【緑陰】銀雪の嫁入り?

炙りとろ左門

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シナリオID:3251

オープニング

 峻険なる北壁山脈の西に、その変わり者(エルフ)は隠棲していた。
 しっかりと組み上げられた山小屋の中に、目当ての人物と【ひよこ隊】、そして冒険者が入るとたまらなく狭く感じるが、致し方あるまい。よくて二、三人が住む程度の大きさの小屋だ。
 ナルシルはミュルグレスを捕まえて、ひそひそと声を潜める。
「なあ……あいつがお前の言ってた『父親の知り合い』か?」
「たぶん、そう」
 ミュルグレスが生まれて間も無く出奔した実父に関する情報は、殆どが母や族長からの伝聞だ。それによるとミュルグレスの父モーグレイは、極北へ向かう前に『イベル』というエルフを訪ねると言い残していたらしい。
 イベルはミュルグレスと同じ氏族の出であり、モーグレイとは旧知の間柄だったという。随分前に大森林の集落を出て行って北壁山脈へ移り住んだ――というのが、ミュルグレスの知るイベルの情報だ。
「父さんの名前、知ってたし……」
 ミュルグレスが娘だと言うと、何か引っ掛かることがあるのか、難しい顔をしていたが。
 そのイベルはというと、人数分の茶を淹れ終えたところだった。
「椅子が足りずにすまない。近隣の集落に人が住んでいた時でさえ、訪問客は多くて二、三人だった」
 雪風のような冷たい雰囲気を漂わせ、イベルは一同を見回した。
「それで、お前の父親の話だったか。確かにモーグレイは俺に会いに来た。あれから……二十年か? 確かに娘がいるという話も聞かされたが……」
「父は、極北へ旅立ったの?」
「そうだ、俺に極北で使える耐寒装備を作って欲しいと言ってきて、それで……、……悪いな。最近どうにも物覚えが……」
 ミュルグレスの問いに、イベルは眉間に皺を寄せて考え込む。
 その様子に、リディルとドゥリンもまたひそひそと声を潜めた。
「物覚えが悪そうなほど老けては見えないのに。エルフってすごいっす」
「ミューもだけど美人って迫力あるよね……」
「ああ、思い出した」
 イベルがはっと顔を上げ、一同の視線が集中する。
「確か耐寒装備の制作費を――『賄えない分は娘を嫁にやる』と言われていた」
 しん、と室内が静まり返った。暖炉の火が爆ぜる音しか聞こえない。
「は……はぁぁああ???」
 目を丸くするミュルグレスの代わりに唸ったのは、ナルシルだった。

● 借金返済!
 カン、と小気味よい音が青空に吸い込まれていく。ナルシルの斧が薪を割っている音だ。
『働かざるもの食うべからずだ』
 そうイベルに言われたのもあるが、暴れ出したいのを発散するためでもある。もう一年分の薪を作ったのではないだろうか。
「ナルシル、干すところ……なくなっちゃう」
 ミュルグレスはそんなナルシルの様子を見にきて、開口一番にそう言った。
「お前! ……っどうすんだよ!?」
 ナルシルの頭の中では「極北に向かうこと」「ひよこ隊の解散」「ミュルグレスが抱えることになった負債」「ミュルグレスの父が想像以上にクズ」がぐるぐると巡り、とにかくそれら全てについて疑問をぶつけた。ミュルグレスはやや困ったように眉尻を下げる。本人も割と本気で困っているらしい。
「とりあえず……父さんが迷惑かけた分は、どうにかしなきゃ」
「ま、マジで結婚すンのか!?」
 ナルシルは手から斧が滑り落ちそうになり、慌てて柄を握り直した。ミュルグレスはふるふると首を横に振る。
「赤ん坊を嫁にもらう趣味はないって」
「殴られてえのかあの野郎!?」
 ほっとした反面、モーグレイが踏み倒したという制作費も気になる。
「……で、返せるのかよ?」
 ナルシルが問うと、ミュルグレスは「それなんだけど」と切り出した。
「その耐寒装備を作るための……素材。それを必要な分集めてくれれば、いいって。できないなら、結婚だけど……」
「素材……?」
 ナルシルは首を傾げ、そして辺りを見回す。一面の雪と枯れ木が続いている。まさか薪を集めろということではあるまい。
「この時期に、極北から餌を探してくる魔獣がいるんだって」
 ミュルグレスの言葉にナルシルはにやりと笑う。
「魔獣狩り(モンスターハンティング)ってことか。久々に冒険者らしいじゃねーか」

