【夏果】ドゥジケット準備会夏合宿~真夏の夜の肝試し
おおくまねこ
コメント 5
シナリオID:2329
オープニング
●愛の最終決戦! ウィリアム王子とレイウェスト皇子が合体!?
「ウィリアム! ウィリアム! ウィリアム! 貴方のその美しい瞳を私に頂戴! 二人でハネムーンに行きましょう!」
グリゼルダの凄い腹パンが直撃したウィリアムは物凄い勢いで後方へと吹き飛び、レイウェストに受け止められた。
「ねえウィリアム、新婚旅行はどこがいいかしら? 水に浮かぶ景色が綺麗なアキュアリスタ? 貴方にとっては国内旅行でつまらないでしょうけど、ラグラスの大聖堂というのも見てみたいわ。ああ、ヴェルクリエも悪くないわね。それとも、冒険者の貴方ならエドゥノーグとかの方が好みなのかしら? ブリークナで星を見るのもロマンチックね!」
陶酔した様子で一方的な愛を囁くグリゼルダ。ウィリアムは大剣を支えによろよろと身を起こし、血を吐いた。
「この戦いが終わったら、ストーカー被害者の保護法案を整備しないといけないな……」
「ウィリアム王子。軽口を叩いている場合ですか。このままでは二人共殺されます。何か策はないのですか?」
純白の花嫁衣裳に身を包んだレイウェストがウィリアムを庇うように前に立つ。ウィリアムは場違いだなと思いつつも、彼の横顔に見惚れてしまい、溜息を漏らす。14才年下の皇子の横顔はそれほどまでに美しかった。
「……策ならあるとも。レイウェスト、君の虹宝剣だ。それに、僕の残りのエーテルを全て注ぎ込む」
「なるほど! 合体攻撃ですね! 二人分のエーテルを合わせれば、あの年増も倒せるかもしれません!」
「そこの泥棒猫! 聞こえたわよ! 誰が年増ですって!? 私はまだ五十ピー才よ!」
激昂したグリゼルダは三本の腕を振り上げ、猛然と二人に突進してきた。
「チャンスはこの一回だけだ、合わせてくれ、レイウェスト!」
「ああ、ウィリアム王子! 二人の初めての共同作業をしましょう!」
「何をしようと無駄よ! 私の愛を受け止めて、ウィリアム!!」
「「必殺! 虹宝剣・ケーキ入刀アタック!!!」」
虹宝剣から放たれた眩い虹色のエーテルに、ウィリアムのロイヤルなエーテルが巻き付いて行く。虹宝剣から伸びた巨大なエーテルブレードがぶっといビームと化し、愛に狂える狂人、グリゼルダを飲み込んだ。
「ぐああああーー!」
●
「な、なななるほど、ウィリアムお兄様とレイウェスト皇子の戦いはこのような決着だったのですね……! ああ! お兄様ったら、そんなにもレイウェスト皇子のことを……! これはいけません! いけませんわ!」
商家の娘メイは自室で独り興奮しながら、ドゥジケット準備会のお友達から借りたドゥジンシを読み耽っていた。
その内容は、年明けにリーンエス王国を揺るがしたヴァルザード紛争の最終決戦の顛末。彼女の兄であるウィリアム王子とレイウェスト皇子の(偽装)結婚式の戦いを、現場に居合わせた冒険者からの綿密な取材で描いたノンフィクション戦記(作者コメントより)だったのだ。
メアリー本人は王国騎士団の指揮を取り、冒険者と共に謀反人であるヴァルザード侯爵の城を攻めていたため、ウィリアムとレイウェストの晴れ舞台を見ることは叶わなかったが、まさかこんな激しくも美しい戦いが繰り広げられていたとは……。冒険者ギルドの報告書の内容とだいぶ違う気がするが、行間を補うとこんな感じになるのだろう。
「わたくしの求める純愛も、もしかすると、そういったところに答えがあるのかもしれませんわ。ウィリアムお兄様とレイウェスト皇子も共に戦うことで絆が深まったようですし……」
苦楽を共にした二人の間に特別な絆が生まれるのは何も不思議なことではないわ、とは、このドゥジンを執筆したドゥジン作家の友人の弁である。その主張自体はある意味間違ってはいないが、着地点としてはだいぶ間違っていた。
「何か、カップルのピンチを演出できるような催しはありませんかしら……。わたくしもこの目で純愛を見てみたいのですが。ハッ! そうですわ。確か、市井の方々は夏に『肝試し』という風習を行うことがあると聞いたことがあります。そうですわ、肝試しですわ! 肝試しなら、わたくしの求めるものを見ることができるかも……! 早速、学園のお友達に相談してみましょう!」
名案を閃いたメアリーはパパッと変装を済ませ、自室の窓から脱走あそばされたのだった。
●ドゥジケット準備会・夏の合宿会議
「なるほど、ラミ×ウィルカップリング派の私としては、そのドゥジンシは史実ではなく作者の妄想だと主張いたしますが……メイ様のご提案はなかなか興味深いですわね。肝試し大会、ですか。確かに、肝試しに臨むカップルを観察することはドゥジン作家として見識を深めるよい機会かもしれませんわね」
ドゥジケット準備会の部長、『紫陽花の貴腐人』アルベルティ―ヌは紅茶のカップを置き、微笑んだ。
「ええ。そうですわ。我々の夏合宿で肝試し大会を主催するのです。避暑地でちょうどよい場所を見つけましたの」
メアリーが肝試しの候補地として見繕ってきたのは、この王国の王党派貴族の土地、アイオーラ領内にある古城だった。ここは百年ほど前、吸血鬼が根城にしていたといういわくつきの土地で、地元でも心霊スポットとして知られている土地なのだ。
「なるほど……アイオーラ領ですか。確かあそこの領主の娘はこの学園の生徒でしたわね。丁寧にお願いすれば、イベントに協力して頂けるかしら」
「ええ。わたくしからもお願いしてみるつもりですの」
(幸い、アイオーラ家の長女パーシア様はウィリアム王子の熱狂的ファンであることを公言している方ですの。ウィリアムお兄様のサイン入りの私物などを見返りにすれば、「商家の娘・メイ」として接触しても協力が引き出せるでしょう)
「では、ドゥジケット準備会初の夏合宿は、昼間はカンヅメ、夜は肝試しということで!」
「「異議なしですわ!」」
こうして、純愛観測をもくろむメアリー王女の真夏の夜の夢が動き出したのだった。
「ウィリアム! ウィリアム! ウィリアム! 貴方のその美しい瞳を私に頂戴! 二人でハネムーンに行きましょう!」
グリゼルダの凄い腹パンが直撃したウィリアムは物凄い勢いで後方へと吹き飛び、レイウェストに受け止められた。
「ねえウィリアム、新婚旅行はどこがいいかしら? 水に浮かぶ景色が綺麗なアキュアリスタ? 貴方にとっては国内旅行でつまらないでしょうけど、ラグラスの大聖堂というのも見てみたいわ。ああ、ヴェルクリエも悪くないわね。それとも、冒険者の貴方ならエドゥノーグとかの方が好みなのかしら? ブリークナで星を見るのもロマンチックね!」
陶酔した様子で一方的な愛を囁くグリゼルダ。ウィリアムは大剣を支えによろよろと身を起こし、血を吐いた。
「この戦いが終わったら、ストーカー被害者の保護法案を整備しないといけないな……」
「ウィリアム王子。軽口を叩いている場合ですか。このままでは二人共殺されます。何か策はないのですか?」
純白の花嫁衣裳に身を包んだレイウェストがウィリアムを庇うように前に立つ。ウィリアムは場違いだなと思いつつも、彼の横顔に見惚れてしまい、溜息を漏らす。14才年下の皇子の横顔はそれほどまでに美しかった。
「……策ならあるとも。レイウェスト、君の虹宝剣だ。それに、僕の残りのエーテルを全て注ぎ込む」
「なるほど! 合体攻撃ですね! 二人分のエーテルを合わせれば、あの年増も倒せるかもしれません!」
「そこの泥棒猫! 聞こえたわよ! 誰が年増ですって!? 私はまだ五十ピー才よ!」
激昂したグリゼルダは三本の腕を振り上げ、猛然と二人に突進してきた。
「チャンスはこの一回だけだ、合わせてくれ、レイウェスト!」
「ああ、ウィリアム王子! 二人の初めての共同作業をしましょう!」
「何をしようと無駄よ! 私の愛を受け止めて、ウィリアム!!」
「「必殺! 虹宝剣・ケーキ入刀アタック!!!」」
虹宝剣から放たれた眩い虹色のエーテルに、ウィリアムのロイヤルなエーテルが巻き付いて行く。虹宝剣から伸びた巨大なエーテルブレードがぶっといビームと化し、愛に狂える狂人、グリゼルダを飲み込んだ。
「ぐああああーー!」
●
「な、なななるほど、ウィリアムお兄様とレイウェスト皇子の戦いはこのような決着だったのですね……! ああ! お兄様ったら、そんなにもレイウェスト皇子のことを……! これはいけません! いけませんわ!」
商家の娘メイは自室で独り興奮しながら、ドゥジケット準備会のお友達から借りたドゥジンシを読み耽っていた。
その内容は、年明けにリーンエス王国を揺るがしたヴァルザード紛争の最終決戦の顛末。彼女の兄であるウィリアム王子とレイウェスト皇子の(偽装)結婚式の戦いを、現場に居合わせた冒険者からの綿密な取材で描いたノンフィクション戦記(作者コメントより)だったのだ。
メアリー本人は王国騎士団の指揮を取り、冒険者と共に謀反人であるヴァルザード侯爵の城を攻めていたため、ウィリアムとレイウェストの晴れ舞台を見ることは叶わなかったが、まさかこんな激しくも美しい戦いが繰り広げられていたとは……。冒険者ギルドの報告書の内容とだいぶ違う気がするが、行間を補うとこんな感じになるのだろう。
「わたくしの求める純愛も、もしかすると、そういったところに答えがあるのかもしれませんわ。ウィリアムお兄様とレイウェスト皇子も共に戦うことで絆が深まったようですし……」
苦楽を共にした二人の間に特別な絆が生まれるのは何も不思議なことではないわ、とは、このドゥジンを執筆したドゥジン作家の友人の弁である。その主張自体はある意味間違ってはいないが、着地点としてはだいぶ間違っていた。
「何か、カップルのピンチを演出できるような催しはありませんかしら……。わたくしもこの目で純愛を見てみたいのですが。ハッ! そうですわ。確か、市井の方々は夏に『肝試し』という風習を行うことがあると聞いたことがあります。そうですわ、肝試しですわ! 肝試しなら、わたくしの求めるものを見ることができるかも……! 早速、学園のお友達に相談してみましょう!」
名案を閃いたメアリーはパパッと変装を済ませ、自室の窓から脱走あそばされたのだった。
●ドゥジケット準備会・夏の合宿会議
「なるほど、ラミ×ウィルカップリング派の私としては、そのドゥジンシは史実ではなく作者の妄想だと主張いたしますが……メイ様のご提案はなかなか興味深いですわね。肝試し大会、ですか。確かに、肝試しに臨むカップルを観察することはドゥジン作家として見識を深めるよい機会かもしれませんわね」
ドゥジケット準備会の部長、『紫陽花の貴腐人』アルベルティ―ヌは紅茶のカップを置き、微笑んだ。
「ええ。そうですわ。我々の夏合宿で肝試し大会を主催するのです。避暑地でちょうどよい場所を見つけましたの」
メアリーが肝試しの候補地として見繕ってきたのは、この王国の王党派貴族の土地、アイオーラ領内にある古城だった。ここは百年ほど前、吸血鬼が根城にしていたといういわくつきの土地で、地元でも心霊スポットとして知られている土地なのだ。
「なるほど……アイオーラ領ですか。確かあそこの領主の娘はこの学園の生徒でしたわね。丁寧にお願いすれば、イベントに協力して頂けるかしら」
「ええ。わたくしからもお願いしてみるつもりですの」
(幸い、アイオーラ家の長女パーシア様はウィリアム王子の熱狂的ファンであることを公言している方ですの。ウィリアムお兄様のサイン入りの私物などを見返りにすれば、「商家の娘・メイ」として接触しても協力が引き出せるでしょう)
「では、ドゥジケット準備会初の夏合宿は、昼間はカンヅメ、夜は肝試しということで!」
「「異議なしですわ!」」
こうして、純愛観測をもくろむメアリー王女の真夏の夜の夢が動き出したのだった。
解説
状況:メアリー王女は肝試し大会をすればカップルの絆が深まるのでは、と考え、この目で『純愛』を観測すべく肝試し大会を企画しました。冒険者ギルドでお化け役のスタッフと、イベント参加者が大募集されています!
