露天風呂付きの離れで何も起こらないはずがない!

広大野人

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シナリオID:2222

オープニング

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 その日、リィミア・コゴウジは顔見知りのギルド受付嬢アーネリーを訪ねていた。
 シャルガネ居住区の隅にあるコゴウジ家を主体とした集落……の外れ、もともとは集落の一部だったのだが、住む者達がいなくなった住居群をリフォーム。集落の人々の協力を得て、旅館業を始めようとしていたのだ。
「……そんな訳でプレオープンに冒険者達を招待しようかと思うのでござる」
 並べられた資料の数々をアーネリーは眺める。
 雄大な自然。海の幸も山の幸もあるし、王国でも珍しい様式の古民家。おまけに全ての部屋が露天風呂付きの離れ……。
「依頼としては出される分には特に問題はありませんが……費用は大丈夫なのですか?」
 アーネリーの記憶によると、集落は貧しい日々を過ごしていたはずだ。財宝を見つけたと言って、突然、何かを始められるほどの事だとは思えない。
「実は以前から漁が出られない時期に外貨を得る方法を模索していたようでござるよ。ある程度の準備が進んでいた所で、一気に話が進んでね」
 微笑を浮かべてリィミアは合図のように手をパンパンと叩いた。
 開かれる扉、そこに現れたのは――。
「冒険者達の情報が得られるというのであれば、協力は惜しまないさ」
 ピシッと決まったスーツ姿で箒を立てたような逆毛の男スクサ・プカーゲだった。
 勝ち誇ったような表情を浮かべて、ずんずんと部屋の中に進むと、リィミアとアーネリーの斜め前に座る。
「古民家の離れ、露天風呂、雄大で静かな環境……これは、何も起こらないはずがない! 冒険者達の甘い一日を記事にして、集落の宣伝をすると共に、恋人や夫婦の流行を創り出す! 素晴らしいと思わないか!?」
「あくまでもプレオープンとして冒険者達を招待する訳ですから、皆様が過ごす邪魔だけはしないでくださいね」
「当然だ!」
 力強い返事にアーネリーはジト目で返す。
 この男、悪人ではないのだが、冒険者を商売道具の何かと思っている節があるので、そこが気に入らないのだ。
「……分かりました。それでは依頼申請を受理しますね。リィミア様、何かご質問はありますか?」
「一応、アーネリーさんも来てほしいのでござるよ」
「わ、わたしですか!?」
 思わぬ提案に驚くアーネリー。
 この所、花見から仕事続きだったし、息抜きには丁度良いかもしれない……だって、温泉もあるわけだし。
「ほら、こういうのは人数が多い方が楽しいでござるから」
 リィミアの台詞にアーネリーは嬉しそうに返事をすると上司の許可を取る為に駆け出すのであった。

●
 大きな母屋には男女別と混浴(水着着用)の大浴場と幾つかの宴会場が連なっていた。
 母屋から放射線上に離れが点在しており、板張りの廊下で繋がっている。廊下の途中には東屋につながっている所もあり、庭園にも出られるようになっている。
 離れ一戸ずつに温泉を引いた露天風呂が完備。湯けむりがより一層、茅葺屋根の建物と共に情景を引き立てていた。
「ふー。これは一人旅でもいいかも……」
 アーネリーが両手を挙げて伸びをしてから、畳へとゆっくりと倒れ込んだ。
 好きなお香も焚いて良いとの事で、爽やかな樹木のようになれそうな、そんな香りを楽しむ。
「気に入って貰えたでござろうか?」
 畳に転がるアーネリーを上から覗き込むようにリィミアが声を掛けた。
 流れるような黒髪が揺れている。見た目ではアーネリーとさほど変わらないはずだが、彼女の年齢は祖母よりも年上というのが、信じられない。世の中、色々な人がいるものだと思う。
「はい。これは休みの度に来たくなります」
「特別価格で安くしておくでござるよ……そのうち、値上げするから早めがいいだろうけど」
「プカーゲ様が記事にしたら、お客も増えそうですしね」
 あの記者の事だ。その辺は抜かりないだろう。
 だとしたら、今は出来るだけ堪能しておかないと勿体ない。
「料理は離れでもいいし、母屋の食堂や宴会場でも食べられるから、好きな方を選ぶでござるよ。今回はプレオープンだから、両方で食べてみてもいいでござるし」
「温泉については何か制限はあるのですか?」
 アーネリーの質問にリィミアは思い出すように少し考えてから答える。
「うーん。時間の制限もないし……あるとしたら、混浴に関しては水着着用って所かな。あと、大浴場での飲食は禁止だけど、離れの方は問題無いかな。お酒飲みながらお風呂に入って寝ると危ないけど」
「分かりました。注意事項として冒険者達に伝えておきます」
「今回、チェックアウトは午後だから、まぁ、皆ゆっくりでいいでござるからね」
 という事は朝チュンどころか、昼チュンもあって良いって事だ。
 こうして、露天風呂付き離れのある旅館でのひと時が冒険者達に訪れるのであった。

