【CP】レイウェストを守れ。何から?
岩岡志摩
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シナリオID:844
オープニング
シルトラース帝国のレイウェスト皇子、帝国難民キャンプで負傷。
その難民キャンプでは大騒ぎとなり、不確かな情報が飛び交って、混乱に拍車をかけていく。
一時は死亡説も流れたが、治療にあたるエフレムと帝国兵が躍起になってそれを否定し、正確な情報を各地へ送っている。
その連絡はヴァイセントラフ砦にも届いていた。
これを受け、ヴァイセントラフ砦は皇子護衛の兵士の派遣を決定したものの、砦ではヴィント奪還戦前ということもあって慌ただしく、難民キャンプには護衛の兵士達はいまだ到着していない。
そして情報を発信したエフレム達も、総力をあげてレイウェストの命を繋ぎとめている。
辛うじて一命は取り留めたものの、レイウェストの意識は戻っておらず、今も意識不明のままだ。
エフレムの見立てでは、意識が回復するかも不明で、少なくとも2か月は動かさず、治療に専念させる必要がある。
だがこれを妨害する要素が、今の難民キャンプにはあった。
●混乱
今の難民キャンプは騒然として、殺伐とした空気に満ちていた。
「世間の噂話は防ぎようがない」という言葉があるが、この時の難民キャンプはまさにその状態を示していた。
寄ると触ると、難民キャンプに暮らす人々は噂を流す。
「聞いたか? 皇子が殺されたって話だ」
「聞いた聞いた。周りにいた人達は「生きてる」と言っていたけど、絶対嘘だ」
「兵隊さんに聞いた話だけど、死んだら色々と困るから、誤魔化してるって話みたいだぜ」
そう言った不確かな会話が、人を経るうちに大きくなって、難民キャンプ内で警戒中の兵士達の耳に入るころには、皇子が収容された建物周囲には野次馬が数を増していた。
「なあ、皇子は死んだんだろ。俺達の生活はどうなるんだよ?」
「皇子が殺されたから、俺達の畑が取り上げられるって話、嘘だよな!?」
「何かの間違いだと言って下さい! あの子は暗殺なんて大それた真似をするはずがありません!」
「このキャンプには暗殺を考えるような不届き者はいません! どうか支援を続けて下さい!」
レイウェストの生存を信じる声や、レイウェストを心配する声も少なからずあったが、野次馬から届く声は「生きてるなら証拠を示してくれ」「自分達の生活を尊重しろ」といった内容のものが多い。
帝国兵達は、治療と並行してこうした野次馬達を防ぎとめることにも意識や労力を振り向けねばならず、いら立ちが募る。
「この忙しい時に……」
兵士の1人がぽつりと零した言葉が、その心情を表していた。
このままでは治療に専念できないと判断したエフレムは、ただちに冒険者ギルドに使者を派遣し、冒険者を募ることにした。
●護衛依頼
使者に応対した冒険者ギルド職員、アルヒ・ラスカスは内心驚きを示したものの、表面上は冷静さを維持していた。
一通りの情報を聞き取ったところで、アルヒは依頼斡旋へと動き出す。
「みんなにやってもらいたいのは、ヴァイセントラフ砦より派遣される兵士達が難民キャンプに到着するまでの間、レイウェスト皇子の護衛にあたることだ」
使者と話し合い、開示しても問題ない範囲の情報を、アルヒは依頼に応じた冒険者達に伝えていく。
難民キャンプでレイウェスト皇子の暗殺未遂が起こり、レイウェストは負傷した。
エフレム達の治療の甲斐もあって一命は取り留めたものの、使われた武器には授恵者でも致命傷となる毒が塗られていた。
このため、レイウエストは今も意識が戻っておらず、今も懸命の治療が続けられている。
そこまで説明したところで、アルヒはやるべきことを告げる。
「今治療が行われている建物周囲には、皇子死亡という噂を信じた者達が野次馬となって押しかけている。その者達をレイウェスト殿下やエフレム様のもとへ近づけることなく、できる限り穏便にお引き取り願うのが1つ」
他にも不測の事態が起こらないよう周囲を警戒し、何かあれば対処する。
その他にもエフレムが主導して行う治療の手伝いを行うことも、アルヒは認めたが条件も付けている。
使者からも言われていたが、アルヒが皆様にやってほしくないこととして挙げたのは、レイウェストに『無許可で』接触することだった。
