【学乱】仮装舞踏会を楽しもう

青猫格子

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シナリオID:1509

オープニング

●パンクリアース学園・貴族寮
 仮装舞踏会の前日。
 アンネリー・ゼンゲルは疲れた顔で貴族寮の自室の寝台で横になっていた。
 ここ最近、仮装舞踏会の準備や確認に追われていたので、久しぶりに早く眠ることができる。
 明日はいよいよ仮装舞踏会の本番。しっかり休んで体調を整えて挑まなければいけない。
「寝なきゃと思うとかえって眠れないわね……」
 緊張しているのか、アンネリーはなかなか眠りに入ることができない。

「心配しないでください。何かあったときは私達やラルス様、イアン様、冒険者の方たちもおりますので」
 明かりを消しに来た召使いが声をかける。
 そう、イアンや冒険者などの協力がなければここまで準備できなかった。
 もちろん全てが順調に進んだわけではない。
 ラルスが急に舞踏会に参加しないと言ったときには驚いてしまった。
 あとからそれは彼の本心ではないとわかって安心したが……。
「そうね。あとは本番を残すのみだものね」
 ランプの明かりが消え部屋が暗くなる。アンネリーは明日を楽しみにしながら眠りについた。

●舞踏会の会場に来る人々
 翌日。
 いよいよ今日は仮装舞踏会の日。
 パンクリアース学園では生徒会総選挙、そして学園祭が同時に開催されるため、仮装舞踏会の他にも様々な催しが行われている。
 そのためか、学園全体がいつもより賑やかな感じだ。

 仮装舞踏会は学園内にあるホールの一つを貸し切って行われる。
 まだ開場まで時間があるが、控室には衣装の準備のため参加者や手伝いの者が集まってきていた。
「生徒会総選挙ね……もうだれに投票するか決めた?」
 着替えながら生徒の一人が友人に話しかけている。
「私の家は代々貴族派だから、アルベイル様を支援するべきではと話が出ていましたけど……でも、まだ決めかねています」
 貴族の生徒たちの中には、家の方針と対立してしまうものもいるようだ。
 そこまでではないが、自分たちで選挙に投票し、代表を選ぶというはじめての経験に悩む生徒は多いらしい。
「難しいよねえ。とりあえず今日は舞踏会を楽しみましょう。さっき見たけど会場の飾り付けも素晴らしいし、料理も美味しそうだったよ!」
 選挙のことも気になるが、純粋に学園祭、そして仮装舞踏会を楽しみにしているものも多い。

●主催者控室にて
 こちらは主催者用のもう一つの控室。
 そこには着替えを終えたラルスが休憩していて、イアンと話をしていた。
「リハーサルの時は着れなかったけど、ラルス君の衣装も問題なくてよかったよ」
「ああ、本当にな……」
 緑色の狩人の格好のラルスがいつになく真面目な顔で頷く。
 主催者のアンネリーと一緒に挨拶をすることになるので、緊張しているのかもしれない。
「このようなイベントに出ることも、貴族としては大事だからな」
 と、真面目ぶるラルスであったが、なんだかんだアンネリーと一緒にいられるのが嬉しいのではないかとイアンは思った。
 先ほどからイアンの召使い、アンジェラにしきりにアンネリーの衣装はどんな感じだったかと聞いていたからだ。
 妖精の姫の衣装というのは分かっていたが、実際に着ている場面は本番まで見ることができなさそうだ。

「じゃあ僕は貸し出し衣装の確認にいくから」
 誰でも気軽に仮装舞踏会に参加できるよう、会場には貸し衣装も用意されている。
 イアンが提供した布で、冒険者たちと協力して作り上げた。
 会場の装飾や料理も、同じくこれまで準備してきたものだ。
「ここまで頑張ったから、あとは無事に舞踏会が成功してほしいよね!」
 イアンはアンジェラにそう話しながら、会場へ楽しそうに歩いていった。