舞台:リーンエス王国南部・昔吸血鬼が住んでたいわくつきのお城
目標:ドゥジケット準備会主催の肝試し大会スタッフとして頑張る。あるいは挑戦者として肝試しに挑戦する。
※肝試しは友達グループやソロでも参加OKです。
●会場について
百年ほど前まで吸血鬼の居城だった海辺の古城。現在は廃墟となっているが、時々幽霊の目撃話があり、観光客から心霊スポットとして親しまれている。
シナリオ開始時点では地元領主の娘が雇った清掃員によりピカピカに掃除がされている。廃墟なので壁や床に穴を開けたりしてもOKですが、一般人観光客が怪我をするようなトラップの設置は禁止です。
●登場NPC
商家の娘メイ
ドゥジケット準備会の影のドン。その正体がメアリー王女であることは冒険者達の間では公然の秘密である。
肝試し大会ではカップルを案内する道案内役を務める。彼女と一緒に案内役も可能。
零時になるといずこかへと走り去る。
アルベルティーヌ
ドゥジケット準備会の部長。
男性ペアを見ると狂喜する。お化け役スタッフ。
レヴェリア(PNリザ)
OPノベル冒頭のドゥジン描いた犯人。布団のシーツ被っておばけ役。
ラティオとリオン
生贄枠。第三演劇部員。学園生カップルなので招待された。
ウィーズル
ドゥジケット準備会顧問。メイから目を離さないようにしている。ある意味彼女が一番肝を試されている。
ラミアス
学園教務主任。新人学園職員のウィーズルのサポートとして合宿に参加。合宿生の保護者枠。
一部学園生の間で王子との熱愛疑惑が囁かれている。
パーシア・アイオーラ
地元領主(伯爵)の娘。ウィリアム王子の使用済み羽根ペンと引き換えに企画に全面協力(イベントに必要なものはだいたい用意してくれる)。
肝試しではカップルの片方に「誘惑」(汎用スキル)を仕掛け、「愛の試練」を与えるセクシー女吸血鬼役を熱演。誘惑に屈するか否かは自己申告でOK。16才とは思えないナイスバディの持ち主。
観光客
いっぱいいる。何故か異様にガタイのいい男や重心が全くぶれない淑女が混ざっている。
●ドゥジケット準備会について
メアリーがドゥジン界の未来の為に創設した学園のクラブです。このシナリオを期に入部も可能です。
マスターより
こんにちは。おおくまねこです。今回は肝試し大会です。カップル向けの王道イベント(王族なだけに)ですが、カップル以外の方のご参加も歓迎です。お化け役のスタッフや大道具係も大募集。昼間は昼間でアシスタントとか募集してそうですが、昼間の缶詰シーンはリプレイで描写の余裕はないかもです。肝試しがメインです。
なお、学園生NPCのマリリンはドゥジケット準備会の部員では(まだ)ないため、今回は登場しません。あとシナリオ関連NPCって最大三名までしか登録できないので……。
リプレイ
●
数日前。
「へぇ、アイオーラ領で肝試しか……クククッ、随分面白そうだな。デートにはもってこいだな」
冒険者ギルドで「肝試し挑戦者募集中」のチラシを見たダチュラはニヤリと笑った。
「えー、だって肝試しってことは全部作り物ってことでしょー? そんなの余裕だよー!」
ダチュラの嫁、ハルノ・ヒビキはパタパタと手を振った。
「お、言ったなヒビキ? じゃあ二人で参加ってことで申し込みしとくぞ」
「オッケー!」
●
そして現在。
「わひゃっ!? け、結構本格的ですね?? とはいえ人が仕掛けてるものだし…わばー!!?」
裏返った悲鳴を上げ、ダチュラにしがみつくヒビキ。見事なフラグ回収である。一方、ダチュラは演出担当と大道具係の渾身の仕掛けの数々にも全く動じず、ヒビキのオーバーリアクションを楽しげに観察していた。
「ちょ、ちょ、あの剣が突き刺さってる袋の中身、本物のヒトじゃありません? 本物の血の匂いがするんですけど!」
「んー。錆びた鉄釘とか混ぜてるんじゃね?」
「壁に人の顔が!? 祟りじゃあああ!」
ドカッ!
「おっと」
ダチュラはヒビキに猛烈なタックル(本人は抱きついてるつもり)を食らわされたが、しっかりと受け止めた。
「どうどう」
「うわーん! 怖いよー!」
「よしよし」
ヒビキの頭を優しく撫でるダチュラ。
「うわああああ!? 吸血鬼だああああ!」
こちらはヒビキではなく、一般人観光客の悲鳴だ。ダチュラの顔を見るなり、脱兎の如く逃げ去る近所の少年たちの背中を見て、ダチュラはちょっと傷付いた。
●
「ま、まぁ思ったより楽しめましたね! これくらいなら余裕でしたけど!!」
肝試しが終わった後、ヒビキは胸を反らした。
(俺は幻覚でも見ていたのかな?)
