【蠱毒】帝国奪還連動 ディズル編 2

Talara
リザードマン、子供、攫われた。
子は宝、稲穂の苗、大切なもの。
Talara、奪われた子供、取り返した。
でも犯人、だんまり。不穏。
ドーマ・アザーリ
オレもリザードマンの集落で卵が無くなった、っていうから取り戻してやったんだがよォ。
どうにもクセェんだよな……背後に何かある匂いがプンプンしてやがる。
こそこそと悪事を働きやがって……気にくわねェな。
『泥血啜る月吸蟲』の捜索が進むディズル大湿地帯に、不穏な動きがあるようです――
(3月8日 【蠱毒】関連シナリオリリース開始!)
●
ディズル大湿地帯で封印地帯を管理するギシュム族、その集落でも一際大きい建築物。
その高床式の木造建築の中で、三人が顔を突き合わせて話していた。
「どうであろうか、冒険者たちの働きは」
「お主の言った通り、期待にたがわぬ働きを見せておる」
シルトラース帝国の皇子レイウェスト・バルダスが水を向けると、ディズルの大酋長アシムベート・グリオウが大きくひとつ頷いた。
そして三人目、レイウェストの護衛騎士エフレムは、二人の会話に口を挟むことなく、ただ静かにたたずんでいた。
「儂の頼みで、ベズイの者たちを説得したのも、他ならぬ冒険者たちだ」
アシムベートは、ギシュム族に対し不服を申し立てていた部族の説得を、冒険者たちに任せていたのだ。
「封印地帯の捜索にも、冒険者たちは力を尽くしてくれている」
一方、レイウェストも自ら冒険者を連れて封印地帯に赴き、雲霞鳥の掃討を行っていた。
「捜索の過程で、結界の強化に役立ちそうな石材も回収されているようだな。物資の輸送路の安全も確保されたようなので、結界の補強も捗るだろう」
レイウェストは三人が取り囲むテーブルに置かれていた報告書の束を手に取り、一枚一枚めくりながら、目を通していく。
「そればかりか、戦力の育成、危機に瀕した少年の救出など、その活躍は幅広い」
アシムベートは、どことなく満足げに語る。
「手芸品の流通が正常化した、というのも儂らリザードマンの生活にとって大きいだろう」
そのように話すアシムベートがちらりと見やった背後には、リザードマン自慢の鮮やかに彩られた手芸品が飾られていた。
「……兄者、これを」
すると、それまで押し黙っていたエフレムがこの場で初めて口を開き、アシムベートへ報告書の束を差し出した。
「封印地帯の結界に破壊工作……か」
報告書を受け取ったアシムベートが、眉間にしわを寄せる。
「その場にいた相手は冒険者たちが倒しましたが……それだけではありません」
途切れ途切れの言葉だが、これでも寡黙なエフレムにしては饒舌になっているほうであろう。
それだけエフレムにも訴えかけたい何かがある、ということだ。
「子供の誘拐に……卵の盗難、だと」
アシムベートの眉間に刻まれたしわが、一段と深くなる。
「冒険者が居合わせた事件こそ解決しましたが……未だ行方の知れない子供や卵も、多く」
物静かなエフレムの言葉からは感情の色を窺い知ることは難しいが、危機感を覚えていることは状況的に窺える。
「卵……まさか――」
腕を組んで低く唸ったアシムベートが続けようとする言葉を聞き洩らすまいと、レイウェストも聞き入っていた――。
●
「ラスリャマス?」
レイウェストが、自らの聞き取った言葉を確認するように、アシムベートへと問い返す。
「ああ、恥ずかしながら、かつて我がギシュムに居た者の名だ」
アシムベートの説明によると、ラスリャマスはギシュム族に生を受けたリザードマンの一人であるらしい。
しかし、かつて、と語られたように、ラスリャマスは今、ギシュム族の中に居ない。
「奴めは同胞の卵を生贄にして魔術の実験をしおったのだ」
思い出すのも忌々しいとばかり、アシムベートは表情をいっそう険しくする。
「そのような大層な真似をした者を、処刑しなかったのか?」
レイウェストが尤もな疑問を口にした。
「無論、儂も奴めを討とうとしたさ。しかし、儂の剣をもってしても奴めの左目を奪うのがやっと、まんまと逃げられてしもうたわ」
アシムベートは悔しそうに歯噛みする。
武威に優れたギシュム族、酋長であるアシムベートもまた武人である。
一介の魔術師であったはずのラスリャマスが、アシムベートに対峙して逃げ果せるだけの力があった、というのも不思議な話だが――。
「おそらく、ですが……ラスリャマスは生贄を用い、自らを強化したのでしょう」
ここで、再度エフレムが重い口を開き、魔術に明るい者としての意見を述べる。
「なるほどな。しかし、そのラスリャマスという者は、もともと組織力を持たぬ、一個人だったのであろう?」
再び、レイウェストが疑問を投げかける。
「うむ、なので儂の思い過ごし……という可能性もあるが、あの後、奴めが強力な後ろ盾を得た可能性も否定できぬ」
「後ろ盾……」
アシムベートの言葉に、レイウェストが顎に手を当て、考え込む仕草を見せた。
