古砦都市シャルトの復興

七海真砂

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シナリオID:3424

オープニング

 南部鎮守都市ヴィントへの凱旋からしばらく。クーネさんこと『首刈帝』クジンリーネ・バルダスは、『現皇帝』レイウェスト・バルダスの執務室を訪れていた。
「しばらくシャルトに住もうと思うのだが、構わないだろうか」
「シャルトへ?」
 帝都シルトラース奪還戦の後方拠点となったシャルトは、幽界樹の出現によって廃墟と化した都市である。
 拠点化するにあたって、かなり整備はされたが、まだまだ『住むのに快適』とは言い難いだろう。
 何故わざわざ……という視線を受け止め、クジンリーネは頷いた。
「うむ。わらわが素性を明かしたことで、禄でもない考えを持つ者が出ないとも限らない。そういう面倒な連中が、ヴィントに集まって来るのは良くないだろう?」
 つまりまあ、要するに『クジンリーネ・バルダスを玉座に!』などと掲げようとする連中を、できるだけここから遠ざけようと考えてのことらしい。
 かといって、北部鎮守都市オルセンに向かうというのも難しい所だ。オルセンを束ねているマフダル一族のクジンリーネへの忠誠は篤いし、住民からも歓迎されるだろうが、こちらはこちらで、面倒な勢力が現れかねないとクジンリーネは危惧しているようだ。
「そこで、シャルトだ。シャルトはこれから移住者を募り、本格的な復興を始める予定だと聞いた。面倒臭そうな連中は、いっそ労働力として活用しようじゃないか」
 なるほど、そう来たか、とレイウェストは瞬いた。おそらくクジンリーネに忠実な者は重用される――もとい、こき使われる――に違いない。
「シャルトは『クジンリーネが愛した都市』として伝わっているそうだから、わらわが住んでも違和感を持たれにくいだろうしな」
「伝わっている……ということは、実話では無いのですか?」
「どうだろう。もう、そういうのは曖昧になってしまった。ただ……」
 超越者ゆえに、都市への思い入れも曖昧になっているらしいクジンリーネが、少しだけ懐かしそうに目を細めた。
「……お祖父ちゃんは、シャルトから眺める夕陽が好きだった。だから、きっとわらわも好きだったのだと思う」
「お祖父ちゃん……イェーラウ帝ですか」
 建国王イェーラウ・バルダスとのエピソードを思いがけず耳にして、レイウェストも微笑む。

●古砦都市シャルトの復興
 帝都シルトラース奪還戦の事後処理を終えたシャルトには、およそ二百名の兵士が滞在していた。
 警備のため、だけではない。奪還戦で重傷を負い、シャルトから動くことができないまま、ずっと治療所に滞在し続けている者もいる。
「すまんな、わらわは話相手になることくらいしか出来ん」
「いえ……」
 シャルトに到着したクジンリーネは、治療所にいる兵士達を真っ先に見舞っていた。今も思うように動けない事を不甲斐なく思っている様子の彼らを、精一杯励まして、次に執務室として使われている小屋を訪れる。
「うう……くじんりーね様……」
「くたびれているな、アンゼリカ」
 そこには、仕事に追われてゲッソリしている文官のアンゼリカがいた。
 無理もない。移住者の対応や、復興の準備で大忙しなのだろう。
「何か手伝おうか?」
「で、では……冒険者ギルドに、助っ人を、呼びに行っていただけませんか?」

 シャルトが今抱えている問題は、大きく分けて三つある。
 一つ目。
 家の準備が間に合わない。
「とりあえず、奪還戦の折に治療所や食堂として使っていた小屋を使い回す事になるでしょう。ある程度プライベートが保てるように、壁や間仕切りなどを設けたいのですが……」
「なるほど。その作業をしてくれる助っ人が欲しい、というわけか」
 移住者はごくごく普通の一般人。そのような作業に慣れている者など、ほとんどいない。作業を指揮してくれる者はもちろん、手伝ってくれるだけでも非常に有難い、というわけだ。