「特に怖ぇもんはなかったが……途中から俺達の後ろをついて歩く真っ青な女性には寒気を感じたな。…ん? ヒビキ見てないのか? それとも……見えなかったか? 今もついてきてヒビキの後ろに……」
ダチュラは天気の話題でも口にするように自然にそう言うと、ヒビキの背後の何もない空間を指差した。
「んぎゃーー!!」
顔面蒼白になったヒビキは逃走した。ダチュラは走って追いかけ、彼女を抱き留めて種明かしをする。
「嘘だけどな♪」
「って、冗談なのかーい! ひどい!!」
頬をぷくーと膨らませ、ダチュラの脇にパンチするヒビキ。どこで覚えてきたのか、体を左右に揺すりながら繰り出されるフックの連打は割と痛かった。
「お詫びとして美味しい物を要求します!!」
「おう。確か、海の近くに屋台が出てたな。ちょっと冷やかしていくか」
「はーい♪」
あっさり機嫌を直したヒビキは、ダチュラとイチャイチャしながら、浜辺へと向かったのだった。
●
「流石リザ嬢、今回もいい作品だった。ウィル×レイ、大いにアリだ」
「ありがとう! 今回は私としては珍しく、王道でせめてみたわ! エフレム、ヨゼフ、レイウェスト皇子の三角関係にしようか迷ったのだけど」
リザの新作ドゥジンを読了したレタラは満足そうに頷いた。世が世なら作者が王族侮辱罪でムショにぶち込まれそうな代物だが、なんと非公式ながらもメアリー王女のお墨付きである。もっともリザは、メアリー王女がメイと素性を偽ってドゥジケット準備会を組織していることを知らないのだが。
「レタラ様のレイ×エフ本もなかなかのお手前ですわね。皇子が献身的な近衛騎士に次第に惹かれていき、裏切られた後も彼のぬくもりを覚えている様子が、とてもリアルに描けていると思います」
「ありがとう、アルベルティ―ヌ嬢。オレも今回の企画を通して、一層精進を図るつもりだ」
レタラの眼鏡がキラリと光る。肝試しに臨むカップルの観察はドゥジン作家として見識を深めるまたと無い機会になるだろう。彼は肝試しに挑むカップル達の姿を事細かに記憶し、ドゥジンのネタとして持ち帰るつもりである。
●
「私はスタッフやりますねっ。相手いないからなんて寂しい理由じゃないです。ないです」
おひとり様シェルリアは特技を生かし、壁に飾るそれっぽい雰囲気の絵を描いたり、チラシに載せるイラストを担当することになった。
「俺はメイの護衛も兼ねて案内役を務めよう」
レタラは受付役を申し出た。案内役(兼護衛)という名目でカップルについて回れるおいしいポジションである。
「ありがとッス。とても助かるッス。お礼に今回のお兄ちゃんレポートは危険度0でつけとくッス」
「お兄ちゃんレポート?」
顧問と不思議なやり取りを挟んだ後、レタラは礼服と黒マントに着替え、吸血鬼っぽい雰囲気を出してみた。
「折角ですから案内役として、この古城に相応しい格好をしてみるのは如何でしょうか? メイ嬢」
レタラはメイにも着替えを勧めた。彼が示したのはクラシックなゴスロリドレス(アイオーラ家提供)だ。
「あら、素敵なドレスですわね。魔女の装いで案内をしようかと思っておりましたけど、せっかくですからこちらにしましょうか」
メアリーはレタラの勧めに応じ、黒いゴスロリドレスに着替えた。
「どうかしら。夜の女王の雰囲気が出ていて?」
「ええ、良くお似合いです」
●
「カップルを対象とした肝試し大会ですか。成程、脅かす側が軒並み美人揃いともなれば誘惑や魔性には事欠かないでしょう」
ヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーンは肝試しの企画書を見て唸った。面白そうなので、自分も参加することにする。彼女もドゥジケット準備会の部員なので、スタッフ参加を表明すると歓迎された。
「これで掃除したつもりですの? 笑わせないで。メアリー王女がお見えになるのよ! お年寄りのジョギングの方がまだ気合が入っていてよ!」
会場では、この領地の領主の娘であるパーシアと、彼女に雇われた使用人達が熱心に会場のセッティングをしていた。彼女も『商家の娘・メイ』の正体を知っているのか、かなり気合を入れて準備をしている様子だ。パーシアもパンクリアース学園の生徒だが、ヴァレリアとは学園がかなり離れているため、パーシアの顔を見るのは今回が初めてだ。ヴァレリアが見た所、パーシアからは伯爵令嬢らしい高貴な雰囲気が漂ってはいるが、少々お転婆というか、頑張って淑女を演じている感が見え隠れしている。
「アイオーラ領の名は存じておりますが、ご令嬢の顔を見るのは初めてですね。皆様の手並みの拝見といたしましょう」
●
「私は水に因んだ幽霊、或いはマーメイドの類を演じて誘惑といきましょう」
肝試し当日。ヴァレリアはマーメイドのコスプレをし、中庭にある池の石の上に待機していた。ちなみに胸当てがしっかり貝殻になっているセクシーな衣装である。
しばらくすると、一般人と思しきソロ参加の男性が中庭を通りかかった。
(作戦開始です)
「あら、素敵な方、こっちに来て、私といいことをしませんか?」
ヴァレリアは鈴を鳴らすような声色で男へと誘いつつ、水上歩行の魔法を使い、池へと足を踏み出した。
「お、色っぽいお姉ちゃん。お誘いとあらば喜んで……」
気をよくして、男性は池に足を踏み出してきた。だが、その直後……。
(引っかかりましたね)
邪悪な笑みを浮かべるヴァレリア。
「ぬわー!!」
どぼーん!
まんまと罠にかかった男性は池に沈んだ。その後、ヴァレリアに救助された男性は「永遠の愛」と書かれたスタンプをおでこに押された後、コースに戻された。
●
「あんたが巨乳好きだとは知らなかったわ。大きければ誰でもいいのね」
「ラティオ先輩、すみませんでした! あんまり色っぽかったからつい……!」
「もう知らない。『リーンエスの耳』にでも応募してくれば? 頑張ったら乳牛が貰えるらしいわよ」
「待ってください、せんぱーい!」
ナキルが肝試し会場の様子を観察していると、喧嘩したっぽい若いカップルが会場を去って行くのが見えた。
「あいつら、何があったんだ?」
「あ、第三演劇部の先輩達だね。中で何かあったのかな?」
ナキルとエフィルミアは首を傾げた。
「ふふふ、あれは愛の試練の敗北者達ですわ。残念ながら、あの方達の絆は試練に耐えきれなかったのです。貴方達はどうでしょうか? 申し遅れました、わたくしはメイ。このお城の案内人を務める者ですわ」
灯りの紋具で顔を照らしながら登場したのは眼鏡をかけた黒いゴスロリドレスを着た少女であった。
(なあミア、この子……)
(うん、メアリー王女だよね)
変装をしているようだが、たぶんメアリー王女だろう。ウィリアム王子帰還祝賀会でメアリーを直接見かけたことがある二人はすぐ少女の正体に気付いた。が、本人がメイと名乗っているので、二人は空気を読んで気付かないフリをした。
「ようこそ、忌まわしき怨念が今も残る吸血鬼の城へ。彷徨える悪霊達は、あなたがたの仲に嫉妬していますわ。どうかパートナーから最後までお手をお離しにならぬよう……」
「こんばんは、えっと、メイ。今日は案内役なんだな。よろしく」
「よろしくお願いしまーす!」
●
「ナキルくん、こういうのは何が来るか分からないから怖いんだよ!」
エーテルを飛ばしまくり、エフィルミアは城の内部構造や敵(?)の配置を確認していく。あっという間に一階の地図を作り上げたエフィルミアは、「完璧な私、どう?」と言わんばかりにドヤ顔で胸をを張った。
「いや、無粋だろ。折角の祭りだから、楽しもうぜ」
ナキルは呆れたように溜息をついた後、エフィルミアに手を差し出した。
「うー……じゃあナキルくんには教えないでおく!」
エフィルミアはむくれた後、ナキルの手を握り返した。
●
「いよいよ、この城の主との対面ですわ。パートナーから決して手をお離しにならぬよう……」
メアリーが警告した後、レタラが重い扉を開く。部屋の中にいたのは……。
「ふふふ、ようこそ我が居城へ。我が名はユリア。百年の時を経て蘇った、この城の城主ですわ」
「……えー」
意外な人物が吸血鬼を演じているのを見て、ナキルはチベスナ顔になった。確かこの上級生は、春頃に第三演劇部に因縁を付け、一悶着起こした第二演劇部の部長だ。
「グルゼルダ? だっけ……暇なのかな?」(ひそひそ)
「ナキルくん、パーシアさん! パーシアさん! 失礼だよ!」
エフィルミアは慌ててナキルの名前の覚え間違いを訂正した。
「グリゼルダじゃねーよ! ぶっ殺すぞ!」
ナキルの全力失礼少年な発言にパーシアは激怒した。グリゼルダはウィリアム王子を襲撃し、眼球を奪おうとした極悪テロリストの名である。ウィリアムの瞳に恋しているという点はパーシアと同じだが。
「あ」
パーシアは素の自分を王女(案内人なのでレタラ共々この場にいた)に見られてしまったことを気付き、コホンと咳払いをして演技に戻った。
「ようこそ、吸血鬼ユリアのお城へ。あら、可愛い狩人さんね。私の眷属にしてしまおうかしら」
パーシアは妖艶な仕草でナキルの元へと歩み寄る。身長差があるため、ちょうどナキルの目線あたりの高さで豊満なバストが揺れていた。
「今見惚れてなかった?」
「いや、別に見惚れてとかいねーしっ!」
ジト目で睨むエフィルミアに対し、ナキルは強く反論した。
「つぅか、ミアの方がアイツより可愛いし魅力的なんだから比べるまでもないだろ」
ナキルは礼儀作法を置き去りにし、エフィルミアに弁解する。
(本当に失礼なガキだな、こいつは……顔と名前覚えたからな)
パーシアの白い目も、今のナキルには見えていない。
「本当にそう思ってる?」
「世界で一番可愛いと思ってるけど」
ぽつりと呟くナキル。この場には王女様もいたのでさらに失礼指数が上昇した……というのは無粋であろう。
「私が可愛くて魅力的なのは当然なんだけど!!」
「……なんで怒ってるんだ?」
(ナキルくんが誘惑に負けず私だけを見てくれるのは嬉しいけど素直になるのも悔しい!)
複雑な乙女心が分からないナキルは、首を捻ったのだった。
●
「ミレイユからの招待とあれば、断るわけには行かないな。メアリー王女も関わっているようだし」
「ここはアイオーラ伯爵家の領地だそうだ。さて、ミレイユ達はどんな風に盛り上げてくれるのかな?」
ジュストの妹、ミレイユ・ヴェルジーから肝試し大会の招待状を受け取ったローザリカ・L・ディオールとジュスト・ヴェルジーは二人で肝試し会場へと向かっていた。ちなみにローザリカもイベントの仕掛け人であるドゥジケット準備会の部員であるが、ここのところ冒険者稼業が忙しかったので企画の中身についてはノータッチである。
「ようこそ、忌まわしき怨念が今も残る吸血鬼の城へ。私は案内役のメイと申します」
「御機嫌麗しゅう、メイさん」
「御機嫌麗しゅう、ローザリカ様。今日は婚約者様とご一緒ですのね」
「御機嫌麗しゅう、メイさん。黒のドレスもお似合いですよ。ミレイユの兄のジュストです。いつも妹がお世話になっています。今日は楽しませてもらいますね」
「ええ。存分にお楽しみ下さいませ」
ローザリカとジュストが王女に挨拶すると、メアリーはニッコリ笑った。バレバレの変装ではあったが観光客の目もあるので、二人は王女とは呼ばずメイ呼びで通した。
カンテラを持った案内役の王女に先導され、ローザリカとジュストは薄暗い城をゆっくりと進んでいく。
「彷徨える悪霊達は、あなたがたの仲に嫉妬していますわ。どうかパートナーから最後までお手をお離しにならぬよう……」
●
(さぁ、お兄様もお姉様も皆様存分に怖がって下さいまし!)
