【雲集】『銀』対『銀』
真柄 葉
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シナリオID:1649
オープニング
「我が名は『銀嵐』! 帝国にその人ありと謳われた武神である!! 痛い目を見たくなければ、大人しく降伏せよ!!!」
朝の静寂を割って、大音声が山々に木霊した。
巨大な戦斧を地面に突き立て、隆々たる筋肉をこれでもかと見せつける大男は、目の前の城壁の上で怯える獣人達をゆっくりと睥睨する。
不敵に歪ませる口元には自信と余裕と湛え、顔の上半分を覆う銀仮面が朝日を受けきらりと光った。
●
「副長!」
「どうしましたか、騒がしいですよ」
フェンガリ極行遣北使ベースキャンプの執務室。
極北行の報告書を纏めていたリカルダ=アーレンス将軍の副官エメの元に、息を切らした兵士飛び込んできた。
「これを!」
兵士は謝罪の言葉も述べず、エメにあるものを手渡す。
「手紙ですか? 随分汚れていますね」
兵士の差し出した手紙を受け取ったエメは、封筒に差出人の名前がないか確認するが、何も書かれていない。
「これは誰宛の手紙なのですか? 差出人も書かれていませんが」
と、エメが訝し気に兵士を見つめると、兵士はハッと顔を上げ、手紙がここにある経緯を説明した。
兵士によると、フェンガリ郊外の見回りをしていた時、岩陰に蹲る灰鼠のハーフビーストの青年を見つけたらしい。その青年は兵士の姿を見つけると、必死な表情でこの手紙を押し付けてきたそうだ。
兵士は戸惑いながらも疲労困憊だった青年を保護し、その話を詳しく聞くと――。
「なるほど、救援要請ですか」
エメは兵士の話を聞き封を切ると、手紙を読み進める――。
「差出人は……やはり不明ですか」
手紙をいくら読み返しても、どこにも差出人らしき名前はない。
ただ、救援要請と場所、そして窮状と敵の情報のみ事務的かつ克明に記されていた。
「手の込んだ悪戯……というには、出来過ぎていますね」
エメは手紙を手に立ち上がると、部下に指示を出す。
「将軍の指示を仰ぎます。早馬を出してください」
フェンガリ南部の避難民居留地で指揮を執る上司の指示を仰ぐために――。
●
「あ、あの、矢がもうすぐ無くなります」
白兎のハーフビーストの青年が、フードの男の元に報告に来た。
青年は近寄りがたい雰囲気を醸し出す男を恐れながらも、指示を仰ぐ。
「……そうか、では石をできるだけ用意してくれ。敵が城壁に取り付いたら、投石して落とす」
「は、はい!」
青年は男に頭を下げると、すぐに物見台を降りて行った。
「……武器もそろそろ底をつくか」
物見台から見える砦の内部には、疲れ果て地べたに座り込む人々がそこかしこに見られる。そもそも、ここにいる人々は、近隣の集落から難を逃れるためにこの砦へやってきた者達だ。ようやく一息付ける場所へと辿り着いたと思った矢先のこの状況である。立ち上がって戦えという方が酷だろう。
それでも青年達を中心によく頑張ってくれている。この砦がまだ落ちていないのが何よりの証左だ。
「待っているのだろうな」
バルバロイの陣容はほぼ把握した。青年達の奮戦もあり、敵の戦力ではこの砦は落ちないと確信はできるものの、それはあくまで現状を維持できればの話。
「……水は問題ないとして、食料か」
砦には元々帝国兵が常駐しており、備蓄もあった。しかし、それも避難民たちが消費し底が見えている。
今砦には百名ほどの避難民がいるが、その飢えを満たすだけの食料はもって二週間。いや、十日程か。
敵方もそれをわかっているのだろう。無理に砦を攻めず、あのように城外から声を張り上げ挑発してくる。
フードを目深にかぶった男が、長く貯えた髭を撫でた。
「オルセンからは返事はないか……」
