【夏果】楽しもう! シトラスフェスティバル!!
菊華 伴
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シナリオID:2364
オープニング
●『シトラスフェスティバル』のお誘い
とある冒険者ギルドに、熊のような大男が訪れたのは、暑い日の午後だった。
ロア商会の会長、ナバルジャ・ロアは秘書のハーフリング、アズルノと付き添いの帝国兵の3人でカウンターの受付係へ事情を説明する。
「今回は、イベントの広告をお願いに来たのだ。そして、冒険者のみなさんの力も借りたく思う」
今回、ナバルジャを始め複数の商人が沢山のレモンなど柑橘類を使った飲み物やデザートを振る舞う『シトラスフェスティバル』を開くという。
というのも、とある海辺の村々ではレモンやオレンジなど柑橘類が大豊作な為、たくさんの人に振る舞いたいそうだ(あまりたくさん出すぎても価格が暴落してしまう為それを防ぐ効果も見込んでいる)。
会場は、帝国南部の街『オーランジェ』。そこは交通の便も良く人が集まりやすいそうな。それ故に、王国などからの観光客も見込んで開催地としたそうだ。
会場では柑橘類をつかった飲み物やお菓子の試食が配られたり、柑橘類を使った料理が食べられる他、楽器の演奏が披露されたり、果物を売るバザーもあるそうだ。
その他、帝国の騒動などで親を亡くした子供たちへの支援も兼ねたイベントも行われる予定で、ぜひ冒険者にも手伝ってほしい、との事だった。
●『シトラスフェスティバル』の手伝いとは?
「そうだな……。まず、1つ目に警備。困っている人を助けたり、喧嘩が起こっていないか見て回っていただきたい」
ナバルジャ曰く、帝国兵の一部で夏風邪がはやり、派遣予定だった者が減るらしい。それ故に冒険者にも手伝って欲しいとのことだった。
「2つ目は、目玉であるシトラスウォーターやレモネード、試食のお菓子等を振る舞う係の手伝い。気配りができる人が望ましい。実は奉仕活動として手伝ってくれる子供達がいるんだ」
付き添った帝国兵の話によると元『メドゥの指先』構成員だった子供たちも奉仕活動の一環として手伝いに来てくれるらしい。
その他、柑橘類を使った料理を振る舞うブースでもホールスタッフとして働くようだ。
だが、こういった事に慣れていない子もいるようだ。それ故に手を貸してほしい、との事だった。
「あとは、そうだな……。着れなくなった服や使わなくなった玩具を持ち寄ってもらう予定だ。私たちで修理し、綺麗にしたうえで孤児院に寄付する予定だ」
会場となる街には戦乱で親を失った子供達を育てている孤児院があるそうで、その子供たちの為に行うそうだ。だが、中には汚れた物を持ってくる人や使い古しすぎた物を持ってくる物もいるらしい。それ故に祭りの後仕分けを手伝って欲しいとの事だった。
「冒険者がたには、お給料の他美味しいマーマレードの瓶とレモンパイを渡す予定である。是非、友達を誘って欲しい」
ナバルジャは深々と頭を下げた。
●さぁ、さわやかに、はじけるように
――『シトラスフェスティバル』当日
「今日は、皆でお祭りの手伝いをするよ!」
さわやかな色合いのキュロットやワンピース姿の子供達の前で、レビジュ・バトーが声を上げた。ここに居るのは帝国兵に連れられて奉仕作業へやってきた元『メドゥの指先』構成員の子供たちだ。
「飲み物を渡す子達はブリザラの方に集まってね」
名を呼ばれたリザードマンの少年、ブリザラは黄色いバンダナで頭を覆うように巻いて微笑む。
「今回はレモネードや冷たいシトラスウォーターを配るよ。お酒は大人の人に配ってもらうから、注意だぞー」
「レモンパイや新鮮なオレンジを渡す子達はわたくし達と一緒ですわよ」
そう言うのはドワーフの少女、グリッタとホークアイ。二人はビタミンカラーのメイド服を纏い、レモンの花飾りがついたメイド帽を被っていた。
「ボクの所にはホールスタッフの係をする子たちだよ。頑張ろうね」
レビジュはそういい、合図をする。と、子ども達は話し合った通りに別れた。その様子を見ていた帝国の兵士が彼らに言う。
「今日はお祭りだ。終わったら君たちにも美味しいお菓子をあげようね。ただ、暑いから熱中症には気を付けるんだよ」
兵士の言葉に全員が頷く。
――そして、『シトラスフェスティバル』は幕を開ける。
解説
どうも、お久しぶりの菊華です。
今回は帝国南部のとある街で行われる『シトラスフェスティバル』のお手伝いをする(若しくは遊びに行く)依頼です。のんびり楽しみながらがんばりましょう!
行動について
次の選択肢から1つ選んでプレイング冒頭に番号を記してください
(複数選択の場合描写ががくっ、と減ります。番号がない場合内容から把握しますが出番が減る場合があります)。
1)警備に携わる
お祭りの日の警備のための人手が足りないそうで、冒険者の手を借りたいようです。見回るのは会場内の他出入口周辺。そして街に来ている業者が止めている馬車の周辺だそうです。場合によっては会場近辺の住宅街を頼まれる可能性も?
PL情報
スリが出たり、迷子がでたりします。中には子供達に害をなそうとする者もいるかもしれません。
2)元『メドゥ』構成員の子供達と試食係やホールスタッフをする
子ども達とシトラスウォーターやレモネードを振る舞ったり、新鮮なオレンジの果実や柑橘類を使ったお菓子の試食を配ったりします。料理を振る舞うブースではホールスタッフも行います。
礼儀作法など勉強中だったり、緊張しやすかったりする子もいるのでフォローするといいかもしれません。
PL情報
レビジュたちと交流したい方はこちらをどうぞ。仕事の後に一緒におやつを食べる、でもOKです。
3)寄付品のチェックをする/寄付品を集める
『シトラスフェスティバル』では『何かしら寄付する物を持ってくる』事をお願いしています。着られなくなった子供服やおもちゃの他、文房具などです。会場内で集めて回る人やフェスティバルの後にチェックするひとも募集しています。レモネードなどを飲みながら作業できます。
PL情報:ゴミ同然の物を持ち込む人や危ない物を入れようとする人がいるかもしれません。
4)イベントを楽しむ
客として『シトラスフェスティバル』を楽しみたい方も募集中です。美味しい柑橘類をつかったお菓子や飲み物、料理が振る舞われます。その他ステージでは楽器の演奏も行われ、果物そのものを売るブースもあるようです。
登場NPC
ナバルジャ
今回の依頼人で『シトラスフェスティバル』の実行委員長。
帝国復興に力を貸したい。
レビジュ・バトー、ブリザラ・ヒャダル、グリッタ・ルビィ、ホークアイ・ルビィ
奉仕活動の一環として他の子供たちと共に『シトラスフェスティバル』の手伝いを行う。
それではよろしくお願いします。
皆で楽しみましょう!
