黒曜子の小休止

真柄 葉

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シナリオID:1473

オープニング

「戻って来たか……」

 長い長いトンネルを抜け、久しぶりに日の光を浴びた。
 レイウェストは眩しそうに目を細めながら、空を見上げる。

「殿下、一先ずはお体をお休めになってください。ベースキャンプにて休息の準備ができております」

 そう声をかけたのは極行遣北使(ノルデン・ボーテ)で副官を務めたエメだった。
 彼女はリカルダと共に一足先にフェンガリへと戻り、事後の準備を行っていた。

「うむ、ではそうさせてもらおう」

 首を垂れるエメに連れられ、レイウェストはフェンガリへと降りていく。
 長い階段を下り、着いた場所は極行遣北使(ノルデン・ボーテ)の為に作られているベースキャンプだ。

「随分とできたものだな」
「はい、村の民達が精を出してくれています。あとで労いの言葉の一つでもおかけいただけると、彼等も喜びましょう」

 レイウェストの呟きに先導するエメが答える。
 レイウェスト一行はエメに連れられ、ベースキャンプの主棟へと入っていった。

●

「殿下、おかえりなさいっ!」

 ようやく腰を下ろしたレイウェストの元へ、村の娘クシェンが訪れた。
 クシェンは脇に控える臣下たちを気にする様子もなくレイウェストの元へと近づく。

「こ、こらクシェン! 殿下に失礼だろう!」

 と、クシェンに次いで入ってきたのが、彼女の兄でありフェンガリの長クルススだった。
 クルススはレイウェストや臣下たちに深く礼をすると、クシェンと同じくレイウェストの元へと歩み寄る。

「過酷な極北行、お疲れ様でございました、殿下」

 クルススはレイウェストの前へと立つと腰を折った。

「うむ、その方も村の発展に尽力しているようだな」
「はい、お陰様で色々新しい動きが起きております」
「よい事だ。励めよ」
「はい」

 レイウェストへの挨拶を済ませ、クルススは踵を返す。
 クシェンが「もう帰るの?」と首をかしげているが、クルススはその手を引き部屋を後にした。

「殿下、巫女殿の処遇はどういたしましょう」

 再び帝国の臣下のみとなった部屋で、エメがレイウェストに問いかける。

「あれは我々の埒外にある存在だ。私がどうこうできるものではない」
「しかし、殿下にも御印が……」
「これは、そういうものではない。ともかく、征竜の巫女の事は自由にさせよ。我々があえてかかわる必要はない」
「はっ、仰せのままに」

 レイウェストの言葉に、エメが傅いた。

●
「へぇ、もうできたんだ」

 レイウェストともに極北から戻ったヒルルクは、様変わりしたベースキャンプの様子に驚いていた。

「まだ半分位らしいわよ」
「あー、そういえば屋根のない家もあるわね」

 ベースキャンプの外周を回っていたヒルルクに付き合うのは、クシェンだった。

「あ、あれ! 真ん中の建物から煙出てるわよ!?」
「ああ。あれはサウナだから煙が出るのは当然なのよ」
「えっ、そうなの!? って、サウナって何?」
「え、ヒルルクってサウナも知らないの?」
「なによ、クシェンは知ってるの?」
「…………知らない」
「知らないんじゃない!?」

 なんて二人して賑やかにキャンプを回っていたら――。

「やぁ、お嬢さん方。サウナに興味津々なお年頃かい?」

 極行遣北使(ノルデン・ボーテ)のもう一人の副長ロルフが声をかけて来た。

「よかったら俺が教えてあげよう。サウナっていうのは――」

 きょとんと見つめる二人の少女を前に、ロルフは鼻高々に話し始める。
 サウナとはどういうものなのか、サウナに入るとどういう効果があるのか、サウナに入る作法は――。

「「ふーん」」

 一方、説明を受けるヒルルクとクシェンはよくわかっていないのか、生返事。

「で、結局何なの?」
「いや、巫女殿、俺の話聞いてた……?」
「聞いてたわよ。聞いてたけど、作法だかなんだかよくわからない話ばっかりでよくわからないのよ」
「そ、そうか。少し話が難しすぎたかな」

 不満げなのはヒルルクだけでなく、クシェンも同じだった。
 結構丁寧に説明したのにな、と内心しょんぼりしつつも、ロルフは簡潔に話す。

「二人にもわかる様にとーっても簡単に言うと、今日の疲れを癒して、明日への活力を得る場所だよ」
「なによ、それならそうと先に言ってよね」

 「いや、言ったけどね!」と心の内で叫んだロルフの事など気にもせず、ヒルルクとクシェンは「ねー」と互いに頷き合った。

「ま、まぁ、わかってくれたのならよかった。それでどうだい。二人もよかったら入ってみないか? なに初めてで色々と不安だろう。でも心配する事はない、俺がお供をしてあげるよ」

 と、胡散臭い笑みに白い歯を光らせるロルフに、ヒルルクとクシェンは同時に首を傾げる。

「疲れが癒えるなら殿下を入れてあげればいいんじゃないかしら?」
「え?」
「あー、確かにレイレイってば顔に悲壮感漂ってるもんね。疲れが癒えれば少しは笑顔になるかしら?」
「えっ……殿下をサウナに……?」
「そうそう、さっき会ってきたけど、せっかくのイケメンが台無しよね。極北で何かあったの?」
「あ、あの……お二人さん?」
「まぁ、色々とね。でも疲れているのは確かだから、サウナ(?)で疲れが取れれば、ちょっとはマシになるかも」
「そうなんだ。それならなおの事、サウナ(?)に入れないといけないわね!」
「そうね。そうと決まれば、早速連れてきましょ!」
「うん!」