解説

皆さんは【ひよこ隊】とともに、北壁山脈に隠棲するエルフ『イベル』のもとを訪れました。 アイテムクラフターであるイベルは、ミュルグレスの父モーグレイが踏み倒した制作費の支払いとして、極北の大羊「バロッシュ」の毛を要求します。 ▼ 依頼目標 今回は極北羊「バロッシュ」に関する情報を集めたり、討伐のための準備をするという段階になります。 バロッシュについて現状わかっていることは以下の通りです。 ・基本的に極北に棲息しているが、冬を前に餌を求めてこちら側へやってくる ・成体は体高15m、幼体は5m ・すでに北壁山脈でもその姿が確認されている 依頼の達成度によって、次回のシナリオ難易度が変化します。 = 関連NPC = ミュルグレス:ひよこ隊の隊長。ナイスバディのエルフ、キャスター。 ドゥリン  :同隊のイケメンヒューマン、ヒーラー。 ナルシル  :同隊の平坦ドワーフ、ウォーリア。 リディル  :同隊のボクっ娘ハフビ、シーフ。 イベル   :北壁山脈に隠棲する変わり者のエルフ。アイテムクラフター。 モーグレイ :ミュルグレスの父。極北を目指して大森林を旅立ち、そのまま消息を絶った。 = 備考 = * マスターページは参照しなくても問題ありませんが、描写やマスタリングに関する項目があります。 * NPCによる質疑応答はありません。

マスターより

全3回の【緑陰】の最終章、その第1回となります。 次回の依頼の難易度が……と書いてはいますが、プレイングが堅実ならばチョロいです。空いた字数で交流するといいと思うます、はい! それでは皆様のご参加&プレイング、お待ちしております!

リプレイ

 魔獣を討伐してその素材をいただく。そのためには情報収集である――冒険者たちはひとまず、周辺の環境や生態をよく知るはずであるのイベルから、話を聞くことにした。
「それにしても、何故こちらに住まわれているのですか?」
 その席を準備しつつ、イズレンディル・パラリムは当然の疑問を口にした。
 彼自身もまた、大森林の基準からしてみれば【変わり者】だ。世には【旅するエルフの一団】の存在も知られているとはいえ、わざわざ【北壁山脈】に住もうという者はそうそういないだろう。
 イベルもそのことは承知の上のようで、暖炉にくべられた薪を火かき棒で軽く整えると、クッションを重ねた椅子に身を預けた。
「制作に集中できるからだ。土や木々、風の囁きをはっきりと聞くには、人里は騒がしすぎる」
 そしてそれは、同胞の住む大森林も例外ではなかったのだろう。
「あのやたら大きな気味の悪い樹が生えてからは、どこもかしこも騒がしいがな」
 イベルが目を眇めてそういうと、シルヴィア・A(アルヴィン)・カペルは「そういえば」と問いを引き継いだ。
「その時は、この辺りも無事では済まなかったはず。今の北壁山脈の状況を教えてもらえるだろうか」
「そうだな。必要なことがあれば教えよう」
 イズレンディルが準備したワインから、ほのかに湯気がたちのぼっている。イベルはそのひとつを手にして、二人に座るよう促した。