解説

◆目的 仮装舞踏会を成功させる アンネリーが準備していた仮装舞踏会がとうとう開催します。無事に最後まで成功させましょう。 もちろん普通に参加して仮装や踊り、料理を楽しむこともできます。 たくさんの参加者が訪れますので、生徒会総選挙のアピールをすることも可能です。 これまでの準備やリハーサルの回に参加してなくても参加できます。 同行者の指定がある場合は【】でグループ名をつけるか、同行者の名前を記載してください。 衣装は様々なものが用意されているので借りて参加することも、これまでに作った衣装で参加することも可能です。 ◆仮装舞踏会について パンクリアース学園のホールの一つを貸し切り、開催されます。 参加者は仮装をして、踊りや料理を楽しむことができます。 ステージでは演奏が行われていますが、簡単な発表もできますので衣装を披露したり、アピールしたいことがあれば可能です。 料理は立食形式で提供され、ロスガリアの様々な地方の料理を楽しめます。 ◆NPC(リプレイの展開次第では登場しない可能性もあります) アンネリー・ゼンゲル 学園の2年生。今回の仮装舞踏会の主催者。 イアン・ランボヴィル 学園の2年生。仮装舞踏会に衣装の生地を提供することになった。 ラルス・ダンネベルク 学園の2年生でアンネリーの婚約者。 アンジェラ イアンの専属メイド。 イゴール 学園の2年生。イアン、ラルスと同じクラス。王党派貴族の推薦で入学した庶民。会場の飾り付けを担当。

マスターより

お久しぶりです。青猫格子です。今回はいよいよ仮装舞踏会の本番です。 これまでの準備やリハーサルへの冒険者達の協力もあり、無事に開催することができました。 アピールのために参加するのもよし、単純にお祭りを楽しむのもよしです。 それでは参加お待ちしております。

リプレイ

●開会前
 生徒会総選挙を間近に控えたパンクリアース学園。
 その日、敷地内のホールの一つに人が集まりはじめていた。
 いよいよ、アンネリー・ゼンゲル主催の『仮装舞踏会』が開催されるのだ。

 会場の中は室内でありながら作り物の花や布などで美しく飾りつけられている。
 夜になれば夜煌石の飾りも美しく光るだろう。
 ゲルダ・クラインは会場内の飾り付けを見渡し、安堵の息を漏らした。
(いろいろあったみたいですけど、無事に開催できたようでよかった……)
 リハーサル時、侵蝕の指輪によって操られたラルスが会場を占拠してしまったという話は聞いていた。
 その時会場の飾りを取り外していたようなのだが、今では無事に元の場所に飾られている。
(あの薔薇も、百合もちゃんと飾られていますね)
 ゲルダは自分が作った布の花が飾られているのを確認して安心する。

 その時、同じように会場を見回しているララノアの存在にゲルダは気がついた。
「せっかく飾りつけをしましたので……会場を見に来ました……」
 人見知りな彼女は恥ずかしそうに言う。
 飾り付けの作成を手伝ったララノアだが、仮装はしていないようだ。
「貸し出しの衣装もありますよ」
 と、ゲルダがララノアに仮装をしてみないか問いかける。
「そうですね、せっかくですから……でも、魔女以外で、あと眼鏡は外せないのでし……!」
「なら、お医者さんの格好はどうでしょうか?」
 二人は衣装の相談をしながら控室へと向かった。

 舞踏会の会場はホールの中央にダンスフロアがあり、奥に楽団が演奏するステージがある。
 そして左右の脇には立食式の料理が並べられたテーブルが並んでいた。
 リサ・ベイカーはアンネリーの友人たちやメイド、料理人たちと作られた料理を運んできたり、並べたり忙しく作業している。
「これで世界各地の料理を皆さんに楽しんでもらえますね」
 なんとか開会までにすべての料理を並べることができそうだ。
 テーブルにたくさん並べられた料理を見て満足するリサ。
 ロスガリアの様々な料理を立食用にアレンジしたメニューで、冒険者たちがメニューの作成に関わっている。
 リサはエプロンドレスで給仕をしていた。とあるお伽噺に登場する少女の格好だ。
 仮装としても給仕としてもよく似合っている。
「でもこれで終わりじゃないですよ。まだまだ料理はありますからね」
 参加者の冒険者の中には、人並み外れた食欲の者がいてもおかしくない。
 すぐになくならないよう、料理はたくさん用意してあった。
 残りの料理を運ぶため、厨房と会場をリサは忙しく往復し続ける。

 会場の中に人が次第に多くなってきた。
 そこへ、着替えたアンネリーとラルスが会場へ入ってくる。
「まあ、素敵ですよ! アンネリー様!」
 アンネリーの側へ友人たちが集まってきて会場が一層賑やかになる。
 黄色いドレスに蜜蜂のような妖精の羽根のついたアンネリー。そして一緒にいるのは狩人の姿をしたラルスであった。
「アンネリー」
 突然ラルスに声をかけられてアンネリーは少し驚く。
「この日のために君たちが準備していたのに俺は……それでも一緒にこの場にいて良いのか?」
「あなたの本意ではなかったのでしょう? だったらいいのよ」
 そういってアンネリーはにっこり笑う。
 ラルスはまだ何か言いたげだったが、あまり彼女を手間取らせるのは悪いと思ったのか、それ以上続けなかった。