マスターより
今回は思いっきり楽しむイベントです。
皆で柑橘類を味わいながら交流したりしましょう。
レビジュ「皆さまの来場をお待ちしております!」
リプレイ
●賑やかに、爽やかに。
――帝国南部・オーランジェ
今日は、ここでシトラスフェスティバルというイベントが行われる。
始まる前という事で、集まった冒険者達もまた準備に追われていた。
「元気そうですね」
「レティシアさんも」
レティシア・レインフィールは、ホールを担当するレビジュとあいさつを交し、にこりと微笑む。
それとなく近況を問えば、元気に過ごしながら勉強や訓練に励んでいる事をレビジュは話してくれた。
「ホールを手伝ってくれるの?」
レビジュが問えば、レティシアは「ええ」と優しく微笑んだ。
次に現れたのはヨル・スレイマン。彼もまた子供達の事を気にかけていた冒険者の一人だ。彼らががんばっていると聞き、応援の意味も込めて手伝いに来てくれたらしい。因みに、骨を被ると怖がられそうな為、今回は脱いできている。
(せっかくのお祭りなのだから、仕事しながら楽しむのも悪くない、悪くない)
彼は少し緊張気味な子供たちに笑いかけ、楽しんでいこう、とアドバイスする。
「ん? 君も手伝いにきたのかい?」
そう、ヨルが声をかけたのは黒髪のエルフ。にこやかに笑うアラン・スミシーは「そうだよ~」と1つ頷いた。
「おじさん子供好きでね~、仲良くしようね!」
ほっこりする笑顔に、子ども達も安心しているように見える。ヨルは「頼もしい人が来てくれたかもしれない」と考えた。
「礼儀作法も、役立つ日がくるでしょう! 容赦なくビシバシ指導していきますよ!」
そういうのはビタミンカラーのメイド服を纏ったトーラ。彼女は子供達にびしっ! と教えたいと思っているのだが……。
「わたくしの見立て通り、すっごく似合っていますわ! ねっ、ホークアイ」
「メイド帽ではなくホワイトブリムにして正解でした! 愛らしさが引き立ってます! ねっ、グリッタ」
とドワーフの双子姉妹のグリッタとホークアイがお揃いのメイド服できゃっきゃっとはしゃいでいる。それに少しだけ頬を赤くするトーラにレビジュが「3人とも似合ってるよ」と楽しそうに微笑んだ。
とそこへ歩み寄る者が一人。
「レビジュ!」
「わわっ?!」
声をかけるや否や、自然体でレビジュを『たかいたかい』するイズル・M・ヴォルゴール。突然の事に面食らうレビジュだったが、降ろされると顔を真っ赤にした。
「もーっ! 僕はちびっこじゃないんだからねっ」
「あはは、ごめんごめん。でも、元気そうで何よりだよ」
イズルが苦笑している傍でレティシアが咳払い。
「イズル様。それぐらいにしないと始まりますよ」
彼女の言葉にイズルは苦笑する。彼もまた、飲み物や試食品を配る子供達にアドバイスに来たのだ。
「今回は私達がついていますから、大船に乗ったつもりでいてくださいね」
トーラが胸をとん、と叩き他の面々も頷く。子ども達を見守っていた帝国の兵士たちも心強い助っ人が来たことに安堵していた。
一方、来場者からの寄付品をチェックする者達も集まった。
「あれ? Re:Leeさん?」
「うーい、レビジュ来たよ~」
イズルから降ろされたレビジュは、ひょっこりやってきたRe:Leeにちょっと驚いたらしい。彼女は篭を見せ
「今回は寄付品のチェック担当なのよ。そっちはそっちできっちり頑張りなさいよ?」
と悪戯っぽく微笑む。
今回は彼女の他、エヴァン・ピオネロとシェルリア・リトヴァールも手伝ってくれることになった。
「実は、もう寄付品を1つ預かっているんです」
エヴァンが取り出したのは、状態のよい『ゆーくりあさん人形』だった。
「まぁ! これは喜んでもらえそうですねっ」
シェルリアはそっと人形を撫で、優しい目で頷く。傍らのRe:Leeもまた「いいんじゃない?」と目を細める。
「……で、段取りはどうするんだっけ? 会場内を回って集めるのもありだとおもうんだけど」
「そうですね。交代でまわって、集めた物をチェック……がいいでしょうか?」
Re:Leeとシェルリアの言葉に、エヴァンも「それが良さそうだね」と頷く。
「それから、そのまま寄付できる物と、修理が必要な物、廃棄する物を入れる箱を用意して……仕分けも大切だね」
エヴァンが紙に書いて説明すると、3人は他のスタッフと共に色々と作戦を纏めるのだった。
(皆さんのご厚意でいっぱい集まるといいですねっ)
シェルリアは、優しい笑顔でそう願った。
●フェスティバルを楽しめるように
開場となり、沢山の人が会場へとやってくる。
子供達は張り切って、イズルに教えられた所作を守り笑顔で対応する。そして、ヨルもまた骨を外し、朗らかに子供達とレモネードなどを配っていた。
一方、警備についた者達もいる。
「いやぁ、みんな楽しそうさー! ねぇ?」
フリューリングスルフト=ティエラ(以下フリューと表記)が、ペットのウサギであるイュンに頷きかける。子ウサギは愛らしく首を傾げており、それもまた可愛かった。
「そうですね」
セロンガード・シュタインドルフがフリューの言葉に頷き、穏やかに目を細める。
(シトラス……、そう言えば冒険者になってから、柑橘系の事であると知りましたね)
少し懐かしそうに振り返っていると、アルマ・ヴァレンタインが会場の地図を手にメンバーへ声をかける。
「これ、もらってきたよ。これを見ながら適当に別れて巡回していく感じでいいかな?」
「そうだね。何かあったら応援を呼ぶ……でいいかも」
と、チルも頷く。
因みにチルは熱中症になった人を運べるよう担架も用意しており、念のため本部に待機させている。この心配りはスタッフたちに感謝された。
「楽しいフェスティバルにするためにも、がんばりましょう!」
ユークリア・フィナンシェの言葉に、皆頷いた。
振るう事でエーテル波を飛ばすことのできる鞭を警備用に持参したユークリアは、〈天眼〉を使い祭の会場を警備していた。
(帝国南部では帝国崩壊前に結構活動していたものですが、今はどんな感じですかね……)
帝国兵でもあったユークリアは、改めて気を引き締めた。
幸い、彼女が担当したあたりではトラブルもなく。復興著しい街並みを見る事の出来た彼女は、少し嬉しく思うのだった。
とその時。彼女は少女の叫び声を聞いた。
「どうしたのですか?」
「実は……」
来場者の一人が、スリにあったらしい。ユークリアは僅かに目を見開き、犯人を見つけようと決意する。が、先の方で「うちの速さからは逃げられないさぁ!」と勇ましいフリューの声が聞こえる。
「大丈夫。すぐに捕まりますよ」
ユークリアは、少女の手を取り優しく微笑んだ。
時間を少し巻き戻す。
迷子を見つけたフリューは仔ウサギを抱っこさせ、優しく語り掛けていた。4,5歳位のヒューマンの子だ。金色の目に涙を浮かべた少年はウサギをもふもふしながらお母さんの特徴を少しずつ教えてくれた。フリューが優しく対応したのも効果があったらしい。
「大丈夫だよ。すぐにお母さんみつけるから」
辺りを見渡していると、リザードマンらしき女性が慌てて駆けてくるのが見えた。少年と同じ金色の目で、彼女は男の子を見つけると安堵した表情を浮かべた。傍らの男性共々フリューへ何度も頭を下げる。
「本当にありがとうございました」
「いえいえ、見つかってよかったわぁ」
もう離れたらダメやよ? と頭を撫でながらフリューが話していると、一人の男が女性にぶつかった。だが、その手に握っていたのは似つかわしくない女性らしい財布。
(スリ?)
フリューは仔ウサギを一家に預けると素早く駆け出す。男は、追っかけてくるハーフビーストの少女に息を飲み、更に速度を上げるが彼女には叶わない。
「やんちゃはそこまでさぁ!」
体当たりして取り押さえれば、男は観念して財布を落とした。
財布は持ち主の元に戻り、迷子も無事親の元に変えることが出来た。フリューとユークリアは上手くいったことを喜びつつも、再び警備につくのだった。
一方、セロンガードはその時商人たちの馬車が止めてある場所を警備していた。
(今の所、異常はなさそうですね)
万が一の事があってはいけない、と念入りに周囲を警戒していると……馬車馬の様子がおかしい事に気付いた。
彼はスタッフの一人に事情を説明し、馬の様子を見てもらう事にした。すると……足にけがをしているのを見つけた。
「もしかしたら、ここへ向かう途中に怪我をしたのでしょう」
「手当が必要かと。それか〈ヒール〉できる人を……」
セロンガードは少し離れた所で警備にあたっていたアルマを見つけると、馬の傷の治療を頼む。彼女が治癒のエーテルを流し込むと、馬の傷は瞬く間に治った。
「大した怪我ではないみたい。もう大丈夫だよ」
「ありがとう。助かりました」
アルマが笑顔で答えると、セロンガードを始め馬の世話をしていたスタッフも安堵したのだった。
アルマは開場に戻ると来場客に紛れ、囮も兼ねて警備をすることに。
途中で仲の良いエヴァンとすれ違い、「エヴァくーん♪」と手を振れば、彼もまた笑顔で手を振ってくれた。
それとなく子供達からレモネードを貰い、飲みながらちらり、と周囲を見渡す。……と、アルマは背後からなにか嫌な気配が迫るのを感じ取った。
(何なの?!)