● 調査:一日目
 細く吐き出した息が白く染まり、青い空に溶けていくのを、ライナ・フレイヴァルツはぼんやりと眺めた。【温度耐性】と防寒のためにマントを隙間なく着こんでも、身に染みる寒さだ。北壁山脈の環境は厳しく、とてもではないがヒトが好んで住むような場所ではない。それが『極北』ともなれば然もありなんである。
 だが、その上で目指す者は確かにいるのだ。竜の里然り、モーグレイ(ミュルグレスの父)然り、そしてミュルグレス自身も。
「……む」
 寒さで集中力が途切れていることを自覚したライナは、【チョコレートバー】を取り出してひとかけ齧った。寒さのせいで少し硬いが、これなら早々消費しまうことはないだろうと考え直す。
 気を取り直して、ライナはあたりを見回した。空を眺めに外に出たわけではないのだ。探索技能を持つ同行者もいるとはいえ、手分けしたほうが効率が良い。小動物の影やその巣を探して生態系の把握に努めつつ、また、身を隠せる場所や枯れ木の状態などを調べる。
 相手は極北の野生動物であり、平地の魔獣とは違う。準備を入念にしておくに越したことはない。
「それから、ええと……」
 ライナはついでと目当てのものを探す。
 同行者たちがイベルから話を聞いたところによると、バロッシュは草食らしく、特に好む植物があるのだという。
「このあたりでも食べられるもの(草)は少ないだろうに……」
 羊が食むことができるような柔らかい草は見当たらない。ここ一帯の植生も、匍匐性の植物を除けば、あとは低木になる。ライナは座り込めば身を隠せそうな低木が連なる場所を見つけ――そして、はっと気づいてそれに触れた。
 イベルから「バロッシュの好む草」として聞いていた植物の特徴と一致する。枯葉のように見える葉は、見た目に反して柔らかくやや厚みがあり、中にゼリー状の栄養素を閉じ込めているという。ライナは一枚葉を千切ってそれを確かめた。
「……まあ、草と言えば草……? いや、でも、これは」
 葉はまだしも、方々に伸びた枝は硬く、節も多い。火おこしに使えそうなほどである。
 ライナは目を閉じて、家ほどの体高の子羊が低木を食む姿を想像した。普段ぼんやりと牧草を食んでいる家畜(ひつじ)と、縮尺(スケール)は一致しそうなものだが……。
 いや、であれば、確かめれば良いだけ。ライナは一旦この情報を持ち帰るのだった。


 ヴァンゲルス・ロッドの地形調査は順調だった。人の重さでは崩れないような場所も、話に聞くバロッシュの体を支え切れるかはわからない。罠を張る場所としてはいいかもしれないが、崩落に巻き込まれては手落ちだ――ということで、地図にまたひとつメモを書き足していく。
「そういえばミュルグレス、そのあたりは雪が積もってるだけ――」
 ヴァンゲルスがふと気づいて振り返ると、もすっという音と共にミュルグレスが肩まで雪に埋まった。それでもまったく表情が変化しないので、埋まった先で枝や鋭い石に傷つけられたりといったことは起きなかったらしい。たぶん。
「相変わらずだねえお前さんは……」
 直立した状態で肩まで雪に埋もれているミュルグレスを、ヴァンゲルスは助け出してやる。慎重に雪をかき分けて近づき、ミュルグレスの両脇に手を差し入れるとそのまま持ち上げた。
「……ありがとう」
 ミュルグレスの表情は心なしか申し訳なさそうだ。ヴァンゲルスは「今更だからな」と応え、安全な場所へと降ろしてやる。
「最後まで見届けるっつったろ。本人の望まぬ結婚ってのも、どうかと思うしな……」
 そこでふと浮かんだ疑問について、ヴァンゲルスは尋ねる。
「そういや、ミュルグレスにはそういう、懸想するヤツってのはいたりするのか?」
「けそうする」
「『好き』だってことだな。お前さんの父親と母親が子(お前さん)を望んだように、そう思える相手だ」
 ヴァンゲルスの問いに、ミュルグレスはやや眉根を寄せて考え込んだ。ここまであからさまに『難題だ』という顔を他人に示すのは珍しいかもしれない。
「分からない。ずっと一緒にいられないのに、どうして?」
「……なるほど」
 ヴァンゲルスはミュルグレスの言葉の意味を理解した。ミュルグレスにとって、想い合う二人の関係は永遠ではないのだ。生まれたばかりの娘と、病の母を置いて出て行った父という構図だけを見れば、そうだろう。
「ヴァンは……けそうするひと、いる? 怖くはならない?」
 逆に問われ、ヴァンゲルスは目を瞬いた。
「お前さんは、恐ろしいと思うんだな」
 だが、それについての答えはすでに出ているはずだ――自分にとって輝きに満ちた、大切なものだと思えるのなら、失われる未来を恐れる前に手を伸ばし、足掻くものなのだと。