「エフレム様も毒の大部分を除去される施術を行われていたが、それでも今の殿下は予断を許さない状態だ」
授恵者の中には、他者を治療する術や技術を習得している者も少なくないが、今回レイウェスト皇子が受けた毒は、エフレムですら対処が難しいものだ。
何より今のレイウェストには意識がなく、何を呼びかけても反応はしないだろうし、絶対安静の状態にある。
「エフレム様からは、護衛の兵が到着した後、自身の立会いの下で短時間でなら接触を認めるという話が来ている。完全に駄目ということではない」
治療を手伝いたければ、できそうなことで手伝ってほしいとアルヒは説明を続ける。
それは人手が必要な薬の作成を手伝ったり、使用して血で汚れた布を煮沸消毒する、清潔な布を用意する、治療器具を洗浄する、建物内を掃除する、治療にあたる兵達の食事を作る等、探せばいろいろある。
アルヒはまた、今回の依頼は緊急かつ重要な案件ということもあり、報酬の増額を提示している。
「今回最優先となるのは、殿下の命と身の安全だ。どうかそれを念頭において行動してほしい」
そう言ってアルヒは皆様に向け、頭を下げた。
●できること
今回皆様にお願いする役割は護衛役の兵士達が到着するまでの間、レイウェスト皇子の護衛を勤めることです。
現在レイウェストが治療を受けている家周囲には、死亡説を信じた難民達が野次馬となって押しかけ、真偽を確かめようとしています。
今のレイウェストは意識不明で大変危険な状態です。絶対に難民達と会わせようとせず、押し留めて下さい。
また、治療要員となっている帝国兵達は治療に専念したい為に、色々なことが疎かになり人手が必要です。
医療に心得のある人なら、大量に必要な薬の調合を手伝ったり、治療に必要となる清潔な布を用意するなど色々手伝うことができます。
それ以外にも、治療で汚れた布を回収して洗濯することや、建物内を清潔にすること、治療に従事する人達の食事を用意する等、皆様がやれることは数多くあります。
なお、レイウェストに対し無許可で何かを働きかけることは禁止です。
護衛の兵達が現地に到着し、エフレム立会いの下で短時間ならば、皆様がレイウェストに接触することは認められています。
●黒に近い灰色
レイウェスト皇子が負傷した情報は、リーンエス王国に属するヴィガ・リスタ子爵のもとにも届いていた。
「ならば私は噂を信じているフリをすればいいわけだな」
道化師ロコからの追加報告に、ヴィガは思案気なそぶりを見せる。
「ご不満デスカ?」
「帝国の連中がいくら死のうと構わんが、王国を巻き込むのはやめてほしいからな」
難民キャンプという形で王国に負担がのしかかる今の構図が、子爵には不満だった。
「今の混乱が続いているうちに、ことを進めよ」
「かしこまりマシタ」
一礼したロコの姿がふわりと消え、部屋には子爵だけが残った。
解説
マスターより
リプレイ
レイウェスト皇子護衛の依頼に応じた冒険者達が、現地に到着する。
「民衆とはいつだって短慮で身勝手、自分本位で薄情だわ。これはそういうものなの。その都度腹を立てていては為政者など務まりません」
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクは、周囲で騒ぐ難民達を「そういうもの」と定義する。
「善きことは善きように、悪しきことは悪しきように。子を諭す親のように、道を外れれば正しく導くのも私達の義務……そうよね、ナタリア?」
アウレーリアに話を向けられたナタリア・フィッツジェラルドは、こくりと頷くとエフレムに向け頭を下げる。
「殿下襲撃事件という緊急事態の中、応対に追われる兵士達、ならびに彼らを取りまとめるエフレム卿の心労、お察し致します」
ナタリアの帝国への愛着と、レイウェストへの敬意に嘘はない。
「僭越ながら私も帝国の政に関わってきたという自負があります、何かあればご命令を」
ナタリアは主に医療行為の手伝いにあたるつもりだが、それ以外のことにも協力するつもりでいる。
「レイウェスト皇子の容態も気になりますが、周りの状態がこれ以上続けば混乱が収まりませんね」
フリーダ=ブロムヴィストが把握した限りでは、噂に踊らされた難民達が、皇子の治療を邪魔している。
「啓示でも『デマとかガセが広まるとかまるで●●』と出ています。事態収拾の為に頑張りましょう」
