分かるでしょう。隠して動いている様子は無い、そうです」
使者のケンタウロスが緊張を解いた。使者である彼についてきた帝国軍の使者(兼ケンタウロスの使者の護衛兼監視)であるカイもホッと一息ついている。もしもその部族が遠く離れてしまっていれば、雪の中で長距離の追跡が必要だと覚悟していたようだ。
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「……そういえば、私達も後で色々考えて、彼らが冬を越したかっただけであるなら、条件を付けて受け入れても良かったのではと思ったのです。春が来たら帝国にお伺いを立てようかと、思っておりました」
と、ボウノが切り出した事でホッとしていたカイの背筋が伸びた。前回は意思疎通が出来なかったがゆえに細かい話し合いが不可能で、出て行ってもらう事になったが。例え異種族であれ、困っているのであれば手を差し伸べても良いのでは、と村の中で相談したらしい。
「なるほど。そうでしたか」
職務上、カイはソーレ村と人馬部族の接触の際の報告書に目を通している。そう言う事であれば、ヴィントへの伝令が必要となるだろうと理解できた。問題の部族の行く先が分かるまで、のんびり過ごせるかと思えばそうではなかったようだ。
「数日、この村で過ごしていただいて問題ないですか。私は一度街に戻らねばならないのですが」
【はい】のフリップと共に、人馬の使者は頷いた。であれば、冒険者の手配もヴィントに戻るついでにカイが行うという。アロイスにはその分、後での道案内を頼むと言って来た。人馬の使者タキは、自分の伝令が終わった後であれば交渉の為の仲介役をする事に否は無いらしい。むしろ興味津々と言った感じだった。
「我々としては、賛成とばかりは言い切れないのだが……。しかし、今までの常識を変えるべきと言われれば、そうなのかもしれない」
名目上の代官であるアロイスは慎重だ。しかし、ケンタウロスと言えば一方的に恐れるべき集団であったのは過去の話。このような村落でも授恵者を幾人か雇う事ができる現代においては、対等に交渉ができるのではないだろうか。そのように言われれば、そうかもしれぬと考えを変える程度には柔軟だった。
「もしも冬越しの場所を貸すとして、条件はどうするのか。禁止事項も取り決めた方が良いだろうし、彼らが何を欲するのかも予想しておく必要がある。それが融通できるものであれば、物々交換するのは問題ない」
前回、彼らがおそらくは迷惑料で置いて行った毛皮や保存食は良い処理をされていた。自分達よりも腕が良い、と村の狩人たちが認めている。まあ、彼らも多くは少し前まで軍人で、狩人としての技能がしっかり身についているのは数名しかいないのだが。
「村人の中には、頭では理解できても、やはりケンタウロスは恐ろしいと考えている者もいます。ほどよい距離でつきあっていければ、良いのではと思うのですがね……」
ボウノの言葉に、人馬の使者は複雑な表情で頷き【はい】のフリップを見せた。村に入って来た彼に、村民が向けた視線にはやはり幅があった。ヴィントには入っていないので町の人々の反応は知らないが、立ち寄った村落はどこも似たような物だ。いや、ソーレ村の方が敵意が薄い分だけマシだろう。知り合いの知り合い、位まで考えればお互いに殺されたり殺したりしたことのある種族同士の距離としてはそれくらいが妥当なのかもしれない。
解説
マスターより
リプレイ
敵対亜人であった人馬の使者が帝国の村に武器も持たずやって来る。ゴブリンのナハティガル=ラーにとって、それは殊の外重く感じられた。
「人馬とヒトが共存、か。――俺達ゴブリンにとっても他人事とは言い切れん」
ゴブリンは中途半端な位置にいると彼は知っている。どちらかの善意に頼る関係は美しいが儚い。この村で共存共栄が為されるとすれば、亜人とヒトの理想的な関係が掲示できるのではないか、と彼は思い、かつ願っていた。
「数年前であれば、人馬の護衛や交渉など考えられなかった。この変化は重要だろう」
「ああ、まだ恐れは残っているとはいえケンタウロス達と交渉を検討するとは『進んで来た』な」
