【聖祭】冬の訪れに変わらぬ温もりを【生祝】

一乃口

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シナリオID:2691

オープニング

 冬の訪れは厳しいものである。
 それは古都エスト・ポーラであっても例外では無い――が、この『聖霊節』の時期に於いては、そのような厳しさよりも祝い事へと熱を向ける者は多く、その寒さを跳ね飛ばすような熱気に町は彩られて行く。
 この日を家族と共に過す者も、大切な人と過す者も多く。
 そして、こんな日だからそ稼(、)ぎ(、)時(、)と(、)働く者も存在する。
「では、そちらの手配はそのように、次は――」
 パトラ=L=(ランソーネ)アルアータは、そんな『稼ぎ時』と働く者の1人だった。
 冬の訪れが厳しい地域でも、これから年の瀬に掛けての様々な需要と供給が変動する時期も無い。
 繁忙期と言うに相応しい様相である。
 この時期に見ていた、祖父の背中の大きさを改めて実感する。
「ふぅ……」
 パトラは第一波と呼ぶべきタスクを処理すると、深く椅子に腰を掛けて息を吐いた。
(……そうですわ)
 未提出になっていた羊皮紙に手を伸ばす。
 元々パトラが冒険者達に『見てもらいたい』と思い、先方へ取り次いでいた庭園。
 『うちにも良い物がある』と、アルアータ商会と馴染みのある花園や、魚河岸にある店からも、招待を希望する声がパトラの元へ届く。
 書(、)き(、)入(、)れ(、)時(、)なのは、どこも同じなのだと改めて感じる。
 冬が訪れる事で、より気合が入る業種もあると言う事だ。
 これもパトラが誇る『エスト・ポーラの魅力のひとつ』なのだと、不意に嬉しさで微笑んだ。
(これなら冒険者の皆様も、楽しんでくれることでしょう)
 元の予定の場所に、新たに声の上がった招待会場を書き加えた羊皮紙を、使いの者に託したパトラは椅子の上で背伸びをした。
「さて、休憩は終わりですわ」
 次の書類に眼を通し、パトラは仕事に戻るのだった。

解説

●解説  【聖祭】の会場にエスト・ポーラです。  会場に各々距離がある場合もあります、複数箇所へ足を運ぶ際は描写量等を含めお気を付け下さい。  飲食に関してはお酒も果実汁、各種出ます。  パトラ自身は多忙な身ですが、ご指定あれば出張します。 【1】ランプ庭園  モザイクランプの展示品が多く並ぶ庭園です。『聖霊節』の間はより多くの作品達で、夜の庭園内は煌々と彩られています。  ガゼポやベンチ、庭園内で散策の一時などを過ごすことが出来ます。  あわせて併設されているレストランの利用も可能です、ディナーやお祝い事もこちらで。  レストラン定番のステーキから、『聖霊節』限定のメニューで鶏の丸焼きやケーキもあります。 【2】浜焼き小屋  港町でもあるエスト・ポーラの海の幸が堪能できます。冬に入った今のタイミングだと旨味が高く美味しい物が多いです。  『聖霊節』は肉料理だけじゃないと、魚河岸で魚介料理を出している漁師の方々が提供しています。  今回は牡蠣や、|桧扇貝《ヒオウギガイ》を中心にした魚介を焼いて食べられます。牡蠣は生でも食べられますが、『アタリ判定』があります。 【3】花園  花園ユールフェスローズやシクラメン等の『鉢植え』の花、花園でのひと時を過ごせます。  併設している直売所では『鉢植え』や『切り花』での花束を作るなど、季節の花を見て楽しんだり購入する事ができます。  贈り物や思い出作りに。 【4】街の散策  古都エスト・ポーラ内を自由に散策できます、ちょっとした食べ歩きや、誰かへの贈り物を買いたいと言う方はこちらへ。  へぇ、デートかよ。いいぞもっとやってください。  場所の指定を含め、可能な限り対応させて頂きます。

マスターより

 12度目まして! 一乃口です。  今月のシナリオのナンバーとカウントが同じなのは偶々です!  【怨都】決戦シナリオお疲れ様でした。  そして、12月お誕生日を迎えられた冒険者の皆様、おめでとうございます。  スケジュールの調整も兼ね合い、このタイミングになりましたが皆様のご参加お待ちしております!