 二つ目。
 農場の準備が間に合わない。
「移住される方には、畜産農場や作物栽培農場での仕事に従事していただく予定……なのですが……」
「……農場らしき場所が見当たらないな」
「はい。準備が間に合っておりませんの……」
 畜産農場には小屋を使い回すとしても、やはり壁や仕切りを設けたり、干し草や道具を運び込むといった作業が必要になるだろう。
 作物栽培農場となると、地面をある程度整えておかなければならない。瓦礫の山こそ片付いたものの、荒れた地面そのままでは種まきなど出来るはずがない。
「なるほど。こちらもある程度、皆を取りまとめて作業をする必要があるな」
 冒険者にその役目を頼みたいというわけだ。

 三つ目。
 旅の商人など、外から来る者への対応が間に合わない。
「備蓄も何もありませんから、あちこちの商人の方に来て頂けるようお願いしております……が……店を開いていただくスペースなどを用意しておかなければ……」
「マトモに取引ができない状態では確かに困るな」
 宿はやっぱり小屋を転用するにしても、だ。旅の商人が露店を開けるような、そんな場所の整備などが必要になって来るだろう。
「広場や公園を整備するようなイメージだろうか」
 クジンリーネの言葉にアンゼリカは頷き返す。
「作業の最中にも、商人の方がいらっしゃるかもしれません。その対応も、お願いしたいのですわ」

●シャルトに住みませんか?
「それと……」
 一緒に、この募集告知を出して欲しい、とアンゼリカは一枚の紙を取り出す。
「移住者募集? ……冒険者向けか?」
「はい。シャルトは帝国の中でも復興が始まったばかり、言ってしまえば何も無い所ですが……」
 逆にそれを良いと思ってくださる方がいるなら、ぜひいらして欲しい、とアンゼリカは言う。
 今なら、土地はよりどりみどり。大通りに面した店(になる予定の場所)の主になることもできるし、シャルトで一番便利な所にある農場(になるはずの場所)の主になることもできるだろう。
「なるほど。実はレイウェストから、シャルトの武官や文官について、適任者がいたら推薦して欲しいと言われている。その辺りの事も追加しておこう」
 この場合は帝国軍人として帝国に就職し、シャルトへ赴任するという形になるだろう。
「帝国の法を学ぶような意気込みがあり、帝国への忠誠心があるような人材であれば、市長になることすら可能だろうが……」
「市長? ああ、代官のことですわね」
 帝国代官としてシャルトを統治する者が現れてくれれば、更にシャルトの生活は安定したものとなるだろう。
 だが、果たして、そのような人物がシャルトに来てくれるかどうか。
「ひとまず募集だけはしてみましょう。クジンリーネ様」
「そうだな」

 こうして、シャルトからの助っ人&移住者募集の告知が出たのだった。

解説

 このシナリオは、シルトラース帝国の都市の一つ『古砦都市シャルト』を舞台にしたエピローグシナリオです。  まだどこかに征竜がいるかもしれないと、シャルトでそれに備える事に決めたクジンリーネと、シャルト復興のお手伝いをしませんか?  依頼の内容は主に三つですが、それ以外にも復興の役に立ちそうなお手伝いは喜ばれるでしょう。  そして、シャルトでは移住される冒険者の方を大歓迎!  帝国に家や店や工房や農場などなどを持つことにした皆さん、シャルトはいかがでしょうか? 結構融通の利く、良い意味で自由度の高い土地だと思われます!  また、このシナリオは、帝国軍に就職を希望することが可能なシナリオです。  採用の条件はクジンリーネおよびアンゼリカの面接に合格すること。帝国軍は基本「誰でもウェルカム」状態ですので、よっぽどが無ければ受かります。プレイングに【帝国軍就職希望】あるいはそのように理解できる文言が記載されており、条件を満たしていた場合、称号を付与いたします。  細かい配属、役職は適性や経歴などを踏まえて決定いたします。なんならクジンリーネ相手に実技でアピールするとかしてください。実力があれば、重要ポストに就くこともできる、それが帝国です。  そして、このシナリオでは帝国代官として『シャルト市長』と呼ばれる地位や、それに準ずる地位に就くことも可能です。  条件はクジンリーネに認められ、レイウェストへの推薦を得ること。基準はオープニングの通りです。こちらはプレイングに【市長希望】あるいはそのように理解できる文言が記載されており、条件を満たしていた場合、称号を付与いたします。