数週間前、まだ包囲が甘かった時に出した伝令。辛い仕事だと説明しても、仲間の為だと受けてくれた灰鼠のハーフビーストの青年達の事を思い出す。噂で聞いたオルセン健在の報を頼りに、一縷の望みをかけ送り出したが、まだ戻った者はいない。
救援要請をしたためた手紙は、帝国軍の者が見れば一目でその内容を把握できはずだ。しかしそれも届かなければ意味はないし、例え届いたとしても無視される可能性もある。
「東方の辺境都市群へは行った者達は……やはり間に合わないか」
オルセンへと向かってくれた者達とは別に、東方の辺境都市群へも伝令を出した。しかし、辺境都市群は遠い。伝令が無事にたどり着いたとしても、一月近くはかかるだろう。
「一月は流石に持たんな」
例え辺境都市群のどこかの都市が救援を寄こしてくれたとしても、ここにたどり着くまで砦が持つ可能性は限りなく低かった。
「俺の命運も、ここまでか。……まったく、『臆病者』には似合いの結末だな」
貯えた銀髭を揺らしフードの男は小さく笑う。
「だが、俺を頼ってくれる民を殺させはしない。例え、この身がどうなろうとも守って見せるさ――」
フードの男は、絶えず挑発を繰り返すバルバロイの集団を、じっと見下ろしていた。
●
フェンガリ南部、避難民居留地。
帝国北部北滴山脈近隣にて困窮する民を収容する為に設けられた居住地だった。
リカルダ=アーレンスは、帝国北部で孤立する民達を保護するために、この場所をフェンガリから借り受け、一時的な居住地として提供している。
そんな居留地では、集まってきた難民たちが自ら汗を流し、自分達の居住空間の建設に精を出していた。
居留地建設の指揮を執るリカルダへ、早馬を駆った兵士が『手紙』を持って現れたのは、日も傾く夕方だった。
「エメからの早馬だと?」
リカルダはすぐに手紙を開き読み始める。そして、事務的に書かれたその内容を読み進める途中に書かれた『名前』に目を止めた。
「……この名は」
そこに書かれていた敵の名にリカルダは眉をひそめる。
「伝令」
リカルダは懸命に駆けてくれた馬を労う兵士に声をかけた。
「すぐに馬を替えギルドへ走れ。至急だ」
将軍として有無を言わせぬ物言いで、兵士に命を下したリカルダ。威厳に満ちた女将軍の命令に兵士は背筋を伸ばし敬礼すると、すぐさま別の馬へと乗り換えた。そして、リカルダから耳打ちされた内容を心に刻むと、馬の腹に蹴りを入れた。
「生きていろよ……」
馬に発破をかける兵士の背を見送ったリカルダは、遥か西方の空を見やり、小さく呟いたのだった――。
解説
マスターより
リプレイ
砦の中を煌々と照らす焚火の灯に一瞬影が落ち、それは現れた。
「っと、成功! うわわっ! しーー!!」
船を漕いでいた見張りが思わず悲鳴を上げそうになるが、間一髪口を塞いで阻止したサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは、「味方! 助けに来たよ!」と必死に言って聞かせた。
しばらくして落ち着いた見張りは、訪れた援軍に歓喜し、すぐに司令官なる者を呼びに行く。
サフィラが待っていると、フードを目深にかぶった髭面の男が現れた。
「およ、おじちゃんがリーダー?」
「そうだ。よく来てくれた……まさか、冒険者か?」
「そうだよ。あたしはサフィラ。リカルダ将軍のお願いを聞いて参上仕ったのだ」
「なに、リカルダ将軍だと。まさか、生きておいでだったのか」
「にゃ、お知り合い?」
「……いや、そんな事よりも一人か?」
首をかしげるサフィラに、男はすぐに話題を変える。
「ちゃんと仲間もいるよ」
男の言動に違和感を覚えながらも、サフィラは事の経緯を男に話して聞かせた。
「……そうか、そんな所に。なんだ、どうかしたか」
考え込む男の顔を覗き込もうとしたサフィラだったが失敗。逆に怪しまれる。
「んにゃ! 何でもないよ! えっと援護、いけそ?」
「ああ、そちらに合わせよう」
「了解! それじゃ、日の出と共に」
