第一次ミーナ=フリッツ戦争
影絵 企鵝
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オープニング
ミネルヴァ・フィーギルがリーンエス王国へ帰ってみると、こちらもまた珍しく雪模様となっていた。極北から張り出した寒波が、王国北部にまで覆いかぶさったらしい。慣れない雪かきに苦戦する村々を眺めながら、ミーナは一直線にオーデンヴァルト子爵――フリードリヒ・ホーエンバッハの領地を目指す。フリッツは彼女の帰還を誰よりも心待ちにしているはずだったからだ。
ミーナはフリッツの従者に連れられ、彼の『動物園』を訪れる。冬将軍もこの珍奇な森を観光に来たらしく、雪はミーナのブーツのくるぶし辺りまで積もっていた。彼女は白い息を吐きながら、森をぐるりと見渡す。北方育ちの鹿や狼は平然と餌台の食事にありついていたが、南方育ちの動物達は姿が見えない。首を傾げながら歩いていると、木々の狭間に見慣れた人影がちらついた。
「フリッツ!」
ミーナは満面の笑みで婚約者へと駆け寄る。鷲を一羽腕に留めていたフリッツは、溜め息交じりに振り返った。
「随分と元気そうで何よりだよ、ミーナ」
「ふん。婚約者を迎えるにしては随分なご挨拶ね、フリッツ。もっと大喜びしてくれたっていいんじゃないの」
「喜んでるとも。ただ、君の無事は冒険者ギルドから送られてくる報告書やエレアノールから聞いてるから、今さら飛んで驚くような事じゃないってだけさ」
「はいはい。そりゃ結構」
ミーナは口を尖らすと、雪玉を作って近くの木にぶつけ始める。いかにも不満そうな仕草だが、フリッツは構わず尋ねる。
「それで、首尾はどうだったんだ」
「上々。隊商を組んでティロールまで来てくれるように約束を取り付けたわ」
「素晴らしい。シャルガネ人ならティロールで取れる木材の価値をよくわかってくれるはずだ」
フリッツは腕を大きく振り抜き、鷲を空高く飛ばす。高らかに鳴くその背中を見送りながら、ミーナは眉根を寄せる。
「動物達はどうしたの。全然姿が見えないんだけど」
「厩舎に引っ込めた。元々寒いところで暮らしている鹿や狼はともかく、乾燥地帯で暮らしてるライオンやらキリンにはこの寒さは堪えるからな」
「ふうん。じゃあしばらくはこのつまらない景色が続くってわけね」
「仕方ないだろ。病気になったら困る」
棘っぽい言い方に、フリッツは少し眉を寄せる。ミーナはそんな彼の表情をじっと窺っていたが、やがて急に雪玉をフリッツに向かって一つ放り投げた。フリッツは慌てて横に逃げる。
「何するんだ」
「動物達と遊べないっていうなら、雪合戦しましょうよ。せっかくここまで来たのに、お話だけして帰るなんて嫌なんだけど」
「子どもじゃないんだぞ。雪にはしゃいで雪合戦なんて――」
その時、ミーナが立て続けに二発放った雪玉がフリッツの額に命中した。新雪の柔らかい雪が飛び散り、彼の顔を真っ白にする。その顔を見たミーナは甲高く笑った。
「アハハ! いい顔!」
「……こいつ!」
フリッツは吠えながら顔についた雪を拭うと、彼も雪玉をいくつも作り、彼女に向かってぽいぽい放り投げる。
「そうか! わかったぞ! そうまでするんなら受けて立ってやる!」
ミーナは襟巻きを広げて振り回すと、雪玉をいくつか華麗に捕まえる。そのまま雪玉を手元に集め、彼女はにっこりと笑った。
「そう来なくっちゃ。どうする? ルールはフリッツの好きなように決めていいよ?」
「随分余裕だな。僕がどんなルールにしたって自分が勝つと思ってるんだろ」
フリッツがしかめっ面をすると、ミーナは集めた雪玉でお手玉しながら応える。
「狩りや稽古で私が負けた事ある?」
「それは一対一の時の話だろ。どうせやるならどんと派手にやろうじゃないか。君が冒険者になったのも、今はちょうどいい」
彼が投げやりに言ってのけると、ミーナは急にお手玉を止め、妖しく目を細めた。
「ふうん。つまりそういうこと? 中々面白い事思いつくんじゃない?」
ミーナが大人しくなったのを見て、フリッツも落ち着いて彼女を見据えた。
「確かに一対一なら勝てないさ。だが軍を率いての戦いなら話は別だ」
「無理矢理自分の得意分野に持って行こうってわけね。でももう私だって、チェスで負けてぴいぴい言ってた頃とは違うわ」
ミーナは自分のこめかみをとんとん叩くと、ずかずかフリッツの懐へと踏み込んでいく。
「『鴉』がここの使い方で『鷲』に劣ると思ったら大間違いですわよ」
「鴉がいくら知恵を絞ったって、空の王者には勝てないぞ」
しばし火花を散らしていた二人だったが、ミーナは出し抜けにもう一歩踏み込み、フリッツと唇を重ねた。あっという間の出来事。ミーナが離れてみると、フリッツは目を真ん丸にしたまま、掠れ声を絞り出すのがやっとだった。
「……はぁ?」
「へへん。人は私が集めておくから、どうぞそのふわふわした頭で作戦を練ってくださいまし」
ミーナはにやりと笑うと、いきなり森の外へ向かって駆けだした。その背中を見送り、フリッツは溜め息を吐く。
「今更そんな手が効くと思ったら大間違いだぞ」
フリッツは戻ってきた鷲をその腕に捕まえると、その誇らしげな顔を見ながら呟く。
「……たまには、将来の妻と遊び惚けるうつけ者と思わせておくのも悪くはない、か」
●ごちそうを賭けて
