【帝国】帝国奪還連動 南部編 決戦特設

ナタリア・フィッツジェラルド

帝国の領土奪還作戦。ついに、ここまでたどり着いたか。敵情の調査、民兵の鍛錬、個人的にも駆け回った甲斐があったというものだよ。

ハヤト=ガラン=ヴォルファング

指揮官のバルディオン将軍もかなり気合入ってるじゃねぇか。やっぱ帝国奪還ってのは、大きいか?

ナタリア・フィッツジェラルド

御子息を弄ばれた恨みもあるのだろう。吸血鬼め、むごいことをする。だが、将軍は軍人だ。戦場では私情だけで動くのは難しかろうね。

ハヤト=ガラン=ヴォルファング

なるほどな。難しいかもしれねぇが……。難しい、ってことは何とかしてやろうと思えば、何とかできるんじゃねぇか?
戦となれば俺達ブレイブファング傭兵団の働きどころってわけだしな。【天霧りに消ゆる幽界樹】に【蟻の女王】、【ヤコブ・ヴィリアン】とは選り取り見取り。腕がならぁ!

ナタリア・フィッツジェラルド

強敵もさることながら、【難民キャンプ】に居られるレイウェスト殿下は、御身を危険にさらしてまでこの作戦を成功に導かれている。帝国の民として、決して負けられない戦いだよ。

ハヤト=ガラン=ヴォルファング

ああ、【黒い霧】を吹き飛ばすのに、皇子様の剣を使って何か凄い魔法を使うんだったか?

ナタリア・フィッツジェラルド

私達も輸送の護衛をした帝国の至宝【征竜の虹宝剣】にて、悪しき瘴気を晴らすのだ。その為には大量のエーテルが必要だと言うが、それは【蟻の女王】を討ち倒し、【ダンジョンコア】を破壊することで賄うらしいね。

ハヤト=ガラン=ヴォルファング

そうすると、あれか。ダンジョン討伐も、難民キャンプの防衛も、その剣を守るのも。全部成功しないとうまくいかねぇのか。

ナタリア・フィッツジェラルド

その通り。失敗は許されない。なに、これまで同様にできる事を全身全霊でやればよいだけだよ。この始まりの一歩の為に、ね。

帝国南部地域の奪還に向けて、世界各国が動き出したようです――。
(6月19日 【帝国】【CP】決戦:ヴィント奪還作戦&【CP】関連シナリオ公開!)

assignment【帝国】帝国奪還連動 南部編

 【帝国】帝国奪還連動 南部編は、シルトラース帝国南部の都市ヴィントをクリーパーの勢力下より奪還し、帝国領土の一部を人類の勢力下に取り戻す戦いを扱う。

assignmentこれまでの流れ

 昨夏にシルトラース帝国を襲った未曽有の大災害の後、初冬に現れた死者の軍勢はヴァイセントラフ砦にて殲滅された。雪解けを前に、帝国皇子レイウェストはリーンエス王国や都市同盟、冒険者ギルドに続き、大湿地帯のリザードマンやゴールディのゴブリンからの助力を得て国土の奪還へ乗り出そうとしていた。準備を始めた段階で凶刃に倒れたレイウェスト皇子を欠くことになるも、帝国の残存部隊を預かるバルディオン将軍は作戦続行を決断した。

(2021/6/18追記)
冒険者の調査により、ヴィント市の状態やクリーパーについて、ならびに駐屯所の蟻型亜人の防衛体制について確認できた。また、黒い霧の排除に必須の帝国の秘宝【征竜の虹宝剣】もヴァイセントラフ砦へ輸送されている。しかし、征竜の虹宝剣の使用には契約者の存命が必須であり、まだ傷の癒え切らぬレイウェストが居る難民キャンプの防衛も並行して行わねばならぬ状況だった。