●舞踏会の始まり
 時間になり、アンネリーが挨拶を始める。
「皆さま、今日は仮装舞踏会にお集まりいただきありがとうございます」
 アンネリーは挨拶をしながらこれまでのことを振り返っていた。

 この舞踏会を開催しようと思ったきっかけ、その一つは禁足地の森で彼女たちが襲撃を受けたことだ。
 あれから過激派のそれらしい動きは見ていないが、ラルスはリュシアン・シモネ子爵をその後目撃したらしい。
 これらの事件が完全に解決したわけではないが、今日はようやくたどり着いた舞踏会の日だ。
 今日くらいは心配することを忘れて楽しみたい。

「……以上です。それでは皆さま、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
 挨拶が終わると周りから拍手が起きる。
 リサやゲルダ、アンネリーの友人たち、イアンやイゴールも拍手していた。

 挨拶が終わると参加者たちは自由に食事や雑談、ダンスを楽しみはじめる。
 アンネリーの元にはシルヴィア・A・カペルとハリーヌ・ヨツユビが挨拶にやってきた。
「妖精の姫と狩人……素敵だね。二人のダンスが今から楽しみだ」
 騎士の格好をしたシルヴィアが二人の並ぶ姿を見て微笑む。
「シルヴィアさんこそ、似合ってますわ。会場の中でも一際注目を集めてます」
 アンネリーがシルヴィアに返す。実際その通りだった。
 彼女は生徒会総選挙にも立候補している。彼女の動きが会場の中も注目を集めるのは当然の成りゆきといえた。
 アンネリーはもちろんそういう意味を含めてではなく、純粋に彼女の姿を褒めているのだが。

「アンネリー様。この度は舞踏会本番にお招きくださり、誠にありがとうございます」
 ハリーヌはアンネリーの前に進み出て丁寧に挨拶する。
「ワタクシ、このようなナリでございますが、一年生として編入が許されたのでございます。恐縮ながら、これからは後輩として、どうぞご指導のほどよろしくお願いするでございますよ」
「そうなのね! こちらこそよろしくね」
 ハリーヌの編入の知らせを聞いてアンネリーは嬉しそうにする。
 王国の貴族が多い学園ではハーフビーストの生徒は珍しいといえるかもしれない。
 これもある意味では学園が変化していることの現れなのかも、とアンネリーは思った。

 彼女が他の者たちの挨拶に対応している間、ラルスは料理を食べながら友人たちと他愛もない話をしていた。
「そうそう、幽霊っていえばさ……」
「お楽しみ中の所、失礼するよ」
 ラルスの隣にやってきたのはシルヴィアであった。
「うん、何の用だ?」
 シルヴィアは桜チョコなどの菓子を皿に取りながら、ラルスに話しかける。
「特に用というわけではないけど、今まで依頼を受けたりしても雑談する機会はなかったからね」
 選挙のアピールも兼ねて、多くの人と話をしたいということなのだろうか、とラルスは考えたが特に詮索する意味もない。そのまま話を聞くことにした。
「アンネリーとはうまく行っているのか?」
「うまく? 前の婚約発表延期の件以外では両家で特に問題ごとは起きてない」
「そうではなくて……早くアンネリーをエスコートしないと、騎士が先に踊ってしまうよ?」
 シルヴィアは彼の耳に顔を近づけ、小さい声でつぶやく。
「な……!」
 ラルスが驚いているうちに彼女は微笑みながら席を離れ、アンネリーの元へ行くのであった。
(……彼女の主催の舞踏会だからと一歩引いていた所は確かにあるが)
 それで本当に良いのだろうか。
 ラルスはしばらく考えて、何かを決心した様子だった。

●世界の料理とテーブルの上の海上決戦
 立食用に並べられた料理を参加者たちは、珍しそうに手に取りながら楽しんでいる。
「魚料理がお好きですか? それならばこちらの料理もきっと気に入っていただけるでしょう」
 料理が並べられたテーブルの側で、レティシア・レインフィールが客たちに料理を勧める。彼女は深い青のローブを着た魔女の姿をしていた。
 様々な料理が並べられているため、人によっては馴染みのない料理もある。
 そのため彼女はあらかじめ料理の好みを聞いて、好まれそうな料理を勧めているのだ。

