【猟姫】必ずしも武力は必要ではない
革酎
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シナリオID:2641
オープニング
リーンエス王国の内地と、西方辺境伯領及びその寄り子貴族領とを結ぶ支援補給路は幾つもあるが、その中でも特に大きな輸送量を確保出来る経路は、大きく分けて三つ。
即ち北部経路、中部経路、南部経路の三本だ。
このうち中部経路に該当する王党派貴族ガンデオン侯爵領内経路と、南部経路に該当する同王党派シュバート伯爵領内経路は、南西部貴族派アルゼマン侯爵とジルクック伯爵の謀略によって事実上、封鎖された。
カンデオン侯爵領最西端バルストン駐屯地ではその西方に超大型アンデッド屍蠍王が陣取り、シュバート伯爵領最西端の商業街テモルスはジルクック伯爵私兵団が町の防備という名目で支配権を握った。
残るは北部経路、即ち王党派ペールフェルト侯爵領内経路である。
ペールフェルト侯爵領は西方辺境伯領から見て北東に位置し、その領境では城塞集落ガロットが周辺に睨みを利かせている。
バルストン駐屯地や商業街テモルスと異なり、ガロット周辺には貴族派領地は無く、ここを力攻めで奪うのはまず不可能と目されている。リーンエス王家も北部経路だけは何とか死守出来るだろうとの目算を立てていたのだが、しかし雲行きが怪しくなってきた。
問題の第一報を受けたのは、バルストン駐屯地に居残り、中部経路の回復について検討を進めていた王国騎士団近衛隊ジュール・J・ヴェルジーだった。
某日、王党派カペル侯爵傘下の諜報組織『青薔薇』のイオレア・シュデルが、緊急に伝えたいことがあると面会を申し入れてきたのである。
青薔薇はリーンエス王国内で手広く諜報と広報の両面で活動を行う組織だ。その情報力は侮れない。
バルストン駐屯地の司令棟客室でイオレアを出迎えたジュールは、ガロットが突如機能不全に陥ったとの報告を受けた。
「機能不全、とは?」
「詳しい状況は不明ですが、ガロットを守るペールフェルト侯爵騎士団の大半が病に倒れ、かの城塞集落は事実上、丸裸状態に陥っているとのことです」
何故その様な事態になったのかは、まだ分からない。イオレアはこれから現地に向かい、何人かの冒険者を雇って調査すると告げた。
「いや、私も行こう。どうも気になる」
ジュールは渋い表情で立ち上がった。
●二週間前
ペールフェルト侯爵領ガロットは城塞集落という呼び名の通り、堅牢な城塞構造と多くの騎士団員を配置することで分厚い守りを誇る。
集落周辺にも防衛構造物を数多く配置している為、耕作には不向きで、漁場となる河川も無い。そこで周辺の農村や河川漁村から食糧を調達することで日々の糧を賄うことにしている。
ところがどういう訳か、それら周辺の農村及び河川漁村からの食糧供給が途絶えた。
騎士団員と集落民を支える食糧備蓄は僅か一週間分しか無い。このままでは、ガロットを構成するひとびとは飢え死にを待つしか無かった。
ガロット守衛隊長クロムルスが副官のケーニスをそれら農村や河川漁村へと走らせて聞き取り調査を実施させたところ、それらの地域全てに於いて突如野盗団や魔獣、或いはアンデッドの群れが襲い掛かり、ガロットに供給する為の食糧をことごとく強奪或いは破壊していったとの由。
「そんなことが、起こり得るのか?」
報告に戻ったケーニスに対し、クロムルスは心底驚いた様子で訊き返した。ケーニスは残念ながら事実です、と苦しげに応じるばかりである。
如何に堅牢で強固な守りを誇るガロットといえど、人間の主生活を支える食糧が無ければ砂上の楼閣と何ら変わりは無い。
クロムルスは急遽、ペールフェルト侯爵領都に食糧支援の要望を出したが、集落全体を賄える程の量の食糧をいきなり調達するのは至難の業だった。
●一週間前
備蓄食糧が尽きかけ、いよいよ本格的に拙い状況へと陥りつつあった城塞集落ガロットを救ったのは、領主ペールフェルト侯爵ではなかった。
西方辺境伯領側から、オルストフ伯爵の使節団を名乗る人員が訪ねてきたのである。