フリーダは啓示を口ずさむと、ギルド職員アルヒ・ラスカスに依頼して持ち込んだ食材と調理スキルを駆使して、帝国兵達の食事を作り始める。
ギーゼラとアーシェル・G・クラインは、皇子達がいる建物の補強に動く。
「窓は覗かれたり破られたりしないように、板を何重にも打ち付け強固に。出入りも一か所だけとし、もう一か所は板を打ち付け、重しとして家具を置き開かないように、だよね」
ギーゼラはアルヒに頼み取り寄せた資材や道具類を手に、作業にあたる。
「寄生虫共に殿下を食い殺させねぇ。噂を流した野郎を取っ捕まえて落とし前つけさせようぜ」
アーシェルは四方の窓と出入り口の1つを封鎖する作業を行いながら、そう呟く。
噂に踊らされたとはいえ、難民達の言動は意識の戻らない皇子に対し行っていいものではないと、ギーゼラもアーシェルも考える。
「時間が余ったら俺は建物内の掃除だな。兵士達に少しずつでも交代で休憩を取るよう勧めるつもりだぜ」
アーシェルは兵士達に休息をとらせることも視野に入れる。
「皆さんの配置ですが、出入口は多めに配置し、塞いだ方にも1人だけ配置するというのはいかがでしょうか?」
ギーゼラも交代で警備にあたる帝国兵に対し配備場所を提案し、治療と警護の両立を模索する。
「さて、では私は治療の過程で出た布や包帯を洗濯するとしましょう」
その中でイオ・ラヴバロックは、治療で生じた汚れた包帯や布を回収し、洗濯を始める。
イオは予めアルヒに要請して取り寄せた石鹸や柑橘系の果実、そして塩で洗剤を作成すると、包帯や布の汚れを落としていく。
「血の汚れは、もう慣れたものですかね。……ああ、実にいい……」
洗濯の際、イオは超嗅覚で汚れの中から何かをかぎとろうとする。
「ふふ、誤解なさらず、毒の臭いを確認しています」
(授恵者をも追い詰める素晴らしい毒、流通も限られるはず……その死の香りを覚えておけば特定に役立ちます)
ただイオの超嗅覚をもっていても、レイウェストに使用されたと思しき毒の匂いは特徴もないようだった。
トーラは騒動を治めるため、現在蔓延する噂の調査を開始する。
「ここの人達は自分たちの事ばかり! そう思ってましたけど、住むところや家族を失くした人も多いんですよね……」
トーラは難民達に思うところはあったが、調べていくうちに難民達の事情も理解し始める。
「寒さや飢えなど、わたしには解らない苦労をしていて、それは人を想う余裕を失くしてしまう程なんでしょう」
だからといって、今の状態のレイウェストに縋ろうとする今の状態は間違っていると、トーラは考える。
――それでもこの騒動は止めないと!
トーラと手分けする形で、ナハト・シュライバーも噂の調査に乗り出す。
「まぁ、地道に難民に聞き込みをするところから始めるさ」
ナハトのやり方は口にすれば基本的なことだったが、少し『演技』も混ぜている。
「ねぇねぇ、その話って誰から聞いたの?」
ナハトは家屋に押し寄せた難民達の話に割り込むと、好奇心旺盛な子供を装い、噂の源を聞き出す。
現状ではかなりの人を介しているようだが、必ず噂の根源へとたどり着く。
そんな内心を演技で隠したナハトに、難民達の口も軽くなっていく。
●対処
ナタリアは現時点での問題への優先順位をつけていく。
「私は主に薬の作成の手伝いを……合間を見て医療品の洗浄や医療廃棄物の処分も行うつもりだ」
ナタリアは医療・薬学スキルを駆使して、足りない薬剤の作成を手伝う。
当初ナタリアは毒の特定も行おうとしたが、エフレムや帝国兵達が調べ上げた内容以上のことは判明しなかったようだ。
「洗い出しに注力しすぎて護衛を疎かにしては本末転倒だ。なので私は医療従事者のサポートを兼ねた殿下の護衛役を担い、将兵達の負担を軽くしておくぞ」
ナタリアが治療の手伝いに回る中、フリーダが作るエフレムや帝国兵用の料理は仕上げへと移る。
「現状を鑑みればエフレム様も帝国兵の方々も、疲弊しているのは明らかです。ですので私は皆様への食事によるサポートを行います」
フリーダは家屋内にいる人数分の料理をまとめて作り、皿に取り分けていく。
「温かい食事を提供する事で、心身ともにリラックスできるでしょうし、野次馬がそれを見た際に「皇子が亡くなっているのなら何故こんな料理を出す必要がある?」と疑念を抱かせることもできるでしょう」
