『紅雷』と呼ばれる冒険者
広大野人
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シナリオID:3378
オープニング
「娘の可愛さってのは、親戚の子供とは違うものだ」
王都の高級感漂うバーの一室で如何にも歴戦の冒険者といった風貌のおっさん――クリストフ・エクレールが、零れそうになる位、エールがなみなみと注がれたジョッキを掲げながら力説していた。
「目に入れたって痛くねぇ……だが、娘からのキツイ言葉はな、心の臓を抉られる位に痛いもんだぜ。お前らは、まだ分かんねぇだろうけどよ」
「そりゃ、こっちは相手すらもいねぇし。エナだって、子供の話は早いだろう?」
おっさんの話をちょっと若いおっさん――イェルド・ルリンが応え、話を若い青年に振る。
「そうですね。子供は沢山欲しいですが……クリストフ殿のように、娘可愛いとなるかどうかは分からないです」
微笑を浮かべる青年――エナハルト・ティルムにクリストフと呼ばれたおっさんは、うんうんと力強く頷き、空いた手で青年の肩を叩いた。
「生まれりゃ分かる。そりゃ、もう、可愛くて仕方ないんだからな!」
満足そうに告げるクリストフにイェルドが苦笑を浮かべる。
「まぁ、奥さんが美人じゃ、可愛い子も生まれて来るってもんだ」
「イェルド先輩は、クリストフ殿の奥さんに会った事があるのですか?」
エナハルトの質問に、ハッと表情を変えるイェルド。
都合悪そうな視線を泳がせるが、クリストフが笑い飛ばした。
「あぁ、俺は元々、王国騎士でな。イェルドは現役の時の後輩だ」
「なるほど、そんな繋がりがあったのですね。突然、同行しろと言われたので、何かと思いましたが……すみません、クリストフ大先輩。家名も教えていただけるのでしょうか?」
遠慮気味に問うたエナハルトにクリストフは、声を小さくして告げた。
「エクレールだ。もっとも、家を出て行った身だから、もう実家とはほとんど関りが無い」
正確に言うならば『関わりたくない』だけど。今回、王都に足を運んだのも、かつての後輩であったイェルドからの頼みがあったからだ。
「分かりました。心しておきます」
エナハルトは笑って応えながら、心の中で聞いた姓だな……と記憶を辿っていた。
そして、エクレールの姓を持つ赤毛の冒険者をその姿と共に思い出した。
(……黙っておいた方がいいかな……)
この酒の席は、イェルドが依頼の話をする為のものなのだから、うっかり、「大先輩の娘さんは僕が出した依頼で活躍していましたよ」とか「依頼を通じて知り合った異性と良い感じの雰囲気ですね」などなど漏らしてしまっては、きっと朝まで根掘り葉掘り聞かれるに違いない。
青年の心の内なぞ知らず、一息ついた所でクリストフがイェルドに尋ねた。
「さて、酔っぱらう前に依頼の確認だけはしておこうか」
「確かに。これが、ギルドに提出予定の依頼書です」
渡された書類は帝国まで続く廃街道の安全確保を依頼する内容が記されてあった。
基本的に主要街道でなければ領地を管轄する各貴族の管理下ではあるものの、領主の兵も帝都への遠征に向かっている為、戦力が足らず、騎士団に仕事が回ってきたのだ。だが、王国騎士も他の対応に追われており、帝国への輸送路の確保とはいえ、人手が足りないのが現状だ。
だから、イェルドは騎士団の縁があったクリストフに話を持ち掛けた。
「……記録には、長い間、使われていないとあるな」
依頼書を捲りながら確認するクリストフの言葉にイェルドが応える。
帝国領側で魔獣が出たとかで封鎖になったらしいがそれ以上の情報は不足していた。
「当時の帝国であれば、主要都市から外れているとはいえ、国境に続く街道。討伐しなかった理由があるとは思えない……あるいは簡単に討伐できない程の魔獣だったのか……」
「なるほど、それで俺に仕事が回したわけか」
帝国への輸送路が一本増えるのは、世界情勢を鑑みれば重要な事だ。
安全確保に失敗しましたでは騎士団の面子にも関わる。信頼できる人物に依頼したかったのだろう。
「まぁ、任せておけ。どんな強い敵が出ようが倒してみせるさ」
依頼を受ける確約が得られた事でイェルドはホッとしたようで、ジョッキに手を伸ばす。
「そういえば、娘の方も冒険者らしいが、依頼を受けるような事があればどうするんで?」
「俺のいる限り、危険な事にはならねぇよ。むしろ、ちゃんと仕事が出来る冒険者かどうか指導してやる所だ」
豪快に笑ったクリストフに笑って同意しながらも同席しているエナハルトは心の中で思う。
(そんな干渉って逆に嫌がるんじゃないだろうか……)
エナハルト自身、親からのあれこれが嫌になる時は多々あった。
今にして思えば親からの深い愛情なのだろうが、素直に受け入れられるかどうは別だ。しかし、指摘するほど場の空気が読めない男でも無かった。
「歴戦の冒険者、『紅雷』の異名を持つクリストフ殿のご指導を受けられるとは、羨ましい限りです」
男でも惚れ惚れするようなイケメンスマイルを浮かべるエナハルトであった。
●???
