【樹謂】湖水の昼下がり【夏果】

七海真砂

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シナリオID:2380

オープニング

 フィルエス大森林より遥かに東、『聖地』より訪れたケンタウロス・ルカンドラが捧げたエーテル石によって、世界樹は力を取り戻し、人々に告げた。

 ――小さき者たちよ、イダ(かの人間)と幽界樹を滅ぼせ。

 その言葉(啓示)は巫女であるニルヴァーナにとって、非常に重たいものであった。
(まずは、このことを知らない者達にも知らせなければいけませんわ。冒険者や、ケンタウロスとも協力し、成し遂げなければならない事柄があるのだと……そうですわねえ、どうするのが一番よろしいかしら?)
 どのような方法を取るのが良いだろうかと、ニルヴァーナはしばらく考え込む。

「……気軽に、皆様に集まっていただけそうなものにいたしましょう」
 大森林は無数のアンデッドの襲撃を受けたばかり。重要なこととはいえ、重たい空気が続くのは避けたい……そう考えたニルヴァーナは、少し前に商人ギルドが『トロピカルフルーツブーム』について話を持ち込んできたことを思い出していた。
「トロピカルフルーツ……フルーツ……ジュース? わたくしたち湖水(アエリゼル)の里には美しい水も、その氷を保存する氷室もありますから、美味しいジュースを飲む集いというのは悪くないかもしれませんわ」

 美味しいジュースを一緒に飲みませんか?
 飲みながら憩いの時間を過ごしたり、今後についてゆっくり語り合ってみませんか……。

「このくらいなら、多くの人が集まってくれそうな気がしますわ! 帝国のことは何も知らない者もいるでしょうから、詳しい説明が必要で……ああ、でもわたくしも詳しい訳ではありませんから……そうですわ、冒険者の皆様もお招きいたしましょう」
 お世話になった冒険者達にも、美味しいジュースを飲んでゆっくりして貰いつつ、少し話をして貰えないか頼んでみよう、とニルヴァーナは考えたようだった。
「今回の戦いについて聞きたい者もいるでしょうし、ちょうど良いかもしれませんわね。
 ああ、そうですわ。聖鳥(メイルアイレ)の集落から避難してきた方々は、集落の様子が気になっている筈ですから、現地の確認をしてきて頂けるようにお願いいたしましょう」

解説

 湖水(アエリゼル)の里にいるエルフ達と一緒に、美味しいジュースを飲んだりお喋りしたりして過ごしませんか?  だいたい次の三つのことができます。 1:ジュースを飲む!  森で取れるフルーツを使ったジュースを飲みます!  フルーツは桃、ブルーベリー、さくらんぼなどなどなど。材料を持ち込んでもOK! 水と氷はたくさんあります。ジュースを作って振舞ってくれる人も大歓迎です! 2:集落を見て来る  アンデッドに襲撃された聖鳥(メイルアイレ)の集落。人々が避難し、今は無人になっているそこがどうなっているか、様子を確認してきて欲しいという依頼が来ています。  世界樹からの光でアンデッドは死体に戻っており、敵はもういませんが、死体が転がっていたり、建物が壊れたりしているかもしれません。お墓を作ってあげたり、建物を直してあげたりすると喜ばれます。 3:啓示について話す  エルフ達に啓示について話します。  帝国のこと、イダ・バルダスや天霧りに消ゆる幽界樹についてよく知らないエルフも多いので、解説してあげると喜ばれるかもしれません。それらに疎いという冒険者さんは色々教わるチャンスかも!

マスターより

 こんにちは、七海真砂です。  【樹謂】だけど【夏果】なシナリオです。戦いの疲れを癒すようにのんびりジュースを飲んだり、エルフの皆さんのために手を貸したり……。ニルヴァーナもご一緒いたします。  ご参加、お待ちしております。