実際にフリーダが作った料理の匂いは、周囲の難民達にも届いているようだ。
難民達の訴えは依然続いているが、洗濯を終えたイオが対応にあたっている。
当初イオは難民達にも洗濯や掃除といった、治療に直接関わらない範囲の作業を手伝ってもらうことをエフレム達に提案していた。
「作業の効率化だけではありません。その善意を他の難民達へ伝播してもらえば、混乱も御しやすくなりますからね」
イオの提案に続き、フリーダもこう言い添える。
「可能であれば、皇子を慕う難民の方々にもできる形で支援を頂ければと思います。啓示でも『ひたむきな姿を見て心を打たれない人間はいない』とありますし」
エフレム達も提案には一定の理解は示し、ある程度の情報公開は認めたものの、皇子が予断を許さない状況から、今の段階では下手に難民達を手伝わせず見守りに留める形に落ち着いた。
そのためイオは、公開許可の出た情報を根気強く難民達に答え、暴発を防いでいる。
「そうですね……我々への貢献によっては、その話については教えてもいいかもしれません」
この間にも、アウレーリアは家屋周囲にいる野次馬の中から、レイウェストの生存を信じる人々を選び出し、誘導を続けている。
(発端が発端だけに、殿下が死んでいて欲しいと願う者の存在は明らか。騒ぎの方向性にも作為を感じる。自然収束は見込めなさそうよね)
「普通の難民で殿下の死を歓迎する者はいない筈よね。死亡説に固執する者等は、何らかの思惑がある可能性大として目星をつけるわよ」
アウレーリアは、この後行う『演出』を人々の絞り込みに利用するつもりだった。
「皇子様は無事なんですか? お姿を見せて下さい!」
まず最初にトーラが演技や話術スキルを駆使し、難民のフリをした声をあげる。
既にトーラはその話術で人々の不安をある程度和らげる一方、その不安の矛先を『制御』していた。
「私はレイウェストさまに会ったことがあります。ですから安否が気になっているんです」
もちろんトーラはそう言いながらヒールで難民達の負傷を治療する等、信用を得る下準備も行っていた。
「殿下、まだ動いてはなりません!」
「お体に障ります!」
建物内より、帝国兵らしき声が響いてきた。
(どうせ信憑性が怪しい噂で大混乱なんだ、私達もそれに乗じて賭けに出てやるさ)
実際にはナタリアと『演出』に同意した帝国兵のものだったが、ナタリア達の声に難民達は一瞬押し黙る。
「やめろ……。民を傷つけるな……!」
そしてあまり大きいとは言えない、けれどよく通る声が難民達の鼓膜を震わせる。
「皇子様、ご無事だったんですね!」
トーラの叫び声が被さり、先の声の主が誰であるかの認識を難民達に植え付け、死亡説を唱える人々の話を押し返していく。
実はこの皇子らしき声は、声帯模写と演技スキルを駆使したギーゼラによるもので、他の冒険者達と帝国兵の協力で、本物と難民達に錯覚させていた。
その間にも建物内へ強行突入試みる難民もいたが、外に出ていたギーゼラの光縛封がその者の周囲に光の障壁を顕現し、防いでいる。
「あぁ殿下が止めていなければ、今殺していたのに」
ギーゼラは光の障壁に囲まれた難民に聞こえる程度の音量で囁き、難民は怯えて動きを止める。
ここで建物から出たアーシェルが素早く周囲を見渡し、看破スキルや超視覚を駆使するも、不審者は見当たらない。
「逃亡した奴はいなかったか。そうなると、別の切り口から辿るのが妥当だな」
アーシェルは難民達にこう尋ねる。
「最近、羽振りが良くなった人物はいないか」
アーシェルは金かモノで、難民が釣られた可能性を視野に入れている。
その間にもナハトは慎重に噂の流れを遡り、ある男へと辿り着いていた。
ナハトからの問いに、男は「金をくれた奴から」と答えていた。
別の方面から調査していたアーシェルも、ナハトと同じ相手に辿り着き、慎重に男へ近づいていく。
「それって僕も手伝ったらお金貰えるの?」
あくまでも無邪気さを装って、ナハトが話を向けると、その男は何も考えていないのか必要な情報を喋っていく。
言質がとれたところで、ナハトはにこりと笑みを向けた。
「そうなんだ――テメェが腐った林檎か」
ナハトの低い声で呟くと共に、合流したアーシェルがナハトと共に男の腕を捻り上げ、身動きを封じる。