 フロマーシュ・ダイヤドロップは共有された情報をもとに、地図に低木の分布を書き込んでいた。
「うーん……バロッシュのような大きな生き物が近づいた形跡は、ないですね」
 イベルの小屋周辺の地形は岩や崖が多く、道は細い。ある程度の大きさの生き物は入ってこられないようになっている。もう少し探索範囲を広げる必要がありそうだ。
 そうして荷物を背負い直して探索すること、小一時間。罠を作れそうな場所も物色しながら、必要があれば設置の準備をしておく。それに仲間たちが引っかからないよう、こまめに情報を交換し、気づくととっぷり日が暮れていた。
「まあ……いつのまに」
 雪山で、日が落ちてからの行動は危険だ。フロマーシュは踵を返す。

 調査初日、バロッシュとの接触はなかった。

● 調査:二日目
 シルヴィアはありあわせの食材で朝食を用意しつつ、寝ぼけ眼を擦るミュルグレスと言葉を交わしていた。
「君がまだひよこ隊と一緒にいて安心したよ。君のお父様の行動には驚いたけれど……好意的に解釈するなら、娘を預けられる人物として、旧知の相手を選んだというところかな。イベルも君のことを恋愛対象とは見ていないようだし、親心とも言えなくもなさそうだ」
 切り分けたパンに卵とハムを乗せて焼いたものをそれぞれの皿に用意して、シルヴィアもまた席に着く。
「それはそれとして、再会できたら物申すくらいはしてもいいと思うけど……そういえば、モーグレイも星辰に導かれたのかな。そもその『星辰』とは……なんなんだい?」
「特別なものじゃ……ないよ。星占い」
「エルフたちが授かる神託とは、また違うんだね」
 シルヴィアの問いに、ミュルグレスは小さく頷く。生まれたばかりのミュルグレスと、病の妻を置いて出て行ったモーグレイは、征竜を探しに極北へと向かったのだということ。征竜信仰の徒でもなかった父が、なぜ征竜の元を目指したのか――その理由について、星は同じく極北の地を示したことを告げられ、シルヴィアは考えを巡らせる。
「なるほど。征竜、か……」
 帝国と、この大陸をめぐる争いに関わっている存在だ。モーグレイは20年前に、何かを予見したのだろうか。
 ――監視者。
 ふと、シルヴィアの脳裏に蘇るものがあった。灯した小さな火、褪せた記憶の中で、ある女が綴っていた文字。此度の王国での戦いでも気になることは多くあった。
「……おかわり、していい? とっても、おいしかった」
 シルヴィアの思索に、小さな呟きが割り込んでくる。顔を上げると、ミュルグレスが空になった皿を寂しそうに見つめていた。食べ終わるのが早い。シルヴィアは苦笑しつつ、頷いた。
「もちろん。冒険者は体力が資本だからね」


