【死軍】生きる屍に復讐を
そうすけ
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シナリオID:252
オープニング
――あいつら!!
目を大きく見開いた。背中に、皮膚が破れたかのような痛みがよみがえり、体が戦慄く。恐怖で喉が締め付けられて息ができない。
あいつらが生きていた。いや、死んでいるけど生きているみたいに歩いて、そして……いつもの、あの鞭を振るって……みんなを、孤児たちを叩いているなんて!
ヴァイセントラフ砦を襲うゾンビの群れの中に、孤児院の院長たちがいた。鞭を振るって、小さな子供のゾンビを急き立てている。
アティは砦をぐるりと囲む壁の上で、弓兵たちに補充の矢を一人で運んでいた。里親のボップはケガ人を連れて、さっき階段を降りていった。
「こっちに矢をくれ。早く!」
一人の弓兵に呼ばれて壁の縁へ駆け寄った際に、壁の下が見えた。その時、偶然にも砦を襲うゾンビの中に院長たちの姿を見つけたのだ。
顔や体のあちらこちらが黒こげになっているが、ぜったい間違いない。あれは、些細なことで腹をたてて、あるいは腹をたてたふりをして、逃げ場のない孤児たちに容赦なく鞭を振るった鬼畜どもだ。
何度、殺してやろうと思ったことか。いや、あのまま孤児院にいたなら自分のほうがあいつらに殺されていただろう。
「おい、なにをしている! よこせ!」
「あ……は、はい」
アティはようやく我を取り戻すと、矢がぎっしり詰まった重い矢筒を肩から降ろした。
半ばひったくられるようにして、弓兵に矢筒を渡す。すると、すぐ隣の弓兵に呼ばれた。
「はい、ただいま!」
アティは七歳のときに雑役夫をしている里親に引きとられ、砦に連れてこられた。それから三年。
孤児院での日々も少しずつ遠ざかり、真夜中に、『ごめんなさい、ゆるしてください』と泣き叫びながら、目が覚めるとも少なくなってきた。ここで毎日、くたくたになるまで里親と働かされているが、少なくとも取るに足りない理由で鞭を打たれることはない。
あの、突然ともいえる帝国崩壊の日、多分に漏れず南部鎮守都市ヴィントも壊滅したと知って、孤児院に残っていた仲間たちのことを悲しみこそすれ、院長や職員たちの死は素直に嬉しかった。なのに――。
砦の壁のすぐ下で爆発が起こった。
骨に響くほどの衝撃を受けて、小さなアティはよろけた。すぐ近くの急階段から、砦の内側へ転がり落ちる。あっと思ったときにはもう、地面に倒れていた。
痛みと恐怖と悔しさと。起き上がりながらポロポロ涙を零す。
「……この手でやっつけたい」
ゾンビになってからも鬼畜たちに鞭うたれるあの子たちを助けてあげたい。なにより、晴らせなかった怨みを晴らしたい。
だけど、自分にできるのは、前線で戦う兵士たちにせっせと武器を運ぶぐらいだ。一人で出ていって、殺されるなんて馬鹿をして、ぶっきらぼうだが心の優しい里親を泣かせたくない。
泣きながら散らばった矢を拾っていると、声を掛けられた。
「また派手に落ちたな。どっか痛いんか。我慢し、男の子やろ。泣いてる暇ないで、ボヤボヤしとったら砦が落ちてまうで。ほら、飴ちゃん食べて元気だし」
顔をあげると、矢を腕に抱えたゴブリナが立っていた。
●
「あかん。うち、こういう話に弱いねん。泣かせよるわ」
情報屋のラズリ―は、アディから話を聞くや、ヴァイセントラフ砦にいた傭兵たちに片っ端から声をかけまくった。
アティに助っ人して、元トラルガー孤児院院長とその愉快な職員一同ゾンビを屠る者を募るためだ。
「なあ、助けたってや。この子、まだ十歳でこれが初陣やねん。一人で出ていってゾンビの相手するんは無謀すぎるやろ。なにより相手は生きてるときに、小さい子供らを裏で売りさばいていた極悪人や。ま、アディみたいにたまにはちゃんと養子縁組することもあったみたいやけどな」
