【人馬】トカゲ料理パーティ!
七海真砂
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シナリオID:2024
オープニング
「我々には考えなければいけない事が二つあるな」
ううむ、と唸りながらクーネさんは言った。
真剣な顔で言った。
「まず、一つ目は倒した強化魔獣の活用法だ!
このでっかいトカゲだが、肉が結構美味いことが判明した! ただ腐らせるのも勿体ないし、どうせなら美味しくみんなで食べようじゃないか。という訳で、このトカゲをより美味しく食べる為のアイデアを募集するぞ!」
何かと財政状況があれやこれや大変な帝国。
不作だったり何だり色々あって大変な帝国。
そこにやってきた強化魔獣という名の食料である。
より美味しく食べる為、料理のバリエーションはいくつあっても良いだろうし、保存に向いた加工の仕方や、そこからの調理法などもきっと皆の役に立つだろうとクーネさんは言う。
「すまないが、私は料理が出来ない……。だから、ぜひ皆に頼りたい! もちろん、私と一緒に美味しく食べる者も歓迎だ! こういうのは人数が多ければ多いほど盛り上がって楽しいものだ。食事というものは、そういうのがエッセンスになって更に美味くなるものだからな!」
冒険者のトカゲ料理が振る舞われると聞いて、近郊の兵士や住民なども顔を出すという。
当日は、さぞ賑やかなことになるだろう。
「それから二つ目は、このエーテル石の扱いだな」
と、クーネさんが振り返ったのは、荷馬車に積み込まれたエーテル石である。
これは先日、メドゥの左腕の配下が運び出そうとしたものを、冒険者達が押収したものだ。
「せっかくだから何かに活用したいが、使い方がさっぱり分からん! という訳で、どこの誰に相談したら良いと思うとか、どういう研究を進めて活用できないか試みたら良いと思うとか、そういう提案を募集するぞ!」
あとは保管場所だな、とクーネさんは言う。
「ヴィントには帝国軍が持ち帰ったエーテル石もあるだろうし、一緒に預けてしまうというのも考えたんだが……」
問題は、メドゥの左腕の存在だ。ヴィントに大量のエーテル石があるとなれば、今度はヴィントが襲撃されるかもしれない。
「ヴィントだと、皇子や将軍を危険に晒してしまうかもしれないから、余計になぁ……」
そうなる原因を作る訳にもいかないわけで。ちょっと気軽には預けられなかったらしい。
「ヴィントよりはオルセンかな。あそこは征竜への備えもあるし。あとはダルトートみたいな一般人のいない廃墟に持って行って、みんなで自主的に警備するとかか? ただ、ちょっと大変かもしれないな」
なにせ、相手は瘴気纏う腐緑獣を引き連れて来るような人物である。そのレベルの戦力が攻めて来ても大丈夫な戦力を、常に置いておくのは容易では無い。
「ま、皆で考えたら何か良い案が出るだろ! トカゲ料理を食べながらゆっくり話すとしよう!」
解説
マスターより
リプレイ
半信半疑な顔で、エルゼリオ・レイノーラは強化魔獣を見つめていた。鳥肉みたいな味と言われても、この見た目である。しかも散々ボコった相手である。
(蛙と似たようなカンジ……なのかなぁ?)
でも蛙は食べられるって言うし。鳥肉みたいで美味しいって似たような事を言うし……?
本当に本当に、食べられるのかも……?