「へえ、これは知らなかったけど、結構好きな味かもしれないな」
 ラルスの友人の一人、ジャンが何気なく手にとった米の料理を気に入ったようだ。
「それはよかったです。このお料理のように、世界には様々な文化があるのですよ」
「そうか、きっと俺の知らない美味しい料理もまだあるんだろうな……」
 知らない異国の文化に触れるのに、料理は入りやすい入り口である。
 ここから学園や王国だけでなく、広い視野を持って行けたら良い……とレティシアは考えているようだ。

 ゲルダも料理を楽しんでいた。
「美味しい……! あの、これは、どこのお料理ですか?」
 何気なく手にしたデザートが気に入ったようで、興奮気味にレティシアに話しかける。
「それは帝国風の料理ですね。ビヒモーの乳が使われているのが特徴です」
「そうなんですね、とてもまろやかで美味しいです」
 ゲルダは以前は王国から出たこともなかったため、初めて食べる料理も多い。
「おすすめのお料理とか、ありますか?」
「そうですね。こちらはどうでしょう……」
 レティシアの解説を聞きながらゲルダは様々な料理を興味深そうに味わう。

 その隣のテーブルでは何やら二人の者が怪しい動きを見せていた。
「にゅふふ……」
 料理を前に笑みを浮かべるエルフとハーフビーストの女性二人組。
 サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは白いイカの着ぐるみ、フリューリングスルフト=ティエラは赤いタコの着ぐるみに身を包んでいる。顔は出ている着ぐるみだ。
 どうやら二人はこの仮装舞踏会で出る料理を非常に楽しみにしていたらしい。
 沢山料理が食べられるように願って、多くの足があるイカとタコの仮装を選んだようだ。
 もちろん、衣装はただの着ぐるみなので動くわけではないが。

「なんか斬新というか変わった衣装だと思ったけど、仮装舞踏会だからたまにはこういうのもいいよねっ」
 イカの着ぐるみに身を包んだサフィラが会場を見回しながら言う。
「気に入ってもらえてよかったさぁ! サッフィーも一緒に料理を楽しみましょ!」
 タコの姿のフリューが笑顔で返事する。なんとも不思議な光景だが、この会場ではそれほど奇妙でもない。
「にゃ? サッフィーってあたしのこと? うん、もちろん! ってことでこの皿は貰いっ!」
 さっそく小皿に盛られた料理を手にするサフィラ。
 鶏肉の料理だが外国料理らしく食べたことのない味付けだ。
「珍しい味ね。でも美味しいかも!」
 サフィラは次々にいろいろな料理を手にして美味しそうに食べていく。
「こっちのスープも美味しいんよ」
 貝などの海産物の具が沢山入ったスープを差し出すフリュー。海産物の姿をした二人が海産物料理を食べているのは奇妙かもしれないが、タコもイカも肉食動物だから問題ない(?)

「よーし、この勢いでどんどん食べていくよ!」
「こっちも負けないんさぁ!」
 二人で競うように食べていき、テーブルに並べられた料理が次々に減っていく。
 料理人やメイドたちが慌てて後から補充をしているが、このテーブルの減る速度には追いついていない。
「ふふふ、甘いねフリュー! イカの方が足の数は多いんだよっ!」
「くっ、サッフィーは足10本あるから有利かっ」
 などと、二人で軽口を言い合いながら食事を楽しんでいる。
 普段は大食いが得意というわけではないフリューだが、サフィラと一緒にいると不思議といつもより多く食べられる気がする。
 サフィラの方はといえば、すっかりたくさん食べて満足したようだ。
「よーし! お腹もいっぱいだし、一発踊ろう!」
 まだまだ元気な彼女に、フリューも元気にうなずいて一緒に踊ることにした。

●探偵と怪盗、そして南の鳥は踊る
 ホールでダンスを楽しむ者たちは様々な衣装に身を包んでいる。
 探偵の格好のアルト=ミルドレッド=バ・ロッサ、怪盗のハーヴィ、そしてビッグオウム風の緑の紳士服に身を包んだギャメルの三人もいた。
「無事に仮装舞踏会ができてよかったね。作った衣装もこうして着ることができたし」
 タキシードと仮面の怪盗姿のハーヴィがくるりとまわりながら二人に言う。
「ああ、今日はちゃんと学園らしい優雅なダンスを踊るよ。ハーヴィ、教えてくれるか?」
「もちろん」
 ハーヴィがギャメルにダンスの足運びを教えている間、アルトはどこか不服そうな顔をしながら料理を食べていた。