「……俺しーらない」

 意気揚々と主棟に向かっていく二人を、ロルフは見なかったことにした。

解説

●目的 レイウェストと共にサウナで旅の疲れを癒してください。 ●場所 北の地フェンガリにある|極行遣北使《ノルデン・ボーテ》ベースキャンプ。 ベースキャンプ建物群の中央に最近完成したサウナの中は広く、20人程度が一度に利用できます。サウナ部屋は一室ですが、男女間は簡単なカーテンで遮られています。 ●人物 レイウェスト・バルダス 帝国の皇子。征竜より『印』を授かり、南へと帰還を果たした。 ヒルルク 征竜の巫女。故郷である竜の里『ドラグエンダ』に留まることなく、レイウェスト達と共に南へと帰ってきました。 クルスス 雪豹のハーフビーストでフェンガリの村長。 クシェン クルススの妹で同じく雪豹のハーフビーストの少女。 ●補足 竜の里『ドラグエンダ』からの帰路もかなり過酷でしたので、レイウェストだけでなく皆さんもとてもお疲れの事かと思います。そんな皆さんを迎えいれるのが、丁度(都合よく)完成したフェンガリサウナ(まんま)です!  サウナの中で、極北での思い出を語るもよし、これからの展望を話し合うもよし、レイウェストとの交流を深めるもよし、ヒルルクをからかって遊ぶもよし、クルススやクシェンに旅の話をするもよしです。 サウナで火照った体は、村の西に流れる川で冷やすこともできます。 なお、サウナでは基本的に水着着用です。基本はあくまで基本。基本ではない場合がある可能性も捨てきれませんが、どうかお手柔らかにお願いします。 サウナに入ろうっていう依頼内容ですが、別にサウナに入らずに村人達と交流しても構いませんので、ご自由にお過ごしください。 サウナに入った後の一杯とかも特別ですよね。まぁ、主要NPCはみんな未成年ですけど……。 レイウェストはフェンガリでの休息の後、リブラネスタ経由(ヴィルジニアに報告してから)でヴィントに戻ります。ヴィルジニアとの会談の事や、ヴィントに帰ってからの事などを話し合うのもいいかもしれませんね。

マスターより

長らくの極北旅、お疲れ様でした! 皆様のおかげでレイウェスト達、極行遣北使《ノルデン・ボーテ》もようやく南の地へと帰ってくることができました。 今回のシナリオは、そんなレイウェスト達に疲れを癒してもらいつつ、冒険者さんも一緒に汗を流してもらおうっていう小休止的なお話です。 フェンガリにあるベースキャンプに完成したサウナで、ゆっくりと長旅の疲れを癒してください! たぶんレイウェストを真柄がお預かりできる最後のお話になるので、よかったらご参加検討ください! なお、不明な点がありましたら、ヒルルクがが回答させていただきます。相談掲示板へ「Q:」から始まる形で発言してくださると助かります。

リプレイ

「ようやく人里に出れたわね」
 長いトンネルを潜り、極北より帰還したアウレーリア・フォン・ネーベルベルクが胸に冷気を吸い込んだ。
「ほんとに、戻ってきた気がするな」
 隣ではアルフィー・リッパーが、ぐっと伸びをしている。
「流石に少し疲れたな。しばらくの間、ゆっくりと休息を取りたいな」
 ナタリア・フィッツジェラルドが、そんな二人の後に続いた。
「そうね。できればすぐにでもそうしたい所だけど――」
 そんな友人(ナタリア)に苦笑しつつ、アウレーリアは視線を巡らせる。
「殿下、帝国へのご帰還、心よりお喜び申し上げます」
 そして、見つけた人影に歩み寄ると帝国式の礼をした。
「過酷な極北行でありましたが、無事目的を達せられた事、臣として喜ばしく思います。レイウェスト殿下」
「うむ、そなたらもご苦労であった」
 人影(レイウェスト)は傅くアウレーリア、そして、他の冒険者達に向き直り応える。
「そ、そんな事、気にすんなよ。別にあんたのためだけにやった事じゃねぇしな」
 そんなレイウェストの言葉を聞き、アルフィーがツンと視線を逸らしながら答えた。
「アルフィーさん!? 何ですかその口の利き方! レイウェストさまは帝国の長となられるお方なんですよ! ちゃんと敬語を使ってください敬語!」
「け、敬語っ!? そんなのわかんねぇよ!」
「わかんないじゃすまないんです! そんな言葉遣いして、いつか痛い目にあっても知りませんよ!」
 アルフィーの人懐こい(気安い)態度が気になったのか、トーラが慌てて諫める。
「よい、気にするな。冒険者は自由であるべきだ。私の身分などに縛られる必要はない」
「そ、そうは言いますが……」
 しかし、逆にレイウェストに宥められる形になったトーラは、しゅんと首を下げた。
「ふふふ……冒険者は自由、そうですか、自由ですか」
 そんな二人のやり取りを見ていたギーゼラが小さく笑う。
「まーた、悪い顔して。今度は何を企んでるのさ」
 そんなギーゼラを見て、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブが怪訝な表情を向けた。
「企むだなんて人聞きが悪いですねぇ。僕はただ、殿下の寛大なお心に感激しているだけですよぉ」
「なーんか引っかかる言い方だけど……まぁ、キミってばそういう人だもんね」
 レイウェストを見つつ、くすくすと笑うギーゼラに、サフィラは諦め半分で肩を落とす。

 一方、隊の後方ではルチル・プルメリア・グレイハーツが使い込んだ手帳をパタンと閉じた。
「それは……極北の記録?」
 そんなルチルに、同じく極北から戻ってきたエルゼリオ・レイノーラが問いかける。
「ああ、そんな所だ」
「随分と分厚い手帳だね。もしかして本にでもするの?」
「本? はは、そんなもったいない事はしないよ。これはもっと有意義……おっと、この先が聞きたかったら、別途報酬を貰おうかね」
「えっ!?」
 驚くエルゼリオに、ルチルはニヤリと口元を歪めた。

●
「お待ちしておりましたわ」

 冒険者達が降り立ったフェンガリでタイミングばっちりに待ち受けていたのは、バンビだった。彼女は驚く一行を前に、歓待の用意ができていると、ベースキャンプを指さす。
「皆様お疲れでしょう。まずは、お風呂になさいますか? お食事が先の方がよろしいですか? それとも、お・れ?」
 最早お約束となった文句を最速でレイウェストに叩きつけつつ、戸惑う彼のあり様に満足したバンビは返事も待たず歩き出した。
 さっさと先を行くバンビに、一行は戸惑いながらもついていく。