 二日目の調査に出る前に、ナハティガル=ラーは他の冒険者たちを集めた。
「では予定通り、イベルからの話と、各々の調査結果を整理したい」
「私が書きまとめますね。必要に応じて、適宜加筆していただければ」
 ナハティガルの提案に、フロマーシュが主筆記者として名乗りをあげる。
 高山という環境で体力を温存することは、何より重要なことだ。昨晩は休息を優先した面々は、おかげか不調を訴える者はいない。
 フロマーシュは紙を広げ、線を引いて分割する。
「まずは『バロッシュの好む草』について……実際には低木であり、そこかしこに植わっています」
 その分布については、遠目に確認しただけの場所も含めて、各々の地形調査であらかた判明している。フロマーシュが別紙に書きとった簡易地図に、イズレンディルがさらに詳細を書き加えた。
「この植物について私も少し調べてみたのですが、同じ種類の植物でも味や香りと呼べるものが異なるようです。バロッシュが特に好む品種があるかもしれません」
「……不可解なのは、まだバロッシュを目撃できていないことだ。聞く話では、幼体すら家よりでかい……すぐ見つかりそうなものと思ったんだがな」
 ナハティガルは腕を組む。ナハティガルも日中周囲をくまなく調査したが、バロッシュとは出会えなかったのだ。
 それなのですが、とイズレンディルは続ける。
「もしや、夜行性なのではないでしょうか。であれば、イベルさんが『実際に姿を見ることは少ない』と言っていたのも頷けます。一般的な羊の習性には当てはまりませんが……」
「……確かに低木を枝ごと噛み砕く魔獣だ、羊らしい習性を持っている方が珍しいかもしれん」
 ナハティガルはイズレンディルの言葉を受け入れる。フロマーシュはその様子を見て、続けて『バロッシュの生態について』と書き連ねる。
「夜中に一度吹雪いてしまえば、当然足跡などの痕跡は辿りにくくなりますね。となれば食痕が頼りですか」
「そうだね……」
 フロマーシュがむうと唸ると、シルヴィアは簡易地図に書き込まれた低木の分布と、先日ヴァンゲルスとナハティガルの調査で作成された地形図を手に取って照らし合わせる。
「となるともう一度歩いてみて……いや。フロマーシュ、この辺りの風景を覚えている?」
 シルヴィアは地図のある箇所を指し示し、フロマーシュに尋ねた。
「ここですか? うーん……木も含めて、バロッシュ相手に隠れる場所があまりなさそうだな、とは……」
 口にして、フロマーシュはあっと気づく。
「つまり、バロッシュにとっては動きやすくて、見晴らしが良い?」
「なるほど。重点的に調べてみてもいいかもしれませんね」
 イズレンディルも頷き、冒険者たちは夜間に更なる調査を行うことを決定した。