強者感を漂わせながら、一人の傭兵が街道を封鎖していた柵を軽々と持ち上げていた。
「『この先、魔獣出没により通行止め』……まぁ、上手く考えたな」
寂れた街道を数台の馬車が通り過ぎ、傭兵は柵を元の位置に戻した。
主要街道からそれた支道の一つ。何も知らない人が看板と柵を見れば引き返す事だろう。
「王国内にここから先、村や集落が無い以上、通る必要もない道だ。帝国に行くならもっと安全な街道があるし」
馬車を率いた行商がそんな言葉を口にした。
危険を承知で封鎖された街道を通るというのは、密輸ルートとして打ってつけだった。もちろん、魔獣は脅威だ。護衛をつけていても大事な荷物が失われるだけではなく、命の保証もない。
「安全に街道を使えるのは俺達だけだ。魔獣がいると分かっている所を通るバカはいねぇよ」
「そんなバカがいたとしても、魔獣の餌になるだけだ」
この傭兵と行商の二人――ヘディンとペディグは、王国内のとある事件に関わり、指名手配を受けている。追手から逃れた彼らは活動拠点を国境の外に移した訳だ。
念のため、周囲をグルリと見渡したヘディンは異常がない事を確認した。
「よし、行くか。少しでも早いうちに拠点に着きたいからな」
「遅れると、筋トレさせられるんだよ……」
「そりゃ、お前はもう少し鍛えた方がいいからな」
そんな事を話しながら二人は廃街道に消えていった。
●
街道に残る違和感のせいで眉間に皺が寄ったクリストフは同行している冒険者達に振り返った。
「あれを見ろ」
峠を過ぎてなだらかな道が続く森の中、木々の隙間から見える『異形』を指さした。
それは、どう表現するべきか、悩ましい姿をしていた。一見すると大きな甲殻類のようなのだが、殻に該当する箇所には、熊が文字通り、幾体も埋め込まれていたからだ。
埋め込まれている熊はいずれも上体が飛び出ており、何か叫びつつ、鋭い鉤爪を振るっている。
「……初めて見るな。合成獣……ではなさそうだが、分かる奴はいるか?」
答えが無いと分かっていてもクリストフは冒険者達に尋ねた。
世の中には理不尽な敵も存在するものだ。少しでもデータが集まれば、それだけ生存率が上がり、安全に倒す事が出来る。安全に倒すという事は、臆病な戦いでは無いとクリストフは知っていた。
「ここは俺が正面に出て囮になる。あとは、分かるな」
クリストフはそう告げると大剣を構えるのであった。
解説
マスターより
リプレイ
甲殻類の背……本来、殻がある所には、幾体かの熊の上半身。
異様な光景であるのは間違いない。正面に対峙したクリストフ・エクレールを威嚇するように二本の巨大な鋏を打ち鳴らす。
その様子にルベア・ベルニが思わず心情を零した。
「ええ……? 何、あの魔獣……クリーパーでもないのに、あんな文字通りの異形なんて、そうそういないわよね」
同意するようにイヴェール・イリュジオンが応える。
「随分と個性的な魔獣ですね。本当に魔獣なのか疑問ではありますが……」
視線をクリストフにチラリと向けた。
あのおっさん冒険者は言った――合成獣ではなさそうだと。クリーパーでも合成獣でも無ければ、消去法で魔獣だ。
ゲルダ・クラインが大きな盾を前面に押し出してジリジリと進む。
「合成獣ではないとすると、共生……でしょうか?」
「よく観察してみないと分からないですよね」
質問に答えるように返したイヴェールの台詞に一行は頷く。
歴戦の冒険者であるクリストフをメインの守りに据え、その間に魔獣の正体を突き止めようという事だ。
仲間を支援する為にエーテルを高めつつ、シルヴィア・A・カペルはこれまでの対峙してきた敵を脳裏に浮かべていた。
「バルディオンJrを見た時に近い印象……けれど、合成獣か死霊術でなければ、突然変異か人為的な何かで、元々そういう生き物として作られているのかもしれない」
「人為的だったら、まだ複数体居ても不思議ではないという事ですね」
気を引き締めるゲルダ。