じわりじわりと、そんなような気がしてきたエルゼリオは、意を決してトカゲと見つめ合う。
「……まぁ、そんなにクーネさんが食べたいっていうなら、折角だし美味しく調理したいよね」
「エルゼリオ……!」
そういう事なら、と用意された包丁を手に取ったエルゼリオの姿に、クーネさんが嬉しそうに顔を輝かせる。
「いい話だね~。ようし、調理頑張ろうね!」
その様子を見て、うんうんと頷いたアルマ・ヴァレンタインはニコニコとトカゲさんと向かい合っている。
強化魔獣のトカゲだなんて、アルマ好みの食材を見逃す訳にはいかない。各種取り揃えている調味料を取り出しているその間に、ストレガ・L・リベルガストラは早速集まっている皆に向かって語り掛ける。
「本日食べる分だけの肉をとりわけ、多くは燻製にするのが良いのだ」
燻製肉は皆の食料となり、あるいは売りさばくことで資金の足しと出来るだろう。その為にもまずは解体からだと、ストレガは手にした刃を煌めかせる。
「トカゲって味はささみに近いとか聞くし、フライにする? 骨取りとか面倒だけど」
「まあ、その辺は任せておくのだ」
料理方法を考えるサイラスに、腕が鳴るのだと構えるストレガ。そんな二人の前に立つのはスー・ルーとパヴェル・A・サムルガチェフだ。
「じゃあ、どっちがうまく捌けるか勝負しようぜ」
「おうよ――負けねぇぜ?」
肉を切ったり捌いたりするのは得意だと構えるスールに、負けじと笑うパヴェル……二人はほぼ同時に飛び出すと、叡智に至る万覚帳を手にしたストレガが指示した位置を切り分けていく。
「まずは内臓が傷付かないように摘出し、皮と骨を丁寧に取り除いていくのだ」
ストレガは、ご近所のお母さんや兵士の皆さん向けのレクチャーも忘れない。内臓を綺麗に取り分け、皮は衣類の材料に使うのだと別の箱へ納めていく一方、三人が取り分けた骨回りの部位は、マリイ・パルティスにパスする。
「これは、煮込み甲斐がありそうですね」
マリイは大きな鍋に水と共に入れ、香味野菜を足しながら煮込み始める。こうすることでブイヨンを作り、更にコンソメスープ、そしてクリーム煮へと仕立て上げようというのである。
「保存は難しいですし、少し時間はかかりますが、余すことなく使えますしね」
「煮込み料理は原型が分からなくなるのも良さそうですね」
グレイブ・ヤードも鍋を取り、スープを分けて貰うと、トマトを加えて煮込み料理に仕上げていく。匂いや見た目を気にする人がいるかもしれないが、煮込み料理なら緩和されるはずだ。
「香草を、少し多めにしておきますか」
人は料理を五感で味わう。香りの付け方もポイントになるだろうと、グレイブは何種類かの香草を加えていく。
「ボクはちょっと辛めにしてみようかな!」
臭みがあっても相殺されるはずだと、エルゼリオは唐辛子とハーブを加えて味を見る。うん、臭みは感じ無さそうだねと頷くと、更にナンプラーで味を調えてコトコト煮込む。
「考えることは同じだったか」
ハーブや香辛料を準備してきたのは、だわも同じだったが、こちらはトカゲ肉のステーキだ。塩と胡椒をベースにした味付けで焼き上げられたステーキはというと。
「ん、美味いな」
「お兄ちゃん、それもう食べれる?」
「食べていい?」
「ああ、待ってろ」
味見をして、だわが一つ頷いたのを見て、お腹を空かせた子供達が集まって来る。だわはすぐそれを盛り付けて、皿を渡してやる。
「こっちの串焼きも、そろそろ食べられるよ。仲良くおいしく召し上がれ~だよ!」
「やったー!」
アルマが焼いていた串焼きは、ハーブ塩だけでなく、巴屋の高級醤油と甘露アリの恵みを使ったタレ味もあって、辺りには両方の良い匂いがどんどん漂う。
「おおっ、コイツはいいな」
ステーキに、更に串を丼の上に載せたパヴェルはニンマリ。一仕事終えた後のご褒美メシだと言わんばかりに一気に掻っ込み、塩にハーブ、胡椒に濃厚なソース……と、様々な味に染まったトカゲ肉盛り丼を味わう。
「早いなパヴェル……」
解体作業を終えたスールは、刃物を片付けつつそんなパヴェルを眺めている。豪快さとスピードはパヴェル、細やかな作業まわりはスールに軍配といったところだろうか。