アディは数少ない幸運な例だ。
他の子供たちは人知れず売りに出されたり、売れない子供は虐待死させていたらしい。アディは遺体を孤児院の裏庭に埋めさせられたことがあるという。
なんとか戦えるだけの人を集めると、ラズリ―は円座を組んだ。
木の棒の先で、地面に簡単な砦周辺の地図を描く。
「うちがなんとかしてトラルガー院長たちを群れから引き離すわ。それで、ここまで引っ張ってくる」
ラズリ―が示したのは砦の東側の平原だ。小さな川が、砦の壁の一部に沿うように流れている。ここでアディと一緒にゾンビたちを倒して欲しいという。
「いまはしっかり戸締りされてるけど、水汲みに出るための小さな通用門がある。ここから外に出て、アディと待っといて。ちゃんとゾンビたちを連れてくるさかい」
一人で大丈夫か、という声にラズリーは、「任せとき。秘策があるねん」と言った。
「ほな、十五分後に。みんな、頼んだで」
解説
マスターより
リプレイ
ラズリーが行くと、アディは不安そうな表情でキョロキョロと辺りに視線を送った。
(そりゃそうでしようね……知らない人ばかりですし)
ヴィルヘルミナは、アディの前に立つと膝に手をついて体を屈めた。ぎょっとして体を引いた少年に優しく微笑みかける。
「私はヴィルヘルミナ。よろしくお願いしますね、アディさん」
アディが顎を引くの見て体を起こすと、ハーフビーストの青年に前を譲った。
「俺はセリオス・オーガスト。これも何かの縁……全力を尽くすと誓う」
セリオスはアディの左肩に手をおいた。
「もっと力を抜いて。いざというとき動けなくなるぞ」
最後に肩をぐっと握り、かるく揺すってからアディの前を空けた。
「アディさん。ぼくはバクル・バスリーっていうんだ」
年の近いバクルを見て、アディの顔のこわばりがほんの少し解けた。落ち着きのなかった視線がようやく一点に定まる。
「ぼくがきみを守りきる。だから、きみのやりたい事、全力で果たすといいよ」
やはり頷くだけだったが、目に光が戻った。
――と、横からぬっと現れた骨の兜にギョッとして、アディが体をびくつかせる。
「やあ、驚かせてしまったかな。ヨル・スレイマンだ。生きていたころに君を虐待していた者が生きる屍となって砦を襲ってきた……難儀なことだね。ちょっといいかな?」
ヨルはアディの肘をとって持ち上げた。剣の柄を握る手を骨兜の奥からじっと見る。
「時間がないからひとつだけ。親指を中にして握り込んではいけないよ。折れてしまうから。それに……君の場合は両手で剣を握ったほうがいい」
柄からゆっくり右手の指を外させると、親指を外にして握る位置を鍔の近くに寄せた。左手をとって、右手の下に持っていき、柄を握らせる。
「うん。それがいいね。間違って剣が飛んだりすると危ないし」と、バクル。
ヨルと一緒に剣の構え方をレクチャーする。
それにしても許せないわね、と憤るのはレシュノルティア・ピオジェレラだ。
「私も故郷で孤児の世話をしていたことがあるの。だから、自分の強い立場を悪用して子供たちを泣かせるヤツが許せない!」
アディはレシュノルティアの強い口調に目をぱちくりとさせた。
「一緒に戦わせてね。あ……私、レシュノルティア」
茶目っ気たっぷりに片目を閉じた。
「で、こっちのお姉さんは本当に孤児院でシスターをしているのよ」
紹介されて、ヴィノニスがゆっくりとアディに近づく。
「……いろいろと辛い経験をしたのね」
首を回したアディの頭に手をやって、斜めにずれた鍋をきちん被せてやる。
「でも、自分の意思でお友達とお別れするって言うのは立派な決意だわ」
きゅっ、と唇を噛んでうつむいた姿に、ヴィノニスの胸は強く締めつけられた。
きっと、この子はいま、自分だけが生き残っていることに心を痛めている。
自分を責めないで。悪いのはあなたじゃない。そう言ってやりたいが必死に堪える。いまはアディの心に響かないだろうから――。