リプレイ

 帝国過激派が率いる、アンデッドの大軍による襲撃を受けた聖鳥(メイルアイレ)の集落は、ひっそりと静まり返っていた。時折聞こえる鳥のさえずり、虫の羽音が、ここに平穏が戻って来たことを教えてくれる。
 だが。
(こうして被害の跡を見ると、来るものがありますね)
 マリイ・パルティスは沈痛な面持ちで集落の様子を見つめていた。集落からの避難を手伝った際に出来た戦いの跡もあれば、その後にアンデッド達によって作られたと思われる被害もある。
 そして――。
「……遺体は、村はずれの墓地に埋葬して良いそうですから、そちらまで運びましょうか」
「そうですね。まずは皆さんを丁重に運びましょう」
 グレイブ・ヤードの言葉にマリイは頷き返すと、担架の上に亡骸を移す。失われた命は帰らないけれど、今度こそ彼らが安らかに往けるようにと、祈りと願いを込めながら二人は人々を運んでいく。
 一方で、エルは集落全体の被害を確認に回っていた。完全に崩れてしまい、一から建て直さなければならない建物もあったが、その多くはちょっとした一部の修繕だけで済みそうに見える。
「応急処置くらいになりそう、です、けど、皆さんが、とりあえず暮らせるように、直しましょう」
 まずは屋根、それから壁だろうか。エルは木材の備蓄があると教えて貰った小屋に向かい、大工道具を借りながら作業に取り掛かった。

「今、できるのは……このくらい、でしょう、か」
 しばらくして、エルは一息つきながら、そう顔を上げた。
 修繕が必要そうな屋根は一通り作業が終わり、壁に関しても被害が小規模だった箇所は対処してある。後はもっと人手や資材が必要となる部分で、エルはそれらについて修繕の仕方や不足している物のリストをメモして纏めておいた。
 その頃には、人々の埋葬も終わりつつあった。
 途中から人数分の穴を掘り始めたグレイブは、汲んで来た水で泥汚れなどを落してあげると、そっと優しく埋葬していく。
 所持品などから名前がわかる者には墓標を添え、そうでない者はそのまま――最後に、花の種を植えて、彼らが森と花の中でゆるりと休めるようにと、そう願いを込める。
(……これもまた、償いという名の自己満足なのかもしれませんがね……)
 それでも、何かがしたかった。いや、しなければならないと思った。
 元とはいえ同じ国のものが、それも立場のあるものが、行った結果生み出されたものが、この光景なのだから。
「瓦礫の下なども確認しましたが、大丈夫でした」
 マリイはエーテルリンクを結んだコルデラと共に、見つけにくい居場所に残っている遺体が無いかを確かめていたが、取りこぼしは無いようだ。丁寧に埋葬された人々を前に、マリイはハープを取ると鎮魂歌を奏でる。
(どうか今度こそ、その魂がマトリクス界へ往けますように)
 そっと紡ぎながら、願いを込めた。

