パンクリアース学園の入学式

弓月 蒼

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シナリオID:752

オープニング

●校長式辞
 新緑美しく、麗らかな春の陽が映えるこの良き日に、多くの来賓の皆様。
 並びに保護者の皆様に御臨席を頂き、ここに栄光ある本校の入学式を挙行させて頂けること。

 新入生は勿論、私たち教職員、在校生にとりましても大きな喜びでございます。
 先ずはご臨席の皆様へ心よりお礼申し上げます。

 ―――― 中略 ――――

 本校への入学を許可しました151名の新入生の諸君、入学おめでとう。
 諸君は厳しい入学試験、及び審査を見事合格し入学を果たしました。

 その努力を称えると共に、人生における最大の好機を掴んだその功績を心より賞賛します。
 パンクリアース学園の偉大なる先達に恥じぬ、強い志をもって過ごして下さい。

 ―――― 中略 ――――

 本校の建学の精神は、国家千年の大事として。まさに「誇り」と「縁」にこそあります。
 これからの王国を担う若人がまず自身にのみ依って立つ、「誇り」高い生き方を育む事。

 そしてこれからの人生の基礎を培う上で、本校との「縁」を最大限に利用し。
 自分の人生にとって価値ある「縁」を見極め、在学中のみならず将来へと生かして下さい。

 ―――― 中略 ――――

 本校には熱心な先生方、素直で優しい先輩や志を同じくする朋友がいます。
 広いグラウンドや大図書館などの優れた設備があり、無数の閃きや発見に満ちています。

 皆さんはこの素晴らしい学園で学問に励み、体を鍛え、友情を培う機会を得ました。
 この機会を活かして多くの刺激と知識を吸収し、今後の人生の基盤を築き上げて下さい。

 ―――― 中略 ――――
 
 私たちは皆さんが国家の礎となる、立派な王国民となることを希望しています。

               ―――――パンクリアース学園校長 ジルワード・ファルゲン

●白銀と黄金
 ――――2時間を超える式が漸く終わり、大半の新入生が深々と息を吐く。

「思わず2回ほど意識が遠のきかけたわ(はなしがながすぎるのだけど)」

「流石でございますお嬢様(そうでございますね)。このエドワーズ驚嘆の念を禁じ得ません(よくねられませんでした)」

「あら、私だっていつまでも子供ではないのよ(もっとほめてくれてもいいのよ)」

 貴族の会話は何処で聞かれているか分からない。隠喩(ふくおんせい)を用いた会話は必須技能である。
 さて、しかして季節は春。王都に居を構えるパンクリアース学園も新入生を迎えていた。

 勿論その9割近くは貴族か豪商の子女であり。少数の冒険者が入り混じっている程度ではあったが。
 とはいえこれからの学園生活に不安を感じる者はやはり多い様で、大体が家令を付き従えている。
 
 周囲を見回る冒険者のオーロラこと、オルファレナ・アルヴァ・クラティアスも御多分に漏れず。

「私の教室は1年の3組ね……うん、後は大丈夫。それじゃあ行ってきます!」

 けれど当然、教室内までの同伴は許されておらず。
 少し辺りを見回せばオルファレナ同様、不安そうに周囲へ視線を巡らせる貴族は数多い。

 少なくとも、決意を込めて一人教室の扉を潜れたオルファレナは。
 同様の貴族の子女の中では、決断力に富んでいる方であると言って良かった。
 
 他方――――入学式も終わったパンクリース学園、正門。
 四頭立ての黒い馬車が止まると、警備の人間が様子を見に来て馬車の家紋に目を見張る。

「爺、此処までで良い」

「はっ、承知致しました若様」

 頭を垂れた警備員を他所に、家令に見送られた少年は年頃14か15。金の髪に青の瞳。
 威風で以て風を切るその少年は王に並ぶべく生まれて来た。

 纏った黒の正装には黒い竜の盾の家紋。そう、黒い竜である。
 王国広しと言えど邪竜に連なるとされる黒竜を掲げる家など――――ただ一家のみ。

『黒鋼竜』ライゼンナクト。その名は王国貴族における貴族派閥の頂点であることを指す。
 王国の原型となった大オアシスの領主に連なる一族。黒の公爵家の御曹司ともなれば。

 興の有無で入学式を外す程度、誰も問題にしないし、問題に取り上げる事すら許されない。
 金髪の少年――――アルベイル・ライゼンナクトにとって。世界とは常にそういった物だった。
 
「……さて、この学園(ここ)に敬意を持てる人物の一人でも在れば良いが」

 本学園の入学者で僅か5人。白銀の姫同様に真っ当な受験を経て入学を果たした若き黄金は。
 まるで何もかもがつまらないと言う様な冷めた眼差しで、ただ一人遅れて校門を潜る。

 ――――さて、しかし入学式である以上。彼らには授業と言った授業も無いが。
 例えば同じクラスのクラスメイトであれば、自己紹介は避けて通れない関門だ。

 勿論それだけではない。クラブ訪問、大図書館の利用者登録も今日から直ぐに始まる筈。
 積極的で意欲の有る者であれば、新たなクラブ申請をして新たな部を発足する者も居るだろう。