クリストフはそこまで予見しているからこそ、観察を託したのだろう。
人は時に、いらぬ先入観に影響を受けてしまうものだが、どうやら、このおっさん冒険者は、ただの熟達した冒険者とは一味違うようだ。
シルヴィアが何かを情報を得ようとジッと観察を開始する。
「可能であれば色々な角度から、複数人の眼で見ておきたい所だ」
見落としがあった為に致命的な結果になる事は避けたいからだ。
甲殻類の魔獣の後方を確認したキオルティスもエーテルを集中させる。初手、魔獣の背後に回るつもりだからだ。
「有効な戦い方も確認して見極めたいね」
「正直ちょっと気持ち悪いんだけど……まぁ、最終的には倒すしかないか」
ルベアが諦めたように短剣を構える。
暫くは思い出してしまって、蟹や海老を食べられなくなるかもしれない。
「構造の確認も必要だから、ある程度の解体もするようだよ」
口元を緩めてみせたキオルティスにルベアは両肩を竦めた。
支援の魔法が冒険者達に広がり、準備が出来たと判断したクリストフが娘であるクレア・エクレールに向けて余計な一言を告げる。
「少しは一人前に近づけたか、見てやろう」
「……」
クレアは、むぅっと頬を膨らませた。
他の冒険者も居る手前、もっと別の言い方もあるだろうに。これでは親同伴で冒険に出かけた子のようじゃないか。
「ボクはボクのやり方で依頼に貢献するから」
父や他の冒険者のように正面に立ち続ける事は出来なくとも、ここまで培った力には、そこそこ出来る自信がある。組織の幹部であった彼にだって認められる程なのだから。
鬱憤を晴らすようにエーテルを解き放つクレアだった。
●
予備動作無しの状態から、刺し込むように噴き出された扇状のブレス。
クリストフは大剣を大地に突き立てると、柄を握ったまま逆立ちになって避けた。無傷だった事を確認し、シルヴィアは敵の観察に意識を集中させる。
戦いが開始され、幾度かの攻防が繰り広げられたが、まだ討伐には至っていない。攻めあぐねているのではなく、分析しながら戦っているからだ。
「腐敗や欠損は見られないようだね」
合成獣でもゾンビでも無い。すると、やはり魔獣なのだろう。
甲殻類の背側はよく見えないが、殻がある所から生えているような熊は、少なくとも現時点において生きているようだ。
「視線は動くし、叫びもする。だけど、何か違う」
熊の生態について詳しく分からないが、熊はそれなりの知能を持つ。冷静さを失っているのであれば兎も角、この状況で逃げないというのは、何か理由があるはずだとシルヴィアは心の中で推察した。
「熊の動きはどうかな?」
「特に変わった所は見られないです」
答えたのは背側に回り込んでいる冒険者達の内、イヴェールだった。
熊の上体に斬りかかってみたものの、明らかな異変を感じさせる手応えは無かった。
「甲殻類の身体に埋まっているような……ほかの生物を殻に取り込み、養分か、あるいは外敵から身を守る為の能力でしょうか?」
その場でグルっと甲殻類が回り、早々にイヴェールとゲルダが半壊させていた鋏だったものが豪快に振るわれる。
それを難なくゲルダが弾いた。
「イヴェール様、恐らくですが、後者だと思います。幾度も本体の方に直接攻撃したのですが、いずれも近くの熊が守るように手や身体を伸ばしました」
「甲殻類には背中に何かを背負う種類がいると聞きましたが……そういうのでしょうか?」
ゲルダはイヴェールから返って来た質問に頷く。
「どこまで繋がっているのかは推定でしかありませんが、熊をある程度、操作できているはずです」
そうでなければ、幾体もの熊が甲殻類を守る理由が見当たらない。
逆に熊への攻撃に対する防御は意識されていない。甲殻類の方が熊よりも立場が上位のようだ。
槍で牽制し盾で反撃を防ぎつつ、ゲルダは台詞を続けた。
「共生ではなく、使役に近いかもしれません」
一つの魔獣が他の生物を取り込んでいると言えようか。
