【鬼哭】火焔の娘
紀藤トキ
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シナリオID:2683
オープニング
「アリオス、お弁当持ってきたわよ」
アリオスは現在、鉱山でおかしくなってしまった同胞の面倒を見ていた。監視役と言っても良い。幸い、一晩くらいで元に戻った者もいるので、そういった理性を取り戻したゴブリンに手伝って貰っている。が、清潔とはいいがたく、女性が好んで来るような場所でもなかった。
「ああ。こんなところまで来なくても良いのに……。って、誰か来てるのかな」
恋人のジョアンナが自分の後ろを指す。
「アリオスにお客さん。ねぇ、私と同じ年くらいの女の子なんだけど、ゴールディの偉い人だっていうの、本当??」
「一つ、訂正します。私は貴女よりは年上でしょう」
「ブ、ブラックデスのサチコ様!? どうしてこんなところに」
「あ、やっぱり偉い人なのね。さっきはあんなお茶出して大丈夫だったのかしら」
ゴールディ育ちであるアリオスの背筋が伸びるも、ジョアンナの方はそうでもない。ブラックデスの構成員も4名ほどいるのだが、比較的暴力の匂いがしない面々を揃えて……、はいなかった。いつも通りのブラックデスの強面達だが、酒場育ちのジョアンナにしてみれば鉱山夫を見慣れている。顔やガタイでビビるようなことはないのかもしれない。
「なるほど、ジョアンナさんからゴブリンの恋人がいると聞いた時には驚きましたが。ゴブリンロードで理性もある。貴方は必要な人材かもしれませんね」
「は、はあ……。ありがとうございます」
気弱なアリオスにとっては、ブラックデス幹部の評価もあまりありがたいものではなく、できれば無関心でいてほしいのだが。サチコはアリオスのそんな内心を知ってか知らずか、遠目にゴブリンたちの隔離場を見た。使われていなかった牧場を使っており、屋根はあるのだが人の住む環境ではない。と言ってもそれは彼らを捕まえた人間たちが無慈悲というわけではなかった。体も洗わず不潔で、退行具合によっては用を足すのもその辺でという先祖返りしたゴブリンたちを隔離するには畜舎の方が都合が良い。少し離れた事務所には、語尾にゴブがつくだけ程度まで理性が戻ったゴブリン四名が住んでおり、そちらは比較的清潔だ。そのようなことを説明すると、サチコは表情を変えずに頷いた。
「畜舎の彼らは不要ですね。粛清しましょう」
「へ、粛……?」
さらりと出た剣呑な言葉に、アリオスは目を瞬かせる。
「焼却処分します。あんな連中でも、生きている限りドンのお力を削ぐ。通知は、見たのでしょう?」
「は、はい」
国父であるドン・ゴーフルが刺されて意識不明であることは、アリオスにとってもショックだった。ゴブリンが理性を保てているのが、彼のお陰だというのは神がどうのというのは抜きにしても、アリオスには納得がいく。治安は悪いにせよ、ゴールディという『ゴブリンの都市』が維持できていたのは彼の手腕なのは間違いない。知性を持ったゴブリンが育つ揺り籠がなければ、アリオスのようなゴブリンは生まれるはずもないだろう。
「で、ですが。彼らの中には回復した人もいます。それに、あんな姿になっても、戻ってくる事を願ってくれている人もいるんです」
「だから何だというのです? 彼らの代わりはいる。ドンの代わりはいません」
苛立ちを見せず、サチコは肯んじない子供にするように丁寧な口調で説明した。しかし、それは彼女が心を変えないということ。
「ここはレイウェスト皇子の保護している場所ではありません。事故が起きても国際問題にはならないでしょう。こういう場所が多ければ、話は楽なのですが」
「ちょ、ちょっと待って。ここにいる人……ゴブリンの中には、うちの知り合いのところの従業員もいるのよ」
「労働力は、すぐに用意いたします。今度のゴブリンはもっとうまくやるでしょう」
「え、本気で……?」
慄くジョアンナからアリオスに目を移し、サチコは念を押す。夜までに、まともなゴブリンだけをこの場から動かすように、と。