サフィラはそう言って来た時と同じように隠密を駆使し、仲間達の元へ戻っていった。
●
「ふあぁぁ……」
大欠伸と共に巨漢が寝床を抜ける。
朝日を浴び照らし出される銀の仮面。
「よし、今日も一日元気に砦攻めと行くか」
巨漢が朝日に向け、挑発の為の発声練習をしようとした、その時だった。
『敵襲!!!』
見張りがけたたましく銅鑼を鳴らす。
「て、敵だと!? いったどこか――」
「見つけました」
巨漢が慌てて武具を取りに戻ろうとするが、既にヴィルヘルミナが視認できる位置にまで迫っていた。
ヴィルヘルミナは半睡のバルバロイ達には目もくれず、一番大きなテントを狙う。予想は的中。目の前に無防備な首魁を捉えた。
ヴィルヘルミナは俊動をもって一気に距離を詰めようとするも、その目論見は魔矢の一撃によって未遂に終わった。
「……そこにいましたか、キャスター」
魔矢の一撃から大きく飛び退いたヴィルヘルミナがテントから出てくる人影を捉える。
「朝っぱらからうるさいねぇ」
紅月は目の前の緑髪、そして戦場を見渡し小さく微笑んだ。
●
戦場のあちこちから怒号と干戈を交える音が響いてくる。
「北壁の安寧を脅かす愚物ども! この北壁の防人が一壁ベルク・オスマットが皆殺しにしてくれる!」
敵襲に慌てて騎乗する敵達へ、漆黒の影が迫った。ベルクは騎乗寸前の馬の脚を狙いこれを断ち切っていく。
「死して悔いろ。我が同胞に手を上げた事をな」
そして、落馬した敵達へ容赦のない一撃を見舞った。
「一つ人よりいい匂い。二つ不埒な悪臭三昧。三つ魅せるぞ最終奥義!」
怪しい数え歌と共に、戦場に褐色の死神が舞い降りた。
ク・サーヤ・クッセーワは敵の間を縫うように疾駆し、自らの薫りを振りまいていく。
敵が何事かと戸惑ったのも束の間、この世の物とも思えぬ悪臭が彼等を襲った。
「苦しかろう? しかしの、それを越えた先に極楽浄土が待っておるのじゃ」
振り向き、悪臭にもだえ苦しむ敵を見たサーヤはニヤリと口元を歪める。そして、高々と手を上げた。
「「「ぐぎゃぁぁ!!」」」
悪臭に動きを止めた敵に矢の雨が降りかかる。
「ふん、腋臭甘いとはこの事じゃな」
矢の雨に次々と倒れていく敵兵に向け、サーヤは更なる地獄を見舞った。
「一先ずあちらは制圧と。次は――」
サーヤの合図を待って矢の雨を降らせたアクティオンは、全体を俯瞰できる高台に身を置く。アクティオンは仲間達の戦場へ矢の土産を届けつつ、依頼書にあった『敵』の姿を探していた。
「アレが放たれては厄介ですからね」
探しているのは敵のシーフ『土竜』。依頼書では危険な狂戦士であるらしい。それが戦場に放たれれば有利な戦局が混迷に落ちるかもしれない。
アクティオンは超越した視力で戦場を俯瞰していく――。
姿勢を低く物音を立てずに――。
次々とテントから出てくる敵は、派手にドンパチやってる戦場に気をとられている。
「大丈夫だ。見つかってねぇ」
バクバクと激しく跳ねる心臓を服の上からぎゅっと握り、ギャメルは敵の背後へ忍び寄った。
「人に向けて撃つのは正直良い気分じゃねぇけど……アンタ達とは仲良くやれる気がしねぇからな」
ギャメルは立ち上がる。そして、溜めに溜めたエーテルを杖から吐き出した。
敵がようやくギャメルの存在に気付いた時にはもう遅い。数多の光球が体の頭上から降りそそぎ、辺りに悲鳴が木霊する。
「……次だ!」
例えこれが臆病者の卑劣な発想だと蔑まれようとも、仲間の為にギャメルは魔法を撃ち続ける――。
●
時は遡り夜明け前。夜明けと共に始まる戦いを前にハヤト=ガラン=ヴォルファングは、仲間達に語った。
「『銀嵐』の二つ名は俺の親父かもしれねぇ」
ハヤトの告白に仲間達は目を剥いた。
もしそれが真実なら、ハヤトは父親を殺めなければならない可能性もある。
「ちょ、ちょっとハヤト。どういう事!?」