ただアシムベートの予想が思い過ごしであればいい……という話でもない。
首魁が何者であるにせよ、事件が確かに起こっている、というのは覆しようもない事実だ。
レイウェストは胸の奥が冷え込んでいくような、嫌な予感をぬぐえなかった。
執筆:空色みなも
ディズル大湿地帯で封印地帯を管理するギシュム族、その集落でも一際大きい建築物。
その高床式の木造建築の中で、三人が顔を突き合わせて話していた。
「どうであろうか、冒険者たちの働きは」
「お主の言った通り、期待にたがわぬ働きを見せておる」
シルトラース帝国の皇子レイウェスト・バルダスが水を向けると、ディズルの大酋長アシムベート・グリオウが大きくひとつ頷いた。
そして三人目、レイウェストの護衛騎士エフレムは、二人の会話に口を挟むことなく、ただ静かにたたずんでいた。
「儂の頼みで、ベズイの者たちを説得したのも、他ならぬ冒険者たちだ」
アシムベートは、ギシュム族に対し不服を申し立てていた部族の説得を、冒険者たちに任せていたのだ。
「封印地帯の捜索にも、冒険者たちは力を尽くしてくれている」
一方、レイウェストも自ら冒険者を連れて封印地帯に赴き、雲霞鳥の掃討を行っていた。
「捜索の過程で、結界の強化に役立ちそうな石材も回収されているようだな。物資の輸送路の安全も確保されたようなので、結界の補強も捗るだろう」
レイウェストは三人が取り囲むテーブルに置かれていた報告書の束を手に取り、一枚一枚めくりながら、目を通していく。
「そればかりか、戦力の育成、危機に瀕した少年の救出など、その活躍は幅広い」
アシムベートは、どことなく満足げに語る。
「手芸品の流通が正常化した、というのも儂らリザードマンの生活にとって大きいだろう」
そのように話すアシムベートがちらりと見やった背後には、リザードマン自慢の鮮やかに彩られた手芸品が飾られていた。
「……兄者、これを」
すると、それまで押し黙っていたエフレムがこの場で初めて口を開き、アシムベートへ報告書の束を差し出した。
「封印地帯の結界に破壊工作……か」
報告書を受け取ったアシムベートが、眉間にしわを寄せる。
「その場にいた相手は冒険者たちが倒しましたが……それだけではありません」
途切れ途切れの言葉だが、これでも寡黙なエフレムにしては饒舌になっているほうであろう。
それだけエフレムにも訴えかけたい何かがある、ということだ。
「子供の誘拐に……卵の盗難、だと」
アシムベートの眉間に刻まれたしわが、一段と深くなる。
「冒険者が居合わせた事件こそ解決しましたが……未だ行方の知れない子供や卵も、多く」
物静かなエフレムの言葉からは感情の色を窺い知ることは難しいが、危機感を覚えていることは状況的に窺える。
「卵……まさか――」
腕を組んで低く唸ったアシムベートが続けようとする言葉を聞き洩らすまいと、レイウェストも聞き入っていた――。
●
「ラスリャマス?」
レイウェストが、自らの聞き取った言葉を確認するように、アシムベートへと問い返す。
「ああ、恥ずかしながら、かつて我がギシュムに居た者の名だ」
アシムベートの説明によると、ラスリャマスはギシュム族に生を受けたリザードマンの一人であるらしい。
しかし、かつて、と語られたように、ラスリャマスは今、ギシュム族の中に居ない。
「奴めは同胞の卵を生贄にして魔術の実験をしおったのだ」
思い出すのも忌々しいとばかり、アシムベートは表情をいっそう険しくする。
「そのような大層な真似をした者を、処刑しなかったのか?」
レイウェストが尤もな疑問を口にした。
「無論、儂も奴めを討とうとしたさ。しかし、儂の剣をもってしても奴めの左目を奪うのがやっと、まんまと逃げられてしもうたわ」
アシムベートは悔しそうに歯噛みする。
武威に優れたギシュム族、酋長であるアシムベートもまた武人である。
一介の魔術師であったはずのラスリャマスが、アシムベートに対峙して逃げ果せるだけの力があった、というのも不思議な話だが――。
「おそらく、ですが……ラスリャマスは生贄を用い、自らを強化したのでしょう」
ここで、再度エフレムが重い口を開き、魔術に明るい者としての意見を述べる。
「なるほどな。しかし、そのラスリャマスという者は、もともと組織力を持たぬ、一個人だったのであろう?」
再び、レイウェストが疑問を投げかける。
「うむ、なので儂の思い過ごし……という可能性もあるが、あの後、奴めが強力な後ろ盾を得た可能性も否定できぬ」
「後ろ盾……」
アシムベートの言葉に、レイウェストが顎に手を当て、考え込む仕草を見せた。
ただアシムベートの予想が思い過ごしであればいい……という話でもない。
首魁が何者であるにせよ、事件が確かに起こっている、というのは覆しようもない事実だ。
レイウェストは胸の奥が冷え込んでいくような、嫌な予感をぬぐえなかった。
執筆:空色みなも