●
「どうするの? あの人、偉い人なんでしょう?」
「……そうだね。たぶん、ゴブリンの中で一番偉い人、の次に偉い人だ」
ブラックデスの首領代理、と聞けばアリオスの中の認識ではそのような感じであった。だが、彼の中でサチコの命令への拒否感がぬぐえない。帝国周辺では、ゴブリンをヒト扱いしてくれている。ジョアンナとの件がなくとも、鉱山で働く連中だって、ゴブリン一人一人を一個のヒトとして扱ってくれていた。サチコの言いようは、それが簡単に挿げ替えれると言っているようで、悲しい。
「守りたいものを守るための力、か。僕にはまだ、足りない」
両手をじっと見ながら、アリオスは言う。サチコの意志は固く、彼やジョアンナの声は届かない。もしも届くとしたら、同じくらいの力を持つ者だろうか。
「ゴブリンたちを、逃がそう。鉱山は今使ってないから、あそこならいけるよ」
輸送は手荒になるかもしれないが、理性を戻したゴブリンの手を借りれば何とかなるかもしれない。もっとも、彼らをまず説得しないといけないのだが。
「鉱山の方は、アタシが話してくる。あとは……」
「ブラックデスを止めるのは、冒険者の人に頼むよ。君も、他のゴブリンも危険にさらしたくはない」
ヒューマンであるジョアンナはともかく、いろいろな意味で名高きブラックデスが歯向かうゴブリンを許すかどうか。少なくともゴールディであれば、生命は無いだろう。それでも、アリオスは彼らを見捨てたくはなかった。
解説
マスターより
リプレイ
駆け付けた冒険者達は、急ぎアリオスらと対応を協議した。まずはゴブリン達の移動についてだ。
「鉱夫の方達に協力をお願いできませんか? ゴブリンを運ぶ際には、人手が多い方がいいと思うんです」
「そうだな。寝かしちまうから、怪我する事もないだろうしな?」
「臭いし汚いけど、頼めば何人かは来てくれるかもしれないわ」
トーラとナハシュは先祖返りしたゴブリンをヒュプノシスで寝かすことで、運搬の際の面倒を減らそうと提案している。安全であるならば一般人の協力も得やすい。ジョアンナは常連客に協力を要請する為に酒場へと走った。
「俺は馬車を出そう。元々の村の荷馬車があるなら、別の方角へ動いて貰いたい」
「お馬さんには頑張って貰わないとね!」
「あ、わたしのムームーも手伝えます」
セリオス・オーガストとアルマ・ヴァレンタインが連れてきた黒汗馬と、トーラが連れてきたムームー《ミニビヒモー》が荷馬車込みで待機している。運ぶべきゴブリンは30人。一台あたりで10人。丸太のように積まずとも、何とか人扱いして寝かせてあげられそうである。
「ちょっと見て来たが、逃走ルートには問題ないようだ。俺は偽装の方を担当しようか」
「お、じゃあその辺の臭い土とか糞とか積んでいってくれ。ゴブリンを運んだ感じの匂いになるだろ」
鉱山までの道筋を下見して戻ってきたヨル・スレイマンがアリオスの荷馬車を引き取ったところで、ナハシュが無体な申し出をする。もともと農作業などに使っていた荷馬車なので、後で洗うなら汚しても大丈夫との事。ヨル一人に頼むのは申し訳ないと、アリオスも汚れ仕事を担当する。
「ゴブリンの衣服も匂うと思うので、着替えさせてはどうでしょう?」
「あいつら服、着てますかね……?」
リコリス・アデュラリアが聞いてみたが、30人分の襤褸布を用意するのもアリオスには難しそうだ。ただ、先祖返りしすぎたゴブリンは衣類をそもそも脱ぎ捨てがちだという。何に配慮しているのか、腰蓑風に何かを巻く程度はしているようだが。
「……裸でも寒さで凍える事がないなら、無くとも良いですね。では、衣類は剥ぎ取って、汚れは水で洗い流しましょう」
「あ、水を汲むのは手伝いますね。力仕事ならできますから。でも、風邪を引いたりしないでしょうか……?」
「何とかは風邪ひかないって言うし、大丈夫だろ?」
リコリスがゴブリン丸洗いを計画しているところで、ゲルダ・クラインが名乗り出る。名も知らぬゴブリンの健康面を一応憂慮した彼女に、ナハシュの返答は軽い。
