【毒杯】夢の跡先、渇欲の涯
明乃そら
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オープニング
「今までガストーニ商会絡みの事件を追ってきたが、準備が整ったんで相手の拠点を攻めようと思う。そこでアンタらにも協力してほしいっつーわけだ」
リーンエス王国のアルベール伯爵邸への襲撃事件から始まった、一連の騒動。
裏の世界で悪事を働く貿易商、ガストーニ商会と背後に潜むメドゥの指先――連中が企む陰謀を、冒険者達はこれまで幾度も食い止め、解決してきた。
「この前は助けてくれてありがとう! 恩を返す為、ボクもみんなに力を貸すよ!」
前回の依頼で救出したゴブリンの少女、シュリナが冒険者達に改めてお礼を述べる。
彼女はゴールディの歓楽街・ヘヴンズロウの前の元締めの娘だが、ガストーニ商会の代表を務めるブルーノによって父親共々、街を追われる身となった。
その後、父親を殺されたシュリナは商会に復讐する為、街の同志と一緒にずっと機会を窺っていたのだ。
「商会の奴らに見つかったらマズいと思って、ひとまずアタシのところで保護している。街の対立派にとって、シュリナは反乱の御旗というべき存在だ。彼らが自らの力で街を取り戻す事、その力添えをするのが今度の依頼だ」
ガストーニ商会を打ち倒し、住人達の手で勝利をもぎ取る事が大切なのだと、シャルティナは言う。
「そこで商会と事を構えるわけだが、ヘヴンズロウにあるブルーノ邸を襲撃し、制圧するのが目標だ」
シャルティナの口から語られる、打倒ガストーニ商会の作戦案。
襲撃場所となるブルーノ邸は街の最奥に建てられていて、周囲を高さ五メートル程の壁がぐるりと囲み、内側からのみ門を開けられる仕組みになっている。
街はマフィアが監視の目を光らせており、邸宅に辿り着いたとしても壁を乗り越えなければ侵入するのは困難だ。
更に屋敷内には、商会が雇った犯罪者……闘技場を勝ち抜いた猛者連中が警護に当たっているとの情報を得ている。
「ぱっと聞いた限りじゃ隙が無さそうに思えるが、ブルーノは上客の富豪連中を呼んで毎夜パーティーに興じてるらしい。おそらく多少は気が緩んでるだろうから、そうした油断を突いて攻め込めば、相手も動揺するだろう」
夜のパーティー会場に奇襲を仕掛け、隙を狙い、混乱に乗じて敵を討つ。それが今回の作戦の概要だ。
また、邸宅に侵入するには、娼館から通じる地下道を使う方法もあるそうだが、その場合は娼婦達が仕掛ける罠を潜り抜けなければならない。
「因みにシュリナ達以外にも、メドゥの指先の拠点を潰したいっつー御仁がいてな。この地じゃ知らねぇモンはいねぇそのお偉いさんが、作戦に一つ協力してくれるとの事だ」
シャルティナは敢えてその人物の名前こそ挙げないが、誰もが知る彼が興した組織の名前を口に出す。
「自治領を仕切っているマフィアのファミリー〝ブラックデス〟から、構成員を動員してくれるらしい。今回の仕事の依頼主であるアルベール伯爵が、話を付けてくれてたようだ」
自国の縄張りでテロリスト集団が暗躍しているとあっては、流石に見過ごせないとこの申し出を快諾してくれた。
ゴールディの最大勢力からの協力は、冒険者達にとっても大きな朗報で心強い。
「それともう一人、特別ゲストを呼んでいる。吸血鬼の少女〝クロエ〟が支援役として加わる事が決まってな。この件については、アルベール伯爵の息女、ロレッタ嬢の働きかけによってブラックデス側も了承済みだ」
但し、あくまで限定的な部分でしかないが、と注釈を加えるシャルティナ。
本来ならば敵である筈の吸血鬼だが、ロレッタ嬢の意向もあって、現在は王国騎士団の監視下に置かれている状況だ。
けれども例え理由はどうであれ、一緒に戦ってくれるなら頼もしい援軍である事は間違いない。
「ま、戦力は多いに越した事はねぇからな。せいぜい派手に暴れて、連中を懲らしめてやろうじゃねぇか」
そう言って、シャルティナは語気を強めて冒険者達に気合を入れて、作戦の成功を願うのだった。
●欲望渦巻く不夜城の王
真昼の如く眩い光が煌々と灯る、眠らぬ夜の歓楽街――ヘヴンズロウ。その最奥の、小高い地形に建つ立派な豪邸。
街の栄華を誇示するように聳える屋敷の主こそ、この歓楽街の元締めであり、ガストーニ商会を仕切るブルーノだ。
男は今宵も、気心の知れた上客と共に、飲めや歌えやの賑やかな宴に興じるのであった。
「ここには酒も女も十分にある。更なる街の繁栄と、新たな仕事の成功を願って騒ごうじゃねぇか!」
大きなソファーにどっかり座り、傍らには露出の高い紫紺のドレスを纏った娼婦を侍らせ、髭面の男が豪快に笑う。
「とは言え、最近は冒険者共がやけに仕事の邪魔をしてきやがる。そもそもあいつらは、何故に下らぬ正義を振り翳す? あのボロ小屋の住人達もだ。どれだけカネを積んでも従わねぇ、全くふざけた馬鹿共だ」
娼婦が注ぐ酒を飲みながら、ブルーノが思わず愚痴を溢す。
冒険者達に裏の仕事を潰され続け、確立してきた地位を脅かされては、心中穏やかではいられない。
そして怒りの矛先は、彼に抵抗している街の住人達に向けられる。
「そういやぁ……あそこの奴らが何やら妙な動きをしてるらしいな。あんな薄汚い場所はこの街には相応しくねぇ。そろそろ大掃除でもしておくか。『解体屋』に伝えとけ……ついでに死体の処理も頼むとな」
屋敷のメイド達にそう伝え、ブルーノは一気に酒を飲み干して、追加の料理を催促する。
住人達の反抗の気配を察知したのか、逆らう連中はこの機に排除し、見せしめとばかりに殺してしまっても構わない。
街の支配者たる自分は何をやっても許される、例え他人の命を奪おうと――倫理観を欠いた傲慢な男は、娼婦の腰に手を回し、抱き寄せながら、下卑た笑いを浮かべて訊ね聞く。
「ところで、お前らのご主人様を見かけねぇな。一体どこに出向いてるやら……ひょっとして、愛しい我が娘を取り返そうと躍起になっているのかねぇ」
