【鬼哭】それでも絆の為に
辻村朝
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シナリオID:2749
オープニング
先の『イダの刻印』によって半数程度のゴブリンがドン・ゴーフルの精神支配の影響が薄まったことで、結果暴走状態に陥る。刻印の影響を受けたゴブリンの中には、ゴブリンの主導者のひとりであるアニセトも含まれていた。
この混乱を収めたとはいえ根本解決には至っていない以上隔離せざるを得なかったところに、ゴブリンのもう一人の主導者・カリサのもとに、かつての友であるセリオが現れる。
シファーク村と同様に混乱に陥った村から離れたというセリオだが、シファーク村にやってきた目的は旧友であるアニセトを含めた暴走ゴブリンたちを暗殺することだった。
この襲撃も冒険者達により退けられ、数日後――。
「刻印の影響がなくなる?」
「まだ推測段階だけど、そう言われているらしい」
自らの言葉を反駁したカリサに、村のヒューマン側のリーダーであるテオフィル・アンテスは肯く。
ヴィントの海ダンジョンに半日隔離させる。
それが、使者から送られてきたイダの刻印を解除する為の手がかりであった。
「うちの村は結構な数暴走したゴブリンが居るから、僕だけでヴィントに連れて行くのは不安がある。道中もそうだし、ダンジョンの中でもね。……何でかは、分かるだろう?」
「ブラックデスの実行部隊か……」
カリサは深刻そうに呟く。
おそらく脳裏には、1人のホブゴブリンの顔を思い浮かべているだろう。
イメージするのは、かつてそうだったという人好きのする微笑か、先日捕縛された時に見せた空虚な笑顔か。
「セリオたちはどうするんだい?」
顔を上げたカリサは、そう尋ねてきた。
村に侵入してきたセリオたち実行部隊は捕縛された後、今は手足の自由を厳重に封じられた状態で空き家に軟禁されていた。
捕縛当初は、任務失敗の責からか舌を噛んで自殺せんばかりの勢いだったが――セリオがそうすることを、誰よりカリサが望んでいない。
またテオフィルも、この村の中で無闇に死人を出したくはない。故に、少なくとも最低限の生きる為のサポートは行っていた。
カリサの質問に対する回答も、テオフィルはすでに用意してあった。
というか、それしかない。
「一緒に連れて行きたいと思っている。勿論、他のゴブリンに手を出させないようにする必要があるけど」
「……あいつらも、刻印の影響を受けていると思う?」
次いだ質問にも、テオフィルは肯いてみせる。
「あると思う。授恵者だけに、同じように理性は保っていたアニセトよりもずっと更に強くかも」
これはテオフィルも又聞きで知ったことだが、刻印の影響を受けたのは冒険者のゴブリンにも居るという。
冒険者と実行部隊の共通項はまだ分からないが、家族だと言いつつアニセトを殺すことに躊躇のない暴力性は暴走ゴブリンと同じだ、というのがテオフィルなりの根拠だった。
「すまねえ、テオフィル。まだ迷惑をかけちまう」
暫くぶりに地上へ出てきたアニセトは、開口一番テオフィルにそう告げた。ちなみに実行部隊の襲撃のこともすでに知っている。
神妙な面持ちの彼に、テオフィルは苦笑してしまう。
「気にしないでいい。また皆で村を作れると思えば苦じゃないさ」
「……前から思ってたが、昔の――ゴールディの頃のセリオに、ちょっと似てるんだよな、お前」
「……そうか」
だからカリサもアニセトも、自分や皆と力を合わせ村を盛り上げるということを受け入れてくれているのかもしれない。
今更ながらテオフィルは、そんなことを思った。
●
ヴィントへ向かう道中では何事も起こらなかった。
単に幸運だったというだけではない。
シファーク村からヴィントへ向かう道は荒野が多く、待ち構える為の潜伏には向かない。狙撃するにも数が多すぎて、すぐに警戒されてしまう。
キャスター等を配備されれば厄介だったが、周囲をきちんと警戒していれば、テオフィル自身でも動きに対策出来る。
そんなテオフィルの事前予測が当たっていたのである。
ただしダンジョンではそうもいかない。