リプレイ

 冬が訪れ肌に触れる海風はその冷たさを日増しに強くしていく。
 その厳しい寒さにも【聖祭】と言う祭事の中では、冷たさよりも温かさを感じる者も多いだろう。
 古都エスト・ポーラを訪れた冒険者達が、それぞれ自由な時間を過ごしていた。
 見上げた空は青く澄んで、青く澄んで遠く、どこまでも遠く透き通った青に満ちていた。

 そんな青空の下、広いエスト・ポーラの一画にモザイクランプ工房――そしてそのモザイクランプの作品が展示された庭園がある。
 そのレストランに、いま甘い香りが漂っている所だった。
 もぐもぐ、とテーブルに座ってもなお巨体が際立つリザードマン、サイラスの眼前にはホールケーキが数多と並ぶ。
 フルーツとクリーム彩るケーキもあれば、切り株をもしたチョコレートのケーキ。
「……うん、美味いじゃん」
 ナイフとフォークもその立派な手には小さく見えるが、特に不安定さも感じない手際でサイラスはケーキをカットするとその口に放り込んだ。
 曰く、美味しい物こそ食べた時の幸福度が腹を満たすのだと言う。
(……まだ食えそうだな)
 数を減らして来たホールケーキ達を見る、金の眼は余裕だと静かに輝きを灯していた。

「では、17歳の誕生日を祝して――乾杯!」
「ふふー、乾杯♪」
 キンッと甲高い音が静かに、ふたつのグラスが触れて奏でた。モザイクランプのインテリア彩るレストランの一角で、ルルト・アーキスとアルバス・ロウルの2人がテーブル席に向き合って相座る。
「今日は全部ルルトが好きなものを頼んでいいからな」
「ホント!? わーい!」
 聖霊節限定メニューと書かれたお品書きを手に、ルルトの翠色の瞳がメニューへ向けて輝いていた。
 大人な雰囲気漂うレストランの雰囲気、並ぶ料理もお洒落な一品が姿を見せて、ルルトは何時もよりご機嫌な笑顔を見せている。
 記念すべき一時、互いの唇から溢れ出る話題は『出会ったあの頃』の話題に花が咲く。
「アルバスと会って2年……あっと言う間だったね」
 ルルトはアルバスと共に立ち寄った、あの日の事を昨日の事のように思い出し。
「あの時はルルトが……」
 とルルトの思い出したくない失敗談をアルバスが口に出して、ルルトが「もうっ」と頬を膨らませた。
 並ぶ料理に舌鼓、ルルトが一息を付いた頃に、アルバスが店員へと手を軽く振った。
「お待たせいたしました」
 給仕の人がテーブルへと誕生日ケーキが置かれる。
「え! いつの間にっ」
 ケーキのプレートには『誕生日おめでとうルルト』とチョコレートで描かれていた。
「折角のお祝いだからな」
 アルバスがそう言うとケーキをカットして、共に味わった。
「美味しいねっ!」
 ルルトはプレートを最後まで残して、最後の一欠片のケーキと共に頬張った。
 食後の2人はモザイクランプの並ぶガゼポのひとつで、一息を付いていた所だった。
 お腹もいっぱいで、程よい日差しがぬくぬくと眠気へと誘いそうな優しい空気がルルトの頬を撫でていた。
「レディへの贈り物は不慣れなんだが……」
(レディ!?)
 そんな寝耳に、アルバスから聞き慣れない言葉を聞いて、ルルトの意識は跳ね起きる。
 アルバスはマジカルポケットから、可愛らしい雰囲気の色彩豊かな花束を取り出すと差し出した。
「誕生日おめでとう」
「……! ありがとう、アルバス!」
 花束を受け取ったのルルトの笑顔は、今日一番の――花束に見劣らないほどの可憐な笑顔を咲かせた。