「あなたの友だちを助けてあげましょう。わたしもできる限りお手伝いするわ」
ルオの影がアディを覆った。
顔をあげたアディの瞳に、眼鏡をかけた偉丈夫が映り込む。
「ルオだ。しがない傭兵だが、この依頼、引き受けさせてもらう」
同じ元孤児として。思うところは多々あるが、悲しみも憎しみも、一切の感情を胸の奥に仕舞い込んだ。ここから先はプロとして、全力で依頼を果たすのみ。
最後に、大きな体にたくさん傷をつけたホブゴブリンが、体を丸めてアディの前にしゃがみ込む。
「オゴスと申します。さて、ボス」
「ボ、ボス?」
初めて耳にしたアディの声に、オゴスは赤い目を柔らかく曲げた。
「はい、アディさん。アディさんは俺たちのボスです。俺たちはボスの手足となって働きますから、ボスは後ろでどーんと構えていてください」
「あ、あの……みなさん、よろしくお願いします!」
オゴスの後ろに並んだ授恵者たちに向かって、勢いよくアディが頭を下げる。
頭から落ちた鍋を、緑の大きな手が受け止めた。
「それじゃあ、そろそろ行きますか。ボス?」
●
砦を出た一行は、橋を渡って小川を越え、ラズリーが指定した平原に向かった。
といっても大した距離ではない。小川が接している場所を除き、砦を囲む高い壁の周りには深い堀が作られている。それらを越えたところ、壁の作る影が届かない場所にくるぶしまで草が茂る場所があった。
ヴィルヘルミナは膝をつくと、手で草をかき分けて土をつまんだ。
「耕せばいい畑になりそうですね。日当たりも申し分ないし、近くに川も流れているし……」
治安の悪いゴールディでは考えられないが、ここなら実ったものを取られるようなことは無いはずだ。にも関わらず、畑にされていないのは、ここが戦となれば最前線となる砦だからだろうか。
「本当のところはどうしてなんでしょうね」
さあな、と遠見中のセリオスが零した声を、ラズリーの絶叫が弾き飛ばした。
「来たぞ!」
バクルはアディをさがらせた。
「皆が場を整えるまで、少し待っていてね」
「なあに、すぐに終わらせてしまうよ」、と地平線に目を凝らしながらヨルがいう。
骨兜の奥で目を凝らし、黒焦げ犬とそのあとに続いてくるだろう生きる屍たちとの距離を推し量る。
「ラズリー君の読み通りだね。犬のあとから子供たちが走ってくる」
レシュノルティアは長いスタッフを草地に突きたてた。エーテルを集めながら、犬を片づける時間の猶予を問う。
「一、二分かな。そのあとしばらくして悪党たちが来る」
「具体的に判らないの?」
「……約五分後。余裕はないぞ」
オゴスはブランケットを広げた。元孤児のゾンビを包んで、保護するためだ。
「十分です。俺とルオさんで子供たちを保護します。ボスが別れを告げている間、悪党どもの足止めをしてください」
「アディたちは俺たちに任せてくれ」
ルオは他の仲間が持つブランケットを集めた。すぐ使えるように広げて、草地のあちこちに置いて回る。
「なら、ここでドンパチするのは得策じゃないわね。わたしたちはもう少し先で壁を作りましょう」
ヴィノニスの提案でV字の壁を作り、待ち構えた。
「あかん! こいつら、めちゃめちゃ凶暴や。ひぃぃー!」
鎖の先で黄金色に輝く懐中時計を振り回しながら、ラズリーが授恵者の間を駆け抜けた。
「お疲れ様です、ラズリー。あとは俺らでやっておきますんで下がっていてください」
オゴスがラズリーが抜けた壁の穴を埋めた。胸を張り、大きな体をさらに大きく見せる。
鋭い牙をむき出しにした黒こげ犬が、赤黒い涎を長くたなびかせながら駆けてきた。
短刀に赤く光るエーテルを纏わせて、駆けて来た一頭の鼻先に振り降ろす。が、横にかわされてしまった。
倒すというよりも、威嚇して他へ気を向けさせるための一撃だったから別にかまわない。背の後ろに隠した通用門に気づかれなければよかった。