不確定要素が多いだけに、一瞬たりとも油断できなかった。どこから、どれだけの数の実行部隊が来るかも分からない。
それに、半日すれば解除できるかもしれないとはいえ、それまでの間に再度暴走する可能性だってゼロではない。
地下室に隔離している間に暴走がなかったのは、それこそ幸運だった。
ヴィントで冒険者たちと合流したテオフィルたちが侵入した海のダンジョンの一角は、海には面しているもののそれ以上に緑の多さが目についた。
「まるで大樹海だな……」
目の前のテオフィルが言う。
アニセトも同じ感想だった。
一団がいる砂浜の右には海が広がっているが、左は様々な種の樹木が生い茂っていた。ついでにいえば海の対岸にも同様の光景が広がっている。
それでもここがいいと決めた理由は、この砂浜の標高にあった。多くの木々の背よりも、砂浜の方が高所にある。
樹海側から何かが襲ってくるとて、まず密度の高い森を駆け上がってくる必要がある、というわけだ。
「ここで半日、結果が出ればそれ以上のことはない。……セリオだって、性格は兎も角もう君たちを殺そうとするなんてことはしないはずだ」
声を潜めて自分たちを気遣うテオフィルに、アニセトは尋ねずには居られなかった。
「……これも前から思ってたんだが、どうしてお前はそうなんだよ。ただのお人好し、じゃあないだろ?」
「……」
テオフィルは目を瞬かせ、それから俯いて――顔を上げることをせず、黙って振り返った。
解説
マスターより
リプレイ
いつ来るか分からない外側からの襲撃も、連れてきたゴブリンの暴走も警戒すべき。
故に、早いうちにやるべきことが冒険者たちにはあった。
「よいしょっと」
ヨル・スレイマンは一行が陣取った一角にグレイウォッシャーをセットする。
その一方では、
「くくく……。見るがいい! 我が魔眼の力を!」
シャドウがすぐ近くに居たゴブリンの目を見つめる。
「魔眼……?」
訝しげにシャドウの目を見返したゴブリンだったが、やがて意識が朦朧となってきたらしい。その場に崩れ落ちて寝息を立て始めた。
「どっちかっていうと見ていることで発動する力だよね、これ……」
何となくツッコミを入れつつ、アラン・スミシーも同様に、ゴブリンをヒュプノシスで眠らせていた。
「まぁ、何にせよ眠っておいてくれた方が防衛も楽だろう。もう一度暴走されるのも厄介なことだしな」
先日のセリオたちの襲撃の際にも居合わせた故か、ロドリック・アルカインは慎重だ。下から見上げた際に保護しているゴブリンに射線が通らないようにしたい、という彼の意向を汲んで、一旦テオフィルが足を止めた場所からもう少しだけ移動していた。
そのセリオたちといえば、キツめに捕縛されていることもあり今は大人しくしている。
「……こんなことをして、一体何になると思ってるんだ?」
「これが一番、犠牲を出さずに済む方法なんだとよ」
セリオとアニセトがそんな問答をしている横ではナハシュがもう一台のグレイウォッシャーを設置する。
「アニセトはちょっとどいといてくれ」
「? わかった」
自分の指示に従って、セリオが縛られている台車のすぐ側に居たアニセトがその場を離れたのを見て――ナハシュは紋具を起動させた。
セリオたち授恵者ゴブリンを縛った台車を中心に掘削が始まり――。
深さが2mくらいになったところで、ナハシュはグレイウォッシャーを止めた。
台車はといえば、穴の底に置いていかれている。この孤立によって何かの拍子に勝手に拘束が緩まることはなくなるだろうし、実行部隊が拘束を解きに来たとしても対策が立てやすくなる。
「いっそこいつら気絶させといた方がいいんじゃねえの」
「それは最終手段ですけどね……」
ナハシュの指摘にテオフィルが難しい顔をする。
「授恵者に刻まれた程の強度の刻印です。冒険者の刻印解除は起きたままで出来たと聞いているんですが、気絶という状況下でも同じことが出来るかは確証はないですから」
当事者の意識が覚醒している必要があるかどうか、というのは明確なソースはない。その意味では保護しているゴブリンにしても、たとえば暴走して気絶させないといけなかったとしても半日経つ頃には起こす必要がありそうだった。
そうして粗方準備を整えた後――最初に現れた不穏な気配は。