「色々終わったら、あたしは夜に備えてちょっと休ませてもらうぞ。ちょっと無理して眠い……」
水汲みもそうだが、意識の無いゴブリンを運ぶのも体力勝負だ。他の依頼を終えて駆けつけたばかりのOctavia・Aureusは、疲れを隠さぬ表情ながら腕まくりをした。
「ゴブリンです。お仲間ですよ……」
「その成りでゴブゴブ言っときゃまあ、大丈夫だろ」
フェイクカバーでゴブリンに化けたトーラと、化けるまでも無く元からゴブリンのナハシュがまず畜舎へ向かう。戦闘力が近ければ格付けの為に新入りは喧嘩を売られるかもしれないが、ここにいるのは一般人。野生の勘で2人の実力を察して、無用な争いは生じなかった。2人は鎮静効果に期待してゴブリナ草を焚いてから、1匹づつ視線を合わせて眠りに落としていく。
「途中で起きるかもしれませんし、手足は縛ってくださいね」
「騒がれても面倒だし、口も塞いどけ」
「わかったゴブ」
協力者にこっそり運び出された先で、リコリスにひん剥かれて水をぶっかけられたゴブリンが声にならない悲鳴を上げた。匂いはだいぶマシになったゴブリンをゲルダやOctavia、助力にやってきた鉱夫らが手分けして荷馬車に運び入れる。念のためと最後にセリオスがかけた酒の匂いが、悪臭を更に上書きしていた。
「では、先に行く。馬車を戻す必要は――」
「んー、大丈夫じゃないかな?」
先発するセリオスへ、アルマがそう答えた。トーラの荷馬車の後、最後尾を行く予定のアルマは、3台分の轍を適当に隠す算段だ。帰路にとっても臭い発酵食品まで仕込むつもりなので、ゴブリンの匂いはかき消されるだろう。
●
かくして準備万端整えて、夜。サチコと黒服が4人、明りもつけずに闇の中を歩き来る。暗視のあるヨルとゲルダ、リコリスがまずその姿に気が付き、他の仲間は彼らが身構えたのを見て襲来を察知した。掲げたランタンの光が届く、ギリギリのところでゴブリンたちは足を止める。
「……武装しているようですが、これは私を力づくでも止めようという事でしょうか?」
「そう言う事、かな? 話して分かるならそれが一番だけど」
アルマがエンライトをつけ、Octaviaとヨル、ゴブリンの変装を取りやめたトーラとリコリス、ゲルダが前へ出る。セリオスは少し離れた茂みの中に身を潜め、ナハシュはアリオスのいる小屋の陰に隠れていた。
「ハーフリングが4人。さすがは献身の英雄の出た種族ですね。ゴブリンの為に身を挺する覚悟は買いましょう」
「その通り。あたしはゴブリンの為にここにいるんだ。あんたはゴーフルを守ろうとしてるつもりだろうけど、殺そうとしてるんじゃないか? そう思ったから止めに来た」
「……聞きましょう」
自信満々でそう告げるOctaviaに、サチコは眉を顰めつつも耳を傾ける。Octaviaは、ゴーフルが神レベルの存在である事は、彼のハッタリでないと考えていた。理由は、これまでに人を超えた存在を喰らってきたイダが動いた事。ゴーフルがただのゴブリンであれば、彼女はアレほど興味を向けないだろうと指摘する。
「ドンが調子をおかしくしたのは、ゴブリンの暴走と時期が被ってたりしない? イダが神としての争いを仕掛けてきた、それが理由じゃないかな」
「……もとより、ドンのお体は限界です。かなり前から。ですが、貴女の言う可能性も否定はできません」
「だとしたら、神であるゴーフルへ信仰を捧げるゴブリンの数を減らす事は、ゴーフルを害してイダを利するだけじゃないか」
そう、Octaviaが口にした瞬間。サチコの目から興味が失せた。
「なるほど。貴女は神が人によって存在すると考えているのですね。それは違う。 ドンにとって、ゴブリンは足かせに過ぎない」
あるいは、サチコにもまた何らかの知識があるのかもしれない。Octaviaの仮説を切って捨てた様子に惑いは無かった。
「他の方の言い分も、同じですか。だとしたら時間を無駄にしました」
す、と手を挙げると配下の中の一人が気配を消す。そのまま闇に潜みかけた所を、セリオスが射かけた。命中こそしなかったが、姿をくらます事は失敗する。