「あとは任せてください!」
ヴィルヘルミナが鉄の大剣を構える。研ぎ澄まされた闘気が、大剣の先を超えて広がった。
殺気に反応した黒焦げ犬たちが鼻面を回した。醜い顔を一層、醜く歪めて唸る。
「死して尚これですか……因果なものですね。ここで終わらせるのが、せめてもの手向けでしょうか」
顎を開いて飛びかかってきた黒焦げ犬に、エーテルを纏わせた刃を振りおろす。
黒い血が飛び散って、体が半分に割れた。左右に開いて倒れる。
隙をついてもう一頭が横から飛びかかってきた。
「しまっ――」
脇腹に食らいつかれる寸前、セリオスが放った巨大な光の矢が黒焦げ犬の胴を貫いた。
射抜かれた方の犬は、肢体を踏ん張ることで転倒を免れた。体を回してすぐに牙をむく。
ヴィノニスがすかさず氷の矢を放ち、四肢を凍らせて動きを鈍らせる。
「ヴィルヘルミナさん、さがって!」
バクルは鉄の斧をまるでオモチャのように振り立てて、二頭の気を自分に引きつけた。
「ボクに遊んで欲しいかい? いいとも、おいで」
開きにされた犬もフラフラと立ち上がる。
セリオスは呆れながら弓に矢をつがえた。
「さすがにしぶといな。真っ二つにされようが、矢で射抜かれようが立ちあがるか」
だったら、とバクルは黒焦げ犬の半身に切りかかった。
「二度と立ちあがれないよう、粉々にしちゃえ!」
「同意」
ヨルはもう片方の半身に思いっきり鎚を振う。
ぽっ、ぽっ、と渦を巻いて燃える小さな玉が、いくつもレシュノルティアの周りに浮かびあがった。
「悪党の鉄砲玉は、容赦なくふっ飛ばすわ!」
長いスタッフの先で黒焦げ犬たちを示す。とたん、渦を巻く火球が猛スピードで飛翔し、高みから魔物たちに降り落ちた。小さな隕石さながら、体に当たっては皮膚、肉を焼き、骨を砕いた。
直後、まだプスプスと音をたてて燻る魔物の残骸を、小さな黒こげの足が踏み砕いた。
●
しゃにむに突っかかってくる孤児ゾンビたちを傷つけないよう必死にかわす。
「オゴスさん!」
伸ばされる黒焦げの手を盾でいなしながら、ヴィルヘルミナは叫んだ。このままでは意図せずとも傷つけてしまう。
「いますぐ!」
ブランケットを広げたオゴスが、孤児ゾンビを抱くようにして捕まえた。
ルオがすばやくロープで拘束し、肩に担ぎ上げた。そのままアディのところへ運ぶ。
「アディ、お別れだ。最後になにか言葉をかけてやれ」
なるべく身体を崩さないように、ゆっくりと草の上に横たえた。
ブランケットの中でもがく孤児ゾンビと目があった途端、噴き出すようにアディの両目から涙があふれた。
ティム、ティム、としゃくり上げながら孤児ゾンビの名前を連呼する。他に何か言おうとするが、その度に喉に苦い塊を詰まらせたようにあえぎ、空気を求めて体を激しく震わせた。
孤児ゾンビも体を激しくうごめかす。
ルオは手の下で、ブランケットを通じ、焼けて縮んだ体がボロボロ崩れるのが分かった。
(くそっ)
トドメを刺そうとしたルオの手をオゴスが制した。まだ早い、と首を横に振り、担いできた孤児ゾンビを降ろした。
頭の左が欠け、残る頭に焼け焦げたイルカの髪留めが張りついている。女の子――。
ぽろり、と髪留めが一束の髪とともに草の上に落ちた。
「マリンちゃんの、マリンちゃんのきれいな髪が……ああ!」
アディは剣を離すと、両手で顔を覆った。がくりと膝を崩す。地面に崩れそうになるのをオゴスが抱きとめた。
「体が炭化していますね。ボス、水がありますが死者への捧げ物にしますか?」
アディは答えない。答えられない。
オゴスは黙って腰に手を伸ばすと、小さな水袋の紐を解いた。わななく小さな手に握らせる。
とうとうアディは声を放って泣きだした。
なんとか二体のゾンビに水をかけさせると、オゴスとルオはアディの見えないところまでゾンビを運びトドメを刺した。
ヨルは光の六角柱を草原に立てて孤児ゾンビたちのコントロールを試みていた。
