【呑竜】全てはレイウェスト皇子殿下のために【茜蔓】
岩岡志摩
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シナリオID:3242
オープニング
この話には不快な言動を行う人物が複数登場します。
●殺戮
燃えている。
リスタ子爵領にある村が燃えている。
家屋が焼け落ちる中、柱に縛り付けられた老人が「孫達の命だけは助けてくれ」と懇願する前で、帝国兵は言った。
「レイウェスト皇子殿下を害さんと図る犯罪者どもに、今日を生きていい資格などない」
子供だけでも助けてと懇願する女性の腹と胸を別の帝国兵が槍で貫き、血飛沫と悲鳴をあげさせる。
老人の娘でもあるその女性を刺し貫いたリザードマンの帝国兵は、血飛沫を浴びながら恍惚の表情を浮かべる。
「喉を貫いてから埋めてやるぞ。その前に最後のご奉仕だ。楽しませてくれ」
そう言うとリザードマンは何度も何度も老人の娘を槍で突き通し、新たな血飛沫に染まる。
やがて別の帝国兵達も殺戮に加わり、村人達を殺し始める。
殺された家族に泣いて縋りつく子供達を無理やり引き離し、攫っていく。
その中で帝国兵は、抵抗の激しい子供達を手近な柱へと括り付けていた。
「ついでだから射撃訓練といこう」
「はい!」
エルフの帝国兵が配下に声をかけ、柱に括り付けられて泣き叫ぶ子供達を共に狙い、矢を命中させる。
「良い腕だ。あまり急所に当てるなよ?」
「わかりました!」
やり取りを交わしながら、エルフ達は子供達を射抜き続ける。
「こうしてレイウェスト皇子殿下の役に立てるのだ。奴らも本望だろう」
エルフは子供達の泣き声が小さくなる様子を満足そうに見つめている。
さらに別の帝国兵が子供達へ油を振りかける。
「家族と一緒に同じ所へ行けるんだ。感謝してくれよ」
帝国兵は笑いながら火を放つ。
いたいよぉ。
あついよぉ。
たすけてぇ。
ままぁ。
おじいちゃぁん。
「あぁ……実に美しい。いい音色だ」
生きたまま焼かれる子供達を帝国兵の指揮官は恍惚の表情で見つめる。
槍で貫かれながらも老人が「やめてくれ」「子供達の命だけは」と悲痛な叫びをあげる中、指揮官は老人やその家族へと言い放つ。
――まだ死なないでくれ、と。
「もっと苦しむことができるだろう? もっと頑張ることが出来るだろう?」
その苦しむ顔を。
その悲鳴を。
その愚かしいもがきを。
「もっと見せてくれ。もっと聞かせてくれ。レイウェスト皇子殿下のために」
やがて殺戮を終えた帝国兵達は、村全体へとさらに火を放つ。
「まだ苦しむことは出来ただろうが。死ぬのが早すぎる」
指揮官は不満げな顔で炭化した子供の骸を蹴り飛ばすと、ある文言の書かれた旗を残し、兵達と共に去っていく。
彼らが去った後、ある人物――メイレが村の異変に気付き、立ち寄った。
メイレは柱に縛られながらも辛うじて息のあった老人を拘束から解き放ち、介抱する。
全身に突き刺さる矢と刺突の大半が急所を外していたためか、老人にはいまだ息があった。
だが既に血が大量に流れ、手遅れの状態だった。
老人は息も絶え絶えに、村を襲った者達のことをメイレになんとか伝える中。
どこにそんな力が残っていたのか、血まみれの顔を煮えたぎる憎悪で歪ませ、老人は慟哭の叫びをあげる。
「娘や孫たちが……みんなが一体何をした! 何故あの子達をなぶり殺しにした!」
その慟哭には行き場のない愛情と大切な家族を失った悲しみと。
「あの子たちは、あんな下種どもの欲望を叶えるために、殺されるために生まれて来たんじゃない!」
そして村を滅ぼした帝国兵達への憤怒に満ちていた。
震える手で老人はメイレの服を掴み、最後の力を振り絞って懇願する。
――あの帝国兵達に報いを与えてくれ。
「わかりました。約束します」
メイレがそう誓うと老人は僅かに表情を緩め、息絶える。
看取ったメイレ――ロコは、帝国兵達が残した旗を確認する。
旗にはこう書かれていた。
――我らレイウェスト・バルダス皇子殿下の命に従い、この地を浄化した。その証をここに残す。