目の部分に穴を開けた布団のシーツを被り、モブになりきっていたミレイユは兄と義姉の登場にほくそ笑む。ミレイユ自身はどちらかと言うと可憐な容姿をしていたので、脅かし役ではなく、舞台説明や演出面で企画に尽力している。
「おや、あの袋は……まるで人が入ってるみたいだな。血の匂いもするじゃないか」
ジュストは床に転がる大きな袋を指差した。人間大の袋に剣が突き刺さり、赤い液体が内側から滲み出ている。
「あの壁の染み……ロゼ、まるで人の顔のように見えないか?」
「なんだか気味が悪いな……」
怯えたそぶりを見せたローザリカはそっとジュストの腕をとった。
(ふふふ、お姉様ったら怖がってる、怖がってますわ……)
ミレイユはほくそ笑む。他にも意味深に半開きになった扉や、生肉が乗った皿に動物の血が入ったワイングラス、片方だけ取り残された靴など、様々な手法でミレイユは恐怖を演出する。ホラーテイストの小説や薄い本、ミステリー研究部への取材など、下調べはバッチリだ。
●
(とりあえず腕をとってみたが、その……やはり怖がるくらいが可愛らしい、のだろうか。
無い弱みを晒すのもどうかと思うし悩ましい。幽霊に恐怖したことはないのだが……)
ジュストの腕を取ったローザリカは悩んでいた。実はローザリカは別に幽霊など怖くはない。仕事柄、死霊術師と交戦する機会も多い。が、全く怖がらないのも可愛げがないかと思い、思い切ってジュストの腕を取ってみた次第である。
「いよいよ、この城の主との対面ですわ。パートナーから決して手をお離しにならぬよう……」
二人はやがて、真っ赤な薔薇が床一面に散らばり、妖しいお香が焚かれた部屋に行きついた。部屋の中心に立っていたのは、胸の谷間と背中が大胆に開いたドレスを纏ったパーシアだ。ジュストとローザリカとは学園で同学年、実家のランクも同ランク・かつ同派閥(王党派)であったので、互いに顔見知りであった。
「ふふふ、ようこそ我が居城へ。我が名はユリア。百年の時を経て蘇ったこの城の城主ですわ。あら、そちらの殿方はなかなか整った顔立ちをしておりますわね。私の眷属にして差し上げましょう……」
妖艶な笑みを浮かべ、パーシアはジュストに歩み寄ると、彼の顎にクイっと手を当てた。
「美しい吸血鬼だ。さすがアイオーラ家の姫君。だが俺には――ん?」
その時、我慢の限界を超えたローザリカがパーシアを突き飛ばし、ジュストの腕を絡め取った。そして、尻餅をついているパーシアに向け、堂々と宣言する。
「コレは僕のモノだ」
(許せるわけがない! しかも相手が悪い!)
「そりゃあ僕の方が上だとは思うが?? 被っているんだ、いろいろと!!」
元々ローザリカは男勝りな所があるパーシアに共感すら感じていたが、独占欲と負けず嫌いに火がついてしまったのだ。
「え、なんで張り合う必要が?? キャラ被……いや、似ている所はあると思うけど、大分趣が違うんじゃないかなぁ」
ジュストもある程度パーシアに対して似たような印象を持っていたらしい。「容姿は美しいが、一般的な貴族男性受けは悪そうな変わった性格をしている貴族女子」という括りでみれば、確かに二人は似ているかもしれない。だが、ローザリカと異なりパーシアはボス猿気質があったりするため、細かい芸風はかなり異なる。そのあたり、ジュストはちゃんと理解していた。ジュストがローザリカに「見た目は最高なのになぁ……」と(本人に聞かれたら「法廷で会おう!」と言われかねないことを)思っていたのも、今となっては昔の話だ。
「あらあら、ディオールさんはずいぶんとやきもち焼きですのね。お可愛いこと」
嘲笑するような笑みを浮かべ、パーシアはジュストに投げキッスを送った。
「こ、この……泥棒猫ッッ!!」
ローザリカが一度は行ってみたかった台詞を叫ぶと、パーシアはおほほ、と高笑いをした。
「ご安心を。わたくしはウィリアム王子一筋ですから。これはお芝居ですからね?」
肝試しが終わった後、ジュストは我に返って不機嫌になったローザリカをなだめるのに大層苦労することになった。
●
「メイ様、御機嫌麗しゅう」
「あら、シルヴィア様。御機嫌麗しゅう」
「それは失礼しました、メイ」
肝試し会場にやってきたシルヴィア・A・カペルは入ってすぐの所にいたメアリー王女に一礼をした。それは王族相手にしては極めて簡素な礼だったが、メアリーは特に腹を立てた様子はない。今メアリーは世を忍ぶ仮の姿である「商家の娘メイ」として活動しているからだ。
「シルヴィア様、そちらの殿方はどちら様ですの?」
メアリーは、シルヴィアの隣に立っている男性――エル=バ=ノイアンを値踏みするようにじろじろ見ると、期待に満ちた眼差しをシルヴィアに送ってきた。
「ノイアンだ。初めまして」
ノイアンは王女とは特に親しくはないため、目の前にいる眼鏡の少女が身分を偽っている王女であることには気づいていない。
「その……私の恋人です。できれば内密にお願いします」
シルヴィアは顔を赤らめ、小声で答えた。
「あらあら、まあまあ! はじめまして、ノイアン様! わたくしはメイと申します! もちろん、心得ましたわ! その代わり、今度ぜひ学園で詳しくお話を聞かせて下さいませ!」
メアリーはシルヴィアの返答にニッコリ微笑んだ。
●
「こちらのお部屋が、吸血鬼が夜な夜な眷属達を集めて晩餐会を催したとされる食堂でございますわ」
メアリーはカンテラを持ち、シルヴィアとノイアンの横からついてきていた。その仕草は王女らしくエレガントなものだったが、どんな些細な挙動も見逃すまいという決意が感じられた。
(これは恥ずかしい姿は見せられないな……)
シルヴィアは密かに決意する。
(幽霊は怖くないんだ、暗闇から突然何かが出てくるのが怖いだけで……)
「そういえばシルヴィアは、こういうものが苦手だったな。生きているものやアンデッドのほうがよほど脅威だと思うのだが……?」
「生者やアンデッドには先手を取れるだろう?」
シルヴィアはそう言いつつも、ノイアンの背中に隠れ、彼のマントの裾をしっかり掴んでいた。メアリーは特に二人に干渉はしてこなかった。ただ、慈母の如き微笑みを向けるのみである。
「おや、あれは……人形か?」
「……」
二人が城の奥へと進むと、薄暗い通路のど真ん中に椅子が置かれており、赤い服を着た女性の人形が項垂れた姿勢で縛られていた。さらに、胸にはナイフが突き刺さっている。二人が椅子の横を通過しようとすると、人形が突然動き出し、シルヴィアの腕をがしっ! と掴んだ。人形の正体は生きた人間――ルアンナ・ミュラーだったのだ。
「きゃあああ!」
びっくりしたシルヴィアはたまらずノイアンにしがみつく。
「「グッド!」」
期待通りのリアクションが見れて満足したメアリーとルアンナはサムズアップした。
「あ、これお守りです。あの吸血鬼に、大事なものを取られないように……」
ルアンナはシルヴィアが落ち着いた後、アイオーラ領家の家紋を象ったキーホルダーを二人へと手渡した。
「ありがとう、ルアンナ。それと、先ほどの醜態はどうか見なかったことに……」
「ふふ、大丈夫です。言いふらしたりしませんよ」
シルヴィアはお守りを恥ずかしそうに受け取った。
「いよいよこの城の主との対面ですわ。パートナーから決して手をお離しにならぬよう……」
メアリーがそう言うと、後ろからついてきていたレタラが扉を開けた。
「ようこそ、我が城へ。私はこの城の主、ユリア。さあ、貴方達も私の眷属にしてあげましょう……」
扉の奥で二人を待っていたのは、胸の谷間と背中が大胆に開いた赤いドレスを着たこの領地の領主の娘、パーシア・アイオーラであった。意外な人物の登場にシルヴィアは驚いたが、「その格好と設定は伯爵令嬢として流石に……」という言葉は呑み込んだ。顔見知りであるシルヴィアを前にしても、全く照れた様子がないのは流石演劇部の部長という所ではあるが。
「あら、そちらの殿方は綺麗な髪をしていますわね。わたくし専属の使用人になりません?」
パーシアは妖艶な笑みを浮かべ、ノイアンの元へと歩み寄る。
「愛の試練ですわ! さあ、お二人の絆をわたくしに見せて下さいませ!」
メアリーは早口で叫んだ。
「あ、愛の試練??? いやすまないが、俺の好みからは少し外れるというか……」
ノイアンは無表情のまま、手でパーシアの接近を制止した。
ぱちぱちぱちぱち。その瞬間、肝試しスタッフたちの拍手が巻き起こり、お祝いされながらシルヴィアとノイアンはゴールインした。
なお、その後シルヴィアとノイアンがドゥジケット準備会に提出した入部届は、拍手と共に受理されたという。
●
「わたくしはこの城を支配する夜の女王、ユリア……」
肝試し大会の前日の夜。パーシアは精神を集中し、吸血鬼役の台本を暗記していた。
「ふう。まあこんなところか。嫌な役回りだが、メアリー王女とは仲良くしとかないとな……未来の義妹だしな」(MS注:パーシアの妄想です)
台本を置き、ぐーんと背伸びをするパーシア。その時、彼女は背後で人の気配がすることに気付いた。パーシアが振り向くといつの間にか窓が開いており、真紅のドレスを着たルアンナが立っていた。
「あら、あなたは確か……」
「紅の魔女、ルアンナ・ミュラーです! ですが、名前を覚える必要はありません。吸血鬼、滅ぶべし!」
「は?」
ルアンナはキリッとした表情で宣言すると、ギザギザした鉈を振り上げ、突然パーシアへと斬りかかった。
「きゃあああああ!?」
パーシアは驚愕の表情を浮かべ、防御姿勢をとって硬直している。間合いを詰めたルアンナはそのまま鉈を振り下ろし――寸止めした。
「驚きました? ドッキリです★」
どたどたどたどた!