マスターより

 こんにちは、七海真砂です。  古砦都市シャルトの復興、よろしければお力を貸してください。  短期滞在も長期滞在も歓迎です。お待ちしております。

リプレイ

「どこも大変なのは戦後の方だよな。できることはやっておこうか」
「おう。というわけで……」
 ヨル・スレイマンとナハシュは頷き合うとゲルを立てた。
 そして家庭用本格サウナキットを展開する。
「休憩は大事だからな! 風呂代わりにもいいぞ」
 サウナを見たことが無い者達も、体を温めるものだと聞くと、なるほどと頷いた。冬の帝国は冷える、暖を取れるものは有難い。
「休憩は、もうローテーションを組んでしまおう」
「そうだね、その方が見落としも出にくいだろう」
 ディレイン・オールドケイジとヨルは一緒になって、それぞれの作業に携わる人々のシフト表を作り上げる。あとはこれに沿って、皆がしっかり休憩を取っているかどうか気を配りつつ、作業を進めていけば大丈夫だろう。
「都市計画はこうなっているそうだから……」
「農場は、この一帯ですね。了解です!」
 区画整備の為に用意された地図をロゼットが広げる。トーラは必要な部分を書き写すと、すぐに農場での作業を担当する人々へ呼びかけた。
「それじゃあ、必要な材料を運ぶことから始めましょう!」
「よろしく頼む」
 トーラの下には、クジンリーネに惹かれてやって来た者達が多くいる。クジンリーネが一言添えると士気が上がったようで、その勢いは他の人々にも伝わっていく。
「俺達も負けてられないね。始めようか」
 ヨルは住宅の準備に携わる人々に呼びかける。間仕切りに使う資材は、他の建物から再利用する方針だ。シートを広げた一角にレンガを運び、土埃を落として建物の中へ運ぶところから始める。
「この部分は紐で補強して、丸ごと運んでしまおう。いいかい?」
「はい!」
「3、2、1、せーの!」
 重量がある物は、十分な人数で協力して運んでもらう。皆、自分達の住む場所になるものだからか、丁寧かつ気合を入れて作業にあたってくれていて、進み具合は順調だ。
「じゃあ、こっちは釘を打って固定していこう」
 釘の打ち方は……と実演していくと、作業の出来栄えには差が出てくる。焦らなくていいから、確実に釘を打ち込むようにしていこうと伝えつつ、上手な者にはしっかりめにコツを伝えて。
「うんうん、上手いね。そしたら君に手本になって貰おう」
 一人は前に出て貰って実演して貰い、あとの者は釘打ち作業が苦手そうな者の隣に入って貰い、サポートをお願いする。そうして全体が上手く回るように試みながら、ヨルはまた別のグループを見て回る。
(あそこはそろそろ休憩のタイミングだね)
 まだまだ先は長い。しっかり休みながら作業をするように、と呼びかける事も忘れない。