 学園との「縁」を求めるのであれば、例えば冒険者や王国貴族が「聴講生」として。
 入学式とあってある程度開かれている学内を散策してみるのも良い。

 もしかすると其処には、本当に無数の閃きや発見が隠されているかもしれない。

解説

 パンクリアース学園はっじまっるよー。 ●成功条件  学園の入学式が恙なく完了する。 ●失敗条件  何かやらかして冒険者が怒られる。 ●王立パンクリアース学園  貴族の寄付と豪商の出資を受けて成り立つ、大陸最高の高等教育機関。  特権階級の城と言って良い場所であり、主役は学生だが貴族であれば一目置かれる。  貴族や豪商と縁もゆかりも無いだけで生活し難くなると言う、王国を象徴する様な魔窟。  生徒教師含め、全体の過半数が貴族派貴族。 ●学園内設備 ※ワールドガイド⇒都市や地域について⇒リーンエス王国⇒パンクリアース学園⇒学園施設案内参照。 ・貴族寮は学園教師、学園生、新入生以外立ち入り禁止。 ・貴賓寮は利用者が居るため立ち入り禁止。 ・野外施設は安全性の問題から全般的に立ち入り禁止。 ・巧者屋上、廃校舎、禁断の倉庫は立ち入り禁止。 ●選択肢(いずれか選択すること。行動案の先頭記載を推奨) 【1】学園内を散策する  学園内の様々な施設を見学したり、立ち入り禁止区画以外を探索したりする。  何かが起きるかどうかは、場所と装備アイテムと行動に左右される。 【2】学園内で交流を深めます。新入生は各自自分の配属クラスを指定すること。  1学年5クラスで、アルベイルは1ー1。オルファレナは1-3。  卒業生や聴講生が在校生や学園教師と交流を深めても構わない。  校長は校長室、学園長は所在不明。各教室担任は各教室に居る。 【3】クラブに入る/クラブを発足する  学園内で既に存在しているクラブに入ったり、数を揃えてクラブを発足する。  クラブ入部条件は『パンクリアース学園に属す学生か聴講生であること』  クラブ発足条件は『パンクリアース学園に属す学生が主導しており、  同部活動に参加する、在校生か聴講生を含む計3名以上の部員が揃うこと』  数字が付いているクラブは大雑把に一が主流。二が傍流。 ●既存のクラブ  排球部、蹴球部、社交ダンス部、第一剣術部、第二剣術部、弓術部、武術部、園芸部、  演劇部、広報部、第一文芸部、第二文芸部、美術部、音楽部、第一ダンジョン部、第二ダンジョン部、  魔法研究部、エーテル研究部、錬金術研究部、神話研究部、紋具研究部、料理部、卓上遊戯部、など ●注意事項 ・何をしても構いませんが、立ち入り禁止区域には警備員が居ます。 ・聴講生申請は冒険者なら大抵通ります。 ・基本、学園生(モブ)は王国帝国問わず貴族に親切で庶民に辛辣です。

マスターより

24度目まして。シリアス?ダーク?知らない子ですね。 ゆるふわ学園生活の園へようこそ弓月蒼です。だが差別はある。仕方ないね。 王国はパンクリアース学園を舞台にした物語の最初の一歩です。 在校生も新入生も卒業生もいらっしゃいませ。らぶったりこめったりしても全然OKです。 なお、学園内で起きた出来事。人間関係。個々人の状態などは、今後も引き継がれます。 学園内には、庶民貴族学生教師問わず大勢の人間が生活しています。 スポットライトが当たっていない意外な人が意外な要人だったりするかもしれません。 是非イマジネーションの赴くまま、試しに好き勝手してみては如何でしょうか。

リプレイ


●白銀の薔薇とその近況

 王立パンクリアース学園。王国最大の高等教育機関。
 その入学式ともなれば通う者、通わせる者。双方にとって、これはもうちょっとした祭である。

 そんな中にあって。ロゼット、ヴィルヘルミナ、リサ・ベイカー。
 そして冒険者のオーロラこと――――オルファレナ・アルヴァ・クラティアスの4名は。

「私の配属クラスは、1-3でした」

「奇遇ですね……私も、1-3です。その……オルファレナ様は?」

「私も、1-3でした。私は嬉しいんですけど、何かしら。これは偶然と言うか……」

 そう。内3名までが学園の新入生。つまり今日の式の主役であるにも関わらず――――
 纏っている空気。互いに距離を測りかねている様な、何とも言い難い距離感。

 ――――有り体に言って、周囲から見事に浮いていた。

「入学おめでとう。まさかの全員合格とは、恐れ入ったわ」

「ありがとうロゼット。えっと……私ね、その」

 特に。胸に白銀の薔薇の紋章を刻んだ白いワンピース姿のオーロラ……否。
 オルファレナは、いっそ露骨なまでに周囲に居る他の学生から距離を取られている。

 もし無礼が有れば、時に学園の法規を超越して放校処分程度余裕で下せる特権階級。
 少なくとも同学園の新入生達からみれば、その薔薇の紋章はそれほど特別な物の様で。

「オーロラ、さすがに私も貴方の名前はもう理解しているのだけど……」

 困惑するように。けれど確かにそう告げたロゼットに。オルファレナが僅か震える。
 その家名は常に貴きものとして語られる。けれど彼女にとって、それは途方もなく厚い壁だ。

 どれほど心近く有る様に感じても。名乗るという、ただそれだけで幾度"敬遠"されたことか。
 まるで怒られでもするかのように瞳を伏せた白い令嬢に、けれどロゼットはあっさり続ける。