ヘーゼル伯領北部に位置する山岳地帯。普段雪が積もるのは山の中腹くらいだったが、今日は山の麓までしっかりと雪が積もっていた。そんな場所に集められた君達は、キャスター達が魔法陣で作るつやつやの雪玉を眺めていた。
「さて、下らないことに巻き込んでしまって申し訳ありません」
フリッツが口火を切ると、早速ミーナがむっとする。
「下らなくなんかないでしょ。こんな規模の雪合戦は中々出来ないもの」
「……まあ、そういうことです。今日は皆さんと雪合戦して交流を深めたいということで集まってもらいました」
フリッツは側に立てられた旗を一つ取ると、軽く風になびかせる。
「ルールは簡単です。二つのチームに分かれて、相手の陣地にある敵の旗を奪えば勝ち。攻撃手段は各チームに5人ずつ配備したキャスターの作る雪玉です。この雪玉には特殊なマーキング魔法を仕込んでいまして、ぶつけられたら最後、真っ赤なバツ印が服一面に浮かび上がるようになります」
フリッツは雪玉を一つ手に取り、三段雪だるま目掛けて投げつけた。すると、胸の部分の雪玉に真っ赤なバツ印が浮かび上がる。
「これが浮かんでいる間は攻撃には参加できず、解除するには自陣にある魔法陣の中に三分間留まる必要があります」
キャスターの一人が魔法陣を雪だるまの足下に展開すると、徐々に胸のバツ印が消えていく。それを見ながら、フリッツはさらに説明を続けた。
「スキルや武器を使って直接危害を加えるのは無しにしてください。それさえ守ってくれれば作戦は自由です。一応私達の勝負でもあるので、こちらからも作戦は提示させてもらいますが」
フリッツとミーナは互いにじっと睨み合う。相変わらず“仲のいい”二人だ。 ひとしきり火花を散らしたミーナは、君達へと向き直った。
「勝ったチームにはフリッツがお屋敷でご馳走を振舞ってくれるみたいですよ。代わりに負けたチームは行軍用の保存食の試作品をかまくらの中で食べる事になりますので、勝利を目指して頑張ってください」
「では、分かれましょう。一時間後に戦闘開始です」
解説
マスターより
リプレイ
雪山から強い風が吹き下りて、巻き上げられた新雪が煙のように立ち昇る。イヴェール・イリュジオンとレティシア・レインフィールは並んで銀色の景色を眺めていた。
「雪合戦ですか。本当に幼い頃、遊んだ事があるような、ないような」
「安心してください。私がレティシアさんを守ってみせます」
イヴェールは意気込む。レティシアを寒いかまくらに放り込むわけにはいかない。
「相手方にも見知った顔は少なくありませんが……どう来るでしょうか」
「斜面を狙いに来る可能性が高そうです。あの位置を取れれば麓全体を見渡せますから」
「よーし、それならわたしが山の方まで一走りして見てくるね!」
トーラは雪玉を三つ四つ手にして、ぱたぱたと走り出す。じっとして考えるよりはまず行動。そもそも動かないでいると寒くて仕方がない。キリアン・フィッツジェラルドが、そんな彼女の背を目で追う。
「深入りは禁物ですよ。危険だと思ったらすぐに引き返してください!」
「わかってるよ!」
トーラの姿がみるみる小さくなっていく。キリアンはそれを見送ると、そばに立つハルハン・ツァガーンナルに向き直った。
「ナルさん。オーデンヴァルト卿の事、どう見ました?」
「フリードリヒの事? うーん……」
ハルハンは青年の姿を思い出す。
「ボクたち巻き込んで雪合戦をするって言うんだから、もっと奔放な人かと思ったけど。むしろかなり実直そうな感じかな」
「ですね。戦い方も堅実なものになりそうです」
「でも、向こうにいるのは彼だけじゃないんだよね」
「ええ。リアが敵方に回ってしまいましたからね……」
キリアンは別れ際のアウレーリア・フォン・ネーベルベルクの横顔を思い出す。げんなりしていた。キリアンはちらりとミーナに視線を送る。
「どうしました?」
ミーナが首を傾げると、キリアンは肩を竦めた。
「リアも何か仕掛けてくるかもしれません。気を付けておきましょう」
「ねえねえ、そっちは坂から行くつもり?」
大量の雪玉を積んだそりを引いて、エルシー・サリバンが二人のところへやってくる。ハルハンは首を傾げた。
「ええ、そのつもりですが」
「私はこれで雪玉を運んで、平地から攻めていくよ。出来たら、そっちに人を引き付けて」
キリアンはすぐに頷いた。
「わかりました。お互いに頑張りましょう」
着々と動き出すミネルヴァ組。そんな彼らを急斜面から見下ろしていたのはベルク・オスマットだった。雪玉を持ち、ベルクはじっと足元に溜めを作る。
「速攻と奇襲こそが勝利の妙、じゃ」
生真面目そうな青年が奇襲を命じるわけもない。そう思っているであろう彼女達の虚を突く。ベルクは意気込むと、一気に急斜面を駆け下りた。雪を巻き上げる風となり、あっという間にミーナの本陣へ肉薄する。
「ねえ! 誰かそっちに行った!」
トーラの叫び声が背中に聞こえる。ベルクは構わずミーナ達へと狙いを定める。
「その旗は戦場で言うなら大将の首。さっさと刈り取らせてもらうぞ」
言うなり、ベルクは雪玉をぽんぽん投げつけながら旗へと猛進する。敵が丸々生き残っていようと、旗さえ取れば勝ちなのだ。
しかし、ミーナ組もさる者達の集まり。素早くイヴェールとだわが飛び出すと、一斉に盾を構えて雪玉を器用に受け止める。
「させませんよ」
「うむむっ……」