assignment決戦の概要

戦域1:帝国南部駐屯所跡に発生した自然ダンジョンの攻略。ダンジョンコアの破壊。
 関連NPC:アシムベート・グリオウ、ミモザ、ベラドンナ
 友軍:リザードマン部隊/敵軍:蟻型亜人、ヤコブ残党
戦域2:帝国南部駐屯所跡地の制圧と宝剣の安置。
 関連NPC:バルディオン、ヤコブ・ヴィリアン、バルディオンJr
 友軍:帝国軍精鋭/敵軍:ヤコブ残党
戦域3:難民キャンプの防衛。コボルトの攻撃とメドゥの指先からのレイウェストの護衛。
 関連NPC:レイウェスト・バルダス、エフレム、シャハロウ
 友軍:ロモズ歩兵団/敵軍:コボルト集団、メドゥの指先
選択4:ヴィント市突入と幽界樹の伐採。クリーパー対応。
 関連NPC:トマス・メルヴィン・アーチボルト、サチコ
 友軍:王国辺境伯領軍、帝国軍、ゴブリン隊/敵軍:天霧りに消ゆる幽界樹、クリーパー

assignment決戦のスケジュール

2021年6月19日 決戦シナリオ「【帝国】【CP】決戦:ヴィント奪還作戦」公開
2021年6月26日  決戦シナリオ 出発
2021年7月9日 決戦シナリオ リプレイ公開

person_pin関連NPC

帝国南部の守りを任されているハーフビースト(猪)の将軍であり、ヴァイセントラフ砦守将。皇帝直々に見出した武人であり、元近衛騎士でもあるため個人の戦闘力は極めて高い。一兵卒から騎士、近衛騎士、将軍と出世したため、平民出身の兵士やハーフビーストの憧れの的。能力あれば取り立てられるという、インペリアルドリームを体現している。

《本連動での動き》

自らが預かっていたヴィントを奪還するべく、前線へ。宿敵ヤコブが現れるであろう、帝国南部駐屯所の制圧を担当する。

リーンエス王国より【貴族喰】の異名で手配を受けている吸血鬼で、メドゥの指先の死霊術師(青の小指)。日の光を苦にしない他、伝承にあるような弱点をほぼ持たない。強力な死霊術師でもあり、リーンエス王国とその貴族制度へ一方的な憎しみを向け、本来の実力以上の死体の群れを操って侵攻を目論むも失敗。ほとんどのゾンビと複数の配下吸血鬼を失い、ヴィントに撤退した。本人は魔術師らしからぬ身体能力任せの肉弾戦を行い、当時の授恵者達を蹴散らしている。

《本連動での動き》

ヴィント市に隣接するダンジョンに居を構えていたが、連合軍の接近に際して自ら迎え撃つべく出陣した。

バルディオン将軍の愛息。昨夏の帝国の異変においてヴィント市で死亡した後、ヤコブ・ヴィリアンによりゾンビとされた。ヤコブの歪んだ認知下では「愚かな父に代わりヤコブに仕える忠義の子」と考えられており、寵愛を受けている。なお、バルディオンJr自身には知性はのこっておらず、彼の心の声と言うのはすべてヤコブの脳内妄想である。

《本連動での動き》

【死軍】にて「愚かな父の罪を濯ぐため」ヤコブに斬首された後、残る胴体も「愚かな父と戦う力を得るため」に様々な魔獣の死体を継ぎ接ぎされたキメラゾンビ。蜘蛛魔獣の胴体に狼魔獣と蜘蛛魔獣の足が生え、蟷螂魔獣の鎌が一対。少年の身体は蜘蛛魔獣の胴にめり込むように埋まっており、おもちゃの人形の頭部が載っている。

ディズル大湿地帯の最大派閥であるギシュム族の酋長。ギシュム族が泥血啜る月吸蟲を封印している一帯の管理を担うことから、大酋長とも呼ばれる。武威ばった人物ではあるが、人柄は良く義理堅い。帝国近衛騎士になったエフレムの兄貴分でもあり、マナズィールも共にしたことがある。