「てめぇのせいで殿下が死んじまったらどう責任取るつもりだったか答えろよ。金と殿下の命を天秤にかけて金を取ったんだ。甘っちょろい言い訳なんかすんじゃねぇぞ」
「下手すりゃテメェは反逆罪で首が飛ぶところだったんだ。テメェに噂を流すように依頼したやつの特徴も教えて貰おうか。命に勝るもんはねぇだろ? なぁ?」
アーシェルとナハトは男への尋問を始めた。
●後始末
食事の提供を終えたフリーダは、屋内の清掃作業に移る。
「後は清掃作業も忘れない様にしましょう。病人のいる所は清潔である必要がありますし」
建物内にある道具を使い、清掃しながらフリーダはそんなことを口にする。
やがて噂を撒いた男を引き連れ、ナハトとアーシェルが戻ってくる。
尋問で判明した内容は、こうだった。
――相手はローブを着て、顔を隠すように目深にフードを被っていた。
声を発することなく紙で筆談しており、性別も種族も不明。
「――おい、いい加減にしろよ。痛い目見ねぇとわかんねぇのか?」
そんな怪しい人物に金をもらい、男は噂を流したことにアーシェルは呆れ、ナハトは男に向けこう提案する。
「あくまでもテメェは脅されて噂を流したってことにしておく。周りから白い目で見られたり石投げられないように守ってやる。だから皆の前で正直に話せよ?」
それ以外に助かる道はないと理解したのか、男は激しく首を縦に振る。
そしてナハトは男を引き連れ家屋を囲む難民達のもとへ到着すると、アーシェルと共に噂の真相と皇子の意向を説明する。
今の状況は難民達を扇動しようとした邪な輩が仕組んだものだが、殿下は決して難民達を責めていない。
自分達は難民達を脅かす真似をしないよう命を受けている。
殿下が民が安心して暮らせるよう邁進することは変わりなく、今は治療に専念している、と。
最後にナハトは皇子の療養を妨げないよう、周囲の難民達に要請を出す。
この頃にはナタリアも光縛封を行使して光の壁の結界を構築し、建物の守りを固めていた。
ナタリアはナハト達の説明が終わったところで、ギーゼラと共に男に近づき、男にだけ聞こえる声でそれぞれ言い含める。
「難民の流れに乗じてとんずら、或いは何かしようとしても、私は見逃さんぞ」
「次にやったら――ます。だって何度もやるって事は貴方は殿下を脅かす者でしょう?」
ナタリアは感情を込めていなかったが、ギーゼラには怒りの感情が垣間見える。
「ほら、落ち着け。殿下はお前の笑った顔の方が好きだろうよ」
ここでアーシェルがギーゼラを宥めにかかる。
「殿下は貴方達の為に心を砕いて下さっているのです。殿下を助けるために皆で協力しましょう?」
建物から出てきたギーゼラも、諭す口調で『やさしく』難民達に要請する。
ギーゼラもイオやフリーダ、エフレム達と相談を重ね、皇子に負担をかけないことが協力に繋がるという形に内容を調整している。
「皇子の体に負担をかけてはいけません。皇子に何かあれば、帝国に帰ることができなくなりますよ?」
トーラが周囲の難民達に解散を促し、難民達は家屋周囲より退いていく。
なおも家屋突入に固執した男もいたが、これはアウレーリアが足を引っかけ転倒させたのちに光縛呪を行使して拘束している。
「殿下に死んでほしいと思って踏み込もうとしたわけではなく、誰かにそそのかされたわけでもないのね?」
エーテルの光の縄が相手の身動きを封じる中、アウレーリアは『お話(物理)』をして再発防止に努めていた。
●対面
冒険者達の尽力により、難民キャンプでの騒動は沈静化した。
やがて本来の護衛役となる兵士達の到着が報され、冒険者達はエフレム立会いの下、レイウェストとの短い対面を行う。
「私はエフレムさんに話があります」
イオは皇子ではなくエフレムに話しかけ、部屋の隅に誘導する。
その内容は余人には聞き取られなかったが、エフレムは「聞かなかったことにする」とだけ言った。
「私はただ、私に出来る事に努めます」
アウレーリアはいまだ意識のないレイウェストを見舞い、決意を口にする。
「……殿下、辛かったな。ゆっくり休んでくれ。肉をたくさん食えばすぐに元気になるぞ」
アーシェルはレイウェストに向け、そんな言葉をかける。
(レイウェストさまも難民の人と同じ体験をして、危険な目にも遭ってるのに帝国の人の事を想えるんですね。負けないで下さい! わたしが絶対力になりますから!)