「差し支えなければ、これからもオーロラと呼んで良いかしら」

 それはまるで当たり前のことの様で。けれど決して当たり前ではなく。
 そんな一言がどんなに特別だったか、きっと誰にも分からないだろう。

 瞳を泳がせたオルファレナは泣き笑いの様な表情を浮かべて精一杯に声を絞り出して。

「……うん。勿論。勿論よ! ありがとう、ロゼット。私ね、頑張るから!
 冒険者としても、きっと頑張るから……宜しくね。これからも、ずっとずっと宜しくね」

 顔を覆って声を殺して。桜並木で泣き崩れる貴族令嬢の姿などそれはもう。
 これ以上ないほど浮かない筈も無く。

「……なるほど。こういう場所、ですか」

 だからこそ、新入生3人で以て挑んだ教室への第一歩は。緊迫した物とならざるを得なかった。
 視線が違う。彼ら、彼女らは、庶民の家系であるヴィルヘルミナ。同盟商人の家系であるリサ。
 
 それらと共に在る"白銀"であるオルファレナを、既に異物として受け取っている。
 周囲が向ける空気は敵意とまでは鋭くないものの。有り体に言って、敵地(アウェー)だ。

 注意深く観察していたリサが視線を向けると、隣のオルファレナの表情もやはり、やや硬い。
 けれどそれも当たり前の事。この学園は縁を結ぶ場所。社交界の練習場だ。

 その中に在って、他より頭一つ抜きん出ている貴族の側に有る意味は決して無視出来ない。
 それが自分より遥か格下と思しき"庶民と商人"では。貴族主義の人間は面白く無いだろう。

「さて、オルファレナ様、先日はきちんとご挨拶出来ず失礼致しました。
 わたくし、エスト・ポーラ商家、ベイカー家長女、リサ・ベイカーと申します」

 席につくや突然そう自己紹介を始めたリサに、一瞬きょとんとしたオルファレナへ。
 続くように、ヴィルヘルミナが問いかける。

「そう言えば、学園での呼び方はどう呼ぶのがいいのでしょう。
 レナ……とか、名を略すのは、流石に馴れ馴れしいでしょうしね」

 そこまで言われたなら。流石にオルファレナもこの話の流れに気付く。
 誰と誰の結び付きが強く、誰を通せば誰に話が伝わるか。そういった話は水面下で流れる。

 入学初日であれば効果は絶大。オルファレナは悪戯っぽく笑うと、応じる様にこう返した。

「オルファ、で構いません。家族からはそちらの方が呼ばれ慣れているもの。
 2人共、改めて――――これからも、どうぞ宜しくお願いね」

 それはある意味、熱烈な貴族主義者たちに対する宣戦布告にも等しく――――
 あるいは、これからの学園生活に途方も無いリスクを負う事になったのかもしれないけれど。

 何処と無く緊張を隠せずにいた3人は、だからこそ顔を合わせ笑いあうのだった。

●大図書館とその周辺

「ぐるりと、巡ってみるだけのつもりだったのですが……」

 迷子である。コルネリウス・アーラは確か資料室を探していた筈だった。
 しかし学園の敷地は広い。地図も無く、地の利も無く、あまつさえ案内人も居なければ。
 
 あまり複雑な建築物と縁がないコルネリウスが所在を見失うまで、それほど時間はいらなかった。
 せめて誰かに道を聞ければ良かったが、学生達の居る教室棟から逸れると途端人の姿も無く。

「こんな好機(チャンス)そうそうないもんね。
 さっきは警備員に阻まれたけど、こっちの特別教室なら案外貴重品なんかも……」

 アシュリー・レドルナンは小悪党である。聴講生として学園内に潜入出来ると聞きつけて。
 こんな大きな学校であれば余程金目の物が有ったりするに違いないと即断即決で紛れ込んだ。

 流石に、真っ先に向かった禁断の倉庫の警備は厳重で早々に匙を投げたものの。
 教室の窓から中を覗いただけでも、専門書など筆頭に学園の教材には貴重な物が少なくない。

 二束三文で売って暫く遊べる程度の品なら幾らでも転がっている。これなら1つ2つくらい……
 ――――そんな二人の進路がぶつかったのは、最早天の配剤というほかない。

「あっ! あの、すみません資料室って――――」

「ぴぃっ! ごめんなさい嘘です嘘ですボクまだ何も盗んだりしてま――――」

「……えっ?」「――――えっ」

 学園内迷子と盗難犯未遂、まさかの第一次接近遭遇。
 冒険者としての模範的職務倫理に則るなら、例え未遂であっても見逃すべきではないのだろう。

 更には階下から聞こえてくる足音もう一つ。場所柄恐らく、学校職員だろうか。
 これは引き渡すのも止むなしか……と、コルネリウスが小さく息を吐いたところ。

 けれど階段を上がってきたのは想定とは大分異なり、怒りに燃える半獣人(ハーフビースト)である。

「何なんですか全く、道を尋ねただけなのに人を厄介ごとの化身のように避けるなんて。
 この学園のこういうところが好きになれないのです。ケーキは砂糖のみにて成らずという……」

「……え、なに。ケーキ?」

「どうしたんですかこんな所で……あれ。確か、サウゼルのお茶会に来ていたエルフの方?」

「あ、はい。そうです。……え? もしかして皆さん全員……」

 迷子になった冒険者3人。なお、資料室はもう一階上の階である。
 割と近い所まで来ているのは冒険者特有の勘の良さ故か。けれど、学園は広い。

 哀しいことに、特別教室棟に場所を絞ってすら――――広いのだ。

「なるほど、迷子ですか……仕方ないですね。棟の入口まで私が案内しましょう。
 ご安心を、来た道を引き返すだけですから」

「え、でもボク別に出ないといけない理由もないって言うか……」

「本当に物を盗ったら、流石に見てみない振りするわけにも行きませんからね?」

 念押しをされとぼとぼ来た道を引き返す羽目になったアシュリーの背には哀愁が漂うが。
 しかし概ね――――自業自得という他は、無い。

 さて。資料室へ向かった面々が初見殺しの迷宮と化した学園に行く手を阻まれていた頃。
 こちらは外から見ても如何にも図書館でござる。とばかりに聳え立つ、学園大図書館。