「アルト、体調が悪いのか?」
「違うわよ! た、確かに思い入れのある格好だけど……実際着て踊るのは恥ずかしいってこと!」
 心配そうにギャメルが声をかけると、ケープを羽織った探偵衣装のアルトが顔を赤くする。
 自分でケープを縫ったこともあり、着るのが楽しみだった気持ちがないわけではないのだが、仮装は慣れないこともありなかなか落ち着かない。
「しかも誰かとする踊りもあんまり上手じゃないし……」
「得意じゃないなら、教えてあげるよ。大丈夫」
 ハーヴィがそういうと、アルトは仕方ないなという顔をする。
「ま、まぁね。どうしてもっていうんだから、やってあげるんだからっ!」
 結局、仮装で踊りを楽しむ言い訳が欲しかっただけなのかもしれない。
 ハーヴィはわかっていたようだが、ギャメルは真に受けて踊りの指導を受けるアルトを心配そうに見ていた。

 音楽に合わせて次第にアルトも慣れてきた様子で、ハーヴィとのダンスの足取りも軽くなる。
「探偵ならあなたを捕まえないといけないのに、一緒に踊ってるなんて変よね?」
「そうかな? ライバル同士、いい組み合わせだと思うよ。今宵、貴女が守る大切な物を頂きに参ります……なーんてね」
 怪盗姿のハーヴィはアルトが楽しんでいることが分かるのか嬉しそうだ。
 大切な物とは、どうやらギャメルが扮する南国の鳥のことらしい。
 ギャメルも加わり、三人で楽しく踊っていると次第に音楽がテンポの良い曲に切り替わってきた。
「いい曲だな。ノッてきたぜ……ああ、体が勝手に!」
 貴族的な優雅なダンスを踊ろうとしていたギャメルだが、ゴールディで流行っているダンスのステップが出てきてしまう。
「ギャメル、せっかくだからそのダンスを教えてよ」
 ハーヴィがそう言うとギャメルは驚く。
「いいのか?」
「うん、ぼくもゴールディ風のダンスを踊ってみたいんだ」
 どうやらハーヴィは本気らしい。ギャメルはそういうことなら、と今度はダンス教えはじめる。
「こうやって腕を引いたり、突き出したりするんだ」
「こうかい?」
 ハーヴィがギャメルの振り付けを真似していると、アルトも恥ずかしそうだが一緒に並んで踊り始める。
「ま、たまにはこういうのもいいわよね!」
 気がつくと三人はしばらく踊りを楽しんで、すっかり疲れてしまった。
「ふふっ、いっぱい踊ったらお腹空いちゃった。ね、みんなでご飯食べに行こうよ!」
 ハーヴィが立食コーナーへ誘うと、ギャメルとアルトの二人も賛成して一緒に行くことにした。

●舞踏会の夜、少年は王子になり
「……ホント、ズルいよな」
 着替えてきたナキルは待っていたエフィルミアを目にして呟いていた。
「どう? 今日の私も可愛いでしょう!」
 ナキルに気づいたエフィルミアが胸を張って言う。
 今日の彼女は事前に作っておいた花の妖精の衣装を着用している。
 たくさんの造花で飾られた会場にとてもよく似合っていた。
「うん……すげぇ可愛い」
 まっすぐ見つめてストレートに褒めるナキルの様子を見て、やや動揺するミア。
(素直に褒めてくると、こっちが恥ずかしくなるのね……!)

 気を取り直して二人はダンスを踊ることにする。
「しっかりエスコートしてね。私の小さな王子様!」
「あぁ、良いぜ。王子らしくエスコートしてやるぜ、お姫様」
 花の妖精のミアと正装のナキル。
 堂々とダンスするナキルの姿はまるで生まれついての王子のよう。
 いつもと違う様子にミアはますます動揺してしまう。
(でもダンス技術は私の方が上のはず! ここで主導権を取り戻し……)
「あっ……」
 考え事をしていたためか、急に変わった振り付けに追いつけず、よろめくミア。
 だが、ナキルが素早く抱き寄せてミアは地面に倒れずに済む。

「あ、ありがとう……」
「お姫様を助けるのは当然だろ? 今度は、オレがミアの大事なモン盗んでやるからな」
 と、ナキルは抱き寄せたミアの頬に軽く口づけする。
(!?!!)
 理解が追いつかないミアは動揺を隠せず顔を真っ赤にする。
(あんなに可愛かったのに、あっという間に男の人の顔になっちゃって! ずるい!!)
 しっかりエスコートしてねと言ったのはミアであるが、ナキルの大人な態度についていけていない。
「何曲でも付き合ってあげるよ。私についてこれるならね!」
 強がりの言葉を言いながら踊りを再開する二人であった。