《本連動での動き》

先代皇帝との盟約と、【蠱毒】でのレイウェスト個人の助勢に応えるべくディズル大湿地帯のリザードマン部隊を率いて参戦した。彼自身は授恵者だが、配下の多くは一般人であり帝国の寒さは堪えているようだ。リザードマン部隊は普段から魔獣を対処している事から、蟻ダンジョンへ向かう。

ヤコブが家族愛をテーマに戯れに作った『双子の吸血鬼姉妹』。ヤコブの設定ではミモザが姉でベラドンナが妹だが、実の姉妹ではない。ミモザは身の丈ほどの巨大な弓を軽々と扱い、ベラドンナは【人形兵】など死霊術を独自のアレンジで扱うほか濃煙を発生させる。妹の方が実力は高いが挑発に容易に乗る幼さもある。

《本連動での動き》

出陣するヤコブに帯同を許されず、背後の守りに残された。優秀なベラドンナに対してミモザはコンプレックスを抱いているようだが……?

亡国となった帝国の皇族唯一の生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝とその子女である第三皇女との間に生まれた生粋の皇族である。大陸一の美姫と謳われた母譲りの長く、美しい髪と気難しげな真紅の瞳の持ち主。エフレムとともに帝都から脱出して以降、都市同盟に身を寄せて暮らしながら帝都奪還を目指して修行の日々を送る。

《本連動での動き》

帝国南部奪還の為の様々な動きが進む中、難民キャンプ訪問中に毒刃に倒れていたが、忠臣エフレムの献身的な看護により意識を取り戻した。まだ安心できる状態ではなく、難民キャンプから動くことはできない。

崩壊した帝国の皇族唯一の生き残りである皇太子レイウェストの護衛騎士。護衛騎士の中で唯一のリザードマンであること、クリーパーを召喚し支配することを得手とする《召喚術》の達人であること、そして寡黙に過ぎる性格から『語らずの智者』の異名を持つ。亡国の騎士となっても単身で各国の介入からレイウェストを守る忠義の人物。

《本連動での動き》

帝国南部奪還に際して、レイウェストより黒い霧の対処を託されていた。皇子が倒れ看護の為に前線へ出る事が叶わなくなった現状、エフレムが注ぎ込む代わりにダンジョンコアのエーテルを用いた秘宝の起動を考案する。

帝国難民キャンプと周辺のエルフの森を襲撃しているコボルト集団の長。直卒している部族は「ハリアウム」と言う精鋭。数百に及ぶ群れを統べるカリスマと人間に劣らぬ知性、コボルトの特異個体としては極めて高い戦闘力を合わせ持っている。

《本連動での動き》

メドゥの指先による有形無形の支援を受け、勢力をすり減らしつつもいまだ難民キャンプへの攻撃の意志は途切れていない。腹心たるハリアウム八武衆は最後の一人であるルンネルを残して討たれている。

リーンエス王国とシルトラース帝国の辺境を預かる王国貴族。アーチボルト辺境伯と呼ばれることが多い。王党派貴族としても知られる。ウィリアム・リーンエス第二王子とは学生時代からの腐れ縁のようだ。

《本連動での動き》

【死軍】での防衛戦に引き続き、ウィリアム王子からの依頼で自らの領軍を率いて帝国軍へ助勢している。ヴィント市への攻撃を担当。リーンエス王国の国内事情的に、王国軍として王命の元に動くことが好ましくない状況は、いましばらく続くかもしれない。

ドン・ゴーフルが擁するマフィア「ブラックデス」の幹部にして実働部隊。あくまでも現場思考のため、戦略的な思考は不得手。生活魔法以外で「実際に燃焼する炎を魔法で生み出す」という偉業を達成しているが、本人は極めてドライで、『現場仕事』にしか用いていない。