慌てて問いかけたサフィラに、ハヤトは再び口を開く。
『銀嵐』の二つ名を持つ帝国指揮官が自分の父親の可能性がある事、その父が行方不明である事。砦を囲む山賊の首魁がその名を名乗っている事。更には父の名や母の名まで――。
ハヤトはあらゆる可能性に必要な情報を仲間達に伝えた。
「ハヤト殿の親御ですか……」
話を聞きドローミがまだ暗い戦場を見る。
「で、でもよ。本物かどうかわからねぇんだろ?」
「そうですね。ありがちな二つ名といえば二つ名ですし、たまたま同じ名を名乗っている可能性もあります」
ギャメルとアクティオンが揃ってハヤトを見る。
「もちろん違うと信じたい。自分の親が野盗に成り下がってるなんて、思いたくもねぇ……」
「ハヤト……」
二人に見つめられ意気を落とすハヤトの背に、サフィラがそっと手を添えた。
「ハヤト殿には悪いが、それが真の悪であるのなら、我は果断に討つ」
「そうじゃな。のさばらせておくわけにはいくまい」
仲間の身内の可能性だからといって、その悪行を見過ごすことはできない。
ベルクとサーヤはハヤトに向け、きっぱり宣言した。
「もちろん遠慮はいらねぇ、やってくれ。だが、出来れば俺の手で……」
二人の意見に頷きながらも、ハヤトはグッと拳を握りしめる。
「――夜が明けます。皆さん、準備を」
そんな重い空気を振りはらう様に、白い薄明が冒険者達を包んだ。
●
「雑魚は粗方潰した。砦の援護はいらなかったな」
「安心するのはまだ早い。首魁との戦いが終わっておらん」
戦場を俯瞰するハヤトの横で、サーヤが風にマントを靡かせる。
戦場ではまだ小競り合いが続いているが、戦火の音は確実に小さくなっている。
そんな時だった。戦場の西方で巨大な炸裂音が響いたのは――。
「くっ……なんて威力ですか」
魔法の範囲から何とか逃れたヴィルヘルミナ。しかし、紅月の頭上には追撃だと新たな光球が生まれている。
「そうはさせん!」
ヴィルヘルミナに向け放たれようとした光球を掻い潜り、ベルクが紅月に突っ込んだ。
紅月は舌打ちすると光球を霧散させ、ベルクの攻撃の回避に集中する。
「一人だと思わないでよ!」
ベルクに続きサフィラが攻撃に加わった。
二人のシーフに囲まれ紅月の顔から、余裕の笑みが消えていく――。
「見えるか」
「……いえ、見える範囲には居ませんね」
バルバロイの集団をほぼ鎮圧したギャメルとアクティオンは、最大の脅威と思われる存在を探していた。
事前の情報では鎖に繋がれているとあったその脅威は、未だこの戦場に姿を現していない。
「唸り声のようなものも聞こえませんか」
「……聞こえねぇな。逃げたのか?」
「その可能性はなくはないですが、起死回生の一矢とするべく温存している可能性もあります。どこに出てきても対応できるように――」
と、アクティオンが再び戦場に視線を移した、その時だった。
『うあわわぁぁっ!!!』
遠く砦の城壁から、悲鳴と共に人影が落下した――。
●
「ほら、いいの? 砦が危ないわよ」
冒険者三人相手に劣勢を強いられていた紅月が、一転不敵に笑う。
見ればバルバロイの残党たちも一斉に砦へ攻勢をかけていた。
「……ここは私が押さえます。救援を」
ヴィルヘルミナがベルクとサフィラに声をかける。自分が動くよりも確実に早く増援に行けるとの判断からだ。
「しかし、一人でこ奴の相手は」
「何とかします。行ってください」
「……わかった。すぐに戻るから!」
「死ぬなよ」
ヴィルヘルミナの決意に応えるように、二人は踵を返し飛ぶように砦へ向かった。
「一人になっちまったねぇ」
「……どうぞご心配なく」
紅月の挑発にヴィルヘルミナは首を振るが、劣勢であるのは事実。それにまだ、紅月の後ろのテントには首魁の『銀嵐』が控えている。
「その余裕、いつまで続くかな」
紅月はヴィルヘルミナの心情を読み取り、薄く微笑むと杖を掲げた――。
――ドドドドドドドッ!!