やはり異種族のフェイサル・セイフとルチル・プルメリア・グレイハーツも、感慨深くそう述べる。両名はこの村の再建に深くかかわっており、それだけに想いも一入のようだ。
「うむ、彼らが新たなる善き隣人となるように知恵を貸すのだ」
別の村で似たような事例に知恵を貸したことがあるストレガ・L・リベルガストラにとっては、一度通った道ではある。が、それに奢る事は無く、経験を知恵として彼女はこの場に立っていた。
「ケンタウロスとの共存ですか。村の方が良いのであれば、わたしも良いと思います」
よりヒトの括りの中にいるハーフリングのトーラは手放しに喜ぶわけではなく、あくまで双方の利があるなら、という判断だ。先の四名も無理な共生を望んでいる訳ではないが、そうなれば嬉しいという意志が前に出てはいた。
「彼らの価値観はわたし達と違いますから、慎重に進めないといけませんね」
トーラが目を向ける先には、連れて来たミニビヒモーとじゃれる村の娘がいる。先ほどまで彼女と話していたヨル・スレイマンの両手には、村で採れた野菜があった。冬なので採れたてとはいかないが、頼めば分けて貰える程に今年は余裕があるらしい。代価を払うと言ったのだが、受け取って貰えなかったようだ。
「交渉に向かう前に、皆で温かい物でも食べて行かない? 使者殿とも擦り合わせした方が良いと思うし」
人馬の使者であるタキは皆との顔合わせを先ほど終え、パヴェル・A・サムルガチェフと会話していた。していた質問に【はい】のフリップで答えられ、難しい顔をする。
「言葉の壁は高ぇかぁ……。おめぇさんも、どうにか学ぶ事が出来りゃあ良いんだが」
冒険者は亜人語の適正を用意できるので、相手の言いたい事の大枠は把握できる。タキがフリップに頼る必要は実は無いのだが、試しの意味で使っているようだ。
「そもそもソレの種類が少な過ぎる。交渉時の意志疎通をよりスムーズに行う為にも、新たにフリップを作るべきかと」
タキはナハティガルから掛けられた言葉を吟味し、【わからない】を掲げる。
「何がわからねぇんだ? フリップを増やす理由か? いや、何を書いたフリップを増やせばいいかか」
パヴェルに問われ、【いいえ】と【はい】を順に見せる。なるほど回りくどい。が、三つ以外に増やすべき物が何か、と言われればナハティガルにもすぐには浮かばないようだ。
「その仕組みは、通訳殿がいない時にも使えると考えていたんだけどね。【ありがとう】はどうかな?」
ヨルがそう提案すると、タキはなるほどと表情に出しつつ【はい】を掲げる。ナハティガルが早速、手持ちの紙に【ありがとう】の文字を書いて手渡した。
「紙とペンはある。必要となれば、今のようにその場で作成するのが良いだろうな」
それにも【はい】、そして作ったばかりの【ありがとう】が返ってくる。パヴェルは逆に、通訳のタキが示せるものが三択である事を踏まえて、人馬側に話す事を整理しておこうと考えていた。
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他の面々と違い、彼とナハティガルはこの村を訪れるのも初めてだ。整理の為に、まず村人の希望や意見を確認したいとパヴェルが言う。ナハティガルもこの村でどのような物が取れるのか、どのような物が必要なのかの意見や要望を聞きたいと席を立った。
「交易所は作るで、本当に問題なかったのだ?」
村の意見を聞いて来た2人へ、一同を代表してストレガが確認する。
「ああ。うまくやれるもんならやりたいって、本気で思ってるみてぇだなぁ」
「……瞳の奥には怖れがある者もいるというのに、大したものだ。しかし、交換に対して特筆すべき産物はないのだな」
パヴェルは嬉しそうに言い、ナハティガルは少し残念そうに報告した。珍しいのは郊外の池で獲れる魔獣魚程度だろうか。
「珍しい産物では無いかもしれませんが、農作物と薬草、あとは……、子供が産まれているなら、温かな織物などあれば喜ばれるかもしれません」
「良いね。物々交換で何とかなりそうなものは、その辺か。木々の伐採が必要な燃料や建物など……、過ごしやすくするために水路を引いたりするのも必要かどうか聞きたいね」
「バラバラに尋ねりゃ、三択でも答えやすいんじゃねぇか?」
