【初夢】終の英譚に語り手は無い

一乃口

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シナリオID:2724

オープニング

 未曾有の危機がロスガリア大陸に訪れていた、各地の至るところで多数のクリーパーが出没し街々を襲った。
 白いヒトガタの異形、頭と肩の境界は無い8つの眼をもつ異形は身体を変形し武器のように振るう。
 最初期の頃こそ、各地の騎士団や授恵者――冒険者達の活躍によって多数は退けられた。
 ここまでは問題がない、よくある日常のように思われた。

 しかし、直ぐにまた出没した。
 
 オカシイと違和感を感じる者も居たが、確信も無く――そして確信を得た頃には手遅れだった。
 湧き現れるクリーパーに際限は無く、何時までも何度でも湧き続けた。
 いくら鍛え抜かれた歴戦の猛者とは言え、休まずに戦い続ける事は叶わず、いずれ限界が訪れる。
 1人、また1人と斃れて行った。
 そして超大型のクリーパーまでも追い打ちのように多数出没し、戦況は大きく傾いていった。
 誰かが口にする。
 ”まるで神代の再現だ”と――――。
 たった1体でもその驚異は計り知れない、それが複数も現れたのだ。
 護り切れない、そう判断した施政者達は民を逃がすべく誘導した。
 逃げる時間を稼ごうと、数多の戦士は殿にその身を投じて英雄と語られる存在に至る。

 ロスガリア大陸の上で、一体何割の人口が死んで――生き残っているのか。
 破壊され焼き払われて行く街を見捨て、面影すら失くした廃墟を幾つも背にして逃げ延びた。

「一体どうしたら良いんだ……」
 頭を抱えた衛兵が、胸中を吐露した。
 その言葉に答える者は――居る。
「そんなのは決まっている、最後まで戦うんだ」
 生き残った冒険者は武器を手に、視線の先に広がるクリーパーの群れを見据えて言う。
 その瞳は疲弊していても、輝きを失っていない。
 まだ遠くの、別の場所では――共に戦った仲間達が、同じように戦っているハズだ。
 幾つもの街の滅びを、目の当たりにした。
 目の前で散った友の姿もあった。
 それでもこの生命が燃え尽きるまで。
 この背中に守るべき人々が生きている限り、力あるものはその責務を真っ当する。
「さぁ――行こう」
 その終焉が見えて居ようとも、力在る者としてへ力無き者を少しでも存えさせるため。

 死地へ足を踏み込んでいく、その英雄達を語る者は――――無い。

解説

●解説 ※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。  夢オチシナリオでバイオレンスです。どう足掻いても死亡演出です。  シチュエーションとしては断崖を経て海のある小さな街、船もなく生き残った街の人々に領地の兵士が数十名。  押し寄せてくる多数のサイズ豊富なクリーパーの数々。  好きな死に様を選んで下さい。  フルアドリブでも承りますが、『どんな言葉を喋るのか』はイメージだけあると嬉しいです。  さぁ、気楽に終りを迎えましょう。  夢オチなので! ●港街  南側が断崖でその下に海広がっています、西と東、北の門があります。  門を守る、打って出る、街の中で人々を守る等の配置を指定できます、指定がない場合は門を守るになる予定です。    戦闘描写が中心になるかと思います、話の途中だがクリーパーだ、くらいの勢いでお出ししたいですが。  『死地へ向かう情景』が中心になるのも非常に美味しいので、一向に構いません。 ●特殊ルール  使用はご自由に。  【散華】命をすべてエーテルに変えて燃やし尽くす自爆技。  の使用ができます、特定のスキルと組み合わせ効力が増すイメージや、プレイングでの指定も可能です。  内容はアドリブでも対応します。 ●敵勢力  ヒトガタの異形クリーパーの多数。  プレイングで形状の指定も可能です、字数の兼ね合いで細かく書けなくなるケースもございます。  めちゃくちゃ強い1体から、圧倒的な数の暴力までお好きな戦場をお選び下さい。  大丈夫です、夢オチなので!

マスターより

 13度目まして一乃口です!! 13度目にて『夢オチ死亡シナリオ』を出す。  特に狙っていませんでしたが、ちょうど良さそうなニュアンスが漂ってますね!  戦闘描写も心情描写も激重感情ぶつけて下さい、楽しみにしております。  皆様のご参加お待ちしております!!