トーラは胸中で決意を伝え、涙をぬぐうと他の仲間達と共に部屋を後にする。
いまだレイウェストは予断を許さない状態だが、いつか回復できると信じたい。
そんな一日だった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い8 / 4〜8人
2021年05月08日 09時42分13秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 野次馬を穏便にお引き取り願うにあたって話術スキルも持っていくのもそうだが。 今回の件は明らかに「日常」の範疇を逸脱した出来事である以上、弁論術の方が望ましい可能性もあるだろう。 私としては、曲がりなりにもヒーラーだ……殿下の治療につきっきりで、主要な医師のアシスタントも考えている所だ。
シューターのナハト・シュライバーです。よろしく。 今のところ動きとしては野次馬対応を考えています。 ……いくら自分達の生活がかかっているとはいえ、蝿みたいに群がりやがって。腹立たしい。 ゴホン。 お耳汚し失礼。 ともあれ、聞き込みして危機感や不安を煽る噂をまいている奴を突き止め、民衆にうまく説明というか説得すれば少しは静かになると思うのですが……全員が話に耳を傾けるかは怪しいですし、噂をまいてる奴を突き止める前に侵入者が来る可能性もあるので建物周囲の警戒はしないといけませんよね。 同じ野次馬対応する人達で分担するなり、交代して対応に当たれると良いかと思いました。
トーラです。よろしくお願いします。 レイウェストさまが心配ですね…。 わたしは護衛のお手伝いで難民の方の説得をしようと思ってます。 ただ、扇動する人も居るみたいなので何か考えないとですね。
キャスターのイオ・ラヴバロックと申します、よろしくお願いします。 授恵者相手にこうもてきめんな毒を作るとは興味深いですね、子供を利用したのも見事でした。 そうですね、希望者が少なそうかなと予想しているので、私は洗濯でもしていようかと考えています。 ついうっかり難民を炭にしてしまうのは避けたいですからね。帝国の同胞で、彼らも可哀想な境遇ですから。 今回だけで犯人を捕らえるのは無理なのでしょうが、次に活かすために情報収集することも大切ですね。
どこのどいつが浮沙汰を流したかは知らないが、そいつをはっきりしようにも、それに人員を割きすぎて殿下の護衛を疎かにしては本末転倒。 療養の手伝いも兼ねた護衛役と、浮沙汰を流した実行犯の捕縛の2手に分かれた方が良いかもしれん。 帝国の兵士達も、治療に野次馬への対応にと疲弊しきっているんだ。 私は先にも言った通り、治療のアシスタントも兼ねた護衛役を担う事にする。 一般スキルは、医療・薬学は確定として。もう1つ持っていくのは不意打ちに備えて看破か治療をより確実なものにするべく一点集中のどちらかだ。 この手で実行犯を締め上げたい気持ちはやまやまだが、そいつを探す為に何が出来るのかが思いつかん……
殿下がこんなに難民に心を砕いて下さっているのに。 口から出るのは自分達の保身の話ばっかり!!あぁ図々しい!! 本当に帝国の民を名乗る資格があるんでしょうか? 少なくともここで殿下の治療を妨げていることは、無礼撃ちをされても仕方のない行動だって分かっていますよねぇ? と…こんな感じに僕は怒っていますので、きつぅく怒鳴りつけてしまっても構いませんよねぇ? 殿下に近づこうとしたものは殺します。女子供であっても容赦なく。 どんな理由があろうと問答無用で殺します。と、たっぷりと威圧をしておきましょう! それでも近づいてくるものがいれば、見せしめに本当に殺してしまっても構わないと思っていますよ。 それくらいの事をこの難民達はやらかしたのですから!! 程よく脅して会心するものが居れば、「治療で汚れた布を回収して洗濯」「暖かい料理をつくらせる」くらいは難民に手伝わせてもいいかもしれませんね。 勿論冒険者の見張りの上で、建物内には入れずに行わせる形になりますが。 何も出来ずに不安で叫び続けるよりは、自分達が殿下を救う為に力を尽くしたとアピールした方がいいとおもいませんか?とやさぁしく諭すんです。 不安を力で押し付けられて、絶望の沼に落ちた民を、私がちゃぁんと蜘蛛の糸で救ってあげます。 こんなに頑張った自分達を、殿下が捨てるはずはないと思い込むくらいに教育したいですねぇ。