――我らの意志は殿下のご意思。殿下への忠誠こそ我らの誉れ。
「私の故郷や大切な人々を奪った時と、まったく同じ手口を使いましたか。ならば貴方がたも私の敵です」
ロコは旗を回収すると、この場で得たものをしかるべきところに送り始めた。
ロコからの情報は様々な人々を経て、先の暗殺未遂をやらかしたリスタ子爵への監視名目で派遣された王国騎士のもとにも届く。
情報を受けた王国騎士は、リスタ子爵領内で暴れる帝国兵が偽者で黒幕が誰なのかを看破すると、一番近くにある冒険者ギルド支部へ使者を送る。
――帝国軍を名乗る痴れ者達を倒すため、戦力となる冒険者達を派遣してもらいたい。
――重要な案件のため報酬は増額する、と。
●討伐
そして帝国兵達はリスタ子爵領内にある町に到達する。
町の周囲は見渡す限りの平原で、彼らを阻むものはない。
「では浄化を始めよう」
街を前に指揮官が命令を下す。
「立ち向かってくる者は殺せ。逃げる者は殺せ。降伏する者は殺せ。交渉を持ち掛ける者は殺せ。動いている者は殺せ。隠れる者は殺せ。何もしない者は殺せ」
命令は帝国兵全体へと浸透していく。
「目のつくものは壊せ。その場にいる者は全て殺せ。その血を浴び、その苦悶と悲鳴をレイウェスト皇子殿下に捧げよ」
その命令に従い帝国兵達が街へと進撃を開始する。
――我らが命。我らが全てはレイウェスト皇子殿下のためにあり!
帝国兵達の唱和は、何者かの声に遮られる。
「そのような命令は聞いていない」
声の主はリスタ子爵領を監視するため、派遣されてきた王国騎士だった。
依頼を受けた皆様も、続々とその場に姿を見せ始める。
「ここは貴殿の領地ではないぞ、サディ男爵。誰がこのような真似を許可した?」
王国騎士が看破した通り、指揮官を名乗る男はリーンエス王国に属する貴族であり、貴族派の生き残りだった。
だが指揮官――サディ男爵は王国騎士の問いに答えず、感謝を伝えてきた。
「我々への助力として冒険者の皆様を派遣してくださったこと、感謝いたします!」
男爵は王国騎士や周囲にいる皆様冒険者達の協力によって、リスタ子爵領内の住民達を浄化できたと声を張り上げる。
そのような事実はないが、男爵は声高に王国騎士やこの場にいる皆様も同志だと叫ぶ。
――まるで町にいる人々に向け、宣伝するかのように。
「レイウェスト皇子殿下のため。共にこの町を浄化しようではありませんか! メアリー王女殿下もきっとお喜びになられることでしょう!」
だが王国騎士はサディの言い分を容赦なく切り捨てる。
「我々は貴殿が率いる者達の素性も、貴殿とリスタ子爵の関係も把握している。――貴殿が陽動目的で動いていることもな」
既に王国騎士は男爵の率いる帝国兵達が陽動役となって暴れ、その間にリスタ子爵の手勢が本命の行動を実施する作戦だったことも突き止めていた。
「貴殿達の犯した罪を、レイウェスト皇子殿下に被せることはできない」
王国騎士の指摘を受けても、サディ達は動じない。
「では貴方がたにも死んでもらいましょう。死者は何も語れません」
不敵に言い放った男爵を、王国騎士は冷静に見据える。
眼前のサディ男爵には寄親がいたが、先日の騒動で死亡したため、今はいない。
このため王国騎士は、自身に与えられた裁量権を行使することにした。
「男爵だけは生け捕りにしろ。後は好きに処分して構わん」
王国騎士からの指示を受け、皆様は男爵や帝国兵への対処を開始した。
解説
マスターより
リプレイ
ハヤト=ガラン=ヴォルファングは天眼を駆使して北東方面より平野を見渡し、今の状況を把握する。
「よぉ、糞ッタレ共……テメェらの罪を禊(みそ)いでやるよ……」
ハヤトの声音は底冷えの響きを伴っていた。
軍神の祝福をもとに、ハヤトは瞬間的な加速を駆使して南下し、シルトラース帝国兵へと突っ込んでいく。
既にこの場の帝国兵達は全員偽者だと判明していた。
「テメェらにかける慈悲はないぜ」
最も東側にいた偽帝国兵の群れに躍り込んだハヤトは双神刀 紅狗璃を振り抜き、その1人を切り裂いた。
