【刻時】時計塔と謎の遺構
白葉うづき
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シナリオID:3384
オープニング
「なんだ、これ」
老朽化していた時計台の修復工事を行っていた際、それは見つかった。剥がれた煉瓦から顔を出した、古い遺構らしき一部。少し前の時代というには古く、近くを歩いていた歴史学者がのぞき込んでは大発見だと騒ぎ立てる。にわかに騒ぎとなるとともに、発掘作業がそこから始まった。
はるか昔に作られただろう道具や紋具がいくつも見つかる中、ヴィンツ・ラッテは不思議なものを発見する。結局その場では何かわからなかったので、許可を取ってから自分の研究室で調べることにした。
それから、彼は姿を見せなくなった。
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日常というものはいとも簡単に崩れ去る。帝都から始まった埋火は、今や巨大な炎の渦となって大陸中を巻き込み、戦乱の日々をロスガリアにもたらした。辺境都市群も例にもれず、遠い地にありながら物資と戦力を帝都へ向けている。
前線ではないにしろ、どこか落ち着かない日々を過ごす人々も増えていた。平和を、大切な者の無事を願う者たち、世界を憂う者たち、不安定な世の中に惑う者たち。ここ、学術都市ヴェルクリエでも、這い寄るように影響が表れつつあった。
学術都市ヴェルクリエ、キャンティ地区。大陸中から集まった技術者、研究者、発明者が切磋琢磨しながらも協力し、日々新しいものを求め創造している街。
ここに、とある豪商の息子がいた。大きな財力を持っていた父はそのまま地区を代表する立場となり、自然と息子も地区代表の地位に就いた。ただ世襲だから受け継いだ訳じゃない。彼はこの街が大好きだった。少し街に出れば色鮮やかで楽しい建物がそこら中にある。道行く住民もさまざまで、みんな彼を驚かせようとしたし、新しくできたものを誇らしげに説明してくれた。夢や希望が詰まっている、誇らしい故郷だ。
地区代表になってからも、彼は尽力した。出来るだけ住民たちは自由に研究や実験、芸術に没頭してもらい、観光客も新しい技術に触れながら楽しんでもらう。そんな街づくりを目指してきた彼にとって、キャンティ地区の街並みはいつも賑やかで騒がしく、よりよい未知が起こる素敵な場だった。
「街がおかしいんです」
地区代表、テオドール・ヘルツィンは冒険者たちを前にして、何度か呟いた言葉をもう一度口にする。戦乱の世の中だ、騒がしい街もいつもより鳴りを潜めた姿であるのは仕方がない。
「ここでは研究に伴う爆発事故とか、発明品の暴走で道が大変なことになるとか、そういうのは日常茶飯事で。でも最近、その事故の規模が大きすぎるし、何より人や物に被害が出始めています。パン屋の爆発で青い小麦が周りに飛び散ったり釜からあふれた怪しげな魔法薬が通路をふさいだりとかそういうものじゃない。日中、わざわざ人が多くいる商店街や広場の中で物を爆発させた人が何人かいるし、芸術だと言いながら建物の外壁を破壊する人、危ないところで通りかかった人を転ばせる人もいた。そのせいで技術者同士にも諍いが目立ち始めました。いつ自分が怪我をするか、成果が破壊されるかわからないと、連日相談も受けています」
夢を見て、夢を叶える場所は、危険を伴う場所になってしまった。テオドールは悲しげに目を伏せる。
「最近、僕の側で研究者や技術者たちの取りまとめも始めて。だから以前よりも、住民や観光客の皆からどうにかしてくれと請われています。対応ができないならば代表を辞してほしいという声も、あ、いえ」
軽く首を振り、依頼の仔細について説明する。テオドールが言うには、相次ぐ研究事故の原因究明をお願いしたいとのことだ。自警団は地区の出入りやパトロールで人手が足りないとのこと。これまで大きな諍いはなく、そこまで数がいないのも影響していた。
「僕の力不足で、本当に申し訳ない。どうか、皆さんの力をお借りできればと思います」
「そうだ、もうひとつ」
部屋を出る前に、テオドールが再び声をかける。