「……」
 そんな一行を建物の影からじっと見つめる瞳があった。
 Alexandra・Hexe・Claudiaだ。
 彼女は隊のただ一点を無言で見つめていた。

●
「まずは長旅の疲れを癒すために、汗を流されるといいですわ。サクッとひとっ風呂――いえ、ひとサウナ浴びてくださいませ」
 ベースキャンプへと腰を落ち着けたレイウェスト達にバンビが提案する。
「サウナ、とは。キャンプの中央にある施設であったか」
「ええ。殿下はご存知なかったですの?」
「うむ。利用したことはない」
 小さく頷くレイウェストにバンビは意外だと驚いた。
「……殿下にとって未知の場所か。何かがあってはいけないな。殿下、私が下見をしてまいりましょう。しばしお待ちを」
「そうか。では、任せる」
「はっ」
 ナタリアはレイウェストの為にと、「別に危険なものではありませんわよ?」と首をかしげるバンビを置いて建物を出ていった。
「……せっかく帰ってきたのに、結局慌ただしくなっちゃうね」
 腰を落ち着けたのも束の間、忙しなく動く仲間の姿にエルゼリオが苦笑する。
「……貴人がおられるのです。当然の行動でしょう」
 そんなエルゼリオの呟きに、いつの間にかそこにいたAlexandraが淡々と答えた。
「そ、そっか。そうだよね、殿下がいるもんね」
 Alexandraにそう言われ、エルゼリオは改めてレイウェストを見つめる。
 長く艶やかな黒髪に憂いを帯びた赤眼。一見すれば美少女と見紛う美貌は、母親譲りとの事だ。
 綺麗だなと、純粋に思う。エルゼリオ自身もよく性別を間違えられるが、レイウェストのそれはまた一つ次元が違うように思う。
「……あ、あの殿下!」
 じっとレイウェストに見惚れていたエルゼリオは、思い切って声をかけた。
「あの……ボクはエルゼリオ。レイノーラと申します。王国騎士ハスラム・レイノーラが次男にして、冒険者です」
「……どうした、改まって」
 突然自己紹介を始めたエルゼリオに、レイウェスト驚く。
「あの……ボクは殿下にずっと謝りたいことがあって」
「謝りたい事?」
「はい。ボクは迷宮都市で殿下を見た時から、ずっと女の子だと勘違いしてて……あの時は本当にご無礼を働きました!」
 エルゼリオは腰を折り頭を下げた。
「そのような事か。……気にする事はない。容姿に関しては私も自認している。見間違うのも無理はないだろう」
 そんなエルゼリオの真摯な謝罪に、レイウェストは声音を柔らかくする。
「そ、それじゃ、許してもらえるの……?」
「許すも何も、責めてなどおらん」
「そ、そっかぁ……よかったぁ」
 エルゼリオはレイウェストの言葉を聞き、へにゃへにゃと椅子へとへたり込んだ。

 一方、建物の外では――。
「ルチルも入るの?」
「入る。と言いたい所だけど、こんななりで入るわけにはいかないからね」
 濛々と湯気を上げるサウナを前に、ラトと遊ぶヒルルクとルチルが話していた。
「長旅だったんだし、汗流したらいいのに。なんだか気持ちいいらしいわよ?」
「ああ、知っているさ。だけど、今は入れない。そう言う決まりだからね」
「ふーん、変なの」
 くすくすと笑うルチルに、ヒルルクは首をかしげる。
「ヒルルクは入るんです?」
 と、そんなヒルルクにトーラが問いかけた。
「うん、入るわよ。クシェンも入るって言ってるし、折角だからね」
「なるほどー。それで、水着はちゃんと用意しましたか?」
「……水着? なんでそんなのいるの?」
「何でって……どうやって入るつもりだったんですか」
「えっと、このまま?」
「汗でびちゃびちゃになりますよ!?」
「じゃ、脱いで?」
「ダメェェっ!!」
 はぁはぁと息荒く拒否したトーラ。
「まったく、レイウェストさまも一緒に入るっていうのに、油断も隙もあったものじゃない……」
「うん? 何か言った?」
「何も言ってません! とにかく、水着着用は義務です! 無いのなら、一人で入ってください!」
「えー」
 なぜかヒルルクの胸元を見つつぷぅと膨れるトーラに、ヒルルクは首を傾げた。
「はは、苦労するね」
「うぅっ……他人事だと思って……」
 可笑しそうに二人のやり取りを見つめていたルチルがトーラに声をかける。
「他人事だからね。でも、応援はしているよ?」
「え……本当ですか?」
「応援だけはね」

「お待たせー! って……むむむ? なんだか、楽しそうな匂いがプンプンするよ?」

 と、そんな三人の元に現れたのはクシェンを連れたサフィラだった。
「何ですか、楽しそうな匂いって!?」
「何ですかって……にゅふふ、それ言わせるの?」
「うっ……」
 悪戯な笑みを浮かべるサフィラに、トーラは後ずさる。
「なーんてね。あたしもこっそり応援してるからね。がんばれ、トーラ!」
「なになに? 何を頑張るの?」
「ヒ、ヒルルクは気にしなくていいんです!」
 二人の会話に野次馬根性丸出しで首を突っ込んでくるヒルルクに、トーラが言い返した。
「ヒルルクもそのうちわかる時が来るよ」
「そうだね。その点はクシェンちゃんの方が早そうかな?」
 と、ルチルは首をかしげるヒルルクを、サフィラは目を輝かせるクシェンを見て微笑む。
「あ、そうだ。ひるるんもサウナ入るんでしょ?」
「うん、入るけど?」
「水着は?」
「それ、トーラにも言われたけど、なんで水着がいるの?」
「うーん、無くてもいいけど……裸見られたいの?」
「そう言う訳じゃないけど……だって、水着持ってないし」
「まぁ、そのたわわに実った果実を見せつけるにはいい機会かもしれないけど……流石に男子たちには色々と目の毒だから、これを着ようか?」
「これって?」
 何やらごそごそと鞄を漁っていたサフィラが、じゃじゃーんと取り出したのは、二着の水着だった。
「はい、こっちはクシェンちゃん用で、こっちはひるるんね」
 サフィラはクシェンに黒のビキニを、ヒルルクには花柄のタンキニを手渡す。
「あたしなりに二人をイメージして選んでみたんだけど、どうかな?」
 渡された水着を宛がう二人を見つつ、サフィラはルチルとトーラに問いかけた。
「ああ、いいんじゃないか。まぁ、これでも十分に目の毒だと思わなくもないが」
「うぐぐっ……裸で入られるよりは、まだ……うぐぐっ……」
 こうして、二人の(一応の)同意を得て、ヒルルク達の水着問題は解決を見る。
「それで、いつ頃入れそうなの?」
 渡されたビキニを珍しそうに見つめていたクシェンが問いかけた。
「もうすぐだと思うよ。今ナタリアが中の様子を――っと、丁度出て来たね」
 答えたルチルがサウナを見ると、丁度中からナタリアが出てきた所だった。
「どうだい、ナタリア。問題はなさそうかい?」
「ああ、中に不審なものは無かった」
 大量に噴き出る汗を拭いつつ、ルチルに答えたナタリア。
「調査だと思って平服で入ったが……水着にすればよかったな」
 その姿は汗に濡れた衣服とも相まって、何とも艶めかしい。
「ああ、次に入る時はそうしてやってくれ。それも立派に目の毒だからね」
「目の毒?」
 ルチルの言葉に首をかしげるナタリアを、サフィラが「なるほど、これは使える」と呟きながら見つめ、トーラはぐぎぎと歯を食いしばっていた。