防がれたベルクは、そのまま決死の突撃を敢行する。だわの背後に構えていたサラは、手元を隠して雪玉を放つ。ベルクは雪玉の軌道を察知しきれず、肩口にその一発を受けてしまった。その瞬間、ベルクの装いに真っ赤な印が浮かび上がる。
「やれやれ。そう上手くはいかんな」
雪原に滑り込んだベルクは、ひっくり返って溜め息を吐く。ミーナは悠々と歩み寄り、得意げに笑ってみせる。
「私にずるい手は通じませんぞ?」
「……とまあ、こんな調子だった」
黒装束の兵士に引っ立てられて帰還したベルクは、かまくらの中で事の顛末を報告する。フリードリヒは小さく溜め息を吐いた。
「ミネルヴァも仕掛ける側ですからね。簡単に奇襲を許してはくれないでしょう」
「しかしながら本陣にまでは辿り着けたというわけですか」
キーゼは雪の机に地図を広げて唸る。数多くの戦場を潜り抜けた眼で、彼は雪山の地形を吟味する。
「やはり、籠城戦でもないのにこの陣地は不利の一言ですね。斜面から攻められると接近に気付きにくく、かといって平地からの攻撃を考慮しないわけにもいかない」
「ミネルヴァもまさにそんな事を考えていると思います。速攻でこちらに攻め込んで、一気に旗を奪取しようとしてくるでしょうね」
フリッツが相槌を打つと、腕組みしていたアウレーリアがはっきりと溜め息を吐く。
「婚約者の考える事はお見通しってわけですね」
彼女のつっけんどんな言い方に、フリッツは首を傾げる。
「どうされましたか。何やら不満げですが」
「別に……能天気な奴めって思っただけです」
ミーナに釣られて来てみれば、見せられたのは恋人同士のじゃれ合いだ。癪でならない。
「フリードリヒ様、直接危害を加えなければいいのよね?」
「ええ。そういう約束です」
「なら色々と手を考えてあります。耳を貸してください」
「……あ、馬車はちょっとやめてください」
「だめなんですか?」
「そこまで我々考えてないんです」
「……はい」
●神出鬼没の鴉
キーゼやアウレーリアが軍議に勤しんでいる間、ベアトリーチェ・カロッサは他のメンバーと一緒になって本陣の要塞化に取り掛かっていた。鉄製のシャベルで根雪を切り分け、半円形の陣地を築いていく。時間は掛かるが、深めに作って完全に身を隠せる形に仕上げていた。
「やれやれ。小さい頃の雪合戦とは勝手が違うな。こんなにしっかり壁を作る事になるとは」
シグルド・オルセンが凝り固まった背中をぐっと反らした。屈み続けての作業は中々苦労する。ベアトはにっと白い歯を見せる。
「美味しいご飯がかかってますからね。遊びだとしても本気ですよ!」
「用意は出来ましたか」
そこへキーゼがやってくる。ベアトは麻袋に雪玉を突っ込んで頷いた。
「いつでも行けます!」
「であれば、まずは斜面の警戒から始めます。多かれ少なかれ、優位な地形を押さえに来るのは間違いありません」
「了解です!」
「私も同行します」
シャベルを担いだセロンガード・シュタインドルフもやってくる。斜面にも塹壕を築き、着実に前線を押し上げていく構えだ。
(ティトとは別の組になってしまいましたが……それもまた一興ですか)
こうしてフリードリヒ組が動き出した頃、ミネルヴァ組は作戦会議もそこそこに、先手を打って進撃を始めていた。サラはバックパックとベルトポーチに雪玉を入るだけ詰め込み、だわと共に斜面を登っていた。
「だわおにいちゃん、がんばろう、ね」
「……飯がかかってるからな。出来る限りのことはする」
言いつつ、彼はマフラーを口まで引き上げる。雪山はとにかく寒かった。とにかく動かなければ動きが鈍る。彼は斜面を駆け登りながら耳を澄ました。雪風の音に混じって、固い雪を踏みしめる音が僅かに聞こえる。だわは味方を制するように足を止めた。
「相手が来ている。……三人か、四人」
キリアンは斜面の彼方を見据える。
「数の上ではほぼ同じですか。あまり油断は出来ないですね」
「気を引き締めましょう! ここで勝てれば一気に優位に立てますよ!」
ハルハンは意気込む。勝ったらお肉食べ放題。白熊の血が疼く。キリアンは雪玉を一つ手に取り、彼女へ目配せした。
「行きましょう。相手に塹壕を築く隙を与えないようにしなければなりません」
四人は一斉に斜面を駆け登った。彼らに気付いたキーゼは、片手剣を抜いて目の前の雪に突き立てる。光の柱が飛び出して、投げつけられた雪玉を防ぎ止めた。
「やはり来ましたか」
「ここは通さないよ! むしろ通してくれないかな!」
ベアトは斜面を俊敏に駆けながら、キリアン目掛けて雪玉を放る。しかし、ハルハンが盾を突き出してその雪玉を叩き落とした。
「通しませんよ! キリアンさん!」
「お任せを!」
キリアンはハルハンの背後から身を乗り出して雪玉を放り投げる。
「おっと!」
ベアトはひらりと飛び退く。サラはだわの背中から雪玉を取り、鋭く球を放った。ベアトは宙でその身を捻り、際どい一発を何とか躱した。彼女が回避に集中している間に、だわはじりじりと坂道を下っていく。
「……このまま押し込むぞ」
「この雪玉、とっても、投げやすい、ね」
息の揃った二組の連携により、防戦一方のキーゼ達を徐々に押し込んでいく。しかし、その隙にセロンガードは斜面を掘り抜き、即席の遮蔽を作り上げた。彼はそこに身を屈め、近づくだわとハルハンへ雪玉を放る。
「投げ下ろされる格好なのは中々厳しいですが……ないよりはましでしょう」