「お嬢様! どうされました!?」
主の悲鳴を聞きつけ、すっとんでくるパーシアの使用人達。パーシアが「ちょっと大きいコウモリがいただけです、窓から逃げました」と告げると、使用人達はすごすごと退室していった。
……。長い沈黙が場を支配した。
「……ええと、紅の魔女ルアンナ・ミュラーさん? 少しお話しましょうか」
パーシアは額に青筋を立て、笑顔でくいっとテーブルを指差した。
……。
「まったく、わたくしが寛大だから良いものの、アイオーラ伯爵家の次期当主に向かって襲い掛かるなんて……いくら学園のOGでもあまり羽目を外されると困ります……」
「はい……調子に乗り過ぎました……」
その後、ルアンナは(後輩に)めっちゃ怒られた。
●
「原稿執筆しつつネタも補給するなんて、ドゥジケット準備会らしい素晴らしい合宿ですね! ネタの……いえ、皆で楽しむ為に頑張りましょう!」
シェルリア・リトヴァールは腕まくりした。ビバ部活。シェルリアの学園ライフは絶好調だ。
「ラミアス先生、よろしくお願いします!」
「ええ、これも良い社会勉強です。頑張って下さいね」
シェルリアが挨拶すると、ラミアス・クルスロードは教師として模範的な返答をした。彼は別段ドゥジケット準備会の顧問というわけではないが、学園職員に赴任して初めての学園外部でのサークル活動(しかもメアリー王女までいる)で死にそうになっているウィーズルをサポートするため、今回の合宿に駆け付けてくれたのだ。
(ラミアス先生のネタ、いえ、先生とも仲良くなれると嬉しいですっ。あるいは、今回の件もウィリアム王子から何か頼まれているのかもしれませんね!)
「はっ!」
そう思った瞬間、シェルリアの脳裏にウィリアムとラミアスの会話(妄想)がありありと浮かんできた。
――ラミィ、僕の元部下をよろしく頼むよ。あとついでに妹に近づく悪い虫は皆殺しにしておいてくれ。
――ええ、分かっていますよ。ウィル。私の眼鏡ビームで王家に仇為す者は皆殺しです。その代わり、後でご褒美を下さいね(はぁと)。
「くっ! なるほど、お二人の間でそんなやり取りが……! 早速ネタが浮かんできました! ラミ×ウィルに挑戦もいいかも知れません! ラミアス先生! 先生の学生時代のお話を聞かせてもらえないでしょうか!」
「? なんですか突然。まあ、構いませんが……」
突然身を乗り出してきたシェルリアの様子に、ラミアスは首をかしげたのだった。
●
「おい、イル。おかしくねぇか? あの連中、妙に殺気立ってるというか……『カタギじゃない』気配がするんだが」
ペルゼィックがこっそり指差したのは、身長が二メートルぐらいありそうなムキムキマッチョが二人と、やけに眼光が鋭い女性という、ちょっと異様な三人組の観光客だ。三人とも首を動かさず、視線だけで周囲を警戒している様子や、歩いても重心が全くぶれない佇まいなど、どう見ても只者ではない。それもそのはず。彼らは実はメアリー王女を護衛するために彼女にも内緒でこっそり観光客に紛れ込んでいる、王家騎士団の精鋭達である。
「学園からの依頼だし、各家からも護衛に来てる人達なんじゃない?」
イズル・M・ヴォルゴールは天使のように無邪気な笑顔を浮かべていた。そして、そんな二人の様子を逆に観察している曲者達がいた。ドゥジケット準備会のドゥジン作家達である。
「! シェルリアさん、リザ。あの方々をご覧くださいませ!」
『紫陽花の貴腐人』アルベルティ―ヌの声には、隠しきれない歓喜が滲んでいた。
「冒険者の男性二人組。なるほど……」
「あの方達はもしや……愛し合っているのでは!?」
リザとシェルリアが頷く。二人共チラシの「お友達グループでの参加も歓迎です」の文言は完全に忘れてしまったようだ。
「やはり同性カップルか……記憶術のスキルを装備して来た甲斐があった。暗視もバッチリだ。暗がりの中で何が起きようとも、オレは決して見逃さないとも」
レタラの眼鏡がキラリと光る。ドゥジン作家達が盛り上がっていると、顧問が遠慮がちに声をかけてきた
「皆さん盛り上がってるとこ悪いんスけど、あのお二人はスタッフ参加希望らしいッス」
「「え!?」」
●
「せっかくだし、最後に二人でコースの点検してみようぜ」
肝試し大会終了間際、ペルゼィックはイズルに声をかけた。
「うん、いいよ」
イズルは快諾した。受付で案内役の王女とレタラに声をかけると、二人も快諾してくれた(そして何故かついてきた)。
……。
「どうして人気のない方に行くんだよっ?!」
キレ気味に叫ぶペルゼィック。突然、イズルが何かに手を引かれるかのように、ふらふらとコースアウトし始めたのだ。
「え、だってスタッフさん呼んでるし」
「そっちには誰もいないだろ! 怖ぇこと言うな!」
その時突然、二人の周囲に白銀と黄金の二色のエーテルの塊が発生した。二色のエーテルは男女の形をカタチ取り、優雅にダンスを開始する。
「あ、これ俺のスキルのせいだ」(てへぺろ)
どうやらここが心霊スポットのせいか、イズルの 『招霊呪怨縛』が暴発してしまったらしい。つまり、この半透明な人々はホンモノである。
「元に戻してこい!」
ペルゼィックは鋭いチョップをイズルの額に叩き込んだ。
「ようこそ、吸血鬼のお城へ……あら?」
ゴール手前にいた吸血鬼役のパーシアは二人を見て怪訝そうな顔をした。が、気を取り直し、誘惑を開始する。
「……ふふふ、どちらか片方だけ、私の眷属にして差し上げましょう。さあ、醜く争うといいですわ」
「あ、終わりました終わりました。俺らはコースの点検にきたスタッフです」
イズルはパタパタと手を振る。
「あら、なんだ。そうでしたの。それならそうと早く言ってくださいませ」
パーシアはセクシーポーズをやめ、息を吐いた。
●
「なかなか面白かったね。あ、ジーク、髪にゴミがついてるよ」
コースの点検が終わった後、イズルはペルゼィックの髪についていたゴミを取ろうとした。角度によっては、二人が接吻をしているように見えなくもない。
「「きゃああああああ!!!」」
「ありがとう、イル。……ん? 今なんか悲鳴が聞こえたな。演出か?」
「さすが心霊スポットだね。本物もいるのかな?」
無論、悲鳴は幽霊などではなくドゥジン作家達(王女含む)のものであったことは言うまでもない。
数日前。
「へぇ、アイオーラ領で肝試しか……クククッ、随分面白そうだな。デートにはもってこいだな」
冒険者ギルドで「肝試し挑戦者募集中」のチラシを見たダチュラはニヤリと笑った。
「えー、だって肝試しってことは全部作り物ってことでしょー? そんなの余裕だよー!」
ダチュラの嫁、ハルノ・ヒビキはパタパタと手を振った。
「お、言ったなヒビキ? じゃあ二人で参加ってことで申し込みしとくぞ」
「オッケー!」
●
そして現在。
「わひゃっ!? け、結構本格的ですね?? とはいえ人が仕掛けてるものだし…わばー!!?」
裏返った悲鳴を上げ、ダチュラにしがみつくヒビキ。見事なフラグ回収である。一方、ダチュラは演出担当と大道具係の渾身の仕掛けの数々にも全く動じず、ヒビキのオーバーリアクションを楽しげに観察していた。
「ちょ、ちょ、あの剣が突き刺さってる袋の中身、本物のヒトじゃありません? 本物の血の匂いがするんですけど!」
「んー。錆びた鉄釘とか混ぜてるんじゃね?」
「壁に人の顔が!? 祟りじゃあああ!」
ドカッ!
「おっと」
ダチュラはヒビキに猛烈なタックル(本人は抱きついてるつもり)を食らわされたが、しっかりと受け止めた。
「どうどう」
「うわーん! 怖いよー!」
「よしよし」
ヒビキの頭を優しく撫でるダチュラ。
「うわああああ!? 吸血鬼だああああ!」
こちらはヒビキではなく、一般人観光客の悲鳴だ。ダチュラの顔を見るなり、脱兎の如く逃げ去る近所の少年たちの背中を見て、ダチュラはちょっと傷付いた。
●
「ま、まぁ思ったより楽しめましたね! これくらいなら余裕でしたけど!!」
肝試しが終わった後、ヒビキは胸を反らした。
(俺は幻覚でも見ていたのかな?)