●
「さぁ、殿下こちらへ」
 先んじてサウナへと入っていたギーゼラがレイウェストを席に招く。
「う、うむ」
「どうかしましたかぁ?」
 レイウェストは上半身をきっちりと覆う水着を着用したギーゼラに驚きながらも、言われるままに席に着いた。
「ああ、僕がこちらにいるのが不思議なんですね?」
「すまぬな。女性かと思っていた」
「フフフ、さて、どうでしょうねぇ」
 驚くレイウェストに、ギーゼラは満面の笑みで答える。
「うおっ! なんで、ギーゼラがこっちに居んだよ!?」
 と、次いで入ってきたアルフィーがギーゼラの姿に驚いた。
「フフフ、期待通りの反応をありがとうございます。僕はいつだって僕の都合のいい方の性別ですからぁ」
 レイウェストとはまた少し違う驚きをアルフィーから摂取したギーゼラは、満足げに微笑む。
「なんだかそれって、卑怯な気もするなぁ」
「おやおや、エルゼリオさん。貴方もやればできるじゃないですかぁ」
「そりゃやろうと思えば……って、やらないから!」
「そうですかぁ? その水着もとても可愛らしいですよぉ?」
「え……そうかな?」
 ギーゼラと同じく上半身をすっぽりと覆う水着を纏うエルゼリオは、その言葉に満更でもないのか、真面目に問い返した。
「な、なんか落ち着かねぇ……」
 そんな会話を聞きながら、アルフィーは端っこで縮こまる。
 男子エリアには現在4人。そして、そのうち3人は皆、美少女と見紛うばかりの容姿をしている。
「あっちはどうなってるんだ……」
 アルフィーは気を紛らわせるために、薄いカーテンで仕切られた女子エリアの会話に耳をそばだてた――。

「サウナ道心得の壱! 楽しくお喋りしながらじんわり汗を流すよ!」
 サフィラがサウナストーンに水をかけ湿度を調整しつつ、初心者たちに向け熱弁を振るっていた。
「折角だし恋バナ――と行きたい所だけど、隣に男子がいるからちょっと緊張しちゃうよね。なのでその話はまた後でするとして、今はかるく世間話でもしようね」
 サフィラは二人を交互に見ながら、熱くサウナ道を伝授する。

「なるほど、水着だとこういう利点があるのか」
「まさか平服で入るとは思わなかったわよ」
 サフィラ達とは変わって静かにサウナを楽しむ二人(アウレーリアとナタリア)。
「知っていたなら先に言ってくれ」
「思わなかったって言ったでしょ?」
 呆れるアウレーリアに、ナタリアがジト目を向ける。
「あ、あのレイウェストさま! 湯加減……じゃなかった、サウナ加減……ってなにそれ!? と、とにかく、ご気分はどうでしょう!」
 更に隣では、トーラがカーテン越しにレイウェストに声をかけていた。
 そもそも同席する予定の無かったトーラだったが、ギーゼラやエルゼリオの美少年(?)組が男子エリアに入ると知り、慌てて水着を引っ張り出したのだ。
「ギ、ギーゼラさん! レイウェストさまに変な事しちゃダメですからね!」
「フフフ、変な事ってどんなことでしょう? 殿下の下たる汗を一つ一つ手で受けたり、濡れそぼった艶やかな黒髪をかき上げる仕草に興奮したりする事でしょうかぁ?」
「ななな、何してるんですかっ!?」
 挑発するようなギーゼラの言葉に、トーラは思わずカーテンをくぐった――。

「……え?」

 瞬間、レイウェストとばっちり目の合ったトーラは大混乱。後ろではギーゼラがくすくすとほくそ笑んでいる。
 嵌められた。そう感づいたトーラがギーゼラに詰め寄ろうとした、その瞬間だった――。

 トーラが腰に巻いていたタオルがはらりと落ちる。

 そして、露わになる、ふ・と・も・も。

 それに合わせ、ゆっくりと視線が下がっていくレイウェストの真っ赤な瞳。

「……ひああぁぁっ!?」

「はい、サウナではお静かに。ですわ」

 顔を真っ赤にうずくまるトーラの水着を掴み、ずるずると引きずる(退場させる)のは、全身黒頭巾に身を包むバンビだった。
 当然の様にサウナでお世話をしていたバンビは、規律を乱すトーラを女子エリアへと連れ戻る。
「災難、だったね?」
 席へと戻され滅茶苦茶に落ち込むトーラに、サフィラが声をかけた。
「まぁ、見られちゃったものは仕方ないよ。もしかして、レイレイもそういうの好きかもしれないし?」
「そういうのって何ですか?!」
 サフィラは顔を真っ赤にするトーラの肩をぽんぽんと叩く。
「ささっ! いつまでも落ち込んでても事態は好転しないよ。もやもやした気持ちは、川ダイブでリセットだ!」
 そして、トーラの手を取ったサフィラは、ヒルルク、クシェンを連れサウナから飛び出していった。

 サフィラ達がいなくなり、すっかり静かになった女子エリア。
「色恋などと、馬鹿馬鹿しい」
 人知れずサウナの隅に身を寄せていたAlexandraが、誰にも聞こえぬ小さな声で呟く。
「……」
 そんなAlexandraの姿を、残っていたナタリアがじっと見つめていた。