「この街に、技術者で授恵者のヴィンツ・ラッテという青年がいます。髪はカラフルで元気いっぱいで……その青年もよければ探してもらえないでしょうか。いつも旅に出ている彼だから、いつの間にか出かけていることも考えられるんですが、今は預けているものがあって。それを放っておきはしないと思うんです。自由奔放な男だけど約束は守ってくれるし、何より彼は謎を調べるのが好きですから」
彼はどこか楽しそうに続ける。
「最近、時計塔の下に古い遺構が隠れているのが見つかって。そこから古い時代の物がいくつも出土したんです。すごくないですか! もしかしたら及びもつかないくらい古いものだという声もあるんですよ! 今も作業が続けられているんですが、その中の一つの道具……紋具かな? それを調査すると言ったまま音沙汰がなくて……友人でもあるので、心配で」
どうかよろしくお願いしますと、地区代表は深々頭を下げた。
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それは円盤のような形をしていた。円盤の真ん中に三角形の板が垂直に取り付けられており、外れることはない。その板は松明に照らされながら、見るたびに色が変わるような、不思議な色をしていた。
「んん、興味深い! 実際に目で見てみるとまた違うな、これは面白い」
その道具を男は隅々まで見分していた。くるくると回しながら表裏横すべてを見ていると、ふと壁際に声をかける。
「目が覚めたか? そう睨まないでほしい、まあ無理やり連れてきたのは詫びを入れよう。場所も選べたらよかったんだが、何せ君は顔が広い。ゆっくり話せるところも限られていてね」
「んむー!」
手足を縛られ、口も塞がれた青年がそこにいた。それには気も留めず、男は楽しげに目を細める。
「なあ青年。“不老不死”に興味があるだろう」
にい、と口端を吊り上げて告げる男の言葉に、青年の瞳は見開き、輝きを見せた。
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「さて、次はどこで起こそうか」
「代表の家なんかいいんじゃないか。効果が大きいだろ」
「いや、あの男は一般の住民や客の言葉に弱いらしい。人が大勢集まっている場所が狙い目だ」
「そうすると次に狙うのは――」
解説
マスターより
リプレイ
(共通項は人気が多い場所、どれも昼間に起こったこと)
ナハティガル=ラーは注意深く周囲を見回した後、屋根の上で考える。気になるもの、怪しいものは。アドルフ・ジーノから地区代表への提案で、不審者を見つけた場合は必要に応じた対応をしていいと、許可は得ている。
人が多いところで事を起こすことも、犯人が軒並み捕まっているのもまだ納得できない。目的が見えない、ならば見えるように見方を変えるだけだ。ナハティガルは、現場をマークした簡易的な地図を見ながら屋根伝いに高所から街を巡る。途中、セロンガード・シュタインドルフが歩き回っているのが見えた。同じく周辺を調べているのだろう。
念のためとエーテルを張り巡らせて気付くのは、キャンティ地区は入り組んだ街だということ。横道に裏道に地下、段差に階段に行き止まりが多く迷路のようだ。これをすべて把握するのは住民でも難しいだろう。逆に言えば、人のいない場所を探すのは容易い。どこもかしこも人は多いが、やはり広場やメインの通りに集中している。事故現場もすべてそこならば、考えられるのは。
「あえて人目に付く場所で起こしている」
元々住んでいた住民たちが、示し合わせたように事件を起こす。何かきっかけがあったのだろうか、それとも。ジュスト・ヴェルジーの頭の中で、様々な推測が浮かんではパズルピースのように散らばっていく。
聞き込みは、何も知らない立場からひとつひとつ拾っていく方法だ。土地柄のせいか癖のある人々も多く、彼らなりの推測も多く聞けた。
(『時計塔の遺構が見つかってから事件が起こり始めた』、そこから『地区代表のバッシングの声が徐々に大きくなっていった』)
素直に考えれば、時計塔自体に何か秘密があると考えるに十分な情報だ。そしてもう一つ。浮上した名前にジュストは思考を深めた。
「意外とあっさりと出てきた、という印象だな」
「デボリア様?」
先日の事故で怪我をしたという人物の治療をしながら、ロゼットが聞き返した。頷く住民が言うには、彼女の方が地区代表をやった方がいいのでは、という話が最近出ているらしい。