村の状況がある程度分かっているトーラとヨルは、2人が聞いて来た内容に思いついた点を加えていく。パヴェルはそれらを整理して、一つ一つ尋ねるように提案した。
「村が差し出せる商品としては、困っている時の手助けもあるのだ。賊や魔獣、クリーパーに襲われたりしたなら、冒険者を代わりに呼ぶ仲介もできるのだ」
ストレガがそう提案する。部族単独の人馬と違い、背景に人間社会を抱える利点も使える物なら使いたいという事だろう。が、パヴェルはそれには反対のようだ。
「お互いの場所で採れる、生産できる物に止めた方が良いんじゃねぇか? すぐに用意できないものは面倒の種になるかもしれねぇ」
これはどちらが正しいという話でもない。冒険者が駆けつける事も含め、その商品が手に入るのは便利な事だが、当たり前となれば手に入らない時に困るようにもなる。
「ふむ。村で作った物でもう一押しという場合には……、怪我や病気の薬を、手助けを扱う窓口の商品に加えてはどうか」
無論、村にとっても貴重な物だから、出すか出さないかはしっかり検討すべきだろうが、とフェイサルが言う。村に薬が常備されるようになったのは、彼の教導による所が大きい。
「良いのですか?」
「気にする事は無い。私とて村の方針や願いには口を出している。何とか皆の納得する姿を見たいのだ」
思わず尋ねたボウノへ、フェイサルは珍しく照れたようにも見える口ぶりを見せた。
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他に提供できるものとして、忘れてはならないのが元々の相手の希望であったのだろう冬の逗留地だ。彼らが冬に行き場を探していたらしいと知った事が、交渉という話が出た発端でもある。
「森を荒らさない、争わないという条件でなら森で冬を越す事も、今ならできるのだ」
ストレガが言う今ならにはいくつもの含みがあった。運が良い、と言い換えても良い。
「獲り過ぎを避けるには細かく獲って良い物や量を示さないとだね。狩りを抑えて不足が出るなら何かと交換で村から食料を提供してもいいだろうさ」
「場所を整えるにゃあ、木もいるだろうが切り過ぎないように伝えないとなあ。だが、狩りすぎる場合だけじゃなく、増え過ぎた場合に多めに狩ってもらうっていう場合もあるんじゃねぇのか?」
ルチルとパヴェルが森の保全について同意を得るべき点を指摘する。
「さっきからの話は、意図も含めれば通訳殿にも伝えづらいだろう。ソーレ村の希望や理由を図に書いたものをあらかじめ用意しておくのもありか」
ルチルは相手へ渡す為の資料の用意を提案した。同時に相手にも伝えたい事があれば、筆記用具を渡して適宜使って貰えば良いだろうと考えたようだ。
「交換所にも、そういった交渉の助けになる道具はあるといいな。タキ君の持っているフリップの代わりに、指差すだけで良いプレートとか設置できないかな? 場所はこんな感じで……」
ヨルが地面に線を引くと、今度は交換所の場所や作りについての話題になる。村へは近づきすぎない事、という認識で一同は一致していた。ヨルは森側の柵の一部を改築する事を提案し、ストレガも同意したのだがナハティガルとトーラからは異論が出た。
「村に近づかれ過ぎるのも問題だろう。冬の人馬の居住地との中間地点が理想ではないか?」
「満月の日とか日時や合図を決めて、お互いがそこまで行く形にするのが良いと思うんです」
「ふむ……、そうだねえ……」
村と人馬が不用意に近づく事で、無用のトラブルが起きる可能性もあるとルチルも思う。交易所の役割はただの交渉窓口ではなく、互いにこれ以上は近づかないという境界の印ともなろう。ヨルもその意味合いは理解している。
「聞いてみた感じ、村人が森に立ち入る必要もあるようだしなぁ。村の傍に境界を作るんなら、立ち入って良い人間を決めにゃならんだろう」
「……決めたとして、人馬側は村人が見分けられるのか? 赤い頭巾のように目印を決めても良いが、目印なら誰でも入れてしまうから意味がない」
パヴェルの指摘ももっともだ。アロイスの言うように、異種族の個体差をお互いが見分けられるのかという問題もある。冬であれ、村人は雪が少ない頃合いには森へ入って様々な物を得ている。境界線を村の柵の位置にするのは生活の上でも難しそうだ。