胴を斬られた偽帝国兵は鮮血を撒いて倒れ、絶命する。
「弱すぎるぜ。手加減してもこの様かよ?」
ハヤトは手加減したつもりだったが、予想よりも敵が弱いと分かると、さらに手加減できるやり方を思案する。
「さて、痴れ者どもを鏖にする時間だ。一人も逃がさん」
北より進出したベルク・オスマットは討滅を宣告する。
「徹底的に鏖にして、貴様らが誰なのかも何人いたのかも分からぬ程にずたずたに引き裂いて殺してくれる」
――降伏は一切受け付けない。他が降伏させた者も殺す。
ベルクは偽帝国兵の中にいる授恵者2人のうち、ロムを標的に定めて駆け出した。
ロムが迎撃態勢を整える前に、その懐へと踏み込んだベルクの殺刀【指折り】がロムの胴へと突きあがり、貫いた。
目を見開いたロムより血が噴き出し、ベルクは殺刀【指折り】を引き抜くと、相手を惑わし狙いを絞らせない攪乱戦術を駆使して飛び退き、ロムとの距離を置く。
「いや本当に貴方策謀に向かないですよ、頭悪すぎます。本当に貴族なんですか?」
ベルクと同じく北側より進み出たグレイブ・ヤードは、やや遠くにいるサディ男爵を見据えて酷評する。
グレイブは自身の遠き日における誰かの在り方も駆使しながら、男爵に届くよう声を張り上げる。
「聞こえるように話しましょうか。『死者は何も語れません』とか、何でこういうタイプって過信するんでしょうね?」
そしてグレイブは男爵にある指摘を行う。
「王国騎士がこの場から離れた時点で、この場での情報を持ち帰られていますよね? 追わないんですか?」
「お前たちを倒した後で始末するだけだ」
グレイブの指摘を男爵は一蹴する。
「まぁ数がいれば多少は兵の質も無視できますけれど……」
グレイブより呆れを含んだ声が漏れる。
――多少で済めばいいですよねぇ?
グレイブは胸中でそう呟き、発動したリジェネーションを自身へと付与する。
人体の再生を促す術がグレイブの生命を支え、グレイブは町に抜けられないよう男爵達を迎え撃つ。
「この醜聞を第3者であるゴールディとして見聞する事が、私の仕事になるのだ」
北西方面にある岩陰に身を潜めたストレガ・L・リベルガストラは、自身の役割をそう定める。
「大半が非授恵者とはいえ、弓があるから用心をしているのだ」
――慢心はしないのだ。
意識を引き締めたストレガは、捕捉した偽帝国兵達めがけて稲妻めいた光が荒れ狂う空間を展開して包み込む。
空間内で蠢く稲光は、無数の蛇のように偽帝国兵達へと絡みつき、その移動を阻害していく。
「範囲外にいる敵には、これで倒すのだ」
ストレガは雷蛇大禍の外にいた偽帝国兵達のもとへ、光り輝くエーテルを急速に収束させると、その場に氷嵐を巻き起こす。
まともにその威力を浴びた偽帝国兵達は一撃で絶命して倒れ、骸と化す。
「帝国兵を騙る腐れ外道共が――」
南東側から進出したアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは、自身の戦略眼に基づき男爵を狙う。
「貴様等は虐殺行為を行った上に、レイウェスト殿下の名を貶め、帝国の名を穢し、帝国騎士の誇りを傷つけた」
虐殺自体も論外だが、レイウェスト・バルダス皇子の意志だと騙り、帝国や帝国騎士の名誉を著しく貶めたことへの怒りが、アルベルトの胸中で延々と燃え続けている。
「もはや死すらも生温い!」
瞬間的な加速を披露したアルベルトは、途中にいた偽帝国兵達を突破し、男爵へと迫る。
男爵が長杖を向けるよりも前にアルベルトは男爵へと肉薄し、稲妻さえも叩き斬ると謳われるほど、素早く鋭い一撃と化したシュトルツが斜めに斬り下ろされる。
男爵はエーテルバリアで抵抗してその威力を減らしたが、斬られた箇所より血が噴き出し、男爵の顔が苦痛に歪む。
そして北西側より、ラティア・ミゼリアも攻勢に加わる。
「……死んでもらうと言われました。……でも私は、死ぬつもりはありません」
ラティアは男爵が発した言葉を反芻した上で、自身の意志を告げる。
そのままラティアはハートスナイパーを構え、偽帝国兵に向ける。