娼婦に問うのは、彼の仕事上のパートナーでもあるマリアベルの動向だ。
二人はあくまで利害関係における協力者に過ぎず、必要以上に個人的な行動には関与しない約束だった。
「女のプライバシーを聞くのは野暮よ、あまり詮索するのは良くないわ。そんなにあの御方を……怒らせたいの?」
娼婦はブルーノの耳元で、吐息を絡ませ、忠告するように囁きかける。
名目上はパートナーでも、決して対等の関係ではないと強調する娼婦。
彼女の言葉に対し、ブルーノは冗談だったと、若干引き攣り気味に笑って誤魔化すのであった。
何せ自分が手を組んでいる相手というのは――かのメドゥの指先の幹部なのだから。
「アイツに睨まれるのだけは勘弁だぜ、ここは素直に従うさ。しかし、お次は何を企んでるのか……『黄の示指』殿は」
解説
マスターより
リプレイ
煌びやかな歓楽街から外れた端の、寂れた一画。
闇夜を照らす月の下、居住区の住人達が広場に集う。
「――遂に今日という日がやってきた。どれ程虐げられても耐え忍び、泥水を啜りながら生きてきた日常はもうお終いだ。あの憎き怨敵、ブルーノを俺達の手で討ち倒す!」
住人達を代表し、エミルが拳を揮って檄を飛ばす。
姑息な手段で街を乗っ取り、支配しているガストーニ商会。しかし住人達は連中に媚びる事なく、反抗の時を待ち続け、溜まった怒りを吐き出すような咆哮が一斉にけたたましく響く。
この計画には、心強い協力者達がいる。商会の悪事を幾度も阻んできた冒険者一行が、共に戦ってくれるのだ。
「オレ達がいれば怖いモノなんかねェ。大船に乗ったつもりで任せてくれ」
自信に満ちた様子で得意げに語るナキルに、住人達は信頼を寄せて、頼りにしてるぜと声援を送る。
「みんな、今まで心配させてごめんねっ。ボクも一緒に戦うから、絶対に勝って終わらせようね!」
前の元締めの娘でもあるゴブリンの少女、シュリナは住人達にとって希望の星だ。
全ては父の仇を討つ為に――彼女の想いに勇気付けられ、住人達は武器を手に取り、後は襲撃の時間を待つのみだ。
「……気を付けて下さい。誰かがこちらに向かってきます」
ゲルダ・クラインが聴覚を研ぎ澄ませて聞き耳を立てる。すると、ここに近付いてくる複数の足音が聴こえてきた。
暗がりの中から覗く人影、彼女らはブルーノに仕えるメイド達だ。
「早速手を打ってきたか。話し合いに来た雰囲気でもなさそうだ」
サイラスが眼光鋭く、メイドを見据える。だがこの居住区にやってきたのは、彼女達だけではない。
「おやー? こないに仰山集まって、一体何を相談しとったん? おまけに冒険者までおるやんけ」
建物の屋根の上から話し掛ける声。そこには真っ赤なツインテールの女が一人。
「しっかし、あのオッサンの鼻はよぅ利くな。ま、全員揃っとるなら都合がええわ。死体にしても構へんって、許可も貰うとる事やしな」
赤髪の女はギザギザ刃の剣を担ぎ、屋根の上から飛び降り、地面に着いた。
「貴女は王国の失踪事件の時の吸血鬼……確か、『解体屋』でしたか」
リコリス・アデュラリアはこの赤髪の女に見覚えがある。王国で少女を攫おうとした吸血鬼、しかしその目論見は、依頼を受けたリコリス達の活躍によって未遂に終わった。
「せや、ウチの名前は〝ジギィ〟や。あん時は邪魔されたけど、今度こそバラバラに捌いたるわ!」
ジギィは舌舐めずりしながら剣を薙ぎ、衝撃で家屋の壁に亀裂が走る。
「何様のつもりか知らねェけど、人の家を壊すなら相応の覚悟はしてんだろうな?」
抑え切れない気迫を滾らせ、ナキルが敵を睨んで威圧する。
「最初から殺る気みたいだしな。こっちも手加減する必要はない」
話が通じる相手でないなら、むしろ分かり易いと意気込むサイラス。
敵を倒せば却って味方の気勢が上がる。この状況は逆に都合がいいと、シュリナを見遣る。
「……迎え撃ちます。ここはわたし達が受け持ちますので、シュリナ様達は先を急いで下さい」
ゲルダが小柄な体躯と変わらない程の大剣を構え、前に出ながら女吸血鬼やメイドの集団と対峙する。
「うん、分かったよ。それじゃ、屋敷でまた会おうね!」
進軍を促すゲルダにシュリナはコクリと頷いて、住人達を連れて速やかに場を移動する。
「前回は逃げられましたが、改めて決着を付けましょう」
リコリスは以前もジギィと戦い、勝利した。だから今度も撃破するだけと、表情を変える事なく女吸血鬼を一瞥する。
「ええ度胸やな! 全員ブチ殺したる!」
ジギィが大きな声で吼え叫び、冒険者に向かって疾走しながら、豪快に鋸刃の剣を振り下ろす。
「やけに痛そうな形の剣だな。果たして竜の鱗に通用するかな」
斬撃を防ごうと、サイラスが魔力で皮膚を硬化させ、正面から女吸血鬼の一撃を受け止める。
ギザギザ状の歪な刃が、鎧の継ぎ目を狙って肌を直接裂こうとするが――鎧と同等の硬度を得た赤竜の皮膚は、刃を通さず、金属の擦れ合う音が渇いた空気に鳴り響く。
「あの膂力は厄介ですね。弱らせるとしましょうか」
リコリスが精神を集中し、魔力を込めた杖から一筋の光がジギィに向けて発射される。
すると負のオーラがジギィの四肢に纏わりつき、楔のように女吸血鬼の力を抑え込む。
「他にも邪魔な連中がいるんだよな。シャルナ達には手を出させねェ!」
敵は『解体屋』だけではない。ナキルは剣に光を纏わせ、一閃――伸びる光の刃が、メイドの群れを薙ぎ払う。
「貴女のお相手はわたしです。街の方々には指一本触れさせませんっ」
ゲルダの想いに呼応するかのように、彼女の剣が赤い光を帯びている。
受ける痛みも苦しさも、全てを抱えて引き受ける――折れぬ決意を剣に込め、ジギィに放った一撃は、相手の意識を自分に引き付けるには十分な威力だ。
「ほな二度と生意気な口を利けへんよう、その首を斬り落としたる!」
ジギィはゲルダを標的に定め、一直線に突撃してくる。
「誰かを護るためならば、わたしはどんな言葉だって紡いでみせる」
心に秘めた信念は、悪しき吸血鬼如きに崩せるようなものではない。
仲間を護らんとする少女の覚悟――その心槍が穿つ先は、対峙している敵のみならず。
