【雲集】断角の谷
真柄 葉
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オープニング
まだ名の無いそこには、フェンガリの民、そしてファーロの民が新たな居住地にすべく、整備を進めていた。
「うい~、そこは道を敷く予定だからもうちょっと西へ移動させろ~」
「おいおい、それはここじゃないだろ?」
「うおーーい、そこサボってんじゃねぇーぞ」
新たな居住地の整備を進める責任者の名はロルフ。
帝国北部方面軍指揮官であるリカルダ=アーレンスの副官に当たる人物だ。
彼はフェンガリからの応援と、昨日リカルダ達が庇護してきたファーロの住民約300名と協力し、彼等の新たな居住地とするべく奮闘していた。
「ロルフ、進捗はどうだ」
そんなロルフの元へリカルダ=アーレンスが遠征から戻った。
リカルダは帝国皇子レイウェストの命を受け、帝国領北部に散在する住民達の安全の確保のために動いていた。
「おや、将軍お帰りなさい。その様子ですと、今回も空振りでしたか」
「む……顔に出ていたか。いかんな」
「はは。まぁ、将軍の顔色を読み取れるのなんて俺くらいなもんですから、気にしないでくださいな」
上に立つ者として常に凛とあろうと努力するリカルダ。そんな気苦労を知るのも副長の務めだとロルフは事もなげに言う。
「それで、しばらくはゆっくりできるのでしょう?」
「ああ、フェンガリ近隣は大方回ったからな。次の大遠征に向けしばらく休むつもりだ」
「それがいいですよ。怪我から復帰してからこの方、ずっと走りっぱなしですね。あそこのゲルを空けてあります。使ってください」
「そうか、助かる」
リカルダはロルフに言われるままに、中央に設置されたゲルへと向かった。
しかし、その足取りは重い。
自分でも自覚していなかったが、相当に疲労がたまっている。
「この程度の事で……すべては殿下の為」
そう自分に言い聞かせ、リカルダはゲルのカーテンをくぐった。
●
「はっはっはっ! 逃げろ逃げろ!!」
ほぼ垂直な山肌を人影が必死で逃げている。
「よく狙ってくださいよ。外したら、クビですからね」
「へへっ、任せとけよ。あんなでかい的、シューターじゃなくても余裕で当たるわ」
山肌を逃げる人影に弓を向ける細身の男。それを観戦するのは、優雅にワイングラスを傾ける紳士風の男だった。
「んだぁ? まだ、落とせねぇのか」
そんな男達の元へ別の男が現れる。
「おや、『お楽しみ』は終わりですか?」
「ああ、ちょっと遊んでやったら動かなくなりやがった。ったく、張り合いがねぇ」
「また壊したのですか。あまり浪費するのは感心しませんね」
「別にいいじゃねぇか。どうせ、角切ったら殺すんだしよ」
そう言って筋肉質の男は角を二本、紳士風の男に差し出した。
「ふむ、なかなか立派な品ですね。依頼主も満足してくれるでしょう。引き続き角の収集をお願いします。ただし、未熟な角は折らないように。価値が下がってしまいますからね」
「へいへい。その辺は俺の趣味じゃねぇからパスだ」
手を振り建物へと戻っていく男を、紳士風の男は笑顔で見送った――。
●
「へぇ、これが釣りかー。なんか、すごいね」
居住地の防壁として設けられた丸太の柵の上から、グリシスが釣り糸を垂らす。
「あ? 釣りも知らねぇのか。今までどうやって魚獲ってたんだよ」
そんなグリシスの隣で、ガロ・ハーマンが不思議そうに問いかけた。
「え、手掴みだけど?」
「手掴みだと……」
ワキワキと手を開け閉めするグリシスに、ガロは目を瞠る。雪豹のハーフビーストの一族は先天性狩人の血脈だと聞いていたが、まさか川を泳ぐ魚を素手で獲るとは……。
「うん? なんか流れてくるよ」
ガロがそんな事を考えていると、グリシスが上流を指さした。
「流木か? 釣り糸に絡まると厄介だから引き上げとけ」
グリシスは言われるままに竿を上げる。
「……しかし、よく見えるな」
「ふふ~ん、狩人は視力が命だからね」
上流から何かが流れてきているとグリシスは言うが、ガロの眼にはさっぱり見えない。
「んで、何が流れてくるんだ?」
「うん? えっとね。ぷかぷか浮い、て…………ひ、人だーーっ!!」
思わず釣竿を投げ飛ばしたグリシスの叫び声が、居住地中に響き渡った――。
●
居住地を囲む堀は、川から直接水を引いている。それもあって、魚はもちろん流木などの漂流物も流れ着く事があった。しかし、今回流れ着いたのは――。
「……ハーフビーストですね」
引き上げた『漂着物』を見やるエメ。それは年老いたハーフビーストだった。
「背中を一撃か。むごい事しやがるな」
死体を検分するロルフが、大きく刻まれた背中の傷を指さす。傷は深く骨まで達し、肩から腰まで袈裟懸けに刻まれていた。
「グリシア、どこの民だ」
「……多分、フェジェの民だと、思う。山羊のハーフビースト」
リカルダに質問され、博識なグリシアは死体の頭部を指さしそう答えた。
死体の頭部にはハーフビーストである証である動物の耳がある。そして――。
「角がない。切られたのか」
「……たぶんそう」
あるはずの角は根元からすっぱりと断ち切られていた。
「フェジェの民と言ったな。それはどういう民なんだ」
「えっと、フェンガリよりももっと山の中に住んでて――」
グリシアはフェジェという民の話を皆に聞かせる。
フェジェの民は北壁山脈の山中に居を構える山岳民族で、そこは帝国領であるものの、極めて険峻な立地である事から、ほとんど知られていない民族との事だった。
そこに住む人々は全て山羊のハーフビーストで、険しい山岳で生活できるよう適応してきたという。
そんな山岳民族の死体が、上流から流れて来た。
「集落を何者かが襲ったか」
「そう考えるのが自然ですね」
死体を前に呟いたリカルダにエメが首肯する。
「……兵に準備をさせろ」