リプレイ

(何故、こうなってしまったのか……というのも今更ですね)
 ヴィルヘルミナの視線が灰色の重い空を見ながら、現状に関する疑を問い――しかし、それは詮無い事だと首を小さく振った。
 この出撃に備え、刀を研ぎ直せる場所があったのは僥倖だった――心置きなく、刀を振るう事ができるとヴィルヘルミナは戦場へ視線を向ける。
「それじゃぁ、私は行きます」
 セラフィナ・M・(ミリアム)ベイリーは軽い口調でそう言うと街の門を開けて出て行こうとする。
「行くのか」
 冒険者は門を守る者、街を守る者と、そして押し寄せるクリーパーの群れへと打って出る者とで分れていた。
 ルイドは同じホムンクルスのよしみとしてか、門の外へ出て行くセラフィナへ声を掛けた。
「えぇ、私の全力だと街を壊してしまいますので」
「そうか――」
 セラフィナの軽い雰囲気に、ルイドは見送る言葉を選び――しかし適切な言葉を見出せなかった。
 死地へ赴く者達の背を、灰と紫の眼で見届ける。
「では、私も行きます」
「俺も広い方が戦いやすいんだよな」
 セラフィナに続き、ヴィルヘルミナとシャドウが門を出て戦場へ向かって行くのだった。
「じゃぁ、俺達も準備しますか」
「おじさん……なんか緊張してきたなぁ」
 レピド・クロサイト、アラン・スミシーとルイドは門の前でそれぞれ迎撃、門を死守する予定だ。
 3人が門を出た所で、レピドが振り返る。
「――施錠、頼んでいいだろう? ディレイン」
「勿論だよ」
 ディレイン・オールドケイジが街に残った、門の閂は構造上内側から閉めるようになっていた。
 ディレインは扉を閉める最中、皆の背を見届けた。

●
 悪夢のように押し寄せる白い有象無象(クリーパー)の群れ。
 先陣を切った者達は、それぞれに己の信念を武器に込めて敵と相対していた。
「あれは――」
 刀を振るい、迫る白い異形を切り伏せていたヴィルヘルミナは轟く閃光を見上げた。
(まさか……)
 見知った誰かが、あそこに居たのだろうか、それとも……そう思う間にも白い異形は彼女へと迫る。
「まだまだ!」
 薙ぎ払いで迫る一団を切り払う、一体の伸ばした腕がその肩を貫き鮮血をあげるがヒールを使い刀を握る手により力を込める。

「うお!?」
 シャドウは魔法の爆風を受けて、地を転がった。
「一体何が――」
 白い異形に囲まれ掛けたが、爆風でその数が減った――爆心地へ視線を向ける。
 粉塵の中で舞う、透明な石がその中で砕けるのを見た。

「くそっ!」
 シャドウの手にしたダガーとナイフが閃く、迫り来る白い異形の攻撃をいなし、カウンターの一撃を与える。
 囲まれぬように、手傷を負わせれば距離を取り、そして仕掛けるタイミングで踏み込む。
「はっ!」
  目にも止まらぬ早業(トリプルファング)で、白い異形を切り刻む。
 一対何閃、その攻撃を叩き込んだのか、もはや数え切れない。
「はぁ、はぁ」
 シャドウはその物量を前に、自身の体力の限界を感じていた。
「――!?」
 不意にその視界に影が降りる、危険を察知してその場から大きく後ろへ跳んだシャドウ。
 その瞬間、自分が居た場所に白い巨腕が地面を抉る勢いで突き刺さる。
 見上げた黒い瞳が、超大型の白い異形(クリーパー)の視線と合う。
「このままやられるくらいなら、いっそのこと華々しく散ってやらあ!」
 DASHする、全てのエーテルをその武器に込めるシャドウは突き立てられた腕の上を駆け上がる。
「うおおおおおお! 燃えあがれ! 俺の――――!!」
 高められたエーテルが、魂を燃やした輝きが目にも止まらぬ早業(トリプルファング)を別(、)の(、)次(、)元(、)へ(、)と(、)押(、)し(、)上(、)げ(、)る(、)。
 白い異形の身体に数百の影が迸って裂傷を刻み、白い鮮血が溢れて散った。
「これでトドメだああああ!」
 シャドウが黒い矢の如く超大型白い異形(クリーパー)へと突き刺さり――凝縮されたエーテルが黒く爆ぜ、周囲に影の矢を落とした。
 白の群れを貫いた影が、風に流され塵となった。