「黙って聞いてやる義理はねえよな。解るぜ。俺だってそうする」
動いた所へ合わせるように、ナハシュが駆け寄った。単独で追跡をしようとした相手に、痕跡を探る余裕を与えない。一足早く始まったシーフ同士の競り合いを横に、本体同士は対峙したまま言葉を交わしていた。
「あなたのやり方は、短期的には合理的なのでしょう。ですが、処分は長期的に取り返しのつかない歪を生みかねません」
リコリスはそうサチコを批判する。彼女も含め、新しい授恵者達やレイウェスト皇子は甘い。助けられる可能性があるならば、助けたいと願う者と、サチコの合理は相いれないと彼女は説く。その相克はいずれ、双方の断絶を生みかねないとも。
「それにドン・ゴーフル自身も意識が戻った時、あなたの行った処分を知れば。ただでさえ傷付いた心身に影響が無いとは言い切れないでしょう」
「ドンはブラックデスを率いてきた頭領です。まだ起きていない事であれば止めようとするでしょうが、起きてしまった事を嘆くような甘さは持ち合わせていませんよ」
少なくともサチコはそう信じているのだろう。ドンの精神面に言及したリコリスの言葉にも動じた様子はない。
「彼らを捨てることは、彼らをヒトとして認めている帝国の方々を裏切ることにもなります。ゴブリンなら捨てても構わないと、そういう認識を招いても、問題ないのでしょうか?」
「ここで殺してしまえば、ゴールディのゴブリンが仲間の殺害も厭わない恐ろしい存在だと喧伝する事になりますよ? そうなれば、他の国から受け入れて貰えなくなるのではないですか?」
「今でも、多くの国でゴブリンへ向く視線は亜人を見る物でしょう。何が変わるというのです?」
ゲルダとトーラがゴブリンの評価が下がる事を訴えるも、冷静にそう切り返す。
「少なくとも、この街の人はここのゴブリンを受け入れています。助けるために、逃がすのも手伝ってくれました。彼らは代わりの利く労働力でなく、良き隣人なんです」
「全部、ドンが倒れる前に言っていた刻印っていうのが原因なんだから、それをどうにかする方法を探すのが先だと思うよー?」
トーラが少なくとも帝国では違うと言い、アルマが事態の本質が何処にあるのかを告げてなお、サチコの態度は変わらない。少女二人の後ろから、大柄なヨルが言葉を継いだ。
「イダは明確な意図を以てこれをやっている。この君の行いすらも予測している可能性が高い。だから今やるべきは殺すことじゃない。彼らを通し真実を知ることだ。……敵を見誤ってはならないよ」
「……貴方達の言うように、イダこそがこの混乱の根源でしょう。私もそれは理解しています」
過ちを指摘されてなお、サチコは揺れない。全て分かっていると言わんばかりの表情で非難と説得を聞き流している。だが、まるで何かを待つように、手を出さずに言葉に耳を傾けてはいた。
「今、君が殺そうとしているゴブリンを大切にする者はブラックデスを憎むだろう。君の粛清はドンが帰る場所を奪うものだ。更なる動揺を生み、瓦解を招く選択だ。皆が皆君のようには在れない。その一点において君は冷静さを欠いている」
「あなたが何を考えているのか、わたしには分かりません。でも、……彼らはわたしたちと同じ"ヒト"で、わたしたちと同じように喜んだり、悲しんだりする。だから、彼らを殺させはしません」
そしてついに、喝破したヨルの言葉とゲルダの宣言が、頑ななサチコの表情をほんの少しだけ動かした。薄く、口元が弧を描く。
「貴方達はドンと、ゴブリンの帰る場所を気にして下さって私に敵対しているのですね。……その一言が聞きたかった」
心が通じたかと安堵するも。
「……では、私はドンでは無くサチコの名において貴方達の誠心を踏みにじり、悪を為しましょう」
そこにいたのは、正しい意味での確信犯だった。
●
「想いの強さが同じなら、闘うしかない、か」
「命まで取ろうとは思いません」
「――わたしは、あなたを止めます」