「俺も手伝おう。間もなく悪党たちの登場だ。その前に一人でも多くアディの元へ」
セリオスは弓を背に回すと、光の六角柱の脇を抜けてきた孤児ゾンビをブランケットで捕まえた。
「……ごめんなさいね」
レシュノルティアも孤児ゾンビを捕える。
力がないとはいえ、相手は生者の血肉を貪ろうと全力で襲ってくる。手足の封じると、舌を失った真黒な口をあけて噛みついてきた。ぶるぶると眼窩の中で白く濁った眼が揺れるのを見るたび、悲痛な声を授恵者たちは心で聞いた。
ひゅん、と空気を引き裂く音。
孤児ゾンビの一体が、仰け反りながら地面に倒れる。
「なんて酷いことを……」
ヴィルヘルミナとヴィノニスは最後にやって来た三体のゾンビを睨みつけた。
「真ん中の木偶の棒、あれが院長かしら。両脇のタヌキ女と蟹股男は手加減いらないわよね?」
二人は倒れた孤児ゾンビを抱き起すと、バクルに預けた。
鞭を振るいながらよたよたと歩いてくる悪党どもに、憎悪に震えるスタッフを突きつける。
「行くわよ!」
ヴィノニスは右から悪党たちの横へ回り込むと、スタッフの先から水を迸らせた。鉄砲水のごとく激しい水流が、タヌキ女の突き出た腹をそぎ落とし、院長の前をかすめて、蟹股のドワーフの腕を砕く。
剣の刃を赤く光らせて、ヴィルヘルミナが鞭を振るう院長に突撃した。振り降ろされた鞭は、頭を低くして甲冑の後ろで受けた。強い衝撃にぐっと息を詰まらせるも、剣を横に薙いで両脚を切り払う。
両サイドから、タヌキ女と蟹股男が襲い掛かってきた。
「邪魔な奴からお暇願おう!」
ヨルが口火を切り、後方から仲間たちが次々と矢や魔法を飛ばす。猛攻を受けた二体の悪党はあえなく倒れた。
その隙に院長が体を起こす。
「手、いらないでしょ?」
軽やかにステップを踏みながら、レシュノルティアが短刀を振るう。鞭を持った腕、続いてもう片方を切り落とした。
バクルは引っかき傷や噛み傷を負った仲間を癒しつつ、孤児ゾンビをアディの元へ運んだ。最後の一人だ。
「ぼくはきみのような過去がないから、きみの事を理解はできない。けど、これだけは言うよ。色んな感情が湧くだろうけど、激情に流されるだけじゃ、失敗する。冷静に」
落ちた剣を拾い上げ、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたアディに握らせる。
「行ってこい。過去に決着をつけてくるんだ」
ルオが背中を押す。
頑張って、とヴィノニスは遠くからウインクを飛ばした。
一歩、一歩、進むアディをオゴスがお供する。
院長は首を起こすと、唇を落とした口を醜く歪めて二人を威嚇した。
過去に捕らわれて身を強張らせたアディに、オゴスは落ち着いて声をかける。
「さあボス、その手で外道に引導を渡してやりましょう」
西日が涙に濡れた頬を赤く染め照らす。
「地獄に落ちろ!」
アディは院長の胸に剣を突き刺した。
●
まだ戦いは続いていたので、残るというアディをオゴスが担ぎ上げて、一旦砦に戻った。
弔いのために草原に戻ったのは星が輝きだしてからだ。
砦を守る戦いの中ではわずかな時間でも貴重だが、孤児たちの遺体をそのままにするのは忍びない。
抱きよせた膝に顔をうずめるアディの横にバクルが座る。
「ぼく達リザードマンはね、魂は輪廻転生すると考えているんだ」
ヴィノニスがあげるミサに合わせて、手のひらに炎を乗せたレシュノルティアが鎮魂の舞を踊る。その横でヴィルヘルミナとセリオス、オゴスの三人が墓穴を掘っていた。
ヨルとルオが孤児たちの遺体を丁重に墓穴へ降ろしていく。
「きみの友達達は、これで次の生へ転生できるはずだよ」
レシュノルティアの蜂蜜酒を手向け、みんなで孤児たちの冥福を祈る。
「これがアディ君にとって、明日に歩いていくための儀式になれば良いと俺は思う。昨日までを断ち切っていくといい。君はもう何にも縛られなくていい」