隣では助っ人のエレアノールも塹壕を築いていた。キーゼとベアトはそこへ飛び込み、敵の出方をじっと窺う。
「時間を稼ぎます。こちらからの進軍を遅らせれば、相手を分断できる」
キーゼの指示を聞いたエレアノールは、静かに首を傾げる。
「その澱みない言い方、どっかで聞いた事あるわね」
「……人違いでは?」
「そう。じゃあこれ以上何も聞かないわ」
斜面での戦いが激しさを増している頃、ミーナは雪玉詰めた袋を腰に下げて揚々と平地から突撃を仕掛けていくところだった。
「どうだ! 総大将はここにいるぞ!」
ミーナは揚々と叫び、積極的に先陣を切って突っ込んでくる。旗の前で盾を構えるコルネリウス・アーラの姿を捉えると、彼女は叫んだ。
「コルネ! やっぱりここにいたんですね!」
「ふふ、ミーナさんと堂々戦えるのはワクワクしますね! 『壁エルフのお姉さん』として、旗はしっかり護らせて頂きますよ!」
「こっちだって負けませんから! 狡知の鴉、ミネルヴァ・フィーギルここにあり!」
彼女は叫ぶと、コルネへ向かって雪玉を放り投げる。コルネは盾で防ぐと、負けじと彼女へ投げ返す。ミーナはふわりと飛んで躱した。シグルドも隣で籠手を構え、じっと様子を窺う。
「うーん……どうにも動きが派手過ぎる気がするんだよな」
その時、エーテルの塊が空で炸裂して轟音を響かせる。フリードリヒ組が一瞬縮こまった隙に、白い外套を纏ったサイラスがずんずんと本陣へと踏み込んでいく。
「音で威嚇するだけなら問題ないだろ?」
「おいおい、向こうは完全にこの手で決めに来てるね……」
サイラスは炎の翼を広げて一気に突っ込み、シグルド目掛けて勢いの乗った雪玉を投げつける。間一髪雪玉を叩き落としたシグルドは、反撃の雪玉を投げつける。サイラスは素早く地面を蹴ると、再び間合いを取り直す。ネーヴェ・グラヌローザはそんな彼を目で追いながら、剣を引き抜く。
「最初に危惧していた通りになりましたわね。……でもそれなら準備は出来ていますわ」
ネーヴェは空に剣を掲げる。雪の結晶が周囲に舞い散り、味方の身体を包み込む。雪の加護を受けた彼女は、盾と雪玉を持ってイヴェール達と対峙する。
「私がお相手いたします」
「容赦はしませんよ」
イヴェールは言い放ち、雪玉を放る。ネーヴェは脚にエーテルを纏わせ踊るように躱し、すかさず雪玉を放り投げた。イヴェールはそれを叩き落とし、レティシアに叫ぶ。
「さあ、本番ですよ! どんどん投げてください!」
「承りましたわ」
レティシアは雪玉を構え、ネーヴェを見据える。彼女もレティシアに並ぶ美貌の持ち主。顔を狙うのは気が引ける。レティシアは胸元を狙ってひょいと雪玉を投げたが、ネーヴェはひらりと躱した。
「これは中々難しいですわね……」
レティシアが思い悩んでいる間に、今度はエルシーがネーヴェへと突っ込んでいく。
「ネネー! 覚悟してー!」
そりで引いてきた雪玉を拾い上げ、ネーヴェへ向かって雪玉を投げつける。イヴェールとレティシアも合わせて投げれば、もうネーヴェは防戦一方だ。
「……これは厳しいですわね」
しかしそこへ、鋭い雪玉が一発飛んだ。エルシーは慌てて仰け反る。かまくらで休んでいたベルクが、にやりと笑ってのっそり顔を覗かせたところだった。
「面白いことをしているな。我も混ぜてくれ」
ミーナやイヴェール達が正面切って襲い掛かっている間に、伏兵達はこそこそと旗を狙って塹壕の影を動いていた。ティトは雪玉を一つ二つだけ抱えて、旗の近くの様子を窺う。シグルドとコルネが揃って、サイラスやエルシーの投げる雪玉を交互に受け止めている。
こうして陰に潜んでいると、昔の事を思い出す。ティトは身を乗り出すと、コルネ目掛けて雪玉を投げつけた。コルネは振り返ると、盾を構えて雪玉を受け止める。
「雪に紛れた姿、きっちり見張ってましたよ」
「……そう」
ティトは呟くと、コルネの目の前を横切るように走り抜ける。ここからは走り回って撹乱し、僅かな隙を突くのだ。
トーラも今まさに本陣へ肉薄し、突撃を敢行しようとしていた。塹壕の起伏差を空高く飛んで乗り越え、そのまま全速力で旗へと突っ込む。シグルドは振り返ると、雪玉を一つ手に取った。
「さすがに通すわけにはいかないな!」
肉薄するトーラに、シグルドは雪玉を持ってそのまま直接ぶつけに行く。トーラは咄嗟に地面へ降り立ってその一撃を躱すと、そのままシグルドへと雪玉をぶつけた。深紅のマークが服に浮かび上がる。
「おっと……やられたな、これは」
「よし、このまま……!」
トーラはシグルドを乗り越え、旗へ向かって手を伸ばす。しかしその時、どこからともなく飛んだ雪玉が彼女の腕に命中した。
「そんな!」
「……にゃっふっふ。スナイパーは位置をわからなくするのが鉄則なのだ……!」
サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは、雪の中に紛れて狙撃の機会をずっと窺っていた。口に雪を含んで、吐息が白くならないようにするほどの徹底ぶりだ。しかしその代償に体温はどんどん奪われていく。
「でも寒いから。寒いから早く帰って!」
彼女が雪玉をもう一つ手に取った時、ティトとコルネが第二の衝突を迎えていた。ティトは地面に転がる雪玉を拾い上げ、次々に放り投げる。コルネは流れるように動き回り、その雪玉を盾で受け止めていく。