解説

●目的 旅館のプレオープンに参加する ●状況 冒険者達はコゴウジ家集落の外れに造られた離れのある旅館のプレオープンに参加します。といっても、何か特別な事は要求されてはおらず、一般的な客と同様に過ごしていただければ問題はありません。 ●過ごし方の例 『冒険者同士の日常風景』が依頼対象ですが、その際、双方のプレイングに互いの名前が記載されていないと迷子になります。 『ボッチで何かしている』も同様に依頼対象となります。 なお、いずれにしても、その行動が可能かどうかは判定を行った上で描写します。 あくまでも日常の様子を求めているので戦闘行為は華麗にスルーされます。 (筋トレや訓練、演習を否定しているものではありません) ・温泉に入るor食事を堪能するor酒を飲みながら語る等々。 ・母屋と離れ、特に指定がない場合はアドリブになります。 ●同行者がいる場合 プレイングで『互いに相手を明記』するか『【タグ】で統一』するようにお願い致します。 抜けていた場合、迷子になります。離れの宿なだけに離れ離れに( ●描写の時間帯指定について おおよそでよければ、描写する時間帯を指定する事もできます。 暁の寒さに温もりを感じる時間帯からの描写や、なんやかんやあって朝を迎えた所からの描写もありです。 ※同行者同士で時間帯指定は行って下さい。場合によっては描写できない場合や、片方だけ寝ているとかあり得ますのでご注意を。 ●NPCとの交流について ジード及びソーン・クリエの幹部達とオルセン太守コンラートは立場上、参加できませんが、それ以外の当MSが管理する登録・非登録問わずNPCを呼ぶ事ができます。時系列的に……という所は冒険者の皆様がシナリオに参加する形と同様に対処させていただきます。 なお、友好度に応じて、各キャラクターへの対応に差異が生じるのはご了承下さい。 ●質問 過ごしたいNPCと関われる行動が、可能かどうかで悩まれる際等、質問を可とします。 エクエスが頑張って回答します。ただし、回答は描写を保証できるものではありませんので、参考程度にして下さい。

マスターより

 おはようございます。当依頼にて45作目となった広大野人です。  露天風呂付きの茅葺の離れ……情緒ある雰囲気(?)の中での依頼となりますが、特に何か求められている訳ではないので、ありのままの冒険者の日常を過ごしていただければと思います。  チェックアウトは昼過ぎなので、ゆっくりと起きるのも良し。温泉に浸かって疲れを癒すのも良し、仲の良い冒険者同士で過ごしたり、カップルで仲を深めたり、NPCと共にひと時を過ごすのも良し……そんなイベシナとなります。  飲酒やなんやかんやの描写については規約通りになりますので、ご理解の程よろしくお願いします。また、プレイングの行動内容によってはアドリブ多めになる場合もご了承下さい。

リプレイ

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 案内された離れで落ち着かない様子のミア=リゼルが緊張と照れの合わさった表情をエナハルト・ティルムに向けていた。
 ミアは鞄の中から目当ての物を取り出し、彼へと差し出す。
「お渡ししたいものがあっただけなんです……本当ですよ」
「これは……ハンカチ?」
「レモンは……せんせいとの花なので、あなたとの花には、ライラックを。紫のライラックは『初恋』を意味するの……だそうです」
 エナハルトは受け取ったハンカチを広げるとライラックをゆっくりとなぞる。
「……優しい色遣いですね」
「頂いた物のお返しには足りないですが……ですので、あなたには、私の心を……紫色のライラックを捧げます」
 エナハルトは静かに頷くと真剣な眼差しを向けた。
「ありがとう、ミア」
「それと……二人きりの時は、エナと呼んでもいいですか?」
 もちろん――と応えながら彼は少女を突然、抱き上げる。
 夜はきっと寝顔を見つめるだけだから、これ位は……という事かもしれないけれど。
 少女を抱えたまま縁側まで進むと雄大な自然が広がっていた。
「ミア、折角だから存分に楽しまないと」
「そうですね、エナ」
 景色もお風呂も食事も、二人だけで過ごす大事な時間なのだから。