《本連動での動き》

ヴィントへ突入する幽界樹の攻略チームへの同行を強く希望した。ゴーフルからの特命であると言い、いざと言う時には役に立てると話している。

menu_book関連用語・情報

帝国南部都市ヴィント

帝国南部有数の大都市で、対王国戦略の要でもあった。二万の人口を抱えるほか、人口とほぼ同数の駐屯部隊を擁していたが、昨夏の帝国を襲った異変によって壊滅する。市民と軍はともに初期の混乱に飲み込まれて殆どが死亡した。後に、メドゥの指先の【貴族喰】ヤコブ・ヴィリアンによる死軍の材料とされ、住人と軍の死体はゾンビとされた。【死軍】ヴァイセントラフ砦での戦闘においてその9割程度が消耗している。

帝国南部駐屯所

ヴィントの郊外に広がる元帝国軍の駐屯施設。ヤコブ・ヴィリアンが拠点としているようだ。広大な訓練用の敷地と兵舎からなる区画だが、偵察によればエーテル濃度の偏重からダンジョン化が進んでいると思われる。周辺では蟻型亜人が目撃されている。
この地のエーテルが凝ったダンジョンコアを破壊することで、黒い霧を晴らすための力とする作戦が立てられている。

天霧りに消ゆる幽界樹(ミスティアニ・アストラキル)

ヴィントにそびえる大樹については、エフレムの言によれば帝都にて目撃されたものと同質であると言う。出現したタイミングと、クリーパーの行動パターンからしても、この樹木型クリーパーが帝国崩壊に大きな影響を与えたものであるのは間違いない。

黒い霧

ヴィント周辺にただよう黒い霧。行動や認識を阻害すると目されている。ある程度実力のある授恵者であれば影響を軽減できるが、一般人はそこに存在するクリーパーが見えないことすらあり、黒い霧の除去が奪還作戦には必須事項と言える。

征竜の虹宝剣

シルトラース帝国の前身シル・ウァキアが滅んだ夜に討ち取られた征竜の遺骸から得られた宝剣。別名、首刈宝剣【零の剣:虹耀】。宝物庫に安置されていた虹のように輝く頭骨を材料に首刈帝の命で削りだしたものと言われる。戦時における皇帝の佩剣とされるが、紛失を恐れ実際に戦場へ持ち出された例は数えるほどしか記録されていない。帝国滅亡に際してエフレムがこっそり持ち出していた。
クリーパーを滅する征竜の力が込められた剣の力は幽界樹にも届くと言い、エフレムがレイウェストを帝位継承者として登録した。大量のエーテルを用いれば黒い霧を晴らす力を持つ。

帝国難民キャンプ

帝国を襲った異変から逃れた難民達の一部が暮らす場所。王国北部の廃村などに住み着き、冒険者たちの助力を得ながら徐々に自給できる体制を整えつつある。不安定な人心や立場から、メドゥの指先に狙われる事もあるようだ。近隣のエルフと一時はトラブルになりそうだったが和解した。周辺に現れていたコボルトの群れは冬の間に撃退したが、春になり再び凶暴なコボルトの群れの南下に脅かされている。

ロモズ歩兵団

難民キャンプの住民たちから元帝国貴族リーヴァー・シュランドルが組織した義勇兵。鍛えられた正規兵には及ばぬものの、冒険者たちの助力もあり民兵でありながら集団作戦行動を行える。