振り返ると、屋台に並んでいる女性のスカートをめくろうとする男が! アルマは、反射的に『強制♪桃色弾』を顔面に叩きつけ声を上げた。
何事だ、とナハシュが駆け付けた時。顔面が蛍光ピンクの塗料まみれとなった男が『腕』のような薄ぼんやりとした光に文字通り握り締められていた。
「どなたか、警備の人を!! この人痴漢です!!」
アルマが逃がさない、と男を睨みつけつつ叫ぶ。彼女一人では大変なのだろう。ナハシュはすぐさま警備中の人を探した。
そして他の場所を警備していたチルとセロンガードが帝国兵と共に駆け付けお縄になったのだった。
(そういえば、さっきフリューちゃんがスリを捕まえたよね。……気を引き締めていかなくちゃ)
チルは他の仲間から受けた報告の事を思い出し、表情を引き締めた。
そういう彼女は、落とし物や迷子のアナウンスを木に登り行っていた。彼女のアイデアにより、直ぐに持ち主が見つかったり、迷子の保護者にあえたりと解決率も高くなる。
「聞こえる範囲は限られてしまいますが、アイデアとしては面白いですね」
ユークリアに提案した際、彼女は感心したように頷いていた。それで少し自信を持ったチルは、状況に応じてアナウンスをやっていた。
会場内で寄付品を集めていたエヴァン。
彼は「ご協力お願いします」と呼びかけながらもそれとなく集まった品の入った箱を〈透視〉してみる。
大体は洗濯や補正をすれば十分着られる物。だが、中には着れなそうな程ぼろぼろの衣服が数着交じっているのが見えた。
(後で回収ですね……)
残念な気持ちになりながらため息を吐いていると、小さな少女が目の前にいた。少女はおずおずと花の絵が描かれたワンピースを差し出す。
「もう着れなくなっちゃったお洋服なの。ママと洗濯したから綺麗よ」
「ありがとう。大切に使うね」
エヴァンが優しく言って受け取れば、少女は満面の笑みで一礼し母親らしき人へと走っていく。
「微笑ましいですね」
傍らのシェルリアがそう呟けば、エヴァンもまた笑顔で頷いた。
「お疲れ様であります! こちら異常なしであります!」
「そっちもお疲れ様」
ユークリアが警備員に報告していると、たまたま通りかかったRe:Leeが手を振って微笑んだ。
「そういえば、Re:Leeさんは寄付品を集めているんでしたね。調子はどうですか?」
それとなくユークリアが問うと、Re:Leeは「まあまあね」とおもちゃの入った箱をみせた。
(念のため、後で〈残留思念感応〉使ってみようかしら?)
時間の経過もありほんのりとしかわからない可能性もあるけど、と内心で呟く頷くRe:Lee。ユークリアが首を傾げていると、可愛らしい衣服を纏った子供達がジュースや試食品を配っている所へ出くわした。
その中にメイド服姿の双子を見つけ、Re:Leeは笑みを見せる。
「あら、グリッタとホークアイじゃない」
「「まぁ!」」
嬉しそうに声を上げる双子は2人に柑橘系の果実入りゼリーを勧めてきた。それを受け取り、ユークリアと一緒に話しながら頂く。
「そういえばレビジュは……料理提供ブースだっけ?」
「いい匂いがしていて、人気のコーナーですね」
確か人が並び始めていた、とユークリアが思い出していると、ちょうどその列が見えた。レビジュとレティシアが協力して並んでもらったりしている様子を見ていると双子がキラキラした顔になっている。それに気づいたRe:Leeは微笑ましそうに笑うのだった。
(時間が出来たらちょっと様子を見に行くのもいいかもね)
その後も警備班は交代で出入口付近や会場内を点検していく。ちらほらと冒険者が回っている事が効果をだしたのだろう、それ以降迷子以外のトラブルはなかったように思えた。
●フェスタでがんばる子供達と共に
ナハシュは一安心し、気を取り直してフェスタを回る事に。すると、子どもたちは元気に「こんにちは!」「レモネードやシトラスウォーターはいかがですか?」と声をかけてくる。
彼は微笑んで一人の少女からレモネードを貰った。
その様子を見ながら、ヨルとイズルは顔を見合わせ、笑みを深めて頷き合う。冒険者達は、フェスタが始まる前、子ども達に給仕等の基本を教えたのだ。
「笑顔でご挨拶をされて嫌な気持ちになる方はそういらっしゃいませんからね。先ずは笑顔でご挨拶する事から始めましょう?」
とレティシアが淑女の笑みで言葉を紡ぐ。
「上手くできるかな……」
緊張気味な子供を安心させようと、イズルは優しく微笑む。
「俺、教えるの苦手だから、俺の動作を見て覚えてほしいな」
と笑顔で声をかけ、飲み物が乗ったトレーを差し出せば少し緊張を解したようで。子供はお礼を言って受け取る。
「ほら、ね。まずは声と笑顔! なにか困った事があれば俺たちもフォローするから大丈夫だよ」
ヨルが穏やかに言えば幼い子供達も安堵の表情を浮かべる。
「いいですか? わたしたちは給仕なので、主役であるお客様の邪魔にならないように気を付けてください。そうそう! 失礼なるような言葉遣いは厳禁ですよ!」
トーラが人差し指を立ててしっかりと言えば、子ども達もこくりと頷く。溌溂とした物言い故に気が引き締まるらしい。
簡単なレクチャーを経て、本番を迎える。5人は交代で料理のブースと飲み物や試食品を配る班を見守る事になった。
「こんにちは~!」「美味しいシトラスウォーターはいかがですか?」
子供達は冒険者のレクチャーもあり、明るく元気にジュースや試食品を配っていた。緊張気味な子どもにはヨルやアランがそばにつき、アドバイスをそれとなくしてあげるととても喜んだ。
「そうそう、その調子」
「なかなか上手いねぇ」
二人に褒められ、子どもたちはほんのりと頬を赤くし嬉しそうに微笑んだ。
食事が食べられるブースでも、給仕として子供たちが頑張って仕事をしている。ホールスタッフとして会場内の様子が確認しやすい位置で様子を見ていたレティシアは、彼らが協力しながら料理の説明をしたり、食器を下げたりする姿を見て成長を感じていた。
「読み書きができるようになったのは物凄く助かっているんだ」
と、レビジュは彼女に話した。
曰く、古巣時代、読み書きは出来る者が出来ない者に教えていたものの、なかなか時間が取れない時もあって身につきにくい子もいたらしい。しかし、落ち着いて学ぶ時間を取れるようになった為、だいぶ上達したのだそうな。
その他、レビジュの話しぶりだと2つの里に別れてはいるものの双方『良識のある大人』に厳しくも愛情をもって育てられているように感じ、レティシアの表情がほんのりと穏やかになった。
(彼らは、少しずつ居場所を確立しつつあるのですね)
レビジュ達の成長を微笑ましく思っていると、お客さんから声がかかった。どうやら人が多くなってきたようで……。
「はい。いかがなさいましたか?」
レティシアは、優しい笑顔で対応を始めた。
彼女の丁寧な所作を、数人の女の子たちが「こんな女性になりたいな」と憧れの眼差しで見つめるのだった。
「わぁ……!」
「いい匂い~!」
「こらこら、これはお客様に渡す試供品ですからねー」
はしゃぐ子供達に対し、トーラは追加で作られたレモンパイを切り分けながら穏やかに窘める。外ではシトラスウォーターを勧める子供達とイズル達の声が聞こえ、賑わっている様子も伺える。
「練習した通り、丁寧な言葉と笑顔で! 忘れちゃダメですよ~」
「「はい、トーラ先生!!」」
集まった子供達の元気な返事を聞き、トーラは少し気恥ずかしく思いながらも元気よく頷く。そして、レモンパイの乗った皿を子供達のトレーへと乗せ、「行ってきてくださいね」と笑顔で送り出した。
子供達が楽しそうに向かっていくのと入れ替わりで、無くなったシトラスウォーターを貰おうとアランが空のデカンタを持って現れる。
「おつかれさま~。そっちはどうだい?」
「今の所、皆上手にできていますよ。最初は声の小さかった子もいたんですけど……」
その子に声の出し方をアドバイスすると、緊張も解れたのだろう、程よい大きさの声が出るようになった、とトーラは嬉しそうに話す。
彼女の明るい顔を見、釣られてアランもまた嬉しそうに微笑む。
「ふふっ、だからお菓子が飛ぶように無くなるのかもしれないねぇ」
アランの言葉に、トーラは再び少しだけ照れて頬を赤くした。
その時、一人のエルフの子が「あの……」おずおずと2人の元を訪れる。
「うん? 分からないことがある?」
身を屈め、視線を合わせて優しく問うアランだったが、その子の体調が少し悪そうに見えた。
「もしかして、お水かな? こっちにおいで。君はちょっと休憩だ」