●
 母屋の食堂、カウンターで郷土料理を堪能しているサイラスの隣にシルヴィア・A・カペルがスッと座った。
「同席しても良いかな?」
 海老の天ぷらを咥えながらサイラスは向くとコクリと頷き、尻尾をバリバリと音を立てて噛む。
 その反応に微笑を浮かべて、シルヴィアは米酒を注文。すぐに用意されたお通しを一つ、口の中に入れてから、横目を向けて言った。
「君に作ってもらった鉄扇、調子が良いよ」
「だろうな。使える物を作らない鍛冶屋に何の価値もないからな」
「確かに、そうだ。サイラスは今、何を使っているのかな?」
 手元に届けられた酒の杯を手にすると二人は適度な距離に掲げた。
 それをクイっと流し込んでからサイラスは応える。
「武器に関しては、まだ色々試行錯誤しているしなぁ」
「色々……?」
「ガリアンソードや鎖鎌。他にもウォーリアとしてなら大剣、刀と籠手一体型の爪とか……まぁ、色々だ」
 その結果が、体中に残る傷痕なのだろうが。
「愛用武器は多彩という事か。流石だね」
 彼の場合は臨機応変な攻撃手段が強みだと思いながらシルヴィアは話を続ける。
「刀も使うのなら、指南して欲しい所だ。参考にしたい」
 その申し出にサイラスは箸置きに箸を揃えて置いた。
「……重心の移動に合わせ、力点を回転させる様に、だな。それと押すよりも引いて切るイメージ……だろうか。まっ、目の前の敵をただ殺す方法でいいならそんなもんだな」
「なるほど。何か、心得や極意みたいなものはあったりするだろうか?」
 シルヴィアは更に一歩踏み込んで尋ねる。
 追加の質問に、サイラスは表情変えず、淡々と応えた。
「心得? 極意? 人間の技術な時点で、竜が使うものでもないからな。道具は効率を上げる物だ」
「サイラスらしいな」
 彼が武器と、そして強さに対して厳しい事を、シルヴィアは知っているから。サイラスが今、この時の流れの中で、自身の歩む人生を生きている――それがどこか、自分と似ているとも思っていた。
 祖父と先生の縁は自分を形作る大事なものだけれど――自分には自分の人生があるから。
「でも、何か参考にはなりそうだ。ありがとう、サイラス。折角だから私の故郷のワインを楽しまないか?」
 そう告げて取り出したのは、白葡萄酒(アルヴィン・カペル)と赤葡萄酒(イザベラ・カペル)の二本。サイラスは黙ったまま頷くと、その内の一本を受け取る。
「時間はあるんだ、ゆっくりいただくぜ」
 なにせ、酒の肴はまだまだ残っているのだから。

●
 懐石料理や飲み物を嗜みながら、アリッグ・レイダーは食事前の混浴の事を思い出していた。
(水着とはいえ混浴するとはな……)
 目の前に豊かで柔らかい頂きが二つ、浴衣を押しあげており……アリッグはスッと視線を横に反らした。
 そんな視線に気が付かず、シルク・メイプルリーフは上機嫌だった。
 温泉も良かったし、食事も美味しい。そして、身も心もどこかへ、ふわふわーと飛べそうなほどの楽しい感覚。
「アリッグさんー。フフフフフ」
 血の巡りが良くなった所での食事と飲み物。日頃の疲れも合わさってテンションの回りが早いのだろうかなどと推察したアリッグが心配する。
「飲み過ぎだ。って、ほら、零れているじゃないか」
 見かねておしぼりを手にシルクの傍に寄り、甲斐甲斐しく世話をする。
 濡れた個所をふき取り、新しい水を用意し、やや乱れた浴衣を直そうと手を伸ばした時だった。唐突に、アリッグの手が彼女に捕らわれる。
「お布団まで運んで~」
「ったく……ほら、手伝うから立てるか?」
「だめぇ~」
 アリッグに寄り掛かりながら後ろの部屋へと向かう。シルクの吐息が物凄く荒いような気もするが、アリッグは気にする事を止めて、襖を開けた。
 布団は一つしかセットされていなかった
 やや呆然とした所で突如、シルクがアリッグを巻き込む形でお布団へダイブすると全身をまさぐりながら首元や頬に舌で味わい始めた。
「アリッグさんかわいい! ふわふわーの髪に、ぷにぷにーのほっぺ! はむはむー」
 シルクは自主規制(ある状態)で『一般判定:kawaii』が弩ユル設定になってしまい。判定成功後は50%の効果倍増になり、相手がもの凄く可愛く見えてしまう性質だったのだ。たぶん。
 溜まったものでないのはアリッグの方だ。
「だぁー! ちったぁ女って自覚を持て!」
 露天風呂付き離れで何も起こらないはずもなく――この構図は色々とあり過ぎる。
「照れちゃってー。かわいいぃぃ!」
「ちょ、流石にまずいだろこの光景は!」
 何とか剥がそうにも無遠慮状態のシルクと自制を保ちながらのアリッグでは勝負にもならない。抵抗むなしく、シルクが腰のあたりに顔を埋めた所で諦めた。
「もう好きにしてくれ……あ、あれ……シルク?」
 彼女は抱きついた状態でスピーと寝息を立てていた。なんというお預けか。
 アリッグは苦笑を浮かべつつも、シルクの頭を優しく撫でる。
「ったく……どうするんだよ、この姿勢で」
 けれど、こういう構図もたまには悪くはない……のかもしれない。