「な、なんだい!?」
その時だった。土煙を上げこちらに近づいてくる何かがある。それも一つではない。
「うまい具合に落ちておったのでな、使わせてもらったぞ! 馬だけに!」
それは嘶きと土煙を上げ、こちらに近づいて来る馬の大軍だった。
しかも、先頭には馬にまたがるサーヤの姿。そして――。
「わりぃな、ちーと遅れた!」
ハヤトが居た。
●
「よくもやってくれた」
「ケッケケ」
見張りを下がらせたフードの男が薄気味悪い笑みを浮かべる土竜と相対していた。
実力は拮抗。いや、避難民を守りつつ戦うフードの男が不利か。徐々に土竜に押し負けつつある。
「くっ……」
フードの男がよろけた。それを見て土竜が止めとばかりに攻勢にでた――。
「おっちゃん! 跳べ!!」
突然響いたギャメルの声と同時、城壁を巨大な振動が襲う。ギャメルが放った光波が城壁を打ったのだ。
大きく揺れる城壁に土竜がバランスを崩す。
「動きさえ止まれば……!」
すかさず足を止めた土竜に、アクティオンの矢が襲い掛かった。しかし――。
「……だめだ、浅い!」
【天眼】を駆使し土竜の状態を見たギャメルが叫ぶ。土竜は足に矢を受けつつも、不利と直感したのか、一目散に逃げに出た。
「ベルク、右から!」
「承知!」
だが、冒険者達の攻勢は終わっていなかった。
二人に代わり飛び出したベルクとサフィラが、城壁から飛び降りようとした土竜に肉薄する。
「あたし達から逃げようったって、そうはいかないからねっ!」
一瞬早く届いたサフィラの刃が土竜の腕を切り裂いた。そして。
「地を舐めるがいい狂犬!」
ベルクの三連撃》が、その体を引き裂き地面へと叩き落とした。
●
「終わったみたいですね。さぁどうしますか?」
砦の方から勝鬨が上がる。
それを聞いてヴィルヘルミナが紅月に刃を向けた。
「……はぁ、降参だ。好きにしな」
すると、紅月はあっさりと杖を投げ捨て両手を上げる。三人は訝しんだものの、無駄な戦闘を避ける事が出来るならと、紅月を縛に取った。
最大の難敵を御した三人は、ついに敵の首魁が待つテントへ向かう。
「いやがるな」
ハヤトが中から漏れ出てくる臭いを嗅ぎ取った。
「父上なのじゃろう? わしらは手出しせんから、行ってくるがよい」
「すぐ外で待機していますので、何かあれば呼んでください」
ハヤトは二人の言葉に後押しされる様に、テントの入り口をくぐる――。
――キンッ!!