彼らは西方辺境伯領に隣接するガロットの窮地を見て、これは人道支援をせねばならぬと意気込んだということらしい。
クロムルスは喜んで、この支援を受けることにした。
何せ相手は貴族派などではなく、西方辺境伯の寄り子貴族なのである。信頼に値すると思えた。
尚、使節団を送り込んだのはオルストフ伯爵本人ではなく、その妻カネーレだという話だった。クロムルスは何の疑いも持たず、カネーレの好意に対して心からの感謝を示した。
但し生憎ながら、クロムルスはカネーレが南西部貴族派ジルクック伯爵の妹である事実など、何ひとつ知らなかった。
●二日前
ガロットの集落民や常駐騎士団員を突如、謎の流行り病が襲った。
下痢や発熱、嘔吐などの症状を訴える者が大半で、中には急激な脱水症状で命を落とす者も居た。
守衛隊長クロムルスも例外ではなかったが、日頃の鍛錬がものをいったのか、比較的軽い症状で済んだ。とはいえ、立って歩ける程の状態ではなく、ほとんど寝たきりでベッドから動くこともままならない。
幸い、副官ケーニスは全く発症しておらず、クロムルスに代わって防衛線の指揮や集落内の行政処理の取り纏め等に奔走していた。
ガロットに配属されている騎士団員のうち、まともに動けるのはケーニスを含めて僅か数名。とてもではないが、城塞集落としてペールフェルト侯爵領西端の守りを担えるだけの機能は無い。
集落民もほぼ全員が病に倒れ、どの家庭も壊滅状態だった。集落内がこの様な状態だから、当然リーンエス王国内地からの支援補給業務も執り行える状況ではない。
もっといえば、流行り病の拡大を防ぐべく、外部との連絡は遮断すべきであろう。そういう意味でも、ガロットを経由する北部経路は事実上、封鎖に近しい状態に陥ったといえる。
結局のところ、リーンエス王家と西方辺境伯を結ぶ重要な支援補給路は三本とも、使えなくなった。
これを偶然と見るべきかどうか――判断材料が、余りにも少なかった。
●日時不明、某日
深夜、とある農村の入り口。
美貌の吸血鬼ラネンターカムは村内を徘徊する幾つもの影を、満足げな笑みを浮かべて眺めている。
「さて、残るはあと三カ所……全くアルゼマンめ、ひと使いの荒い奴よ」
口では文句をいいながら、しかしその面にはどこか喜色めいた感情が伺える。
傍らで、頭ふたつ分以上も背が高い頑健な体躯の男が、そうぼやきなさるなと苦笑を浮かべた。
「お疲れであらば、我らから反魂法師をひとり、お出し致しましょうぞ」
「それには及ばぬ。このラネンターカムが死霊術でくたびれたとあっては末代までの恥じゃ」
闇の中で、ラネンターカムは薄く笑った。
解説
マスターより
リプレイ
リーンエス王国の王党派貴族ペールフェルト侯爵の領内最西端の城塞集落ガロット。
冒険者達が到着した時、その惨状は更に深刻の度合いを増していた。
「これは酷い状況ですね……」
先頭を切って集落の門をくぐったジュスト・ヴェルジーは、祖父にして近衛騎士でもあるジュール・J・ヴェルジーに険しい表情を向けた。
道端のそこかしこに、幾つもの遺体が転がっている。王党派カペル侯爵傘下の諜報組織『青薔薇』のイオレア・シュデルが最初に連絡してきた時には、まだ死者は出ていない筈だった。
「これは、急いだ方が良いでしょうね。原因が分からなければ、恐怖と不安を煽るだけですし」
治癒師としての観点で語るグレイブ・ヤードに、ジュールも渋い表情で頷き返す。調査も大事だが、集落民やペールフェルト騎士団の回復も同時並行的に進めなければ、事態は更に拙い方向へと傾く。
「副官は確かケーニス氏……でしたか。俺はまず、かの御仁を調べることにします」
イオレアからの報告で、ガロットを守る守衛隊の副官ケーニスが無症状であり、現在は事実上の集落行政官のトップに立っていることに、ヴァン・ローラントは妙な違和感を覚えていた。
いや、もう少し詳しくいえば、ヴァンはケーニスなる人物が裏で糸を引いている何者かと繋がっている可能性があるのではないかとすら疑っている。
時期から見て、西方辺境伯寄り子貴族のオルストフ伯爵からの支援食糧が怪しいと踏んでいるのは、冒険者達が抱いている共通の疑問ではあったが、全胃が全員、同じことを調べていたのでは効率が悪い。