「しょ、将軍! まさか行くんですかい?!」
「帝国の民を見捨てたとあっては、殿下の名に傷がつく」
「しかし、将軍はつい先ほど戻られたばかりで……」
「命の危機に瀕している民を想えば、個人の疲労など取るに足らん。エメ、ロルフ、準備を急げ、まだ救える命もあるかもしれん」
心配する部下二人にリカルダは有無を言わせず命を下す。
それがかつての教え子の為だと信じて――。
●
「しっかり周りを見とけよ。踏み外すと落っこちるぞ!」
左を切り立った崖、右側を奈落の谷に囲まれた山道を三台のビヒモー車がゆっくりと進んでいた。
「大漁だな、旦那」
「ええ、これだけの『収穫』があれば追加の報酬も望めるでしょう」
「はは! そりゃ楽しみだ」
「ディ、ディグの旦那!!」
そんな隊の元へ斥候に出ていた男が慌てて駆け戻ってきた。
「落ち着いてください。何か見つけたのですか?」
「て、帝国軍だ!」
「帝国軍? 帝国は滅びましたよ。何かの見間違えでは?」
「ま、間違えるはずがねぇ! あいつだ……『紅蓮』が来た!!」
「紅蓮、ですって……」
帝国軍に身を置いていたものであればその存在を少なからず知っている。
ひとたび戦場に立てば敵を焼き尽くす苛烈な戦いを見せた紅蓮の炎の噂を。
「……すぐに迎撃態勢を」
ディグと呼ばれた紳士風の男は、すぐに仲間達に指示を出す。
「相手は『帝国の死神』です。山道を崩してでも止めてください」
仲間達はすぐに表情を変えると、迎撃へと散っていった――。
解説
マスターより
リプレイ
左側には一歩でも踏み外せば奈落へと繋がる崖があり、右側は天を衝く断崖。
切り立った断崖の中腹に沿って走る街道は、最早道とすら呼べぬ断崖のでっぱりでしかなかった。
「こンな山の中までついてきといてなンだけどよ……オレたちゃなにすればいいンだ?」
アーテミシアが先頭を往くリカルダに問いかける。
「一先ずはフェジェ集落の無事の確認だ。何かあれば臨機応変に対応してもらいたい」
「ふーむ。依頼書にゃ、賊の討伐って書いてなかったか?」
「ああ、その可能性が高いと踏んで、貴公等を招聘したのだ」
「可能性ねぇ」
リカルダの返答に、アーテミシアは興味なさげに答えた。
「リカルダの言い分はわかる。あの遺体を見れば、集落で何事かが行われた可能性は十分に予測できるだろう」
二人の話を聞いていたナハティガル=ラーが話に混じる。
「仮に賊がいるとして、目的はなんだ。享楽的な殺人が目的か」
「人狩り……いや、遺体には角を切り落とされた跡があったからな、『角狩り』ではないかと推測するが、どうだ」
ベルク・オスマットの呟きに答えながらナハティガルはリカルダを見た。
「なンだ、ハーフビーストの角なんか獲ってどうすンだ。売れンのか?」
角の話になり、アーテミシアは首をかしげる。
「ハーフビーストの角が果たしてそうかはわかりませんが、動物の角や牙であれば『薬』になると聞きます」
と、アーテミシアの疑問にフリーダ=ブロムヴィストが答えた。
「薬だと。そんなものの為に我が北壁の同胞を殺したというのか」
その話を聞いたベルクが、フリーダに鋭い視線を向ける。
「相手がいると確定したわけではありませんから断定はできませんが、ナハティガル様の推測に沿うのならそう考えざるを得ません」
そんな視線に困ったように首を振り、フリーダはそう告げた。
「人狩りに角狩り……いったいヒトを何だと思ているのでしょう!」
そして、ベルク同様、遺体の有様に憤慨する人物がいた。
「わたしの体にあるこのセンザンコウの鱗も、昔、薬だと珍重されたと聞きます。この鱗を得る為、センザンコウの多くが殺され鱗を剝がされたそうです」
と、レイヤ・ダライ=カホールは肩にある自らの鱗を撫でる。
「しかし、そう考えれば納得がいく。この不毛な北壁一帯に、賊が欲しがるようなものがあるとすれば、それは……いや、違う。そうではない」
レイヤの言葉に同意を示したベルクだったが、ふと何かに気付き皆を見た。
「この北壁にあり、最も価値のあるもの……それは生きたヒトだ」
「奴隷狩りか……それは当然考えられる。川を流れて来た遺体は老人のものだった。老人は奴隷としての価値は低い。であるならば、集落の若者達が捕らえられ売られる可能性は大いにあるだろう」
ベルクが至った考えに、ナハティガルが頷く。
「そ、そんな……! どどど、奴隷なんて、そんなの……禁止されてる事じゃないでしゅか!」
ナハティガルの話を聞き、いままでじっと皆の話を聞いていたララノアが声を上げた。
「そうですね。一部地域ではどうか知りませんが、ロスガリア大陸で奴隷はすべて禁止されています。しかし、こうも考えられませんか?」
と、ララノアに応えたアクティオンが皆の視線を集まるのを感じ口を開く。
「もし奴隷の為に人を生かしているのであれば、集落に生存者がいる可能性もあるのではないでしょうか」
「そ、そうでしゅ……! 奴隷さんに、されている人達がいるのでしたら、お、お助けしなくてはっ……!」
アクティオンがそうリカルダに進言するのに合わせ、ララノアは何度も首を上下に振った。
「そうだな。もちろんそのつもりだ。何事もなく無事でいてくれ――とは、都合のいい願望かもしれんが、先を急ぐことは間違いでないと信じたい」
二人の意見を受け、リカルダは皆を見渡す。
「リカルダ様、集落健在の可能性があるのなら、まずは足の速い方を先行させて様子を偵察させるのはどうでしょう」
と、リカルダに応えフリーダが提案した。
「幸いメンバーには足の速い方も多くいます。それに『騙して悪いがされるよりマシですが、不意打ちに等しい状況です』と啓示に出ています」
「啓示? なんだそれは」
「わかりません。ですが、何やら不穏な気配を感じます」
「ふむ、そうか……わかった、少し先を急ぐとしよう」