(あら、ナキル様……なんだかタダならぬ? ご様子)
 医者の仮装をして料理を食べに来ていたララノアは二人に気がついて様子をうかがっていた。
(恋は応援しなくては……えっおーにございまし♪)
 どのような会話をしているのかまでは分からなかったが、とりあえず応援しておくのがよいだろう、と心の中でエールを送る。
 その後は料理を楽しむためテーブルに意識を移すことにした
「わぁ、たくさんのお料理が並んでいます……こっちも……あっちも! これは何でしょうか?」
 珍しい料理が選びきれないほどある。
 冒険者になる前は貧乏であった彼女にとっては夢のような光景だ。
(過保護なオババ様がいたら、驚いてしまいますね……ふふ)
 皿に料理を取りながら、故郷を懐かしく思い出すララノア。
 故郷の森とはまったく違う世界にいることを改めて実感し、料理をゆっくり味わっていた。

●潜む者、踊る者たち
 会場では様々な参加者が思い思いに仮装や踊り、料理を楽しんでいる。
(ふふ……だれも私が狐のハーフビーストであることを疑ってないようね)
 茶髪のウィッグにフード付き黒マントをつけた死神の衣装のコハクは内心で微笑んでいた。
 変装にさらに声帯模写をつかい、フードを深くかぶって元の姿から別人になりすましている。
 たしかに『仮装舞踏会』なので間違いではない。
 また会場には様々な姿の参加者がいるため、コハクを不思議に思う者はいないようだった。
「さ、美味しいご飯たーべよっ♪」
 と、普段と口調を変えて料理を手にするコハク。実際に料理を楽しみにしていたのは本心だ。
「わあ、このスコーンおいしー! ジャムも合うわね♪」
 お菓子を中心にどんどん食べていくコハク。なかなかの大食いだ。

「全く、カズマは勢いで行動するよね」
 舞踏会のホールを見渡す二人組。
 リズ・ジェイド・フローレンスはカズマ クレセントブラッドに向かって呆れたような顔をした。
「たはは、わりーなリズ。なんかのパフォーマンス的なダンスかと思って参加したらさ、こう……ちょっといい感じの舞踏会だったからさ。付き合ってくれてサンキュー!」
 真っ白で清楚な貴族騎士のような衣装に身を包んだカズマが悪気なく答える。
「いいわ。その代わりしっかりエスコートしてもらうわよ」
 勢いで参加したカズマに付き合う形となったが、リズは笑って許すことにした。
 今日の彼女は貴族の令嬢のドレス姿をしている。仮装であるかというと難しいが、舞踏会の服装としては間違っていない。なにより動きなれた服装であることを優先した。
「せっかくなので騎士らしく、レディには……こんな感じか?」
 膝を付き、リズの手を取り甲に口づけをする動作をするカズマ。
「ええ喜んで……と言ってもらえたら満足かしら」
 実際に口づけをしたわけではないが、リズは少し恥ずかしそうに微笑む。

 腰に手を当ててエスコートしてホールへ踊りに誘うカズマ。
「ま、こーゆーのは分かんなくてもノリでいーんじゃねーの?」
 適当に音楽に合わせて踊ろうとするが、周りの人にぶつかってしまいそうだ。
「仕方ないわね。今回は私がリードしてあげるから。ほら合わせて」
 リズがカズマの手を取り、足運びを教えながらゆったりと踊る。
 次第にうまく踊れるようになっていく二人。
「踊れるようになると楽しいな!」
 騎士らしくするのを忘れたのか、素直な笑顔を見せるカズマ。
 リズはなんだかんだそんな彼を放っておけないのだ。

「楽しかったな! 付き合ってくれてありがと! 今度ちゃんと奢るぜ!」
 踊りを楽しんだあとは立食を楽しむカズマとリズ。
 カズマはチーズを載せたクラッカーを手に、リズはラズベリーのクラフティを味わっている。
「奢るのはいいけど、ちゃんとダンスを覚えてきてね」
「わかったよ」
 リズの言葉にカズマは謝りながら、今度はダンスもエスコートできるようにしないとな……と内心思っていた。