彼女と共に戦う者達も、心揺さぶられて気炎を上げる。
「吸血鬼の相手は任せるとして、こっちは取り巻きを片付けようか」
仲間と吸血鬼との対戦の邪魔をさせまいと、サイラスがメイドの刺客に攻撃を仕掛ける。
嵌めた指輪に宿した魔力が溢れ出し、発動せしは召喚術を模倣した魔術。
指輪の素材として据えた、竜の鱗が魔力と混ざり、再現したのは紅玉竜と呼ばれるワイバーンの姿。
幻影を通じて撃ち出す光弾の雨が降り注ぎ、貫く痛みがメイドの体力を殺いでいく。
「アンタらに構ってる暇はねェんでな。さっさと終わらせてもらうぜ」
ナキルの剣は容赦なく、メイドを斬り裂き、深手を負った一人が地面に倒れて蹲る。
戦いは拮抗し、一進一退の攻防が暫く続く――が、均衡を破ったのは、どこからともなく聞こえる数多の羽の音だった。
「蝙蝠の群れ……!? 誰の仕業や!」
敵の攻撃を妨害しようと、闇夜に羽搏く蝙蝠達。
それらはとある吸血鬼が呼び寄せたモノ。月を背にしながら飛ぶ一匹の蝙蝠が、ヒトの姿に変わって空中でくるりと回転しながら、戦場の地へと降り立った。
「勿体ぶった登場ですね。とはいえ、力を貸してくれるというなら拒みませんが」
〝彼女〟はリコリスにとってもよく知る人物。敵として幾度も戦った者が、限定的とはいえ協力してくれるのであれば、否定する理由はどこにもない。
「これもロレッタお嬢様との〝約束〟ですので。あの吸血鬼を足止めするくらいはしてあげます」
メドゥの指先の一員だった吸血鬼の少女――クロエ・ルクレールが嘗ての同胞に対して牙を剥く。
「はっ、マリアベルんトコの小娘かいな。何を考えとるのか知らんけど、お仕置きが必要みたいやな!」
吸血鬼同士の対決に血が騒ぐのか、ジギィがニタリと口角を吊り上げ、殺気を漲らせながら更に苛烈に力を振るう。
しかし戦力が新たに一人加わった事で、戦況は冒険者側に大きく傾き、全てが優位に流れていく。
「好機です。一気に畳み掛けましょう」
ゲルダがジギィの刃を盾で止め、飛び退ろうとするジギィを捕まえようと剣を突き立て、押し込んでいく。
「また霧になって逃げようなんて、させません」
すかさずリコリスが手を翳し、魔法で生成した氷の矢弾を撃ち込み、包む冷気がジギィの足元を凍てつかせる。
霧化の能力を使わせまいと、冒険者達は様々な手段で逃走阻止を試みる。それに逃げたところで、同じ吸血鬼のクロエがいる以上、捕縛されるのはもはや時間の問題だ。
「大人しく観念するのは、どうやらそちらのようですね」
月の光に照らされながら、刃を交える二人の女吸血鬼。
軽やかな身のこなしで、クロエが相手を翻弄する。そこへナキルが接近し、ジギィの背後に回り込む。
手に携えし一振りの剣は、彼の師から授かった剣だ。ハーフリングの少年は剣士の高みをただ目指し、修練の成果を試す時だと、握り締める手に魔力を注ぐ。
只ならぬ気配を感じたか、ジギィが慌てて後ろを振り向くが――時遅く、既に間合いを奪われていた。
「こいつで穿つ、沈みやがれ! ジ・ハーダル!!」
宙を瞬く、翠星の如く――瞬時に繰り出す迅速の突きが、ジギィを襲う。
蒼く透き通った刀身が、ジギィの胸に突き刺さり、心臓を深々と貫いた。
「グハッ……!? こ、こないな、ガキに……」
ジギィは信じられないといった無念の表情を浮かべ、何かを掴み取ろうと伸ばした腕は空を切り――血色の瞳にナキルの姿を最期に映し、糸が切れたように力無く、その場に崩れ落ちて逝く。
女吸血鬼を倒した一行は、残ったメイドの刺客の全員を無力化させて、捕縛する。
「商会が化け物と癒着している証拠も押さえたし、立派な大義名分になるんじゃないか」
住人達が反乱を起こすには、良い口実ができたとほくそ笑むサイラス。
何せこちらには、その為の旗印があるのだから。流れは来ていると、竜人の戦士は確かな手応えを感じていた。
一方で、クロエは捕らえたメイドを見張る為、このまま居住区に残ると言うが――。
「……貴女はどうするつもりです? 〝誰か〟に報告するには、良い状況かと思われますが」
自分達が場を離れても、王国騎士団の監視があれば不審は行動は取れないが――リコリスは念の為にと、吸血鬼の少女に釘を刺す。
「ご心配なく。ロレッタ嬢と約束を交わした以上、裏切る心算はありません」
疑われるのは仕方がないと、クロエは懸念に理解を示し、胸元で揺れる赤いペンダントに手を添えながら、断言するかのように否定する。
「それに……わざわざ連絡するまでもなく、ご主人様は、何れ連れ戻しに来るでしょう」
●堕淫の綻び
夜の歓楽街は活気と賑わいに満ち溢れ、人々は夢を求めて享楽の世界に入り浸る。
「華やかに見える世界ほど、裏は薄汚い欲望に塗れている。この街は、どれだけ弱者を犠牲にしたのか」
暗黒街で育ったゴブリンの青年、ナハティガル=ラーは裏社会の〝本当の顔〟を知っている。
歪んだ狂気が作り出す、虚構の街は嘘と欺瞞だらけの世界だと。
「金の為なら人の心すら捨てる、か。まあそれも、メドゥの指先の後ろ盾があってこそだが」
一介の商人に過ぎぬブルーノが、上流階級に影響力を伸ばしているのも、偏に組織の力のおかげだろう。
ルチル・プルメリア・グレイハーツは商会と組織の力関係を考えながら、繋がりを探る手立てがないかと思案する。
「屋敷に侵入する経路は、二通り。私は正面から向かいますので、もう片方はお願いしますね」
作戦の目標地点であるブルーノ邸。そこに乗り込む算段を、ネーヴェ・グラヌローザが二人に伝える。
屋敷は高い外壁に囲まれ、扉は内側からしか開けられない。更に周囲はマフィアが警戒しており、正門から入り込むのは容易ではない。
従って別の経路、娼館から通じる地下道を抜けて、邸内に入って門を開く。そうして外で待機している仲間を迎え入れるのが冒険者達の計画だ。
「んじゃ、アタシも正面から行くか。マフィアに関しちゃ同類がお相手してくれるっぽいしな」
シャルティナ・カッツェもネーヴェに合わせる形で、同行を申し出る。