フフフフ、興奮して自己紹介を忘れてしまいました。 ヒーラーのギーゼラです。よろしくお願いしますね。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 護衛もそうですが、帝国兵の皆様の負担も察するに余る状態ですね。 その一方で事態収拾の為の行動も必要と。 ナタリア様の言うように護衛兼サポート役・実行犯捜索役に分かれて行動する形でよいかと思います。 私は護衛兼サポート役としての行動を考えています。 医療や洗濯等に当たられる方がいますので、こちらは料理を中心にサポートを行いたいと思います。 特に帝国兵の方々も長時間に渡る野次馬対応でお疲れでしょうから、 温かい料理を提供する事である程度リラックスできると思いますし。 可能であればギーゼラ様の案である難民達にお手伝いをお願いするのも良いかと。
ウォーリアのアーシェルだ。 よろしく頼む。 かかえてた不安や不満が殿下の生死不明の噂をきっかけに爆発しちまったんだろうな。 蠅より質の悪りぃ奴等ならギーゼラの言うように再教育が必要だと思うが、やり過ぎんなよ? 殿下の護衛や兵士達のサポートに動く奴らが多いな。 癒し手や料理・家事上手は感謝されそうだ。 俺は噂を流してる実行犯を突き止めんのに動く。 難民達に噂を流した奴の情報収集をしつつ、殿下は生きてるって伝えて難民達の気持ちを落ち着けられるようにもしてみるな。 ナハトの言うように説得は難しそうだがやるしかねぇ。 殿下へ好意的な難民に協力してもらって優しく諭してもらうように頼んだり、根本にある自分達の将来に対する不安を受け止めた上で励ましたり発破をかけたり……後者は男の俺にやられても嬉しくねぇだろうが頑張ってみる。 一人だとやれる事も限られてくる。 噂を流した実行犯を突き止めんのに一緒に動いてくれる奴がいると助かるぜ。
ははっ、同感同感……っと、ギーゼラさんがぶっちゃけてくれたおかげで少し溜飲が下がった気がします。 さて、殿下の護衛兼サポーター役もいるようですし、僕はアーシェルさんと噂を流した奴を突き止めるのと、説得に回りましょう。 アーシェルさんはよろしくお願いしますね。 確かに今の状態では邪魔以外の何者でもない者共も、上手く使えばいいわけで。 不満不安の解消と、殿下の療養環境作りを兼ねられるように動いて貰えるよう持ちかけてみましょうか。
遅くなってごめんなさい、キャスターのアウレーリアよ。宜しく。 ……まぁ、言ってはなんだけど。民衆ってこういうものよ。 私は今更叱ってあげる気にもならないので、パッション的な役割はお任せするわ。 それから、殿下は「殺すな」と仰せでした。御身を傷つけた下手人さえもね。 殺すと脅すこと、そういう手段をとるかも知れないと思われること自体を望まれない筈よ。 皆、帝国の民です。どうか叱り方は気を付けてあげて。 ……それはそれとして。私も風説を流布する愚か者の捜索に加わりましょう。 殺さないとは言ったけれど、無罪放免にするとは一言も言っていません。 最初に吹き込んだ元凶まで辿り着くか分からないけれど、多分これは火炙りでもいい筈ね。
あぁ、そう言えば「殺すな」などと甘い事を言っていましたねぇ。 その優しさが殿下の良さでもあり、弱みでもあるのですけど。 それが殿下の望みであるならば、ちゃぁんと大人しくしている事も出来ますよぉ。 僕いい子ですから!! はい、それでは落ち着いてお話をしましょう。 今思いついたのは【声帯模写】のスキルを使う事でしょうか。 僕がこっそり中で待機しておいて、外が騒がしくなったら、中から殿下の声を真似て止めます。 「やめろ…!彼らに罪はない…!」とか「争うのはやめてくれ!」とか。 苦しそうな演技で一声喋ったところで、中にいる兵士に 「殿下、まだ動いてはなりません!」と合わせてもらえれば。 【民のために無理してベッドから出てきた殿下】が出来上がり!でしょう? 苦しそうな声ならば、声が多少違っても分かり辛いですし。 民の意識を【殿下は確実に生きている】に変えるには有効かと。 そうすれば民は殿下を助けるために僕達に協力的になるでしょうし、聞き込みもやりやすくなるでしょう。 その後は民にも協力して貰い、治療に最適な環境を整えましょう。
ギーゼラさんが最初に思ってたこと以上の事を言ってくれたのでどうするか悩んでたんですけど、声帯模写は良い案だと思います。 わたしはそれをサポートするために難民に紛れてサクラをやりましょうか? 「この声は確かにレイウェストさまの声です!」とか言って信憑性を持たせることと、工作員がいたらそれに対する反応で見つけられないでしょうか?