なんだかよくわからない自信に満ちたフリーダの言葉に、リカルダは頷く。
それはリカルダ自身も不穏な気配は肌で感じていた。
「皆、慣れぬ山道で体力的にも厳しいだろうが、もう人運張り頑張ってくれ」
リカルダは先頭に歩み出て皆を先導しようと歩き出す。
「ねぇ、リカルダ」
そんなリカルダに、ララベル・サン・ディーベルが声をかけた。
「もしもの話なんだけど、その賊って奴等がもう引き上げてて、この道の途中で鉢合わせ、なんて可能性はないかな?」
「……何故そう思う」
「えっと、ここなんだけど」
と、リカルダに問われララベルは地面を指さす。
「道に何かあるのか」
「詳しくはわからないんだけど、何かの跡がついているような気がしない?」
ララベルの指さす道は一見すると何の変哲もない石の道だ。
しかし、よくよく観察すると二本の筋が刻まれてるような気もする。
「ンだ、轍か?」
「うん、そう見えないかな。もちろん、フェジェの人達が馬車を使ってて、その跡かもしれないんだけど」
アーテミシアが覗き込んでくるのに答えたララベルは、改めてリカルダに意見を求めた。
「なるほど、確かに可能性はなくはないな……皆、ララベルの言う様にこの道を使った何者かがいる可能性がある。そして、その者がこの道を引き返してくる可能性もだ。より警戒を厳重に先を進むぞ!」
先頭を往くリカルダの言葉に、冒険者達は頷き険しい山道を再び登り始めた。
●
――ガラガラガラ……。
「ひあぁぁぁ!!」
「ラ、ララノア、大丈夫!?」
切り立った崖から拳大の石が幾つも落ちて来た。
危うくララノアに当たりそうになったが、間一髪ララベルが腕を引き直撃を免れる。
「あああ、ありがとうございましゅ……!」
「ううん、無事でよかった。でも、この辺りの崖は脆いのかもしれないね」
地面につきそうなほどに頭を下げるララノアに、ララベルは声をかけると崖を見上げた。
「音に敏感な者は警戒を、と言いたい所だが、この風は厄介だな」
と、ナハティガルががけ下を覗き見ながら呟く。
道中が険しいとわかっていたこともあり、冒険者に鋭い聴覚を持つ者も多い。しかし、それを邪魔するかのように、谷に巻く風が唸り声をあげていた。
「臭いも流されますから、困ったものです」
「ああ、なンもわかりゃしね」
そんな風は、臭覚に優れる者の邪魔もする。フリーダとアーテミシアが、お手上げとばかりに首を振った。
「頼りになるのは視覚ですが……こうも曲がりくねっていては中々先まで見通せませんね」
そう言うアクティオンは、鋭い視力をもって先を見通そうと目を細めるが、断崖沿いの道は複雑に曲がりくねり、思う様に情報を得られない。
「そんなものは相手も同じ。同等の条件なれば我等に劣る要素はない」
既に賊の存在を確信しているベルクは、一層鋭く耳を澄まし僅かな異音も聞き逃すまいと風巻を睨み付けた。
「そうだな。ベルクの言う通り、我々にはこれほど頼もしい戦力が揃っている。もし仮に賊があろうとも、食い破ってくれよう」
そう勇ましく鼓舞するリカルダに、皆は頷く。
「ですが、風向きは相手方に有利ですよ」
「アクティオンさん?」
「何でもありません。警戒して進みましょう」
不思議そうにのぞき込んでくるレイヤに、アクティオンは首を振った。
●
「待て!」
更に道を進む事、数刻。突然ベルクが声を上げた。
「何か聞こえるな」
「ああ、なんだこれは。動物の嘶きか」
鋭い聴覚を持つベルクとナハティガルが耳を澄ますと、風巻に混じり時折音が聞こえる。
「しゃ、車輪の音のようなものも、聞こえましゅ……!」
二人と同じく鋭い聴覚を持つララノアが、恐る恐る崖際まで近づき耳をそばだてた。
「人の声……なのかな。かすかにそんな音も聞こえる」
更にララベルが続く。4人が揃って異音を捉えた事で、道の先から何かが向かってくることは間違いない。
「ちっ、臭いはしねぇな」
「風向きが逆ですからね。でも、警戒しましょう」
「ンなもん、わかってンよ」
円盾を掲げたフリーダに合わせるように、アーテミシアも曲面手甲を握り直した。
「皆、戦闘準備を急げ! 幸い狭道だ、隊列を組み迎え撃つぞ!」
リカルダが声を上げると、冒険者達が隊列を整える――。
●
――程なくしてそれは現れた。
「何ですか。あれは」
先頭を往くフリーダが立ち止る。眼前には先ほど察知した荷車の集団が確かに居た。
それらは左側の崖のすぐ際まで荷車を寄せ、右側の断崖と荷車の間に陣取っていた。
左側を巨大な鉄箱を乗せた荷車が、右に天まで切り立った崖。左右を堅固な防壁に守られたそれは、まるで『小さな要塞』だった。
「ちっ……厄介なとこにいやがンぜ」
アーテミシアが誰はばかることなく舌打ちをする。
それは完璧な待ち伏せだった。
「あの鉄箱はなんだ。陣を形成するためにわざわざ持ち込んだのか」
「こんな険しい道を通るのにですか? さすがにそれは……」
と、鉄箱を見て呟いたベルクに、レイヤが首を振るが――。
「まさか……檻!」
そう気付いて仲間達を見る。
皆の予想もレイヤと同じなのだろう、多くのものが首を縦に振った。
「お、奥にも2台ありましゅ……! あれにも全部、人が乗ってるんでしゅか……?」
「計三台も……人質を盾にするなんて許せないよ!」
天眼で俯瞰した敵の陣容をララノアが伝えると、ララベルは即座に戦闘態勢をとる。
「同感だ。この程度の距離なら一息で越えてやる。行くぞ」
と、ベルクが天を駆けようと脚に力を入れた、その瞬間だった。
――ガラ……ガラガラガラっ!!!
突然、雪崩れて来た土石で目の前の道が塞がった。
「……上か!」
即座にナハティガルが天眼を使い、崖の遥か上方に蠢く人影を見つける。
人影はすぐさま移動し――。
「っ! もう一度くるぞ! 後方だ!!」
ナハティガルが叫ぶと同時に、人影が岩肌に武器を打ち付けた。
――ドドドドドっ!!