「どんな方なのかしら」
詳しい話を聞きながら、彼女の中でやはりという思いが膨らんでいった。
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「大きな塔なのですよ」
「上は展望台になってて、この街を一望できるみたいだよ」
「それは本当に大きいのです! けど、えっちらおっちら登るだけで時間がかかりそうです」
レラ・F・ギュンターとルーンス・ラグネルは時計塔周辺の調査に来ていた。発掘現場は広く、時計塔の側面を中心にして地面に大きな穴が開いている。作業を続けている人々に声をかけ、案内された簡易テントでレラと出土品を眺める。
「研究者さん、どゆものがありそうですか?」
「よくぞ聞いてくれた!」
「あっ」
専門に専門を聞くとどうなるか? 答えは明快、人に話せるという喜びが止まない。声をかけた初老の男性はまさにそうらしい。調子よく喋り始めたその勢いと膨大な言葉に、二人はしばし圧倒される。
聞いていただけなのに、どこかふらつきながらレラはテントの外に出る。ルーンスも捕まっていたが、出土品をリストアップすると『ごめん、後はお願いするね』と別の場所に行ってしまった。タフだ。
「まず、出土品は武器のようなものがほとんどなのです」
先が尖っていたり剣のような持ち手があったり、弓と矢のようなものも見つかったという。
「あと、全部すっごくすっごく古いのですよ」
これは地区代表が言っていた通りだ。それからも調査は進み、ある程度絞られてきたらしい。弾んだ話を思い出す。
「ギュンタも研究者さんも見たこともない紋章がありましたし、神様の時代の物かもしれないなんて壮大なのです……あ、そだ!」
レラは再びテントを覗き、ヴィンツという青年の情報を集めていく。行方不明と聞いた街の人々は一様に心配していた。
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「それは大いに関係していそうですね」
ジュストとロゼットから話を聞いたゲルダ・クラインは、納得がいったという様子で頷く。
「収容されている方々から、一向にお話が聞けなかったんです」
彼女自身話術に長けており、その洞察力は右に出る者がいないほど研ぎ澄まされている。そんなゲルダが悟ったことは、『彼らは話さない』ということ。ジュストは肩を竦める。
「ゲルダ嬢と会話できる機会を不意にするなんて考えられないな。なかなかお話しがいがありそうだ」
――とある豪商の女が台頭してきている。キャンティ地区で地区代表の次に力を持っている彼女の噂が、街中から聞こえてきたのだ。さまざまな発明家、技術者と提携し、支援してはその成果物を市場に出すという大きな店を持つ有力者が有利になる噂。
「それでは、話をお聞きしましょう。お二人もぜひご一緒に」
看守用の部屋から出て、まっすぐ収容者の元へ。ゲルダの毅然とした足音が響く。
「何だ、また来たのか」
「デボリア・プフェンベルク様」
男の顔を見る。反応は、良好。
「先ほどもお伝えした通り、ご協力いただけない場合は罪が重くなります。今後の創作活動に支障が出ませんよう、わたしも願うばかりです」
「脅しじゃないか!」
「人命が関わっている可能性もあるので」
ぴしゃりと突き放すゲルダに、容赦はなかった。
三人で聞きまわり、集めた情報はこうだ。
最近の騒ぎは意図的に起こされ、それは指示されたもの。先ほどゲルダが出した名に反応を示さない者がほとんどだったが、ただひとり揺らぎを見せた者がいた。それを逃す三人ではない。
「恐らく実行犯が複数、間接的な指示役がいた形でしょう」
「繋がりを見出せたのは大きかったわね。頑なに話さなかったのも、代表が代わることを見越してたんだわ」
「少し気になっていることがあるんだ」
考え込んでいたジュストが呟く。収容者が事件を起こしたのはその豪商のためであり、豪商は時計塔の遺構をきっかけに動き出した。ならば。
「ここまで大ごとを起こすに至るほど重要な秘密は、遺構にある。そしてそれを、どうして彼女が知っているんだ」
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アドルフとルーンスは紙まみれになっていた。より具体的に言うならば、メモ帳まみれだ。