「こちらの要望としては、武力の行使を控えるようにしてほしい、という願いなのだ」
ストレガが言う点も、当然の希望として付け加えられた。後は相手との交渉次第である。戦えない村人の為、中間地点に改めてゲルを設営して場を設けようとパヴェルは思っていたが、村長は今回同行するアロイスへ委任するようだ。二度手間にならぬよう、最初の交渉は使者と共に相手の野営地に訪れた際に行う事となった。
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事前に聞いた通り、人馬の逗留地へ辿り着くのは難しくは無かった。途中で人馬勇者に発見された際には、タキが喋って何やら掲げて見せると攻撃姿勢は無くなった。彼もいきなり矢を撃たない程度に学習したようである。怪我の後遺症も無さそうだと、フェイサルは内心安堵した。到着してすぐタキが前回にも見た長老格としばらく立ち話をして、戻って来る。
「本題は終わったのであるか」
ストレガに【はい】のフリップで答えて、タキは一同へついてくるように促した。先ほどは立ち話だったが、今度は大きな天幕のような所へ案内される。
「ふぅん。戦って一度話を付けたから、使者とも扱いが違うという事かねえ」
ルチルはそう口にすると、返事を期待したわけではないが【はい】のフリップが返った。
「最初に断っておきたいのだが、私達は君達の文化や考え方を知らない。それ故の失礼があったとしたら、改めたく思うので指摘願いたい」
具体的な交渉に入る前に、フェイサルがそう述べる。タキが言葉やジェスチャーで何やら伝えると、長老格の髭人馬は了承した。パヴェルが茶を提供しようと申し出ると、人馬は自分達も飲み物を用意し始める。
「一緒に茶を飲むのは歓迎で、自分達もお返ししてくれるって事かねぇ?」
読み取れた人馬のやり取りから、洞察であたりを付けると【はい】。双方の用意した茶を飲み合ったところで話し合いが始まる。人馬の茶は草原の草の香りがした。
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今回の提案の肝である冬の逗留地の提供について、森を荒らさないという前提で許諾できるという点は話がすんなり伝わった。長老は笑顔で頷いている。人と人馬の意思疎通手段は異なれど、笑顔や首肯の示す意味は同じなのかもしれない。しかし、笑顔の中にどこか悲しそうな空気も察せられた。
(前回は、もう少し年かさの女性人馬が居た気がする。今ここに居ないという事は……)
医者であるフェイサルは、出産のリスクも承知している。子が生まれたばかりで交渉の場に出て来れないというだけであれば良いのだが、と嘆息した。人馬達は、冬越しの場所を使わせてもらえるのならば、前回に置いて行った革や干し肉などをもっと提供する用意があるというが、人の側が冬営地の利用の貢物としてではなく、自分達も交換物を出すというと驚いたようだ。
「幾つか、村で提供できるものを見本で持ってきました。でも、貢物とか、こちらが下に出るというような意味ではないです……、って伝えて貰えますか」
トーラが慎重に自分達の意図を説明しつつ、村の野菜や薬草などを取り出す。通訳から話を聞いた髭人馬は、茶を淹れてから下がっていた女性人馬に声をかけた。手を伸ばしかけてからこちらを伺う素振りが見えたので、察して頷く。彼女が内向きの責任者のようだ。
「交易という概念はあるのであるか? 貨幣は? ない。ふむ、では物々交換はするのであろうか」
ストレガが問い、反応を見つつ再確認。必要な部分は、雰囲気で理解するのではなく三択フリップで確定させておくのも忘れない。準備の甲斐があって、概ね対話は予想の範囲で進んでいく。交易に村から出せる物の評価も良い。人馬側からはやはり狩猟で得られる肉や革が提供されるようだ。冬の間は森の南側を干渉地にして人馬は入らず、村人が薪取りなどに出入りする事も受け入れられた。
「交易所の場所については、俺が選んだ場所で問題ないようだな」
道中、条件に合う場所を宗派で調べていたナハティガルがそう確認する。彼らの冬営予定地と村の間で、何かを建てられる程度に広い空き地。偶然ながら、かつてトロルが暴れていた辺りであった。