「はあっ!」
 ヴィルヘルミナの衝撃刃が、遠間の敵を斬り捨てる。
「ぐぅっ!」
 白い異形の中に、遠距離攻撃をしてくる存在が居ると知ったのは切り結んでからどの程度だった頃だろうか。
 体中に無数の穴が開き、鮮血を溢す――意識が、目の前が霞む感覚。
(まだ、です)
 身体から吹き上がる波動(エーテル)が、身体に空いた無数の穴を塞ぎヴィルヘルミナの紫色の瞳に活力を呼び覚ます。

 英雄再起(切り札の1つ)だ。

 小刻みに揺れる白い異形(クリーパー)の群れ、その様子は始めて見たが――口の無い怪(、)物(、)が(、)笑(、)っ(、)て(、)い(、)る(、)ように見えた。
「無駄な足搔きだと嗤いますか? それならそれで結構」
 刀を握る力は、より一層増す。
 ヴィルヘルミナは白い異形(クリーパー)の群れの中へ突っ込んだ。

 鮮血が地面に散った、腕に、頬に――足に、無数に突き刺さり斬り付けられ、それでもヴィルヘルミナは刀を振るう。
 痛覚など、この場において意味など無いと切って捨てる。
「ぐ!?」
 一際強い攻撃に、痛みよりもその衝撃で声が上がり、その身体は宙を舞って地を転がった。
 刀を地に刺し、ヴィルヘルミナはそれでも起き上がる。
 その力強い視線は、超大型白い異形(クリーパー)を捉える。
(只(、)で(、)は(、)斃(、)れ(、)な(、)い(、)、一(、)体(、)で(、)も(、)多(、)く(、))
「終わりにしましょう。何もかも」
 地から引き抜いた刀を構える、その刀の刃零れを見てヴィルヘルミナは胸中で思う。
(ここまで、ありがとう)
 駆け出したヴィルヘルミナは翠閃の雷の如く、魂(、)を(、)燃(、)や(、)し(、)エ(、)ー(、)テ(、)ル(、)を(、)爆(、)発(、)的(、)に(、)放(、)出(、)す(、)る(、)。
「はぁぁぁぁぁ!」
 開(、)闢(、)の(、)雷(、)鳴(、)が(、)轟(、)く(、)――白い山の様な異形が切り裂かれ、周囲の異形もその形を断ち斬られて霧散させる。
 その一撃は水面の波紋の如く拡がり、無数の異形はその形を両断されて散って行く。
(あとは残していく者達に任せます。悔いはこの身もろとも全てを置いていきましょう――)
 刀を構えた、その姿が中心に残る。
 残心を終えると同時に、紫色の瞳から光が失われる。
 相棒(刀)の折れた音を最後に――ヴィルヘルミナの意識は闇に溶けて沈んだ。
 その表情は、微笑んでいた。

●
 響(、)い(、)て(、)来(、)る(、)音(、)が(、)途(、)絶(、)え(、)た(、)。
 ルイドはその意味を察して明鞘彼誰(鞘)に納めたままの暗剣黄昏(剣)を構える。
「しっかしまぁ、手を尽くしてもどうにもならねぇことってのはあるもんだな」
 迫り来る白い軍勢を前に、言葉を漏らした。
(多少殺しても無駄もいいとこ……海水を桶で全部汲み出す方が、まだ現実味ありそうだわ)
 生存戦争に負けたと言う事だろうと、そして潔く在るのが賢いのだろうと思考し、だが戦意をその瞳に燃やす。

 これはただの、頭(、)の(、)悪(、)い(、)八(、)つ(、)当(、)た(、)り(、)だ。

 死地へ立ち向かう己の決意に、ルイドの口角が無意識に上がった。
 放った石爆破(ストーンブラスト)が白い異形(クリーパー)達に突き刺さり爆ぜる。
 爆ぜて死ね、砕けて死ね、燃えて死ね。
 死骸を越えた先で死ね。
 ルイドは押し寄せてくる敵を、撃ち砕きながら考える。
 奴らが反映する未来が来るとしても、それを少(、)し(、)で(、)も(、)遅(、)ら(、)せ(、)て(、)や(、)る(、)のだと。
「ぐっ――!」
 無数の小型白い異形(クリーパー)がルイドの元へ群がり、その無数の鋭い白腕が針の如く貫いて来る。
 ルイドは剣を抜くとエーテルの塊を、刺さった白腕に構わず振り下ろして叩き付けた。
 迸る闘気槌が小型を薙ぎ払う。
 その中を構わずに突っ込んで来た白い異形(クリーパー)に、ルイドは鋭撃で迎撃する。
「なっ!?」
 鮮血が吹き上がるのと、折れた剣が舞うのを見たのはほぼ同時だった。
 手応えが違い過ぎる、その相手が特異個体である可能性に思考を巡らせ――その間に白い異形(クリーパー)からの追撃を受けたルイドが倒れる。
(……また、殺されるよりは――)
 ルイドの身体にエーテルが溢れ、魂を燃やす。
 英(、)雄(、)再(、)起(、)で立ち上がる事を可能にする力を爆(、)発(、)さ(、)せ(、)る(、)。
(――じゃあな、クソ勝利者共)
 ルイドの発する気配に、白い異形(クリーパー)がその頭を潰そうと腕を振り上げた瞬間。
 迸る閃光が大きく爆ぜて、周囲の形あるもの達を跡形も無く消し飛ばしていく。