●選挙へ、それぞれの思い
 ステージでは音楽が奏でられる合間に、参加者が自由にアピールを行うことも可能だ。
 祝いの言葉を述べる者や、選挙への呼びかけなど様々な主張が行われている。
「この学園に通っているのは私達だ。私達自身の手で、学園をより良い場所にしていこう」
 シルヴィアは楽しい場に水をささないよう、簡潔に呼びかけた。
 だが、家ではなく自身の気持ちで投票してほしいという気持ちは伝わったと思いたい。
「リサも、せっかくだからなにか呼びかけたらどうかな?」
 舞台から降りたシルヴィアが料理を運んでいたリサに話しかける。
 学園派のアピールも兼ねて、ということだろう。
「そういうことなら……」
 リサはステージに上って簡潔に、料理を楽しんでもらえて感謝している、これからもよろしくお願いします、という挨拶をした。
 月並みな言葉とも言えるが、そこには誠意が込められていた。

「これでみんなが選挙に興味を持ってくれるといいね」
 アンネリーはステージに注目する参加者を見て嬉しそうにラルスに言う。
「あ、ああ……」
 ラルスの返事がすこし上の空であったため、アンネリーは心配そうな顔をする。
「大丈夫? どこか具合が悪いの」
「いや、そうじゃない。ちょっと考え事をしててな。アンネリー……一緒に踊ってくれないか」
 ラルスがアンネリーを真っ直ぐ見つめる。
 いつになく真剣な眼差しに、アンネリーは驚きながらも嬉しそうに微笑む。
「ええ、よろこんで!」
 ラルスがアンネリーの手を引いてホールへ出て踊りを始める。
 妖精の姫を森から連れ出した狩人のラルス。
 夜煌石の飾りが光り始めた会場の中で、二人の踊る姿に気がついた参加者は拍手で暖かく迎える。
「……やっぱり、こういう風に注目される場で踊るのは気恥ずかしいな」
 ラルスは舞踏会が初めてというわけではない。確かな足取りでアンネリーをリードしているが、注目されると落ち着かないようだ。
「大丈夫よ、狩人さん。頑張って」
 アンネリーはそんな彼の一生懸命さが分かるのか、優しく答える。
「アンネリー様もラルス様も、お似合いでございますよ」
 席で行儀よく料理を食べていたハリーヌが二人を応援するように声をかける。
 本人は踊らないが、貴族の世界の雰囲気を学ぶため、興味深そうに二人のダンスを見ていた。
「やはりお貴族様の世界は華やかでございますねぇ」
 学園の中でも一際華やかな時間が流れていく。

●舞踏会の終わりに
 外が暗くなってしばらく時間が過ぎた。
 優雅な時間はいつまでも続くように思われたが、いずれ終わりは訪れる。
「お疲れさまです」
 料理を食べていたフラム・アニムスが席に戻ってきたアンネリーに挨拶する。
 以前作った楽団の衣装を舞踏会用に改造した衣装を着ていた。
「ありがとう。もうすぐ舞踏会もおしまいね……」
 少し寂しそうに会場を見つめるアンネリー。
「それなんですが、最後に一つ、余興をしませんか?」
 フラムはそんな彼女にある提案をする。

 しばらくして。
「最後の出し物ですって?」
「なんだろう」
 参加者がアンネリーたちに呼ばれて庭に出てくる。
 庭には先ほどステージにいた楽団が移動しており、演奏の準備をしていた。
「はい、みなさんこれを手に持ってください」
 フラムが紙と竹で作っておいたスカイランタンを参加者に配っている。
 ランタンには凧のような細い紐がくくりつけられている。灯りの熱で上昇する仕組みになっており、どうやら参加者で一斉に浮かべようという余興のようだ。

「みんなに行き渡ったわね。じゃあ打ち上げましょう……3、2、1!」
 アンネリーの合図で、夜空に一斉に灯りか浮かび上がる。
 暗い夜空にいくつもの明かりが浮かぶ。その幻想的な光景に、楽団の音楽が加わり一層引き立つ。
「素敵……!」
 合図をしたアンネリーも空を見入っていた。
 うまく行ったようでフラムも空を見上げながら胸をなでおろす。
「いきなり呼び出して何かと思ったが……悪くないな」
 ラルスも灯りが浮かぶ空を見ながら表情を緩ませる。
 明かりが消えるまで、参加者たちは幻想的な空の景色を存分に楽しんだ。