●
「びっくりしたな……殿下、大丈夫か?」
 「新鮮な恋はたまりませんねぇ」とか言って悦に浸っているギーゼラを横目に、アルフィーがレイウェストに声をかける。
「……ああ。大丈夫だ、心配ない」
「そ、そうか……」
「うむ……」
 しかし、それ以上会話が続かず、二人の間に気まずい空気が流れる。
「え、えっと……その、なんだ。極北の旅おつかれさまだったな! 無事に辿り着けて良かったな!」
 そんな空気に耐えかねたのか、アルフィーは慌てて話のネタを投下した。
「ああ、そなた等のおかげだ。感謝している」
「か、感謝とか……俺だけの力じゃねぇし」
「それでも、力を貸してもらったのに違いない」
「べ、別に大した事はしてねぇよ! あんたが自分の力で越えたんだろ」

「そう申しておりますが、内心とても喜んでいますわ」

 と、ここでバンビが、アルフィーの激しく揺れる尻尾を指さした。
「ち、違っ!?」
「感謝しているのは本当だ」
「うっ……わ、わかったから。もう言わなくてもいい!」
 慌てて自分の尻尾を抱き込むアルフィーに、レイウェストに目礼する。
「フフフ、黒猫くんの初々しい反応を楽しみたい所ですが、僕も殿下に問いたいことがあったのですよ」
 と、突然ギーゼラがレイウェストの前に跪いた。
「殿下、目的を見事達成されたのになぜそんなに暗いのですか? その『印』を得たという事は、うまくいったのでしょう?」
 ギーゼラは跪いたままレイウェストの手の甲に現れた紋章を指さす。
「……」
「フフ、殿下は本当にわかりやすい人ですねぇ。征竜に気に食わない対価を要求されましたか」
 微笑みを向けてくるギーゼラにレイウェストは答えない。
「自分の事となるとあっさり切り捨てる癖に、誰かが代償となると途端にそんな顔をされる」
 カマをかけた話がどうやら、それほど間違っていなかったと悟ったギーゼラは、尚も言葉を続けた。
「殿下が甘い事なんて皆が承知しています。だから一人で考えないで、無理な時は周りを頼ってくださいね。皆、結構殿下のこと好きなんですよぉ? 多少の無茶は聞いてしまうくらいには」
 無言で見つめてくるレイウェストに、ギーゼラはウィンクで答える。
「ギーゼラさん、殿下は体を休めに来てるんだよ。そんな難しい話はここでは無しにしようよ」
「レイノーラ様の仰る通りですわ」
 と、そんな二人の間にエルゼリオとバンビが割って入った。
「皇子様は過酷な極北の旅でお疲れなのですから。もっと心身ともにリラックスしていただかなければ、オレがこうやって極北に行かず……極北に行かずに! ここで! こうして! 待っていた! 甲斐がないのですわ……!」
 極北へと行く事が出来なかった悔しさを滲ませたバンビが、言葉を絞り出す。
「バンビさん、そんなにも殿下の事を……」
 悔しそうに拳を握るバンビに、エルゼリオが同情を向けようとして――。
「なので、今ここでお世話いたしますわ。ささ、皇子様、オレが肩でもお揉みしましょう。いや、足の方がいいでしょうか? 腰も疲れがたまっていますかしら……これは全身に疲労が蓄積しておいでですわね……。仕方がありません、ここはオレが一肌脱いで……」
「わわわっ!? 何やってるのバンビさん!?」
 突然黒頭巾を脱ごうとしたバンビを慌てて止めた。
「すまないな。励ましてくれているのはわかる。だか、少し静かに入らせてもらえると嬉しい」
 レイウェストを置いてあれやこれやと話しを進める4人に、彼は小さく呟き瞳を閉じる。
「申し訳ありません殿下! 皆、静かにだよ、静かに!」
 そんなレイウェストを見て、エルゼリオが他の3人にシーと唇に示指を立てた。

●
 サフィラのサウナ道の教え通り、サウナでかいた汗を流しに川に向かった。
 その頃、最速でサウナ世話役から宴会主任へと転身したバンビがベースキャンプで宴会の準備を進めていく。
「水分を多めに頼むよ。ああ、酒は駄目だからね」
 そんなバンビを手伝うのは、レイウェストを陰から見守っていたルチルだった。
 ルチルはサウナには入らず、万が一の事態に備え、フェンガリのあちこちに『眼』を光らせていた。
「サウナで殿下が体調崩されたなんてことになれば目も当てられないからね」
 更にはサウナで心身を休める皆の体調の管理にまで気遣う。脱水を考慮して沢山の水分を用意し、慣れないサウナ後に必要以上に体を冷やさないための毛布はもちろん、薬まで用意する徹底ぶりだ。
「もうすぐ殿下も戻ってくるだろう。それまでに用意してしまおう」
 レイウェストは川で火照った体を冷やしている。帰りがてらフェンガリの視察を行う頃だ。
 ルチルはそんなレイウェストの様子を、相棒のラトの眼を借りつつ見守っている――。

「帝都とは比べるべくもありませんが、ここも帝国の一部であります」
 アウレーリアとナタリアに連れられ、レイウェストはフェンガリを歩いていた。
 極北へ向かう前に寄ったとはいえ、ほとんど見る暇もなかっただろう。アウレーリアはそう思い、レイウェストを視察へと連れてきたのだ。
「過去に不幸な因習があったとはいえ、この村はうまくやっています。大異変の影響も少なく、今後の帝国復興に際し、ここは――」
 アウレーリアは帝国の現状についてレイウェストに話を聞かせた。
 それは、決して責めているわけではなく、現状をありのままに伝えるためだ。アウレーリアは常々思っていた。レイウェストは民や国の状況を見ずに、決断するきらいがある。それを諫めるのもまた臣の務めだと。
「殿下、どうか民を慮りください。その一挙手一投足が民の生死をも左右します。何卒、深慮を――」
 アウレーリアがレイウェストに頭を下げた、まさにその時だった。