(ああ……しあわせです……)
そんな彼らの成果である肉が焼かれていく中、うっとりとした顔で、リディリディ・トゥラ・イェレミースは手を動かし続けていた。香ばしく薫る何種類ものスパイス、舌の上に広がる多様な味の肉、肉、肉――。
「モツ焼きもあるのだ」
「!!」
話しかけられて震えたリディリディの目の前には、ストレガが置いて去っていったモツ焼の器。内臓も普通にイケそうだと判断したストレガの手で調理されたそれに、早速リディリディの手が伸びる。
ああ――ここがパラダイスだろうか――。
「こっちもそろそろいけそうですよ」
と、トーラが手にしたボウルの中には、漬け込まれたトカゲ肉。衣をつけて目指すその先は、たっぷりの油……じゅわっと良い音を立てて作られていくのは唐揚げだ。
「唐揚げ……。揚げ物といえば? そう! レモンです!」
ちゃんと用意してあります! とミア=リゼルが取り出したのはレモンが入ったバスケットだった。一緒に来たコハクに「コハクさんも掛ける派ですか?」と振り返るミアだったが。
「唐揚げはトーラが作ってくれてるから、私はトカゲ南蛮を作ろうか」
「……え? コハクさんが作ってくれるのですか?」
「うん」
今日は、なんだかそういう気分になったから……などと言うコハクの様子にミアは「おおっ」と声を上げる。『歩くブラックホール』などなどなど、食に関して数々の異名を持つコハクが、作る側とは珍しい。
「では不肖ミア、食べる係になります!」
びしっと敬礼ポーズを取って「あ、でも、出来上がるまで待つだけなのもあれなんで……」と、見回してレモンに目をやったミアは「これでレモネードを作りますね!」とコハクの傍らに立つ。
「すごーい。コハクさん、手際良いですね」
「そう? ありがとう」
やればできるタイプなのか意外な腕前だと感心しているミアの前で、コハクはタルタルソースを作り、ピカタも用意しようかと卵を混ぜ始める。
「ほあー、美味しい……コハクさん、レモン掛けていいですか?」
「いいよ」
「はーい! ……ああ、レモンが効いて更に美味しいっ」
もぐもぐと食べて、レモネードを更に一口。甘やかでスッキリとした味わいにミアは目を細めて。
「ふふ、これは皆さんにも楽しんでいただかないと、ですね」
「そうね、皆もどうぞ」
ミアがレモネードと一緒に料理を配れば、皆からも料理が返って来る。その頃には煮込み料理の数々も、ちょうど良い具合に出来上がっていて。
「これは……素晴らしいな……!」
ご馳走の山じゃないか! と子供達に混ざって喜ぶクーネさんである。
「さ、食べて食べて?」
「うん、いただきます! ……んん、この辛みが体も温まっていいなぁ」
「美味い! 焼くのも煮るのも揚げるのも、味付けにたくさんバリエーションがあっていいなぁ」
エルゼリオの煮込んだトカゲ料理を、はふはふと食べるクーネさん。ナハシュが一口ずつ色々な料理に手を伸ばし、どれもこれも美味いと笑うその言葉に頷くように、リディリディの手は止まらない。
「クリーム煮もどうぞ」
「ん~。野菜と一緒に食べるとまた美味しいなぁ」
トカゲ肉と一緒に煮込まれた人参や芋などがまた、良い味を出しているとクーネさんの頬が緩む。トカゲからスープを作るのは初めてで、少々不安だったマリイは胸を撫で下ろすと、日持ちしない品ですからどんどん食べてくださいと皆に配る。
「そういや保存の仕方だっけ? 燻製以外だと、一般的なのは塩漬けか?」
「そうだな。さっき、いくらか揉んでみたんだが」
ナハシュの言葉に頷いて、だわが手を加えた肉を持ってくる。試しに少し焼いてみると、
「おっ、イケるイケる」
塩はアリだなと笑ったナハシュは「そういや、油ってのもあるらしいぜ」と皆を見る。
「油の中にぶち込んで、熱くねえ場所に置いとくのもいいらしい。なんでも空気と断絶されて腐りにくくなるんだと」
「ほほう」
理由は分からねぇがそういうものらしいと言うナハシュに、油なら用意ができそうだし、良さそうだとクーネさんが頷いている。
「オイル漬けってや……やつですわね」