冒険者達の後方を塞ぐ形で再び大量の土石が雪崩れて来た。
「閉じ込められましたか……随分と戦い慣れた人間がいるようですね」
「ええ、我々の行動を制限し自らは最小の労力で敵を討つ。策略家、というよりは確かな戦術眼を持った戦術家がいるようです」
アクティオンの呟きにフリーダが答えた。
彼女もまた卓越した戦術眼の持ち主であったが、その彼女からしてそう言わしめる。
「ったく、めンどくせぇな……こんなモン乗り越えて行きゃいいだろ」
「それこそ狙い撃ちですよ。相手には遠距離攻撃に長けた者もいるのでしょう」
と、アーテミシアが愚痴るのに答えたフリーダは、レイヤとアクティオンを見る。
「そうですね。どこから飛び出てくるかわかっていれば、撃ち落とす事は容易い」
アクティオンは「合図をするのは上の人影でしょうし」、と上方を指さした。
狭い山道。前後は崖崩れで塞がれ、上方にはいつでも岩を落とせる人影が待機している。
「まさに絶体絶命という奴ですね。魔法の一発でもここに打ち込まれれば、足元まで瓦解するかもしれません」
と、味方唯一のキャスターであるレイヤが指摘した。
幸い崖崩れで敵もこちらの正確な位置がわからないだろうから、直接魔法を打ち込まれることはないとはいえ、姿を見せれば狙いうちされる事には変わりない。
「とりあえず、上の眼を潰さないと。いつまでもこっちの情報が筒抜けだよ」
ララベルが皆を見る。彼の言う様に戦いにおいて上方を取られるというのは不利を意味する。皆がララベルの意見に頷く中――。
「あ、あの……! これだけ、完璧に閉じ込めておいて……相手が手を出してこないのは、ななな、何故でしょうか……?」
ララノアが声を上げた。
ララベルの意見に反対したわけではない、ただ単純に疑問に思った事を口にしたララノアに、皆が再び考え込む。
「確かに。敵は何故こちらの動きを封じ込める様な手を取ったのでしょうか。崖を崩せば自分達も通行できなくなるはずです」
ララノアの意見にアクティオンが答えた。
「こっちを警戒してだろ。オレ達が冒険者だってわかってるンじゃねぇの? なンで知ってるかまではわからねぇけど」
「確かに冒険者は敵からすれば脅威でしょう。しかし、ここまでの策を巡らす――」
と、アーテミシアが呟いたのを切っかけに、皆がはっと顔を上げた。そして、一斉に視線を回す。
「む、どうかしたか?」
突然集まった視線に、リカルダは少し驚いたように問いかけた――。
●
「リカルダ将軍を知っているとなると、相手は帝国関連の人物という推測ができる」
上方を警戒しつつ、ナハティガルは自らの考えを皆に話す。
「将軍の実力を警戒し、ここまで慎重な策を取ったのだろう」
「それはわかンだけどよ。あっち動かねぇンじゃ、埒が明かねーだろ。あいつ等、なに考えてンだ。兵糧攻めでもしよーってのか?」
ナハティガルの予測にアーテミシアが疑問を投げかける。
「この程度の土石なら魔法で吹き飛ばせますし、そこまでは考えてないんじゃないですか?」
答えたのはレイヤだった。
「じゃーなンだ。ただの目隠しだってのか?」
「それほど将軍の事を警戒しているんじゃないでしょうか」
「俺もレイヤの意見に同意だ。敵はリカルダ将軍をかなり警戒していると見る。その実力を知っているがゆえにな。――そこで、将軍に一肌脱いでもらう」
二人に向けナハティガルはそう言うと、鞄から筆記道具を取り出し何やら書き始める。わざわざ紙に作戦内容を書き記していくのは、相手に音に敏感な者がいないとも限らないという、彼の警戒の表れからだった。
●
「まずは上の奴を!」
冒険者達の上方に陣取り、此方を伺っている人影。敵方の情報源でもあり攻撃手でもある人影は、その身軽さからシーフだと予想できた。
ならばと、身軽を身上とするララベルが崖を一気に駆け上がる。
しかし、それは敵も予想しての事だったのだろう。即座に迎撃の小刀が飛来する。そして、敵陣から魔弾までもララベルに向け放たれた。
ララベルは細剣で小刀を叩き落とすと、すぐに壁を蹴りジャンプ。そのまま空中を蹴るようにして仲間達の元へ戻った。
「ありがとうございます。キャスター1を確認」
ララベルの行動によって暴かれた敵の陣容をフリーダが記憶していく。
「ンじゃ、オレの番だな!」
ララベルに代わる様にアーテミシアが行動に出た。
彼女は曲面手甲を握り直すと――。
「うらぁっ!!」
前方の崩れた土石の一つに体当たりをぶちかます。
その衝撃に弾き飛ばされた岩が、敵の陣へと迫った。
――ゴンッ!