「特に怖ぇもんはなかったが……途中から俺達の後ろをついて歩く真っ青な女性には寒気を感じたな。…ん? ヒビキ見てないのか? それとも……見えなかったか? 今もついてきてヒビキの後ろに……」
ダチュラは天気の話題でも口にするように自然にそう言うと、ヒビキの背後の何もない空間を指差した。
「んぎゃーー!!」
顔面蒼白になったヒビキは逃走した。ダチュラは走って追いかけ、彼女を抱き留めて種明かしをする。
「嘘だけどな♪」
「って、冗談なのかーい! ひどい!!」
頬をぷくーと膨らませ、ダチュラの脇にパンチするヒビキ。どこで覚えてきたのか、体を左右に揺すりながら繰り出されるフックの連打は割と痛かった。
「お詫びとして美味しい物を要求します!!」
「おう。確か、海の近くに屋台が出てたな。ちょっと冷やかしていくか」
「はーい♪」
あっさり機嫌を直したヒビキは、ダチュラとイチャイチャしながら、浜辺へと向かったのだった。
●
「流石リザ嬢、今回もいい作品だった。ウィル×レイ、大いにアリだ」
「ありがとう! 今回は私としては珍しく、王道でせめてみたわ! エフレム、ヨゼフ、レイウェスト皇子の三角関係にしようか迷ったのだけど」
リザの新作ドゥジンを読了したレタラは満足そうに頷いた。世が世なら作者が王族侮辱罪でムショにぶち込まれそうな代物だが、なんと非公式ながらもメアリー王女のお墨付きである。もっともリザは、メアリー王女がメイと素性を偽ってドゥジケット準備会を組織していることを知らないのだが。
「レタラ様のレイ×エフ本もなかなかのお手前ですわね。皇子が献身的な近衛騎士に次第に惹かれていき、裏切られた後も彼のぬくもりを覚えている様子が、とてもリアルに描けていると思います」
「ありがとう、アルベルティ―ヌ嬢。オレも今回の企画を通して、一層精進を図るつもりだ」
レタラの眼鏡がキラリと光る。肝試しに臨むカップルの観察はドゥジン作家として見識を深めるまたと無い機会になるだろう。彼は肝試しに挑むカップル達の姿を事細かに記憶し、ドゥジンのネタとして持ち帰るつもりである。
●
「私はスタッフやりますねっ。相手いないからなんて寂しい理由じゃないです。ないです」
おひとり様シェルリアは特技を生かし、壁に飾るそれっぽい雰囲気の絵を描いたり、チラシに載せるイラストを担当することになった。
「俺はメイの護衛も兼ねて案内役を務めよう」
レタラは受付役を申し出た。案内役(兼護衛)という名目でカップルについて回れるおいしいポジションである。
「ありがとッス。とても助かるッス。お礼に今回のお兄ちゃんレポートは危険度0でつけとくッス」
「お兄ちゃんレポート?」
顧問と不思議なやり取りを挟んだ後、レタラは礼服と黒マントに着替え、吸血鬼っぽい雰囲気を出してみた。
「折角ですから案内役として、この古城に相応しい格好をしてみるのは如何でしょうか? メイ嬢」
レタラはメイにも着替えを勧めた。彼が示したのはクラシックなゴスロリドレス(アイオーラ家提供)だ。
「あら、素敵なドレスですわね。魔女の装いで案内をしようかと思っておりましたけど、せっかくですからこちらにしましょうか」
メアリーはレタラの勧めに応じ、黒いゴスロリドレスに着替えた。
「どうかしら。夜の女王の雰囲気が出ていて?」
「ええ、良くお似合いです」
●
「カップルを対象とした肝試し大会ですか。成程、脅かす側が軒並み美人揃いともなれば誘惑や魔性には事欠かないでしょう」
ヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーンは肝試しの企画書を見て唸った。面白そうなので、自分も参加することにする。彼女もドゥジケット準備会の部員なので、スタッフ参加を表明すると歓迎された。
「これで掃除したつもりですの? 笑わせないで。メアリー王女がお見えになるのよ! お年寄りのジョギングの方がまだ気合が入っていてよ!」
会場では、この領地の領主の娘であるパーシアと、彼女に雇われた使用人達が熱心に会場のセッティングをしていた。彼女も『商家の娘・メイ』の正体を知っているのか、かなり気合を入れて準備をしている様子だ。パーシアもパンクリアース学園の生徒だが、ヴァレリアとは学園がかなり離れているため、パーシアの顔を見るのは今回が初めてだ。ヴァレリアが見た所、パーシアからは伯爵令嬢らしい高貴な雰囲気が漂ってはいるが、少々お転婆というか、頑張って淑女を演じている感が見え隠れしている。
「アイオーラ領の名は存じておりますが、ご令嬢の顔を見るのは初めてですね。皆様の手並みの拝見といたしましょう」
●
「私は水に因んだ幽霊、或いはマーメイドの類を演じて誘惑といきましょう」
肝試し当日。ヴァレリアはマーメイドのコスプレをし、中庭にある池の石の上に待機していた。ちなみに胸当てがしっかり貝殻になっているセクシーな衣装である。
しばらくすると、一般人と思しきソロ参加の男性が中庭を通りかかった。
(作戦開始です)
「あら、素敵な方、こっちに来て、私といいことをしませんか?」
ヴァレリアは鈴を鳴らすような声色で男へと誘いつつ、水上歩行の魔法を使い、池へと足を踏み出した。
「お、色っぽいお姉ちゃん。お誘いとあらば喜んで……」
気をよくして、男性は池に足を踏み出してきた。だが、その直後……。
(引っかかりましたね)
邪悪な笑みを浮かべるヴァレリア。
「ぬわー!!」
どぼーん!
まんまと罠にかかった男性は池に沈んだ。その後、ヴァレリアに救助された男性は「永遠の愛」と書かれたスタンプをおでこに押された後、コースに戻された。
●
「あんたが巨乳好きだとは知らなかったわ。大きければ誰でもいいのね」
「ラティオ先輩、すみませんでした! あんまり色っぽかったからつい……!」
「もう知らない。『リーンエスの耳』にでも応募してくれば? 頑張ったら乳牛が貰えるらしいわよ」
「待ってください、せんぱーい!」
ナキルが肝試し会場の様子を観察していると、喧嘩したっぽい若いカップルが会場を去って行くのが見えた。
「あいつら、何があったんだ?」
「あ、第三演劇部の先輩達だね。中で何かあったのかな?」
ナキルとエフィルミアは首を傾げた。
「ふふふ、あれは愛の試練の敗北者達ですわ。残念ながら、あの方達の絆は試練に耐えきれなかったのです。貴方達はどうでしょうか? 申し遅れました、わたくしはメイ。このお城の案内人を務める者ですわ」
灯りの紋具で顔を照らしながら登場したのは眼鏡をかけた黒いゴスロリドレスを着た少女であった。
(なあミア、この子……)
(うん、メアリー王女だよね)
変装をしているようだが、たぶんメアリー王女だろう。ウィリアム王子帰還祝賀会でメアリーを直接見かけたことがある二人はすぐ少女の正体に気付いた。が、本人がメイと名乗っているので、二人は空気を読んで気付かないフリをした。
「ようこそ、忌まわしき怨念が今も残る吸血鬼の城へ。彷徨える悪霊達は、あなたがたの仲に嫉妬していますわ。どうかパートナーから最後までお手をお離しにならぬよう……」
「こんばんは、えっと、メイ。今日は案内役なんだな。よろしく」
「よろしくお願いしまーす!」
●
「ナキルくん、こういうのは何が来るか分からないから怖いんだよ!」
エーテルを飛ばしまくり、エフィルミアは城の内部構造や敵(?)の配置を確認していく。あっという間に一階の地図を作り上げたエフィルミアは、「完璧な私、どう?」と言わんばかりにドヤ顔で胸をを張った。
「いや、無粋だろ。折角の祭りだから、楽しもうぜ」
ナキルは呆れたように溜息をついた後、エフィルミアに手を差し出した。
「うー……じゃあナキルくんには教えないでおく!」
エフィルミアはむくれた後、ナキルの手を握り返した。
●
「いよいよ、この城の主との対面ですわ。パートナーから決して手をお離しにならぬよう……」
メアリーが警告した後、レタラが重い扉を開く。部屋の中にいたのは……。
「ふふふ、ようこそ我が居城へ。我が名はユリア。百年の時を経て蘇った、この城の城主ですわ」
「……えー」
意外な人物が吸血鬼を演じているのを見て、ナキルはチベスナ顔になった。確かこの上級生は、春頃に第三演劇部に因縁を付け、一悶着起こした第二演劇部の部長だ。
「グルゼルダ? だっけ……暇なのかな?」(ひそひそ)
「ナキルくん、パーシアさん! パーシアさん! 失礼だよ!」
エフィルミアは慌ててナキルの名前の覚え間違いを訂正した。
「グリゼルダじゃねーよ! ぶっ殺すぞ!」
ナキルの全力失礼少年な発言にパーシアは激怒した。グリゼルダはウィリアム王子を襲撃し、眼球を奪おうとした極悪テロリストの名である。ウィリアムの瞳に恋しているという点はパーシアと同じだが。
「あ」
パーシアは素の自分を王女(案内人なのでレタラ共々この場にいた)に見られてしまったことを気付き、コホンと咳払いをして演技に戻った。
「ようこそ、吸血鬼ユリアのお城へ。あら、可愛い狩人さんね。私の眷属にしてしまおうかしら」
パーシアは妖艶な仕草でナキルの元へと歩み寄る。身長差があるため、ちょうどナキルの目線あたりの高さで豊満なバストが揺れていた。
「今見惚れてなかった?」
「いや、別に見惚れてとかいねーしっ!」
ジト目で睨むエフィルミアに対し、ナキルは強く反論した。
「つぅか、ミアの方がアイツより可愛いし魅力的なんだから比べるまでもないだろ」
ナキルは礼儀作法を置き去りにし、エフィルミアに弁解する。
(本当に失礼なガキだな、こいつは……顔と名前覚えたからな)
パーシアの白い目も、今のナキルには見えていない。
「本当にそう思ってる?」
「世界で一番可愛いと思ってるけど」
ぽつりと呟くナキル。この場には王女様もいたのでさらに失礼指数が上昇した……というのは無粋であろう。
「私が可愛くて魅力的なのは当然なんだけど!!」
「……なんで怒ってるんだ?」
(ナキルくんが誘惑に負けず私だけを見てくれるのは嬉しいけど素直になるのも悔しい!)