唐揚げをひとつ口の中へぽいっと放り込んだナジクは、マルミットの視線に気付くと上品ぶって口元を拭い、口元に笑みを覗かせて頷く。
「壺などに入れやすい大きさにお肉を切りまして……塩やハーブを入れた油でゆっくり煮ますと、日持ちしますのよ」
「へえ、姫さま詳しい!」
すごいなぁと感心した様子で見つめてくるマルミットに、ナジクはにこやかに笑い返して。「まあ俺の料理は節約や日持ち重視だからな」という言葉は出さずに飲み込んでおく。
「姫さまはトカゲ平気なんだね」
「ええ。貴重な食料ですし……それに、美味しゅうございますわよ」
「……よし! ちょっとドキドキするけどボクも食べてみる!」
食べ慣れないトカゲ料理に躊躇していたマルミットだったが、ナジクが美味しそうに食べているのを見たら勇気が出たらしい。静かにナイフを動かして、切り分けたステーキにフォークを差し込んで一口……。
「本当だ、美味しい!」
「でしょう?」
目をキラキラさせて喜んだマルミットが、更に煮込み料理へ手を伸ばしていく様子を、やれやれと見つめるナジクである。
「保存といえば、ちょっと試作してみたんだが……」
「!!! それは……ッ!!!」
そこへカイン・ステラが運んできた物を見て、ベルク・オスマットがハッと息を呑む。
トカゲ肉をスライスし、醤油とハーブ塩、シロップで作った液に漬けることしばらく。火加減に注意しながらじっくり焼き込んだそれは――。
「ああ、リザードジャーキーだ」
「素晴らしい。やはりジャーキーは欠かせないな」
カインが用意したリザードジャーキーを早速試食したベルクは、「うん、これは酒に合いそ……」と言いかけて、咳払いをひとつ。
「ドワーフ王国が友邦である以上、かの国の人々の生活に配慮した料理もあるべきだろう。そう、酒の肴になりそうな物の需要は間違いなくある……故に、こうした品は必須なのだ!」
「おお~」
リザードジャーキ―の重要性、必要性を力説するベルクに、ナハシュやクーネさんが一緒になって拍手している。滅茶苦茶私情まみれの演説のように聞こえるが、言ってる内容はちゃんと一理ある。
「まあ、野菜と一緒に煮込めば、いい出汁のスープになるだろうし」
「普通に食材として良いと思うのだ」
肴として食べるだけでなく、普通に料理にも使えるだろうと話すカインにストレガは同意を示すと、「途中から来た人達に、トカゲの捌き方をレクチャーするのだ」と、まだ未解体だったトカゲの方へ向かう。
「使えない部位なんてほとんど無いのだ。皮は衣類の材料に、骨からは出汁が採れ、そして肥料になるのだ」
そうしてまた育った作物が人々の胃を満たす。
知らば獣一匹が食材の宝庫となる。食は万世共通の幸福なれば――ストレガの想いは皆にも伝わるのだろう。子供達が料理を味わう傍らで、大人達は真剣に話を聞いている。その間にカインは皆が作った料理のレシピをまとめ、文字が読める者達の間だけでも役立てて欲しいと、それを渡すのだった。
「後の課題はエーテル石でしょうか」
コハクの作ったガパオライスが運ばれる中、グレイブはそう口にすると、料理に使われた道具達を一瞥した。
「使い方が分からないということは、既存のやり方が通じなかった、ということでしょう? 『鍛冶に詳しい方では出てこない発想』が必要なのかもしれませんね」
エーテル石は以前、邪竜バイアーディスとの戦いの折、ドワーフ王国が魔法陣ごと解析を試みたものの難航したという過去がある。
「それこそ煮たりしてみますか? 道具もありますし」
「なるほど。やろう」
早速鍋に入りそうなエーテル石を見繕って試してみるが、エーテル石が反応する様子は無かった。なら今度は、と火に直接かけて焼いてみるが、これも変化は見られない。
「あとは……割ったり魔法ぶつけてみるか?」
「回復もしてみましょう」
スールが自らのエーテルを燃やし、魔力を増幅させながら飛ばした魔矢は、確かにエーテル石に命中する……が、エーテル石はびくともしない。エーテルによる干渉であれば、とグレイブは癒しの光を繰り返し発し、スールの攻撃の威力以上の回復を注ぎ込んでみるが、やはり反応は現れなかった。
「……人知の及ばぬ代物というと、神具を思い出しますね。でも使い方すら分からないとは……」