「レイウェスト・バルダス殿下」

 物陰から音もなく現れたAlexandraが、レイウェスト達の行く手を遮った。
「Claudia。無礼だぞ」
 ナタリアがレイウェストを庇う様に前へと出る。
「貴方がたに用はありません。用があるのは、そこの帝国の遺児にです」
 Alexandraは警戒する二人の事など気にもせず、ゆっくりとレイウェストに近づいて行く。
「それ以上近付くようなら、こちらにも考えがあるわ」
 アウレーリアがAlexandraの動きを見て呪文詠唱の構えを見せた。
「よい。下がれ」
「しかし……」
「よいのだ。下がっていてくれ」
 しかし、レイウェストは戸惑う二人を押しのけAlexandraと対峙する。
「私に何用か」
「……私と向き合うか」
「用があるのなら、話してはどうだ」
「……殿下、貴方は私達の存在をご存知でしょうか」
「存在?」
「帝国に飼われ、弄られ、弄ばれたなれの果て。実力派の野望と欲望の果てに産み落とされた忌み子たちの存在を」
 Alexandraの声に抑揚はない。ただ淡々とレイウェストに問いかけた。
「そのような事があったとは聞いている」
「では、その責を貴方はどう捉えておられるのか。実力派の横暴暴虐を見て見ぬ振りし、成果のみを褒めたたえて来た貴方達為政者は、この事実にどう責任を取るおつもりでしょうか」
 Alexandraの眼にははっきりとした怒りが浮かぶ。そして同時に諦めも。
 帝国健在の折、散々に体を弄られてきた彼女は、帝国そのものを憎んでいる。だからこそ、現在の帝国そのものであるレイウェストに怒りを向けるのは当然――。

「まったく、こんな事だろうと思いましたよ」

 そんなAlexandraの背後から現れたのは、ギーゼラとトーラだった。
 トーラは素早くレイウェストの元へと移動すると、アウレーリア、ナタリアと共に彼を守る体勢に入る。
「そんな過去の事を蒸し返してどうするつもりですか。そもそも、貴方は殿下に悪戯されたわけじゃないでしょう?」
「……貴方には関係のない事ですので、口を挟まないでいただけますか」
 背後から聞こえるギーゼラの声にAlexandraは声に怒りを滲ませた。
「そうはいきません! あなたの言ってる事は単なる八つ当たりじゃないですか。レイウェストさまは帝国の為に極北にまで足を運ばれたんですよ! そして、ちゃんとした成果を持ち帰られた!」
 Alexandraの正面に回ったトーラが、この数か月間でレイウェストが帝国の為にどれだけ身を粉にして尽くしたかを叫ぶ。
「……八つ当たり、そうですね。八つ当たりです。幼くも無知な為政者もどきに何を語ろうとも響くものではありません。これはただの自己満足……いや、念晴らしでしかない」
 前後から敵意を向けられるAlexandra。しかし、彼女はレイウェストを見つめながら薄く微笑んだ。
「正直申し上げて、殿下の答えに興味など無いのです。ただ、この様な……私のような不逞の輩が、この大陸には数多存在する事をどうかお忘れなく。貴方が歩もうとしている世界は、貴方にとって理不尽でしかない。それでも歩みを止めないのであれば……私は貴方を見ていましょう」
 Alexandraはそれだけを言って怒気を消す。
 そして、レイウェストの返事を待たずして、その場から消えた。
「殿下、ご命令いただけるのであれば、あれを手打ちに」
 じっと佇むレイウェストにナタリアが声をかける。
「よい。放っておけ」
 しかし、レイウェストは小さく首を振った。
「他の者も、この話は聞かなかった事……いや、私が預かる。口外無用だ」
 レイウェストの言葉に4人が驚く。
「レイウェストさま! あ、あの……いいんでしょうか」
「何も問題ない」
「そ、そうですか。そう……ですか」
 平時と変わらぬ声色で返すレイウェストに、トーラはそれ以上言えず口をつぐむ。
「……殿下、キャンプで食事が用意されているようですわ。参りましょう」
「うむ」
 レイウェストはアウレーリアに連れられ、その場を後にする。

「はは、本当に甘い人ですねぇ」
 キャンプへと戻っていくレイウェストの背中を見つめ不敵に微笑むギーゼラを残して。

●

「乾杯ーー!」

 並々とエールの注がれたジョッキを持ち上げ、サフィラが乾杯の音頭を取る。
 サウナで心身ともにリフレッシュした一行は、希望者がバンビの用意した宴会場に集っていた。

「早くお酒が飲めるようになって、一緒に飲みたいねぇ」
 会場の一角で、プチ女子会を開くサフィラが、鼻の下に白いお髭を作りつつ、百合茶を飲むクシェンに声と話していた。
「あれ、そういえばひるるんどこいった?」
 しかし、そこにいたのはクシェンだけ。もう一人のメンバーであるヒルルクがいない。
「あー、あっちでヒールしてるよ?」
「え、エール?」
「違うって。ヒール」
「ヒール? なんで?」
 と、首をかしげるサフィラに、クシェンが指差したのは建物奥の寝台だった。

「うあぁぁ……なんか気持ちわりぃ……」
 冷たいタオルを額に当て、ベッドに寝転ぶアルフィーが呻いている。
「大丈夫? お水飲む?」
 そんなアルフィーにヒルルクが、冷たい水を手渡した。
「うぅ……ありがとう、ヒルルク」
「どうしたしまして。気休めだけどヒールもかけておいたから、気分がよくなったらあっちに来てね」
「あぁ……わかった」
 それじゃねと宴会場へと戻っていくヒルルクを見送りつつ、アルフィーは手渡されたコップに口を付けた。