ヨルの言葉が染みたのか、枯れたはずのアディの目から涙が一粒、零れ落ちた。
「砦に戻ろうか」
バクルが差し出した手を、アディはギュッと握った。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2020年12月03日 10時32分06秒 公開
相談掲示板
キャスターのレシュノルティアよー。よろしくね。 今回はゾンビ……っていうか、悪党のドメ刺しね。 出てくる順番は犬→子供→悪党ってことだから、犬を早急に倒して、子ゾンビを捕縛、最後に悪党を手加減して蹴散らすって流れになるかしら? 犬は全力でぶったおすとしても、悪党のドメ刺しはできれば少年にやらせたいわね。
ウォーリアのヴィルヘルミナです。今回は宜しくお願いしますね。 目的としてはアディさんへのお膳立てといった所ですか。敵の全滅は前提として。 縛るなら光縛呪とかロープあたりでしょうか。檻でもいいみたいですけど、どこから調達するのでしょう。 子供ゾンビを無力化したあとはアディさんがお別れをするそうなので、その間に後続の大人ゾンビが襲い掛かってくる感じですか。 止めを譲るのは院長のゾンビだけみたいですし、他三体は手早く倒してしまいたいものですね。
オゴスと申します。ホブゴブリンのシーフです。 皆様方、どうぞよろしくお願い致します。 敵の動きを鈍らせるスキルなら、いくつか覚えています。 そこまで神経質にならんでも大丈夫そうですが、戦闘場所が砦のそばって話なんで敵が入っていかないように注意しましょうかね。
檻の調達どころはわからないし、できるものでやるしかないわねー とりあえず光縛呪は難しいと思うわよ。あれ、戦闘不能または無抵抗の場合だから、戦闘力がないとはいえ、ゾンビとして活動してる以上、難しいでしょう やるなら、炭化して脆くなっててロープ単体だと砕ける可能性も考えて、ブランケットでかけてクッションにしてからロープで縛るとかの拘束がいいかしらね
ウォーリアのバクルだよ。アディさんをカバーリングで守ったりしようかなと考えてるよ。 よろしくね。 流れは大体レシュノルティアさん、ヴィルヘルミナさんの言うとおりかな。 犬倒して、子供捕まえて、院長以外の大人を倒して、院長はアディさんが倒す。 その後子供達と別れを済ましてもらってから、倒す感じかな。 防御はカバーリングやシーザーロアで何とかなるけど、 確実に止めを刺させるなら『院長が回避できない(orアディさんが命中させられる)ようにする』『防御を貫ける程度の攻撃力を出せるようにする』の二つがいるかな。 ……手足を切り落としておけばいいかな?
ヴィノニスと申します。 動き方はさほど幅がありませんので、今のところは火力砲台と思っていただけると嬉しいわ。 出発前に前の仕事の報酬が払われればいろいろとやれることも増えそうなのだけれど、今のところは計算には入れられないといったところね。 職員ゾンビと黒焦げ犬は倒してしまっても構わない感じなのね? 目的の1と2を達成するためにも、余計な邪魔はさっさと退場してもらった方がよさそうかしら。 子供のゾンビについては、アディに手を下させるのは酷かもしれないわね。 お別れが済んだら、こっちで引き取った方が良いんじゃない? >院長の行動を止める方法 スキルや数字的な方法と、ロールによる方法と両方持っておくのが良さそうね。 ・手足を切り落としておく ・ブランケットでかけてクッションにしてからロープで縛る こっちは多少痛んでても、トドメがアディに引き渡せればいいからまだ考えようがあるわね。 >子供ゾンビ どっちか言うと、こっちが大変かしら。 犬がいて、職員ゾンビがいる状況で10人いる訳でしょう。 準備の時間は15分しかないわけだし、大掛かりな罠なんかは準備できなさそう。 何かいい方法がないかしら?