「道具と飼料の保管も考えると、間取りはこんな感じでしょうか」
 畜産農場の小屋として使う予定の建物を確認すると、トーラはざっくり図面を引いた。それを元に、こちらの小屋でも仕切りの取り付けが始まる。
 木の板や、使わなくなった柱を再利用して、釘を打ちつけていく。と、
「隙間は埋めた方がいいですかね?」
「ここは逆に隙間を生かして、在庫管理がしやすいようにしちゃいましょう」
 目線が通るようにしておけば便利な事もある。トーラは飼料を積み重ねた位置をイメージするように立つと「私が見えますか? 見えるように仕切りを付けてください」と、背の低さを生かして指示を出す。
「じゃあ、今ある道具を運び込んでしまいましょう」
 小屋が出来上がると、早速道具を運び込みにかかる。荷物を積み込んだ荷馬車を引くのは、トーラが連れてきたビヒモー、ムームーだ。
「ムームー頑張ってね!」
 呼びかけに応えるようにムー! と鳴き、荷馬車をゆっくり運ぶムームー。搬入口を通ってムームーが止まると、皆で一気に荷物を下ろして片付けていく。
「後は農場の整備ですね」
 ディレインさん達を手伝いましょう、と合流に向かうと、ディレイン達はまさに開墾の真っ最中だった。
「麦を植えるにしろ、野菜を植えるにしろ、果物を植えるにしろ、まずはこの瓦礫を何とかしないといけないからね」
 ざっと見回し、一帯で最も大きな瓦礫から順番にエーテルブローで叩き割ったディレインは、その残骸や破片を皆と一緒に運び出していた。
「日当たりを考えると、果樹園はこの辺りかな」
「なら向こうがメロン畑だ!」
「トウモロコシだよ!」
 皆で口々にあれを植えたい、あれを育てたい、と収穫の日を夢見て語り合いながらだと、大変な作業も少し楽しく感じる……ような気がする。
「目印の柵を立ててみようか」
 農地全体を区切るには資材が足りないけれど、目印を付けるくらいなら何とかなりそうだ。最初に麦を植える予定のエリアの隣に一つ、その少し隣にまた更に一つ……目印が立つと、ますます実感が湧いてくる。
「幽界樹が倒れたことでエーテルの枯渇は止まったはずですし、頑張れば頑張っただけ実りが期待できますよ!」
 トーラの呼びかけに、豊作への期待は膨らむ。
「じゃあ次は、トマトエリアの片付けに取り掛かろう」
「はい!」
 交代で休憩を取りながら、コツコツ地道な作業は続けられていく。

「土地はざっと綺麗になったか。後は整備だな!」
 同じように瓦礫の撤去に取り掛かっていたナハシュ達は、商業スペースの整備に取り掛かった。
「馬車や馬を停めておけるスペースだろ、それから売り場として使えるスペース。売り場の方には台を置いて、あと屋根を付けておきたいところだな」
「雨除けですか?」
「おう! 日差しも避けられるから便利だろ。商人が来てるっていう目印にもなる」
 売る側にも、買う側にもメリットがある。なら取り付けて損は無いだろうというナハシュの言葉に、皆がなるほどと頷く。必要な木材は、農場方面のメンバーに相談して必要な量を回して貰い、屋根には布を掛ける形を取る。
「飼料と干し草ですね、ありがとうございます」
 その間にやって来た商人にはロゼットが応対する。農場で必要な物に関しては、運搬の手間を鑑みて、荷馬車でそのまま農場まで入って貰って取引を行う。初期費用はシャルト全体の予算から、ということで、ロゼットが預かっておいた財布から出す。
「うちは野菜と、あと調味料をいくらか。食料を扱う商人は他に来てる?」
「今はまだ。もしいらっしゃったら隣に来て貰いますね。相乗効果で売れるかもしれません」
 ナハシュ達が作った台は、さっそく野菜を並べて売るために使われていった。
(このスペース全部に商人がやってきて、それから店が出来上がったら……)
 露店となるスペースは、後々商店街になる予定の通りの一角にある。その全部に店が入れば、さぞ賑やかな風景になることだろうと、ロゼットは想像する。
「これから帝都の復興にあわせて物流の拠点になるでしょうし、賑わっていくでしょうね……」
 大きな都市となったシャルトの姿を想像しながら、その為の土台作りがしっかりできるよう気張らなくちゃね、と、ロゼットは次にやって来る荷馬車の方へと向かう。