補足するようにキオルティスが分析結果を皆に伝える。
「甲殻類と熊の接着点を見るに、その推測でほぼ間違いないと思うよ」
熊の方が高い体温は甲殻類に吸い込まれるように下がっていた。
明確な温度の境界線は観察されなかった。甲殻類の身体に熊が取り込まれているからだ。
「寄居虫に似た魔獣じゃないかな。俺達がよくイメージするヤドカリは貝殻を背負う生き物だけど」
「そう言われると確かに。ヤドカリがクマの踊り喰いしてるみたいな魔獣だなぁ」
分析を交代したクレアが苦笑する。
捕らえた相手を自分の一部に加える――厄介な魔獣なのは確かだ。
「甲殻類なだけあって、硬いし。毒も通じにくいみたいだよ。ルベアさんの方はどうかな?」
「こちらもスキルはあまり効いていないわ」
魔獣由来なのかどうか分からないが、これだけ経験豊富な冒険者が集まっているのに、バッドステータスの付与は出来なかった。強度に対する抵抗がかなり高いかもしれない。
「下手したら、中型クリーパー以上の強さはあるかもね」
ルベアの冷静な分析にクレアは短く「そうね」と同意した。
倒せないレベルではないが……時間が掛かるのは容易に想像できたからだ。幸いな事に知能は高くないようだ。囲まれているからか、定期的に回転攻撃をしてきたり、狙いやすい相手や脅威と感じた相手に攻撃を繰り出す程度なので、ヘイト管理はやり易い。
「どんなに硬くても、雨だれ石を穿つってね」
「私もクレアさんのように、前向きにならないと。それにしても熊ばっかりで騒がしいわ」
ルベアの何気ない言葉にキオルティスが目を細めた。
「熊ばっかりか……」
その違和感の正体を突き止めるよりも先にクリストフが大剣を大振りして鋏を完全に粉砕した。
「よし! そろそろ仕留めに掛かるぞ!」
残りは既に半壊状態の鋏1本。
敵わないと思ったのか、甲殻類が真上に高く飛び上がった。重量ある胴体で冒険者達を叩き潰そうと考えたのだろうか。
けれど、エーテルによる四色の蝶を纏うシルヴィアが全員に呼び掛ける。
「回復を続けるから、一気に片をつけてしまおう」
甲殻類が着地すると同時に吹き荒れる衝撃波。
皮膚が裂け、石が弾丸のように襲い掛かってくるが、冒険者達は怯む事なく、各々が攻撃を繰り出した。
着地後の大きな隙に、クレア、キオルティス、ルベアの3人が関節部に短剣を刺し込んだ。切断には至らなかったが、甲殻類の動きがぎこちなくなる。
そこへ、イヴェールとゲルダのウォーリア二人組が渾身の一撃を立て続けに頭部へと叩き込んだ。
これで大勢は決した。まともな反撃が出来ずに文字通り袋叩きとなり、甲殻類の魔獣は活動を停止したのであった。
●
甲殻類の背に取り込まれていた熊は、本体が死んだ後、次々に息絶えた。
接着面は外れる事が無かったままなので、取り込まれたら最後、一蓮托生のようだ。おっさんが面々を見渡す。
「珍しい魔獣だったな。街道が封鎖されるだけはあったという事だ。それにしても、イヴェールとゲルダの二人の攻撃は筋が良かったぞ」
「「ありがとうございます」」
声と動作を重ねた二人に満足そうに頷きながら、次におっさんはクレアへと視線を向けた。
「クレアも遠慮せずにもっと叩き込んで良かったと思うぞ」
「ボクにはボクのやり方があるって言ったよね」
「そのやり方が――」
ムスっとした親子のやり取りに割って入るように、街道の先まで確認していたキオルティスが戻って来た。
「街道の合流まで、まだ道は続いているけど、この先で見て貰いたいものがある」
その台詞に一行は互いの顔を見合わせた。
キオルティスに案内されて街道を進むと、彼が言わんとする事がすぐに理解できた。
地面に膝を付けて手で直接触れたクレアが告げる。
「真新しい轍が、街道から外れて進んでいるようだよ」
タタタ……とゲルダが残った轍を辿って進む。林の中へと続いているのは確かだが、それ以上の事は分からない。