だが、最前列で大盾を構える人物が勢いよく飛ばされた岩を受け弾き飛ばした。
「ちっ、やっぱいやがるか」
「ですね。ウォーリア1確認です」
アーテミシアの舌打ちと同時に、フリーダが記憶を更新する。
「あの……! たぶ、たぶん、ヒーラーもいましゅ!」
と、そんなフリーダにララノアが声をかける。
「天眼で、見てたのですが……多分、いると思いましゅ……!」
「どうしてわかるんですか?」
「ひぃっ! かかか、勘でしゅ! でも、きっと……いましゅ!」
フリーダに問われ、ララノアはびくりと肩を竦ませながらも力強く言い切った。
「俺もそれらしき人影を見た。彼女の勘は間違ってないと背を押そう」
そんなララノアの意見をナハティガルも支持する。
「わかりました。ヒーラー1。後は頭上のシーフが1」
二人の意見にフリーダは異を唱える事無く頷いた。
「授恵者でない者もいるでしょうし、結構な人数になりますね」
「いや、授恵者はまだいる可能性がある。いや、我ならばこの戦場をたったあれだけの陣容で構築しはしない」
「この戦場……なるほど、シーフですか」
ベルクの意見に頷いたアクティオン。
ここは戦場とは名ばかりの断崖だ。ここを戦場として据えた事を考えると、立体機動に優れるシーフが複数いる事が予測できる。
「シーフであれば、我等の索敵網を掻い潜る術もあろう。最も厄介なのはシーフとみる。そして、それらを踏まえた上で、先の『策』は成ると考える」
ベルクは殊更鮮明にそう声を上げる。まるで敵方の索敵網がそれを察知すると確信する様に――。
●
戦局が動く。
「我が名はリカルダ=C=アーレンス! 賊ども、かかってくるがいい!」
崩れた土石の上に立ち、リカルダは普段は口にしない『紅蓮』のミドルネームまで添えて名乗りを上げた。
敵方は一瞬の動揺を見せるが陣容を崩すことなく、魔法を主体にリカルダを攻め立てた。
「ひっ、ひっー……! がんばれ、私、えっおー……っ!」
リカルダは敵の攻撃を一身に受け止める。もちろん、ダメージを負ってだ。
しかし、リカルダがダメージを受けた先から、すぐ後ろに控えるララノアが回復していく。
それを見てか、上方を取るシーフが動きを見せた。
「――きます!」
レイヤが声を上げると同時、ララノアを狙って落石が発生する。
「危ない!」
ヒールの硬直で落石を避けられないララノアに、アクティオンが体を当て吹き飛ばした。
代わりに、アクティオンに大量の土石が降りかかる。
「アアア、アクティオンしゃま……!!」
吹き飛ばされたララノアが、懸命に這い戻り土石を掻き分けるが、そこにアクティオンの姿はない。
(だ、大丈夫、でしゅよね……? お怪我なんて、されてないでしゅ、よね?)
ララノアは懸命に土石を掘り返しながらも、ちらりと崖下へ視線を遣った。
「おぃ、ぼさっとしてンな! 次がくンぞ!!」
そんなララノアが涙で眼鏡を曇らせる間もなく、アーテミシアに首根っこを引っこ抜かれ後方へと投げ飛ばされる。
そこへ再びの落石。アーテミシアは間一髪落石を避けると、ララノアの元まで下がった。
「そう何度も好きにはさせない!」
落石が巻き上げた煙に紛れ、ララベルが飛び出す。
再び壁を駆けあがり、上方のシーフを狙う。敵もララベルの突進に気付きすぐさま小刀を投擲してきたが――。
「あなたに魔法の援護はありませんよ。代わりにこちらのをどうぞ!」
敵のキャスターはリカルダが引き付けている為、援護の魔法はない。代わりに、こちらにはレイヤがいる。
崖を駆け上ってくるララベルに気を取られていたシーフに、レイヤの放った呪縛が襲い掛かった。
呪縛に囚われたシーフに、一瞬動揺が走る。
「残念だったね! 今までのお返しだよ!」
その隙をララベルが逃すはずはなかった。彼は二刀を構えたままシーフの脇を抜け頭上を取ると一気に急降下。
「喰らえ、烈風三連突!!」
シーフが防御に掲げた小刀を叩き折る勢いで、神速の三連撃を打ち込んだ。
●
「まず一人」
ララベルに討たれ崖下へと落ちていく敵のシーフをちらりと見やり、フリーダが記憶を更新した。
「そんじゃ、もっかい行くぜ!」
上方の脅威を排除したことで、仲間を守る事に注力していたアーテミシアが動く。
彼女は落石の上で敵の攻撃を耐え続けるリカルダの脇を抜け、一気に敵前衛との距離を詰めた。
アーテミシアはシーフ顔負けの速度で、大盾を構える敵ウォーリアに真っ向からぶつかる。
『戦車』対『戦車』のぶつかり合いは、凄まじい衝撃波を生み、辺りに甲高い金属音を響かせた。
そして、このアーテミシアの動きに合わせ、二つの影が空間を飛んだ。
ベルクとナハティガルの二人は、空間を渡ると荷車に乗る鉄箱の上へと着地する。そして、敵中衛に狙いを定めた、その時だった――。
「シーフが多いですね。なるほど、将軍も馬鹿ではない」
言葉遣いは丁寧なれど、凍り付く様に冷たい言葉が二人の耳に届く。
「ベルク!」
「ちっ!」
二人は言い知れぬ危険を肌に感じ、咄嗟に足場のない崖へと飛んだ。
その瞬間だった。二人が足場としていた鉄箱から光の柱が立ち上がる。
「光縛封だと……ヒーラーか」
空中へ身を投げながらもナハティガルがその光の正体を看破した。
――キンッ!