 モザイクランプ彩る庭園、その散策を楽しんでいるネーヴェ・グラヌローザの雪銀の瞳が、立ち並ぶ作品へと向けられ留まった。
「これは……見事なものですわね」
「凄いな、やっぱり職人の作るのは違うな」
 そのネーヴェと共に散策しているアルフィー・リッパーもまた庭園を飾るモザイクランプの作品を見て言った。
「今度はこういうランプも作ってみたいな」
 作品のひとつを間近で見る目は、造形を楽しむだけではなく、それを作る時の事を想起しながら見ていた。
「先日のランプはとても素敵でしたもの。アルフィーさんならきっと作れますわ」
 ネーヴェの言葉は、淀みなくアルフィーに向けられる。
「うん、今度やってみるよ」
 アルフィーは沸き立つ創作意欲に今はそっと蓋をして、庭園へと視線を流し――ふと物思いに留まる。
「少し、あそこで休憩しましょうか?」
 そんなアルフィーの様子を見たネーヴェが、ガゼポのある方へアルフィーを誘い、腰を降ろしたのだった。
 ネーヴェは取り出したグリューワインで体を温める、その隣ではアルフィーがホットチョコをふーふーと冷ましてから口を付けていた。
 そんな折、ネーヴェはふとハッシリ村でのやり取りを思い出す。
 その時は話を聞く時間は無かったが、今なら――。
「あの、もし宜しければ、なんですが……アルフィーさんのご家族のお話を、伺っても?」
「うん、いいよ――」
 アルフィーの表情が見せる変化を、ポツポツと語られる言葉を、ネーヴェはひとつも逃さぬように耳を傾けた。
 3歳の頃に村が襲われ両親含め自分以外の村人が亡くなった事。
 その後爺さんが拾ってくれたけど――12歳の時に病死してしまったこと。
 そして、その後『ルーシェ』という少女と一緒に暮らしていたけれど、街が盗賊に襲われた際に彼女も死んでしまったこと。
 語られる言葉は整然と紡がれる。
 だけれども、その言葉が持つ重(、)み(、)は確かなモノだった。
「黒猫は不幸を呼ぶって信じてたんだ。でも違うって冒険者になって分かった」
 そう言ったアルフィーの笑顔は、ネーヴェのよく知る、そ(、)れ(、)だ(、)っ(、)た(、)。
「それは、とてもお辛かったですね……。ですが、アルフィーさんはもう、乗り越えられたんですね」
 視線は遠く、遠く澄んだ青へ向けられたまま「うん」とアルフィーは言葉を返した。
「俺の事は話したから、今度はネーヴェの事もいつか教えてくれよ」
「実は、私には記憶が御座いませんの。ですから、話せることは多くありませんが……それでも宜しければ、喜んで」
 微笑むネーヴェに、アルフィーも笑顔で返したのだった。

 そんなモザイクランプ庭園に、聳え立つ肉のタワーがある。
 ラスボスが住んでいるとしたら、その肉の頂に座するのでは無かろうか。
 そんな事は無いか、頂点に座する肉に白い細指がにゅっと伸びたかと思えば、これまた愛らしい唇がむしゃむしゃと肉を食む。
 手品だろうか。
 手のひら大の肉塊はすでにこの世から姿を消し、リディリディ・トゥラ・イェレミースがその余韻に顔を綻ばせているのだ。
 モザイクランプのインテリアよりも存在感のある、肉の巨塔。
(ランプで彩られる庭園というのはこんなにも美麗なものなのですね)
 リディリディの藍玉色の瞳が、淡い光を灯すモザイクランプのインテリアを眺めながら次の肉を手に取った。
 ローストチキンに確りと効いた香草の風味が舌を刺激し、ひとくち、ふたくちと運ぶ手を止める事無く後押ししてくる。
「こういった景色を偶には絵を描いてみるのも良いかもしれません」
 脂絵だろうか、いや、肉から離れるハズだ、たぶん――たぶん。
 ガゼポに座るリディリディの、長い金髪が風に靡く。
 金髪の美しいエルフ美女は、それだけで絵になる程に見目麗しく映るのだ。
 山の如き肉の存在感は、変わらずに――否、すでに30cm程低くなっている。
 もぐもぐ。
 とお肉を食べるリディリディ、今は牛肉の串焼きを頬張っている。
「うん、このお肉も美味しいですね」
 とってもいい笑顔を見せてくれるのだった。
 その笑顔の前には、その食べた肉が、あの華奢な身体の何処に留まっているのか等とは、些細な問題でしかない。
ないのだ。