「私、他に体調を崩した子がいないか見てきますね」
アランがその子を休憩できる場所へ連れていき、トーラが確認の為に見回りに。幸い頃合いを見計らいヨル達が子供達を順番に休憩させていた為誰も熱中症になっていなかった。
「この子は頑張り屋だね。でも、ちゃんとお水は飲もうね」
アランは、熱中症になりかけた子へシトラスウォーターを渡し、穏やかに諭すのだった。
その後木陰に連れて行き、冷やしたおしぼりを首筋に当てて休ませると、エルフの子どもはすっかり元気になった。
●香りと音楽を楽しんで
その日、エルナ・クルプファルツは相棒たるリスのプリニウスと共にシトラスフェスティバルに足を運んでいた。
「シトラスウォーターはいかがですか?」
ビタミンカラーのワンピースを纏ったドワーフの少女が、にこやかに飲み物を勧める。エルナは「ありがとう」と笑顔で受け取り、爽やかな風味を楽しんだ。
「れ、レモンパイやオレンジの試食はいかがですか?」
フェレットのハーフビーストらしき子供が、少し恥ずかしそうに声をかける。その後ろではヨルが見守ってくれている。
「レモンパイは出来立てだから、気を付けてほしい」
「えぇ、頂きます!」
ヨルから注意を聞いたエルナがふうふうと覚ましながら口にすると、爽やかな酸味と甘みのフィリングが口で解ける。サクサクのパイ生地と合う風味と食感に思わず口元が綻んだ。
バザーへと足を運ぶと色々な柑橘系由来の物が売られている。
耳をすませば、チルが迷子のアナウンスをしており、よく見ればセロンガードが彼と同種の子供と共に辺りを見渡していた。どうやらその子がアナウンスされている子らしい。
(他の冒険者も頑張っているのね)
その姿を微笑ましく思っていると、あまり人のいない出店を見つけた。売られていたのは珍しいライムのマーマレード。試食してみれば、独特の風味に蜂蜜が加わり個性的ながらさっぱりとした風味が美味しかった。
「ライムもこのように美味しくなるのですね!」
目をちょっと見開き、嬉しそうに微笑むエルナ。彼女の様子から、ちらほらと他のお客さんが訪れ始める。
その他にも親切な果物を買ったり、料理を美味しそうに食べたりしているうちに他のお客さんも積極的に動くようになった気がする。
(少しでも呼び水になればいいのですが……)
エルナは祭の喧騒に耳を澄ませながらそう願う。
……と、どこからともなく音楽が聞こえてきた。どうやら誰かが演奏を行っているらしい。
「ふふっ、いってみましょうか、プリニウス」
彼女は相棒のリスと共に演奏が行われている方へと歩き出した。
「なんだか、楽しくなるような音楽ですね」
シェルリアが聞こえてくる曲に目を細め、表情を和らげる。実は飛び入り参加したエルナが歌っているのだが、彼女が知る由もない。
彼女は磨いた〈話術〉でわかりやすく軽やかに呼びかけをし、寄付品を集めていた。途中何故か針が仕込まれた衣服を見つけたり(警備中だったフリューが入れた人間を捕まえてくれた)、壊れたおもちゃを貰ったりもしたがそれ以外はおおむね順調だ。
休憩がてらレモネードを貰い飲んでみると、心地の良い甘酸っぱさがとてもよかった。
(冷たくて、程よい味だから元気もでますね)
広場の時計を見ると、そろそろ終了の時間である。寄付品の担当者はここからが本番。シェルリアは「あと一頑張りっ!」と気合を入れた。
冒険者達が手伝ったお陰で、シトラスフェスティバルは好評のうちに幕を閉じた。依頼人であるナバルジャは、盛況だった様子にとても喜んでいたという。
●お祭り終わって……
「案外集まったわね」
Re:Leeはエヴァンとシェルリアが集めた寄付品と己が集めた寄付品を見、楽し気に頷いた。
「現時点で使えそうでない物は取り除いている。あと、針が刺さったままの衣服以外は大丈夫そう……かな」
エヴァンが記録を見ながら考えるとシェルリアがおもちゃの箱を覗く。
「こっちは全部大丈夫です。修理が必要な物はありますが……」
3人は手際よく洋服を『破棄する物』と『修理が必要な物』、『洗濯のみ必要な物』とに分けた。
Re:Leeは〈残留思念感応〉を使い、どんな意図で持ち込まれたのかを何となくでも感じ取ろうとした。大半は『子供達の為になれば』等温かい感情をこめて持ち込まれた物である事を知り安堵する。
おもちゃには『大事にしてね』とか『新しいお友達になるといいな』というような感情が込められており、彼女は1つ閃いた。
「このおもちゃの箱には、メッセージをつけてみようと思うのだけど……」
「それはいいアイデアですねっ!」
シェルリアはぱっ、と顔を輝かせて賛成しエヴァンも笑顔で頷く。一同は直ぐにでも渡せるおもちゃの箱に、『新しいお友達として、なかよくしてね』とメッセージをつけたのだった。
ちょうどその頃。警備を担当した者達も報告をしていた。
「迷子は複数でましたが、スリが1件、不審者1件……。熱中症になりかけた子が1人。それ以外の以上はなかったかと思います。馬の怪我もすぐに治癒できましたし」
とユークリアが纏めて報告すると、全員が少しだけ緊張を解く。
針をつけた服を持ち込んだ犯人とスリはこの後帝国兵がきっちり取り調べを行うそうだ。
「フリューはけっこうがんばっていましたね」
「そういうセロンガードさんも」
セロンガードとフリューが互いのがんばりを労いあっていると、アルマがチルにレモネードを飲ませながら
「時々木の上から声をかけてくれたチルさんも頑張っていたお陰で迷子解決が早く行ったんじゃないかな」
といった。実際迷子の特徴をチルが読んだ事でわかりやすかったのかもしれない。
「幸い、冒険者を含めたメンバーで回っていたお陰で、犯罪がへったかもしれない。お陰で沢山の人が安心して楽しめたと思う」
皆さんの協力に感謝します、と帝国兵が言えば、5人とも表情を少しだけ緩めた。
「みんな、よく頑張りましたね! さぁ、手を洗って席についてください。お待ちかねのおやつをあげましょう!」
アズルノが子供達を集め、片付けられたテーブルへと案内する。
皿にはフェスティバルで配られたお菓子がのっており、そのどれもが美味しそうだった。わいわい言いながら取り皿へと取っていく子供達の様子をイズルは安堵の笑みで見つめていた。
「みんな、とても上手だったよ」
イズルが褒めれば、子ども達も嬉しそうに笑う。トーラとレティシアは彼らが少し自信をつけたように見え、その成長が嬉しかった。
子供達に前もって指導していたお陰かトラブルはなく、みんな笑顔で仕事に励むことが出来た。ヨルとアランもその事に安堵していた。
「今後も、このような奉仕活動があるでしょう。今日学んだことを活かせば上手くいきますよ」
レティシアは、子ども達にそっと言うと「じゃあ、食べよっか?」とアランが茶目っ気交じりに提案しおやつの時間。みんなで楽しく美味しい時間を過ごす。そこに報告会を終えた警備班の冒険者も加わり、笑顔の花咲く時間になった。
「担架、使わずに済んでよかったのかも」
ふとチルが言えば、ヨルは「そうだねぇ」と相槌を打つ。彼の傍らには体調を崩したエルフの子がおり、「無理していたらお世話になっていたかも」と少ししゅん、としていた。
「どうしたの?」
不思議に思いチルが話しかけると、そのエルフの子は少し恥ずかしそうにヨルの後ろに隠れてしまった。ヨルは苦笑して頭を撫でてやる。
「恥ずかしがることは、ないよ。誰だって頑張りすぎちゃう事はあるからね」
エルフの子はおずおずと顔を見せると、ぽつぽつと理由を話し始めた。
寄付品の分別に当たっていた3人も大体作業を終え、おやつの輪に加わればヴァイオリンの音色が聞こえる。
どうやらイズルが子供たちのリクエストに応え、フェスティバルの間流れていた音楽を演奏しているようだ。
その盛り上がりに目を細めていたシェルリアだったが、目的を思い出す。
「まだ、お菓子かマーマレードってありますか?」
あるなら買って帰りたい、と申し出れば、少しだが買うことが出来た。
エヴァンとRe:Leeは、イズルが奏でるヴァイオリンにあわせ踊る子供達の姿をみていた。彼の姿を見つけたアルマが手を振れば、にこやかに笑いエヴァンは向かう。
「そっちもお疲れ様。はい、レモネード」
「ふふ、ありがとう」
アルマに渡されたレモネードを飲み、エヴァンは照れ交じりに微笑む。
(仲がいいわね)
と微笑ましく見たRe:Leeはレビジュがロバ耳を揺らしながら曲を楽しんでいるのを見るとくすり、と笑った。
「どうせなら踊っちゃえば?」