「……来たな、実行部隊だ」
宗波で周囲を警戒していたナハシュが、敵の襲来を告げる。
「じゃあ、準備かな。一瞬だけ集まって」
アランが仲間たち全員に指示を出す。言葉通り集まったのを見計らって、エーテルの波動を開放した。
それからベルク・オスマット、ナハシュ、ミゼリア・L・ステュクス、シャドウが気持ち前に出て、残る3人とテオフィルはその場にとどまる。
「編成は?」
「マークだけじゃはっきりとはわかんねえが、前2人、後ろ3人ってとこか。足並みからしてシーフはいなさそうだ」
そうなると前はウォーリアと、あるとすれば壁ヒーラーか。
後衛に関して言えば、姿を見せる前に行動を起こしてきた。
即ち、シューターによる長射程攻撃である。下から上に向かって放たれた矢は、林の上空で最高到達点に達すると一行の陣地へ向かって降下を始めた。
それも、2本。
ただの矢ではないだろう。一網打尽にすることを考えると、炸光矢あたりか。
「1本は処理する。もう1本は頼んだ」
「わたしが……やります……」
ロドリックの言葉に、ミゼリアが応じる。
「ここから、はなれてください……」
ロドリックが止めるであろう矢を見定めてから、ミゼリアはもう一方の矢の降下地点に入る。声がけすると近くに居たゴブリンたちは素直に従って降下地点から離れていったが、下手に散開されると逆に守りにくくなるので、「こっちこっち!」とアランが呼びかけた。
すでに眠っているゴブリンたちの居場所は特定はされていないようだ。ロドリックの滞在ポイント提案に加え、ヨルがグレイウォッシャーで掘り返した土を林の方角に積み上げて置くことで一行の様子を目視しにくくしておいたのが功を奏している。
ロドリックが召喚したアイアンウォールが矢を受け止め、ミゼリアは手枷で受けた。予測通りそれぞれの矢は光をの破片を撒き散らしたが、眠っている者も含めゴブリンに大きな被害は出ていないようだ。多少手傷を負った者はいるが、アランひとりの回復でも十分全員全快出来る範囲である。
迎撃防御の間にも敵は迫ってきていたが、
「さて、よりにもよってイダ姫と組んで殿下に牙向きおった戯けども一派ごときが、我のいる場所で好き勝手出来ると思うなよ?」
林を抜け出てきた実行部隊の前に、ベルクが威圧感を以て立ち塞がる。
唐突に与えられたその威圧は、実行部隊の次の動きへ僅かな躊躇いを生んだ。
それが命取りになる。
「わりぃな。こっちは通行止めなんだ」
すかさず1人の背後に回り込んだナハシュが三連撃を叩き込めば、仰け反る仲間を見て動揺したもう1人をベルクの短剣が同様に次々と貫いていく。
その頃には冒険者たちの目には、後衛の姿が見えていた。シューター2人に、おそらくキャスター。
この状況で魔法を撃たれるのは少々良くない。たとえ初撃で被害が出なかろうと、その結果は『より奥に標的が居る』ということをシューターに指し示すことになる。
事ここに来て、ミゼリアの判断は早かった。
身に纏った漆黒のエーテルを襤褸布のように靡かせ、キャスターの眼前へ。こうなるとたとえシーザーロアがなかろうが、後衛はミゼリアを無視出来ない。
が、だからといってもうひとりを無視していいというわけでもない。
「余所見してると死ぬぞ」
瞬間的にキャスターの背後まで駆け抜けたシャドウが、ダガーでキャスターの背を貫いた。
実行部隊は退却の指示は与えられていないらしい。
キャスターを真っ先にやられ、なし崩し的にシューターもシーフ3人の近距離攻勢には手も足も出ない状況である。
あっという間に実質ウォーリア2人だけになったが、彼らは陣地にゴブリンの姿を認めると、最初の動揺などなかったかのように陣地へと突っ込んできた。
だが、すでにそこは蜘蛛の張った巣のようなものだった。
「それ以上は行かせないよ」
自らが設置した砂壁に隠れていたヨルは、自分の横をウォーリアが通過したのを見てその後を追った。祭刀を振るうと、エーテルが、刀傷の代わりに衝撃を以て1人を地面に叩きつける。
もう一方のウォーリアは、テオフィルによる牽制射撃で足を止められた後、ロドリックのフリーズボルトで足を貫かれてその場に崩れ落ちた。