更に彼女達には、ブラック・デスの構成員が警護してくれるとの事だ。
「何とも頼もしい助っ人だ。と、シュリナや迎えに行った奴らはまだ来ないが……問題でも起きたか?」
ナハティガル達は街の様子を調べる為、先んじて中心部に出向いていた。
そしてこの後は住人達と合流を図って、ブルーノ邸に侵入する手筈なのだが――想定よりも時間を費やしており、一抹の不安が脳裏を過ぎる。だが次の瞬間、そんな心配は杞憂に終わった。
「お待たせ! ちょっと敵が襲ってきたけど、みんなの仲間が助けてくれたおかげで到着できたよ!」
急いできたのか、シュリナが息を切らしながらも、笑顔を見せて駆け寄ってくる。
「流石に油断ならないか。だがまあ、しっかり片付けてきたようだ」
頭蓋を被ったルチルが見つめているのは、シュリナ達が来た方角の更に先。後を追い掛けるように向かってくる複数の影――刺客を倒し終えた冒険者達の姿が、目に付いた。
「おれも娼館側に回ろうか。罠があるらしいんで気を付けながら、慎重且つ大胆に進んでいきたいところかね」
新たにサイラスが、娼館経由の潜入側に名乗り出る。
残ったゲルダ、リコリス、ナキルの三人及び、シュリナとエミルの両名は正門側を希望した。
「では他の住人の皆様は、街中で怪しい動きがないか見張っていて下さい」
こちらの行動が知られたら、計画は台無しになってしまう。不測の事態を避ける為、ネーヴェは万が一に備えて住人達に巡視を頼んだ。
「決まりだな。屋敷の中で落ち合おう」
ナハティガルは颯と背中を向けると、振り返る事なく仲間に軽く手を振って、『黒蝶館』へと足を伸ばした。
そして彼の両隣にはルチルとサイラスが並び立ち、淫靡な罠が張り巡らされる色欲の館に乗り込むのだった。
――男と女の愛欲が、乱れ渦巻く背徳の廓。
歓楽街の中でも最も絢爛豪華で妖麗で、艶めく異質な空気が漂う夜伽の花街。
「確か以前に来た時は、ここで女主人に会ったと聞いたが……。となればこの舘こそ、歓楽街におけるメドゥの指先の本当の拠点となるわけか」
共有している情報から、ナハティガルが思考を巡らせ、推察する。
作戦上では通過点にしか過ぎないが、中には相応の手練れがいるだろう。せめてマリアベルと遭遇しない事を願いつつ、娼館に向けて念波を飛ばす。
エーテルの波動を通じて、建物内の構造の情報を取得。ブルーノ邸に繋がる地下道がある場所は、一階奥の特別な部屋。中に入れるのは、許可を得ている最上客のみといったところか。
「玄関以外から侵入可能な場所は、二階の裏手のベランダだな。では、行くか」
ナハティガルが母蜘蛛糸のロープをベランダ目掛けて投擲する。ロープは上手い具合に手摺に貼り付き、周囲に監視の目がないのを確認しながら、ロープを伝って登っていく。
「アタイはラトで内部を偵察だな。もしも危険が生じたら、助けに行けるように備えておくさ」
ルチルがベランダに上がるナハティガルに声を掛け、相棒の栗鼠を舘内に放つ。
館に潜り込む事に成功し、慎重に目的の部屋を目指すナハティガル。
(やはり相手も、捜波で警備しているか。時間を掛ける余裕はない)
敵の波動を感じ取り、ナハティガルは波動の方向から相手の位置を測って、避けるように迂回する。
おかげで若干遠回りする羽目になってしまったが、無事に奥の特等室まで来た。
扉の取っ手を掴み、回して押すと、意外にも簡単に開いて中に入る事ができる。
敢えて招いているのか。罠を警戒しながら、ナハティガルは室内に足を踏み入れる。
部屋で待っていたのは、見目麗しい二人の女性。彼女達は甘い香りを振り撒きながら身体を寄せて、艶めかしげな吐息を漏らし、蕩けるような色目を使って誘惑してくる。
「ねぇ、ここであたし達と一緒に遊んでいかない?」
蠱惑的な笑みを浮かべる娼婦に対し、ナハティガルは微塵も動じず、触れようとしてくる女の手を払い除ける。
「――蛇の道は蛇。アンタ達の手練手管は俺には効かんぞ?」
色香で惑わせ、武器を盗もうとするのは、女の刺客の常套手段だ。
裏の世界で生きてきたナハティガルにとって、こうした輩の相手は日常だった故、扱いも十分に慣れていた。
だったら楽しませてもらおうか、と眼帯を外し、両手に二本の剣を携え、女暗殺者との戦闘に挑む。
「……始まったみたいだな。アタイ達も乗り込もう」
ラトの視覚を介して観察していたルチルだが、敵と交戦状態になった事で援軍に向かおうと動き出す。
「色仕掛けで誘惑しても無駄なんだがな。全く以て不快過ぎる」
サイラスが憮然とした表情で、玄関口の扉を蹴り開け、館内に飛び込む。
このまま特等室まで突き進むのみ。しかし招かれざる客を排除しようと、店の娼婦達が行く手を阻む。
「化粧も香水も、吐き気がするほど気持ち悪くて堪らないんだが。とっとと消えてくれないか」
竜人の戦士の内に抱く、人間に対する嫌悪感。怪訝に顔を顰めるサイラスが、術を用いて対抗する。
疑似召喚術で再現せしは、不気味な異形の蟲の魔獣。その悍ましい外見に、女暗殺者は怯んでその場に立ち竦む。
「自慢の肌を喰い荒らされたくなけりゃ、そこをどきな」
並々ならぬ殺気を纏って凄むサイラスに、女暗殺者達は圧倒されて尻込んでしまう。
一方、ナハティガルは二人を同時に相手取り、一歩も譲らず、機動力を活かした攻撃で戦闘を有利に進めていた。
躊躇なく、二刀流から繰り出す超高速の三段連撃が炸裂し、ルチル達が部屋に来た時には決着が付いたところであった。
「生憎と、ウチの男共は色仕掛けの効かない連中ばかりでね」
気を失い、床にうつ伏せている娼婦を見遣り、ルチルが部屋を漁って地下道の鍵を発見する。
「これで先へと進めるな。しかし……マリアベルを見かけなかったのは気掛かりだが」
ナハティガルがふとした懸念を口にする。
黒蝶館の主であり、クロエの親でもある吸血鬼。その彼女は建物の中にいなかった。
もし居住区に残っている娘を狙ったところで、王国騎士団がいる以上、迂闊に手出しはできないだろう。