「これが壁エルフと呼ばれる所以です!」
ティトが放った雪玉を躱したコルネは、そのまま雪玉を拾い上げ、旗を取り上げようと目の前まで迫ったティトの腰に直接当てる。ティトは言葉を失った。
「……そんな」
ティトとトーラが撃たれる。目の前にいる敵は少ないように見えるが、少なくとも伏兵が側にいる。危険な状況だ。
「撤退! 撤退!」
ミーナは咄嗟に手を振り、イヴェール達と共に急いで本陣を目指す。しかし、そんな彼女達の前に、雪玉を袋に収めたアウレーリアが正面に立ちはだかった。
「うわっ」
「まさか補給路も確保しないで突っ込んでくるなんてね。おかげで作戦が空振りよ」
袋から雪玉を取って投げつける。イヴェールは盾を構えて何とか受け止めた。
「簡単には帰してくれませんか……」
イヴェール達は走る。何とかアウレーリアの追撃を振り払うのだった。
●鷲の羽搏き
雪玉に撃たれたシグルド達の復活を待ち、フリードリヒは味方を見渡す。
「さて、今度はこちらからですね」
「相手はまだ回復しきっていないはず。今のうちに首を押さえに行きます」
アウレーリアが言うと、シグルドが尋ねた。
「しぶとく斜面に踏み止まってるのもいるけど、あれはどうする?」
「平地から攻めて退路を断ちましょう。攻撃手段が雪玉に限られている以上、補給が滞って球切れになればほとんど戦力にはなりません」
キーゼが応える。アウレーリアは振り返ると、素早く杖を引き抜いた。
「そっちの対応は私が担当します。さっさと仕掛けましょうか」
そんなフリッツ組の様子を、キリアンとハルハンは斜面からじっと眺めていた。
「やはり仕掛けてきますか」
「どうする?」
「ここで踏み止まりましょう。たとえ球切れでも、向こうは僕達を放置出来ませんから」
「……それならどこからでもかかって来い、だよ」
言っている間に、ベルクとシグルドが塹壕に隠れながら山を登ってくる。
「やれやれ。もう一つ面白くしたいところじゃが……ここは美味い飯を優先せねばの」
ベルクは足元にエーテルを纏わせ、一気にキリアン達へ迫る。ハルハンは雪玉を防ぎ止めた。キリアンは雪玉を握りしめ、ベルクを見据えたまま様子を窺う。
「どうした? 反撃せんでよいのか」
ベルクは挑発的に尻尾を振る。キリアンは静かに首を振った。
「挑発には乗りませんよ。ここでしばらく付き合ってもらいます」
「ふふ! 全力で遊ぶのは楽しいですね!」
ハルハンはベルクの放る雪玉を受け止め、満面の笑みを浮かべる。お肉食べ放題を諦めるつもりは毛頭なかった。
斜面でキリアン達が牽制し合っている間に、フリードリヒ本隊は平地からミネルヴァの陣へと押し寄せていた。エルシーはそり一杯に雪玉を載せ直し、前線へと再び躍り出る。
「こんなところで負けられないよ! かまくらで一日過ごすなんて辛いもん!」
トーラは駆け回り、フリッツ目掛けて雪玉を投げつける。しかし、コルネがその後背からすっ飛んできて立ち塞がる。
「この私がある限り、雪玉は一つも通しませんよ!」
キーゼとネーヴェもコルネと並んで盾を構え、本陣へ向かって一歩一歩前進する。矢継ぎ早に投げつけられる雪玉を受け止めながら、キーゼはネーヴェに囁く。
「正面は敵の方が多いですし、無理は禁物です」
「わかっておりますわ」
ネーヴェは正面に駆け付けたエルシーと視線を交わす。形勢は傾きつつも、彼女は決して諦めていなかった。
「まだまだ負けないよ」
「ええ。エルが手ごわいのは、よくわかっておりますよ」
ネーヴェはキーゼと共に得物を空へ掲げる。放たれたエーテルの波動が、コルネや背後の仲間達を明るく包み込んだ。だわは盾を構え、サラを背後に隠す。
「……気を付けろよ」
「うん」
サラは外套の陰に隠れていた大イタチをこっそり解き放つ。肩に乗ったイタチの頭をそっと撫で、耳元で囁く。
「……遊んで、きて」
大イタチは小さく鳴くと、急に敵へ向かって飛び出した。その足元をちょこまかと走り回り、身体を擦り付ける。コルネは呻いた。
「可愛い……じゃま……」
「際どい事をしてきますね」
セロンガードは眉根を寄せる。気を散らせ、その隙に何かをしようとしている。セロンガードはエーテルを放ち、『彼女』の影を探った。そして彼は、素早く振り返って雪玉を投げる。至近距離まで迫っていたティトは、咄嗟に飛んでその一発を躱した。そのまま雪玉を一つ投げ返し、二人は互いに見つめ合う。
(やっぱりそう来ましたか、ティト。侮れませんね)
(セロンが敵なの、面倒、だね)
キーゼ達がぶつかり合う間に、アウレーリアはベアトを連れて斜面側へと回り込む。キリアンとハルハンを孤立させつつ、斜面から一息に敵を刺そうという格好だ。ミーナとサイラスが飛び出し、そんな彼女達を押さえに行く。
「やれやれ。あっちからこっちから来るもんだ」
サイラスは溜め息を吐くと、大量の雪玉をスコップに載せた。
「牡毯……ってもんじゃねえけど、こいつはどうだ?」
雪玉が四方八方に散らばるよう、サイラスは思い切り雪玉を放り投げる。アウレーリアは魔法の鉄壁を呼び出し、攻撃を受け止める。
「派手にやってくれるわね。全く……」
「へへん! こっちからも行くよ!」
ベアトはミーナの足下狙って雪玉を放る。ミーナも躱して投げる。お互い身軽なおかげで全然球が当たらない。見かねたサイラスは盾を天に掲げた。