取り急ぎだが殿下の声帯模写をするのはいい案だな。 トーラがサクラをしてくれんなら信憑性も上がりそうだ。 だが殿下の声が聞こえた事でより強行に会いたがる奴がいるかもしれねぇから、こちらもより注意した方が良さそうだな。
フフフフ、殿下への愛故に熱くなりすぎてしまいましたね! 僕としたことがいけませんねぇ。 愛は僕を求めてくれた人に、平等に与えなくちゃいけないのに! (※訳:やりすぎました、大変申し訳ありません。) トーラさんサクラありがとうございます。 より信憑性が増してとってもいいです!! >強行に会いたがる奴対策 事前に窓は覗かれたり壊されたりしない様に、塞いでしまおうと思います。 見張りの兵の負担を考えるとドアも一か所に絞って塞いでしまった方が良いかと。
ギーゼラによる声帯模写に際して、私も乗っかった方が良さそうだろうね。 アシスタントであっても医療従事者的立場で動くつもりなんだ。 表裏に1か所ずつ出入り口が設けられ、四方に窓があってそこから侵入しようという輩には看破で対応し、最悪光縛封で一か所でも塞ぐ事をプレイングに記載しておいた。
連投失礼する。 ギーゼラによる一芝居で難民が騒然とすると仮定すれば、これによって実行犯の炙り出しも出来ないものかね? 難民達を惹きつけられそうなものならば、実行犯としても殿下の意識回復(?)は予想外の事態でもある訳だから。
ギーゼラさん(の中の人)は気にしないで下さい。 おかげで気持ちに引きずられずに相談が進められていますし。 実行犯についても炙り出しは出来そうですね。 異論を唱えたり、挙動が怪しい人がいればマークしてみようと思います。
殿下が大好きな奴等の集まりだな(楽しそうに笑って) ギーゼラが本気で殺っちまうとは思ってなかったんだが、伝わりにくかったら悪りぃな。 ナハトもトーラもギーゼラがここでブチ切れたお陰で気持ちが落ち着いたって言ってるし、あまり気にすんなよ。 ぷんぷん怒ってたら宥めるようにしとくな。 まずは声帯模写で実行犯の炙り出しだな、了解。 そこで目星をつけてから捕縛に向かうようにしとく。 スキルは【看破】と【超視覚】の予定だが、ナハトとアウレーリアと被りそうなら他のを持ってくぜ。 ギーゼラとナタリアは侵入者対策を挙げてくれてありがとな。 窓やドアを塞いだりぶち破られないように強化するのを手伝うぜ。 個人的にエフレムがぶっ倒れちまわないかも心配だ。 少しでも休憩を取ったり美味い飯でも食わせてやりたいんだが……あいつの好物ってなんだろうな。 取り敢えず肉食っとけば体力はつくか?(
まぁ、内心同感の者も多いでしょう。気にすることはないわ。 殿下ご本人がご無事なら、逸る臣下を嗜め将器を演出する方法にも使えたでしょうし。 要はケースバイケースよ……政治って難しいわね。 犯人の炙り出しは良い案ね。もしかしたら状況確認の為に覗きに来るかも知れない。 私がカウンターで生存確認の話を広めるから、洞察で反応を見ましょう。 少なくとも、普通の人なら喜ばない理由はない筈だもの……金を貰いそびれる者以外はね。