「――――なっ、何ですかこの歴史書の量は……!」

 場合によっては、この学園へ通うことが有ったかもしれない……と。
 複雑な心境でやってきたイヴェール・イリュジオンの前に立ちはだかる500冊近い史書。

 少なく見積もって3年に1度以上更新が掛かっている。近年200年に絞って50冊超えだ。

「ですが、もし記述があるとすれはもう此処位しか……」

 イヴェールが探しているのは、とある歴史から消された家系の情報だ。
 王家と直接繋がりがあったらしいその血統についての検閲はどうも今現在でも続いているらしく。

 新書古書を問わずらしき記述すら無い。本当にそんな"家"が存在したかすら疑わしい程に。
 真っ当に目録など辿っていても埒が明かない。何か、別口からのアプローチが――――

 ――――などと、考えていたところ。本を積み上げたエルフが順番待ちしている事に気が付いた。

「す、すみません。お先にどうぞ」

 慌てて場を譲ると、雪を思わせる白に程近い銀髪のエルフが小さく会釈を返す。
 さて――――順番を待っていた女。リコリス・アデュラリアは、魔法使い(キャスター)である。

 王国が誇る"学園"なる物には然程興味がなかった物の、知識の宝庫となれば話は大いに変わってくる。
 意気揚々と朝から大図書館を闊歩し、未知の学術書を文字通り漁って読み耽っていたものの。

 流石に専門的な用語が多過ぎて辞典を探しにやってきた。魔法は一日にして成らずなのである。
 そんな、リコリスが手にしている書物を見て、イヴェールが小さく首を傾げる。

「……エーテル、応用学?」

「……?」

 それは、一際目を引く赤い装丁の重厚な本だった。リコリスも未だ序文しか読めていない。
 内容も複雑怪奇であり非常に迂遠で読み難い。ただ―方で、酷く実践的だった。

 まるで本当に人体実験でもして結果を纏めてでもいたかのように。
 似たようなことなら、"毒"の専門家である自分の一族(ルナーリア)もやっていた。

 だからだろうか。まるで内容は把握しきれていないのに、奇妙に興味が惹かれたのは。

「ああ、これはこれでも魔法に関連する書物なんです。
 どうもこの学園では、エーテルの独自利用と魔法を別個の物として分類している様で」

 貴女も興味が? と、問うエルフの女に。けれどイヴェールの視線が一冊の本に釘付けになる。
 "生命のエーテル変換とその利用"――――著者記載無し。

 視界を一瞬―――命を無理矢理簒奪する"あかいせかい"が過ぎって消えた。

「その本、次に貸して貰えますか」

 血の気が引いたように、けれど半ば確信を持って拳を握るイヴェールに。
 リコリスは一つ首を傾げると、興味深げに瞳を細めて静かにうなずく。

 自分も未だ全然読めてはいないのだから、次となるといつになるか分からない。
 そして彼女はどうも、この本を今すぐ必要としている様だと悟り――――

「……では、一緒に辞典を探して貰えませんか」

 これももしかすると、思い掛けない厄介事につながるのかもしれない、とは思いながらも。
 言葉少なにそんな依頼を眼前の。良く似た髪の色をした少女へ託すのだった。

●黒の後継と学園の日常

(さーて、参ったなこりゃ)

 新入生が集う、1-1教室の一角。
 黒髪黒目の少年が、まさにその一角を目の当たりにして苦笑いを浮かべる。

 母親が上手くやった結果、学園に潜り込む事に成功したカズマ クレセントブラッドから見て。
 クラスの中は入学式早々にして、これ以上無く分かり易く3つに分裂していた。

 まず、クラス前方。恐らく貴族派の貴族で固まっているのだろう声のでかい一団。
 クラス中央窓際。多分商人らが顔見知りで集まっているのだろう中規模の一団。

 そして最後。クラスの後方やはり窓際でぽつんと異彩を放つ金髪の少年。
 その周囲にも何人か、やはり貴族派貴族と思わしき人間が屯している。
 
 ――――これが、曲者だ。クラスの全員がその一角を意識しているのが分かる。
 耳を済ませていた範囲では"公爵家の御令息"――――『黒の後継』アルベイル。

 王国貴族社会に疎いカズマがクラスで佇んでいるだけでそれだけ耳に入るという事は。
 注目されているという事でもあり、話題に出ていると言うことでもある。

 思わずカズマ自身も眺めていると件の少年が席を立った。
 まるで神話が英雄譚の一節の様に、屯していた人々が何も言わずとも道を開ける。

 どんだけ恐がられてるんだよ、などと。思っていられたのは少年が眼前に立つまでだった。

「卿は貴族ではない様だな。商人でもない。庶民とも違う。何者だ」

 静かな。声変わり前の澄んだ声がクラスの団欒を引き裂く。
 うわ、止めてくれよと辺りを見回せば、当然カズマも諸共に注目の的である。

「少し廊下出ても良いか。此処だとちょっと……な」

「有象無象の視線など逐一気に留めて何になる。下らん。
 提案というのはな、如何に自分に利するかではなく相手に利するかを考えてすると良い」

「あー分かった分かった。そういう奴なのな。カズマ、クレセントブラッドだ。
 近くの鍛冶屋の出で、一端の冒険者だから大した奴じゃねーよ、よろしくな!」

 自棄糞気味に声を上げ手を差し出すも、不思議そうに瞬くだけで手は完全に差し出し損だ。
 畜生、貴族め……! と悪い貴族と相対した庶民のお約束(テンプレート)みたいな感情が頭を擡げる。