 こうして、仮装舞踏会は無事に成功を収めた。
「今まで大変だったけど、こうして無事に終わってほっとしたわ……」
 帰り始めた参加者を見送りながらアンネリーがつぶやく。
 困難もあったが、多くの人が喜んでくれたのもあり、開催できて満足したようだ。
「これだけ盛り上がったのは、みんなの協力があってだわ。今日は忙しくて話せない人もいたけど、あとで一人一人にお礼を言いたいくらい」
「そうだな、俺もだ」
 ラルスは同意する。冒険者たちが彼女を助けることができなければ、今夜の光景は見られなかった。
 今、彼女の側にいられることの大切さを改めて感じていた。
 これから学園も、王国も様々な変化が訪れるだろう。
 仮装舞踏会も生徒会総選挙も、その途中の出来事に過ぎない。
(だが、今日のことは忘れない……もう彼女を悲しませないためにも)
 改めてラルスは心の中で誓うのであった。

マスターコメント

お疲れさまです。 皆様のこれまでの準備もあり、素敵な舞踏会になりました。 楽しんでいただければ幸いです。どうもありがとうございました。
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準17 / 4〜25人

2021年10月26日 11時50分02秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ギャメル

    ギャメルだぜ。よろしくな! 作った仮装を着て踊ってみる。 あ、ゴールディ風のダンスじゃなくて、学園っぽい上品な踊りに挑戦だ。 同じような行動を予定してる人がいれば一緒に遊んでみたいな。 ソロになってもソロなりに楽しむから、すでに同行者いるよって人はオレに気にせず挨拶とかどうぞー!

  2. ハーヴィ

    ハーヴィだよ、よろしくね。 >ギャメル 前に作った衣装で踊るの? ね、ね、僕も一緒していい? 同じく作った仮装で踊るつもりだったんだ。

  3. アルト=ミルドレッド=バ・ロッサ

    …………

  4. ギャメル

    やった! ありがとっ、ハーヴィ! ハーヴィの怪盗衣装もステキだぜ! ……そんで、アルトはどうしたー? 作ったケープに帽子がついて、探偵スタイルしてたな。 ハーヴィの怪盗姿と良い感じの組み合わせで絵になってた。 なぁ! アルトの都合が良けりゃ、いっしょに遊ぼうぜ!

  5. ハーヴィ

    わーいっ、こちらこそありがとギャメル! えへへ、よろしくね! そしてアルトも一緒に踊ろうよ! 僕は怪盗でアルトは探偵、共に目的はギャメルの南国の鳥、なーんてね。 学園風の上品な踊りって言えば社交ダンス的な?

  6. アルト=ミルドレッド=バ・ロッサ

    ………(ため息ついて わかったわかった、よろしくね二人とも…()

  7. ギャメル

    やったー! 二人ともありがとう! 返事が遅れてごめんなさい! 社交ダンスはハイレベルなやつじゃなくて、ちびっこ社交ダンスみたいなのをイメージしてた。 三人だと社交ダンスってより、いっしょにクルクル回ったりそういう感じになるのかな? タグとか作っておくか? 怪盗と探偵っつーと推理小説だから【推理】なんてどうだ?

  8. ハーヴィ

    >ギャメル なるなる、そういうのか! 3人一緒に踊るって言うと、パートナーチェンジしながら交代交代で交互に二人と踊るイメージでいたよ。ギャメルには教導で足運びを教える感じでプレ書いてたけど、変えた方が良いかな? ゴールディ風の踊りも教えて欲しいな。 タグはそれで大丈夫!

  9. ナキル

    「ナキルだ、よろしくっつーか 先に謝っとくな、ちょっと場を借りるぜ!」

  10. ギャメル

    >ハーヴィ オレの社交ダンスは付け焼刃だから教えてもらえると嬉しい! ありがとう! お、それじゃゴールディ風のダンスもちょいと披露しようかな。 >ナキル さ、先に謝るって何をする気なんだーっ!? ……でもナキルだから、きっと場を盛り上げてくれるようなことかな。 楽しみにしてるぜ!

  11. ナキル

    「>ギャメル …どうかな。 ま、まぁ、全力なのは保証するぜ!!」

  12. エフィルミア

    エフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 小さな王子様がエスコートしてくれるみたいなので、楽しみたいと思います! ふっふっふ、私の魅力にメロメロ間違いなし!

  13. ナキル

    「>ミア …ふー…よし。 おう、楽しみにしてるぜ!そっちこそ覚悟してろよな!」

  14. リサ・ベイカー

    リサです。予定通り、立食用の料理作りますね。 余裕があれば、と言うかお誘いあれば踊るかも? 基本的には、裏方ですね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0