「ば、馬鹿なっ!?」
巨大な戦斧の一撃は細い短刀に防がれた。『銀嵐』は驚愕に目を瞠る。
「これが『銀嵐』の一撃だと」
ハヤトが戦斧を弾き返えすと、『銀嵐』は尻餅をついて倒れ込んだ。
「ひぃ!」
ハヤトの冷徹な視線に恐怖した『銀嵐』は戦斧も放り出し後ずさる。
しかし、それをハヤトが許すはずもなく、その蹴りが『銀嵐』の胸を捉えた。
「い、命だけは助けてくれ! 金か! 金なら少しだけ――」
踏みつけられる『銀嵐』が命乞いをする中、ハヤトは鼻を鳴らす。しかし、『銀嵐』からは何も匂わない。
「……テメェは誰だ?」
「わ、我が名が銀ら――ぶべっ!?」
「テメェごときが、その名を口にするんじゃねぇよ」
強烈な拳が『銀嵐』の頬を打つと、そのまま着けていた銀仮面を剥がしとる。
「……違う」
何処かホッとした声色を含みハヤトが呟いた。
「終わった。入ってきてくれ」
そして、ハヤトは外の仲間達に声をかける――。
●
首魁を捕え砦へと入った冒険者達は、避難民たちの実情を知り、すぐに救援活動に乗り出していた。
「おっしゃ、出来上がりだ! 腹減ってる奴は並べ!」
「沢山ありますので、急がなくても大丈夫ですよ。皆さんの分、ちゃんとありますから」
死んだ馬の供養も兼ね、ギャメルとヴィルヘルミナが避難民たちに馬肉のスープを作る。
「雑魚どもは逃げた様じゃが、馬が15頭も手に入ったのは上々じゃな」
「ええ、後はこの二人をリカルダ将軍へ引き渡し、指示を仰ぎましょう」
「ふん。我が同胞に手を出した大罪人など殺せばいいものを……」
不満そうなベルクを宥めつつ、サーヤとアクティオンは檻を見る。
捕虜となった『銀嵐』と紅月は、リカルダへ引き渡す事になっていた。
「このおじちゃんがここリーダー。ずっと砦を守ってくれてたんだって」
サフィラの案内で、ハヤトはフードの男と対面していた。
「……助かった。礼を言う」
「お、おう」
頭を下げたフードの男の顔は相変わらず見えない。
(ほら、ハヤト。聞くんでしょ)
(わ、わかってる)
サフィラに背を押され、ハヤトがゆっくりと口を開いた。
「一つだけ教えてくれ」
「……なにか」
「あ、あんたの名前は……銀嵐。いや、ニコライじゃないのか……?」
ハヤトが震える声でフードの男に問いかける。
「……知らない名だ。悪いが人違いだろう」
「え……」
しかし、返ってきた答えはハヤトの望むものではなかった。
フードの男はそのまま踵を返すと、二人の元から去っていく。
昼も過ぎる頃、ようやくリカルダが到着した。
リカルダは冒険者達の労をねぎらうと共に、避難民の移動の手伝いを願い出た。冒険者達は帰るついでだとこれを承諾し、早速準備にかかる。
「何処へいく」
冒険者達が忙しく撤収の準備をする中、人知れず去ろうとしたフードの男にリカルダが声をかけた。
「民を置いていくのか?」
「……」
「私には……いや民達には助けがいる。共に来い『――』」
フードの男はリカルダの言葉にはっと顔を上げた。そして、リカルダの瞳に宿る炎を見た男は、自ずとその足元に跪いたのだった――。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年11月29日 09時07分43秒 公開
相談掲示板
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 『銀嵐』っていやぁ、俺の親父かもしれねぇと思ってたのがバルバロイ率いて難民を襲ってるってどーいう事だ!? こいつは直接会って確かめるしかねーな!!
ヒーラーのギャメルだぜ。よろしくな! ハヤトの親父さんらしき人登場か。でもなんか怪しいぜ。 『銀嵐』が本人かの確認はハヤトにお願いして、オレは戦闘支援や物資運搬とかで協力させてもらうな!