「え? わぁ!!」
Re:Leeに誘われ、レビジュもまた踊りに交じりヨルは指笛を吹く。
「偶にはいいですかね」
トーラが苦笑交じりに見つめていると、フリューが仔ウサギを抱っこしたまま音楽に合わせて体を揺らしている姿を目にする。チルやセロンガードも子供達に誘われ、ユークリアは「行ってらっしゃい」と見送る。
「皆で楽しい時間を過ごせて、よかったね」
「ええ」
アランがそっとトーラに言えば、少女は静かに頷いた。
イズルが奏でるヴァイオリンのメロディーに乗り、暫くの間子供達と冒険者達は楽しい時間を過ごすのだった。今宵は、よい夢がみられそうだ、といったのは誰だろうか。ともかく、素敵な一時が過ごせたことには間違いないだろう。
後日、孤児院には素敵なおもちゃとお洋服が届けられた。
孤児院の子供達は、大喜びでそれを受け取ってくれたようだ。
(イベントが上手くいき、オレンジやレモンが程よく消費された。良き哉、良き哉……)
ナバルジャも、この結果に満足しているようだった。彼は、報告書を読むと楽しそうに笑って
「また、あの子供達に手伝ってもらいたいのである」
と、手紙を書くのであった。
(終)
――帝国南部・オーランジェ
今日は、ここでシトラスフェスティバルというイベントが行われる。
始まる前という事で、集まった冒険者達もまた準備に追われていた。
「元気そうですね」
「レティシアさんも」
レティシア・レインフィールは、ホールを担当するレビジュとあいさつを交し、にこりと微笑む。
それとなく近況を問えば、元気に過ごしながら勉強や訓練に励んでいる事をレビジュは話してくれた。
「ホールを手伝ってくれるの?」
レビジュが問えば、レティシアは「ええ」と優しく微笑んだ。
次に現れたのはヨル・スレイマン。彼もまた子供達の事を気にかけていた冒険者の一人だ。彼らががんばっていると聞き、応援の意味も込めて手伝いに来てくれたらしい。因みに、骨を被ると怖がられそうな為、今回は脱いできている。
(せっかくのお祭りなのだから、仕事しながら楽しむのも悪くない、悪くない)
彼は少し緊張気味な子供たちに笑いかけ、楽しんでいこう、とアドバイスする。
「ん? 君も手伝いにきたのかい?」
そう、ヨルが声をかけたのは黒髪のエルフ。にこやかに笑うアラン・スミシーは「そうだよ~」と1つ頷いた。
「おじさん子供好きでね~、仲良くしようね!」
ほっこりする笑顔に、子ども達も安心しているように見える。ヨルは「頼もしい人が来てくれたかもしれない」と考えた。
「礼儀作法も、役立つ日がくるでしょう! 容赦なくビシバシ指導していきますよ!」
そういうのはビタミンカラーのメイド服を纏ったトーラ。彼女は子供達にびしっ! と教えたいと思っているのだが……。
「わたくしの見立て通り、すっごく似合っていますわ! ねっ、ホークアイ」
「メイド帽ではなくホワイトブリムにして正解でした! 愛らしさが引き立ってます! ねっ、グリッタ」
とドワーフの双子姉妹のグリッタとホークアイがお揃いのメイド服できゃっきゃっとはしゃいでいる。それに少しだけ頬を赤くするトーラにレビジュが「3人とも似合ってるよ」と楽しそうに微笑んだ。
とそこへ歩み寄る者が一人。
「レビジュ!」
「わわっ?!」
声をかけるや否や、自然体でレビジュを『たかいたかい』するイズル・M・ヴォルゴール。突然の事に面食らうレビジュだったが、降ろされると顔を真っ赤にした。
「もーっ! 僕はちびっこじゃないんだからねっ」
「あはは、ごめんごめん。でも、元気そうで何よりだよ」
イズルが苦笑している傍でレティシアが咳払い。
「イズル様。それぐらいにしないと始まりますよ」
彼女の言葉にイズルは苦笑する。彼もまた、飲み物や試食品を配る子供達にアドバイスに来たのだ。
「今回は私達がついていますから、大船に乗ったつもりでいてくださいね」
トーラが胸をとん、と叩き他の面々も頷く。子ども達を見守っていた帝国の兵士たちも心強い助っ人が来たことに安堵していた。
一方、来場者からの寄付品をチェックする者達も集まった。
「あれ? Re:Leeさん?」
「うーい、レビジュ来たよ~」
イズルから降ろされたレビジュは、ひょっこりやってきたRe:Leeにちょっと驚いたらしい。彼女は篭を見せ
「今回は寄付品のチェック担当なのよ。そっちはそっちできっちり頑張りなさいよ?」
と悪戯っぽく微笑む。
今回は彼女の他、エヴァン・ピオネロとシェルリア・リトヴァールも手伝ってくれることになった。
「実は、もう寄付品を1つ預かっているんです」
エヴァンが取り出したのは、状態のよい『ゆーくりあさん人形』だった。
「まぁ! これは喜んでもらえそうですねっ」
シェルリアはそっと人形を撫で、優しい目で頷く。傍らのRe:Leeもまた「いいんじゃない?」と目を細める。
「……で、段取りはどうするんだっけ? 会場内を回って集めるのもありだとおもうんだけど」
「そうですね。交代でまわって、集めた物をチェック……がいいでしょうか?」
Re:Leeとシェルリアの言葉に、エヴァンも「それが良さそうだね」と頷く。
「それから、そのまま寄付できる物と、修理が必要な物、廃棄する物を入れる箱を用意して……仕分けも大切だね」
エヴァンが紙に書いて説明すると、3人は他のスタッフと共に色々と作戦を纏めるのだった。
(皆さんのご厚意でいっぱい集まるといいですねっ)
シェルリアは、優しい笑顔でそう願った。
●フェスティバルを楽しめるように
開場となり、沢山の人が会場へとやってくる。
子供達は張り切って、イズルに教えられた所作を守り笑顔で対応する。そして、ヨルもまた骨を外し、朗らかに子供達とレモネードなどを配っていた。
一方、警備についた者達もいる。
「いやぁ、みんな楽しそうさー! ねぇ?」
フリューリングスルフト=ティエラ(以下フリューと表記)が、ペットのウサギであるイュンに頷きかける。子ウサギは愛らしく首を傾げており、それもまた可愛かった。
「そうですね」
セロンガード・シュタインドルフがフリューの言葉に頷き、穏やかに目を細める。
(シトラス……、そう言えば冒険者になってから、柑橘系の事であると知りましたね)
少し懐かしそうに振り返っていると、アルマ・ヴァレンタインが会場の地図を手にメンバーへ声をかける。
「これ、もらってきたよ。これを見ながら適当に別れて巡回していく感じでいいかな?」
「そうだね。何かあったら応援を呼ぶ……でいいかも」
と、チルも頷く。
因みにチルは熱中症になった人を運べるよう担架も用意しており、念のため本部に待機させている。この心配りはスタッフたちに感謝された。
「楽しいフェスティバルにするためにも、がんばりましょう!」
ユークリア・フィナンシェの言葉に、皆頷いた。
振るう事でエーテル波を飛ばすことのできる鞭を警備用に持参したユークリアは、〈天眼〉を使い祭の会場を警備していた。
(帝国南部では帝国崩壊前に結構活動していたものですが、今はどんな感じですかね……)
帝国兵でもあったユークリアは、改めて気を引き締めた。
幸い、彼女が担当したあたりではトラブルもなく。復興著しい街並みを見る事の出来た彼女は、少し嬉しく思うのだった。
とその時。彼女は少女の叫び声を聞いた。
「どうしたのですか?」
「実は……」
来場者の一人が、スリにあったらしい。ユークリアは僅かに目を見開き、犯人を見つけようと決意する。が、先の方で「うちの速さからは逃げられないさぁ!」と勇ましいフリューの声が聞こえる。
「大丈夫。すぐに捕まりますよ」
ユークリアは、少女の手を取り優しく微笑んだ。
時間を少し巻き戻す。
迷子を見つけたフリューは仔ウサギを抱っこさせ、優しく語り掛けていた。4,5歳位のヒューマンの子だ。金色の目に涙を浮かべた少年はウサギをもふもふしながらお母さんの特徴を少しずつ教えてくれた。フリューが優しく対応したのも効果があったらしい。
「大丈夫だよ。すぐにお母さんみつけるから」
辺りを見渡していると、リザードマンらしき女性が慌てて駆けてくるのが見えた。少年と同じ金色の目で、彼女は男の子を見つけると安堵した表情を浮かべた。傍らの男性共々フリューへ何度も頭を下げる。
「本当にありがとうございました」
「いえいえ、見つかってよかったわぁ」
もう離れたらダメやよ? と頭を撫でながらフリューが話していると、一人の男が女性にぶつかった。だが、その手に握っていたのは似つかわしくない女性らしい財布。
(スリ?)