「……男爵以外は好きに処分して構わないと言われました」
ロムに狙いを定めたラティアは、ハートスナイパーに光を集中させていく。
「なら私は、今この時も、これからも……」
――ヒトに殺されないために、ヒトを殺します。
呟きと共に、ラティアは極大の光を纏った高速の一射を撃ち放つ。
閃き飛んだラティアの一射はロムの頭部を貫き、射抜かれたロムはその一撃で命を断たれて横転し、動かなくなった。
●命乞い
「図に乗るな! 者ども反撃しろ!」
眼を怒らせた男爵の命令で偽帝国兵達は反撃を始め、各方向にいる冒険者達へと矢羽根の飛翔音が降り注ぐ。
「当たらないぜ」
ハヤトは攻撃の軌道を見切ると、射線より身を退いて回避する。
「テメェらは全員仲良く達磨さんにしてやるぜ」
ハヤトは瞬間的な加速を駆使して偽帝国兵の1体へ肉薄すると、加減した蹴りが偽帝国兵の腰に打ちこまれる。
蹴りを受けた偽帝国兵の腰が異音を発してへし折れ、偽帝国兵は顔を歪ませて昏倒した。
(次は雑兵の皆殺しじゃな)
飛来する矢を躱したベルクは狐惑乱舞を駆使してデクから距離をとり、近くにいた偽帝国兵の1人へと迫る。
「速やかに鏖となれ」
地を低く詰め寄ったベルクは偽帝国兵の足元へ踏み込み、斬り上がった殺刀【指折り】が偽帝国兵の喉を斬り裂いた。
裂かれた喉より血が噴出し、ベルクが狐惑乱舞によって再び距離を置くと、偽帝国兵は前のめりに倒れ絶命する。
「売官とかでなった訳じゃなく? 大丈夫ですかリーンエス王国。こんなの飼っていて」
グレイブは竜鱗の盾を掲げて矢を防ぎながらも、男爵への煽りを止めない。
グレイブが受けたダメージも、先に発動したリジェネーションによって回復していた。
「積極的に偽兵を刈りたい方々もおりますので、そちらの方々が負った負傷はヒールなどで補いましょうか」
グレイブは周囲で交戦する仲間達の動向を見渡し、次の行動を思案する中、デクが切り込んできた。
グレイブはデクからの威力を重視した槍の一撃を竜鱗の盾で受け流すと、そのままデクの懐へと踏み込み、無銘祭祀刀が眩い光を宿した強い一撃と化して斬り上がる。
デクは装甲防御を駆使して斬撃に抵抗したが、無視できない損傷を負った。
「俺はまだ死んでいないぞ」
「一撃で楽に? そんな面倒はしませんよ」
――そこで野晒しにでもなればいい。
デクの挑発にグレイブは淡々と応じる中、岩陰に身を隠し、敵の攻撃をやり過ごしたストレガは岩の上に登る。
「あえて存在感を見せることで絶望感を与えるのだ」
ストレガは敵群のうち、最も北側にいる偽帝国兵達を捕捉する。
「トドメは敵全員が動けなくなってからでいいのだ」
そのただ中へストレガは渦をなし、巻き上げる豪風を顕現して偽帝国兵達を包み込むと、偽帝国兵達はその威力に耐え切れず絶命し、倒れていく。
「よくも私に聖なる血を流させたな!」
アルベルトから大きく距離を取った男爵は、怒号と共に巨大な炎弾を放つ。
直後、アルベルトを包む形で爆炎が巻き起こり、アルベルトはムーティヒやウンボイクザームに輝くエーテルを収束させ、瞬間的に高めた防御力で爆炎を受け止める。
「自分の番になって怖気づいたか?」
攻撃を凌いだアルベルトは不敵な物言いと共に、瞬間的な加速を駆使して再び男爵へと迫る。
「貴様らが虐殺した無辜の民の苦しみを、10倍にしてくれてやる」
肉薄したアルベルトより、シュトルツが威力を重視した鋭い一撃と化して男爵へと落下し、男爵が思わずかざした片手ごと深々と斬り裂いた。
「他の皆さんがどうするかはともかく、手を抜く余裕があるほど私自身強くはないですし」
この頃ラティアは岩と岩の間を駆け抜け、偽帝国兵達からの攻撃をやり過ごすと、南東方面より北西方面へ迂回し始めた偽帝国兵達の迎撃を始めていた。
「弓での狩りじゃ実感が湧きません」
(この剣で斬りつけ、返り血を浴び、直接命を奪わないと)
そしてラティアは竜牙の細剣での討伐も行うと心に決めている。
「そうでないと……糧にならない」
ラティアの中には、いまだ他者の命を奪うことへの嫌悪感が残っている。