●
 澄んだ青い空の下、ジュウウと音を立てて湯気立ち込める浜焼き小屋だ。
 潮風が途絶える事無く吹き込むこの場所で無ければ、立ち込める湯気と炭の煙で視界不良も良い所だっただろう。
 煙は都合よく風に運ばれ、爆ぜる魚介の脂と潮の香りが程よく鼻に届く。
「聖祭シーズンに魚介は珍しいな」
 脂が跳ねて、炭火に触れると火の粉を誘う。
 網の上で焼ける魚介の具合を見ていたヨル・スレイマン、その隣りでは待ち切れないと言わんばかりに、次なる魚介を持った皿を持って来るナハシュの姿があった。
「偶には魚介も悪かねぇだろ!」
 催促するようなナハシュの皿を見て、やれやれと言いながらも火に掛けていくヨル。
 香りの変化に頃合いを見取ったヨルが、ナハシュへと皿を出し自身もまた焼けた貝の柱を突いた。
「はー! うめぇ!!!」
 熱々としながらも、魚介の旨味を堪能するナハシュ。
「肉もいいが、今回はコッチの方が騒げて楽しいだろ? 焼きたてにかぶりつくのも最高だぜ!」
「確かに派手だ。ユールフェスっぽいかもしれないね。味も美味い」
 そのナハシュの豪快さに、ヨルの中でのユールフェスっぽいがまたひとつ新地を開拓して行く。
 食べ終わった後も、見た目が綺麗な桧扇貝はヨルの眼を楽しませてくれていた。
「そういえば肉じゃなくて良かったのか? 君が魚介を選ぶのは意外だな」
 ヨルは普段のナハシュのイメージから疑問を口にして。
「焼いた牡蠣にポン酢! かレモン! これに勝るものはねえ」
 その楽しそうな様子に、愚問かと1人納得してしまったヨルは桧扇貝に残った貝汁へと日本酒を注いで飲んだ――違わず、否、想定よりも美味しい。
「おい、なんだよそれ! 俺にもくれよ!」
 そのヨルの表情から、美味いモノだと察知したナハシュが同じ物を要求、今食べている帆立が空いたら酒を注いであげようとヨルは笑いながら答えた。
「君に出会った時はこんな風になるとは思わなかったな。まさか二年後のユールフェスでも一緒に飲んでるなんてね」
 貝酒にすっかりハマったナハシュを肴に、ヨルが感慨を込めて口にした。
「確かになー。お前がずっとウチにいるとは思ってなかった」
 貝の焼き加減を覚えて来たナハシュが、遂に自分でも焼きながら食べているので、ヨルは悠々と酒をのんびり楽しめていた。
 焼き上がった品をナハシュから受け取ったヨルが、店員にエールを頼んだ。
「一緒に食うのが美味いんだ」
 バター焼きの帆立の隣に、エールが並ぶ。
「まあいいんじゃねえか? これはこれで楽しいしな。あ、俺もエール!!」
「これ美味いな。おかわりと、酒ももう一本お願い」
 杯は乾く暇もなく、煙が絶える時には胸もお腹もいっぱいとなった2人が、改めて乾杯をするまでの先は長い。

「うん、魚介も美味いじゃん」
 赤鱗のリザードマン、サイラスもまた焼き上がったホタテを咀嚼し、その貝柱の旨味に舌鼓を打ったのだった。
 他にも焼き上がりを待つ貝類の隣では、鯖の開きに焼き色がついている。
 サイラスがその身から骨を箸で取り除けば、大福に与えたのだった。
「熱いから気を付けてなー」
 わふっと返事をする大福の眼前に、焼き鯖を置くと残った身をサイラスも摘んだ。
 魚介は犬に良くないと、漁師のおばさんが出してくれた鯖は脂ノリも良く、美味しかった。
「さて、次はどれを焼くかな」
 並ぶ多種多様な貝を片手に、サイラスの尻尾が揺れた。