フリューは仔ウサギを一家に預けると素早く駆け出す。男は、追っかけてくるハーフビーストの少女に息を飲み、更に速度を上げるが彼女には叶わない。
「やんちゃはそこまでさぁ!」
体当たりして取り押さえれば、男は観念して財布を落とした。
財布は持ち主の元に戻り、迷子も無事親の元に変えることが出来た。フリューとユークリアは上手くいったことを喜びつつも、再び警備につくのだった。
一方、セロンガードはその時商人たちの馬車が止めてある場所を警備していた。
(今の所、異常はなさそうですね)
万が一の事があってはいけない、と念入りに周囲を警戒していると……馬車馬の様子がおかしい事に気付いた。
彼はスタッフの一人に事情を説明し、馬の様子を見てもらう事にした。すると……足にけがをしているのを見つけた。
「もしかしたら、ここへ向かう途中に怪我をしたのでしょう」
「手当が必要かと。それか〈ヒール〉できる人を……」
セロンガードは少し離れた所で警備にあたっていたアルマを見つけると、馬の傷の治療を頼む。彼女が治癒のエーテルを流し込むと、馬の傷は瞬く間に治った。
「大した怪我ではないみたい。もう大丈夫だよ」
「ありがとう。助かりました」
アルマが笑顔で答えると、セロンガードを始め馬の世話をしていたスタッフも安堵したのだった。
アルマは開場に戻ると来場客に紛れ、囮も兼ねて警備をすることに。
途中で仲の良いエヴァンとすれ違い、「エヴァくーん♪」と手を振れば、彼もまた笑顔で手を振ってくれた。
それとなく子供達からレモネードを貰い、飲みながらちらり、と周囲を見渡す。……と、アルマは背後からなにか嫌な気配が迫るのを感じ取った。
(何なの?!)
振り返ると、屋台に並んでいる女性のスカートをめくろうとする男が! アルマは、反射的に『強制♪桃色弾』を顔面に叩きつけ声を上げた。
何事だ、とナハシュが駆け付けた時。顔面が蛍光ピンクの塗料まみれとなった男が『腕』のような薄ぼんやりとした光に文字通り握り締められていた。
「どなたか、警備の人を!! この人痴漢です!!」
アルマが逃がさない、と男を睨みつけつつ叫ぶ。彼女一人では大変なのだろう。ナハシュはすぐさま警備中の人を探した。
そして他の場所を警備していたチルとセロンガードが帝国兵と共に駆け付けお縄になったのだった。
(そういえば、さっきフリューちゃんがスリを捕まえたよね。……気を引き締めていかなくちゃ)
チルは他の仲間から受けた報告の事を思い出し、表情を引き締めた。
そういう彼女は、落とし物や迷子のアナウンスを木に登り行っていた。彼女のアイデアにより、直ぐに持ち主が見つかったり、迷子の保護者にあえたりと解決率も高くなる。
「聞こえる範囲は限られてしまいますが、アイデアとしては面白いですね」
ユークリアに提案した際、彼女は感心したように頷いていた。それで少し自信を持ったチルは、状況に応じてアナウンスをやっていた。
会場内で寄付品を集めていたエヴァン。
彼は「ご協力お願いします」と呼びかけながらもそれとなく集まった品の入った箱を〈透視〉してみる。
大体は洗濯や補正をすれば十分着られる物。だが、中には着れなそうな程ぼろぼろの衣服が数着交じっているのが見えた。
(後で回収ですね……)
残念な気持ちになりながらため息を吐いていると、小さな少女が目の前にいた。少女はおずおずと花の絵が描かれたワンピースを差し出す。
「もう着れなくなっちゃったお洋服なの。ママと洗濯したから綺麗よ」
「ありがとう。大切に使うね」
エヴァンが優しく言って受け取れば、少女は満面の笑みで一礼し母親らしき人へと走っていく。
「微笑ましいですね」
傍らのシェルリアがそう呟けば、エヴァンもまた笑顔で頷いた。
「お疲れ様であります! こちら異常なしであります!」
「そっちもお疲れ様」
ユークリアが警備員に報告していると、たまたま通りかかったRe:Leeが手を振って微笑んだ。
「そういえば、Re:Leeさんは寄付品を集めているんでしたね。調子はどうですか?」
それとなくユークリアが問うと、Re:Leeは「まあまあね」とおもちゃの入った箱をみせた。
(念のため、後で〈残留思念感応〉使ってみようかしら?)