そこでヴァンは副官ケーニスを、ジュストとローザリカ・L・ディオールは支援食糧を、そしてグレイブは流行り病に倒れている集落民や騎士団員らへの治療と聞き取りをといった具合に、それぞれが手分けして調査を進める運びとなった。
一方ジュールはガロット守衛隊長クロムルスとの面会に臨み、イオレアはヴァンをサポートする形でケーニス調査に付き合うとの由。
ジュストとローザリカは、支援食糧が保管されている倉庫へと足を運んだ。
この倉庫自体は特に目新しい物でもなく、従来からある建屋の様だ。内部に残されている支援食糧は極僅かであり、せいぜい荷馬車一台分といったところだろうか。
「さて……ざっと聞いた話では、集落民も騎士達も同じものを同じ量だけ食べた、ということだったけど」
ローザリカは残されている食材――葉物野菜、穀物、干し肉、パンの中からそれぞれひとつずつ手に取り、見た目や匂いを確かめた。が、特におかしな点は見当たらない。
「ロゼ、本当にやるのか?」
「これは僕の領分だ。譲るつもりは無いよ」
心配そうに見つめるジュストの目の前で、ローザリカは手にした食材をひと口ずつ齧り、頬の中に含んだ。
しばらく咀嚼し、味や食感を確かめる。が、気になる点は全く感じられない。
そこで、思い切って呑み込むことにした。授恵者としての技量を駆使し、耐性は引き上げてある。いざとなればジュストも居る。
後はもう、腹を括るだけだ。
しかし結局、何も起きなかった。或いは即効性の毒や病原菌ではなかった、ということか。
「水も僕達が持ち込んだものと、ここの井戸や樽にあるものとでは味に違いは無かった……ということは、支援食糧も水もシロだった、ということかな?」
腕を組んで考え込むローザリカ。
傍らのジュストも、大事な婚約者の身に何も起きなかったことに内心でほっと胸を撫で下ろしつつ、その一方で矢張り敵はあからさまに証拠として残る様な物を使っていなかったと渋面を浮かべた。
グレイブは集落の中央広場で薄味のスープを煮込み、それを鍋に取り分けて各家庭に配って廻った。
その際、流行り病が猛威を振るい始めた時期と、その前後にあった出来事を聞き取ってみたが、これといって収穫といえる様な情報は得られなかった。
食事メニューも特に変わりは無く、各家庭でそれぞれの料理を自分達で作ったのだという。ただ食材が、オルストフ伯爵からの支援食糧であるという違いを除いては。
「食材も、持参すれば良かったですね」
グレイブは煮込み野菜料理でも作ろうかと考えていたが、ここガロットに残されている食材は極めて少なく、結局彼がここで作ることが出来たのはスープだけだった。
それ程までに、この城塞集落は追い込まれている。イオレアがジュールに、機能しなくなっていると伝えたのは決して誇張でも何でも無かったという訳だ。
その後、ジュストとローザリカからも支援食糧には何の問題も無いことを知らされたグレイブ。
では、ガロットを襲った流行り病は本当に自然発生的に伝播しただけだというのだろうか。
●想定外の事実
城塞集落ガロットに食糧を提供している周辺の農村や河川漁村は、ふた桁はあるだろう。
それら全てが一斉に、そして同時に食糧供給困難に陥るというのは、余りに出来過ぎた話だ。
リディリディ・トゥラ・イェレミース、ハヤト=ガラン=ヴォルファング、ロゼット、ナハティガル=ラーの四人はまずはこれらの村々を廻って話を聞き、その後にそれらの村の周辺を調査するという段取りで足を向けてみた。
が、最初に訪れた農村で、彼らは信じられない光景に直面した。
「一体、どういうことなの?」
ロゼットは呆然と、たった今斃したばかりのゾンビを見下ろしていた。
「この村の住民全員がアンデッドと化していた、という訳か」
刃を鞘に収めつつ、ナハティガルは淡々と結論を述べた。彼がいう様に、最初に訪れた農村は既に全滅していた。のみならず、住民が全員、ゾンビとして村内を徘徊していたのである。遺体の腐り具合や損傷度から見て、彼らが殺されたのは一カ月程前にまで遡ると見て良さそうだった。