● 調査:三日目
 ――一夜明け。ナハティガルは帰還後こぞって暖炉の前に集まった冒険者たちと一緒に、雪で濡れた装備の手入れを行っていた。
「高山における夜間哨戒はやはり、堪えるな……」
 往々にしてそのようなこともないとはいえないのが、冒険者稼業というものだ。
 しかし、バロッシュがどこから現れるのかは把握できた。夜半、シルヴィアが【戦術眼】で割り出した場所に張り込むこと数時間、バロッシュたちは付近の裂け目から現れ、夜明け前にそこへ引っ込むのだ。
 冬を越えるための準備をするのであれば、蜻蛉返りということはあるまい。この北壁山脈のどこかに、一時的に留まる場所があると考えるのが自然だ。そしてその体躯を考えれば、少なくとも熊穴など既存の野生動物の巣穴を利用することはできない――ナハティガルの予想は当たっていた。
 クレバス上の裂け目の下には、深い谷が広がっているようだった。この谷を抜けると極北へと辿り着けるのか、バロッシュにとっての巣穴なのかは分からないが、いずれにせよこれで罠を張ることができる。
「ミュルグレスも極北を目指すなら、雪中行軍に適した装備を買い揃えた方がいい。金属鎧ではなく革か布だな」
「そうだね……ナルシルとかは死活問題、」
 そう言って、ミュルグレスは不自然に言葉を切る。ぱっと目を伏せた様子を見て、ナハティガルは話題を変えた。
「極北行きは、単なる好奇心や冒険心ではなく、親父さんを探してだったんだな」
「うん」
「……征竜が関わっているのか?」
 ミュルグレスはまた頷く。それは、シルヴィアにも明かしたことだった。
「詳しいことは聞いてみないと、わからないけど」
「会いに行くのか」
 続く問いかけに、ミュルグレスは伏せていた目を閉じ――そして、ナハティガルを見つめ返した。
「おとうさんがひとりで命を賭けた理由を……私は、知らないといけないから」
「……なるほど。アンタは親父さんに似たのか」
 ナハティガルの言葉に、琥珀色の瞳が瞬いた。そこへ、イズレンディルが薬草茶を手にやってくる。
「お二人もどうぞ。近くに大森林にある(見知った)植物を見つけたので、煮出してみました。体が温まりますよ」
「ああ、ありがとう……」
 ナハティガルは甘やかさと爽やかさが同居する芳香に興味をそそられたようで、受け取ったカップに視線を落としている。イズレンディルはミュルグレスにもそれを差し出しながら、柔らかく微笑んだ。
「今回の依頼については、もう報告書を残すのみ。できればその間、これまでの旅の話を聞かせていただきたいのです。大森林からいらしたということでしたから」
「うん……」
 ミュルグレスはどこか懐かしい香りがする茶を受け取った。
 イズレンディルの氏族と、ミュルグレスの氏族に関わりはない。だが、大森林(フィルエス)という共通の故郷を思い出す香りだった。
「旅は、楽しいですか?」
 その上でなされる問いに、ミュルグレスにも思うところがあったのだろう――目を細め、これまでの歩みに思いを馳せるように沈黙し、そして是と答えるのだった。

マスターコメント

お疲れ様でした! 情報も出揃い、有利な状況で討伐を開始できそうです。リプレイで描写されていない調査項目の結果については、次回のOPにて補足させていただきます! ご参加ありがとうございました! それでは、また~。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2023年10月24日 09時24分02秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. イズレンディル・パラリム

    エルフのキャスター、イズレンディル・パラリムです。 始めましてと、ご無沙汰しております。 同郷の方が極北を目指して旅をしていると聞きまして、気になって追いかけて参りました。 ひよこ隊の皆さんともですが、イベルさんとも少し交流が出来れば良いなと思っております。 さて、今回は極北羊討伐の為の「情報収集と準備」ということですね。 私は今のところ、情報収集を行う予定で考えております。 極北羊がこのあたりに来るのは毎年の事でしょうから、イベルさんや近隣の村々からお話を伺えるのではないかと。 情報収集と準備で程よく分担出来ると良さそうですし、もしも担当が偏りそうでしたら準備の方に回ろうとも思っております。

  2. ライナ・フレイヴァルツ

    同じくキャスターのライナ・フレイヴァルツだ。 皆よろしく頼む。 極北か。道は険しく大変な道のりだとは思うが少しでも手助けできたらと思う。 耐寒装備を作るための素材として極北羊を討伐するということのようだな。 体躯も相当のもののようだし、1頭を捕らえ仕留めるだけでも一苦労だろうな。 確実に捕らえる手段と、生態を確認する必要があるように思える。 餌を求めて来るのだから、この周辺の生物などが関連してくるだろうか?