とにかく今は、一刻も早く屋敷に潜り込む事に専念するのみ――三人は鍵を使って地下道に降り、急ぎ足でブルーノ邸に向かうのだった。
――高く聳える外壁が、屋敷をぐるりと取り囲む。
冒険者達は少し離れた位置で物陰に隠れ、巡視のマフィアに注意しながら様子を窺う。
「随分と立派な壁なこと……用心深さも格別だな」
侵入者対策に作られた巨大な壁は、小柄なナキルやゲルダにとって一段と大きく見えるだろう。
「壁の向こう側の様子が全く分かりませんね。乗り越えるのは大変そうです」
ゲルダが目一杯背伸びしながら壁を見上げてみるものの、その先を見通せるのは困難だ。
屋敷の中に入るには、一つだけある扉を抜けるしか方法はない。しかも内側からしか開けないという念の入り用である。
「今は娼館に潜入した仲間を待ちましょう。彼らなら、心配ないと信じてますから」
ネーヴェがルチルから預かったラトの分身体を掌の上に乗せ、無事に扉が開く事を祈っていると――。
「……? 何やら騒がしくなってきましたね」
僅かな異変を察したか、リコリスが耳を澄ませながら屋敷側へと目を向ける。
どうやら娼館対応の仲間が、突破に成功したようだ。やがて壁の奥から怒号が聞こえ、雇われの護衛と交戦しているといった状況だ。
外で巡視中のマフィア達も喧騒に気付き、臨戦態勢に入って一帯は緊迫した空気に包まれる。
「ヤツらの相手は、同業者の俺達が引き受けるぜ。無駄な戦闘はしたくないだろ?」
ブラック・デスの構成員が冒険者達に提案する。
今は力を温存したい。ここは彼らの好意に甘え、マフィア同士の抗争を見守りながら、合図が訪れるのをじっと待つ。
「……っ! 皆様、今ですわ!」
ラトの分身体が、ネーヴェの掌から降りて扉の方へと走り出す。
解錠された鋼鉄の門が来訪者を迎え入れるべく、重い音を響かせながら遂に開いた――。
●野望の終焉
「お疲れさん。やっぱり頼りになるな、アンタらは」
扉の開錠に成功した冒険者達に、シャルティナが労いの言葉を掛けつつ、残りの仲間を誘導する。
「礼には及ばない。当然の仕事をしたまでさ」
一行を出迎えたルチルは、ラトの分身体を回収し、踵を返して身構える。
扉を潜り抜け、ブルーノ邸の敷地に足を踏み入れた冒険者達。そんな彼らを待っているのは、中庭で警備に当たっていた雇われの犯罪者集団だ。
「感動の再会といきたいところだけど、こいつらをどうにかするのが先決だな」
戦いは既に始まっている。サイラスが魔力で鳥の翼を形成し、翼を広げ、迫り来る敵の攻撃から味方を庇い、壁役となって群がるならず者と相対する。
「何なんだテメェらは? 折角の酒を台無しにしやがって!」
どうやらゴロツキ共は、まともに警備などせず、酒を飲み交わして気を抜いていたようだ。
冒険者達はそうした油断に乗じて、気取られないよう扉を開ける。犯罪者達が気付いた時は手遅れだったのだ。
「酔っ払いほど面倒なモンはねェ。障害になる奴はブッ飛ばすまでさ」
闇に紛れるように黒い外套を靡かせながら、ナキルが敵陣に飛び込み、反応鋭く斬りかかる。
「数が多いので、纏めて削っていきましょう」
ネーヴェが五感の総てを動員し、庭に出ている敵の配置を把握する。それは頭上から俯瞰するような感覚で、脳内に盤面の如く浮かび上がる。
相手の位置さえ認識できれば――ネーヴェは白銀の杖に魔力を注ぎ、先端の藍い宝玉から煌めく光が迸り、敵陣の中心に光の矢弾が撃ち込まれる。
「はあああぁぁぁっっ……!!」
ゲルダが大剣を振り被り、気を練り上げ、掲げる刃が発する光がひと際大きく膨らんでいく。
まるで闘気で創った槌の如く、巨大な光の塊と化した一撃を、敵集団に狙い定めて打ち下ろす。
「皆様は先へ……!」
自分達の役割は、シュリナ達をブルーノの許まで送り届ける事。その為にも、ゲルダはここに留まり、荒くれ共の相手を引き受けると決めていた。
「アタシ達は大丈夫だ。自分の手で決着を付けてきな」
シャルティナもまた、シュリナを導く為にゲルダ達と一緒に残って戦う覚悟だ。
更にはブラック・デスの構成員も加勢して、戦況は乱戦状態となって激しさを増す。
「ボク達の為に……分かったよ。必ずブルーノを倒して、全てを終わらせるから」
支えてくれる味方がいるから、迷う事など何もない。
シュリナは冒険者達に感謝しつつ、切り拓かれた道を真っ直ぐ進む。
「――ようやく舞台は整った。後はブルーノさえ始末すればカタが付く」
ナハティガルがシュリナを励まし、奮い立たせるように声を掛け、後は頼んだと、ナキルの顔を見て視線を送る。
繋いだ仲間の思いを受け取るように、ナキルが小さく頷き、気迫を滾らせながら秘める力を解き放つ。
「弱い奴ほど群れたがるってな……テメェらもオレの武勇伝にしてやるぜッ!」
剣に宿すは剛き意志。弾ける閃光は蒼白く、全身全霊を込めて放った剣撃は――迅速の太刀筋で、雷霆の如く眼前の敵を一網打尽に薙ぎ払う。
――屋敷の最上階まで辿り着いた冒険者達。
後は扉の奥にいる、街の元締めたるブルーノとの戦いを残すだけ。
「……漸く来ましたね。いよいよ終着点という事ですか」
商会との関わりを懐かしむように思い返し、リコリスは奥で待つ男と再び会うべく、豪奢な造りの扉を開く。
「おっと、シャルナだけは待ってくれ。後から追いついてくる仲間と一緒の方がいいだろう」
不意にルチルが手で遮って、シャルナの足を止める。
仮にブルーノがシャルナを見た時、どういう行動に出るのか予想し難い。従って、彼女が行くのは一番最後がいいと判断したのだ。その意見にシャルナも同意し、部屋に入らず待機する。
一行が先行して部屋に入ると、贅の限りを尽くした派手な装飾が視界に入る。
そして中央のソファーには、堂々と座って娼婦を侍らす髭面の男が待っていた。
「俺の豪邸に土足で踏み入るたぁ、冒険者ってのは躾がなってないモンだなあ」
その男――ガストーニ商会の代表を務めるブルーノは、落ち着いた低い声で語ってくる。
「俺達はアンタと話すつもりはない。奪われたモノを取り返しに来ただけだ」