「王国側から街道に入って時折、馬の糞が落ちていました。馬車を牽いていたと思います」
「今は、私達以外の音は聞こえませんので、幾日か前という事でしょうか? ただ、街道の閉鎖は年単位ですので……」
ゲルダの小さな背中を見守りながら言ったイヴェールの台詞にルベアが応えた。
「誰かが廃街道を使っているという事なの? あんな魔獣が居たのに……魔獣を除けるようなものは何も無かったし……」
王国から街道に入る時、確かに封鎖はされていた。
間違って侵入してしまう可能性はあるものの、わざわざ魔獣が出没している街道を通る者がいるとは思えない。
周囲を確認してから戻って来たゲルダは首を傾げていた。
「他に安全な経路が存在するにも関わらず、この廃街道を選択しているのは後ろめたい理由があるからでしょうか?」
「確かに、見つからないようにするにはいいだろうけど、それでも魔獣の脅威が……あっ!」
ふと過ぎった従姉の姿に、ルベアは気が付いた。
シルヴィアも同じようにその線を疑っていたようだ。
「魔獣使いがいれば、後ろめたい理由でこの街道を使う場合、絶好の場所になるだろうね」
そもそも、街道が閉鎖された時に出現した魔獣と、今しがた自分達が倒して来た魔獣が同一とは限らないのだ。
真剣な表情を浮かべたイヴェールとトンっと槍を地面に突き立てるゲルダ。
「何かしらの罪を犯している者達の隠れ道という事ですか」
「つまり、野盗のアジトや指名手配犯の潜伏先の可能性があるという事ですね」
きな臭くなってきた所で、クリストフが確認するように言った。
「魔獣使いの存在は確証できるのか?」
「確証というほどじゃないが、説明は付く」
今であれば、キオルティスは自身が抱いていた違和感が魔獣使いだと理解していた。同時に、何故、違和感があったのかも、観察していた結果からも繋がった。
「熊だけを背負っているのが不自然過ぎるんだよ。あれだけの強さの魔獣なら他の生物や魔獣だって取り込めるはずなのに」
「確かに、わざとらしいかな。ボクだったら、単一での運用はしないよ。色々な状況に対処できるように組み合わせるし」
頷きながら考えを口にしたクレアにクリストフが眉間に皺を寄せた。
「魔獣使いは絶対に許さんぞ」
「運用するならの話だから。それに、単一にしなければならない理由もあるかもしれないよ」
「分からん理由をわざわざ口にするな」
再び微妙になりかけた場の空気を和ますようにイヴェールが抜刀したままの剣を納めた。
「そろそろ、戻りましょう。街道から外れた轍は気になりますが、街道の合流地点までが依頼の範囲ですので」
「それもそうだな」
ムスっとしたまま歩き出すクリストフ。
その横にイヴェールは並ぶと、おっさん冒険者だけに聞こえるようにそっと小さく告げた。
「クレアさんも思慮深く考えている事があると思います。少しずつでも話はした方が良いかなと思うのです」
他人の家庭の事に踏み込み過ぎたくはないと思いながら言ったイヴェールの台詞に唸りながら街道の先へと進むおっさん。
自然と列になり、最後尾を歩くルベアが内心、びっくりしていた。
(私、あんな風に父さんを嫌がったことなかったな……お父さんも、優しかったし……)
家族の数ほど親子関係も違うのだろう。
そもそも一般的な関係とはどのようなものなのだろうか。クレアとクリストフのやり取りが普通なのだろうかと過ぎる。
(きっと、あっちは大丈夫そうだけど……ね)
知り合いの二人を思い描いた。
もっとも、一般的な親子関係という話では当てにはならないかもしれないけれど。
●
無事に主要街道に到着し、待機していたビッグオウムに手続きする為、クリストフが向かう。
依頼となる廃道の安全は確保できただろう。だが、気になるのは真新しい轍の事だろう。
「轍の先まで確認できれば良かったのですね」
石に腰掛けて足を揺らすゲルダの言葉に一行は頷いた。
一応、廃街道から分岐した所までの地図には落としてあるし、現地には目印を残しておいたので見失う事はないはずだ。