●
 母屋に向かう通路でキラリ=マバユイは同郷のよしみであるアリア・ティーダと偶然にも鉢合わせしていた。
「あれ、アリアさん。奇遇ですね」
「キラリ君も一緒の依頼だったんだ。ふーん……これは折角だし歓迎したいなっ」
「え……良いんですか?」
 ちょっと期待したが、直後、腕を掴まれてぐいぐいと大浴場の方向へと連れて行かれる。
 果たして歓迎とはどういう意味だったのかキラリは思わず尋ねた。
「なぜ、お風呂の方に?」
「歓迎を受けるというのが新人だし、温泉だから……こう、身体を流してあげたりとか? どうかなっ」
「せ、せめて、男性の脱衣所で着替え、させて」
 そんな訳で水着に着替えて母屋の大浴場へと至った訳だ。
 思ったよりも人がいない……皆、離れの露天風呂の方に入っているのだろうか。
 キラリは恥ずかしそうにモジモジとしていると、水着姿のアリア・ティーダが明らか楽しそうな笑みを浮かべて近づいて来た。
 普通の水着のようなのだが、抜群のプロモーションがなまめかしい雰囲気を発している。
「さぁ、全身全霊でもってキラリ君を洗ってあげよう! ここに良い洗い道具もあるし!」
 なぜか両手で自分の胸を持ち上げるアリア。
 やばい雰囲気を感じ取ったキラリが慌てる。
「や……やっぱり、か、体ぐらい自分で洗えるから! は、恥ずかしいよ……!?」
「新人は遠慮しなーいっ!」
 やたら元気なアリアの楽しそうな言動にキラリは身を屈めて小さくなるしかなかった。
(うぅ……でも……こんな楽しそうな声を出されたら……諦めて全てを受け入れるか……)
 どこまで耐えられるか分からないけれど、これも新人の役目なのかもしれないと強引に思う事にした。
「って、せ、背中に何か柔らかいものがー!」
 秒で耐えられなかった。
 半分涙目となって振り返るが……。
「ほら、前を見てないと背中洗えないよ。それともボクの身体をマジマジと見たいのかな?」
「ちゃんと水着、着ていますよね?」
「もちろんだよ……ふーん、脱いだと思ったんだ」
 茶化すようなアリアの言葉に、もう何も返さない方が身の為だと悟ったキラリは、心を無の境地へと至らせようと意識を別の事に集中するのであった。

 鼻歌混じりでご満悦にキラリの身体の隅々まで洗ってあげたアリアは、その後、年下とは言え異性相手にやり過ぎたかもと、頭を抱えて悶える事になるのだが……それは一晩経過してチェックアウトする頃の話になるのである――。

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 水着が描く魅力的な躰のラインをそのままに、ストレガ・L・リベルガストラは母屋の大浴場に浸かっていた。滾々と湧き続ける温泉の湯量に感心しつつ考え事を続ける。
(衛生面が向上するから、なるべく温かい湯を浴びる事は推奨される事であるが……世界に風呂を普及させるのは難しいのだ)
 まず上水道を完備する必要がある。次に下水道とその処理施設も重要だ。
 それだけで容易な事ではないとストレガは思う。作った後の維持の事もある。
(水を沸かす労力や手入れの手間を考えると大変なのだ)
 湯に身を任せるように横たわり――豊満な胸が浮く。
 温泉は沸かす……という手間が無いので入浴施設の準備は大変だが、やはり温泉地は恵まれている。その利点を活かす事は理に適っていると言えよう。
 ここが多くの人々を癒す地となれば、それも良いだろう。
(混浴も各々が理性的でなければ風紀を乱す事になるのだ……視線は本能故致し方無し。それに私は気にしないのだが……どうやら今の時代『逆』のパターンもあるようなのだ)
 図らずにも、お姉さんと少年の逢瀬を目撃したストレガはそんな事を思いながら……瞼をゆっくりと閉じて湯に浮かび続けるのであった。

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「この離れ、中々に良い感じね。露天風呂も……ちょうど良い大きさのようだし」
 案内された離れの中を見渡してテュリン・ヴィングが張りのある声を発した。
 八畳二間の襖は全開きになっており、奥に湯けむりを上げる露天風呂が、そして背景にはどこまでも続く青と緑の大自然が広がっていて、これだけで絶景だ。
 ここでおよそ丸一日、優雅にのんびりと過ごせるのだから、テンションが上がらないはずがない。
「普段見慣れてる建物と違って、茅葺は珍しいね……離れごとに露天風呂があるようだし、一緒にゆっくり楽しめるかな」
 荷物を運びこんだララベル・サン・ディーベルが照れ隠すような笑みを浮かべた。
 ここで一緒に美味しい物を食べ温泉入って仲をもっと深めて……楽しい思い出を作れればと思う。もちろん、やましい考えナゾ……。
「すごぃ! 知らない場所なのに懐かしい雰囲気が……あの囲炉裏もっ!」
 アリエッタが特徴的な猫のような耳をパタパタと揺らし尻尾がぶんぶんと左右に振れる。
 けれど、はしゃぎたい気持ちをぐっと抑える。確かに丸1日過ごせるが時間は有限なのだ。
「荷物は僕が整理しておくから二人は先に着替えていいよ」
 ララベルの言葉にテュリンとアリエッタは頷いた。
 シャルガネ独特の衣服――浴衣――が用意されているからだ。折角なので雰囲気を楽しまないと勿体ないというもの。
「それなら隣の部屋で着替えてくるわ」
「覗いじゃダメだよー」
「の、覗かないよぉ!」
 鞄から酒瓶を取り出しながらララベルは応えるのであった。