と同時に、ナハティガルが金属音を耳にし視線を移す。そこには敵のシーフと思しき人影と切り結ぶベルクの姿があった。
「よそ見とは感心しませんね」
「ぐっ」
時を置かずして突然目の前に現れた白刃を、ナハティガルは間一髪剣で受け止める――。
●
「ヒーラー1。シーフ2。敵の陣容が厚いですね」
リカルダの背後から戦局を伺っていたフリーダが、新たに情報を書き換える。
荷車を利用した『小さな砦』の入口では、アーテミシアと敵ウォーリアが切り結んでいる。
場所は狭く取り囲めない立地を生かし、敵はアーテミシアの動きを封じる戦いをしていた。
更に空中では、双方のシーフ達がゆっくりと落下しながらも空中機動戦を繰り広げる。
特に敵側にその実力が際立つ一人がいた。
あのナハティガルをもってしても防戦を強いられるほどの手練れ。
「将軍、あれが首魁ではないでしょうか」
フリーダは敵キャスターの攻撃を凌いでいたリカルダに声をかける。
「あのシーフか。確かに見事な腕だ」
復帰したララノアのヒールに助けられながら、魔法を受け続けるリカルダがフリーダの指す首魁と思しきシーフを見た。
「そ、それじゃ、あの人を倒せば戦いは終わるのでしゅか……?」
リカルダを回復しながら、ララノアが問いかける。
「そうだ。と言いたい所だが、それが一番難しいかもしれないな」
リカルダにしてそう言わしめる実力に、二人はごくりと喉を鳴らした。
●
空中での戦いが自由落下へと転じる中、ベルクは敵のシーフと切り結ぶ。実力伯仲。双方ともに奈落へと急降下しているというのに、まるで退く様子を見せない。
「屑の分際で、それなりの腕を持つことは認めてやろう。だが、我がこのまま貴様などと心中するとは、よもや思っていまいな?」
刃を交える中、ベルクが不敵に微笑む。
敵のシーフはその言葉に一瞬表情を曇らせるが、ブラフだろうと再び攻勢を強めた。
「ふん、愚か者が」
ベルクはシーフの反応に、口元を歪め――笑った。そして、さらに攻勢に出たシーフの刃を大きく弾き飛ばすと――。
「やれ!」
天に向け大きく叫んだ。
「ベストです」
そこには、崖から突き出た鉄壁に乗るアクティオンがいた。
ララノアの身代わりとなって土石の直撃を受けたと思われたアクティオンは、その実自ら崖下へと飛んでいたのだ。
もちろん、これは事前にレイヤとの打ち合わせがあってのもの。二人は敵の虚を突く為、一計を案じていた。
アクティオンは空中でベルクと斬り交えるシーフに狙いをつけると、即座に矢を射出。シーフに再び空間を飛ぶ間も与えず、アクティオンの矢がその脚を射貫いた。
シーフは足に受けた矢にバランスを崩す。
「ふん、所詮は力だけ。まともに連携もとれぬ下郎よ」
ゴミでも見る様な視線を受け凍り付くシーフ。ベルクは一瞬の躊躇もなく敵に痛烈な蹴りをくれ、崖下へと叩き落とした。
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「堕ちましたか。なるほど、中々の手練れ揃いだ。流石は『紅蓮』。いい人材を確保している」
「何処を見ている!」
戦闘中に顔を背けた敵の隙を、ナハティガルは見逃さない。
隠し持っていた短剣を抜き放つと、シーフの脚に向けて腕を振るが――。
「貴方のお相手はもう飽きました」
神速の刃は空を切る。
驚くナハティガルをしり目に、シーフはそう言い残すとまるで空間を飛んだように『小さな砦』へと舞い戻った。
「こういう趣向はお好みでしょうか?」
そして、冷笑と共に、二番目を荷車を崖下へ向け蹴り飛ばした。
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「ンだと! このっ!」
バランスを崩し傾いでいく荷車を、最も近くで見ていたアーテミシアが捉える。
しかし、防戦に主眼を置いた敵ウォーリアの妨害もあって、伸ばす手は届かない。
逆に、その隙を逃さなかった敵ウォーリアの体当たりによって、リカルダ達の元まで弾き飛ばされた。
「だだだ、大丈夫でしゅか! すぐにヒールしましゅ!」
ダメージを負い膝をついたアーテミシアの元に、ララノアが落石を越えて駆けつける。
「まずいです。このままでは落ちます」
ララノアを守る様に落石を越えて来たフリーダが、ゆっくりと傾いていく荷車を見た。
荷台と共に傾いでいくビヒモーの嘶きと、鉄箱の中から悲鳴らしき声が辺りに響く。
「――光の糸よ、地より現れ縛り縫い付けよ!」
その時、後方から力ある声がした。
声に呼応する様に、傾いでいく荷車の足元から光の縄が現れ、その車輪を絡めとる。
「急場しのぎにしかなりません! 急いで敵の殲滅を!」
魔法を放ったレイヤが声を張り上げた。
光の縄の効果か、傾いでいく荷車の速度が若干だが緩やかになる。
「私が出る」
と、今まで後衛を守る為、壁となっていたリカルダが動いた。リカルダは陣取っていた土石の上から降りると、剣を構えゆっくりと『小さな砦』に近づいていく。
「おっと、貴方に出てこられては戦場が滅茶苦茶になってしまう。それは勘弁しますよ」
リカルダの動きに首魁の男が前衛に合図を送る。
すると前衛は腰からナイフを抜き、先頭車両を曳くビヒモーの尻に刺した。
『ンボモォォォォ!!』
谷に悲鳴が木霊し、痛みに狂乱したビヒモーが冒険者達へと突っ込んでくる。
「なんの!」
そんなビヒモーの突撃を、リカルダが身を挺して受け止めた。
「将軍!」
「こちらはいい、他の二台を頼む!」
フリーダが駆け寄るもリカルダは首を振り、視線で先を示す。
ゆっくりと傾いでいく一台。そして、その奥にまだもう一台がある。
「僕がいく!」
シーフを倒し戻っていたララベルが再び跳躍した。ララベルは正面から攻めず壁を使い敵陣へと走る。
「これ以上、やらせないよ!!」
ララベルは一気に距離を詰めると、敵後衛に向け崖を蹴った。
「ふふふ、そんなことしていていいのですか?」
ララベルが迫る中、その行動を予測していたかのように、敵の首魁が最後の一台を崖へと蹴りだす。
「なっ! くそっ!!」
ララベルは攻撃を諦め着地するとすぐに跳び、三台目へ取り付いた。
「状況を」
矢に結んだロープで、落下途中だったシーフの二人を回収したアクティオンが、ララノアの用意したロープを伝い上がってきた。
「あわわわ……! えっと、えっと……!」
「敵が荷車を囮に使いだしています!」
突然かけられた声に戸惑うララノアに代わり、レイヤが崖を上がってきた三人に状況を簡潔に伝える。
「一台は将軍が、一台はわたしの魔法で、一番奥をララベルさんが一人で!」
「ちぃ、屑どもが!」
「俺は将軍の押さえているビヒモーを切り離す。ベルク、一番奥へ飛んでくれ」
ナハティガルに答えるより早く、ベルクが空間を飛んだ。
「ロープを持っている方は私に着いてきてください。荷車を引き上げます」
アクティオンがララノア、アーテミシアに声をかけ、レイヤの魔法で押さえていた荷車へ取り付く。
最後尾の荷車では最初に取り付いたララベル、ベルク、そして駆け付けたフリーダが懸命に引き上げにかかっていた。
生き残った敵は荷車から離れ、冒険者達と距離を取る。
「ご褒美はなくなりましたが、仕方ありませんね」