「皆様、こちらをどうぞ」
 そうして湖水(アエリゼル)の里へとやって来た三人を出迎えたのは、エデル=マグノリアだった。彼らの為に、と用意しておいたのは、ライムと塩を用いたカクテル・マルガリータを元にアレンジしたジュースだ。
「よろしければ、お好みに合わせて味を調整しますよ」
 そう告げるフェミナ・ノ・リビディーネの手元には、ミントや蜂蜜、氷を砕いて創ったクラッシュアイスなどがある。水分補給用に塩分を加えたジュースは、口当たりがよくなるように調整してあるが、好みは千差万別。二人は感想を聞き取り、その様子を見ながらカスタマイズしたジュースを配っていく。
(話を聞いていると、疲れを感じている人が多いみたいね。無理もないけれど……)
 フィルエス大森林を襲った事件を思えば、人々の疲弊は納得である。少しでも彼らが元気になれるようなジュースを、と、エデルはオレンジとブルーベリーを混ぜ合わせたジュースを作る。
「どうかしら?」
「そうですね……バナナを加えて味を整えてみましょう」
 味見をしたフェミナは少し考え込むと、栄養を加えながらの微調整を行って。大人向けにはノンアルコールのスムージーカクテル風にした物も用意する。
「さぁさぁ、ヒーラーコンビの癒やしのジュースはいかがですか~~」
「はいはーい! ください!」
 呼びかけるフェミナたちの元へチルが駆け寄る。一口味見をして、もうちょっとだけ甘くしたいとか、ひんやり冷たいのが飲みたい、なんてリクエストにも二人は笑って応えてくれる。
「どうかしら?」
「うん、おじさんはこれでちょうどいいよ。ありがとう」
「とっても美味しいです! ありがとうございます!」
 チルの後ろからやって来たアラン・スミシーがカップ片手に礼を告げると、チルも元気いっぱいにお礼を言う。
「それでそれで? アランさんの旅はどうなっちゃったんです?」
「いやー、それがすっかり見誤っちゃってねえ。お腹が空いて倒れそうな目に遭っちゃったよ。もう散々だよ。冒険するのも案外楽じゃないねえー」
「ひゃー」
 お互いの近況報告をしながら飲むジュースは、より美味しく感じられるような気がして。カップはあっという間に空になってしまいそうだ。
「でもお腹空いて目が回るのは私もわかるよ。よくなっちゃうの。はぁ、フトコロジジョー……」
「うっ、世知辛い世の中だねえ……でも今日は気にせず色んなジュースが飲める! こういうのも冒険のひとつだ! 楽しんでいこうね!」
「うん! すみません、おかわりいいですか?」
「勿論だ。どれにする?」
 わいわいと語り合いながら二人が今度やって来たのは、カイン・ステラの元だった。皆がホッと一息つけるように……と、ジュース作りに励んでいるカインの手元には、様々なジュースが並んでいる。
「こっちは?」
「さくらんぼの紅茶だ。ジュースばかりだと飽きが来るかもしれないと思って用意してみた。合間にどうだ?」
「なるほど、いただきます!」
 首を傾げるアランに説明するカイン。そんな言葉に感心した顔で、チルはさくらんぼの紅茶を取る。
「これは……薔薇、か?」
「当たり。隠し味に薔薇とラズベリーのコーディアルを使ってみた」
 一方アランが手にした桃のジュースには、カペルローズとラズベリーが見え隠れ。それがまた、味の深みを出している。
「このジュースは何ですか?」
「ベリーを混ぜたジュースだ。ラズベリー、クランベリー、ブルーベリーをフルーツ寒天にして、後は見ての通り牛乳を注いである」
 そんな二人の賑わいが更に人を呼び、集まってきた人々が次々にジュースを指差しては尋ねる。
 あっという間に大忙しになるカインだが、それで構わないのだと笑みを浮かべてジュースを作りながらそれに答える。
(避難してきた人が、少しでもほっとできたらいいんだが)
 この時間が、皆の憩いのひとときになれば、と、そう願いながら果物を絞る手に力を入れる。
(未来を見るには今を生きないとなんねぇ。でも、休むことだって大事だ――俺達、生きてるんだから)

 多くの人々がジュースを楽しむ中、ニルヴァーナもカップを片手に歩いていた。皆に声をかけ、ハイアルヴからのお告げがあったと説明すれば、多くの者が自然と集まり始める。
「ハイアルヴ様――いえ、世界樹様はこう仰いましたわ。シルトラース帝国に現れた天霧りに消ゆる幽界樹(ミスティアニ・アストラキル)を滅せよ、と」
「帝国……」
「帝国を滅ぼしたっていう?」
「また帝国……?」
 ざわつく人々の姿に「そうなりますよねぇ」とユークリア・フィナンシェは乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
(ヨゼフ皇帝のみならず、イダ第三皇女までとんでもないことをしていただなんて……)
 レイウェスト殿下はえらい肩身が狭くなってしまいますね、と慮りながらも、肩身が狭いのはユークリアも一緒である。
(うちのような元・帝国伯爵家では規模が大き過ぎますねぇ、ははは)
 とにかくなんていうか、もう笑うしかない。空元気でも。
「帝国といっても色々あって複雑ですのよ。ええと……」
「はい。今回世界樹の危機が回避されたのも、帝国のレイウェスト殿下の働きがあってのことですから」
 何からどう説明したものか、と言い淀んだニルヴァーナの言葉を受け継いで、セロンガード・シュタインドルフが口を開く。世界樹の核にくべられたエーテル石を入手するために、尽力したレイウェストのことを語れば、帝国にも様々な勢力があるのだと伝わる。
「ええ、ええ。レイウェスト殿下は既に、幽界樹の分樹を打倒しておりまして……」
 ユークリアも、南のヴィンセントラフ砦からの戦いの数々の中から、南部鎮守都市ヴィント奪還のことなどをかいつまんでエルフ達に話す。耳を傾けている中には、聖鳥(メイルアイレ)の集落から避難してきている者達も多くいて。
(ああ……いつかあの二人を五体投地で謝らせなければなりませんね……!)
 ウチの皇帝皇女が大変なことをしでかしているのは事実だと、すっかり頭が上がらなくなりそうなユークリアである。