「わ、また踏んじゃったんだよ」
「仕方ない、こんなに散らかってるんだから」
ヴィンツの研究所に足を踏み入れたアドルフは、その散らかりようにしばし閉口した。整理しているうちにルーンスがやってきて、今は手分けをしてメモを確認しながら情報交換を行っている。
「ここのメモ、大体がルーンスお兄さんが言ってた『円盤状の道具』の話だよ」
それは、ヴィンツの持って行った道具がそんな形をしていた、との情報から便宜上付けた名前だ。エーテルを流したりバラそうとしてみたりと、ひたすら研究を重ねていたらしいことがメモからわかる。二人の協力で次々とメモの中身が明らかになっていった。
「この荒れようは普通、じゃないよね」
「断言は難しいけど……少なくともこんなに散らかってなかったっておじいさんは言ってたね」
近所に住むドワーフは、青年が倒れていないかよく見に来るようで彼のことをよく知っていた。曰く、何も言わずに出ていくことはほとんどないそうだ。
「やっぱり事件に巻き込まれたのかな?」
アドルフはこれまでの情報を整理する。地区代表は聞いたことすべてに答えてくれた。誰にもわからなかった道具、それをこの街一番の紋具職人に調査依頼として預けた。青年が近しい人に何も言わずどこかへ行くだろうか。
「ちょっとやりかねないのは困りものだけど、道具の暴走ってこともある。それにもし、遺構の奥に調査へ行くならギルドを頼る人だし」
それなりに彼を知るルーンスはそう考える。ただ、『時計塔』『遺構』『地下』と書かれた一枚のメモ書きに、嫌な予感はした。
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「はるか昔の遺構の上に、キャンティ地区は建てられている、と」
「そう聞いたことがある」
それもはるか昔の話だがね、とネーベルと名乗ったエルフは肩を竦める。天文台の主に会いに来たゲルダ、そしてナハシュガルは揃ってソファに座っていた。二人に出された柔らかな香りの紅茶は、ゲルダの手土産が使われている。
「正確なところは知らないが、時計塔は築五百年ほどと言われている。天文台もその頃だ」
「前にあったものはおわかりですか?」
「ただ背の高い建物があったらしい。クリーパーや、北から流れてくる魔獣から街を守る見張り台のような使い方をしていたみたいだな」
「ふむ。この辺りは都市の外壁代わりでもあったわけか。時計塔もその見張り台の上に建てられていると」
「他に、伝承や民謡などはご存じでしょうか」
ネーベルは少し待てと告げ、本棚の前で視線を向ける。
「ここに、周辺地域の伝承をまとめた写し本がある。君たちが手伝ってくれれば待たせる時間は少なくて済むな」
「お手伝いします!」
「俺もやろう」
二人は本を手に取り、それぞれ調べ始めた。
「しかしデボリアか……何を欲している」
「遺構に秘密があるのでは、とわたしたちは考えています」
「その女が欲しがるものの目星はないか?」
ネーベルがしばし考える。
「噂程度だが、美しさに固執していると聞いたことはある。美容にと、大陸中のそれに類する物品を集めていると」
「なら、今回も?」
「その線を追ってみよう」
ゲルダ、ナハティガルが頷きあう。
「それと……ヴィンツが何かしら紋具を持って行ったと言ったか」
「ああ、そうだが」
青年は腕の立つ紋具職人。その彼が何日も解明できないなら。
「それはもう、ただの紋具ではないんじゃないか」
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「怪しい人なのですーーー!!!」
レラの叫びに、ジュストが文字通り空を飛んで急行する。その人物は巧みに人込みへ紛れ、入り組んだ道を使って逃げようとした。だがそんなもの、空から追うジュストには何の効果もなさない。あっという間に身柄を拘束された。
「待って、まだいるわ!」
ロゼット、レラもそれぞれ逃げる人影を追いかけるが何せ人通りの多い場所だ。思うように走れず見失ってしまった。
「目撃者も多いから、捕まるのも時間次第だ。それに一人捕まえたのは大きい、助かったよレラ嬢」
「ギュンタ、発掘現場に目をビカビカ光らせてたのですよ! お役に立ててよかったのです」