 少し早めの食事を済ました後、夕日になりかけの空の下、露天風呂へとララベルは入った。
 一番風呂を楽しみたいからではなく、風呂場に飲み物や軽食を持ち込んで用意していたからだ。
「準備できたよって……な、なんか……明るいうちからタオル一枚って……」
 洗い場にやってきたテュリンとアリエッタはタオルを巻いているという簡素な姿だった。
 陽の光が白い肌に反射して眩しいし、降ろしている髪を結いあげている姿も見慣れていないせいか、ドキっとしてしまう。
「そう? それにしてもベルが珍しく大人しいけど……?」
 テュリンがニヤリと口元を緩めて、タオル姿のままララベルに抱きついた。
「えぇぇ! って、テュリン姉はもう飲んでいるの?」
「偶には義姉兼恋人らしい事もやっておかないとね。ほら、身体……洗ってあげるわ」
 ほろ酔い状態らしく耳元で囁く彼女の台詞に顔を染めるララベル。
「ちょ、テュリン姉。いきなりそこからは洗わないって」
「そこって……どこかしらね。折角だし、アリエッタも一緒に洗ってあげた方が喜ぶわよ」
「はーい! それじゃ、あたしは背中洗うよ」
 テュリンとアリエッタの二人に連行されるような形で洗い場に誘導されるララベル。
 その足が濡れた床で滑るのまでが、夜翔の流星ことララベル・サン・ディーベルという男なのだ。
 悲鳴と共に3人一緒になって派手に転ぶ。巻いていたタオルもどっか飛んでいってしまうのはご都合というもの。
「わわわっ! ご、ごめん!」
 二人を庇って下敷きになった事は、むしろ褒められるべきだが、ララベルの手がテュリンとアリエッタの柔らかい所を掴んでいるのは、確かに謝るべき事案。
「もう……気が早いな、ベルは」
「お返しです!」
 覆いかぶさるような二人からの反応にララベルは情けない声を上げる。

 その後、夜遅くまでお楽しみの時間を満喫した3人は昼前までぐっすりと寝てしまうのであるが、1つの布団に3人……正確にはララベルにテュリンとアリエッタがの二人ががっつりと抱きついていたからか、ララベルはまるで生気を抜かれたような顔をしていたという。

●
 プレオープンという訳で様々な意見や感想があった方が良いだろうという事で、海神・江流とルーンス・ラグネルの二人は徹底的に旅館のあちらこちらを調査。今は離れの露天風呂に二人で入りながら、これまで調べた事を確かめ合っていた。
「料理の味は問題なかったけれど……量が多すぎる気がするんだよね」
 ルーンスがお腹を摩りながら感想を口にした。
 豪華に見せようとする姿勢は分からないでもないが……それなら、量よりも種類を増やした方がいいだろうか。
「江流さんの意見も楽しみ」
 期待されている眼差しに江流は緩やかに頷くと、視察の内容を思い出すように手で宙をなぞる。
「棲み分けは徹底的にした方が利用者其々にとっても有益に思う。利用者の感覚や希望出しておいてもいいかもね」
 この旅館は多機能を盛り込んだ大人数向けの母屋と、コンパクトに纏められかつ、それぞれに特徴ある離れの組み合わせで、利用の棲み分けがし易い。その結果、さまざまな利用者層を取り込める……という事でもある。
「棲み分けはありそう。ここはプライバシーも大丈夫そうだし。僕としてはもう少しお香の種類があって良いと思うけれど」
「離れは人目を憚るような、訳ありなご関係の方のご利用にも良さそうだね」
 江流はそんな言葉を口にする。秘めた思いを隠しながら……もし、そんなご関係で過ごす事ができるのであれば、それはとても特別な時間になるだろう。
(流石に無理かな……)
 とある娘の事を頭の隅へと追いやった。
 そんな江流の心境を感じてかルーンスはやや身を乗り出して、香水を垂らした手紙の様子を眺めた。明日、今日の事を記した手紙を送るのも一興だと思う。
「香る手紙と花に大切な想いを託して贈り合うサービス、なんて良いと思うんだよ」
「成る程、手紙か……ここの情景を描いた絵葉書なんか売れそうじゃない?」
「絵葉書も素敵だね!」
 ポンっとルーンスは手を叩くと月明りの庭に広がるツツジ科の植物に視線を移した。
 いつか……江流さんにこの植物の花が贈られる日が来るように願いを込めて……描いてみようかと、そう思いながら。
(……僕も今後の商会に活かそうだし)
 少年の前向きな瞳の輝きに、江流は気持ちを入れ替えるように大きく息を吸い込んだ。
 優しいお香が身体の中へと吸い込まれていく。
「そろそろ一休みしようか。朝のもてなし具合も観察しないとだしな」
 江流は微笑を浮かべてタオルに手を伸ばすのであった。