ヨルのつぶやきに答えたサチコの周囲に陽炎が揺らめき、ゲルダの周囲に鋭い殺意が張り巡らされた。初手、軽装のOctaviaが素早く切り込むと同時、返り血の如くその身に炎が纏わりつく。
「くっ、今のは危なかったぞ」
間一髪、残像を置いて逃れたOctaviaはそのまま距離を取った。トーラも先手を取って相手のエーテルを乱す印を撃ち込みつつ、後退する。直後、サチコの半径10m強ほどが燃え上がった。
「火傷くらいは覚悟して頂きましょう」
辛うじて巻き込まれなかった二人と、シーフと切り結ぶナハシュへ向けて炎の矢が三筋飛ぶ。回避を重視していたトーラとナハシュはスキルも駆使して回避したが、既に虎の子を切ったOctaviaに躱す術はない。魔乱印が効いてなお、炎はOctaviaを打ち倒すに十分な火力を持っていた。
「アルマ君、彼女の治癒を頼んだ」
「わかったよ!」
ヨルの信念への簡略な祈りと共に、近くにいた仲間の手の甲に光る印が現れ身体能力を跳ね上げる。ほぼ同時に黒服のヒーラーも念を込め、サチコらの周囲を青い光が取り巻いた。アルマは手傷を受けたOctaviaへ治癒を飛ばし危急を脱するも、その身を蝕む炎は消えない。
「……これは厄介ですね」
言葉を交わす距離から離れ、本来の位置である後衛へ戻ろうとしたリコリスの脚へと、炎が纏わりつく。それでも無理に突っ切れば、些少なダメージで乗り切る事が出来た。
「こちらを振り切って進む気はないのか?」
「隠蔽した下手人は貴方達でしょう。倒して聞き出したほうが効率的です」
相手が先を急ぐなら遅滞戦術を仕掛けようとしていたセリオスだが、足を止めて戦う姿勢のサチコに目論見が外れる。視界を濃煙炸弾で塞ぐ事も考えたが、手持ちに弾が無く、脚を狙って矢を放った。控えていたウォーリアが割って入るも、鎧を着こんでもいない軽装ゆえにダメージは大きい。
「この先に進みたいのであれば、まずはわたしを倒してから進んでください」
ゲルダが殺意の大鉈を振るおうとしたところへ、サチコがじろりと睨みつけた。炎が渦を巻き、爆圧を受けたゲルダは後方へ吹き飛ぶも、まだ殺意の刃は届く。返す刀で黒服のゴブリン3名とサチコを撫で斬りにした。
「く、これは厄介な……」
「火が消えないよ?」
炎上する範囲内に留まっていたゲルダとアルマ、ヨルに纏わりつくように火炎が渦巻いた。ヨルは掛けていた保険でダメージを相殺し、ゲルダは固めた防御と素の生命力で凌ぐ。耐えた2人と超エーテルバリアで炎自体を寄せ付けなかったアルマ、Octaviaも含めて一度でもサチコの攻撃を受けた者は、消えぬ炎熱でじわりと体力を削られた。
「なるほど。一人や二人倒れようと、引く気はないようですね」
サチコはそう呟く。持久戦の為に回避や防御、妨害に注力している冒険者達の姿勢には、何が何でも戦いに勝とうという気構えはなかった。しかし、幾人か倒れたら撤退するというような引き際もまた見えない。戦力的には長射程のセリオスが脅威となるが、それでも自分が勝つとサチコは判断したようだ。そして、勝ちはするだろうが手加減は困難だ、とも。
「……いいでしょう。私は貴方達を殺したい訳ではありません。この場はこちらが引きましょう。自分で手当はできますね?」
現れたのが嘘のように、燃え盛る炎は消失した。しかし、4名の身体に刻まれた炎はその限りでは無いようだ。振り払うまでじくじくと体力を削り続ける悪影響を解除する備えは冒険者達にはない。悪影響から回復するまで、ヒールで治癒するしかなさそうだ。
「最後までだんまりかよ」
ナハシュと戦っていたシーフも、浅い傷はあれど動きに問題はない。無言のまま引き上げた相手の背中へそうぶつけるも、反応も無かった。最後まで気を抜かずに矢を向けたセリオスが睨む中、サチコたちは夜の闇に消えていく。
「これで、終わったんですかね?」
小屋から見ていたアリオスが、ほうっと息を吐いた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年12月30日 23時11分05秒 公開