前回のが薄いしすれ違い起こしてるから、ちょっと間隔短いけれど >・ブランケットでかけてクッションにしてからロープで縛る ぁー。私の書き方が悪かったわね。これは。ちょっと表記ブレもあるし、気をつけるわね。 ブランケットとかは孤児ゾンビ対象のつもりだったわ。 悪党にこんな手間かけてやる必要はないでしょう。手足切り落として芋虫にするだけよ >動き 孤児ゾンビのドメ刺しは、少年には悪いし、こっちでやるのは確かね。 んで、敵が多数いる状態での対処ね。全体的にかかってくるから、全体的な動きとしての提案よ まず、いくらなんでも犬2匹と悪党3体が同時に存在してる状態で10人の孤児ゾンビを確保するのは難しいと思うから、 ・犬を見え次第、火力を集中させて落とす。 ・(人数的に可能ならば)孤児ゾンビの確保、悪党への対処、この二つを分担して担当する って形がいいんじゃないかしらって思うわ 孤児ゾンビの確保が終わり次第、悪党への対処にそっちの面々も集まる感じね。 あとここまでで留意したいこととしたら、面識がある少年もこの戦場に存在にする以上、悪党の敵視が向かう可能性はある。 悪党への対処を担当する人はこっちへの意識もあるといいかもしれないわね
ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む <孤児ゾンビ まあ確かに別れを言う相手に止めをささせるのは寝ざめがわるいからな。止めを刺すのはこちらでするでいいと思う まあ問題は無差別に襲うからアディに襲われる前に同行したいところだな。 戦闘能力はほとんどないとのことだから光縛呪とかは通用しないだろうか?一応戦闘不能や無抵抗の実とあるから倒し切らない程度にダメージを与えて使用すればロープやらを使う必要もないし縛る手間も省けるとは思うが <犬、悪党 ピオジュレラもいうとおり犬が見えたら即座に対処して倒して孤児が到達する前にかたをつけたいところだな。 犬がいなければ手も空くだろうしな。 孤児を相手してる間に悪党どもが来たらそちらにいかせないように悪党に対応する班引き続き孤児を捕まえる班に分かれて行動すればいいんじゃないか。 孤児を全員捕まえたら合流して悪党を殲滅。院長だけは虫の息にして止めを刺させる流れで
>子供ゾンビ 光縛呪が難しいならロープでいいと思います。 アディさんならともかくこちらにとっては難しい相手でもないみたいですし。数が多いので、その点が手間でしょうけど。 >犬 可能なら子供ゾンビと本格的に接触する前に倒すのがベストですね。 同時対処はかなり面倒な事になりそうですから。 >悪党 みなさんが子供ゾンビに対応している間はこちらの足止めをしようと思います。 殺界で少しだけなら足止めも出来ますし。
シーフのルオだ。 冒険者として駆け出しだが、よろしく頼む。 作戦はいま挙がっている案で俺も異論はない。 敵をあらかた殲滅しアディに院長のトドメを刺させる段になるまで、アディには誰か専属で護衛を付けておくか? 敵に飛び道具がなければ、俺達全員で敵の接近を防げば大丈夫かもしれないが。 >孤児(ゾンビ) 俺もロープを持参して、彼らを拘束する手伝いをしよう。
>子供ゾンビ 犬の始末が済んだら、俺は子供ゾンビの確保優先でいきます。 ブランケットとロープで体が崩れないよう拘束ですね。了解しました。 お別れが済んだ後は子供ゾンビを倒さないといけませんね。大きな傷がつかないよう、手早く綺麗に済ませときます。 >アディの護衛 護衛がいてくれた方が安心できますね。アディへの対応が必要な事態もあるかもしれませんし。 俺は前に出てゾンビの対応をしたいので、護衛は他の方にお願いする形になっちまいますが。 護衛をつけない場合は、敵を近づかせないよう立ち回って、アディとラズリーは下がっているようにってな声かけをしておきますかね。