「……市民の味方、という奴か。正気の沙汰とは思えんが」

 が、何か得心したかの様に頷くと早々踵を返し席へ戻ろうとするも。
 何故かその歩みはクラスの外へ向かっている。勿論、間もなく始業のチャイムだ。

「おいおい、何処行くんだよ。そろそろ先生来るだろ」

「俺が何処へ行くかは俺が決める。妨げる自由は認めるが、不敬罪は免れんぞ」

「同級生に不敬罪は無いだろ……無いよな?」

 言って止まるタイプじゃないなこいつは。と、カズマが諦めかかった頃。
 隣の隣、即ち1-3クラスの廊下では、こちらはこちらで騒ぎの真っ最中だった。

「エフィ!」

「オーロラさんっ! お久しぶりですっ!!」

 ひしっ、と駆け寄って抱き合うのは銀の髪の侯爵令嬢――――オルファレナと。
 桜色の髪の毒殺エルフ、エフィルミアである。
 
「この間は、その……」

 聴講生として、学園に踏み込むのはエフィルミアにとって極めて重大な決断だった。
 以前、幻揺鏡と呼ばれる砂漠の湖を訪れた時、オルファレナを泣かせてしまったこと。

 その無力感で暫く悩み続けて来たのだ。結論も、きちんと出たとは言い難い。
 それでもうじうじしているのは自分らしくない。強くなろう。護れるようになろうと。

 一念発起して此処までやって来たけれど――――声を掛けるのは、正直恐かった。
 嫌な思い出になっていたら。拒まれてしまったら。足が竦む様な連想は幾らも浮かんだ。

 けれど、互いの顔を見て弾けたように駆け寄ってきたのは白銀の少女から。

「少し、痩せた? 大丈夫。最近忙しかったのかし」

 ら。と、続く筈の言葉は、エフィルミアの側から断ち切られて。
 思わず。不意に。不覚にも。少し泣きそうになったのを小さな肩を抱きしめて隠す。

「私、強くなりますから。オーロラさんを、泣かせない位強くなりますから!
 また、いつか。まだ見ない景色を一緒に見に行きましょう……!」

 それは彼女なりの決意表明で。オルファレナは数度瞬くと。
 思わず笑って、いつも自分の心配をしてくれる大事な友達の背をぽんぽんと二度叩く。

「……うん。約束よ。私だってまだ、諦めてなんてあげないんだから」

 そんな答えを聞いて。それは空想でも、都合の良いだけの夢でもなくて。
 強くなろうと思う。せめて――――こんな小さな女の子1人位守れるように。

 けれど当然というか何というか、此処はパンクリアース学園教室棟の廊下なのである。

「いや……噂には聞いていたけれど、本当に面白いお嬢さんだ」

「申し訳ありませんが、貴女は何方ですか」

 オルファレナが前に出る。相手の閥が分からない場合、家格はそのまま盾にして矛だ。
 それを見て。声を掛けた女――――シルヴィア・A・カペルもまた丁寧な礼で応じる。

「これは失礼。私はカペル侯爵家のシルヴィア。そして君はクラティアス侯爵家のオルファレナ。
 ――――『白銀の薔薇(アルヴァ・クラティエ)』で間違いなかったかな?」

「カペル侯爵家の御令嬢……王国の彩、『蒼玉の麗人(サフィルス・カペラ)』シルヴィア・カペル様。
 お初にお目に掛かります。ええ、私は確かにオルファレナ。白銀(クラティアス)に相違ありません」

 王国の作法に則って、まるで手本の様な一礼を返すオルファレナに。
 シルヴィアが瞬き、破顔する。貴族にとって対話とは即ち戦い。社交界では常識ですらある。

 作法を正しくこなせるという事が、この学園でどういう意味を持つか。
 良く熟知しており――――その上で。背に負う友達を必死に守ろうとする様は、何処か小動物的で。

「大丈夫。私は王党派だし、冒険に理解は有る方だよ。冒険譚や古典伝承も大好きだ」

「えっ、カペル様も冒険者なんですか? ちょ、ちょっと待って下さい色々と理解が……」

 笑いかけると思わず笑い返しそうになって、はっと気付いて表情を戻すオルファレナ。
 噂に聞く『白銀の薔薇』の百面相にくつくつ笑っては。先ずは顔合わせに徹することに。

「そうだね、君さえ良ければまた今度話をさせて欲しい。何、同じ学校の縁だ」

 機会は、これからも幾らも有るだろうと。どこか親近感を覚える少女の隣を通り過ぎる。
 と、その視線の先。騒動を伺っていた黒髪黒眼の少年と、隣に立つ金髪赤眼の――――竜の仔。

(余り期待はしていなかったけれど。思いがけず面白いことになりそうだ)