「ではさっそく聞き込みを――」
「その必要はございませんわぁ」
質のいいドレスに煌びやかな装飾品。そこにいるだけで注目を集める女性が現れた。吊り上がった瞳は、三人を値踏みするように細められている。
「下手人はあたくしのお友達が捕まえてくれたと報告がありましたの。だから心配しないでくださいまし、テオドールの冒険者さま」
言葉こそ柔らかいが、声には明らかな侮蔑と余裕が含まれている。レラが再び叫ぶ。
「どなたなのです!」
「デボリアよぉ。それじゃまたね、あたくし忙しいから」
「この街一番の豪商、プフェンベルク卿。お会いできて光栄にございます」
「噂には聞いていましたが、本当にお美しいのね」
「うふふ、悪い気はしないわぁ」
振り返るデボリアに、ロゼットとジュストは微笑む。ここぞとばかりに自身の強みを発揮しながら、ジュストはさらに畳みかけた。
「ぜひお話を。その美貌の秘密もお聞きできれば」
「そう、あたくしは美しいの。あたくしの美貌の損失は世界の損失よぉ」
「そして商才もリーダーシップもある!」
「街の安全も彼女に任せば間違いない! こんな頼りになるリーダーはいないぜ!」
周りの、正確には彼女の後ろに控えていた数人が囃し立てる。どれもがデボリアを賛辞する言葉。ロゼットは確信した。
(この勢いのまま、代表の座を乗っ取ろうとしている。もしかして、犯人が全員捕まっていたのも、彼女の自作自演)
周囲の住民からも連鎖するよう応援の言葉が飛ぶ。完全に、彼女の思い通りだろう光景が広がっていた。
「いいパフォーマンスにされてしまったね」
「でも、お二人の話だと悪い人なのです。あんな人を偉くさせちゃあいけねえですよ」
「そうね、こっちも対策を立てないとまずいわ」
「決定的なものを突き付けなければいけない」
そのためにも、まだピースが足りない。レラからの情報は出土品の武具、神代の時代に作られた可能性、青年とともに行方不明の円盤状の道具。
「そいえばこんな話も聞いたのです。時計塔の下に空間? 地下があるみたいなのですよ。でも入り方がわからないって」
そこに、アドルフとルーンスもやってきた。
「地下に行くのかしら。僕らも行こうと思って、皆に声を掛けに来たんだよ」
「メモを見つけてね。ヴィンツの持っていったもの、地下を開く鍵でもあるかもしれない」
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「気になる記述があった」
手招いたナハティガルがゲルダの前に本を広げ、指で示す。
「この箇所ですね。『ここには神の作りし道具があるらしい……』」
そびえる塔はその道具のために作られたという。ひとたび効果を発すれば、周囲の人々の力を借りて時を止めることが可能だとか。それはつまり、老いていく身を留めておくことが出来るのでは? まさに神の御業。その道具はこう呼ばれている。
――『神具・時留めの針』、と。
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明かりが揺れる。ロゼットとレラが先を、アドルフは足元を照らしていた。時計塔地下を目指し、橋の下に備えられたトンネルを進む。大きな段差にレラが苦戦していると、上から誰かの手が伸びて引き揚げられた。
「だいじょぶ? やあやあ、冒険者の皆じゃん! どしたの?」
そこにヴィンツ・ラッテがいた。ルーンスが叫ぶ。
「ヴィンツを探してたんだよ!」
「そうなの? ごめんね、オレもさらわれちゃって!」
「それは災難だ。その相手は?」
「ヴィンツお兄さんの持っていた道具はどこ?」
「向こう!」
案内されるまま歩を進めると、広い空間に出た。その先の壁際でランタンが光り、傍らの人影が振り向く。
「困るなあ。まあ予想は出来たか」
ひょろ長い眼鏡の男は言いながらランタンを掲げ、冒険者たちを見渡す。
「ふむふむ、何かしら掴んでからここに来てるね! 君たちは粒ぞろいのようだ。だからこそ、ここでお別れした方がいい! 青年! 走ってここに入ってくれ。一緒に不老不死の真実を確かめよう!」
「はーい!」
二人の行動は早かった。止める間もなくヴィンツは走り、いつの間にか男の後ろに現れていた黒い空間に手を入れる。
「ちょっと、待ちなさい!」
「戻ってくるのです!」