●帝国難民キャンプ
 筋肉は減って痩せ衰え、瑞瑞(みずみず)しかった唇もかさかさだ。
 無残な有様なのに退廃的な美しさがあり、冒険者や護衛騎士でないと邪な思いを抱いてしまいそうだった。
「ぁ」
 かすれた音が微かに響く。
 意識はまだ戻らず、しかし目覚めの前触れだ。
「入るぜー!」
 ささやかな兆(きざ)しはドアを乱暴に開ける音で聞こえなくなる。
 小柄な体で大きな水瓶を運んで来たリット(難民少年)が、清潔ではある布を水につけて乱暴にしぼり飛沫を撒き散らす。
 そして、長い睫毛も整った顔立ちも色気香る肌も全く気にせずテキトーに拭き始めた。
「んんー?」
 布越しに変な感触(唇の動き)を感じてリットが首を傾げる。
 おねーちゃん好きな彼にとって、いくら超絶美形でも男は男でしかない。
「水に虫でも入ってたかなぁ」
 こんな言動だが悪意はない。
 極限の人材不足の状況で、帝国皇子の護衛達は裏切りの恐れだ(・)け(・)は(・)絶対にないリットを仕方なく使っていた。
「あの、子は」
 倒れる前には麗しかった声も枯れ果てている。
「?」
 皇子に問われたリットは戸惑っている。
 額をごしごしこするのを止めることを思いつかない。
「あの子は、無事か」
 第一声が他者を気遣う言葉であった。
「遠い所へ行ってるぜ?」
 実行犯(騙された子供)のことだと気付き、リットが何も考えずに返事をする。
 紅の瞳が見開かれ、わずかに残った力で奥歯がかみしめられた。
「失礼」
 知らされるまでもなく皇子の回復に気付いた護衛騎士(エフレム)が、開きっぱなしのドアから入ってベッドの側に跪く。
「口を開けてください」
 脈をとり体温も測り眼球の動きも確認。
 口内の確認まで終えてから、初めて安堵の息を吐いた。
「エフレム、私は、」

「まずは、回復にご専念を。全てはそれからです」
「だが」
 体を起こそうとするレイウェストを、鱗に覆われた掌が静かに押し止める。
「殿下は一ヶ月以上意識不明でした。意識を取り戻されたとはいえ危険な状態です」
「……そういうわけにもいかない」
 両者ともに折れず、不穏な沈黙が発生したタイミングで、布を放り出して部屋から出ていたリットが戻ってくる。
「おっちゃーん! 重湯貰ってきたぜー!! はいあーん」
 シリアスな主従(皇子と騎士)と日常のままのリットの温度差が凄まじいがどちらも重要だ。
 レイウェストの体は飢えて栄養を求めている。
 口に突っ込まれたスプーンから零れた汁が、何よりも美味に感じられた。
 危険なほど白かった肌に、微かに赤みがさすのを横目に、エフレムが口を開いた。
「リット殿」
「えーっと、ひとっ走りしてねーちゃん達(難民キャンプ指導層)や砦に伝えりゃいーんだっけ?」
 エフレムがうなずく。
 リットは皿とスプーンを少し離れたテーブルに置き、全力で走り出そうとしたが、
「待て、報告せよ」
 レイウェストの声が掛かる。弱りきってはいるが皇族としての威(迫力)に、帝室尊崇の念がない(スラム生まれでスラム育ちの)リットが無意識に畏まる。
 エフレムは、冒険者が集めた情報と実行犯(騙された子供)の尋問結果をを要約して話す。
 主犯はメドゥの指先。
 難民キャンプを脅かすコボルト達に武装を与えたのも、コボルト達を煽動し難民キャンプをけしかけたのも同じ幹部達と思われる。
 そして、ヴィント奪還作戦のために多くの戦力が引き抜かれたキャンプからは、女子供を中心に砦やエルフ集落、王国の一部都市へ避難が行われた。
「そうか」
 レイウェストの瞳に強い光が灯る。
「私の快復を大々的に宣伝せよ」
 リットがぎょっとする。
 精神が快復しても皇子の体はまだ死にかけだ。
 流れ矢1発で死にかねない状況で囮をするなど危険過ぎる。
「冒険者は優秀だ。難民キャンプに守るべきものが少ない今が最大の好機だ。指先どもを釣り上げる」
 言葉に、先程安静を求めたはずのエフレムは平静そのものだった。止めねーのかよ、とリットの視線を知ってか知らずか、エフレムは黙礼の後、
「それが、殿下の望みとあらば」
 と言うにとどめた。
「っ」
 そこが、体力の限界だった。
 レイウェストは声を出すのも苦しくなり、ベッドの上で乱れた呼吸を整える。
「お、俺、伝えてくる!!」
 リットは、自分自身が何に圧倒されたのか分からないまま勢いよく駆け出した。