相手の言葉に聞く耳持たず。ただ戦う為だけと、ナハティガルが武器を抜こうとした時だ――。
「どうせ住人共と手を組んで、俺を倒しに来たんだろう? そんな事より、俺の下で働かねぇか? 報酬も十分用意する。そもそも俺は平和主義者だからな、無意味な争いは好まねぇのさ」
下卑た笑いを薄っすら浮かべ、エミルを見下すようにチラリと見た後、交渉話を持ち掛けるブルーノ。
金の力で取り込もうとするのは如何にも商売人らしい。が、冒険者達がそんな戯言に心動かされる筈はなく。
「金? ――下らんな」
ナハティガルは話にならないと一笑に付し、ルチルも呆れ気味に肩を竦めて、溜め息を吐く。
「夢破れ、吸血鬼の手の上で踊る海賊崩れ如きに、買収されると思われるとは……非常に不愉快です」
リコリスまでもが毒突くような皮肉交じりの台詞を言い、その一言が癪に障ったか、ブルーノの表情が怒りの形相にみるみる変わる。
「……下手に出れば付け上がりやがって。生きて帰れると思うなよ!」
語気を荒げて殺気立ち、何もない空間に手を伸ばすと、巨大な錨のような武器を取り出した。
「やっぱりこうなるわけね。今夜はとことん付き合ってあげるわよ」
紫紺のドレスを纏った娼婦が、気怠そうにぼやきながら、太腿のベルトに隠した短剣を手に取る。
「巻き込まれて死にたくなかったら、さっさとこの部屋から逃げな!」
ルチルが声を張り上げ、上客の富豪達に呼び掛ける。
状況を理解したのか、富豪達は声が裏返ったような悲鳴を上げて、一目散に逃げ出した。
そして部屋を飛び出す富豪と入れ替わるように、ネーヴェが一行の所に到着する。
「私利私欲を満たす為だけに動いている貴方が平和主義者を名乗るとは、何と烏滸がましい事でしょうか」
エルフの淑女は凛と引き締まった顔付きで、欲望塗れの傲慢な男に挑発めいた言葉を浴びせる。
「……今日まで苦しめてくれた分のお返しを、今こそさせてもらう。長年に渡る痛みを思い知れ!」
10年間の怒りを声に乗せ、エミルが猛ると同時に、扉の向こう側から小さな人影が現れる。
彼女は地面を強く踏み締めながら、憎き男の傍に近付いていく。
「ボクの事を覚えてるかな。父を追い出し、全てを奪ったお前を……ボクは断じて許さない」
殺意の炎を瞳に宿し、静かに睨むゴブリンの少女。ブルーノは彼女の容姿に朧げながら見覚えがあるが、少し考えた後にはっと気付いた。
「ま、まさか……おやっさんの……っ!?」
その人物は過去に死んだと聞いていた。しかし何故この場にいるのか、思考が追い付かず混乱する。
「生憎とボクは生きていた。お前への復讐だけを胸に刻んで……でもやっと、願いを叶える時が来た」
この手で裁きを下す事。それを現実とするべく、シュリナが脇目も振らず疾走する。
「くっ……小娘がぁ!!」
突撃してくる少女に対し、ブルーノが錨を力任せに振り回す。その攻撃をシュリナは刃の爪で受けようとするが、威力に押されて小柄な身体が吹き飛ばされてしまう。
「腐っても元海賊か。だが、金に溺れた男が俺達を捻じ伏せられると思うなよ」
ナハティガルが巧みにステップを刻んで幻惑しつつ、隙を狙って怒涛の三段連撃を見舞わせる。
「お前との因縁、此処で絶ちましょう」
追い討ちを掛けるように、リコリスが魔力の塊をブルーノにぶつける。それは相手の筋力を蝕み、攻撃力を削ぐ。
間髪を入れず攻め立てる冒険者に、ブルーノ側も反撃に出る。
紫ドレスの娼婦が術式を展開すると瘴気の霧が発生し、冒険者達は視界を遮られてしまう。
「余計な邪魔はさせない」
厄介な術者を先に片付けようと、エミルが精神を高めて放った一矢は、正確無比に娼婦を射抜く。
「ついでにコイツも食らってみるか」
ルチルもすかさず、クロスボウに矢を番えて発射する。
鋼の弦に弾かれた矢は、地を這うように弧を描き、娼婦の脾腹を鮮やかに穿つ。
「さっきのお返しだよ!」
床に叩きつけられたシュリナが立ち上がり、加速しながら間合いを詰めて、ブルーノに渾身の一撃を叩き込む。
双方が死力を尽くす戦いは、激化の一途を辿って、次第に疲労も蓄積していく。
そうした仲間の消耗を、ネーヴェが治癒の力で回復させて支える事で、戦線を維持するのであった。
――やがて戦いの剣戟の音は止み、ブルーノと娼婦は床に倒れて意識を失い、二度と起き上がる事なく横たわっている。
「最後はどうか、シュリナ様の手で決着をつけて下さいまし」
仇討ちの仕上げは当人が行うべきだと、ネーヴェがシュリナに止めを促す。
シュリナは伏しているブルーノの首に刃を当てて、手を震わせながら喉を掻き斬ろうと――。
「おっと嬢ちゃん、悪いがそいつの身柄は俺らが預かる。組織との関わりを吐いてもらわなくっちゃいけねぇからな」
割り込むように声で静止するのは、ブラック・デスの構成員だ。
メドゥの指先の組織を潰す目的の彼らにとって、手掛かりとなる情報を欲するのは当然だろう。
一瞬の静寂の後、シュリナは従うように無言で手を引き、処分を彼らに委ねるのであった。
「……復讐は成し遂げられたんだ。街を脅かしてきた悪党は、ボク達の手で討ち取ったんだ!」
戦いの終焉を告げるゴブリンの少女。長年の重圧から解放されて、感極まったシュリナはエミルに抱きつき、彼の胸の中で歓喜の涙を流すのだった。
――斯くして、街はメドゥの指先の支配から解き放たれ、今後はシュリナ達によって新たな歴史が紡がれるだろう。
これで平和が訪れる、だが一つだけ、とある懸念が残っている。
ブルーノを裏で操り、メドゥの指先との橋渡し役を担っていた女吸血鬼――マリアベルの行方は結局分からず、冒険者達は歯痒い思いに駆られるのであった。
「この先、メドゥはどう動く……?」
ナハティガルはバルコニーから夜空を見上げ、輝く月を双眸に映し、未来の行く末を案じるのであった――。
マスターコメント
ロングシナリオ難しい 報酬:多い7 / 6〜12人
2022年11月10日 10時39分16秒 公開
相談掲示板