その様子を見ながらマリイは難しい顔をする。
「そういえば、以前人馬の村で見た魔法陣はエーテル石と関係あるのかな」
「バイアーディスの時も魔法陣があったし、魔法陣ってのが何かポイントになってるのかもなー」
サイラスの脳裏に一瞬、エフレムのことがよぎる。あの時のエフレムも魔法陣に手を加えていたようだから、エーテル石単体で行使するよりも、取り扱いしやすい何かがあるのかもしれない。
「やはり、知っていそうな者となると、そうなるか」
ベルクは帝都の方角を見やる。現状これを扱えそうな者はといえば、心当たりはそれくらいしかなかった。
「ん~。いずれ訪ねようとは思っているが、一人どころか少数精鋭でもたどり着けるか怪しいのだよな。何せ帝都どころか皇宮にいそうだし」
「ああ……厄介そうだよなぁ……」
ベルクの言葉が誰を指しているのか、直接の面識は無くても察したのだろう。クーネさんも難しそうな顔をしている。ベルクとしては、いずれそうした話もきちんとしたいと、そう思ってはいる、のだが――。
「後はどうしましょう。欠片を飲んでみるというのも考えましたが、そもそも割れないとなると……」
無銘祭祀刀でエーテル石をコツコツやってるグレイブの言葉に「そういう事なら私の出番だな」とクーネさんが宝剣マフダルを振り上げ、一気に叩きつけた。
先程までとは違う衝突音――亀裂が入り、一気に割れるエーテル石だったが、その淡い光は失われないままだった。
「割れても、エーテル石としての能力は保たれているということか……」
あるいはエーテル石を砕いて破壊し、破棄するという選択肢もあるかもしれないと……だわは考えていたのだが、これでは破棄すること自体が難しいかもしれないと押し黙る。クーネさんが拾い上げた小さな破片ですら、まだ淡く光り続けていたからだ。
「じゃあ飲んでみるか」
「えーっ、大丈夫!?」
ごっくん。
止める間もなく手にした欠片を飲み込んだクーネさんの様子に、エルゼリオ達がハラハラして見守るが、とりあえず急激に何か反応が現れる、といった様子は無さそうだ。
しかし。
「んー、何だろうな、この感じ……」
「おや? 変化がありましたか?」
複雑そうな表情をしているクーネさんの様子に、グレイブが興味深そうにフードを揺らす。
「いや逆だな。変化は無い、が……こう、体のエーテルと体内のエーテル石が、何か干渉しようとして出来ていない感じがするというか……」
変化は無いが、何も起こっていない訳でも無いらしい。
「多分、私達の体はエーテル石を食べても、何も変わらないようにできているんじゃないかな。だからこういう感じになっているんだと思う」
もしかしたら、どこかにはエーテル石を食べることで何かが起こる生物がいるのかもしれないが、少なくともヒトは、そのような生き物では無いようだった。
「トカゲ肉のカシューナッツ炒め作ったけど、いる?」
「あ、食べたい」
その間も、料理作りに励んでいたコハクの新しい皿が出てくると、それをつまんで話は続く。
「ケンタウロスの人達が使い方を知らないでしょうか?」
「ケンタウロスかー。政治的な交渉をやるらしいから、それ次第では何か聞けるかもな」
首を傾げたトーラの言葉に、クーネさんはなんとなく東の方を見る。
「なるほど。あと出来そうなのは、テイマーが多そうなゴールディでの研究や、リブラネスタにいるヴィンダールヴルさんに武具の強化に使えないか見て貰うなどでしょうか?」
クリーパーや魔獣などの強化にエーテル石が使われていたことを考えると、ビッグオウムを扱うゴールディで分かることもあるのではないかとトーラは思い立つ。『神匠』ヴィンダールヴルによる活用も、授恵者には大きなメリットがあるように感じられ、幾人もが頷いた。
「リブラネスタは、エーテル石の保管場所としても良いんじゃないか? 授恵者を多く擁するあの街は、戦力的にも攻め込まれづらいと思うが」
「冒険者の拠点になっている街か。それは確かに一理ある。が、ええと、同盟にあるんだろう? そこが問題だなー……」
だわの提案に頷きつつ、クーネさんはとても渋そうな顔をした。