イヴェールが懸念している事を口にした。
「魔獣が倒された事にも気が付くでしょうから、何かしらの準備はされそうです」
「新しい魔獣が配置されたりして」
苦笑を浮かべて応えるルベア。
あり得ない話ではない。1体しか扱えない訳ではなく、最低でも同種の魔獣を扱えるはずで、場合によっては繁殖もしているかもしれない。
街道での会話内容を思い出しつつ、キオルティスが訊ねた。
「クレアさんは、どう思う?」
「他にも居ると思う。熊だけだったのは試した可能性もあるだろうから」
人為的に同一種類を取り込ませたのなら、理由があるはずだ。それによって、取り込まれた個体同士に生じる差を観察できる。
ただ、何のために試したのかは分からない。熊の次は、他の魔獣を考えているかもしれない。それこそ、ドラゴンの眷属であれば更に強力な存在になるはずだ。
手続きが終わったようで、駆け戻って来るクリストフを視界の中に収めながら、シルヴィアは頭の中で思案を続けていた。
(馬車を使っているとなると盗品や人身売買の類か……轍が帝国側に続いていないという事は王国に出入りしているのだろうな)
幾人かの指名手配犯を脳裏に浮かべるのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人
2024年01月01日 22時45分49秒 公開
相談掲示板
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 目的としては「廃街道の安全確保」。魔獣討伐は成功の為の必須条件か。 安全確保の判定は各自三回ずつだから、どの汎用スキルを持っていくかはある程度決めておいて良さそうだ。廃街道と討伐後の魔獣、両方調べておきたい所だし、同じ汎用スキルを持って行くのも良いと思う。 >魔獣 甲殻類の下半身に、殻がある所には熊の上体が幾体も? 互いの鉤爪で互いを傷つけたりしないのだろうか……噴出する液体にはBS効果もあるかもしれないね。 「合成獣ではない様子で、正体を深く分析する為にはメインアクションを消費した上で、プレイングやスキル等を考慮した判定を行います」との事だから、戦闘中分析する人を決めておいても良いかもしれない。何があるか分からないし、出来れば二人は欲しいかな。 >個人行動予定 ヒーラーとして回復役の予定。余力があれば魔法攻撃も。 基本的には後方にいるだろうし、急いで回復する必要が無い時には魔獣の正体を分析してみようと思う。初手でもインフィニティロアを皆に付与しつつ分析したい。 汎用スキルは今のところ戦術眼・超視覚かな。
シーフのキオルティス。キオでもルティスでもお気軽に。 今回は宜しくね! 持って行く汎用スキルか…悩ましいね。場面ごとで色んなスキルが使えそうだ。 あまりにも手一杯になってしまうようなら、いっそのこと対魔獣と対魔街道とで 担当を決めて割り切ってしまっても良いのかもしれない。 >魔獣 ここで言う甲殻類は…鋏があるんだよね。 ってことはカニもしくは一部のエビ類やヤドカリと思って良いのかな? 液体を射出するってことは、良くあるカニが泡を吹くって言うのと同義かも。 俺もシルヴィと同様、BS効果はあるんじゃないか、と踏んでるよ。 それにしても興味深い個体だね。不謹慎だけれど観察は楽しそうだ。 >スキル 今の所、汎用スキルはサーマルアイと看破で行こうかなと思ってるよ。 あとは…宗波は持って行った方が無難かな、とか。 あくまで今の所の予定だけれど、ね。 >個人行動 1人で前に出て行ったクリストフさんが集中攻撃を受け過ぎてしまわないよう 主に熊に対してのヘイトを稼ごうかな、とか思っていたり。 皆の行動次第でこれも変動していくとは思うけれど、とりあえず、と言うことで。