 始業を告げるチャイムが鳴り響いたのは、そのほんの少し後の事である。  

●魔法使いの塔へようこそ

「私の"魔法使いの塔"へ、ようこそ」

 そう言って黒髪の女に招かれたのは、彼の有名な――――魔法使いの塔。
 ここならば安全だろうと、学園の事務員に奨められたのはその中の1つである。

 さて、訪問者であるイズレンディル・パラリムはと言えば。
 女が案内する"研究成果"を興味深げに眺めるばかり。実のところここで訪問した塔は3つ目だ。

 "迷宮ネズミの繁殖と調教"だとか。"雑草の食用加工技術"だとか。
 一口に"魔法使いの塔"と言っても研究範囲が広過ぎて、おまけに魔法と関係ない物も数多く。

 見学出来る範囲ではあまり何の参考にもなりそうにないな、と内心落胆していた。
 しかしどうも、此処はそうでもないようだ。

「私達は、これをエーテル波。と呼んでいます」

 エーテル応用学の一派。波紋学派、と呼ばれる。所謂小規模(マイナー)派閥の一団だ。
 エーテルを波として捉え、波紋の組み合わせで魔法を体系化しようとする学者達。

 その論理は"感覚"でエーテルを操る事が出来るエルフにはあまり馴染みの無い物だったが。
 
「エーテルは生命の源であり、生命には常にこのエーテル波が流れていると定義されます。
 死とはつまりエーテル波が途切れる状態であり。逆説、エーテル波さえ維持出来れば――――」

「永遠に生きることが出来る?」

 応じに女が瞳を細め猫のように笑う。これは、確かに禁忌というに相応しい研究テーマだ。
 唯人(ヒューマン)の社会にそれほど精通していないイズレンディルでも、流石に理解出来る程に。

 けれど此処に来て。脳裏を過ぎるものがあった。もしかして、と思わなかったと言えば嘘になる。
 その論理は、もしかすると。――――あの、"あかいせかい"を説明出来るのではないか。

「少し、知見を伺いたいのですが」

 恐らく。そんな魔法を実際目の当たりにしなければ想像すらしないだろう彼の問いかけは。
 結果的に。黒髪の女が蒼白になるほどの劇的な反応を引き出した。

「仮に、もしそんな魔法が実在するとしたなら――――それは」

 不老不死の、もう一つ先を行っている、と。もしもそれが事実であるならば。
 それは最早人の枠組みに収まる物ではない。唇を震わせ頭を振って語る女に。

 それでも尚、より深く問い詰める程に傍若無人には、結局イズレンディルにはなれなかった。
 何せ彼の見識が正しければ。女の瞳に過ぎっていったのは確かに狂気の陰だったのだから。

 禁忌の知識の宝庫、魔法使いの塔。此処でならば何かを掴める可能性がある。
 それが分かっただけでも、今は納得する他はない。そう思って、外に出ると。

「おや、イズレンディル氏」

 何故か少し前までは居なかったはずの顔見知りが、用務員として荷車を引いていた。
 普段はフードを被っているので印象が違うが、間違いなくキーゼである。

「何を、してらっしゃるのですか?」

「少し用務員の方と話をしていたら、馬小屋の方で何か起きたようで」

「それでキーゼさんが仕事を代わる理由も無いのでは……」

 どうもこの人は、表情が変わらないからと厄介事を押し付けられる傾向にある気がする。
 そんなイズレンディルの内心を知ってか知らずか。飼葉を運ぶ荷車を引く手に躊躇いは無く。

「こういう場所に、恩を売っておいて損はありません。
 どうも、学園内だけでも随分と火種の類が転がっている様ですから……」

 手入れを怠り腐敗に任せるからこうなる……と。思わず零した呟きが聞こえたかどうか。
 イズレンディルもまた、自らが出て来た魔法使いの塔を振り返って一人ごちる。

「……そう、ですね」

 王国の裏には闇が潜む。それは、これまで幾つかの事件を通し分かっていた事だった。
 けれど、それは表舞台だけに留まらない。こんな、子供達の学び舎にまでも。

 しかし果たして、それでは馬小屋で一体何が起きたのか。
 それは完全に偶発的な出来事で、キーゼは100%とばっちりだった訳だが。

 ――――時は少しだけ巻き戻る。

「ほへー……これが、学園でしかー」

 "出来るだけ人に合わないように"学園内散策を満喫しつつあったララノアは。
 遂に本日の最終目的地である動物小屋に辿り着いていた。

 そこに繋がれている馬達は退役軍馬や貴族からの払い下げではあるものの。
 騎士や貴族が乗り戦場を駆けることを前提とする為、肉付き良く鍛えられている者が多い。

「り、立派なお馬ですね……触ってもいいでしょうか」

 小屋の担当者は留守らしく、けれど馬は表に繋がれている。触れる距離だ。
 動物交感を用いて馬の機嫌を推し量ると――良きに計らえ――とでも言うかの如き好感触。

「立派な鬣……いつか乗ってみたいですねぇ……名前は、何と仰るのでしょう」

 視線を巡らせると、壁に掛かった名札にはルーベンス三世の文字。
 ついでに偉大なる白金の鬣とか何とか、あたかも異名のような但し書きがある。
 
 その所以は良く分からないが、何だかどうも凄いお馬さんのようだった。
 恐れ多くもブラッシングする手が震えるが、それはそれこれはこれ。

 触れられるのは気持ち良かった様で、威厳に満ちた眼差しが心地よさそうに細められる。
 ララノア至福の瞬間であった――――其処に、突然声がかかったりしなければ。

「貴女、何しているの?」

「ひぇ、な、え、何も! 何もしてないでしよ!?」

 声を掛けた側の少女――――アルト=ミルドレッド=バ・ロッサの方が吃驚する反応だった。
 エルフの少女ララノア。動物には遠慮なく話掛けられるが、その実対人スキル0である。