複雑な乙女心が分からないナキルは、首を捻ったのだった。
●
「ミレイユからの招待とあれば、断るわけには行かないな。メアリー王女も関わっているようだし」
「ここはアイオーラ伯爵家の領地だそうだ。さて、ミレイユ達はどんな風に盛り上げてくれるのかな?」
ジュストの妹、ミレイユ・ヴェルジーから肝試し大会の招待状を受け取ったローザリカ・L・ディオールとジュスト・ヴェルジーは二人で肝試し会場へと向かっていた。ちなみにローザリカもイベントの仕掛け人であるドゥジケット準備会の部員であるが、ここのところ冒険者稼業が忙しかったので企画の中身についてはノータッチである。
「ようこそ、忌まわしき怨念が今も残る吸血鬼の城へ。私は案内役のメイと申します」
「御機嫌麗しゅう、メイさん」
「御機嫌麗しゅう、ローザリカ様。今日は婚約者様とご一緒ですのね」
「御機嫌麗しゅう、メイさん。黒のドレスもお似合いですよ。ミレイユの兄のジュストです。いつも妹がお世話になっています。今日は楽しませてもらいますね」
「ええ。存分にお楽しみ下さいませ」
ローザリカとジュストが王女に挨拶すると、メアリーはニッコリ笑った。バレバレの変装ではあったが観光客の目もあるので、二人は王女とは呼ばずメイ呼びで通した。
カンテラを持った案内役の王女に先導され、ローザリカとジュストは薄暗い城をゆっくりと進んでいく。
「彷徨える悪霊達は、あなたがたの仲に嫉妬していますわ。どうかパートナーから最後までお手をお離しにならぬよう……」
●
(さぁ、お兄様もお姉様も皆様存分に怖がって下さいまし!)
目の部分に穴を開けた布団のシーツを被り、モブになりきっていたミレイユは兄と義姉の登場にほくそ笑む。ミレイユ自身はどちらかと言うと可憐な容姿をしていたので、脅かし役ではなく、舞台説明や演出面で企画に尽力している。
「おや、あの袋は……まるで人が入ってるみたいだな。血の匂いもするじゃないか」
ジュストは床に転がる大きな袋を指差した。人間大の袋に剣が突き刺さり、赤い液体が内側から滲み出ている。
「あの壁の染み……ロゼ、まるで人の顔のように見えないか?」
「なんだか気味が悪いな……」
怯えたそぶりを見せたローザリカはそっとジュストの腕をとった。
(ふふふ、お姉様ったら怖がってる、怖がってますわ……)
ミレイユはほくそ笑む。他にも意味深に半開きになった扉や、生肉が乗った皿に動物の血が入ったワイングラス、片方だけ取り残された靴など、様々な手法でミレイユは恐怖を演出する。ホラーテイストの小説や薄い本、ミステリー研究部への取材など、下調べはバッチリだ。
●
(とりあえず腕をとってみたが、その……やはり怖がるくらいが可愛らしい、のだろうか。
無い弱みを晒すのもどうかと思うし悩ましい。幽霊に恐怖したことはないのだが……)
ジュストの腕を取ったローザリカは悩んでいた。実はローザリカは別に幽霊など怖くはない。仕事柄、死霊術師と交戦する機会も多い。が、全く怖がらないのも可愛げがないかと思い、思い切ってジュストの腕を取ってみた次第である。
「いよいよ、この城の主との対面ですわ。パートナーから決して手をお離しにならぬよう……」
二人はやがて、真っ赤な薔薇が床一面に散らばり、妖しいお香が焚かれた部屋に行きついた。部屋の中心に立っていたのは、胸の谷間と背中が大胆に開いたドレスを纏ったパーシアだ。ジュストとローザリカとは学園で同学年、実家のランクも同ランク・かつ同派閥(王党派)であったので、互いに顔見知りであった。
「ふふふ、ようこそ我が居城へ。我が名はユリア。百年の時を経て蘇ったこの城の城主ですわ。あら、そちらの殿方はなかなか整った顔立ちをしておりますわね。私の眷属にして差し上げましょう……」
妖艶な笑みを浮かべ、パーシアはジュストに歩み寄ると、彼の顎にクイっと手を当てた。
「美しい吸血鬼だ。さすがアイオーラ家の姫君。だが俺には――ん?」
その時、我慢の限界を超えたローザリカがパーシアを突き飛ばし、ジュストの腕を絡め取った。そして、尻餅をついているパーシアに向け、堂々と宣言する。
「コレは僕のモノだ」
(許せるわけがない! しかも相手が悪い!)
「そりゃあ僕の方が上だとは思うが?? 被っているんだ、いろいろと!!」
元々ローザリカは男勝りな所があるパーシアに共感すら感じていたが、独占欲と負けず嫌いに火がついてしまったのだ。
「え、なんで張り合う必要が?? キャラ被……いや、似ている所はあると思うけど、大分趣が違うんじゃないかなぁ」
ジュストもある程度パーシアに対して似たような印象を持っていたらしい。「容姿は美しいが、一般的な貴族男性受けは悪そうな変わった性格をしている貴族女子」という括りでみれば、確かに二人は似ているかもしれない。だが、ローザリカと異なりパーシアはボス猿気質があったりするため、細かい芸風はかなり異なる。そのあたり、ジュストはちゃんと理解していた。ジュストがローザリカに「見た目は最高なのになぁ……」と(本人に聞かれたら「法廷で会おう!」と言われかねないことを)思っていたのも、今となっては昔の話だ。
「あらあら、ディオールさんはずいぶんとやきもち焼きですのね。お可愛いこと」
嘲笑するような笑みを浮かべ、パーシアはジュストに投げキッスを送った。
「こ、この……泥棒猫ッッ!!」
ローザリカが一度は行ってみたかった台詞を叫ぶと、パーシアはおほほ、と高笑いをした。
「ご安心を。わたくしはウィリアム王子一筋ですから。これはお芝居ですからね?」
肝試しが終わった後、ジュストは我に返って不機嫌になったローザリカをなだめるのに大層苦労することになった。
●
「メイ様、御機嫌麗しゅう」
「あら、シルヴィア様。御機嫌麗しゅう」
「それは失礼しました、メイ」
肝試し会場にやってきたシルヴィア・A・カペルは入ってすぐの所にいたメアリー王女に一礼をした。それは王族相手にしては極めて簡素な礼だったが、メアリーは特に腹を立てた様子はない。今メアリーは世を忍ぶ仮の姿である「商家の娘メイ」として活動しているからだ。
「シルヴィア様、そちらの殿方はどちら様ですの?」
メアリーは、シルヴィアの隣に立っている男性――エル=バ=ノイアンを値踏みするようにじろじろ見ると、期待に満ちた眼差しをシルヴィアに送ってきた。
「ノイアンだ。初めまして」
ノイアンは王女とは特に親しくはないため、目の前にいる眼鏡の少女が身分を偽っている王女であることには気づいていない。
「その……私の恋人です。できれば内密にお願いします」
シルヴィアは顔を赤らめ、小声で答えた。
「あらあら、まあまあ! はじめまして、ノイアン様! わたくしはメイと申します! もちろん、心得ましたわ! その代わり、今度ぜひ学園で詳しくお話を聞かせて下さいませ!」
メアリーはシルヴィアの返答にニッコリ微笑んだ。
●
「こちらのお部屋が、吸血鬼が夜な夜な眷属達を集めて晩餐会を催したとされる食堂でございますわ」
メアリーはカンテラを持ち、シルヴィアとノイアンの横からついてきていた。その仕草は王女らしくエレガントなものだったが、どんな些細な挙動も見逃すまいという決意が感じられた。
(これは恥ずかしい姿は見せられないな……)
シルヴィアは密かに決意する。
(幽霊は怖くないんだ、暗闇から突然何かが出てくるのが怖いだけで……)
「そういえばシルヴィアは、こういうものが苦手だったな。生きているものやアンデッドのほうがよほど脅威だと思うのだが……?」
「生者やアンデッドには先手を取れるだろう?」
シルヴィアはそう言いつつも、ノイアンの背中に隠れ、彼のマントの裾をしっかり掴んでいた。メアリーは特に二人に干渉はしてこなかった。ただ、慈母の如き微笑みを向けるのみである。
「おや、あれは……人形か?」
「……」
二人が城の奥へと進むと、薄暗い通路のど真ん中に椅子が置かれており、赤い服を着た女性の人形が項垂れた姿勢で縛られていた。さらに、胸にはナイフが突き刺さっている。二人が椅子の横を通過しようとすると、人形が突然動き出し、シルヴィアの腕をがしっ! と掴んだ。人形の正体は生きた人間――ルアンナ・ミュラーだったのだ。
「きゃあああ!」
びっくりしたシルヴィアはたまらずノイアンにしがみつく。
「「グッド!」」
期待通りのリアクションが見れて満足したメアリーとルアンナはサムズアップした。
「あ、これお守りです。あの吸血鬼に、大事なものを取られないように……」
ルアンナはシルヴィアが落ち着いた後、アイオーラ領家の家紋を象ったキーホルダーを二人へと手渡した。
「ありがとう、ルアンナ。それと、先ほどの醜態はどうか見なかったことに……」
「ふふ、大丈夫です。言いふらしたりしませんよ」
シルヴィアはお守りを恥ずかしそうに受け取った。
「いよいよこの城の主との対面ですわ。パートナーから決して手をお離しにならぬよう……」
メアリーがそう言うと、後ろからついてきていたレタラが扉を開けた。
「ようこそ、我が城へ。私はこの城の主、ユリア。さあ、貴方達も私の眷属にしてあげましょう……」
扉の奥で二人を待っていたのは、胸の谷間と背中が大胆に開いた赤いドレスを着たこの領地の領主の娘、パーシア・アイオーラであった。意外な人物の登場にシルヴィアは驚いたが、「その格好と設定は伯爵令嬢として流石に……」という言葉は呑み込んだ。顔見知りであるシルヴィアを前にしても、全く照れた様子がないのは流石演劇部の部長という所ではあるが。
「あら、そちらの殿方は綺麗な髪をしていますわね。わたくし専属の使用人になりません?」
パーシアは妖艶な笑みを浮かべ、ノイアンの元へと歩み寄る。
「愛の試練ですわ! さあ、お二人の絆をわたくしに見せて下さいませ!」
メアリーは早口で叫んだ。
「あ、愛の試練??? いやすまないが、俺の好みからは少し外れるというか……」
ノイアンは無表情のまま、手でパーシアの接近を制止した。
ぱちぱちぱちぱち。その瞬間、肝試しスタッフたちの拍手が巻き起こり、お祝いされながらシルヴィアとノイアンはゴールインした。
なお、その後シルヴィアとノイアンがドゥジケット準備会に提出した入部届は、拍手と共に受理されたという。
●
「わたくしはこの城を支配する夜の女王、ユリア……」
肝試し大会の前日の夜。パーシアは精神を集中し、吸血鬼役の台本を暗記していた。
「ふう。まあこんなところか。嫌な役回りだが、メアリー王女とは仲良くしとかないとな……未来の義妹だしな」(MS注:パーシアの妄想です)
台本を置き、ぐーんと背伸びをするパーシア。その時、彼女は背後で人の気配がすることに気付いた。パーシアが振り向くといつの間にか窓が開いており、真紅のドレスを着たルアンナが立っていた。
「あら、あなたは確か……」
「紅の魔女、ルアンナ・ミュラーです! ですが、名前を覚える必要はありません。吸血鬼、滅ぶべし!」
「は?」
ルアンナはキリッとした表情で宣言すると、ギザギザした鉈を振り上げ、突然パーシアへと斬りかかった。
「きゃあああああ!?」
パーシアは驚愕の表情を浮かべ、防御姿勢をとって硬直している。間合いを詰めたルアンナはそのまま鉈を振り下ろし――寸止めした。
「驚きました? ドッキリです★」
どたどたどたどた!