シューターのアクティオンです、よろしく。 ふむ……そういう話であれば、頭目は少なくとも「捕らえる」という話になりますかね……? 敵は最初は砦攻め中ということで、後背をつけるでしょうか。 そこで一気に情勢を引き寄せたいところ。
ヴィルヘルミナです。よろしくお願いします。 バルバロイの首魁までのお膳立てをするとして、副官のリザードマンが怖いですね。 避難民に撃ち込まれたらひとたまりもありませんし。 そうなる前に叩けばいいだけの話なのでしょうが。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 ほう、ハヤト殿の親御殿か。 で、それが北壁の同胞を襲っていると(額に青筋を浮かべながら) とりあえず首魁以外は斬り捨てで構わんか? とは言え誇り高いハヤト殿の親御殿がそんなことをわざわざ北壁までしに来るかといえば疑問が残るから本人確認は必須だろうが。
シーフのサーヤである。よろしく。 古今東西有名人の名を騙って拍をつけようとする悪党に事欠かんものよ。 事の真贋はさておき、退治してから化けの皮を剥いでくれようではないか。 攻めかかる前に内部と連絡が取り合えればいいのじゃが、砦が持ちこたえてくれるかいなか。
>内部と連絡 攻めかかる前、は厳しいかもしれませんね。向こうも砦の出入りは注意を払っているでしょうし。 攻撃と同時(賊も急襲に浮足立っているタイミング且つ、砦も事態を把握するのに時間がかかる状態)であれば、混乱の隙をつきつつ早期に内外の連携体制をとることは出来るかもしれませんが。 >敵幹部 さすがに戦闘状態でなくともいきなり外から狙える位置にはいないでしょうから、何とかするなら無理やり切り拓いて突入するか、相手の特性から動くタイミングを予想してそこを突く形とするか。 敵は砦の備蓄が尽きるのを待っているようなので、すぐに動くようなタイミングがなさそうなのが歯がゆいところ……土竜の方は鎖で繋がれているということで、周りに人がいれば味方でも襲い掛かりそうなので、そちらは孤立しているかもしれませんが。
>土竜 シーフで機動力ありそうなのが厄介だな。 血を求めて砦側に行かれたら困るぜ。 コイツの位置を確認できたら、遠距離範囲攻撃で鎖を外される前にたたみかけるのはどうだ? ……ま、ちょいとばかし卑怯だけど。 オレも多少の魔法攻撃はできるぜ。 >一般バルバロイ 半数が馬に乗ってるってんのか。 射程のある攻撃で対応するのが良さそうだな。 馬に罪はねぇんだが、砦の食糧事情を考えて、ここは肉にしちまうのもありだと思う。
にゃ!シーフのサフィラだよっ! ほぇ?砦で暴れてる人ってハヤトのパパなの? でもなんか聞いてた感じと違うかも?(かくり) なんにせよ!直接対峙して確かめなきゃだね! >砦との連携 内部にお邪魔して連絡するならあたしやろっか?軽量化すれば移動力6でひとっ飛びだよっ! >土竜 鎖を外して暴れされるを考えたけど、そっちの方が厄介そうだから、キャメルんの提案通り遠距離からボコボコにするのがいいかもだねっ!