「あら、こんなに大人しいのは珍しいわね。元軍馬なのよ、その馬」

 けれど、アルトはと言えば珍しく馬小屋の近くに居た生徒を逃がす気は無い様だった。
 貴族は馬を好むが、馬小屋は嫌いだ。小屋掃除もブラッシングも自らはまずしない。

 それが学園に馬術部が存在しない主だった原因である。生徒だけで管理出来ないのだ。
 にっちもさっちも行かなくなっていたところに、鴨が葱を背負ってやって来た訳である。

「そ、そうなんでしか……? あ。私、聴講生で……でも、こちら、凄いお馬さん。良い子……」

「そうなのよ。それなのに自由に走らせて貰えなくて、ホントは馬術部を立ち上げたいのだけど」

 ちら、ちら、とアルトが強めの眼力でララノアを見る。
 そしてそんな圧を避けきれるなら、ララノアはコミュ障になんてなってない……ッ!

「…………あ、の、私。…………名前だけ、で良」

「ほんと!? 助かるわ! 良し、これであと1人……! あ。それじゃあ副部長お願いね?」

 わあ、貴族さん恐い。まだ話してる最中なのに、それに名前だけじゃ……
 色々ギブアップ寸前のララノアだが、悲劇はそれだけで終わりはしなかった。

「おおう、おまんら危ないでよ。その馬荒っぽいからよう」

 慌てたように近付いてくる動物小屋担当の用務員が1、2、3、4、実に5人。
 計6人の見知らぬ他人に囲まれるのは最早完全にララノアの許容量オーバーだった。

 とはいえ結果的としては過呼吸を起こし倒れそうになった彼女を保健室へと連れて行くことで。
 アルトとララノアは漸く落ち着いて、互いに自己紹介するに至れたのではあるが。

●食堂の陰で指先は巡る

「どうも、お呼び立てして申し訳有りません」

 学園内大食堂。その一角へ登校初日に卒業生に呼び出される……と言う。
 まるで何かの小説の導入部分の様な状況に陥ったオルファレナは、見事に困惑していた。

 呼ばれた個室の入口には心配して付いてきたリサ、ヴィルヘルミナ、エフィルミアが。
 そのもう少し外側にはどんな事態にも対処出来る様構えている家令長(エドワーズ)が控え。

 その方々からの保護されっぷりたるや、一周回って少し面白い程で有るわけだが。

「ええと、その……卒業生の、方なんですよね? レインフィール様は」

「レティシアで結構ですよ。家格も白銀(クラティアス)には及びませんし」

「そんな、目上の方を名前でお呼びするなんて」

 恐れ多くて。と、頭を振る少女は。今まで幾らも見てきた貴族令嬢の仕草そのままだ。
 勿論、レティシアもそちらに合わせる事は出来るけれど。

 それでは今日、態々こうして逢いに来た目的を果たせる気がしない。
 どうしましょうか、と考える仕草に。オルファレナの側も戸惑うことしきりである。

「それでは、私の方もオーロラ様、とお呼びするのは如何でしょう」

 その名前は、冒険者ギルドの依頼票と報告書にしか記されていないもの。
 つまりは彼女もまた、冒険者であると宣言したに等しい訳だが……

「……学園の、卒業生なんですよね……?」  

 オルファレナの瞳が数度瞬くと、次の瞬間にはその手を握られていた。
 突然のことに意識が。判断が付いていかない。と言うか、距離が。距離感がおかしい。

「卒業してから冒険者……? レインフィール伯爵家の御令嬢が?
 そんな、どうやって、どんな裏道が!? 詳しく! 詳しく聞かせて下さい……!」

「いえその、裏道とかそんな話ではなくて……あの。オーロラ様、少し近過ぎるような」

「だってこんなの落ち着いてる場合じゃ! あ。分かりました先輩! 先輩とお呼びすれば!?」

「え、違、そんなお話してましたでしょうか……!?」

 本当は互いの好きな本とか。そういった話を通して落ち着いた面識を持ちたかったとか。
 或いはお互い冒険者と親しい貴族の令嬢同士相談出来ることも、などと思っていたのだけれど。

 予期しないオルファレナの苛烈な食い付きに、思わず押し負けつつ。
 けれどレティシアは世にも珍しい『白銀の薔薇』の先輩の地位を確たる物としたのである。

 それが望むものか望まざるものかは、これまた別の話ではあるだろうが――――

「『騎士』として宣言します。メドゥの指先は――――貴方です」
「残念、『アリバイ』あります」

「む。上手くかわしましたね」
「基本基本」「お、これは今回は指先側の勝ちかなー……?」

「ところがどっこい、ここで『アルパカ』」
「わあ、やるぅ」「――――うえぇ!?」

「アルパカが選んだ貴方がメドゥの指先ですね?」
「うわあああ、あと1枚だったのにいいいいいい!!!」

 ――――他方。部活棟。卓上遊戯部。こちらにもまた、卒業生――――とは厳密には異なるが。

 かつての在校生が、今まさにメドゥの指先を追い詰めていた。
 いきなり物騒な話だが、つまりは部活動に飛び入り参加中のルアンナ・ミュラーである。

 複数対戦型カードゲーム『指先は巡る』。互いにカードを一枚ずつ引いては捨てていく。
 所謂"ババ抜き(オールドメイド)"形式のゲームだ。

『騎士』『指先』『アルパカ』と言った独特の仕組みを用い、簡単で、1勝負が短く、わかりやすい。
 と、一部小規模(マイナー)界隈で好評を博し、ひっそり市場流通もしていたりする。
 