●
 ペット同伴で宿の事をあれこれ確認し終わったロイ・アウレアは夜遅く、母屋の宴会場に訪れていた。
「……これは何事だろうか?」
 依頼主であるリィミアと受付嬢のアーネリー、逆毛記者が既に出来上がっている事は兎も角、ベルク・オスマットが猫のように丸くなって寝落ちしており、ヴァンゲルス・ロッドが片手で介抱しつつ片手に酒瓶を掲げているのだ。
「来たか! まさか暇している奴が誰もいねぇとは思わなかったぞ!」
 宿に到着して早々、風呂と酒を堪能していたヴァンゲルスは、まだまだ語り足りないといった様相だった。
 参加者のほとんどがカップル……という事もあって、今はきっとそれぞれの離れでお楽しみの時間なのかもしれない。
「あー。ロイさん、おそいですー!」
「アーネリーさんは少し飲み過ぎなのでは……」
 苦笑を浮かべ心配しながら彼女の横に座りながら続ける。
「お疲れ様、役得な仕事だったね。帰ってからが大変そうだが」
「明日の事は明日、考えますー」
 参加した冒険者の数は多いので取り纏めも一苦労だろう。
「良ければ手伝おうか?」
「大丈夫、ですっ!」
 半分以上、意識が飛んでいるような気もするが受付嬢としての役目はしっかりと覚えているようだ。
 リィミアが次の酒を注ぎつつ満足そうに微笑む。
「この宿はどうでござろう?」
 プレオープンの感触を確かめるような質問にヴァンゲルスはぐいっと酒を呷ってから答えた。
「豪勢な宿だねぇ。こんなところにタダで泊まれるなんてな、冒険者家業様々だぜ」
「冒険者の影響力を頼っての事でござるよ」
 そう答えた依頼主の視線は逆毛記者に向けられた。
 チビチビと飲んでいた記者はビシっと親指を立てる。
「これから先も冒険者の活躍は広く周知されていく……そこに発生するビジネスは海よりも広い!」
 そう前置きしてから、酔っている事もあり記者はこれからの事業についてあれこれ勝手に話出した。
 口の軽い記者はどうかと思うがヴァンゲルスは適当に相槌を打って話を聞く――情報収集という意味合いの方が強いけれど。
「よし、酒はまだまだあるな。これなら夜が明けるまで飲めるぞ!」
「それなら、オレも付き合うか。アーネリーさんは無理しなくても良いですけど」
「折角のご厚意、無駄にする訳にはいきません!」
 力強く宣言すると逆毛記者から酒を奪い取り、ロイとヴァンゲルスに注ぐアーネリーだった。

●
 鹿威しの音が軽快に静まり返った夜空へと響いた。
 離れの露天風呂の中でエミリア・シバは湯船に浮かべた桶の中に徳利を戻す。
「のんびりできて良い湯ね。エクエスちゃんが照明っぽくなっているけれど」
「エミリアさんが喜んでくれるなら私(ボク)に不満はありませんよ」
 ニコっと笑った表情をエクエスはみせた。
 風呂場でも離さずに持っている『剣』は今、湯の底に置いてある訳だ……鞘から漏れる光が、揺れる水面に合わさって幻想的だった。
「後でしっかりと拭かないとね。おねえさんも手伝うわ」
 錆びる事はないだろうけど……『剣』も大事だとエミリアは知っていた。
 勿論、エクエスの流れるような金髪も赤子の様なすべすべ肌も、そうだと知れば手入れは大事だと、先程、洗いっこした時に確信はしている。
「助かります」
 安堵したのかエクエスが寄り掛かってくる。
 だから互いにもたれ合うようにエミリアも傾くと頭を寄せた。
 再び鹿威しが鳴る――。
「あの……エミリアさん。湯冷めするとエーテルを消費してしまうので……今晩は一緒に寝ても良いですか?」
「フフ。エクエスちゃんにしては積極的ね」
 甘えるようなエクエスの頭をエミリアは優しく撫でるのであった。