「フリップでもプレートでも良いのだが、意志疎通の約束事は決めておくのだ。お互いが納得できるよう、信用は築き上げていくものだと双方努力すべきなのだ」
ストレガが言う。ルチルの見た所、人馬が素直なのは彼らに一度力試しで敗れているだけでなく、勝者であるヒトが人馬を強き者として対応している点が大きいようだ。交易所に櫓を築き合図があった時だけ交易、武器を持たず接触する等のトーラやストレガの配慮にも満足しているらしい。
(狩りの獲物というのは力を示す事にもなるから、それへの報酬という意味合いであれば受け入れやすいのか)
お互いが気分よくやり取りできるのならばそれに越したことはない。ヨルが示した建物の準備や水路の用意に関しては、人馬女性があれば嬉しいという態度であったが、それに見合う礼が用意できないとして長老が断りを入れた。相手にとっての価値で取引する概念は無いようで、あくまで自分達の価値で考えるようだ。
「価値観が違う事はこの間も見ましたけれど、悪い人が相手だと騙されてしまいそうですね」
「定期的に、村人から話を聞く機会は設けたいと思っていたが、彼らの話も聞ければ聞きたいところかな」
トーラがそう危惧し、ヨルが希望を述べると、通訳のタキが困ったような顔をした。彼が来ているのは天馬祭の特例で、別の時期に同じ事をしようとすれば大ごとになる。この取り組みがうまく定着するかはまだわからないが、そうなれば良いと一同は願っていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜8人
2023年02月11日 17時59分11秒 公開
相談掲示板
シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 >条件交渉 依頼自体は人馬使者を武闘派部族へ送り届ける事、そして決裂した際の警護とはなっているが、 実質的には『次の冬も人馬部族が森で過ごす場合の条件交渉』がメインとなるな。 村からの主な条件は以下の3点。 1:森の環境を壊さない。 2:村に近づかない。 3:物々交換を行うならば条件を決める。 ※3については期待と同時に恐れもある為、冒険者サイドから制止されれば辞める事も可能。 どの様に交渉を行うかは考え中だが、汎用スキルで『亜人語適性』・『交渉』は装備しておくつもりだ。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 別村で人馬と取引ができるよう交易所を設けた経験あるから流用できないかと思うのだ。 不用意に村に近寄らず、用があれば必ず見張りに声かける、武器は置く、交易所は人馬が得物を振り回せない設計にする、等。
トーラです。 よろしくお願いします! 交易をする場合、村とケンタウロスの居場所の中間地点に品物を持ち寄る交易所の様なものを作るのはどうでしょうか? 日時か合図を決めて市を開くようなイメージです。 日時は満月の日とか、合図は森に旗など目印を立てるとか。 そしてお互いに参加できる人数を決めるなどすれば、争いにもなりにくいのではないかと。 もちろん、その中にはアロイスさんや冒険者など護衛になる人間を含めて、ですね。 交易品として、ソーレ村から出せるものも考えた方が良いでしょうか。 余裕があるなら薬草やパンなどあちらに無さそうなものを交換に出せると良さそうですね。
フェイサル・セイフだ、今回も宜しくお願いする。 交易の形や約束事の内容に関しては各々、双方に利益のある建設的な提案がありそうだが…… 気になるのはかの「武闘派」のケンタウロス達の気質だな。 前回ソーレ村からの依頼で接触した限りでは全く話が通じない訳では無かったが、 基本的には戦士としての力量や格によって誰が正しいかを決める、そんな具合だったと思う。 恐らく皆、交渉に際しては彼らの為にもなる条件を考えていると思うが。 場合によってはその内容と関係なく、彼らと話し合う資格を剣を抜いて証明しろと迫られるかも知れんな。 ……物資の取引に関する仕組みが作れなくとも、せめて流血を避けたいのだという旨だけでも共有できれば良いのだが。