「火種を持ち込んだとか後から揉めると面倒だぞ~。そうじゃなくても、ただでさえエーテル石は火種になる可能性を十分に孕んでいるからな」
「火種……?」
「――エーテル石を欲しがるのは、メドゥの左腕だけとは限らない」
誰が、どのように欲しがるのかまでは、クーネさんは言及しなかった。ただその瞬間とても真面目な眼差しをしていたクーネさんは、すぐにそれを緩めて「という訳で、リブラネスタは止めておこう」と言った。
「んじゃオルセン辺りに保管して、ゴールディやドワーフ連中を呼ぶって感じか?」
「その位が良いだろうな」
ナハシュの言葉に頷き返すクーネさんである。
「なかなか難しいもんだなぁ。エーテル石からエーテルを取り出す方法と、その活用法の両方を研究しなけりゃならねぇとは」
エーテル石を装備に活用できないかと期待する一人であるパヴェルはむむむと唸る。ヴィンダールヴルを呼ぶにしても、先の見えない状態でずっと、という訳にはいかないだろうから、せめてもう少し、エーテル石そのものを扱える目処がついて欲しい所ではある。
「そうだねー。根っこの部分がどうにかなってくれたら、あとは色んな研究に手を伸ばしやすいんだろうけど」
トカゲをじっくり蒸し焼きにしながら皆の話を聞いていたアルマは「そうしたらエーテル浄化者さんの手助けや触媒なんかにも使えると良いよね」と口にする。
「ああ、それは確かに。皆の暮らしが良くなるもんな」
凶作が転じて豊作になれば、喜ぶ人、暮らしが楽になる人は多いだろう。そういう大勢の人の役に立つような平和的な使い方がいろいろ出来たらいいな、とカインは頷いた。
「戦いに使うにしても、敵のパワーの相殺とかできるといいかもね。パワーを増幅させる効果があるなら、その逆も出来ないかな?」
マルミットの脳裏にあるのは、つい先日、西の方で激闘が繰り広げられたという皇帝ヨゼフの存在だった。そうじゃなくても、ハチャメチャに大暴れする敵を抑えるのに使えたら、きっと助かる場面はあるはずだ。
「弱体化方面はありだな。エーテルぶっこぬいて弱体化できるようになったら、いろいろ楽になりそうだし」
魔獣やクリーパーでそれができるなら、メドゥの左腕対策にも繋がるだろうしとサイラスは頷く。それに、こういう方向性ならば、いろいろ付与したり強化する方面よりも平和に纏まってくれそうな予感もするし。
「パワーの応用ができたらいいよねー。スキルを使う時とか、クーネさんのつよつよ剣のチャージにも使ったり?」
中身がエーテルなら、そういう使い方もできたりしないかなぁとアルマは呟く。
「なるほど。攻撃に使う位のイメージしかなかったが、色々あるな」
そうした皆のアイデアをクーネさんは感心して聞いている。
ここにあるエーテル石だけだと、全員の装備品に何かするといったアイデアには数が足りないだろうが、逆に使うタイミングや対象が限られるアイデアには活かしやすいかもしれない。
「あとはオルセンに預ける場合、警備の問題をどうするか……だよね」
授恵者を確保するなら、冒険者ギルドに定期的に依頼を出したりするのが手っ取り早いんだろうけど……とエルゼリオは口にするが、そこには資金面の問題がある。
「資金の問題は、ちょっと……どうにもできないかもしれない……!」
ガクリと項垂れるクーネさんである。
「んじゃ金の掛からない手を考えりゃ良いんじゃね?」
いろいろ食べて満腹になったマルミットが、うとうと眠りに落ちているのを見たナジクは、素の口調に戻ってそんなクーネさん達を見る。
「実際の置き場とは別に、偽装用の置き場ってのをでっちあげんのはどうよ」
要は囮作戦である。メドゥの左腕の目を欺き、全然違う場所に惹きつけることができれば、襲撃を逸らし時間を稼ぐ事ができるだろう。
「偽装先が襲われたら警戒を強化するなり、エーテル石を更に動かすなり? いろいろと対策したら良いんじゃねえかな。んで偽装先はダルトートみてえな廃墟にしておけば、メドゥの左腕が突然襲ってきても被害は出ない訳だろ?」
「なるほど。良いな、それ」
メドゥの左腕が来ても困らない場所に、敢えて相手を惹きつけておくという逆転の発想である。上手くいけば効果は高そうだとクーネさんが身を乗り出す。