落下しかけの荷車の確保に奔走する冒険者達をしり目に、人狩り集団は踵を返す。
「それでは皆さん、ご機嫌よう」
最後に恭しく頭を下げた首魁がそう言い残すと、仲間を連れ来た道を戻っていった――。
●
「どぅどぅ……」
興奮したビヒモーを何とか落ち着かせたリカルダが、仲間達を見た。
切り離された一台目をナハティガルが開錠にかかっている。
一番傾いでいた二台目は、皆が力を合わせロープで引き上げている。
三台目は素早く取りついた者達のおかげもあって、既に引き上げが完了していた。
「くそっ、こんな事なら一人は生かしておくべきだったか」
三台目の回収を終えたベルクが崖下を見ながら吐き捨てる。
「崖下まで拾いに行きますか? 潰れてる可能性が高いですが」
返すフリーダは敵の去っていった道をじっと見つめていた。
「――開いた! 皆お待たせ!」
二人が話していると、荷台でララベルの声がする。
続く様に、子供のものと思われる鳴き声の大合唱が聞こえた。
それは一台目でも起きており――。
「もう心配はない。ゆっくり降りろ」
一人一人に手を差し伸べ、ナハティガルが鉄箱から子供達を下ろす。
「崖から落ちないように、こっちに来てくださいね。ゆっくりでいいですよ!」
泣きながら降りてくる子供達をレイヤが優しく誘導していった。
そうしていると二台目の引き上げも終わり、三台全て転落を免れる。
解放された人質たちは皆若い者達で、手に枷を嵌められていた。
「奴隷ですか……」
子供達の手枷を外しながらアクティオンが小さく首を振る。
「け、怪我をしてる人は、ここに集まってくだしゃい!」
泣き叫ぶ子供達を前に、ララノアが気丈に声を張り上げた。
「追わねぇでいいのか」
アーテミシアがリカルダに問いかける。
「無駄だろう。これほど統率のとれた賊――いや、集団であれば相応の用意をしている」
「木乃伊取りが木乃伊に、か……胸糞わりぃ」
アーテミシアの呟きにリカルダは答えず、賊の去っていった方角をじっと見つめていた。
こうして、断崖の遭遇戦は終わる。
奴隷として運ばれていたフェジェの子供達は無事回収が叶ったが、人狩り集団には逃げられた。泣きながら語った子供達の話では、集落の大人たちはすべて殺されたという。
冒険者達は晴れぬ気持ちを残し、子供達を連れるとこの場を後にした――。
マスターコメント
ロングシナリオ難しい 報酬:多い8 / 6〜8人
2021年11月19日 15時26分40秒 公開
相談掲示板
レイヤ・ダライ=カホールです。 よろしくお願いします。 此度は、人狩りとの戦いですね。 道は狭く、山肌は険しい。崩されたりすれば、厳しいことになりそうです。 アイアンウォールで仮設の足場を作ったり、落石を防いだりしようかと考えています。 あとは、こちらも敵の存在により早く気付けるようにしないと。
シューターのアクティオンです、よろしく。 急峻な地形、あちらが逃亡を選べない枷でもありますが、こちらとしても自由度は落ちる、と。先に捕捉されているのも厳しいところですね。 足場崩しや上からの落石について、逃げきれなかったように見せかければ相手の油断を誘って指揮役を潰したりできないでしょうかね……
シーフのベルクだ。 できれば指揮役は生け捕りにしたいな(背後関係と販売先を調べたい) 他のは皆殺しでいいだろうが。 足場崩しで足止めできたように思わせてからの奇襲はありだな。 多少の崩れならどうにかできるだろうし。
シーフのナハティガル=ラーだ。今回は宜しく頼む。 >初動 出来るだけ迅速に敵の存在を察知できなければ、本当に落石に巻き込まれて大ダメージを被る事になりそうだ。 索敵の手段として有効そうなのは、【超視覚】【超聴覚】【超嗅覚】【捜波】等になるか。 >指揮官 敵指揮官の生捕りに異論はない。 実行犯だけ潰しても、根本的な解決にはならんからな……。 >戦闘 一般人の構成員が3台の荷車を動かしており、敵授恵者たちはその護衛。 フェジェの民が閉じ込められている檻は鉄で作られており、頑丈な上に中が見えない……との事。 敵授恵者への対応と、人質救出に分かれるのが妥当だろうか?
ぇとぇと…ッ あぁああの、ヒーラーの…ララノアでしゅ!!よろシュクお願いいたしましゅっっ(がばちょー >指揮官生捕り そちらで宜しいかと思いましでっっ >班編成 ぇと、敵対応と…救出で良いのではと… 救出にガロ様や双子様の手を借りるというのも…(ぅぅん 心配だなーってあの。少し思うのが… ビヒモーの暴走による…転落と… あの、フェジェの皆様のコンテナを…人質にとられることでしょうか… 落とすぞ…と、言われるまえに連結を切ってしまいたいようにと… 思ったり、思わなかったり…(しりすぼみ
ウォリアーのアーテミシアだ。 そこそこ数がいるな…谷に蹴落とした方が早そうだな。 敵を片付ける前に人質救出しても邪魔なだけじゃねえか? 人数を割くとしても命を盾に脅しをかけてこねえように、コンテナの入り口を確保するくらいでいいような気もするぜ。
>敵撃破と人質救出 倒す前に救出しても、という懸念は分かりますが、既に言われているような人質を取られるパターンは気になりますね。 人質を落としてしまえばそれこそあとは殲滅されるだけにはなりますが、この手の輩ではやけくそになる可能性もある…… 人手を割くのはあまりよくない、というのであれば、冒険者からは1名程度で、後は一般の兵やガロ君で構成するとか。 >指揮官 ふむ、生け捕りができるならそれに越したことはなし。ただでさえ足場が悪いので、足を潰せれば、といったところでしょうか。 捕縛されるぐらいなら、と無茶をする可能性は……考えすぎですかね。 >初動 足止めされたのを装うとすれば、一部装備品を落としたり潰したりしてみせる、とか? 索敵については超視覚はもっていけますが、何かの仕掛け等を考慮し看破を持っていくかどうか……戦場を考えるとバランス感覚も持っていきたくはあるところですし。
人質を捉えている檻って、中が見えないらしいですよね。 人質がいることを前提とした行動は、PL情報的なアレになりそうな気がします。 リカルダ将軍、お忙しいところすみません、ちょっといいですか? Q1:こちらから、人質等がいることは確認できない(=PCたちは知らない)でしょうか? >指揮官 できれば生かしておきたいですね。依頼主の情報が欲しいです。 >ビヒモーの暴走による転落 確かに危険ですね…。連結を切ることができれば安心です。あとは動物交感とか…接触が要りますけれど。 射程が届けばアーケインテンペストを使って動きを封じるのも良いでしょうか? 敵も授恵者がいるので、対策も必要ですね。 ディグと合わせてシーフが三人います、BSとか移動力の高さとか、警戒が要りそうですね。
質問だな、答えよう。 Q1:こちらから、人質等がいることは確認できない(=PCたちは知らない)でしょうか? A1:そうだな。敵がいる事、生存者がいる事、もちろん人質がいる事、全て不明だ。事前情報(OP)にある様に、『他殺体が川を流れて来た』という情報を元に行動しただけで、確かな情報は何もない。 ただ、それらを予測し行動する事は可能だろう。何事も無策で臨む人間などいない。貴殿らもそうだろう?