 皆が露店を覗ける時間を取れるように、陽が落ちるよりも少し早くに作業を終了させると、冒険者達は作業の進捗状況を確認し合いながら翌日のプランを練る。
「整った住居は清掃したら早速使って貰おうか」
「割り振る順番を考えねえとダメだな。どうする?」
「家族連れを優先する? それでも順番を考えないといけないけど……」
「他のものとあわせて考えるのはどうでしょう? 大部屋の人は、休憩を少し多くするとか」
「ああ、なるほど。バランスは取れそうだね。じゃあ希望を聞いてみよう」
 作業が進めば、それに応じて考える事も増える。それらに対応しながら夕食を取ると、
「――考えることは一緒だね」
「そうね」
 ディレインとロゼットが出くわしたのは治療所の前だった。作業を一通りこなして訪れるとなると、タイミングはどうしても朝か夜になってしまう。
「トーラは朝来てるみたい」
「ヨル君もだよ。衛生管理が大事だから……って、朝一番で洗濯やってくれてる」
 医療器具類の煮沸消毒も一緒にやってくれているようで、最初に手順に誤りが無いか尋ねられたことを思い出す。ディレインが夜の治療の前に、と器具の消毒を行う間に、ロゼットは休んでいる兵士達にヒールを掛けて回る。
「傷、落ち着いたみたいかしら?」
「はい、大分良くなってきました」
 ロゼットが診て回るのは比較的軽傷の兵士達。彼らが少しでも早く仕事に復帰できるように、と癒しのエーテル光を重ねていく。
 一方、ディレインが診るのは比較的重傷の兵士達だ。
「今日はね、どんな作物を育てたいか、って話で盛り上がったんだよ」
 薬草を煎じて作った塗り薬を患部に当てつつ、まだあまり口が利けない状態の兵士に語りかける。『これから』を意識することは、きっと回復の力になってくれるはず。だから、意識して『先』のことをディレインは話しかける。
「帝国の冬は長いけど、まずは菜の花や苺が採れたら楽しそうだよね、なんて」
 ――その頃には、きっと君の傷も良くなってきているはずだよ、と。
 想いを込めて包帯を巻くディレインに、兵士が相槌を打って返す。
(薬草類も自前で育てられればいいんだけど……まあ最初は食べるものだよねえ)
 その余裕ができる頃、時間が取れたら今度は薬草の育て方を教えに来ようか、と頭の片隅で考えながら、ディレインはまた、次の兵士へと呼びかけながら手当てをする。

「……っし! 商業スペースの整備は、こんなもんでいいだろ!」
 ナハシュ達が必要な作業を終える。作業に従事していた者達は、達成感に満ちた顔で歓声を上げた。
「打ち上げ……って言いたいところだが、他の作業がまだまだあるからな。そっちの加勢に行こうぜ」
「はい!」
「どっちに行きましょう?」
「そうだな、まずは住む所……ああ、でもいっそ」
 同じ方法で、仮の宿屋を整備しようとナハシュは言う。商人達には今のところ、大部屋の一角を使って貰ったり、荷馬車でそのまま休んで貰ったりしているが、宿があるならそれに越したことは無いだろう。
「ちょっと前に羊、入って来たよな。あの毛皮貰おうぜ」
 板、毛皮、板と重ねれば、クッション材の入った壁が作れる。ただ板を使うよりも、防音性のある壁にできるはずだ。さっそく毛皮を使って、壁を組み立てていく。
「なるほど、考えたね」
「だろ?」
 様子を見に来たヨルに、ナハシュは得意げに笑う。あとはヨル達に倣って清掃を済ませれば、宿として使えるだろう。
「じきに、この宿がいっぱいになるくらい賑わうんだろうね」
「その頃には、ちゃんとした宿を建てる余裕もできてるだろうし、いい感じの店もいくつか出来てるんだろうな」
 そうすれば街はどんどん広がっていくはずだ。何年かしたら、きっといい感じの景色が広がっているに違いない。
「次は観光にでも来るか」
「いいね」
 住居の方が一区切りついたら、シャルトを発つにはちょうど良いタイミングだろう。あとは、ここで暮らしていく人々の頑張り次第だ。

「これ、備蓄品を買うのに預かっていた財布。お返しするわ」
 シャルトの予算を預かっていたロゼットは、行商人が来るたびに少しずつ、シャルト自体の備蓄を増やしていた。日持ちする食料や、資材などの類だ。それらは、すべて備蓄用の小屋に収められている。
「ありがとう。おかげでシャルトにも少し蓄えができました」
「いいえ。私はただ買っただけだもの」
 礼を言われる程じゃないと首を振るロゼットだったが、「おかげで、シャルトの復興は良いスタートが切れそうです」とアンゼリカは感謝する。
 ロゼットが、商人達の利益も意識しながら、やって来た人々を丁寧に誘導したことは、商人側からの好印象に繋がり、先々のプラスに働いたことをアンゼリカは十分に理解していた。