時間の経過もありほんのりとしかわからない可能性もあるけど、と内心で呟く頷くRe:Lee。ユークリアが首を傾げていると、可愛らしい衣服を纏った子供達がジュースや試食品を配っている所へ出くわした。
その中にメイド服姿の双子を見つけ、Re:Leeは笑みを見せる。
「あら、グリッタとホークアイじゃない」
「「まぁ!」」
嬉しそうに声を上げる双子は2人に柑橘系の果実入りゼリーを勧めてきた。それを受け取り、ユークリアと一緒に話しながら頂く。
「そういえばレビジュは……料理提供ブースだっけ?」
「いい匂いがしていて、人気のコーナーですね」
確か人が並び始めていた、とユークリアが思い出していると、ちょうどその列が見えた。レビジュとレティシアが協力して並んでもらったりしている様子を見ていると双子がキラキラした顔になっている。それに気づいたRe:Leeは微笑ましそうに笑うのだった。
(時間が出来たらちょっと様子を見に行くのもいいかもね)
その後も警備班は交代で出入口付近や会場内を点検していく。ちらほらと冒険者が回っている事が効果をだしたのだろう、それ以降迷子以外のトラブルはなかったように思えた。
●フェスタでがんばる子供達と共に
ナハシュは一安心し、気を取り直してフェスタを回る事に。すると、子どもたちは元気に「こんにちは!」「レモネードやシトラスウォーターはいかがですか?」と声をかけてくる。
彼は微笑んで一人の少女からレモネードを貰った。
その様子を見ながら、ヨルとイズルは顔を見合わせ、笑みを深めて頷き合う。冒険者達は、フェスタが始まる前、子ども達に給仕等の基本を教えたのだ。
「笑顔でご挨拶をされて嫌な気持ちになる方はそういらっしゃいませんからね。先ずは笑顔でご挨拶する事から始めましょう?」
とレティシアが淑女の笑みで言葉を紡ぐ。
「上手くできるかな……」
緊張気味な子供を安心させようと、イズルは優しく微笑む。
「俺、教えるの苦手だから、俺の動作を見て覚えてほしいな」
と笑顔で声をかけ、飲み物が乗ったトレーを差し出せば少し緊張を解したようで。子供はお礼を言って受け取る。
「ほら、ね。まずは声と笑顔! なにか困った事があれば俺たちもフォローするから大丈夫だよ」
ヨルが穏やかに言えば幼い子供達も安堵の表情を浮かべる。
「いいですか? わたしたちは給仕なので、主役であるお客様の邪魔にならないように気を付けてください。そうそう! 失礼なるような言葉遣いは厳禁ですよ!」
トーラが人差し指を立ててしっかりと言えば、子ども達もこくりと頷く。溌溂とした物言い故に気が引き締まるらしい。
簡単なレクチャーを経て、本番を迎える。5人は交代で料理のブースと飲み物や試食品を配る班を見守る事になった。
「こんにちは~!」「美味しいシトラスウォーターはいかがですか?」
子供達は冒険者のレクチャーもあり、明るく元気にジュースや試食品を配っていた。緊張気味な子どもにはヨルやアランがそばにつき、アドバイスをそれとなくしてあげるととても喜んだ。
「そうそう、その調子」
「なかなか上手いねぇ」
二人に褒められ、子どもたちはほんのりと頬を赤くし嬉しそうに微笑んだ。
食事が食べられるブースでも、給仕として子供たちが頑張って仕事をしている。ホールスタッフとして会場内の様子が確認しやすい位置で様子を見ていたレティシアは、彼らが協力しながら料理の説明をしたり、食器を下げたりする姿を見て成長を感じていた。
「読み書きができるようになったのは物凄く助かっているんだ」
と、レビジュは彼女に話した。
曰く、古巣時代、読み書きは出来る者が出来ない者に教えていたものの、なかなか時間が取れない時もあって身につきにくい子もいたらしい。しかし、落ち着いて学ぶ時間を取れるようになった為、だいぶ上達したのだそうな。
その他、レビジュの話しぶりだと2つの里に別れてはいるものの双方『良識のある大人』に厳しくも愛情をもって育てられているように感じ、レティシアの表情がほんのりと穏やかになった。
(彼らは、少しずつ居場所を確立しつつあるのですね)
レビジュ達の成長を微笑ましく思っていると、お客さんから声がかかった。どうやら人が多くなってきたようで……。
「はい。いかがなさいましたか?」
レティシアは、優しい笑顔で対応を始めた。
彼女の丁寧な所作を、数人の女の子たちが「こんな女性になりたいな」と憧れの眼差しで見つめるのだった。
「わぁ……!」
「いい匂い~!」
「こらこら、これはお客様に渡す試供品ですからねー」
はしゃぐ子供達に対し、トーラは追加で作られたレモンパイを切り分けながら穏やかに窘める。外ではシトラスウォーターを勧める子供達とイズル達の声が聞こえ、賑わっている様子も伺える。
「練習した通り、丁寧な言葉と笑顔で! 忘れちゃダメですよ~」
「「はい、トーラ先生!!」」
集まった子供達の元気な返事を聞き、トーラは少し気恥ずかしく思いながらも元気よく頷く。そして、レモンパイの乗った皿を子供達のトレーへと乗せ、「行ってきてくださいね」と笑顔で送り出した。
子供達が楽しそうに向かっていくのと入れ替わりで、無くなったシトラスウォーターを貰おうとアランが空のデカンタを持って現れる。
「おつかれさま~。そっちはどうだい?」
「今の所、皆上手にできていますよ。最初は声の小さかった子もいたんですけど……」
その子に声の出し方をアドバイスすると、緊張も解れたのだろう、程よい大きさの声が出るようになった、とトーラは嬉しそうに話す。
彼女の明るい顔を見、釣られてアランもまた嬉しそうに微笑む。
「ふふっ、だからお菓子が飛ぶように無くなるのかもしれないねぇ」
アランの言葉に、トーラは再び少しだけ照れて頬を赤くした。
その時、一人のエルフの子が「あの……」おずおずと2人の元を訪れる。
「うん? 分からないことがある?」
身を屈め、視線を合わせて優しく問うアランだったが、その子の体調が少し悪そうに見えた。
「もしかして、お水かな? こっちにおいで。君はちょっと休憩だ」
「私、他に体調を崩した子がいないか見てきますね」
アランがその子を休憩できる場所へ連れていき、トーラが確認の為に見回りに。幸い頃合いを見計らいヨル達が子供達を順番に休憩させていた為誰も熱中症になっていなかった。
「この子は頑張り屋だね。でも、ちゃんとお水は飲もうね」
アランは、熱中症になりかけた子へシトラスウォーターを渡し、穏やかに諭すのだった。
その後木陰に連れて行き、冷やしたおしぼりを首筋に当てて休ませると、エルフの子どもはすっかり元気になった。
●香りと音楽を楽しんで
その日、エルナ・クルプファルツは相棒たるリスのプリニウスと共にシトラスフェスティバルに足を運んでいた。
「シトラスウォーターはいかがですか?」
ビタミンカラーのワンピースを纏ったドワーフの少女が、にこやかに飲み物を勧める。エルナは「ありがとう」と笑顔で受け取り、爽やかな風味を楽しんだ。
「れ、レモンパイやオレンジの試食はいかがですか?」
フェレットのハーフビーストらしき子供が、少し恥ずかしそうに声をかける。その後ろではヨルが見守ってくれている。
「レモンパイは出来立てだから、気を付けてほしい」
「えぇ、頂きます!」
ヨルから注意を聞いたエルナがふうふうと覚ましながら口にすると、爽やかな酸味と甘みのフィリングが口で解ける。サクサクのパイ生地と合う風味と食感に思わず口元が綻んだ。
バザーへと足を運ぶと色々な柑橘系由来の物が売られている。
耳をすませば、チルが迷子のアナウンスをしており、よく見ればセロンガードが彼と同種の子供と共に辺りを見渡していた。どうやらその子がアナウンスされている子らしい。
(他の冒険者も頑張っているのね)
その姿を微笑ましく思っていると、あまり人のいない出店を見つけた。売られていたのは珍しいライムのマーマレード。試食してみれば、独特の風味に蜂蜜が加わり個性的ながらさっぱりとした風味が美味しかった。
「ライムもこのように美味しくなるのですね!」
目をちょっと見開き、嬉しそうに微笑むエルナ。彼女の様子から、ちらほらと他のお客さんが訪れ始める。
その他にも親切な果物を買ったり、料理を美味しそうに食べたりしているうちに他のお客さんも積極的に動くようになった気がする。
(少しでも呼び水になればいいのですが……)
エルナは祭の喧騒に耳を澄ませながらそう願う。
……と、どこからともなく音楽が聞こえてきた。どうやら誰かが演奏を行っているらしい。
「ふふっ、いってみましょうか、プリニウス」
彼女は相棒のリスと共に演奏が行われている方へと歩き出した。
「なんだか、楽しくなるような音楽ですね」
シェルリアが聞こえてくる曲に目を細め、表情を和らげる。実は飛び入り参加したエルナが歌っているのだが、彼女が知る由もない。