振り向いた青年は申し訳なさそうにして。
「ごめん! オレ、気になることあるから!」
二人は闇の中へ、溶けるように消えていった。
「ああもう、やりかねないとは思ったけど!」
ルーンスの言葉が地下室に響いた。
謎の男の正体はその後もわからなかった。ただ彼を放っておいてはならないと、冒険者たちからの情報で手配書が作られる。そして。
「デボリアの目的は、恐らく神具ね」
若さを欲するがための強攻だと、そう結論付けた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い8 / 4〜8人
2023年12月26日 14時07分55秒 公開
相談掲示板
キャスターのジュストだ。 時計塔で見つかった遺構、大変興味深いね。 とはいえ、今回の依頼はキャンティ地区で起きた騒動の原因調査が主目的。仕事はしっかりするつもりだから、皆よろしく。 さて、現時点では完全に根拠のない予測(PL情報)だけど、遺構も騒動の原因に関わっていると思われるし、ラッテ殿も巻き込まれているようなので……それぞれの点と点とを結べるような情報を得たいところ。 提示されている調査可能場所は5つ。 ・地区全体(現場周辺) ・時計塔周辺 ・収容所 ・ヴィンツの研究所 ・天文台 1人で2箇所ほど回れるようだし、8人で手分けすれば幾らか被っても全ての箇所を調査出来そうだ。 俺はまだどこでどんなスキルなどを使って調査をするか考え中。 希望を表明しておいた方が調査抜けが出る恐れも無いだろうし、また日を改めて発言しに来るよ。
ヒーラーのロゼットよ。 現時点では、ちょっと治安が悪くなってるぐらいの印象ね。 全部が繋がってるかもしれないし、別件の同時進行ということも。 >調査 どこでも何かはできそうに思うから、こだわりはないわ。 とりあえず「地区全体(現場周辺)」と「収容所」で、 起きた事故について、追ってみようかしら、とか。 人手が偏るようならまた考えるわ。
ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いしますね。 >調査 キャンディ地区の騒ぎと、時計塔の古い機構を見に行ったヴィンツ様の行方……。思わぬところで繋がるかもしれませんし、どちらか片方のみを調べるより、両方について並行で調べる形がよさそうでしょうか。 そうですね……。実際に騒ぎを起こした方々に話を聞けるのでしたら、わたしも「収容所」でお話を聞いてみようかなと思っています。 あとは、何かの関連があるかは判りませんが、「天文台」で昔の地区のことや時計塔の古い機構についてのお話も伺おうかなと。 同じく、人手が偏るようでしたらわたしも移動可能です。
ヒーラーのルーンス・ラグネルだよ。 よろしくね。 >調査 僕はヴィンツの研究所と時計塔周辺が気になったかな。 何の目的もなく行方不明になる人でもないけど、更なる出土品求めて何か面倒なことに首を突っ込んだとかも十分あり得るだろうしね……。
同じくヒーラーのアドルフです。よろしくね。 僕は資料検索を持ち込んで、研究所に行こうかなって思ってるよ。 もう1ヶ所は、偏りを見て自由に動くから遠慮なく言ってね。 >出土品 今のところ思いつくのは、出土品でとても貴重なものが見つかって、それを奪おうと騒ぎを起こしてる…とかかな? もしくは、代表さんに不満を持つ勢力が転覆させるとしてるとか…? いずれにしろ騒動の鎮圧が主目的だから、ヴィンツさんの行方を探すのは副目的で追加の新情報が見つかれば…って流れになりそうだね。
>各人の予定(2つまで、重複可、変更可) ロゼット:地区全体(現場周辺)、収容所 ゲルダ:収容所、天文台 ルーンス:時計塔周辺、ヴィンツの研究所 アドルフ:ヴィンツの研究所 「2つまで」であって、1カ所に絞ることも可能よね。 時間の都合とある以上、1カ所の方が時間はかけられそう。 複数人で聞き取りや、調べもの分担で効率アップもあるから、 広く分散するメリットもあるけれど。 >騒動 オープニングの終わり部分から、 人の集まる場所で何か起きる可能性がありそうね。 候補のうちだと「時計塔周辺」? PL情報だから対応は難しいけど、何かあったらぐらいの 備えや行動をプレイングに盛り込むのはアリかしら?