「クーネさん、噂の夕陽が見たいのですが、今だと、どの辺りからがオススメでしょう?」
「そうだな、農場を一望できる辺りが良いかな」
 トーラの言葉に、あの辺の瓦礫の上から見るとしよう、とクジンリーネは先導する。
 空はゆっくり日暮れに染まり、広がる大地ごと朱くなる。過去とは全く違う景色が広がっているのだろうが、黄金色にも似た輝きは、きっと今も昔も変わらないに違いない。
「わたしはシャルトへは住めませんが、たまにここの夕陽を見に来て良いですか?」
「もちろん」
 わざわざクジンリーネが許可するような物では無いだろうけれど、あえてクジンリーネは鷹揚に頷き返した。
「ありがとうございます。……もし、人を敵視する征竜を見付けたら、クーネさんに知らせますね!」
 旅立つ先で出会うことがあれば必ず、と約束するトーラに、「ああ、約束だ!」とクジンリーネも応える。

 そうしてシャルトに日は落ちて――また新しい日が訪れる。
 復興への道は、まだ、始まったばかり――。

マスターコメント

 皆さんにバランスよく加勢していただき、シャルトは新しい日々に向かって良いスタートを切ることができました。ありがとうございました!!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜8人

2024年02月08日 10時13分20秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ディレイン・オールドケイジ

    ディレイン・オールドケイジ、よろしく。 造園スキルがあるんで、ちょっと勝手が違うかもだけど作物栽培の手伝いはできるんじゃないかな、ってとこ。

  2. トーラ

    トーラです。よろしくお願いします。 あと一人で成立ですね。 わたしも造園は覚えているので畑を手伝えればと思うんですけど、作物はすぐには出来ませんし、帝国の冬はまだ続くでしょうから住居を優先するのが良いのかなと考え中です。 もう少し様子を見てみますね。

  3. ナハシュ

    ナハシュだ!よろしく。 いまんとこ住居確保の手伝いか、3つ目のなんか公園整備か?露天市が出来るようにすりゃあいいのかな。まあその辺りで考えてるぜ。

  4. ロゼット

    ロゼットよ。よろしくね。 とりあえず3つ目の「旅の商人など外から来る者への対応」を 主にやっていこうと思うわ。 >ヒーラーの方 ヒーラーに限らないけど、手が空く(プレイングが余る)なら、 治療所にいる怪我をした兵士を見舞いに行かない? 回復スキルや医術でも治せない、怪我人もいるのでしょうけど 少しでも兵士が復帰できれば、後の活動の支えになると思うわ。 「帰る前に怪我人にヒールかけていく」ってだけでも、 何人かでやれば大勢になると思うから、もし余裕があったら。 >依頼内容 一つ目。家の準備が間に合わない。 二つ目。農場の準備が間に合わない。 三つ目。旅の商人など、外から来る者への対応が間に合わない。 それ以外にも復興の役に立ちそうなお手伝いは喜ばれるでしょう。

  5. ディレイン・オールドケイジ

    >ロゼットちゃん 治療所に行くのはかまわないよ。 というか、元々のぞきに行こうかなとは思ってたんだよね。 おじさんが使ってた治療所も治療所じゃなくなるのかなー、って。

  6. トーラ

    迷いましたけど、先の事も考えて農場の準備をやろうと思います。 治療所にも行かせて貰いますね!

  7. ヨル・スレイマン

    ヨル・スレイマン。宜しくね。 そうしたら、1の住居確保の手伝いをやろうかな。ある程度の指揮も可能だと思う。 一つに絞らなきゃならないって訳でもないだろうし、あとは手が足りなくなりそうなところを補おうか。 治療所へは折角だから俺もついて行ってみようかな。 ちゃんとした医学に明るくはないんだけど、怪我であればヒールかけるくらいはできるし。 どちらかというとヒールでどうにもできない病気の方が怖そうだ。その辺りを踏まえても、できることはなくはなさそう。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0