「仕方ないな……ちょっと奥の手でも出すとするか」
月紅から光が放たれたかと思うと、紅の光を秘めた竜へと変じ、いきなり力任せに吼え狂った。その気迫に、思わずベアトは仰け反る。
「うわっ!」
ベアトが目を丸くした隙に、サイラスが雪玉を放る。しかし、ベアトは冷静に飛び退きその一発を躱した。その間に竜の影は消滅し、再びサイラスとミーナだけが残された。ベアトは首を傾げる。
「……それだけ?」
「そりゃあ、雪玉以外の攻撃禁止だし」
サイラスが呑気に応えると、どこからともなく飛んできた雪玉がサイラスの背中に命中した。
「あっ」
「あ……って! またどこかに誰か隠れて……」
ミーナは慌てて周囲を探る。それを見たベアトは、踵を打って一気に身を低くする。アウレーリアはそれを受け、突撃のビューグルを吹き鳴らした。
「よーし! 今こそアタシの本領発揮!」
ベアトは斜面を矢のように駆け下り、その加速のままに跳び上がる。足元に空気を纏わせ、さらに高く飛び上がった。狙うは敵の旗ただ一つ。
「覚悟しなさい!」
猛進する彼女の前に立ちはだかるのはイヴェールとレティシア。イヴェールは盾を構え、レティシアは光の柱を召喚して壁にする。
「ご馳走もレティシアさんも、必ずや守り抜いてみせます!」
「そう上手くはいかないよ!」
ベアトは麻袋から取り出した雪玉を鋭く投げつける。イヴェールは盾を掲げて雪玉を受け止め、レティシアに目配せする。
「遠慮は要りませんよ! いっそ相手をクリーパーだと思って投げてください!」
「そ、そこまでの覚悟を……?」
ベアトは距離を詰め、あっという間に彼女を乗り越えようとする。一刻の猶予も無かった。
「……イヴェール様がおっしゃるなら」
レティシアはベアトへ狙いを定めると、思いっきり放り投げる。低い弾道で飛んだ雪玉は、ベアトの腰回りに直撃した。深紅のマークがベアトの服に刻み込まれる。ベアトは空中で丸まり、その場にすとんと降り立つ。
「あーあ、やられちゃったなぁ……なんて」
ベアトがにっと笑った瞬間、雪の陰からいきなりサフィラが飛び出した。
「どりゃー! あたしもここにいるぞー!」
サフィラは一気に旗を目指して突貫する。両手に雪玉を一つずつだけ持って、高らかに陣の中で叫ぶ。
「あ!」
トーラは慌てて前線から翻る。足元に転がる雪玉を拾い上げると、彼女はサフィラ目掛けて投げつける。サフィラは何とか身を捻って躱すと、そのまま地面を蹴った。
「てえーい!」
サフィラは果敢に頭から旗目掛けて突っ込む。金属の硬い感触を捉えたサフィラは、力任せにその旗を引き抜く。
「いやったー! 獲ったどー!」
サフィラの快哉が冬山に響き渡った。
●星を得たる鷲に栄光あれ
かくして勝利を収めたフリードリヒ組。彼らはシュヴァリエ家の別荘でご馳走にありついていた。
「いやっほう! お肉!」
サフィラはじっくりと焼き上げられた鳥のもも肉に齧りつく。フリッツは彼女の食べようを見ながら微笑む。
「好きなだけ食べて構いませんよ。この日のために用意させました」
「はい、遠慮なく頂きます!」
コルネはサフィラの隣でラザニアにがっつく。エルフはスレンダーという常識を、二人はこうして打ち破ったのである。皿が空く様子を眺めながら、キーゼはフリッツに尋ねる。
「相当な量ですね。お金もかかったでしょう」
「使うときには使います。そうしないと商人が寄り付きませんから」
「損して得取れってやつじゃな」
ベルクは麦酒をたっぷり注いだジョッキを片手に揺らしながら言う。隣でセロンガードが不思議な顔をしていたが、大人な彼女は気にも留めない。
「ええ。お金が欲しいならまず使わなければ」
「そういうもんですか。ま、これだけ良い酒を飲ませてくれるのなら歓迎ですよ」
シグルドはワインを注いだグラスを手に取って笑う。フリードリヒは彼へ向かって恭しく頭を下げた。
「気に入ったのなら、倉庫を開けさせて何本か譲りましょう。いずれもシュヴァリエ家自慢の代物ですから、代金は頂きますがね」
「早速商売ですか。ふむ……」
シグルドは肩を竦め、困ったような顔で一歩退く。代わりに、横でチーズを齧っていたベアトが身を乗り出してきた。
「それにしても、フリードリヒさんも中々ですね。自分の婚約者までしっかりかまくら送りにしちゃうなんて」
「お互い手を抜かないのが私達の礼儀ですから」
「普段散々他人を振り回しているんだもの。たまにはお仕置きが必要よ。そうでしょ?」
サラダの乗った皿を手にしたまま、アウレーリアも喜色満面でやってくる。フリッツも思わず破顔してしまった。
「そうですね。それに、これくらいの事じゃへこたれませんよ」
「そうね。でも今日のところは私の勝ち。あー、楽しかった!」
アウレーリアはからからと笑う。気兼ねなく全力で遊べて、すっかり晴れやかな気分になっていた。
仲間達が食卓を囲む様子を、ネーヴェはその外側に立って眺めていた。やがて、給仕が鉄蓋の伏せられた皿を一つ彼女へ差し出す。
「どうぞ」
「感謝いたしますね」
ネーヴェはぺこりと頭を下げると、皿を取って宴席を離れようとする。それに気づいたコルネが、彼女を目で追って尋ねる。
「ネーヴェさん、どこ行くんですか?」
「ええ、ちょっと……」
一方、ミネルヴァ組は雪山の麓に築かれたかまくらの中で一夜を過ごそうとしていた。火鉢の炭を掻き回しながら、ミーナは溜め息を吐く。