「畑に残されていた野菜は……どれも、無事でした。牛舎の方も……餌が無くて、衰弱してはいたものの、何頭か牛が、残っていましたし……」
村周辺に広がっている耕作地を見て廻ってきたリディリディが、困惑しながら引き返してきた。話に聞いていた限りでは野盗による食糧強奪、そして魔獣或いはアンデッドの群れによる破壊が原因で、ガロットへの食糧供給が不可能になったという筈だったが、事実は違った。
食糧は、有り余っている。ただ、村民が全員ゾンビと化していた。だからガロットに食糧を届けることが出来なかったのだ。
では一体、どこで話が食い違ったのだろう。
「西方辺境の方がまたきな臭くなってきたと思ったら、内地までおかしなことになってるじゃねーか」
住民だったゾンビを全て討ち斃した後、村内全域を見て廻っていたハヤトが少し遅れて合流してきた。生き残っている者はひとりもおらず、大人から子供まで、全員がゾンビと化していたらしい。
しかし、全ての死体にはある共通点が見られた。いずれも酷く水分が失われ、半ば干からびた状態でアンデッド化していたという。血液の大半が奪われたと見て良い。
「吸血鬼の仕業か……ならば犯人はほぼ間違い無く、あの女……ラネンターカムだな」
ナハティガルは、住民が全滅した上でゾンビ化している村は、ここだけでは留まらないとの見解を下した。恐らくは、ガロットに食糧を提供していた全ての農村と河川漁村が同じ運命を辿っているのだろう。
であれば、ラネンターカムはそれらの住民全てからエーテルを奪い、更に強大な力を得たことになる。
「でもちょっと待って。何故態々、住民全てをゾンビにする必要があったの?」
ロゼットの疑問も尤もだ。
が、その点についてはハヤトが敵の意図を知るヒントを口にした。
「そいやぁ、最初この村に近づく前、まさか全滅してるとは思わなかったよな。遠目に見りゃあ、ゾンビなのか生きた村人なのか、ぱっと見で判断出来なかったし」
「ということは、時間稼ぎのカモフラージュ?」
腕を組んで考え込むロゼット。と、ここで彼女は重大な事実を思い出した。
ガロット守衛隊副官のケーニスは直接、各村を廻って食糧供給困難になった事情を聞き取り調査したと語っていた。が、遺体の状況を見る限り、この村の住民が殺されたのはその聞き取り調査よりも、もっと前だ。
「その……ケーニスさんが嘘をついていた、ということでしょうか?」
住民が皆殺しにされ、調査手段も手がかりも失われたと途方に暮れていたリディリディが、信じられないといった調子で目を見張った。
「村民全員が皆殺しにされ、村が壊滅した事実が知れ渡れば流石にペールフェルト侯爵もすぐに動く。だが殺した住民をゾンビとして配置すれば、遠目に見れば村は生きている。加えてケーニスが聞き取り調査を実施したと嘘の報告を届ければ、尚更だ」
ナハティガルの分析は、恐らくかなりの精度で正しいと見て良いだろう。
この謀略を企てた黒幕はガロットを食糧不足の機能不全に陥れることが出来る上に、ラネンターカムは大量のエーテルを獲得することが出来る。一石二鳥の作戦だといえる。
「俺はこの足で、西方辺境伯のところへ行く。王党派の支援補給路は事実上、全滅だ。これから先、貴族派の支援を受けるつもりなのか、伯の意思を聞いておきたい」
「ならば俺も、同行しよう。ガロット防衛の応援を要請したい」
かくしてハヤトとナハティガルは、別行動を取る運びとなった。
一方、ロゼットとリディリディは残りの村を手分けして見て廻る。仮に全ての村の住民がアンデッドと化していたとしても、討伐する必要は無い。ただ村が全滅し、食糧そのものは無事だという事実さえ分かれば、それで良いのである。
「でも、これだけの数の農村や漁村を新たに立て直すとなると、相当な手間と日数が必要になるわね」
「最後の北方支援補給路も結局、封じられたということになりますね」
ロゼットもリディリディも、敵の謀略が既に完成形に近づきつつある現状を、認めざるを得なかった。
●反撃の足がかり