●
 母屋と庭園で食事や散策を終えて、マリィ・スノードロップはザスキアにエスコートされるように、割り当てられた離れに案内された。
「……すごい。景色が、ずぅーと遠くまで広がっているみたいで……素敵……」
「前はマリィに誘って貰ったから、今回は私から誘えて良かったよ」
「周囲を気にせずに過ごせるのも楽しそうですし、お誘い、ありがとうございます」
 笑顔が咲いたようなマリィを見て、ザスキアは微笑を浮かべた。
 彼女と一緒になった直近の依頼が頭に過る――体を容赦なく叩く激しい豪雨の中での不利な戦い。冒険者として成せる事は成せた依頼だったが……辛い選択をしたかもしれない彼女の心中が心配だった。
「わたし、温泉は初めてで! 足を浸けてみてもいいです?」
 マリィが離れに造られた露天風呂を見つけて元気な様子で駆け出しながら訊いて来る。ザスキアは頷くと自身も温泉へと向かった。
(気を遣われているのは、私も、か……)
 いくら依頼に慣れても心まで雨のように冷たくになってしまう訳にはいかない。
 湯に足を浸けて、マリィは嬉しそうな表情を魅せた。
「とても気持ち良いですよ! 足先から、ゆっくり温まるようです」
「私も横にいいかい?」
「はい!」
 無駄のない動きでスッと足を入れるザスキア。
 想像以上、心地良いひと時に緩んだ表情を見て、マリィは少し頬を染める。
「ザスキアさんと一緒に来られて良かったです」
「それなら、嬉しいな。私も約束してから同じ気持ちでいたからね」
「同じ気持ちで?」
「君が素敵だから、かな。いつかの桜も、躑躅も、紫陽花も……それから、今日の景色も。何もかも、前よりずっと輝いて映ってる」
 足を揺らして湯が揺れ動く様を眺めながらザスキアの言葉は続いた。
「だから、もっと君と過ごす時間が欲しくなる……これからもずっと、私の友人でいて欲しいな!」
 わたしも沢山、ザスキア(あなた)と一緒に過ごせられる事が心から――という思いは『友人』という響きという名の靄に隠れてしまい――マリィは想いを飲み込んでから応える。
「……えぇ、もちろん! そうだ、今晩はお話しながら一緒に寝ましょう!」
 せめて、少しでも長く夜を一緒に過ごしたいから……。
 そんな思いが届いているのかいないのか、ザスキアは優しく微笑んだ。
「あぁ、喜んで……ふふ。そういうの、何時ぶりかな」
 星々が巡って空が白みを帯びるまで、そんな夜も大切な思い出になるだろうから。

●
 離れ横の庭から乾いたような虫の鳴き声が聞こえてくる。
 星々を抱える夜空を、今日一日の出来事を思い返しながら、サラはベッドの上でごろんごろんと寝返りながら見ていた……少しだけ行儀が悪いかもしれないけれど。
「素敵な所だし、ごはん、美味しかった、ね」
 雰囲気の良い宿、肌がすべすべになる温泉、豪華なお食事……どれも満足だった。
「そうだな。飯がなかなか美味だった。特にあの活け造り……凄かったな。暴れていたぞ」
 そう応えただわも、ここが趣のある新しい宿だと思っていた。
 サラは頷くと転がってベッドのスペースを空ける。食事の事もそうだけど、宿で過ごしたひと時を思い返し、嬉しそうにはにかみながら。
「今日一日、だわおにいちゃんと、ゆっくり過ごせて、嬉しかった、の」
「……そうだな」
 同意するようにゆっくりと頷く、だわ。
 まどろんだ視線と共にサラがうつらうつらとした言葉を並べる。
「お布団、ふわふわだから、かな……ちょっと、眠たい、の。まだ、寝たくない、のに……」
 折角のお出掛け、もっといっぱい話したい事もあるのに身体がいう事をきかない。
 そんな彼女にだわ自身も早めに休むかと考えながら応えた。
「……最近の疲れが出ているのかもな。早めに休むといい」
「……ね、だわおにいちゃん。ひとつだけ、我儘、言っても、いい? 寝る時に、ね……手、繋いで、欲しい、な……」
 サラは掛布団から申し訳なさそうな動きで手を出しながらお願いする。
 この日が終わってしまう悲しさに――それで彼女が安心するのであればとだわは微笑んだ。
「……ああ、構わない」
 繋いだ手はあたたかくて……。
「だわおにいちゃんが、素敵な夢を、見られます、ように……」
「おやすみ、サラ」
 穏やかな寝息を立てる彼女の寝顔を見守りながら、だわも意識を沈める。
 きっと今日は、二人一緒に楽しむ夢を見られるだろうから――。