実行部隊を倒した後、部隊全員の手足を折った。セリオたちのように厳重に拘束する準備が難しい以上、次に行動を起こそうとしたのならばそれこそピンチになりかねない、という事情もある。
気を失っているうちに猿轡を嵌めて転がしていると、やがて1人が意識を取り戻したようだった。先ほど、ベルクの威圧に怯んだウォーリアである。
目覚めた彼は地面に転がされたまま、冒険者や、本来は同胞であるはずのゴブリンたちを眺め回す。その双眸には、一種の憎しみさえ感じられた。
が、目覚めたという報せを受けてすぐ目の前までやってきたベルクが再び威圧感を以て見下した時には、戦闘の記憶が蘇ったのかその瞳に映る感情が確かに弱々しいものになった。
「よかったなぁ、ここが遮るものが無い場所で、おかげで裏流の拷もn……げふん、尋問ができやしない」
げしげしとウォーリアの体を蹴りながら宣うベルク。
ウォーリアからすればそれだけで大分恐ろしかったろうが、もっと残酷なことになりかねないことをシャドウがさらりと言ってのけた。
「遮るものならあるぞ」
「……なるほど、確かに」
シャドウが林を指し示したのを見てベルクは肯き、その後またウォーリアを見下した。
「この場で洗いざらい吐くか、あちらでよりきつい拷も……尋問を受けるか、どちらが良いか選べ」
それでもあえて言い直したのは周囲のゴブリンへの配慮だが、実際には手足を折るなんてことは生温いレベルに過ぎないと言えるほどの拷問が待っている。
ウォーリアの覚悟は、決まっていた。
●
「どちらにしろ持っている情報は吐かざるを得なかっただろうに、馬鹿なのか?」
ウォーリアがまた気絶するまで虐め抜いたベルクが林から戻ってきたのを見て、アランが恐る恐る声をかけた。
「どうだったの?」
「下っ端も下っ端だ。大した情報など持ってはいない」
残念とばかりにベルクは頭を振る。ダンジョンへの入り方は一行と同じだったし、彼らはサチコから直々に命令を受けたというよりは実行部隊の情報網を通じて指令を受けただけらしく、元々はそれぞれ別の拠点があるらしい。
「それでその、ウォーリアは……?」
「流石に一般人の前に出せる状態ではないからな、林の中に捨て置いてきた。まあ意識はないが息はあるし、何より授恵者だ。ちょっとヒールでもかけてやれば死にはしないだろう」
「……ちょっと行ってくるよ」
言い置いて、アランが入れ替わりに林へ向かう。ヒーラー1人だが、今のところ他に接近する気配もないし問題ないだろう。
その背を見送りながら、ヨルは言う。
「……ま、これからまた来るかもしれない実行部隊には良い威嚇になるかもしれないね」
「下手に近付けばお前らもこうなるぞ、ってか。でもなあ、それで退いてくれる連中ならさっき拷も……おっと尋問か、受けてねえと思うんだよな」
「意地、でしょうね……」
ナハシュとミゼリアの言葉に、「それは確かに」とヨルは肩を竦めた。
●
それから数時間は、平和な時間が続いた。
一度海側から魔獣が現れたこともあったが、図体の大きさの割には大した攻撃能力もないサメ型魔獣だった。
冒険者たちに袋叩きにされてあえなく撃沈し、見た目通り肉が多かったことから臨時の食料として美味しく頂かれることになった。
そして、さらに数時間後。
「ぐ……」
「アニセト?」
苦悶にうめくアニセトの異変を察したテオフィルが声をかける。
拘束が解かれる切っ掛けさえもない状況下、セリオたちは意識はあるものの静かなものだった。それでも2人は、何かが起きた時には真っ先に、被害が出ないうちに冒険者に告げられるようにと見張りを申し出ていた。
「俺が暴走したら……その時はテオフィルがどうにかするだろ」
などとアニセトは嘯いていたが、まさにその通りのことが今起きようとしていた。
再度暴走の予兆を見せたのは勿論アニセトだけではない。
が、冒険者たちの準備は、実行部隊を相手にする時以上に万全だった。
「眠って、ください……」
ミゼリアもまたヒュプノシス持ちだった。アラン、シャドウとともに、暴走してどこかに行こうとする者から呼び止めてはその目を見る。
「今日は魔眼の力がよく発揮される日だな」