相談掲示板
やーってこかぁ。 オクタヴィア・オーレウス、シーフだ。よろしくな。 -さて。サチコの攻勢からゴブリンを守るお仕事と。 …実は話題としていっこ攻勢を止められそうな『説』があるんだよね。 題して"ゴーフルの残り寿命はゴブリンの信仰心そのもの"説。 会議の場で「ゴブリンの神(なりかけ)」って言い出してたのが、マジモンの言い分な可能性があるんよね。というのも ・(別依頼から)現在のゴーフルは医者視点だと"なんで生きてるか分からない" ・神クラスの力にばかり干渉してたイダ妃が直接干渉しにきていた ・ゴーフルの体調が悪くなった時期とゴブリンの暴走ってもしかして被ってない? とまあ、ちょっち疑える要素が多いんだよね。 今回の騒動が 『神クラスの力を持ち始めたゴーフルから根こそぎイダが奪いにかかってる』 って考えるとすんなり腑に落ちそうだし。
同じくシーフのトーラです。 よろしくお願いします! その説をサチコさんに信じさせる事が出来れば止まって貰えるでしょうか。 少なくとも現状維持することでメリットがあると考えて貰えればチャンスもあると思います。 わたしは殺害する事で周りの反応が悪くなることのデメリットを説いてみようと思います。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー なるほどー、キョーミ深い考察…! どう話をもっていくかは別として説得の材料は多いほどいいだろうし? 連動の別件で洗脳が溶けた結果?ブラックデスを離反する幹部さんもいた事だし ボクは野良や一般ゴブリンさん達をスミクズにしてやるー!の前に 自分のところの足元固めたほうがよくないー?って方向でいこうかなと それはそれとして調査と追跡を撒く方法も考えないとだけど 香水とかじゃ弱そうだし、すごく臭い発酵食品でも試してみようかなあと うっかり使うと大惨事になりそうだから他に良さそうな手があればそっちでもー?
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む。 とりあえず俺は説得方面はさっぱりなので、そちらは任せる。 説得に失敗したときのことも考えて、追跡とかの妨害を行うつもりだ。あとは鉱山まで来られた時最悪の最悪迎撃というか追い返す仕事だな
痕跡を残さないというのであれば、ヒュプノシスなどで大人しくさせて運び出すのはどうでしょう? それで暴れる事による痕跡は失くせますし、鉱山で働いている方にもお願いして移送出来ないでしょうか? それと、
途中送信すみません(汗 それと、鉱山に迫られた時の事も考えておいた方が良いですよね。 ウォーリアが二人いますし、シーザーロアで執着を受けて足止め出来ないままサチコさんを自由にすると、抜けられてゴブリンの方達が魔法で全滅させられたりとかもあり得ますし。
ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いしますね。 あ、あの、すみません……思いっきり、『殴って納得』するつもりで参加してしまいました……!! いえ、でも、今後のことも考えるとちゃんとした説得で納得していただいたほうがよいかなと思いますので、わたしも説得、がんばりますね……っ サチコ様がゴブリンの方々を追って鉱山に向かう前に、サチコ様方と接触、説得ないし交戦に持ち込めたらいいかなと思いました。 ただ、上記の場合も万が一のためにゴブリンの方々の輸送お手伝いは必要ですよね ヒュプノシスで眠っていただく案、とても有効だと思います……! 臭いについては……わたしも「すごく臭い発酵食品」を使った囮作戦を考えましたが……ううん、あまり使いたくは、ないですね……。
あ、だったら主だっての役割は分けちまうか? メインの対策を説得/追跡阻止で線引いて、担当しない側の対策は『メインで対策する人に乗っかり』みたいな。 あたしもあたしでほぼ説得オンリーで、ゴブリン逃がすとかに割くのが難しくてさ。どだろ?