「殿下、少し話をいいかい?」
 宴会場の隅で冷えた百合茶を飲んでいたレイウェストに声をかけたのはルチルだった。
「遠回しな聞き方はしない。征竜が殿下に何を話したのかを聞かせてくれるかい?」
「……」
 骨面の隙間からじっと見つめるルチルに、レイウェストは無言を貫く。
「……そうかい。話せないか。わかったよ、ありがとう」
 しばらく無言で見つめ合っていた二人。先に折れたのはルチルだった。
「情報屋としてはぜひとも聞いておきたかったんだけど、仕方ないね」
 ルチルは肩を竦めると、改めてレイウェストに向き直る。
「アタイは契約が続いている限り、殿下の味方さ。出せるものは全て出してあげるよ。なに、お代はいつも貰っているからね、出せない情報があったとしても、殿下が特別気にする事はない」
「……苦労をかけるな」
 小さく瞼を閉じたレイウェストに、ルチルは微笑んだ。
「そうだ、占いでもするかい? これでもそこそこ当たるんだよ?」
 と、ルチルは不思議なカードの束を取り出し、レイウェストに問いかける。
「占い? いや、結構だ。運に頼るつもりはない」
 首を振るレイウェストの返事に満足したのか、ルチルはこくりと頷くとエールを煽った。
「あの……お話終わった?」
 と、そんな二人の様子を見ていたエルゼリオが声をかける。
「ああ、終わったよ。殿下を独占して済まないね」
「あ、ボクこそごめん、邪魔しちゃって」
 何やら訳ありそうなエルゼリオの空気を悟ったルチルは、「アタイは向こうでヒルルクと遊んでくるよ」と言い残し、その場を後にした。
「うっ……なんか気を遣わせちゃったかな」
 場所を譲ってくれたルチルの背に謝りつつ、エルゼリオはレイウェストに向かう。
「殿下、ご無礼は承知でお願いがあります」
 と、エルゼリオは王国式の礼をし終えると、右手を差し出す。
「……これは?」
「握手です。主従ではなく、と、友として、殿下とはまたお会いしたいと思っております!」
 右手を差し出しながら、エルゼリオはずっと心にしまっていた想いを口にした。
「そうか」
 真摯に差し伸べられた手に、レイウェストは短く答え、その手を取ったのだった。

 その後も宴会は続き、レイウェストが居るのにもかかわらずリラックスした時間を過ごす。それがレイウェストと冒険者との関係性だと言わんばかりに和やかな空気がここにあった。
 そして、日も陰り宴会も終盤を迎える。
 賑やかだった会場は静まり返り、息遣いだけが聞こえた。

 これから先、レイウェストには筆舌に尽くしがたい過酷な運命が待ち受けているだろう。
 しかし、その手はしっかりと冒険者達と繋がれている。どの様な困難があろうとも、友と言ってくれる者達の力があれば乗り越えられるだろう。
 レイウェストは明日(未来)への決意を新たにし――。

「それでは殿下、参りましょう。隣に部屋を用意しております。不肖、バンビが今宵の伽を最速で務めさせていただきますわ」

 せっかく綺麗に纏めようとしたのに、この最速のバンビさんにはそんな事は関係なかった。まったく空気を読まず、既成事実を作りに動いたバンビは、当然、最速で他の皆に追い出されたのだった――。

マスターコメント

皆さん、おつかれさまでした! 笑いあり真面目あり不穏?ありなお話になりましたが、いかがだったでしょうか。 なんか色々ありましたが、レイウェストもサウナで心身ともにリセットできたでしょう! たぶん! あと、称号付与理由はヒルルクからの一言コメントになってます。 生意気な奴ですけど、これからも気にかけてやってくれるとうれしいです! では、皆様、ご参加ありがとうございました! お楽しみいただければ幸いです!
ショートEX

ショートEX易しい 報酬:少ない10 / 4〜10人

2021年10月11日 09時34分12秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    サウナだ!«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワーイ! あ!サフィラだよっ!よろしくねっ! クシェンちゃんとひるるんといっしょにサウナで女子会しよっかな! 終わった後のエールも楽しみ〜♪

  2. Alexandra・Hexe・Claudia

    クラウディアです。 ―私は今回極北の旅に参加しているわけでなし、様子を見に来ただけなので… 差し当たり休息に時間を費やすこともないかな、と。 ただ…皇子レイウェストとは、一度話をしておこうかなと。 /* 備考 */ ●当該PCはレイウェスト・バルダスに対し、一定量嫌悪の印象を抱いています。 (理由:「過去に自身を苦しめた帝国実力派の横暴を看過した為政者である」先入観から) ●ギーゼラさんに対し当該PCが〈洞察〉を使用した場合、意図的に避ける〜拒絶を示す可能性があります。 (理由:[甘言で誘い相手の生殺与奪を握る]行為が過去の記憶でワーストに入る苦痛だった) 以上、トラブル回避のためすり合わせ ないしはマスタリングに向けた意見があると助かります /* */

  3. トーラ

    トーラです。 極北の旅お疲れさまでした! レイウェストさまの隣でサウナ… (クラウディアさん相談してくれてありがとうございます。わたしとしては、臣民のためにこうやって飛び回っているレイウェストさまがそんなことに関わっている筈はないと思っていますし、以前エルファリアさんの探し物でクラウディアさんとご一緒して、偉い人に不信感を持っているのかなと思っているので、気にかけていて何かあれば説得に入らせて貰って大丈夫でしょうか? ギーゼラさんについては、ちょっと嗜好が特殊ですけど、最終的にはきちんと癒してくれますし、クラウディアさんと同じようにロールプレイのスタイルとして理解していただけたらと思います)

  4. トーラ

    ちょっと外野から言うのは早かったかもですね。 気を悪くされたのならごめんなさい。

  5. Alexandra・Hexe・Claudia

    /* PL→トーラさん */ 早速の意見開示ありがとうございます。ごちそうです。 ≫レイウェスト皇子 説得ほか対応歓迎です。 いざとなれば張っ倒してでも止めていただければ(笑) 因みに当人の行動は最大で [意志を確認する目的で相手を脅威に晒す] まではありえます。 詳細は決め次第の共有で。 ≫ギーゼラさん 勿論RPの範疇での話です。PL視点では魅力的すぎて暴走しそう(盥) ネガティブロールは良くも悪くも影響が大きいので、「そういうのイヤ!」があれば取り下げます。 /* 以上、引き続きよろしくお願いします */