「ナキルだ、よろしくなっと とりあえず、まだ揃うまではのんびり…と、その前にもうちっと読み込まないとだったぜ… けっこー「あ、見覚え在る名前がいるな、で来ちまったからなっ」
シーフのシャルティナだ。まだ揃ってないけどよろしくな。 一応今回で決着を付けるつもりでいるんで、みんなも力を貸してくれ。 もし何か質問とかあれば、話せる範囲で答えるぜ。
こうして皆さんの前でお話するのは初めてですね。 ヴァンパイアのシーフ、クロエ・ルクレールです。 私の場合はあくまで限られた範囲での協力ですが、どうかよろしくお願いします。
キャスターのリコリス・アデュラリアと申します。 ……よろしくお願いします。 一先ず、必要最低限の人数は揃いましたから 一人につき戦場は二つ程度に絞った方が良いようなので その辺を踏まえつつ相談を進めた方が良さそうですね。 >戦場 ・居住区 有力な敵としてジギィ(敵ウォーリア)が居り 味方戦力であるクロエ(シーフ)が行動可能なのは此処のみ。 住人達を守り、必要であれば協力を得つつ戦う事になりそうでしょうか。 ・黒蝶舘 地下道を通る事から照明の用意は必須でしょうか。 館内は娼婦の暗殺者達が色仕掛け等で惑わしてくるそうですが むしろ警戒すべきは死角からの攻撃でしょうね。 ・ブルーノ邸周辺 高さ5m程の壁に囲まれ、唯一ある扉は内側からのみ開く仕組みらしいので 攻撃で扉を破壊出来れば一番危険は少ないですけど 壁歩き等が可能なシーフが内側から開けるという手もありますね。 ただ敵が待ち構えているので、後者は相応に危険な役割になるかと。 ・ブルーノ邸内 3階建てで、ブルーノ(ウォーリア)は最上階で 上客の富豪達との宴に興じているようですね。 側に居る娼婦(キャスター)が援護するのが注意点でしょうか。 富豪達に関しては、基本的には自力で逃げて貰う事になりそうですか。
あ、すまないがちょっとだけ注釈を加えさせてくれ。 メタ的な話になるが、戦場選択が二か所程度ってのは、参加人数にもよるけど、プレイングの文字数的な負担を避ける為の配慮でもあったりするんで。 もし字数内で書けそうだったら、二か所以上でも問題ないぜ。
「ちょっと顔出しが遅れたぜ、メンバーも問題ないな! >シャルティナ、クロエ いろいろサンキューなー! >リコリス 今回もよろしくな。 2つ以上は抑えるって、方向性で良さそうか。 オレ個人としては…… >戦場 居住区=ブルーノ邸周辺>ブルーノ邸内 ※圏外<黒蝶舘 だな、うん。 ……黒蝶舘ってのは、なんか、こう。「行ったらあとからどえらいめにあう」気がするぜ…… 扉ぶっ壊すとか、まぁ守るのはまだ荒いが、そのヘンでは動けそう… あー なんか1に関しては明記もあるし日中なイメージだけど 2~4に関しては潜入?とかっぽいの考えると夜の事になるのか…? いや、潜入するなら夜襲って気もするんだけどな。 この辺は他の皆の意見と、あとは時間帯の行動指定の有無って認識で行くべきか……」
確定したようだな。 シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 >戦場 (1)街外れの居住区 (4)ブルーノ邸内 上記の二箇所は今回の主戦場であり、残りの(2)(3)は(4)に至るための道程となるか。 ブルーノ邸内に侵入するのなら、わざわざ警戒が最も強い(3)から忍び込むよりも、(2)の地下道を突破する方が幾分マシなように思える。 その場合、死角からの【暗殺】には要注意だな。 色仕掛けに関しては……今更何をされても特にどうとも思わん。暗殺者ならば普通に使ってくる手かと。 >担当 とりあえず現時点では(2)⇒(4)を主軸に考えているが―― (3)からの侵入希望者が多いのなら、壁歩き等で潜入し内側から開錠する事も可能だ。 >時間帯 OPでは『真昼の如く眩い光が煌々と灯る、眠らぬ夜の歓楽街――ヘヴンズロウ。その最奥の、小高い地形に建つ立派な豪邸』との記載がある為、 少なくともブルーノ邸への潜入は夜間に決行するものと思っている。
ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いしますね。 人手が必要そうでしたので、微力ながらお邪魔させていただきました。がんばりますねっ >戦場 そう、ですね。 もしかしたら――ですが、(2)か(3)の選択ではなく、(2)の地下道が通じている先が(3)なのかな、と。 各人の戦場が二箇所というものについては、『どの戦場もその場にはいるが描写の主体となる箇所を選ぶ』形になるかなと思いました。 ですが、プレイングに書く都合上、可能な限り偏りはなくした方が成功率も上がりそうかなと。 >個人戦場 今のところは(1)と(3)を考えています。 (3)の塀や内側からしか開かない扉については、ハンマーブレイク込みの攻撃で破壊してしまう、というのを考えています。 もちろん、他の方の希望によっては移動も可能です。
情報屋のルチルだ。 出遅れたが、よろしく。 >戦場 「また、邸宅に侵入するには、娼館から通じる地下道を使う方法もあるそうだが~」とあるから2,3のいずれかはスルー可能という解釈が正しいのかね。 それでもガストー二との戦いに気づいて後から来る可能性は無きにしも非ずだが。 どちらかを攻略するなら、警戒の強さもそうだが不意打ちが得意で酔っ払った雇われ授恵者よりも暗殺者の方が異変に気づきやすく厄介かね。 >個人 当初は2→3の順番と思ってたからその両者でいくつもりだったが、スルー可能なら(2)(4)で行こう。 取り巻きのキャスターが厄介なら、狙撃で潰す手段はある。 >味方NPC クロエは居住区の外に出れないが、シュリナ達は心情や状況的に居住区やブルーノ邸に参戦するとみていいのだろうかね。 足は引っ張らないだろうが、居住区では顔役のシュリナは狙われやすそうだから注意した方がいいかもしれない。