 立ち上る白煙に混じり、全てを出し尽くした灰が――舞い落ちる。

●
 押し寄せて来る白い異形(クリーパー)の攻撃を避けながら、反撃の三閃(トリプルファング改)で敵を切り刻むレピド。
「いやぁ、こりゃあ死ぬねえ!」
 アランは攻撃のダメージをヒールで癒しながら、祭刀で白い異形(クリーパー)を斬り付ける。
「はぁ、これが終わったらおじさんと一緒に旅をするんだから、ヘバらないんだぞレピドくん」
 レピドへバフを掛けながら、アランが言う。
「あぁ、それも悪くないな」
 世界が終わったら、終わった後の世界を旅してみようか。
 門を出る前にそう言ったアランの言葉を、レピドは思い返す。
「食べるものあるかなぁ?」
 そう言ったアランに。
「狩りなら任せるんだな」
 そうレピドは答え、ほんの少し互いに笑った。
 死に対する恐怖、滅びに向かう世界――様々な感情や想いの先に、『未来の話をする』事は希望を潰えさせない為だ。
 押し寄せる無数の白い異形(クリーパー)の群れを前に。
(希望は死ぬまで、いや――死んでも絶えない)
 アランはレピドと共に門を、希望を護る為に戦った。

 前衛と後衛で立ち回る2人、互いの距離が空かぬよう、支援が届くようにアランはレピドと共に戦っていた。
 だがそれも圧倒的な数を前に、終わりを迎える。
「ぐっ――」
 増える敵の数に、攻撃の前にアランの身体に無数の白腕が突き刺さる。
「アラン!」
 レピドとアランの間に白い巨体が、ズシンと現れる。
「こいつだけでも、止めないと」
 レピドは超大型白い異形(クリーパー)へ挑んだ。
「――っく!」
 その巨体が放つ一撃を、研ぎ澄ませた感覚で躱すレピド。
 自身が持ちうるあらゆる手管を以って、その巨体に打ち込み、打ち込み何度も叩き込んでもなお、相手は健在だった。
(俺では奴に致命傷は与えられない)
 ゆらりとこちらへ向き直る巨体が、見(、)下(、)ろ(、)し(、)て(、)く(、)る(、)。
「……また、あいつらに叱られてしまうな」
 浮かぶのはいつか小さな『家族』の為に、命を捨てようとしてディレインやアラン達に叱られた時の記憶。
 そ(、)の(、)彼(、)ら(、)も(、)き(、)っ(、)と(、)こ(、)の(、)戦(、)場(、)の(、)ど(、)こ(、)か(、)に(、)い(、)る(、)。
 ならば、尚の事。
「……あいつらだけは、死なせない!」
 レピドの全身から赤いオーラが吹き上がり、その姿が踏み込みと同時に消える。
 白い巨体の至る所に赤い杭が打ち込まれるように、爆ぜて爆ぜて――そしてレピドの姿がその眼前に現れる。
(暗殺者(元)としての最後の仕事、お前だけは必ず俺が殺す!)
 死齎刃が、全てのエーテルを、魂を燃やした一撃となり超大型白い異形(クリーパー)の眉間へと打ち込まれる。
「――がっ」
 着地まで考えなかった攻撃、レピドの身体は地面に落ちた。
 自身の攻撃に蝕まれた両手が――痛みは感じなくとも使(、)い(、)物(、)に(、)な(、)ら(、)な(、)く(、)な(、)っ(、)た(、)事を悟る。
 最後の力で、小さな赤い首輪を取り出して握った。
(ざまぁ、みろ――)
 巨体が傾き、倒れる様を見届けるのと賢者の石が砕け――レピドの意識は永久に眠りについた。