クロムルスとの面会を終えたジュールは、ヴァンとイオレアのふたりと合流し、ケーニスを問いただすことにした。ジュールもまた諸々の聞き取り結果から、ケーニスが怪しいと踏んだのである。
三人は揃って、ケーニス宅を訪れた。
が、どういう訳かケーニスは不在だった。ジュールが後々の責任は自分が取ると請け合い、三人は玄関をこじ開けて屋内へと踏み込んだ。
手分けして、屋内を隅々まで捜索した。結果、幾つかの事実が判明した。
「ジュール殿、これは……」
最初にヴァンが見つけたのは、アルゼマン侯爵家の家紋と思しき封が施された手紙だった。中は空っぽだったが、そもそも何故、一介の騎士に過ぎないケーニスの手元にこんなものがあったのか。
更に捜索を進めたところ、オルストフ伯爵からの支援食糧に対する検分結果と検分手順書が見つかったが、問題は手順書の方だ。各家庭や騎士団員への配分手続きのところに妙な印が書き込まれている。
その印より後の段階で、支援食糧が分配ルートに乗る格好となっていた。
「このタイミングで流行り病の原因となる毒なり病原菌なりを仕込ませることが出来れば……」
「爆発的に感染が広がることになるな」
クロムルスからの証言によれば、支援食糧の検品はケーニスがひとりで担当していたということらしい。他の騎士達は事務作業や、こういう裏方作業には慣れておらず、実際に地味な作業だとして毛嫌いしていた。
つまり、ケーニスは誰にも悟られること無く犯行に及ぶことが出来た。
「流行り病の原因となったものは、流石に残っていませんね」
更に捜索を進めたが、決定的な証拠となる毒乃至病原菌の類は見つからなかった。ヴァンは悔しそうに唸ったが、流石にケーニスもそこまで馬鹿ではなかったということか。
冒険者が調査の為に乗り込んでくることも織り込み済みだったのか、三人が踏み込む前に姿を消したのは、恐らく予定通りだったのだろう。
だが結局、ケーニスは逃れ切れなかった。
支援食糧を送り込んだのがオルストフ伯爵本人ではなく、その妻カネーレだった事実から、ジルクック伯爵が背後で糸を引いているのではないかと踏んでいたジュストが、予め貴族派貴族の領地へと向かうことが出来る馬車道に当たりを付けていたのである。
幾ら何でも犯人がオルストフ伯爵を頼ることは無いだろうとの読みが的中した格好だ。
ジュストとローザリカが、ひと目を憚って密かに脱出しようとしていたケーニスの身柄を押さえた。
更にそこへ、周辺農村や漁村での調査を終えたロゼットとリディリディが報告を持ち帰り、ケーニスがクロムルスに嘘の報告をしていた事実も確定したことで、ガロット機能不全の直接の実行犯がケーニスであると断定された。
この数日後、ハヤトとナハティガルが十分過ぎる程の支援食糧を手土産に西方辺境伯領から引き返してきた。ルーヴェン・アクファリテ西方辺境伯は兵力を出すのは流石に問題だが、支援食糧程度なら出せるということでナハティガルからの要請に応じてくれたのだ。
その一方でハヤトから出された、貴族派と手を結ぶ意思はあるかとの問いに対しては、回答を保留していた。ルーヴェンは、必要ならその可能性も十分にあり得るという考えを持っているらしい。
内地での王党派と貴族派の謀略合戦は、そっちで勝手にやってくれというのがルーヴェンの考えだった。
「矢張り、あの御仁は考え方がドライだな。シラーの蛮族共との戦いを支援してくれるなら、王党派だろうが貴族派だろうが、どちらでも良いという発想なのだろう」
ジュールは想定通りの反応だと、ただ苦笑を浮かべるばかりである。
ガロット周辺の壊滅した各農村、漁村に対してはペールフェルト侯爵が騎士団と人手を派遣し、早期の復旧に努める運びとなった。
一方でガロットそのものは、グレイブやローザリカ、ロゼット、或いはジュストらが進めた組織的な治療策で回復の兆しを見せている。
またリディリディの献策で、住民が全滅した各農村からの農作物集約作業も進められた。送り主たる農民達は確かに全滅したが、農作物自体は無事に残っているのである。今ある分だけでも収穫し、ガロットの食糧として掻き集めるのは無駄ではない。