「お嬢様! どうされました!?」
主の悲鳴を聞きつけ、すっとんでくるパーシアの使用人達。パーシアが「ちょっと大きいコウモリがいただけです、窓から逃げました」と告げると、使用人達はすごすごと退室していった。
……。長い沈黙が場を支配した。
「……ええと、紅の魔女ルアンナ・ミュラーさん? 少しお話しましょうか」
パーシアは額に青筋を立て、笑顔でくいっとテーブルを指差した。
……。
「まったく、わたくしが寛大だから良いものの、アイオーラ伯爵家の次期当主に向かって襲い掛かるなんて……いくら学園のOGでもあまり羽目を外されると困ります……」
「はい……調子に乗り過ぎました……」
その後、ルアンナは(後輩に)めっちゃ怒られた。
●
「原稿執筆しつつネタも補給するなんて、ドゥジケット準備会らしい素晴らしい合宿ですね! ネタの……いえ、皆で楽しむ為に頑張りましょう!」
シェルリア・リトヴァールは腕まくりした。ビバ部活。シェルリアの学園ライフは絶好調だ。
「ラミアス先生、よろしくお願いします!」
「ええ、これも良い社会勉強です。頑張って下さいね」
シェルリアが挨拶すると、ラミアス・クルスロードは教師として模範的な返答をした。彼は別段ドゥジケット準備会の顧問というわけではないが、学園職員に赴任して初めての学園外部でのサークル活動(しかもメアリー王女までいる)で死にそうになっているウィーズルをサポートするため、今回の合宿に駆け付けてくれたのだ。
(ラミアス先生のネタ、いえ、先生とも仲良くなれると嬉しいですっ。あるいは、今回の件もウィリアム王子から何か頼まれているのかもしれませんね!)
「はっ!」
そう思った瞬間、シェルリアの脳裏にウィリアムとラミアスの会話(妄想)がありありと浮かんできた。
――ラミィ、僕の元部下をよろしく頼むよ。あとついでに妹に近づく悪い虫は皆殺しにしておいてくれ。
――ええ、分かっていますよ。ウィル。私の眼鏡ビームで王家に仇為す者は皆殺しです。その代わり、後でご褒美を下さいね(はぁと)。
「くっ! なるほど、お二人の間でそんなやり取りが……! 早速ネタが浮かんできました! ラミ×ウィルに挑戦もいいかも知れません! ラミアス先生! 先生の学生時代のお話を聞かせてもらえないでしょうか!」
「? なんですか突然。まあ、構いませんが……」
突然身を乗り出してきたシェルリアの様子に、ラミアスは首をかしげたのだった。
●
「おい、イル。おかしくねぇか? あの連中、妙に殺気立ってるというか……『カタギじゃない』気配がするんだが」
ペルゼィックがこっそり指差したのは、身長が二メートルぐらいありそうなムキムキマッチョが二人と、やけに眼光が鋭い女性という、ちょっと異様な三人組の観光客だ。三人とも首を動かさず、視線だけで周囲を警戒している様子や、歩いても重心が全くぶれない佇まいなど、どう見ても只者ではない。それもそのはず。彼らは実はメアリー王女を護衛するために彼女にも内緒でこっそり観光客に紛れ込んでいる、王家騎士団の精鋭達である。
「学園からの依頼だし、各家からも護衛に来てる人達なんじゃない?」
イズル・M・ヴォルゴールは天使のように無邪気な笑顔を浮かべていた。そして、そんな二人の様子を逆に観察している曲者達がいた。ドゥジケット準備会のドゥジン作家達である。
「! シェルリアさん、リザ。あの方々をご覧くださいませ!」
『紫陽花の貴腐人』アルベルティ―ヌの声には、隠しきれない歓喜が滲んでいた。
「冒険者の男性二人組。なるほど……」
「あの方達はもしや……愛し合っているのでは!?」
リザとシェルリアが頷く。二人共チラシの「お友達グループでの参加も歓迎です」の文言は完全に忘れてしまったようだ。
「やはり同性カップルか……記憶術のスキルを装備して来た甲斐があった。暗視もバッチリだ。暗がりの中で何が起きようとも、オレは決して見逃さないとも」
レタラの眼鏡がキラリと光る。ドゥジン作家達が盛り上がっていると、顧問が遠慮がちに声をかけてきた
「皆さん盛り上がってるとこ悪いんスけど、あのお二人はスタッフ参加希望らしいッス」
「「え!?」」
●
「せっかくだし、最後に二人でコースの点検してみようぜ」
肝試し大会終了間際、ペルゼィックはイズルに声をかけた。
「うん、いいよ」
イズルは快諾した。受付で案内役の王女とレタラに声をかけると、二人も快諾してくれた(そして何故かついてきた)。
……。
「どうして人気のない方に行くんだよっ?!」
キレ気味に叫ぶペルゼィック。突然、イズルが何かに手を引かれるかのように、ふらふらとコースアウトし始めたのだ。
「え、だってスタッフさん呼んでるし」
「そっちには誰もいないだろ! 怖ぇこと言うな!」
その時突然、二人の周囲に白銀と黄金の二色のエーテルの塊が発生した。二色のエーテルは男女の形をカタチ取り、優雅にダンスを開始する。
「あ、これ俺のスキルのせいだ」(てへぺろ)
どうやらここが心霊スポットのせいか、イズルの 『招霊呪怨縛』が暴発してしまったらしい。つまり、この半透明な人々はホンモノである。
「元に戻してこい!」
ペルゼィックは鋭いチョップをイズルの額に叩き込んだ。
「ようこそ、吸血鬼のお城へ……あら?」
ゴール手前にいた吸血鬼役のパーシアは二人を見て怪訝そうな顔をした。が、気を取り直し、誘惑を開始する。
「……ふふふ、どちらか片方だけ、私の眷属にして差し上げましょう。さあ、醜く争うといいですわ」
「あ、終わりました終わりました。俺らはコースの点検にきたスタッフです」
イズルはパタパタと手を振る。
「あら、なんだ。そうでしたの。それならそうと早く言ってくださいませ」
パーシアはセクシーポーズをやめ、息を吐いた。
●
「なかなか面白かったね。あ、ジーク、髪にゴミがついてるよ」
コースの点検が終わった後、イズルはペルゼィックの髪についていたゴミを取ろうとした。角度によっては、二人が接吻をしているように見えなくもない。
「「きゃああああああ!!!」」
「ありがとう、イル。……ん? 今なんか悲鳴が聞こえたな。演出か?」
「さすが心霊スポットだね。本物もいるのかな?」
無論、悲鳴は幽霊などではなくドゥジン作家達(王女含む)のものであったことは言うまでもない。
マスターコメント
メアリー王女がしゃべりまくったので文字数はほぼMAXになりました。愛の試練担当のパーシア嬢は猫を被っていたので「本性」が出たシーンはなかなかのレアシーンです。
たくさんのカップルと愉快なスタッフたちのおかげでドゥジケット準備会の執筆はとても捗りそうですね! ご参加ありがとうございました!
イベントシナリオ易しい 報酬:無し15 / 4〜25人
2022年08月01日 03時35分48秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
キャスター、ヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーンと申します。 お見知り置きを。 肝試しに関しては、現段階ではウォーターウォークをも利用して水に因んだ幽霊の役をやってみたいと思ってますね。
キャスターのルアンナです。吸血鬼が住んでいたお城で肝試しですか…ワクワクしますね♪ 私は驚かすスタッフとして参加します!
「ナキルだ、よろしく頼むぜ ミアと二人で行動する予定だな。(たぶん)」
冒険者の皆様、ようこそアイオーラ領へ。出発は明日(27日)の朝8時となっております。プレイングの送り忘れにはご注意下さいませ。
エフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 ナキルくんと一緒に肝試しに参加する予定です! 皆で楽しみましょうっ。