シャドウは眠らせたゴブリンを、ヨルが掘った穴へと放る。手当の必要がない程度とはいえ、最初の実行部隊の襲撃の際に炸光矢の余波を受けていたことあり、優先的により安全な隔離場所に放られた格好だ。
とはいえ、数はアニセト含め30。3人で一度に眠らせられる数的にも、そのまま穏便に、というわけにはいかない。
実際、3人の捕捉から逃れてどこかに行こうとするゴブリンもいたが
「そちらへは行くな」
ロドリックが杖でゴツンと一発入れ。
また別の場所では仲間同士争いになりかけていたところを、ナハシュが短剣の柄で小突いて気絶させた。三連撃の使用も視野に入れてはいたが、一般人相手にでは1人1撃とはいえ殺しかねない。故に1人ずつ攻撃することを選んだ。
その争いの処理が終わると、ナハシュはアニセトと対峙するテオフィルの援護に向かう。
シューターであるテオフィルは得物を使うと隙もあるうえ、射止めたら射止めたでアニセトに深い傷を与えかねない。故に回避中心の戦いを強いられていたが、ナハシュが援護に入ったことで状況が変わった。
「うるせえ、黙れ……!」
何に対しての怒りなのか、アニセトはそんなことを叫びながら拳を振り回す。それをひらりと避けたテオフィルは、ナハシュに目で合図する。
アニセトの背後に回り込んだナハシュは、先ほど同様に短剣の柄をアニセトの首元に叩きこんだ。
「一旦ちゃんと話せるようになったってのにこれか。厄介なもんだな」
地面に倒れ伏したアニセトの姿を見下ろしながら、ナハシュとテオフィルは揃ってため息をついた。
そうして場が静まり返り。
起きているのは冒険者たちとテオフィル、セリオたち捕縛された実行部隊のみになった。
この場所に来た時にナハシュが砂浜に立てた日時計は今この時も順調に時の経過を皆に知らせており、もうすぐ目標の半日が経とうとしている。たとえ今から実行部隊の襲撃があったとて、迎撃する余力も十分に残していた。
だからだろうか。
「さっきのアニセトに対してもそうだったが、あなたは本当にゴブリンに手を出さないんだな」
どこか諦めを含んだ声音で、穴の中のセリオが穴の縁に立っていたテオフィルに問いかける。
「帝国騎士だったら、もっと力を見せるものだと思っていたけど」
「別に、誰にも手を出したくないわけじゃない。この間だって君たちには矢を放ったわけだし」
テオフィルは俯いた。
「ただ、何も悪くないはずの人が誰かの身勝手な都合で傷つくのを見たくないだけなんだ。必要ならそれを防ぐ為に武器を取るけど、少なくともアニセトを相手にそれはない」
「どうしてそこまで自分を縛る?」
「……僕の騎士としての一番の汚点がまさに、自分の都合で傷つけてしまった人がいることだからさ」
それだけ言うと、テオフィルは穴から視線を逸らした。
●
日時計がおよそ半日を指す直前、冒険者たちは眠らせていたゴブリンを起こした。
最初に倒して昏倒させたままだった実行部隊も意識だけは取り戻させておく。ベルクに酷い目に遭わされたウォーリアはといえば、今一度アランが林の中へ様子を伺いに行った。
暫くして、アニセトが言った。
「あの声が、聞こえなくなった。なんかモヤが晴れた気分だ」
同様の声があちこちのゴブリンから上がり、また実行部隊だったゴブリンにも変化が生じた。
よほど強く刻まれていたのだろう。少しの間呻いていたがーーやがて、
「僕たちは、何をやっていたんだ……」
戸惑いと後悔の入り混じるセリオの声が、穴の中から響く。少しして嗚咽も聞こえ始めた。
もう、実行部隊として村に危害を及ぼそうとした彼の姿はない。
「帰ろう、村へ」
テオフィルがセリオに向けたその言葉は一行の間にあっという間に伝播して。
「これで村のことは一件落着、かな」
その様子を見ていた冒険者を代表して、ヨルはそう呟いた。
マスターコメント
イベントシナリオ普通 報酬:多い7 / 4〜25人
2023年02月03日 16時03分38秒 公開
相談掲示板
シーフのシャドウだ。 実力的に今一つの感は否めないが 勢いで参加してしまった。 一生懸命がんばるのでよろしく。
ヒーラーのアラン・スミシーだ! 戦力が揃うといいのだけれども……。 ともあれ、待つ他ないか!