シューターのセロンガードです。よろしくお願い致します。 私は地区全体(現場周辺)を調べに行く…事故現場の調査と、 あとは聞き込みが必要ならばそれも同時に行います。 出土品との関連性はまだ不明ですが、事故には共通して悪意があるようですので、そういう人が集まっている場所にひとまず首を突っ込んでみましょうか。
>騒動 商店街や広場での騒動の起こり方を見ても、人が多いところで事件が起きる可能性は十分に考えられるから、警備を名目に時計塔周辺を探ることはできるんじゃないかしら? >効率 8人もいることだし、そうなると僕は研究所1本に絞った方が良いかしら? もし人手がほしいところがあれば遠慮なく言ってね。
シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 キャンティ地区で起きた騒動と時計塔で出土した遺構、そしてヴィンツの失踪が関係しているかどうかは今の所不明だが、 情報収集していけば何かが見えて来そうではあるな。 >各人の予定(2つまで、重複可、変更可) 俺は地区全体(現場周辺)の見廻り(兼聞き込み)と、天文台へ昔の地区の話を聞きに行こうかと。 天文台が時計塔と同じ位に歴史があるなら、興味深い歴史や逸話を聞けるかもしれん。 ロゼット:地区全体(現場周辺)、収容所 ゲルダ:収容所、天文台 ルーンス:時計塔周辺、ヴィンツの研究所 アドルフ:ヴィンツの研究所 セロンガード:地区全体(現場周辺) ナハティガル:地区全体(現場周辺)、天文台
ウォーリアのギュンターと申します。どぞ、よしなに。 ギュンタは時計塔周辺で出土品の調査をしてみようかと思ってます。 もしかしたらヴィンツさんが何を持ってったか目撃してる研究者さんがいらっしゃるかもしれません。 それに出土品についての具体的な情報も得られるかと思いまして。 他に出来そなことが浮かびましたら追加しますね。 ロゼット:地区全体(現場周辺)、収容所 ゲルダ:収容所、天文台 ルーンス:時計塔周辺、ヴィンツの研究所 アドルフ:ヴィンツの研究所 セロンガード:地区全体(現場周辺) ナハティガル:地区全体(現場周辺)、天文台 ギュンター:時計塔周辺
一か所を集中的に調べるのも効果的だと思うよ。 ただ地区全体の方は人がいた方が効率よく調べられそうだし、俺も手伝おう。 あとは現場情報と合わせる形で収容所での聴取も行ってみよう。 とりあえず希望を纏めるとこんな感じかな? 誤りや抜けがあったら訂正して貰えると有難い。 ・地区全体(現場周辺) ロゼット、セロンガード、ナハティガル、ジュスト ・収容所 ロゼット、ゲルダ、ジュスト ・天文台 ゲルダ、ナハティガル ・時計塔周辺 ルーンス、ギュンター ・ヴィンツの研究所 ルーンス、アドルフ
私は異論ないわ。 まだ想像や推測で、何があったのかはサッパリだし、 手広くあたってみて、詳しいことを聞いてみるわね。