かくして、城塞集約ガロットは少しずつではあるが、立て直しの方向へと動き始めた。が、それでも矢張り北方支援補給路としての回復には今少し、時間を要するだろう。
尚、ケーニスはイオレアが尋問した結果、南西部貴族派貴族アルゼマン侯爵の間諜であることと、毒薬を用いた流行り病偽装を白状した。
これを切っ掛けにして、王党派の反撃が始まったと見て良いだろう。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年12月10日 22時57分08秒 公開
参加者
- イェレミース トゥラ リディリディ
グレイブ・ヤード
ハヤト=ガラン=ヴォルファング
ロゼット
ナハティガル=ラー
ヴァン・ローラント
ジュスト・V・ケレス
ローザリカ・D・ケレス
相談掲示板
キャスターのジュストだ、よろしくね。 いやはや、用意周到なことだ。 脇が甘かったのも否めないと思うけれど、既に起きてしまったことは仕方がない。 ちゃんと御礼を返せるように頑張りたいな。 流行り病に関してはなんとなく検討がつくけれど、オルストフ伯領からの支援物資が残っているならそれを調べたり、集落の人の聞き込みや診察から原因は判明しそうな気がする。 とはいえ、それが人為的なものか否かの証明は難しいだろうし、責任の所在は明らかにならないだろうけれど……調査の足掛かりにはなりそうだ。 それに原因が判明すれば治療法と被害が拡大しないようコントロールする為の対策はとれると考えている。 というわけで、俺は医療・薬学と政治知識で流行り病関連の調査と立て直しからアプローチしてみようと思う。 集落周辺に沸いた野盗団や魔獣、或いはアンデッドの群れ方面も探れる人がいたらお願いしたいところ。
ヒーラーのグレイブ・ヤードです。 >流行り病?について 一応私としては判別と「主として治療(に繋がる行動)」を重視したいと考えております。 医療・薬学メインですね。 どんな裏があろうと、失われていいものがあるわけもないですし
シューターのヴァンだ。 俺も病気の原因について調べる感じになるな。まあ症状が嘔吐下痢だし、支援物資の食べ物が濃厚だろう。 それと、副官ケーニスについても調べたい。同じ物を飲み食いしてて全くの無症状ってのは流石に気になる。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! どーもきな臭ぇことになってんな… 俺は周辺農村や漁村での食糧事情が悪化した原因について探りに行ってみることにすんぜ。 野盗に魔獣、アンデッドが略奪&破壊行為をタイミング合わせて仕掛けて来たってのはどー考えても不自然だしな。 野盗は捕まえてみるつもりだが、詳しい事は知らされてねぇ可能性も高ぇし魔獣やアンデッド共を操ってる奴らがいる可能性に見当をつけて探りを入れてみるってとこで考えてんぜ。 ちなみに余裕があれば西方辺境伯へも補給路が意図的に潰されてる可能性を示唆して貴族派からなんらかの接触の気配がねーか確認の早馬でも向かわせてーとこだな。
ヒーラーのロゼットよ。 方針は、1つが城塞集落ガロットでの原因調査と治療活動、 もう1つが各村が受けた襲撃の背後を調査する、の2つかな? 医療技能者は居るみたいだし、私はハヤトと同じく、 襲撃の背後関係の方を調べに行こうかしら。 ちょっと人数の偏りも見たいから、仮の希望で様子見してるわ。
ヒーラーのローザリカ。 ……力不足を悔いる部分もあるが。まずはこの局面、乗り切れるよう努力しよう。 よろしくたのむ。 >流行り病 いかにも怪しい食べ物を調べるには超味覚も使える、だろうか… 知識さえ有していればかすかな異物や毒物も味覚として察知できるようだから、 医療・薬学と合わせて口に含んでみるというのも手かとは思った。無論、飲み込んだりはせず。 あとは魔術的なものではないことの裏取りで患者に解呪系統のスキルを試してみるとか。 僕が浮かんだのはそのあたりかな……「そうではない」ことの確認ばかりだが。 >襲撃の調査 そんなに離れてないのに被害にあわなかった村がないか、 もしもあるなら貴族派とのつながりの有無を調べるとか出来たらいいのだろうか…… 自身の行動は、もちろん班分けの偏りを見つつとは思うのだが…… 今のところ病関連の調査が気になっている。