よし、最低限の頭数は揃った……ってところかな? 範囲ヒールとバフは確保済み、さすがに熟練のシーフの子には敵わないけど なるだけ速攻でバフをかけられるはずかな。 ヨルくんの福音共鳴と合わせたら相当の強度になるかなーと思いたいところ。 現状の人数だと真正面で戦わず逃げる形が理想かな……?
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 現在の面子だと我が戦闘要員になった方が良さそうか?
ベルクくん、どうぞよろしく! そうなるね、なるだけ気を引き付けて危なくない程度にね。 ゴブリンの方々の暴走にはヒュプノシスで沈静化をはかるのはいかがだろうか? ただ、30人を3メートルで相手取るのはなかなか厳しいので、 何人かにヒュプノシスを持ってもらって再暴走の時は眠ってもらうのが一番かと。 ヒュプノシスがあればダンジョンの魔獣対策にリソースが ある程度割けると思ってるけれども、実行部隊の襲撃のおりに全員寝てました! だとマジでピンチになっちゃうし、うーん。悩ましいところだね……。 とりあえずご一考いただけると幸い!
ウォーリアの、ミゼリア……です。よろしく、おねがいします……ね。 ゴブリンさんたちが、ぼうそうしたときに……ヒュプノシスで、ねむらせるのは……良い手だと、おもい……ました。 襲撃のときには、30人のゴブリンさんたちを、つれてにげるよりは……その場で、応戦というか、防戦というか……たたかって、げきたいしたほうが、ゴブリンさんたちも、安全そうな、きがしましたが……いかがでしょうか。 逃げずに戦うなら、ゴブリンさんたちが、眠っていても、さほど、問題もないのかな……とも……。 ヒュプノシスは、わたしも持っていけそう……です。 戦闘では、タンクのうごきに、なり……ます。こんかいは、敵も、あまり強くはなさそうなので……シーザーロアと、殺界と、りょうほう持っていって……敵が、ゴブリンさんたちに、近づけないように、できれば……と。
ふむ……おじさんがちょっと非積極的過ぎたかな。 応戦という形ならそのようにバックアップしよう! 頑張ろうねー
なるほど、ヒュプノシスか。 俺も用意しよう。
自分は実行部隊の襲撃の時はキャスターとかヒーラーから狙っていきます。 一応参考までに。
キャスターのロドリックだ。 前回に少し関わったので、今回も見届けたく思う。ここまでの相談は拝見した。 ヒュプノシスは、戦闘中は使えない、だったか。事前に眠らせてしまうのであれば大勢が持つ必要はないかもしれない。私は他の物を持つことにしよう。 暴走するかもしれないゴブリンは、眠らせるだけでなく手なり足なりをロープで軽く動きを制限する程度に縛ってはどうか? 何かあった際に少人数で30人全員を見張るのは大変なので、半分くらいは動きを制限するのも良いのではないか、と思う。 それと、「ハプニングが何も起こらないこともあるが、その時に何をするかによっては次判定時の結果に変動が出る。」が気になっている。 何も起こらない時だけでなく、何か起きた時の対応にも次のハプニングへの影響を留意した方が良いと思う。 私が護る側としてやられたら一番嫌な事は、相手が複数グループでまとまってこちら以上の人数になるまで攻めてこない事だ。こちらに守りの人数が居る事を知られれば、それ以上の数をまとめてくる危険性はあると思っているので、襲撃者を逃してこちらの情報は知られぬようにしたい。
>襲撃者を逃してこちらの情報は知られぬようにしたい。 なるほど。では襲撃者は倒した後、逃がさないように捕縛するとしよう。