ヒーラーのヨル・スレイマン。宜しく。 一旦腹を決めてしまうと殴るしかないこともあるし、ゲルダ君の気持ちよくわかるけどね。 ともあれ説得と移送の二段構えでとてもいいと思う。既に専門でやってくれるという人が双方にいるのはとてもありがたいし、どっち方面でもやりたいことがある人は多少手を割いても大丈夫じゃないかな。 数が要りそうな移送はアリオス君達もやってくれるようだしね。 俺も説得をメインにと考えているけど、ヒュプノシスとかは持っていけるから手が足りなそうならそちらも手伝うよ。 ヒュプノシス案はとてもいいと思うな。30人だからちょっと大変そうだけど、一番優しい手段でもある。 匂いに関しては、複数ルートに分けて移送するとかすれば多少追いにくくすることはできるだろうか⋯⋯。 たしかに今出てる通り、発酵食品とかで誤魔化すのが一番手取り早そうだ。
シーフのナハシュだ。今回はよろしく。 基本説得がメインだな、了解だ。 移送時の工作も今上がってるヒュプノシスや発酵食品がいいんじゃねえかなと思う。ヒュプノシスに関してはかける際人間が入っていくと面倒かもしれねえから、俺かフェイクカバーできるトーラがやれたらいい感じか? 後は移送で馬車を使うなら、そこを隠蔽で胡麻化しておこうとは思うぜ。 とりあえず説得で動くやつが多そうだから、俺は追跡の妨害をメインにしておく。 取り巻きがいる以上話を聞くのと調査・追跡を並行して進められる可能性も高いだろうし、向こうからすればある程度場所の目途が立てば説得を切り上げたっていいだろうからな。 無論そのためのヒュプノシスや発酵食品の類だろうが、やられた時野放しもまずいだろう。 >説得が失敗した場合 同じくこれも考えておいた方がいいと思うんだが、説得が失敗する時点で大分終わりな感じがするな。とはいえ説得メインの奴らが固まっているのは間違いねえだろうから、そこから足止めスキルを使いつつ夜明けまで保たせるみたいな感じになるのか‥?
キャスターのリコリス・アデュラリアです。 ……よろしくお願いします。 私も説得と移送の二方向からのアプローチを行う方向で異論はありません。 ヒュプノシス使用案も問題無いかと。 臭いについては……手間に見合う効果があるかは不明ですが 彼らが着ていた服を脱がして囮に使うという手もありますね。 代わりの服は貫頭衣レベルの物なら用意も着替えも難しくはないかと。 余裕があれば水を被せてある程度は臭いの元である汚れも落とせれば良いのですが 時間的制約等もあるので、実行するにしても可能な範囲内でとなるでしょうか。
それではヒュプノシスで眠って貰って、馬車で鉱山まで運ぶことにしますね。 フェイクカバーはゴブリンに化けて囮をやれないかとも考えていたので、持っていってヒュプノシスを使うとき警戒されない様にしますね。 馬車の痕跡を隠すなら、轍を複数作って誘導するのも良いかもです。
ああなるほど、ではヒュプノシスは2人に任せるね。 その分何か説得か足止めに使えそうな汎用を探してみておく。 >説得が失敗した場合 向こうが話を聞かずに戦闘の意思を見せてくる場合、こっちも剣を抜かない道理はないので、戦いながら足止めしつつ説得を続けるつもりでいるよ。もちろん戦わずに済むならそれが一番なのだけど。 その場合、光縛封はサチコ君の魔法と相性が悪そうなので、回復優先で出来るだけ耐久面で足止めが叶うようにはしておきたい。
すみません。 ゴブリンに変装して囮をやるつもりと言ったんですけど、説得をするならゴブリンで無い方が良さそうな気がするので、変装はヒュプノシスを使うときだけにします…!
いつのまにやら出発目前になったねー…個人の説得内容は特に変わらないけど 戦闘になったら同じく回復専念になりそうかなあと あとはヒュプノシスで眠らせるみたいなので移送補助に荷馬車を持ち込んだり 足跡消しに整地ローラー(重いコンダラ…)も曳くとか臭い対策に発酵食品とか サバイバル知識&隠蔽とあわせて痕跡を掴みにくくするような感じでプレ出してくるね