  6. バンビ

    ハイスピードキャスターのバンビですわ。 極北へは同行できなかったので、お留守番していましたの。 サウナもその他の歓迎準備も出来ておりますわ。

  7. ギーゼラ

    ギーゼラです。よろしくお願いします。 こういう時に性別?は便利ですねぇ。どちらでも好きな方に混ざれます! 今回は男性用水着で男側に混ざりましょう。 汗が滴る殿下の色っぽい姿を間近で見られるなんて…!私興奮してしまいます! *以下PLより* >トーラさん いつもフォローをありがとうございます。 特殊性癖であるという自覚はあるので、やり過ぎて迷惑をかけないように気を付けますね! >クラウディアさん >>レイウェスト皇子への嫌悪について 問題ないかと思います。 クラウディアさんの生い立ちを見れば、帝国のトップである殿下を恨んでもしょうがないと思いますし 帝国貴族は殿下の臣下、臣下がやったことならば殿下が知らずとも殿下の責任である…と言われてもしょうがないでしょう。 ただギーゼラは殿下を好いて(恋愛感情ではなく興味対象として)おりますので 「そんな過去の話を今更蒸し返してどうするつもりですか?」等きつく返す事はあるかもしれません…! >>ギーゼラに対し意図的に避ける〜拒絶を示す可能性がある。 問題ありませんよ。 ヤンデレという特殊なPCをやる上で、その様な反応をされる方がいるのは了承済みですので。 PL視点では魅力的と言って頂けて嬉しいです! 拒絶に関してプレイングを合わせた方がいいのであれば、合わせにも応じますのでお気軽にどうぞ! ギーゼラは愛(ヒール)は平等に与える主義ですので、今回避けられたり拒絶されても 今後の回復には支障ありませんのでご安心ください。

  8. エルゼリオ・レイノーラ

    エルゼリオ・レイノーラです。今回はヨロシクね! ボクもレイウェスト殿下達と一緒にサウナに入る予定だよ。 (極北にもサウナ作りたかったな、と思いつつ) >ギーゼラさん ――Σえッ!?ギーゼラさん、女の子じゃなかったの……!?(衝撃)←

  9. トーラ

    ま、まさかレイウェストさまとお近づきになるために性別を偽って男湯に…!!?

  10. アルフィー・リッパー

    アルフィー・リッパーだ。よろしくな。 レイウェスト殿下と一緒にサウナに入ろうと思うぜ!

  11. Alexandra・Hexe・Claudia

    ―…偽るというよりも、ノンバイナリー と考えるのが近しいかと。 特段騒ぐことでも…? /* PL→ギーゼラさん */ 意見及びロール承諾に感謝します。やりたいことできるやったー! ≫避ける/拒絶ロール クラウディアからこのロールが出るのは、 『ギーゼラさんの自由設定:生い立ち…本人の欲求(求められたい!)を理解した場合』と定義します。 上述について今のクラウディアは知らない都合、はじめはごく普通に接します。 洞察(Lv5)は常時発動 といっても、日常会話レベルで気づくのは「あの眼差しはあまりよくない性質かも…」まででしょう。 なので主観として、発動条件はこのように。 ●ギーゼラさんがクラウディアに"愛を向けている" and ●クラウディアがギーゼラさんの言動について、動機を本気で探る 例えるなら [気にかけなくてよいと断るクラウディアに、尚もギーゼラさんが癒しを与えようとする] と発生しうるかな と。 実際にどう形にするかをこの先決めていきたいです。 /* 以下レイウェスト皇子関連 */ 掛け合いになりそうだ と思ったものを抽出。 ●レイウェストさまが関わっている筈は~ →人の地獄は無関心で運営されるもの。本人が善性でも関係がない いじめが終わらないのは止める人がいないから 理論。 【学乱】はマリステラ・コナーがその手のオチと思い返す手前、語気が強いかも。 ●過去の話を蒸し返して~ →八つ当たり以外に何がありうる 自嘲。 でも口にする理由は、「この考え(憎悪)の持ち主すら導く覚悟があるか」を問うためだったり。 /* 以上、引き続きよろしくお願いします */

  12. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    アウレーリアです。宜しく。 水着着用かつ間はただのカーテンなので、どちらでも話くらいはできそうね。 以下PL見解 私は(PCとしても)他人がどのような意見を持ち、或いは表明するかに立ち入る気はありません。 殿下に対し、一個人が直接陳情する機会も多くないでしょう。好きに喋って貰えばと思います。 私自身、貴女から見れば為政者側の存在でしょうから、敢えて近付く道理もないですし。 ただ、これは私の立場というより一般的な社会通念に従ってですけれども、国家元首に対して度を越した無礼・侮辱があったり、危害を加えるような素振りがあれば制止しますよ。 ……まぁ、明示的に対抗プレを用意せずとも、マスタリング対象になる可能性はありますが。 ロールプレイとして許容される範囲で、節度を守ってやっていただけるなら異論は申しません。 どうぞ宜しくお願いいたします。

  13. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    情報屋のルチルだ。よろしく。 性別の真偽はさておいて、高温による脱水症状、急激な気温の変化で倒れる者が出たりしないようサウナの外で体調管理をな……。 (さり気なく皮膚の露出を避けようとする構え)

  14. ナタリア・フィッツジェラルド

    ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 言及されている通り、この場では水着着用で赴く事が好ましいか?

  15. ギーゼラ

    フフフフフ、僕はいつだって僕にとって都合のいい方の性別ですよぉ? 女装もしますし、男装もします。 勿論、今回は殿下にお近づきになりたいという下心もありますけどねぇ。 *以下PLより* >クラウディアさん 今回は戦闘依頼ではないので『愛(ヒール)を向ける』という状況にはなりにくいですかね? となると、クラウディアさんが『ギーゼラ言動の動機を本気で探る』が避ける理由になりそうですけど クラウディアさんがそこまでギーゼラに興味を持つ理由があるかな…? ●過去の話を蒸し返して~ →八つ当たり以外に何がありうる 掛け合いありがとうございます。とても好きです!

  16. Alexandra・Hexe・Claudia

    /* PL→アウレーリアさん */ 意見開示ありがとうございます。 RPにあたって無理押しのないよう、改めて自己の見直しに努めます。 /* 以下、PL→ギーゼラさん */ 現状はクラウディアからギーゼラさんへの関心は人並みに留まります。 加えて〈洞察〉の効果範囲は主に[対象の感情の機微・演技・真贋]なので… ギーゼラさんの"愛"が表に出ないうちは、使ってもほぼ気付かないかな と。 この様子なら今回は流して、次以降の楽しみにしようかな? /* 以上、引き続きよろしくお願いします */

  17. ギーゼラ

    *以下PLより* 次以降のお楽しみ了解しました! 次回の掛け合いも楽しみにしてますね!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0