ヒーラーのヨル・スレイマンだ。宜しくね。 >方針 既に出ているけれど、逃げずに戦う方針が良いと思う。暴走の可能性のある30人を逃すのは、それはそれで割くリソースが大きいしね。 アラン君が触れてくれている福音共鳴(インフィニティロア)も持っていけるよ。アラン君がかけてくれるなら、バフの乗り方も優秀だから強いと思う。 護衛時間の半日に対して、バフの持続時間はあまり大したことがないから、これはピンチの時に使って場を切り抜けるのに使うつもりでいるのがいいかもしれない。襲撃と暴走が重なった時とか、ロドリック君の言うような大群で攻めてきた場合とかかな。 >分担 ヒュプノシスはとてもいい案だと思う。ただ、目を合わせる都合上時間がかかるだろうし、30人全員眠らせるのはもしかしたらだいぶ難しいかもしれない。 なので、万一複数のハプニングが重なってしまった時のために、ざっくり「戦闘に備える人」と「暴走に備える人(ヒュプノシス使用や物理的に暴走行動を抑えるなど)」を分けておくのがいいかもしれないと思ったかな。 もちろんきっちり分けるのではなく、重ならない時はそれ以外の行動もしていいと思うけれど。長時間だから、分担することでスキルを温存もできるしね。 >相手が複数グループでまとまってくる場合 これや不意打ちに備えて、定期的に双波とかを使ってくれる人がいるととてもいいかもしれないね。 先に敵を発見すれば備えられるし、こちらの状況によっては先に叩きに行ってもいいかもしれないし。
じゃあ自分は暴走に備える方で
提案に乗ってくれてありがとう~! こちらは暴走に備える方かな、ヒーラーとしてなんとか役目は果たしてみせるとも! 索敵諸々はお任せする形になるけれども、役に立てると幸いだ~。
シーフのナハシュだ。今回はよろしく。 >方針 同じく基本撃退で賛成だな。この数だと逃がすのも一苦労だし、逃げてる最中に暴走が重なった場合それこそ始末に負えねえ気がする。 実行部隊連中についても、基本は逃がさず全員仕留めるなり捕縛なりで賛成だ。 何も起きなかった際も警戒しておくに越したことがないのも同意だ。この辺は探知スキルやなんかで周囲を警戒したりゴブリンたちの対応が出来ればいい時間じゃねえかと思う。 特にセリオとセリオ取り巻きの授恵者たちはヒュプノシスも効かねえ上に、どさくさに紛れて何時何かをしてもおかしくない状況とも思える。一応厳重に縛られてはいるようだが、此処は常に見張っておきてえところだと思うな。 >ゴブリン ヒュプノシスはいい案だと思うし、戦闘に備えるのと暴走を抑えるで別れるのも良いと思う。 これヒュプノシスにかかった状態でも暴走判定を引いたら起きて暴走するのか、それとも寝たままなのかがちょいと疑問だな。寝たままならいっそ全員寝かせて穴掘り紋具で穴掘って入れちまうのも良いと思うがどうだろ。
ここまで返答、提案など確認させてもらった。私は戦闘側主体に回るつもりだ。 ナハシュさんの言うように、自分達の陣地がせっかく高台にあるのだから、下から簡単に見通せないような都合の良い場所を得たくもある。遠くから撃たれては守りようがない。 穴掘り紋具というのがあるのなら使用して寝ていて貰えば、確かに守りが固くなりそうだ。提案に賛成する。
>穴掘り紋具 そういえばあったね。俺は持っていないけど、ナハシュが持っていけるならやってみてくれていいと思う。深さとしてもおいそれと出られるものではないだろうし、ロドリック君の言うように守りやすくもなる。 >分担 そしたら複数のハプニングが重なる場合も攻撃に徹する方で行こうと思うよ。 個人的に持っていくのは回復とバフが多めになる。ピンチの時はバフを張り、戦闘合間はセリオ達の見張りと皆の回復が主な動きになるかな。
>穴掘り紋具 自分で言っておいてあれだが、標高が高いとはいえ足場が砂浜だったな! あんま掘りすぎると今度生き埋めになりかねねえのと、ヒュプノシスで寝たきりじゃなかった場合、暴走で暴れるとちょっと危険かもしれねえな。やるなら1~2mくらいの深さに留めつつ、予め動きを拘束しているセリオ達や寝てたり縛ったゴブリンを中に入れておくくらいがちょうどいいかもしれない。 >個人の動き そしたら普段は宗波で敵の感知スキル備えと索敵を同時に行う感じで、暴走時は戦闘に備える方に回っておこうと思う。実行部隊を相手する時は今の所敵の逃走阻止をメインで動こうと思うぜ。
>穴掘り紋具 持って無いと言ったけど、確認したらメダルがちょうどあったので交換してきたよ。 あまり広範囲に掘れるものではなかったはずだし、俺も一応持っていっておく。 1〜2mの深さに留めるのも了解だ。結果的には穴の中にいるゴブリンと外にいるゴブリンの両方が存在する感じになるね。護衛の際は留意しておく。