ご挨拶が遅れました。ヒーラーのネーヴェ・グラヌローザと申します。 皆様どうぞ宜しくお願い致します。 >戦場 私もルチル様と同様の解釈でおりました。 ただ、選ばれなかったルートの敵は後から来る、と思っていた方が良さそうですね。 そういう意味では両方のルートそれぞれに向かう人が居て宜しいかと。 この辺りはゲルダ様の仰る通り、可能な限り偏りは無くした方が全体の成功率は高まりそうですわね。 >個人 今のところは3→4で考えております。回復と範囲魔法を活かせればと。 偏りそうでしたら移動も可能です。
>戦場 はわっ、すすすすすみません!! 該当の部分をすっっっっかり見落としていましたっ ご指摘ありがとうございますっ とっても助かりました……! でも、そうですね。「彼らが自らの力で街を取り戻す事」「ガストーニ商会を打ち倒し、住人達の手で勝利をもぎ取る事が大切」ともありますが、住人の方々に(2)の経路は少し難しそうかな、と。彼らは(3)を経由していただくのがよさそうかと思いました。 ですので、 ① 少数精鋭の数名で(2)経由で館に侵入して内側から鍵を開ける ② 住人を含めた全員が(3)で館を襲撃、(2)担当が門を開けたらなだれ込む のような流れが自然かなと思いました。
シャルティナ、注釈感謝します。 >侵入ルート 成程……ルートが選べるようならゲルダが言うように 少数精鋭班と住民同行班の二手に分かれる方向で異論ありません。 そうなると有事に備え、簡単な合図や連絡方法がある方が良いでしょうか。 テレパスは詳細を伝えられて便利ではありますがスキル枠と距離面の問題があるので 笛などの音による物の方が確実性は高いかもしれませんね。 ただ合図が必要となりそうなのは居住区で応援を呼ぶ際と 門対処で少数精鋭班で開けるか破壊が難しい場合 外側から破壊を要請する時……となるでしょうか。 >味方NPC 動きとしてはルチルが言うような形になりそうですね。 シュリナが狙われそうなのは私も同意見なので 希望者かエミルに護衛役を任せるのもありかもしれません。 >個人 私は3→4を希望しますが、場合によっては調整も視野に入れています。 ウォーリア相手であれば魔法攻撃は有効でしょうから 現状だと私は火力と命中を重視するつもりです。
>侵入ルート 委細承知した。 では、俺は当初の通り(2)⇒(4)のルートで行かせてもらおう。 ブルーノ邸に侵入成功した後は内部から門を開けるが――閃光塗弾や楽器で開錠の合図をすると警備の者共に気取られるため、テレパスかペットによる連絡が望ましいかも知れん。 >担当 現時点で表明のある分は下記の通り。 間違いや抜けがあったらすまん。 ※敬称略 ナキル:(1)(3)(4)? ゲルダ:(1)(3) ルチル:(2)(4) ネーヴェ:(3)(4) リコリス:(3)(4) ナハティガル:(2)(4) ●味方NPC シュリナ(1)(4)? エミル(1)(4)? クロエ(1)のみ シュリナとエミルは(1)のみか、それとも(4)にも来てもらうか……どうする?
ゲルダの案でいいと思うね。 名無しの協力者達が全員授恵者という訳ではないだろうが、冒険者側の戦力は前衛魔法回復と一通り揃っている。バックアップがしっかりしてれば人的被害は出ないはずだ。 >侵入ルート それならアタイが栗鼠を使って(3)側に合図を送ろうか。 誰が持ってても大きく変わらん……だろうが、比較的最前線に出る立ち回りでなく耐久のあるネーヴェに渡していいだろうか? >味方NPC シュリナとエミルは(4)に来てもらっても構わない、と思うよ。 反抗の旗頭が直接乗り込んだ方が泊も付く。指示出しするなら、突出せずこちらに合わせて動いてもらうように頼むぐらいかね。
「オレは(1)、(3)で動くか。 (4)は人数も多いし、この2つに行動を絞って「応対」の厚みは増やしておくとするか。 突破前後の連絡も含めて、テレパスは持って行くか… となると、「テレパス」「暗視」ってトコかな。」
No.17
サイラスだ、よろしくなー とりま人少ない(1)(2)いこうか? 前衛多いし(1)ボスがウォーリアなら杖で術メイン 暗殺警戒必要そうだし、機動力の都合から保険くらいにしかならんかもだが鎧装備でカバリングかけようか。 主に暗殺警戒するとして暗視と天眼かな?汎用は
>侵入ルート ここまでの流れは承知致しました。協力者の方々も含めて回復出来るよう、ヒーリングオーラを持ち込む予定です。 ルチル様の栗鼠(ラト)さんも確かに託されました。合図が伝わり次第、皆様にその旨伝えるように致します。 >味方NPC 私も来て頂いて構わないように思います。 マスターコメントに「特に指示などなければ、皆様を補佐する形でこちらの方で調整します」と御座いますので、単純にこちらの動きに合わせて頂くだけでしたら、特別指示出しもしなくて大丈夫ではないでしょうか。
ネーヴェは快い承諾感謝だ。 いよいよ明日の昼には出発だね…。現地ではよろしく頼むよ。 >味方NPC それもそうだね。 では、クロエ以外の味方授恵者は念の為(4)に来てもらうぐらい書けばいいか。複雑な連携がいるような作戦でもないしね。 NPCの同行希望についてはこっちで書いておくよ。
栗鼠による合図の用意、感謝します。 NPCに対する指示・行動に関しても異論はありません。 ……それでは、現地でもよろしくお願いします。
「>ルチル NPC関連の明記サンキューっと さて、テレパスも持って行くし、連絡受けたらその情報の共有とか そんな感じで動いて行く予定になってるぜ」
「あ、もしかしてテレパス要らなかったか? まぁ、間に合ったらそのヘン軽量化するくらいの気持ちで行くか もし使うならそれはそれでってカンジだしな。」
>ナキル 今の所テレパスを持って行く宣言はないように見えるね。 ジェスチャーで済む程度のやり取りなら栗鼠がいるし、他に汎用スキルで補いたい要素があれば腐らせる可能性を置いておくよりそっちを優先した方がいいかもしれない。
ルチルはサンキューな! 今変えてきた