よぉ。キャスターのパヴェルだ。 俺も、ちょいと彼奴等(人馬達)に借りを作らねぇえといけねぇ。 よろしく頼むぜ。 >力を示す 前に、めぇど人馬の嬢ちゃん(ランラン)に認めてもらった事があってよぉ。そんときゃ向こうさんが手こずる大物を倒して認めてもらったっけな。 まぁ、村の周りに丁度いいのがあるとは限らねぇが、困り事を解決してやるのもいいかもなぁ。 ま、直接的に剣を抜いてやり合うってのは避けてぇな。 勝負すんなら別の手段か、手合わせまでにしておきてぇ。 1:森の環境を壊さない。 基本的に必要以上の狩りを抑制させるってのはどうだ? 伐採や採取は自前の道具を作るときに使うだろうから、 3の物々交換で相互利用させてるってのも手だな。 2:村に近づかない。 んー。そうだなぁ。境界線みてぇなのがあるといいかもな。 目印があるといいんだが、長期に渡るってんなら、 風化しにくい物を目印にする、とかかねぇ。 3:物々交換を行うならば条件を決める。 どちらにせよ人馬ってぇのは村民よか力があんだろう。 双方が不利にならねぇようにすること、万が一、それで争いになるようだったら、村民に被害が出ねぇようにしてぇな。 ○その他 基本的に獣を狩るのが上手い奴らだ。 武闘派っつうなら、向こうさんの(ストレス)適度に発散して貰ったほうが、いい。冒険者に依頼するまでもない魔物の討伐を物々交換するついでに頼むってのも悪くねぇな。
遅くなったが情報屋のルチルだ。 今回もよろしく。 >条件 トーラの言う交易所みたいな物を作れば「これ以上近づいては行けない」の境界線としての役割も果たせそうだし、丁度よさそうだ。 村から魔物の討伐をお願いして報酬として物品を渡す、という物々交換も都合がいい気がする。 「森の環境を壊さない」の匙加減を伝えるのは難しい所だが、要は食料のために狩りすぎる、或いは火を起こす薪のために森の回復力に期待できないほど伐採する危険が思いつく。 これは物々交換を利用して需要をコントロールすればクリアできそうに思えるね。 >力を示す 武闘派集団とはいえ一旦力を示した事のある相手だ。その上でまた殴り合いで白黒つけようという可能性は限りなく低いと思うが……まあ用心に越した事はないだろう。
遅くなってすまない。ヒーラーのヨル・スレイマンだ。 宜しくね。 >交易所 とてもいい案だと思ったな。最初の方が境界になるもので双方を阻みつつ、物品のみをやり取りできるような形にしてお試ししてみるのもいいかもしれない。護衛をつけるのも賛成。 文化の違いは恐らく他にもいろいろあるだろうし、ゆっくり歩み寄っていけるといいかもだ。 これを軸にして、今回はお互いちょうどいい位置を模索していけたらと思うよ。 >森の環境を壊さない これについては特に、村側も多少譲歩の必要があるかもしれないね。 ケンタウロスが森に住むなら、住みやすい環境にするためにある程度敷地を整える必要もあるだろうし、そこの線引きはお互いの意見をよく聞いて納得のいく落とし所を見つけられたらいいんじゃないかな。 >個人 とりあえず、細かい部分で互いの考えをヒアリングすることと、正しく伝えることが必要そうだと感じるので⋯⋯亜人語適性やだいたいそのあたりのスキルを持って重点を置いておこうと思うよ。 既に言われているけれど、一方が得をする形式は例え成り立ってもすぐに破綻しそうだ。うまく落とし込めるように意識の共有ができたらいいと思うし、できなかったら段階的に進めていけるように提案しておきたいな⋯⋯というところだ。
>力を示す。 前回の報告書を見てきた。あんだけ派手にやってりゃ、 ルチルの姐さん達前回の参加者もいりゃぁ、起こりづれぇかもな。 っと、お前さんらも気付いてるたぁ思うが 今回の交渉役は、俺らの言葉を人馬に通訳は出来ても、返事は【はい】、【いいえ】、【わからない】の三つしか返事できねぇから、完全な相互の意思疎通はむずかしいかもしれねぇ。
>意思疎通 ケンタウロス達とやり取りする機会は何度もあったからその辺は慣れているつもりだ。 洞察で様子を伺った上でジェスチャーを組み合わせたり、念写で思考を映像化してみたりとかだな…。今回は人語を理解できるケンタウロスも居合わせているから、寧ろ今までよりも意思疎通がやりやすいかもしれん。