  3. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    ウォーリアのフロマーシュ・ダイヤドロップと申します。 皆様よろしくお願いいたしますっ! 極北に向かうひよこ隊の皆様の手助け、私もしていくことができましたらっ! 北壁山脈にやって来る極北羊を討伐して、その毛皮を手に入れる…今回はその為の準備をしていくのですねっ。 成体の大きさはもちろん、幼体もかなりの大きさなのですね… その情報がある分、成体が幼体を伴っている可能性はありそうですっ。 行動する時にどれだけの群れで行うかを知り、 それに基づいた対策をするためにも、 極北羊に相対した経験がある方から知識を得られればよいのですが… それに伴い必要な物も把握して、それを参考にして準備をしていきたいところですっ。

  4. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。今回はよろしくね。 イズレンディルは久しぶり。一緒に頑張ろう。 北壁山脈で自給自足の生活は難しいし、クラフターというなら取引先がある筈。 OPで「近隣の集落に人が住んでいた時でさえ~」と言っていたから、イベル以外から情報収集する場合は少し遠出をしての聞き込みになるかも。村々に行くなら、雪山で使える道具や捕獲に使える道具を買い揃える事も出来そうだね。 バロッシュの生態を確認しておくのは重要だと思う。既に北壁山脈でもその姿が確認されているようだから、直接目で見て生態を確認するも良さそうだ。 討伐のための準備というのは、罠を作るとか、餌となる草を集めるとかだろうか。生態確認の上でになるけれど……魔獣とはいえ羊だし、肉食ではないと信じたい所。滑りにくい雪原用の靴やこの辺りでも使える防寒具、携帯食を用意するのも良いと思う。 情報収集と準備、私は何方でも構わないよ。雪深い地域は新鮮だしね。 現地でバロッシュを探して調査する場合は、事前にイベルに北壁山脈での注意事項を聞きたいという位かな。ひよこ隊にも挨拶出来れば。

  5. イズレンディル・パラリム

    シルヴィアさん、お久しぶりです。 お会い出来て嬉しいです。お元気そうで何より。またよろしくお願いしますね。 近隣の集落に関してはワールドガイドも確認していたのですが、北壁山脈からは退避済みとの話がありましたので、本当に付近には人が居ないのかもしれません。 仰る通り自給自足は難しいのでどなたかは居るのでは、とも期待しているのですが、もしも居ない場合はイベルさんからお話を聞くだけとなりそうです。 ライナさんの仰る通り生態、特に餌は何かという点は確認したいですね。餌のある場所で待ち伏せて討伐するのが確実そうですから。 単独行動なら楽なのですが、フロマージュさんのご指摘通り群れている場合は、見張り役等の役割分担があるのが一般的です。その点も確認したいですね。 上記の件はお話を伺ってみます。 また餌に関しても植物共感でこの時期に実る植物を探してみますね。

  6. ナハティガル=ラー

    遅参申し訳ない。 シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 >行動 先ずはイベルから情報収集(北壁山脈の地形やバロッシュの行動範囲等)した後、 バロッシュの目撃情報があった地点を起点とし、移動しながら【捜波・改】でバロッシュの探知を試みる予定だ。 >防寒具・携帯食 手持ちの装備で賄わざるを得ない場合、防寒具として使えそうな物はマント位だろうか? 携帯食の方はチョコレートバー等を持って行こうと思っている。

  7. ライナ・フレイヴァルツ

    ナハティガルさんもよろしくな。 後はヴァンゲルスさんがまだ確認できていないが、 たぶん大丈夫だと思いたい。 >行動 捜波があるなら、探すのもだいぶ楽になりそうだな。 位置を特定したうえで生態観察という流れかな。 イズレンディルさんが言っているように餌の特定ができれば、 それをもとに誘導も容易くなると思う。 ある程度長い時間生態観察ができるように、 汎用スキルは温度耐性と隠蔽を持っていこうと思う。 位置特定後は気づかれないように隠蔽しながら、見張り役兼生態観察かな。 子を連れたって歩いていたりする場合は、おそらく親は気性が荒くなると思うので そこは気を付けたいところだ。 >討伐の準備 罠はやれたとしてもロープを木と木で縛って水平拘束して足を引っかけるもの が現実的かなと思う。体が大きいから強固にしないといけないのもあるが、 周りの木々にもよるが枯れ木だからどうかな。 体が大きいと足元は疎かになるだろうから、効果は少しでもあるんじゃないかなとは思う。 落とし穴は極北羊の体躯から見ても手で掘るのは現実的ではないが 穴掘り紋具「グレイウォッシャー」があればあるいは…。 >防寒具 そうだな、少なくともマントは持って行ったほうが良いかもしれない。 フレーバーにも記載されていることから、多少は効果があるかと思う。 後は汎用スキルで特段持っていくものがないなら温度耐性あたりも良さそう。 寒い所で飲む紅茶などは温かいものなら格別の美味さだろうが、 アイテムとして持って行っても飲む頃にはカチコチになりそうだ。 残念ながら飲み物系は期待できない…。