「……今回こそは勝てると思ったのに」
「攻勢が上手く流されてしまいましたね」
「うむむ」
ミーナは乾パンをスープに浸しながら眉を寄せる。しかし、家格が上のレティシアの前では大人しくしていた。
「……まさか貴方ほどの人が来るとは思いませんでしたよ。レティシア様」
「普段、他の貴族令嬢の方が婚約者とどのように過ごされているのか拝見できるかと思ったのですが……雪合戦とは、中々斬新な交流でございますね……?」
「別に私達だっていつもこんな事してるわけじゃ……あっ!」
急にミーナは素っ頓狂な声を上げる。つられてレティシアが振り返ると、雪を両手で掬ったイヴェールが背後に忍び寄ろうとしているところだった。彼女は目を丸くすると、慌てて雪をどこかへ放る。
「はわっ」
「イヴェール様、一体何を……」
やんわりと問いかけると、イヴェールは恭しく平伏した。
「……申し訳ありません。どんな声を上げられるのか、気になって」
「あらまあ、貴女も中々ですな」
ミーナが悪戯っぽく目を光らせると、イヴェールは堅苦しい顔をして彼女を見据える。
「何ですか?」
「いいえ、別に」
一方、トーラは毛布を何枚も用意して雪原に広げられた焚き火の前で必死に暖を取っていた。ペミカンを解いて作ったスープだけが命綱である。
「寒い。凍える……よく平気な顔してるね……」
「そりゃ寒くなるのはわかってたからな」
隣ではサイラスが雪の上にどっかりと座り込み、角杯で酒を呷っていた。酒の肴まで皿の上に広げている。トーラはそれを横目に溜め息を吐いた。
「準備いいね」
「別に勝ち負けはどうでもよかったんでね。雪山の中で一夜過ごすことになろうが、それで構わないように準備しておいただけだ」
サイラスはペミカンを一つ手に取って、じっと眺める。
「これもこれでどう作ってるのか興味あるしな」
「ワスナ……これ、故郷にある、料理」
ティトがそこへこっそりと忍び寄る。厳寒の土地で育った彼女にとって、遠出の際にはいつも持ち歩く馴染みの保存食だった。
「……こんなところで、食べられるって、思わなかったな」
ミーナ達と別のかまくらの中では、だわとサラが寄り添って寒さをしのいでいた。
「かまくらの、中……あったかい、ね。隣に、だわおにいちゃんが、いるから、かな?」
微笑むサラに、だわは小さく頷く。普通に寒かったが、サラの手前でそんな事は言えない。二人そろって木皿を傾け、熱いスープを胃の腑へと押し込める。
「このスープも……おいしい、ね」
「……そうだな」
だわは言葉少なに相槌を打つ。保存食と聞いて身構えていたが、味そのものは悪くない。脂身の多さも、スープの保温に役立っている。
ルクサリアの行軍食より上等なのではないか。ちらりと思っただわは、眉間に皺寄せ複雑な気分になるのだった。
屋敷を離れたネーヴェは、ようやくかまくらの群れへと辿り着いた。酢キャベツを挟んだビスケットを食べていたエルシーは、彼女に気付いてかまくらを飛び出す。
「ネネー!」
ネーヴェにひしと抱き着くエルシー。ネーヴェは頬を緩めてエルシーの頭を撫でる。
「エル、お疲れさまでした。楽しゅうございましたね。こちらは差し入れです」
「あ、ごちそう! 持ってきてくれたの?」
「ええ。皆さんと、エルのために……と思いまして」
「ありがとう! こっちこっち!」
エルシーに手招きされるまま、ネーヴェはかまくらへと潜り込む。隣並んで収まった二人は、ご馳走を少し口へ運ぶ。ここまでの道で多少冷めてしまったが、それでも美味に変わりない。
「ふふ、かまくらって素敵ですわね。それに暖かいですわ」
ネーヴェがしんみりと呟くと、エルシーも笑って何度も頷いた。
「友達と一緒ならね。……たまにはこんな日もいいなぁ」
「近頃は大変な事ばかりですものね。英気を養いましょう」
キリアンとハルハンは燻製肉を切り分けて食べながら、互いに苦笑いする。
「やれやれ、負けてしまいましたか」
「何だかやたら本気だったよね、リア」
「フィーギルさんに対抗心というか……何か燃えるものがあったみたいですね。あの勢いは中々止められませんでした。僕達もまだまだ学ぶ事は多そうです」
ハルハンはキリアンの言葉に頷く。
「それに、こっちの組も相手の組もみんな強くて、頼もしいな、って思ったよ。皆と一緒なら、安心して戦えるなって」
「それが確かめられただけでも、今日の収穫は大きいものでしたね」
「うん。ボク達もみんなに頼もしいと思ってもらえるように頑張らないと」
冬の夜長はかくして平穏の内に過ぎていく……
おわり
マスターコメント
イベントシナリオ易しい 報酬:少ない19 / 4〜25人
2022年01月31日 09時11分19秒 公開
参加者
相談掲示板
コルネリウスです、よろしくお願いします。 どちらの陣営になるかと、旗手は決めてしまいましょうか。 私はフリッツさんの陣営に回る予定です。 旗手は他に希望する方がいらっしゃらなければ挙手しようかと思います。
No.2
サイラスだ、よろしくなー 左上から数えて偶数番がフリッツ組、奇数番がミーナ組 ってルールにあるし陣営は最初から決まってんじゃないかなー。自分より番号若い人来れば来るほどズレるけど。 旗手はパスで。面倒だし、人数次第では同陣営旗手志望二人とかでゴタゴタしそうで。 後は他の人八百長するかしないかとかある?