 いやまあそもそも、卓上遊戯自体が根本的に小規模市場だと言えばその通りなのだが。

「やー、でもうちにOGが尋ねてくるなんて初めてですよ。あ、お茶どうぞ」

「いえ、何だか懐かしくて思わず……頂きます」

 かつて、卓上遊戯倶楽部と名乗っていた“同好の志の溜まり場”は。
 活動の多様性という名目で去年から制限が緩和された影響を受け、無事“部”に昇格していた。

 その結果、誰でもいつでも卓上遊戯を楽しめる。と言う特殊性が失われていたら……
 と、不安を抱え勢い余って部の扉を叩いてしまったルアンナもルアンナであるが。

 実際部室に入ってみれば、部員は3人ギリギリ。設備もギリギリ。見事な零細部。
 けれど代わりに。一番心配していたクラブの理念は、どうにか引き継がれている様だった。

「でも、現部長としては負けっぱなしじゃいられないですね。
 ルアンナ先輩、この『ビッグオウム・エサバ・バトル』で決着を付けましょう」

「わあ、何ですかそのちょっと可愛いの。受けて立ちます……!」

 時を経ようとも、見知らぬ卓上遊戯と出会った時のわくわく感は色褪せる物ではなく。
 何より当人あまり自覚はないが、ルアンナ・ミュラーは負けず嫌いなのだ……!
 
「ボスオウムとアニキオウムで進路を塞ぎますよ」
「わーわー、頑張れ部長ー!」「頑張れー」

「なら……ハジケオウムで跳び超えますね」
「あれなんか先輩順応早くないです!?」

 パンクリアース学園の入学式は、かくして表向き平和に過ぎて行く。

マスターコメント

皆様お疲れさまでした。弓月 蒼と申します。 この度はご参加ありがとうございました。この様な結末に至りましたが如何でしたでしょうか。 何とか冒険者が問題を起こすことも、逮捕されて強制送還されることも無かったので成功です。 各人割とお好みで自由に動いて頂けたので、描く方も楽しく描写させて貰えました。 必ずしも無条件成功ばかりではありませんが、判定結果は本文中に込めてあります。 また、今回は各人の行動ルートがバラけた結果あちこちでランダムエンカウントが発生しています。 何でこんな事に……と言うことも有ったり無かったりするかもしれませんが、 これもイベントシナリオの醍醐味ということで、どうぞ楽しんで頂けますと幸いです。 白銀のお嬢様関連では、一部特別な称号を発行しております。 黄金の仔竜や、仰々しい名前の馬など、学園の住人の掘り下げは後日に託すとしまして。 今後の展開をご期待下さい。ではでは、ご縁がありましたらまた次の機会にお会いしましょう。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:無し17 / 4〜25人

2021年04月16日 16時41分29秒 公開

成功

相談掲示板

  1. イズレンディル・パラリム

    エルフのキャスター、イズレンディル・パラリムです。 宜しくお願い致します。 行動はまだ決めていないのですが、聴講生としての参加にはなると思います。 選択肢が沢山あって悩んでしまいますね……!

  2. ヴィルヘルミナ

    ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いしますね。 私は選択肢【2】ですね。一応、前回の依頼で受験に合格したみたいなので新入生という形になります。 正直受かると思っていませんでしたので。驚きがありますけど。 設問が理不尽なものばかりでしたし……。

  3. リサ・ベイカー

    こんにちは、わたしは、リサ… じゃなかった。。 わたくし、エスト・ポーラが商家、ベイカー家長女、リサ・ベイカーと申します。以後、ご見知り置きのほどよろしくお願い申し上げます。 と、言うことで、ヴィルヘルミナさんと同じく編入試験に合格したため、この度パンクリアース学園に入学いたしました。 オーロラさん、でいいのかなぁ…後で聞いておこ…と一緒に、選択肢【2】で、仲良くなれたらいいなと。 みなさん、よろしくお願いしますね。

  4. ルアンナ・ミュラー

    ルアンナ・ミュラーです、よろしくお願いします♪ 聴講生として参加して、選択肢【3】で卓上遊戯部に顔を出してみようかと思っています。

  5. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。よろしく頼むよ。 【2】学園内で交流を深めてみようと思うよ。クラブも魅力的だから悩ましいけどね。

  6. コルネリウス・アーラ

    コルネリウスです、よろしくお願いします。 まだ詳細は決めていませんが、聴講生としての参加の予定でいます。

  7. ロゼット

    ロゼットよ。よろしくね。 悩ましいけど、大陸最高の高等教育機関に立ち入る機会が、 あんまり無さそうだから【1】で学園を見てまわろうかと。 どこに行くかはガイド見ながら、考えてみるわ。

  8. エフィルミア

    シーフのエフィルミアですっ。よろしくお願いします! 【2】で1-3のオーロラさんに会おうと思います! 皆で楽しみましょー!

  9. レティシア・R・クラティアス

    ごきげんよう。 レティシア・レインフィールと申します。 皆様、よろしくお願い致します。 卒業後に学園に訪れるのは初めてなのもあり 悩ましいところですが、【2】を予定しております。

  10. ララノア・グラヌローザ

    ら、ララノアと申しましッッ(ぺこー がががくえんというものに…興味を惹かれまして… 【1】で、いぃいろいろと拝見してみようかと… 宜しくお願いいたしまし!!(がばちょ

  11. アルト=ミルドレッド=バ・ロッサ

    アルトよ、一応在校生ってくくりでいい、のかな? 馬術部を設立したいのだけれど…まぁ難しいわよね

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0