  8. ヴァンゲルス・ロッド

    すまない、顔出しが遅れた。シーフのヴァンゲルスだ。よろしく頼む。 俺も基本行動はナハティガルと似た感じになると思うが、そっちが捜波ならこっちは探波をメインにするかね。 場所が場所だけに、雪に埋もれた窪地なんてのも存在する可能性がある。討伐する場所を選定するのも大事かと思ってな。 位置特定が出来れば、その後は戦場に出来そうな位置を見定めつつ、天然の落とし穴になりそうな場所がねぇか探してみることにするぜ。罠を掛けるならそういうところを狙えば良い。 グレイウォッシャーは下手に穴を掘ると雪崩を誘発させる原因になるかもしれん。もし掘る奴がいるなら地質学も持って行ってサポートを考えている。

  9. シルヴィア・A・カペル

    中々顔を出せず申し訳ない。 君も元気そうで良かった。こちらこそ、改めてよろしく頼むよ>イズレンディル ナハティガルとヴァンゲルスが調査用のスキルを持って行ってくれる事、有難い。 イズレンディルとライナのスキルも生態観察に有用だと思う。 >行動予定について 流れを見るに、基本的には全員で動く感じでも良さそうな気がするね。各自で重点を置く場所は決めつつ。 >防寒具や携帯食 手持ちの装備なら既に言ってもらっているように防寒具はマント、携帯食はチョコレートあたりが良さそうだ。 雪山で飲む紅茶は格別だろうね。マジカルポケットの中は時が動かず、状態に変化がないと聞いた事がある。ボトルに温かな紅茶を入れて、マジカルポケットに入れて持って行くことは出来るかも。 吹雪になる事もあるのかな……不要だとは思うけれど、念のためゲルを持って行くね。 >罠 羊飼いは羊の捕獲のために杖で羊の足を引っかけて転ばせるし、足を狙う罠や戦術は有用だと思う。大きいからこそ足元が疎かになるのも同意だ。ただライナが言ってくれたように相手が巨体過ぎるのと、周囲の木々の状況によっては難しいかも。ヴァンゲルスが選定してくれた戦場の状況を見てかな。 私はグレイウォッシャーは持っていなくて……天然の落とし穴を探してくれるなら助かるよ。 私はイベルに羊の生態や北壁山脈について詳しく聞いておこうかな。生態調査後、情報を纏めて次回の作戦について皆と相談したい。 スキルは戦術眼と話術、アイテムはマントとゲルとロープを持って行く予定だ。チョコレートも持って行きたかったけれど枠が足りなかった。出来るだけ体力を温存しながら調査するよ。

  10. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    なかなか顔出しできなくて申しわけございません! 偵察を行っていただける分、私は落とし穴に使えそうな場所の調査を含めた、罠作りを中心に行っていこうと考えておりますっ。 相手が相手な分、大掛かりな作業になりそうですので、建築・土木を用いて作っていくつもりですっ。 それに加え、今のところは温度耐性を用意する予定ですが、必要に応じて隠蔽に変えることも考えておりますっ。 あ、あと、移動力とチャージングを使って皆様の間の連絡もできたら、でしょうかっ。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0