>敵撃破と人質救出 敵も追い詰められれば『山道を人質ごと崩す』等の脅迫をちらつかせて逃走を試みる可能性が高いと思われる為、荷車=人質の確保に最低でも1名は欲しい所。 荷車周辺の構成員を排除した後は、 ・檻の中から人質を救出して避難誘導 ・檻から出さずに荷車ごと護衛 どちらを選択するかによって動きが変わってくるかと。 >檻の中 【超聴覚】【超嗅覚】【捜波】等で檻の中に人の気配がある事を察知できるかも知れない。 また檻の開錠を試みる場合、【罠解除】【シーフズツール】を試してみるのも一つの手だろうか? >担当 取り敢えず、【人質救出】の方に手を挙げておこう。
ビヒモーから切り離すのは有りだな。 コンテナの護衛は…まあ一人か二人ってトコか。お手伝いもいることだし、そっちに回ってもらってもいいだろ。 オレは…誰でもいいぜ。魔防もこの中じゃ2番めに有るみたいだし
>敵がいること、捕まっている人がいることなどはPL情報 状況から推測で動いているところではありますが、流されてきた遺体がどこかに引っかかっていて時間差で来ているのでもない限りは「まだこれをやった連中がいるかも」という前提になりますからね(というかだからこそ動いている) 捕まっている人達がいるかはともかく、救出対象(今逃げていて追われているかも)は想定できるかと。救出か保護かはともかく、そちらに人手を割くのは不自然ではない筈。 >救出 とりあえず、檻が落とされるようなことがないようにできれば、檻ごとの確保として、外に出すのはその後でもいいのでは。 襲撃の後ですし、檻から出しても戦闘を見れば混乱して逃げようとするかもしれませんし。 >担当 こちらは素直に人狩り対応ですかね。 バランス感覚使用し、あちらの仕掛けで「落ちた」ように見せかけながら、下から射かけるなどしてみようかと。
>行動 『人質救出』として動く場合は手番を遅らせ、敵授恵者の意識が『敵対応』に惹き付けられてから、 【ホライゾナルジャンプ】で障害物を飛び越え、荷車に取り付くつもりだ。 その後は最後尾の荷車周辺の敵から排除して行く予定。 周辺の安全を確保してから、荷車とビヒモーのハーネスを切り離せないか試してみよう。
そンじゃオレも受恵者相手にするか ウォリアーかシーフってトコだな。 お手伝いのミナサマにはコンテナ防衛やってもらえばいいな。 ……路線変更があるなら今日の日が変わる前にやってもらいてえな?
わ、私も…狭い場所ですので、ひとまず檻ごとの確保で良いのではと… 個人行動としては、接敵前にブルーの使用と回復に専念していきましっ
我はヒーラーから殺りにかかろう。 帝国軍組にコンテナは任せるでよいだろう。 受恵者だけならともかく一般敵も含めるとこっちの倍いるわけだから排除に人手が欲しい。
ぇと…これは…荷車と冒険者の間に敵授恵者がいるという認識でよいでしょうか… 先に出ている荷物を落として私たちが落下したと見せかける案に加えて、 接敵してからも荷車から敵授恵者を引き離す為に、劣勢を装ってコンテナから引き離すなど…いりますでしょうかとふと… と、もう出発ギリギリになってしまったのでここに書くだけ書いておきまし(あせあせ 落下防止に光縛封を持っていこうかと思いましたが…道幅5mですので…塞いでしまいましゅね…(ぷぇぇ
>荷車と冒険者の間に敵授恵者がいる 俺もその認識だが、もしかしたら最後尾の荷車の後ろにも殿役の敵授恵者が居るかもしれない。 >行動 時間も押し迫っているので、俺は「荷車(檻)の確保/人質救出」として行動作成させて貰おう。 荷車周辺の敵を無力化した後は、暴走による荷車滑落を防ぐ目的でビヒモーのハーネスを切断。 その後は敵授恵者との戦闘に加わるつもりだ。 >NPC リカルダ将軍:敵対応 ガロ:荷車(檻)の確保 グリシア/グリシス:一般人の為、戦闘中は後方支援。敵授恵者掃討後は人質救出の手伝い。 一般人の帝国兵:同上 ――上記のように動いて貰う方向でどうだろうか? 問題なければ俺の方で記載しておく。 >役割分担 (※敬称略) ●荷車の確保/人質救出 ・ナハティガル ●敵対応 ・アクティオン ・アーテミシア ・ララノア ・ベルク
オレは構わねえよ 敵のリーダーまでは面倒見きれねえし、意思表明がない奴は適当にやってもらうしかねえな。
ナハティガルしゃま、まとめを有難うごじゃましゅ 私もそちらで問題ございません(ペコー そうですね、リーダーが一番離れた所にいそうなのでし… 敵に対応しつつ、回復頑張りまし! スキルはブルー、オーラ、ヒール、解呪、魔矢の予定でしゅ。 何かありましたらご連絡くださいましでっ えっおー!にございましっ
ギリギリでごめんなさい。 僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね! 僕も敵対応に回って、真壁歩きで崖の壁面なんかも使って自由に動き回りながら、敵の対処をしようと思うよ。 最初の襲撃警戒用に、聴視覚と超聴覚も持って行くね。