>原因は食料? 勝手な憶測も交じりますが 「見て分かる異常(腐敗物や毒劇物の草木)」はないと仮定しまして、 (あれば流石に検品などの時にわかるでしょう) もし仮に原因になるものが混じってるのであれば、 「加工品」を調べたほうがいいのかなと思っています。 それも短期間でここまで広がる以上、「誰もが食べることが想定される主食となりえるもの」、というところまで絞れるかなとも。
No.8
リディリディです。 よ、よろしくお願いします。 そうですね・・・。 治療は毒類などは門外漢ですし、私はガロットの外を調査しようと思います。 その・・・、今までガロットへ供給していた農村・漁村へ聞き取りなど行ってみようかと思います。
シーフのナハティガル=ラーだ。――宜しく頼む。 俺も医療・薬学については詳しくないため、各村への襲撃関連を調査するとしよう。 野盗団・魔獣・アンデッドの群れが、何者にも指揮されずに足並みを揃えて襲い掛かる……等とは到底思えんしな。 恐らくはメドゥが裏で糸を引いているのだろう。 >原因は食料? 疫病が流行する直前に運ばれて来た支援物資から感染した、と考えるのが妥当だと俺も思う。 食料や水、後は食糧以外の生活必需品からの感染も考えられるかもしれん。 感染した者、感染しなかった者の違いも気になる所だ。
現状ガロットでの原因調査と治療活動に4、各村が受けた襲撃の背後を調査に4で丁度良さそうだね。 >病の原因 そもそも感染性のものか否かも調べてみないと定かではないからね。 可能性を一つずつ潰すのも堅実な調査方法だ。 ただ授恵者の俺達なら危険度は低いとはいえ口にするのはあまりおすすめしたくないかな、とは思うけれど。 加工品に関してはグレイブ殿、被害のなかったケーニス殿についてはヴァン殿、毒や呪物関係の可能性の排除をロゼがしてくれるなら俺は食糧そのもの以外の調査をしようかな。 支援物資の内訳、食糧の入っていた木箱や麻袋などの容器や保管状況、小動物や害虫の有無等々とか。
>各村への襲撃関連の調査 調査行動が主で良いと思うけど、場合によって戦闘が発生するかも しれないし、最低限(装備・スキル)の用意はしておきたいわね。 野盗やアンデッド、魔獣ならともかく、大物と鉢合わせたりすると 厄介だし、外に出るメンバーだけでも何かあった時は共闘する意志を 入れておいた方がと。何があるか分からないから用意だけだけど。 >アンデッド アンデッドだと姿、外見の聞き取りがあるかな。 アンデッドというと人型ゾンビを想像しがちだけど、 魔獣ゾンビや東方独自の屍餓鬼だったりと、違いがあるわ。 呼び出した術者が何者かの、見当をつけるのに役立つでしょう。
>各村への襲撃関連の調査 捜査対象が『城塞集落周辺の農村及び河川漁村』と大雑把な区分となっているが、 調査担当者は個別で行動するか、それとも数人単位で纏まって行動するか……どうする? 不測の事態を考慮するのなら、ある程度は纏まって動いた方が良いとは思うが。 >アンデッド 先日請けた西方辺境伯領の支援補給路に関連する依頼では、岩蠍型ゾンビという自律型のゾンビが出て来たな。
明日が出発ね。 >調査担当者は個別で行動するか、それとも数人単位で~ 特に決めていなかったけど、聞き取りや調査活動は個別でも 良いかなって。襲撃があったのは2週間前のことだから、 今から動いて襲撃現場に遭遇する可能性は少なそうだし。 ただ調査結果で、犯人の足取りを掴めた展開?になったら、 外回りのメンバーを集めて、追ってみても良いかと思う。 ギリギリで悪いけど、私はそうしてるわ。 ハヤトも発言から、野盗の捕縛ぐらいは考えていそうだし、 そういう戦闘になりそうな場合に、招集をかける感じかな。
>調査組 そーだな、調査自体は戦闘やら何かあった際に集まりやすい程度の散開にして動く感じでもいーんじゃねーかと思ってんぜ。