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 旅館内外を歩き、心満たされる食事を堪能し、二人だけの時間を過ごしてきたハヤト=ガラン=ヴォルファングとサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブの二人は人の気配がない時間帯を狙って大浴場に訪れていた。
「ワァーイ! ハヤトとおんせーん!」
「誰もいねぇな」
 楽しくて仕方ないと言った様相で水着姿のサフィラがはしゃぐ。
 大人げなく、互いに息が上がる程、びしょ濡れになるまで湯を掛け合ってから、サフィラが温泉へと浸かる。
「ふー……いい湯加減……。ハヤト! こっちこっち!」
 温泉の効能を確かめるように肌を摩りながら、サフィラが露天風呂と一体化した東屋の脇から声を掛けた。
「ここの温泉、広すぎだろ……って、良い場所見つけたな」
 奥まった所にあるから、ここなら万が一、他の人が温泉に来たとしても見え難いだろうか……などと分析と何かしらの期待をしつつ、ハヤトは恋人(サフィラ)の隣に座る。
 湯けむりの間から夜空が幻想的に見えた。
 照明が少ない為か、星々がより一層明るく感じられる。サフィラも天へと吸い込まれるように眺めてしまう。
「星が綺麗だねっ……すごくロマンチック……」
「あぁ……そうだな。二人で沢山の夜を過ごしてきたはずなのに、まるで、初めての夜みたいだ」
 カッコつけた訳でもない恋人(ハヤト)の言葉にドキっとして横顔見る。
 戦場で見せる時とは違った真剣な表情は、星々よりも眩しく見えた。
「……? ん、なんだよ?」
 視線に気が付いて、ハヤトがニヤリと笑うとサフィラの肩に手を回してグッと強引に抱き寄せた。
 そして両腕で包むように軽く抱きしめると、耳元で囁く。
「夜空も綺麗だが、俺にとってはサフィラが最高の女だ……」
 そして、首筋の香りを確かめるように口先を寄せ、手を鎖骨から下の方へと滑らす――所で、抑えられた。
「ってもう! また鼻の下伸ばして!」
「この流れ(シチュエーション)だぜ。サフィラもそう思うだろ?」
 そんな台詞にサフィラは「うっ……」と言葉が漏れる。そういや、最近、ご無沙汰な気がするし、たまにはいいかも……と思うのは確かだ。
 悩む間にも伸びるハヤトの手の動きに、サフィラがガバっと体勢を入れ替えると、彼に覆いかぶさるように上を取って不敵な笑みを浮かべる。
「ほらっ、落ち着いて!」
「ったく、しょうがねぇな」
 二人の姿と唇が一つに重なる。
 体中が熱いのはきっと、温泉に長く浸かり過ぎたからだけではないと思う二人であった。

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 やや乱れたままの浴衣姿でローザリカ・L・ディオールは音を立てないように襖を開けた。
「夜這い、ではないから」
 確かめるように言った台詞――反応のない彼に口元を緩めた。
 いつも一方的に攻められている気がしてならないので、ここらで仕返ししてやろうと思っての事だ……いや、油断はできない。寝たふりしている可能性だってある。彼はそういう男なのだから。
 抜き足差し足、忍び足……近づくたびに高まる心臓の音に堪えながら、枕元に立つ。
「…………」
 けしからんほどに惑わしてくる口は閉じ、吸い込まれそうな瞳は瞼に隠れていた。
 熟睡している? いや、油断大敵……と思いつつも、あどけない寝顔に魅入ってしまう。
 ローザリカは大胆にも見つめ合うように横になる――どうやら、彼は本当に寝ているようだ。
「……早く……」
 寝顔だけじゃなく、起きている時も、何もかも全て独占したい気持ちを、声に出さず唇だけ動かして発するのであった。

 小鳥のさえずりの中、ジュスト・ヴェルジーは思わず間抜けな声を出してしまった。
「……は?」
 婚約者であっても色々な事情があるので……という大人の事情を投げだしたような彼女の行動のせいだ。一瞬、なんやかんややっちまったのかと驚いたが、すぐに昨晩の事を思い出して冷静になった――確か、彼女は隣の部屋で寝ていたはずだと。
(……ロゼ、だからかな)
 普段なら人の気配を感じて目を覚ましたはずだ。
 肘枕を立てたまま、彼女の寝顔を眺める――夜這いではないだろうが……無防備な姿というのもいつもと違うものだなと思う。
 穏やかな寝息、長く美しいラインを描くまつ毛、潤った唇……そして、少しはだけた浴衣が、とても色っぽく映った。
「ロゼ。……ローゼ?」
 風邪をひかせる訳にもいかないので、彼女の頬にかかる髪を優しくよけながら耳元で囁いた。

 その囁きにローザリカが微睡みながら目を摩って起き……状況を把握して顔を朝日よりも真っ赤に染める。
 悪戯しに来たはずが、いつの間に眠っていたなんて! という心の声を読み取って、ジュストは余裕の表情を浮かべ、不敵な笑みと共に掛布団を広げてみせる。
「おはよう。まだ寝足りないのなら、僕の隣(ココ)で寝るかい?」
「ね、寝言はっ! 寝てから言うんだな!!」
 悔しさと恥ずかしさが入り混じった感情に翻弄されながらローザリカは布団を引き剥がした上でジュストに叩きつけてそう負け惜しむ(叫ぶ)のであった。

マスターコメント

 お疲れ様でした&ご依頼にご参加いただき、ありがとうございました。  露天風呂付き離れで皆さん、それぞれお過ごしになる事ができたでしょうか。何か起こった人も、何も起こらなかった人も色々かと思いますが、これもまた、人生と言う旅路の途中の出来事……つまり、何が良いたいかというと、暫く時が経過したら、また同じ舞台でやってみたいなって事!  出来るかどうかは未定ですけど……記憶を振り返りながらも、一興かと思うので。できたらいいなーみたいな気持ちです。  それでは、改めて、依頼へのご参加、ありがとうございました。また機会があれば冒険者の方々のご参加の程、お待ちしております。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:標準25 / 4〜25人

2022年06月17日 17時01分30秒 公開

大成功

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0