「輸送は荷馬車などを使えば目立つから、可能ならマジカルポケットに入れられるといいな」
「そうだな、上手く誤魔化すには使えそうだ。按配を考えつつやってみよう」
更に、だわが続けた提案にも頷き返し、オルセンに一度連絡をして、この方針でやってみようかと笑うクーネさんだった。
マスターコメント
イベントシナリオ(50人)易しい 報酬:標準18 / 4〜50人
2022年04月09日 08時14分23秒 公開
参加者
相談掲示板
トーラです。 よろしくお願いします! トカゲ料理……エーテル石で強化されたら美味しくなったりするんでしょうか?( とりあえず、料理に回ろうかと思うんですけど、料理をする方はどんなものを作るつもりでしょうか? 重複を避けた方が色々食べれると思うので、教えて貰えると助かります。わたしは今のところ唐揚げを作ろうかと思っています。 リクエストも歓迎ですよー? エーテル石については、魔獣やクリーパーを強化していたことは分かっているので、ビッグオウムを駆るテイマーが多そうなゴールディでの研究や、リブラネスタにいる神匠さんに武器の強化に使えないか持ち込めないかと思っています。
カイン・ステラ。 よろしくな。 俺も料理に回る。 うーん、幾つか料理は思いつくけど、具体的にはまだ。 近郊の兵士や住民が顔を出すらしいから、皆で食べられるものの方がいいかなって思ってるけど。
アルマだよ、どーぞよろしくねー トカゲのお肉ー!ボクは丸焼きでも大歓迎だけど兵士さんや住民さんに振舞うとなるとー… 唐揚げ案はだしてもらえてるし美味しい鳥肉みたいな味がするということで 焼き鳥ならぬ串焼きにでもしてみようかなと えーてる石の使い道はこれから研究なんだねー ミニ幽界樹に吸い上げられて枯れた土地を浄化者さんで どうこうするお話があった気がするのでそれの手助けにでも使えないかなーと
キャスターのパヴェルだ。 肉は濃いめのソースを絡めてかぶりつきてぇかな。 それはさておき、エーテル石っての。かなり興味があるぜ。 危険はあるだろうが、小さく砕いて得手に埋め込んだり 俺ら自身向けて事もできるんじゃねぇかな。自滅しかねねぇけど。
No.5
キャスターのスールだ、よろしくな。 トカゲだろ?焼けば食えるし、焼くのは誰でもできるから好きだぜ。 他のやり方は、俺は作らねぇから。多分お前らの方が色々できるだろ だから、あー……捌く手伝いでもすればいいか。それなら得意だ。
俺はナジク。ゴブリンのキャスターだ。どうぞよろしく。 肉が食べ放題とは景気の良い依頼だな。ありがてえことだ。 食べきれねえ肉が腐るのはもったいねえ。保存食は作る工程に日数がかかるものが多いな……。長期保存とまではいかねえが多少は日持ちするオイル漬けでも作ってみっか。 唐揚げとか串焼きとかソースを絡めてとか、皆の料理も美味そうだな。
お、スーの旦那じゃねぇかぃ 久しぶりだねぇ。元気そうで何よりだぜ。
ヒーラー、グレイブ・ヤードです 調理方法的にも少し考えてもいいかもしれませんねえ。 体調不良の方でも食べやすい(栄養を取り入れやすい)ように煮込むとか できれば無駄なく使えれば、とは思います。
No.9
おう、パヴェルじゃねぇか 元気だぜ。もうそろそろ冬も終わるしな。 同じ依頼なんだ、他に約束してなきゃ一緒に何かするか? つってもお前は捌く手伝いとかいらなさそうだけどよ
ん。やろうぜ。水臭いこと言うなよ。そんな手先が器用なわけでもねぇし。 俺たちで出来ること……巨大な大鍋の設営とか力がいる仕事でもやってみるかぃ?でかいトカゲなら、刃物が通る高さの足場もいるだろうしなぁ
No.11
そうか?器用じゃないとは思わねぇけどな…… ま、いいや。一緒にできることがあるなら嬉しいしな。 でかいトカゲ用のいろいろってことか、いいぜ。 たしかに、背のちいせぇやつは切ったり焼いたりも大変そうだしな。 力仕事とか、肉を切って渡す仕事なんかならおれでもやれるぜ。 肉切るのも時間かかるからな、俺らでやれば料理するやつはその分料理の時間ができるかもだ