 ワイワイと賑わう会場の一画、そこには異質な雰囲気を放つホムンクルス’ズが偶々居合わせていたのだった。
「俺の名付け親が言っていた、『肉も魚もバランス良く食え』と」
「……間違いねぇ」
 レピド・クロサイトの言葉にルイドは深く頷きながら返す。
 12月、と言う響きに只ならぬ思いを胸に想起しながら街を歩いて居たルイド、節目を迎えるにあたって新たな経験を探して居た所、立派な牡蛎を持つ漁師を見掛け。
 そして見知った顔と共に今、その牡蛎を炭火で焼いている所だ。
「お、食いでのありそうな大きさしてんな、とりあえずこれからいくか」
 ルイドの傍らには、お勧めだと言われたシャルガネの酒。
(旬の魚介類を焼くとなりゃ、そりゃ美味いし酒に合うだろ……間違いねぇ)
 爆ぜた貝汁と共に弾ける貝の口を見て、ルイドは間違いがないと言う確信を実感する。
 焼けた牡蛎を頬張れば、潮の香りと共に独特の旨味が口に広がる。
 薬味や、ポン酢を使うのも良いが、先ずは素(、)材(、)の(、)味(、)を(、)楽しむのだった。
「うめぇ」
「俺も早速……」
「……わたしも……」
 ルイドやレピドの食べる様子を観察し、食べ方を大凡理解したミゼリア・L・ステュクスも続くのだった。
 桧扇貝や帆立、牡蛎が炭火に焼かれ、潮の香りを楽しみながら焼き上がった貝柱を食べる。
 酒を片手に飲むルイドが「美味い」と言えば、その視線がレピドと合いお酌をし。
「……(じー)」
「ミゼリアだったか、お前も飲むか?」
 ルイドの言葉にミゼリアの黒い髪が縦に振られた事でよく揺れる、杯が足りなかったので店員をレピドが呼んだのだった。
「杯もう1つ貰える?」
「お? なんだ兄ちゃん達、杯ならその貝を使うと良いぜ!」
 漁師風のおっさんはそう言うと食べ終わった貝に酒を注いでみせた。
「……美味しい」
 ちびちびと飲むミゼリアの様子を見て、ルイドとレピドも酒を貝に注いで行く。
「なるほど、これは美味いな」
 またひとつ経験を増やしたルイドが、思わず笑みを見せ。
「おじさん、他にお勧めある?」
 レピドがおっさんに尋ねた――――コレがすべての元凶となる。
「おう! 俺のオススメはやっぱ生牡蛎だな! こいつとこの薬味と酒でぐっと行くのが一番――」
 と語るも半ば、遠くから呼ばれたサボんなとの声におっさんがそそくさと席を離れて行く。
「生で食べても大丈夫なのか……?」
 レピドの赤い瞳が、炭火の上で焼かれている牡蛎をじっと見る。
 そこには、『食(、)べ(、)る(、)モ(、)ノ(、)に(、)は(、)確(、)り(、)と(、)火(、)を(、)通(、)せ(、)』との教えが脳裏に強くあるのだが。
「わたし、食べて……みる」
 浅黒い細い指が、火に掛かって居ない牡蛎へと伸び、パカっとこじ開ける。
 聞いた通りの薬味やポン酢を垂らせば、あとは啜るように牡蛎の身がその口へと流れていく。
「…………」
「……どうなんだ?」
 レピドの言葉に、一瞬小首を掲げたミゼリア――その意図をあっと気付いて。
「……おい……しい」
 2つ目をこじ開けてから答えていた、分かりやすい返答に、レピドもミゼリアに倣って生牡蛎へと挑戦したのだった。
「火を通した牡蠣も旨かったが、これはまた違う味がする…なんだろう、まるで海を食べているような気分になるな」
「……んぐ……」
 レピドの感想に、3つ目の生牡蛎を口に頬張ったミゼリアがこくこくと頷いて肯定を示す。
「俺は……ちゃんと焼いて食うかな」
 丁度口を開けた焼き牡蛎を火から取り上げたルイドは、今度は薬味もタップリに牡蛎を味わった。
 焼いて食べる魚介と生牡蛎とでは消費スピードも異なったが、3人はそれぞれに楽しい一時を過ごすのだった。