ヒーラーのヨル。宜しくね。 犬を速攻撃破、残りは孤児と悪党の担当、って分かれるのはとても良いと思う。 アディ君の護衛もいると安心だね。離れてて貰うなら、そっちへ抜けないように気をつけながら戦う人、でもいいかもだ。 >子供ゾンビ 万が一子供ゾンビと他が混在してしまった時に、光縛封があると安心だろうか。 1回しか使えないけど持っていっておこうと思う。立ち位置は多分どこでもできると思うし。 10人まとめて閉じ込められたら3Tの間に周りに柵を設ける、とかもできるかもしれないけど、1へクスに10名は数の上でもちょっと非現実的だね。
>アディの護衛 じゃあ、ぼくが引き受けるよ。 張り付いて、何かあればカバーリングするね。
>弱らせて光縛呪 ゾンビとはいえ、戦闘能力のない子どもをボコりたくはないわー。少年の目の前だし。 >分担 じゃ、二分担してく形で行きましょう。 とりあえず今出てる希望をまとめておくわね。 出来れば悪党勢も半分はほしいところ……とはいえ、私は今のところどっちでもいいから、希望は保留にして、大体決まったら調節にどっちか入るわ ◆孤児担当 ルオ オゴス ◆悪党担当(アディ護衛含む) ヴィルヘルミナ バクル
>光縛封 クラス的に使えるのがヨルさんだけのようなので、1回こっきりなのよね…… 既に挙がっている通り、10人の子供ゾンビをそれで全部隔離しきるのは難しい気がするわ 補助として便利なのは間違いないけれど、もう一手は手段が欲しいわ やっぱり「無差別に襲う」をうまく活用して、何とかアデルがお別れを済ますまでは授恵者で攻撃を引き受けるしかないんじゃないかしら >ブランケット なるほど。勘違いしていたわ >分担 悩ましいわ…… 私としてはアディくんが悩んだり成長したりする姿を特等席で見守りたくはあるのだけれど。 真面目に役目を果たすとするなら、単純に戦闘になりそうな悪党担当の方が良さそうね。 とりあえずは仕事優先に……むむむ。 ◆孤児担当 ルオ オゴス ◆悪党担当(アディ護衛含む) ヴィルヘルミナ バクル ヴィオニス
>光縛封 そうそう。ヴィノニス君のいう通りなので、作戦に組み込むというよりは一応の手段だね。範囲も狭いので、万一子供ゾンビに使う必要はなければ、初手で院長を足止めしておく方が有用かもしれない。 >分担 孤児担当者が作業を終えたら合流するらしいし、それならどちらかと言うと引き離しや孤児側に行かせないことに重きをおくべきかね。いや、まあさっさと数が減った方がそれもしやすいのだけれど。 悪党側の担当に行っておこう。変更は可能なので、バランスを見て調整するよ。 ◆孤児担当 ルオ オゴス ◆悪党担当(アディ護衛含む) ヴィルヘルミナ バクル ヴィオニス ヨル
>班分け 大体決まったかしらね? じゃ、私は孤児担当にまわるわね。あと……ヴィノニス、自分で自分の名前間違ってるから直しておくわね ◆孤児担当 ルオ オゴス レシュノルティア ◆悪党担当(アディ護衛含む) ヴィルヘルミナ バクル ヴィノニス ヨル >光縛封 ヨルがそっちに回ったなら院長でいいんじゃないかしら? とりあえず動き止めたい筆頭ってそれだものね >悪党3匹 この三匹、どれも少年の目標……になるのかしらね? 雰囲気だと筆頭は院長って感じだけれど、それ以外の二匹もそれなりに怨み心頭って感じだし、3匹とも無力化芋虫して、少年の様子をみてつぶす感じになるかしら
<班分け ふむ、人数的には俺は孤児に回った方がいいか。まあ孤児に戦闘力はないからシューターでも大丈夫だろう ◆孤児担当 ルオ オゴス レシュノルティア セリオス ◆悪党担当(アディ護衛含む) ヴィルヘルミナ バクル ヴィノニス ヨル
これは戦闘と関係ない、俺が個人的にやりたいことですが……。 孤児との別れの際に、水袋の水を死者への捧げ物に使うかどうか、アディに尋ねてみます。 そういう風習が一般的なのかは俺にはよくわかりませんが、炭化している死者ですし水を手向けるのはそこまで奇妙ではないでしょう。
>悪党3匹 一応依頼としては院長以外のトドメは特に言及されていませんし、余裕があればという感じでしょうか。 討ち漏らすのは流石にまずいので、状況次第ですね。 >個人的な事 依頼の遂行を妨げる事でないのでしたら、個人的な裁量でいいと思います。 各々やりたい事もあるでしょうし。