あ、本当ですね。すみません、見落としてしまっていました。 指摘ありがとうございます。 では人数の変動でズレは起こるとしても、旗手を出来る方は取り敢えず挙手しておく。 というので良さそうですね。
トーラです。 よろしくお願いします! 参加が増えると組が変わる可能性があるんですね。 満員にならないとリーダーも決め辛いですけど、希望する人は手を挙げて、同じ陣営で複数希望がある場合はミーナさん達に決めて貰ってはどうでしょう? わたしは一選手で行動しようと思います。
どうも。シューターのキリアン・フィッツジェラルドと申します。 正直な所、ドクトリンとしてはミネルヴァさんもホーエンバッハ卿も、何がしかの手段で敵を引き付ける事が得意そうですので、どちら側についても戦法を活かせる感じなのですが。 チーム分けが偶数組か奇数組か、ともなると選択の自由は無いようですね。 とはいえ敵として対峙する事になる友人達を相手にどこまで通じるか、共闘する味方にどれだけ貢献出来るか、という気持ちも同居してたり。
主催を務めるホーエンバッハ家のフリードリヒです。このままだと話が進まなくなってしまうおそれがあるので、現時点で一旦組み分けを確定したいと思います。敬称は省略するのでご容赦を。 ミネルヴァ組 現在9人 イヴェール サイラス レティシア トーラ エルシー ハルハン ティト キリアン だわ フリードリヒ組 現在8人+エレアノール コルネリウス ベルク サフィラ セロンガード ネーヴェ ベアトリーチェ アウレーリア シグルド 以上になります。追加で参加された方はこの場で挨拶していただくと同時に、私とミネルヴァの組へ交互に名を連ねていただく事になります。 有意義な時間としたいので何卒了承のほどをお願い申し上げます。
今回の遊び、ひとまず両陣営共、兵站の補給線だけはしっかり確保しないといけないでしょうね。 攻撃手段が本拠地で作られた雪玉のみに限定される以上、戦線を押しあげれば押し上げるほど雪玉の輸送に難が出てきますね。 例えば何かしらの入物に雪玉を詰めマジカルポケットで運搬する、ソリで牽く、などの手段を講じておかないと攻め込んだ際に攻撃手の物量が足りない、となりますから。 あと、『雪玉』が武器という扱いになられると、武器指定の補助スキルなどはどうなるのですか···ですか。 盾は持ち込めるようですが。
フードリヒさん班分けありがとうございます! わたしはミネルヴァさんのチームですね。 発見され難いならそれを活かして隠蔽スキルで回り込んでみましょうか。
失礼。NPC1名は数合わせとご指摘を頂きましたので。 こうなりますね ミネルヴァ組 現在9人 イヴェール サイラス レティシア トーラ エルシー ハルハン ティト キリアン だわ フリードリヒ組 現在9人+エレアノール コルネリウス ベルク サフィラ セロンガード ネーヴェ ベアトリーチェ アウレーリア シグルド キーゼ
アウレーリアです。宜しく。 私はフリードリヒ組ね、分かったわ。 参加者が偶数のまま出発した場合、エレアノール様の割り振りはどうなるのかしら。 構わずフリードリヒ組が一人多い状態で進むのかしらね。 それと、脱落者の行動についてはっきりさせておきたいわ。 ただ雪玉を投げられないだけだと、本陣へ戻るついでに索敵や伝令ができそうだし。 死人がノーリスクで何か行動できてしまうのは拙いわよね。 脱落したら寄り道せずにまっすぐ戻って、情報を伝えたりはしないってことでどうかしら?
偶数だったらエレアノールは雪玉作る人に混じってます。
えっと、サラ、です。よろしくおねがい、します。 わたしは、ミネルヴァ組、だよ。 ミネルヴァ組 現在10人 イヴェール サイラス レティシア トーラ エルシー ハルハン ティト キリアン だわ サラ フリードリヒ組 現在9人+エレアノール コルネリウス ベルク サフィラ セロンガード ネーヴェ ベアトリーチェ アウレーリア シグルド キーゼ
エルシー・サリバンだよ、宜しくね。 班分け了解!ミネルヴァ組の皆さま、頑張ろうねー。 戦い方はまだ全然浮かんでなくて 雪玉の運搬には担架でも使うかな?って程度なので、案があれば合わせるね。
ベルクだ、フリードリヒ組の仲間はよろしく頼む。
セロンガードです。 よろしくお願い致します。 ふむ、私はフリードリヒ様の組ですね。 同じ組の方はがんばりましょう。
もうすぐ出発ですね。 脱落したら復帰するまで偵察などしないということで良いんでしょうか? とりあえずその方向で行動を出しますね!
反応できなくてすみません! 班分けと脱落時の扱いは了解しました 楽しく雪合戦しましょう!