●
「ウ(、)チ(、)で買い物したいと仰った時は、少し予想外でしたが」
 パトラ=L=(ランソーネ)アルアータがルーンス・ラグネルと共にガラス工芸品店から出て来た所だった。
「いやあ、助かったよパトラ嬢!」
 ルーンスの手には購入したガラス工芸品が大事そうに抱えられて居る。
 パトラの元を視察を兼ねた訪れた所で、割と具体的に欲しい商品の話題を振った所。
「アルアータ商会(ウチの事務所)では売ってませんが……」
 と、パトラが扱っている店を仲介してくれた所だった、要望通りの品を、想定以上に品を選び買う事が出来た。
 その満足度をそのままマジカルポケットへと納めたルーンスは、ウキウキとパトラへ礼を告げる。
「僕のおっかない彼女(商売的な意味で)が、楽しめる土産がいいんだ」
 その様子に、パトラも満更では無さそうな笑みを返す。
「あら、そう言えば――」
 ふと通りの半ばでパトラが足を止め、ルーンスの勘が『面白そうだ』と思いながらパトラの視線の先へ足を向ける。
 カランカランとウェルカムベルが鳴り。
「いらっしゃいませ! ベイカー商会へようこそ!」
 響くベルの音より、凛と通ったリサ・ベイカーの明るい声が店内に良く通る。
「ご機嫌よう」
「やっほー、買い物に来たよ!」
「あ、ルーンスさんに、パトラさん」
 入店した見知った顔に、リサの笑顔が一際に輝いて見える。
「どうぞどうぞ、何かお探しですか!」
 パタパタと売り場へ身を躍らせた、ルーンスの視線の先をリサが捕まえれば。
「この洋服は今年の新デザインですよっ」
「へえ、そうなんだ。丁度婚約者への贈り物を探してたんだ、助かるよ」
 そう言ったルーンスの言葉にリサのオススメラインナップの紹介は、まさに破竹の勢いと言った所だった。
「この色も今流行りですね」
 リサのオススメはどれもルーンスの関心を引いて、これもいい、それも良いねと話も弾む。
「……流石の品揃えですわね」
 パトラ、つい買ってしまう。
「お、コレなんかも良さそうっ」
 ルーンスも気に入った品々を手に、会計をリサに頼んでいた。
「へへ、ありがとうございましたー!」
 商人談義もそこそこに、それぞれの時間を共有して楽しんだのだった。
 繁忙期の、ちょっとした息抜きともなった事だろう。

●
 その日の夜の出来事だーー。
 レピドはお腹を擦りながら、心当たりに直面する。
(……やっぱり、食べ物はちゃんと火を通すべきだったんだ)
 ゴロゴロと響く雷鳴が如き、腹の音。
 レピドは普段見せない脂汗を浮かべながら、その考えを改めた。
「……?」
 そんな音よりも更に深淵から響くようなお腹を、ミゼリアが摩りながら首をかしげる
「……あっ……」
 おなかゆーるフェス、はっじまるよー。

マスターコメント

お待たせして申し訳ないです!(埋没五体投地) お楽しみ頂ければ幸いです!! 生牡蛎は美味しいですね、アタリには気を付けましょう。 当方も体調管理には気を付けます。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:少ない13 / 6〜25人

2023年01月17日 14時40分22秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. リサ・ベイカー

    リサです。 わたしは、【4】で、ベイカー商会として働いていると思います。 店舗にお立ち寄りの際は、よろしくお願いします! お土産とか贈り物とか、ベンキョウしますので!(笑)

  2. ナハシュ

    ナハシュだ!浜焼き屋で魚食ってる。よろしくな。

  3. ヨル・スレイマン

    ヨル・スレイマン。 同じく魚介を食べに行くよ。宜しく。良いユールフェスになると良いね。

  4. ミゼリア・L・ステュクス

    ミゼリア……です。 ……わたしも、おさかなさんとか……かいとか、たべに……いきます。 ええと……めりー、ゆーるふぇす……というのでしたっけ……?? よいおまつりに……なりますように。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0