シーフのクレアだよー、よろしくよろしく! 同行してるおじさんには色々思うことはあるけど、お仕事は頑張るよー! >安全確認 宗波と組み合わせるように看破、あとは超嗅覚あたりを持っていってするつもり。 あとは目視で地面とかに比較的新しい何かしらの痕跡がないかの確認もしておくよ。 >魔獣 見た目的になんかヤな匂いしそー……。 BS系持ってそうなのは同感。 あのおじさんも抑えにはなってくれるけど、確かに負担を1人に押し付けるのもアレだし……回避盾として分析の時間稼ぐのに回ろうかなー。
ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いしますね。 >安全確認 門外漢ではありますが、わたしも看破で魔獣やクリーパー、野盗などが付近にいる可能性があるか、確認してみますね。 >魔獣 単純に倒すのではなく、どのような生態かを確認して、今後同様の敵が出没した際に効率よく倒せるようにするのが目的……ですよね。 敵の物理防御力に左右されずにダメージを与えられる『概念破壊』は持っていけますが、こちらはある程度魔獣の能力が判明次第の使用になるかなと思います。 まずは普通に物理で部位ごとに攻撃してみて、攻撃が当たる部分、硬すぎて通らない部分などなど確認できればと思います。
すみません、遅くなりました。 イヴェール・イリュジオンです。どうぞよろしくお願い致します。 >安全確認 使えるとしたら看破と超視覚、超聴覚ですね。 今のところ看破と超聴覚で考えてはいます。 >魔獣 ヘイトを買う人は足りてそうですから私は殴って調べてみましょうか。 個人的には甲殻類と熊の部分は合わせて一つなのか、それとも別物なのかが気になるので埋め込まれた熊を一つ潰してみようかなと。
シーフのルベアよ、宜しく。 >安全確認 宗波と…汎用スキルは超視覚、看破で考えてる、かな。 >魔獣 あちらがBSを使ってきそうなら、こっちのは通るのかな…とかね。 私自身火力はないから、そういう搦手で色々観察していきたいかな。 防御低下とかでより脆くなる部位とかも見つかるといいけど。
皆がそれぞれ魔獣も魔街道も分析、って形になりそうだね。 そうすると。 戦闘中、分析するのはシルヴィが先に言っているように、順に 2人までずつっていう形にしておいた方が良さそう、かな? 役割が同じになりそうなゲルダさんとイヴェールさん、それから クレアさんと俺は確実に別の回に分析した方が良さそうだよね。 >魔獣 殻がある所には熊…と言うことは、殻は無い…んだよね? そうすると防御力はそれなりに熊頼みということなんだろうか。 それとも攻撃は最大の防御的な感じで、熊が居ることにより敵自身に 近付き難くしているから良い、と言うことなのかな…。 考えれば考えるほど、面白い個体だね。 >個人行動 ここまでの皆の手持ちスキルとかを見て来て、俺は先述のスキルで確定。 敵には熊のヘイトを稼いでクリストフさんの負担を軽くしつつ、分析は 看破とサーマルアイを使って行こうか…と。 魔街道の安全確認には宗波と看破、だね。
そうだね、魔獣分析用にエーテルリファレンスも持っていく予定だけどキオルティスさんとはタイミングずらしていくつもり。
キオが言ってくれたように、射出する液体は蟹が吹く泡なのではないかなと思っている。どんな効果があるか分からないし、解呪を持って行くね。 戦闘中に分析する時のタイミングをずらす事、同じ方針で動く人は違うタイミングにするのが良いというのも賛成だ。 >持参スキル 先述通り、汎用は戦術眼と超視覚。 特性スキルはウェイブ・オブ・インフィニティロアとワイドヒールプラス。 アクションはヒールと解呪、魔矢とメテオライトの予定だ。魔矢は別のスキルに変更するかも。 殻は無い筈、だけれど……各熊と甲殻類部分の生命力の合計が個体としての生命力になっているかもしれない。範囲攻撃を使って、熊個体それぞれと甲殻類の部分で被ダメージが違うのかも確かめたいと思っているよ。