攻め方によっては刀ではなく弓を持ちますか。 向こうがまっすぐ突っ込んでくる性質なら、殺界で足を止めるのも手ですが。 あとは閃光塗弾でも一つ持っていこうかなと。馬にはよく効きそうです。 とりあえず仕掛ける前に敵の布陣を軽く確認しておきたいですね。 砦側が窮地に陥っているので、早めに助けたい所ですが慌てると事を仕損じそうですし。
はい、遅れましたドローミです。 敵のモブは、矢で一掃できそうな_ 面倒なのは、キャスターですかね。 レゾナンス・オブ・ヴァロー一応持ちます。 希望のタイミングを教えて下さい。 もう一枠は、今回 光縛封でしょうか? 此方もご意見くださいませ。
>土竜 わざわざ仕事をさせる意味もありませんしね。超視覚等で位置を把握できるようなら序盤から遠距離狙い撃ちで良さそうです。 >紅月 こちらはこちらで範囲殲滅が得意なら、なかなか寄らせてくれなさそうですね(下手をすると部下を壁にしつつ纏めて、とかやってきそう) 壁ごと抜けるような範囲攻撃とかで狙っていければいいですが……一番怖いのはこちらを無視して砦狙い、でしょうか。 範囲攻撃でも狙い自体はつける必要があると思うので、視界を潰すような方法も取った方が良いかもしれません。 >連絡 行ってくれる、という方がいるならお任せしたいところ。 見咎められないよう、こちらはせいぜい派手に仕掛けましょう。
オレは杖と盾持って、武装バルバロイや土竜への攻撃を優先しようと思うぜ。 回復スキルも用意してある。 破壊魔キャスターやバーサーカーシーフってヤツらなら、弱体技とかはあんまし使ってこねぇかな? って思って、解呪系はセットしてねぇ。 >土竜 普段は鎖に繋がれています、とはあるけど、オレらが到着した時にも100%繋がれてるかはビミョーなとこか。 最初から鎖なしでも、砦側での殺人を防ぐために遠距離攻撃で注意引いた方が良いだろうな。 >紅月 ヒーラーとしちゃ、ヒーリングオーラとか範囲支援するって時にまとめて攻撃されるのが怖ぇな。 範囲支援はコイツの射程外で済ませたいところだぜ。 基本的には密集しないで散開して動くのが良さげか? 作戦上、あえて密集して紅月の狙いをコントロールしたいとかって意見はあるかな? >砦との連携 やっぱシーフの移動力はすげぇな! それじゃ頼んだぜ、サフィラ。
では我は引っ掻き回すとしよう。 幸いというかキャスターがいないから味方からの誤射は気にせず暴れられそうなので敵陣の中から引っ掻き回すとしようか。
ちぃと、前提としてリカルダ将軍に確認しときてぇ! Q1: 状況を整理しとくと、敵は砦の前で兵糧攻めキメてる感じで俺達は砦と敵を挟み撃ちにする形で駆けるつけるって位置関係で合ってるか? それともビッグオウムで空から砦内に降下作戦で迎撃に移れる感じなのか? どっちになるかで作戦も変わってくるだろーからな!
質問だな。 Q1: 状況を整理しとくと、敵は砦の前で兵糧攻めキメてる感じで俺達は砦と敵を挟み撃ちにする形で駆けるつけるって位置関係で合ってるか? それともビッグオウムで空から砦内に降下作戦で迎撃に移れる感じなのか? A1:その認識で間違いない。ビッグオウムを使うには視界が開けすぎているし、敵にキャスターがいる。降下急襲は難しいと考えるべきだろう。
>砦への連絡 よっしゃー!それじゃひとっ走りいって 冒険者と帝国軍の増援があること伝えてくるね!あ、他になにか伝えたい事とかあったら承るよー! >紅月 砦に連絡した後は紅月対応に回ろっかな? 魔乱印で乱しながら各種デバフで邪魔する感じで動いてみるね!
私は刀でいきます。 派手に暴れておけば多少は注意を逸らせるでしょう。
リカルダは回答サンキューな! んじゃ、俺達は開けたとこから堂々と敵の背後を突く形で開戦ってこったな!! >サフィラ 砦内への伝令は頼んだぜ! その分、こっちは派手に仕掛けて注意を引き付けとくぜ! >紅月 厄介度の優先で言えばこいつを速攻で落とす必要がありそーだよな。 っつーわけで俺は最優先でこいつを潰しに行くぜ! 土竜やら銀嵐は後回しで行くからそっちを相手取ってくれる面子はよろしく頼むぜ!! >ドローミ レゾナンス・オブ・ヴァローは初っ端、こっちから仕掛ける直前にみんなにかけて貰う感じが一番いいんじゃねーか? あとは、好きに攻めて貰って良いと思うが光縛封なら土竜あたりを閉じ込めて貰うのが効果的なんじゃねーか?
ふむ・・それなら私は『銀嵐』に行きますか。 偶には戦士同士の立ち合いも良さそうです。最近はあまりなかったですし。