「……このように、帝国などでは幽界樹が大地のエーテルを吸い上げていることで、作物の不作なども起こっておりますの。このままでは、わたくし達の大森林に影響が及ぶ日もそう遠くはないでしょう」
 幽界樹の影響は他人事では無いのだとニルヴァーナは締めくくり、その為に行動しなければならないだろうと皆を見回した。
「なるほど……」
「その時に向けて、準備が必要ですね」
 直接戦えなくとも、出来る支援はある。その為の準備を整えておこう、と語り合う人々の様子に迷いが無いのは、レイウェストの功績について丁寧に説いたことが大きかっただろう。複雑な状況ではあるものの、人々は大まかに状況を理解してくれたようだった。
「ありがとうございます。上手くいったようですわ」
「いえ、いえ! 滅相も無い!」
 ユークリアはぶんぶんと首を振る。と、そこにフェミナ達がジュースを運んでやって来る。
「たくさん話して喉が渇いたでしょう?」
「おかわりをお持ちしたわ」
 脳の糖分補給を兼ねて、甘みの強いジュースにスッキリするような酸味を加えたジュースや、氷をたっぷり加えてシャキッとするように調整したジュースなどを皆に配っていく。
「ああ、ちょうど喉が渇いたと思った所だったんだ」
「ありがとう!」
「いただきますわ」
 緊張から解放されたらしいニルヴァーナも、甘口のジュースを口に運んで一息つく。一方、カップを受け取ったセロンガードはエルフ達の輪に混ざって、反対にエルフの里の今の様子を尋ねていく。
 夜天(リシルド)出身の妹に詳しい様子を伝えてやりたいのだとセロンガードが告げれば、アンデッド達との戦いへ加勢に赴いたエルフ達が詳しい様子を聞かせてくれる。戦場となった一帯は被害が無いとは言えない状態だが、人的被害は軽微で済んだようだ、と。
「今度の依頼とか、一緒に行く? 面白い話があったんだけど……」
「えっ! 行きます、行きまーす! 面白いこと、気になります!」
 何度目かのおかわりをしたチルは、誘い掛けるアランの言葉に身を乗り出す。じゃあ、と具体的な話を始めるアラン達が見ているのは、少し先の未来。
 誰もが、少し先の未来を見つめている光景にフェミナが目を細めていると、そこにエデルがジュースを差し出す。
「フェミナ様の好みに合いそうなジュースを作ってみたの」
「エデル様……ありがとうございます」
 果物をミックスした甘酸っぱいジュースは、体の隅々まで行き渡っていくようで、美味しかった。
「ここの所、贅沢しすぎてる気がしますね……」
「良いんじゃないかしら? たまには」
 こういう風に過ごす時間があっても……と、エデルが見上げた空は、雲一つない快晴だった。

マスターコメント

 美味しいジュースをしっかり飲んで、明日への英気を養うひとときになったようです。  皆さん、お疲れ様でした。  明日が良い日になりますように。
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準10 / 4〜25人

2022年08月11日 23時46分48秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. グレイブ・ヤード

    グレイブ・ヤードです。 2の集落確認と埋葬を行うために来ました

  2. カイン・ステラ

    カイン・ステラ、よろしくな。 ジュース作る予定。

  3. エル

    エル、です。どうぞ、よろしく。 2、に行こうと、思い、ます。

  4. ユークリア・フィナンシェ

    ヒーラーのユークリアです、よろしくお願いします 3でいろいろ教えて頂きたいですね ←帝国民

  5. アラン・スミシー

    ヒーラーのアラン・スミシーだ! 【1】でまったりするよ!

  6. チル

    こんにちは、チルって言います! 【1】でジュース、飲みたいです!

  7. グレイブ・ヤード

    結局埋葬重視のプレイングで終わりましたが 2の選択肢上 「元の集落の状況(現在と比較するため)」と「埋葬していい場所」について避難中の集落関係者に事前に確認するプレイングをしております。

  8. エル

    ええと、2、建物の修理(応急手当?)を、しようか、と思い、ます。 今の所、壊れ方の少ない所から、数をこなした方が、いいかな、と、思って、ます。

  9. エデル=マグノリア

    ヒーラーのエデルよ。 【1】でフェミナ様とジュース作成の予定。 よろしくね?

  10. マリイ・パルティス

    ぎりぎりの参加失礼します。シューターのマリイと申します。 私も2で埋葬をしようかなと思います。 空いた時間があれば建物を直すとまではいきませんが、廃材等の撤去ができればと。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0