(執筆:馬車猪)

●帝国南部
 ヴィント郊外、帝国南部駐屯所の一角を占める|蟻の巣(ダンジョン)へ向かう連合軍の前に、因縁深きあの男が立ちはだかる。

「おお、愚かなりバァルディオン! この場所から始まる新たなる世界の芽吹きが! 可能性が!! アナタには、まぁだ見えないというのですか!!」

 大げさな身振りと共に、指先を突き付けるヤコブ・ヴィリアンの背後には、子飼いの吸血鬼と共に巨大なゾンビが一体鎮座していた。魔獣の継ぎ接ぎじみたゾンビには、幼い少年の身体が埋まっている。その異形こそ、バルディオン将軍の愛息、ティオルの成れの果てだった。

「……ヤコブ。この外道めが……」
「このワタシを貶めるために卑劣な策をめぐらしたアナタに言われたくはありませんねぇぇぇ!」

 死後も弄ばれる我が子の姿を見て、将軍はぎりりと歯を鳴らす。吸血鬼はいちいちポーズを変えながら言い返した。

「ワタシの偽物まで用意した愚かな所業、全て見通したワタシにはまっったく!! 響きはしませんでしたが!!!! そこまで歯向かうのならば挑戦に応じて上げましょう。そう、この世界の新たな可能性を守るために!!!」

 ヤコブの言う世界の可能性とはたぶん蟻亜人と奇跡的に共存できている事なのだろう。偶然による現状を、ヤコブの肥大した自我は都合よく解釈しているようだ。無論、連合軍側にしてみれば蟻亜人との共存など望みはしない。蟻共は元々帝国のものだったこの地を奪った侵略者に過ぎないのだから。

「おのれ、ヤコブめ。だが全軍の作戦指揮を疎かにするわけにはいかぬ」

 吸血鬼を討つのは私怨。将軍は我意を押し殺そうとするも。此度の戦は彼以外にも優秀な指揮官がいた。事情を知る者達は、同情をそのまま表しはせずにただ彼の隣に立つ。

「将軍。僭越ながら提案したい。ヴィントへの攻撃は私が指揮を執ろうと思うのだが」
「リザードマンにとっては吹きさらしの露天よりは蟻の巣穴の中の方が幾分、過ごしやすいやもしれぬな」

 作戦計画時、かつて国境を隔てて睨み合う仲であったトマス・メルヴィン・アーチボルト辺境伯がそう申し出、リザードマン部隊を率いてきたアシムベート・グリオウも別方面を担当することを申し出ていた。

「……感謝いたす」

 身の丈よりも巨大な大斧を手に、猪の獣人が吠える。

「我が名はバルディオン! 帝国を侵す敵を討つ鉾なり! 弄ばれた数多の市民の魂の安息の為! 志半ばで散った同胞の無念を晴らす為! 我が愛息、ティオルの為に! 悪しき吸血鬼、ヤコブ・ヴィリアン! 貴様を討つ!」
「なぁ!? な、な……お、お前達! Jr! 何をしているのですか! あれを防ぐのですよ!」

 将軍の檄と共に直属の帝国軍が剣を突き上げ、思わず後ずさったヤコブが悲鳴を上げる。王国からの援軍と共に帝国軍主軸は【黒い霧】が晴れる時を待ち、リザードマンらは迂回して蟻の巣へと向かうようだ。冒険者たちもそれぞれの想いに沿った行動を開始する。

 ヴィント奪還作戦の始まりだ。

(執筆:紀藤トキ)  
【帝国】帝国奪還連動 南部編1/決戦 /エピローグ/特別褒賞/エピローグ2
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0