彼女は磨いた〈話術〉でわかりやすく軽やかに呼びかけをし、寄付品を集めていた。途中何故か針が仕込まれた衣服を見つけたり(警備中だったフリューが入れた人間を捕まえてくれた)、壊れたおもちゃを貰ったりもしたがそれ以外はおおむね順調だ。
休憩がてらレモネードを貰い飲んでみると、心地の良い甘酸っぱさがとてもよかった。
(冷たくて、程よい味だから元気もでますね)
広場の時計を見ると、そろそろ終了の時間である。寄付品の担当者はここからが本番。シェルリアは「あと一頑張りっ!」と気合を入れた。
冒険者達が手伝ったお陰で、シトラスフェスティバルは好評のうちに幕を閉じた。依頼人であるナバルジャは、盛況だった様子にとても喜んでいたという。
●お祭り終わって……
「案外集まったわね」
Re:Leeはエヴァンとシェルリアが集めた寄付品と己が集めた寄付品を見、楽し気に頷いた。
「現時点で使えそうでない物は取り除いている。あと、針が刺さったままの衣服以外は大丈夫そう……かな」
エヴァンが記録を見ながら考えるとシェルリアがおもちゃの箱を覗く。
「こっちは全部大丈夫です。修理が必要な物はありますが……」
3人は手際よく洋服を『破棄する物』と『修理が必要な物』、『洗濯のみ必要な物』とに分けた。
Re:Leeは〈残留思念感応〉を使い、どんな意図で持ち込まれたのかを何となくでも感じ取ろうとした。大半は『子供達の為になれば』等温かい感情をこめて持ち込まれた物である事を知り安堵する。
おもちゃには『大事にしてね』とか『新しいお友達になるといいな』というような感情が込められており、彼女は1つ閃いた。
「このおもちゃの箱には、メッセージをつけてみようと思うのだけど……」
「それはいいアイデアですねっ!」
シェルリアはぱっ、と顔を輝かせて賛成しエヴァンも笑顔で頷く。一同は直ぐにでも渡せるおもちゃの箱に、『新しいお友達として、なかよくしてね』とメッセージをつけたのだった。
ちょうどその頃。警備を担当した者達も報告をしていた。
「迷子は複数でましたが、スリが1件、不審者1件……。熱中症になりかけた子が1人。それ以外の以上はなかったかと思います。馬の怪我もすぐに治癒できましたし」
とユークリアが纏めて報告すると、全員が少しだけ緊張を解く。
針をつけた服を持ち込んだ犯人とスリはこの後帝国兵がきっちり取り調べを行うそうだ。
「フリューはけっこうがんばっていましたね」
「そういうセロンガードさんも」
セロンガードとフリューが互いのがんばりを労いあっていると、アルマがチルにレモネードを飲ませながら
「時々木の上から声をかけてくれたチルさんも頑張っていたお陰で迷子解決が早く行ったんじゃないかな」
といった。実際迷子の特徴をチルが読んだ事でわかりやすかったのかもしれない。
「幸い、冒険者を含めたメンバーで回っていたお陰で、犯罪がへったかもしれない。お陰で沢山の人が安心して楽しめたと思う」
皆さんの協力に感謝します、と帝国兵が言えば、5人とも表情を少しだけ緩めた。
「みんな、よく頑張りましたね! さぁ、手を洗って席についてください。お待ちかねのおやつをあげましょう!」
アズルノが子供達を集め、片付けられたテーブルへと案内する。
皿にはフェスティバルで配られたお菓子がのっており、そのどれもが美味しそうだった。わいわい言いながら取り皿へと取っていく子供達の様子をイズルは安堵の笑みで見つめていた。
「みんな、とても上手だったよ」
イズルが褒めれば、子ども達も嬉しそうに笑う。トーラとレティシアは彼らが少し自信をつけたように見え、その成長が嬉しかった。
子供達に前もって指導していたお陰かトラブルはなく、みんな笑顔で仕事に励むことが出来た。ヨルとアランもその事に安堵していた。
「今後も、このような奉仕活動があるでしょう。今日学んだことを活かせば上手くいきますよ」
レティシアは、子ども達にそっと言うと「じゃあ、食べよっか?」とアランが茶目っ気交じりに提案しおやつの時間。みんなで楽しく美味しい時間を過ごす。そこに報告会を終えた警備班の冒険者も加わり、笑顔の花咲く時間になった。
「担架、使わずに済んでよかったのかも」
ふとチルが言えば、ヨルは「そうだねぇ」と相槌を打つ。彼の傍らには体調を崩したエルフの子がおり、「無理していたらお世話になっていたかも」と少ししゅん、としていた。
「どうしたの?」
不思議に思いチルが話しかけると、そのエルフの子は少し恥ずかしそうにヨルの後ろに隠れてしまった。ヨルは苦笑して頭を撫でてやる。
「恥ずかしがることは、ないよ。誰だって頑張りすぎちゃう事はあるからね」
エルフの子はおずおずと顔を見せると、ぽつぽつと理由を話し始めた。
寄付品の分別に当たっていた3人も大体作業を終え、おやつの輪に加わればヴァイオリンの音色が聞こえる。
どうやらイズルが子供たちのリクエストに応え、フェスティバルの間流れていた音楽を演奏しているようだ。
その盛り上がりに目を細めていたシェルリアだったが、目的を思い出す。
「まだ、お菓子かマーマレードってありますか?」
あるなら買って帰りたい、と申し出れば、少しだが買うことが出来た。
エヴァンとRe:Leeは、イズルが奏でるヴァイオリンにあわせ踊る子供達の姿をみていた。彼の姿を見つけたアルマが手を振れば、にこやかに笑いエヴァンは向かう。
「そっちもお疲れ様。はい、レモネード」
「ふふ、ありがとう」
アルマに渡されたレモネードを飲み、エヴァンは照れ交じりに微笑む。
(仲がいいわね)
と微笑ましく見たRe:Leeはレビジュがロバ耳を揺らしながら曲を楽しんでいるのを見るとくすり、と笑った。
「どうせなら踊っちゃえば?」
「え? わぁ!!」
Re:Leeに誘われ、レビジュもまた踊りに交じりヨルは指笛を吹く。
「偶にはいいですかね」
トーラが苦笑交じりに見つめていると、フリューが仔ウサギを抱っこしたまま音楽に合わせて体を揺らしている姿を目にする。チルやセロンガードも子供達に誘われ、ユークリアは「行ってらっしゃい」と見送る。
「皆で楽しい時間を過ごせて、よかったね」
「ええ」
アランがそっとトーラに言えば、少女は静かに頷いた。
イズルが奏でるヴァイオリンのメロディーに乗り、暫くの間子供達と冒険者達は楽しい時間を過ごすのだった。今宵は、よい夢がみられそうだ、といったのは誰だろうか。ともかく、素敵な一時が過ごせたことには間違いないだろう。
後日、孤児院には素敵なおもちゃとお洋服が届けられた。
孤児院の子供達は、大喜びでそれを受け取ってくれたようだ。
(イベントが上手くいき、オレンジやレモンが程よく消費された。良き哉、良き哉……)
ナバルジャも、この結果に満足しているようだった。彼は、報告書を読むと楽しそうに笑って
「また、あの子供達に手伝ってもらいたいのである」
と、手紙を書くのであった。
(終)
マスターコメント
みなさん、お疲れさまでした。
今回は皆さんのおかげで無事フェスティバルを行うことが出来ました。
元『メドゥの指先』構成員だった子ども達も冒険者さんたちに感謝しています。
今後も、レビジュ達元『テゼスポワル』の子供達は登場予定です。
また縁がありましたらよろしくお願いします。
イベントシナリオ易しい 報酬:標準15 / 5〜25人
2022年08月14日 15時53分16秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
成立してますねー!エヴァンです。よろしくお願いします。 今のところ【3】をメインに手伝いながら、他の事も出来たら良いなーって思ってます。 柑橘類を美味しく食べれたら最高です。
揃ったね!是非ともよろしくお願いするよー! 子供達の面倒見てあげたいから、【2】を中心にしていくね!
アルマだよ、どーぞよろしくねー とりあえず【1】の警備のお手伝いにいってみるね 場合によっては囮もできるし…?
イズルです。よろしくお願いします。 【2】にいきます
シェルリア・リトヴァールといいます、よろしくお願いします! 私は【3】でお手伝いしようと思ってますっ。 いっぱい集まるといいですねー!
チルって言います! よろしくお願いしまーす。 今のところ警備の人、足りてないのかな? 【1】のお手伝、一緒にします! 楽しいイベントになるといいね!
お手伝いしてくれるの? ありがとう、冒険者さんたち!! えーっと、ギルドの人からの伝言読むよ~。 『報告書(プレイング及びスキル、アイテムセット等)の提出は期限内にお願いします。また、白紙での提出にご注意ください』 宜しくお願いします!
トーラです。 わたしは2)で参加させて貰いますね!