(こりゃあ……参ったね)
 鮮血が止め処無く流れる、アランは脇腹を抑えたまま門に背中を預け――ズルズルと座り込んだ。
 レピドの元へ行こうと、押し寄せる敵へ挑んだが――及(、)ば(、)な(、)か(、)っ(、)た(、)。
 悔しさや、死への恐怖が、全身へと群がる虫のようにアランの心を揺るがす。
 押し寄せる白い異形(クリーパー)が見える。
 その後ろで超大型白い異形(クリーパー)が地響きを上げて倒れ――友(レピド)が地(、)に(、)落(、)ち(、)る(、)姿(、)が(、)見(、)え(、)た(、)。
「じゃあ……ぼくも大きな花火を打ち上げようか」
 傷口から鮮血が零れるのに、構わずに起き上がる。
(脅威からどうか、彼らを守りたまえ――)
 祈りを捧げるアラン、全身から溢れ出るエーテルと魂を燃やし尽くす。
(……あぁ、ぼく達の旅はこれから始まるんだろう)
 門の前に現れた、美しいステンドグラスを背に――アランは地に伏した。

●
 街の中に白い異形(クリーパー)が侵入する、生き残るために武器を手にした者達が戦い、そして傷付き――死んでいく。
 ディレインは始めの方こそ、ヒールを使う相手を選ぼうと考えて居た。
 だが実際に血戦が始まってしまえば、ディレインは救える命がある限りヒールを使う。

 狭い門は一部だけが壊され、入って来る白い異形(クリーパー)はまだ少なかった。
「大丈夫か、しっかりしろ!」
 度重なる戦闘、ディレインは自身も傷付いていたが簡素に止血だけ済ませると倒れた兵士に肩を貸して歩いた。
「怪我人だ、頼む!」
 街に少ない授恵者(ヒーラー)に怪我をした兵士をディレインは託す。
「貴方の方が怪我が酷いですよ!?」
 そう授恵者(ヒーラー)に言われて、見下ろした自分の足元に血が滴り落ちているのに気付いた。
「今はソレ所じゃないんだ、治療は頼んだよ」
 門から聞こえてくる悲鳴が、刻一刻と増えていく。
 ディレインは舌打ちながら、鮮血を溢しながら門へ向かって走った。

 大きな音が響く、白い異形(クリーパー)の進行を食い止めていた石壁が、超大型白い異形(クリーパー)の巨腕によって崩されていた。
「うわぁ!?」
 落下する石の下敷きになり掛けた兵士。
「……ぐっ、今のうちに逃げろ」
 ディレインはその兵士と石の間に割って入って、止めた。
 他の兵士が、腰の抜けた兵士へ手を貸すと礼を言ってその場を離脱する。
(あ、これがあ(、)の(、)人(、)た(、)ち(、)のやりたかったことか?)
 遠い記憶の中にある、『あ(、)の(、)人(、)た(、)ち(、)』の姿をディレインは思い出し、懐かしさに胸の奥が熱く。
「ぐ――はっ」
 熱く、貫かれた痛みが、その神経を焼いた。
 気付けば足は地に着いておらず、高い場所に居ると気付く。
 胸を貫く白い巨腕の――指先にぶら下がっていると気付いたのは、残り少ない力で振り返ったからだ。

 高い場所から、逃げる兵士達が見え――自身の鮮血が落ちる前に無数の白い異形(クリーパー)が迫るのが見える。
(やらせる――か)
 ディレインは声の代わりに鮮血を溢し、魂の叫びをエーテルと共に燃やして光(、)縛(、)封(、)を(、)築(、)い(、)た(、)。
 声帯を持たない超大型白い異形(クリーパー)の怪しい咆哮が響く。
 ディレインの身体は白い指先と共に地に落ち――そして、その意識は深く深く沈んで。

●
「……」
 ディレインは布団の温もりを感じながら目を覚ました。
 妙な夢だったと、何故か動かない身体に痛みは無い事を実感しながら息をつく。
(俺が治療したことでひとつでも多くの命が生き延びてれば――まあいっか)

 悪夢の目覚め、その夢の結末を知る者は居ない。

 願わくば、この夢が現実となる日が来ないことを祈るばかりだろう。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございました!!(埋没五体投地)  皆様のプレイング、とても素敵でした、ありがとうございます!  お陰様でとても良いリプレイが書けました、ご馳走様です!  如何でしたでしょうか、満足の行く『生き様』と『死に様』であれば嬉しいです。  何時かこんなクリーパーちゃんを出したいと思っております、一乃口です。  では、またのご縁がある日を楽しみにしております!!  この度はご参加、ありがとうございましたー!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜8人

2023年01月28日 10時20分46秒 公開

大成功

相談掲示板

投稿はありません

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0