――今はまだ命を奪う感触が気持ち悪くて、一人の時に吐いたりしてしまうけれど。
「今後躊躇わないために、糧になってもらわないといけない……」
覚悟を胸にラティアが先んじて駆けて距離を詰めると、竜牙の細剣が威力を重視した鋭い一撃となって偽帝国兵の喉を貫いた。
貫いた細剣が引き抜かれ、偽帝国兵は鮮血を噴き出しながら倒れ、動かなくなる。
ここで片腕を失った男爵が残る片方の手をあげ、こう叫んだ。
「降伏する。命ばかりは助けてくれ」
●討伐
男爵に続き、デクや残る偽帝国兵達も降伏する仕草を見せた。
「ん? 獣が何か吠えているようだな? しかし、残念な事に俺は獣の言葉を理解出来ないんだ」
アルベルトは男爵達の命乞いを無視すると、奇妙な問いを投げる。
「サディとやら。貴様はシャルガネの達磨というものをご存じか?」
続けて男爵の傍まで接近したベルクが、アルベルトの言葉を継ぐ。
「シャルガネに達磨というのがあってな、我の前職では達磨造りにも携わっておったのじゃよ」
ベルクは含み笑いを見せるが、その目は笑っていない。
「テメェらが手にかけてきた罪なき村人達も、同じ様に言って来なかったか?」
ハヤトも眼前のデクに問いかける。
「そん時にテメェはどう対応したんだっけ?」
デクの回答を待たず、ハヤトは脚力による距離を詰める走法でデクに肉薄すると、自身の魂に宿る獣性を解き放ってその身を旋回させ、瞬時に紅雷を纏う竜巻と化したような連撃を繰り出した。
ハヤトの双神刀 紅狗璃がデクを斬り裂くと、次に天狼の蹴甲がデクを蹴り飛ばし、再び双神刀 紅狗璃がデクを斬り裂いた。
三連撃を受けたデクが絶命して地面に倒れ伏す中、グレイブは逃走を試みた偽帝国兵の前に回り込み、立ち塞がる。
「帝国において将たるものは、人類の盾たる事を己に課しています」
――それが無数の部族から成る我らを国として纏めている軸の一つ。
その覚悟がグレイブの胸中にも脈打っている。
(怠惰でいられる王国の貴族には分からないだろうがね)
内心そう呟いたグレイブはマトリクス界と交信し、偉大な存在より借り受けた力で光の鎖を形成して放つと、絡めとられた偽帝国兵は行動不能に陥る。
「なにやら獣が吠えているが聞こえないのだ。私は処理に忙しいのだ」
ストレガにとってこの討伐は作業に過ぎない。
「無駄に苦しませて戯言を聞く必要もないし、痛めつけて愉しむ嗜好もないのだ」
(食えない肉なので無駄が多い。装備だけ回収すれば僅かに補填になるだろうか?)
そんなことも思案しながら、ストレガは残る偽帝国兵達を捕捉する。
「既に沙汰は下っているからさよならなのだ」
呟きと共に、ストレガより放たれた光雨が文字通り光弾の雨と化し、偽帝国兵達へと降り注ぐとその血肉を削り取り、まとめて葬り去る。
「命乞いなんてされても私にはどうにもできません」
やや離れた位置から超視覚を駆使し、男爵の命乞いを見ていたラティアは緩く首を横に振ると、ハートスナイパーを男爵に向ける。
「男爵の生殺与奪の権限は、私にはないので」
――逃がしません。
呟きの後、ハートスナイパーより放たれた一射は風のエーテルを纏って加速し、男爵の足を貫いた。
射抜かれた男爵が片膝をつき、仲間達との連携を心掛け、自身の行動を遅らせていたベルクとアルベルトは2方向から男爵を挟みこむ。
「久しぶりの達磨造りに腕がなるなぁ……残念だよ、達磨までしかできないのがな」
ベルクが呟いた瞬間、男爵の腰部分――正確には足のつけ根部分へと殺刀【指折り】が吸い込まれて中を斬り裂き、外へ抜けた。
「話には聞いたことはあるが、俺は現物を見たことが無いんだ」
続いてアルベルトも獰猛な笑みと共に、ベルクとは別方向からシュトルツを振り上げる。
「そういうわけだ。今すぐ俺に見せてくれ」
レイウェスト殿下の名誉。帝国騎士の誇り。帝国の誇り。
アルベルトが拠り所とするものを踏みにじった男爵達への怒りと共に、シュトルツは威力を重視した鋭い一撃となって振り下ろされ、男爵の腕ごとその体を深々と斬り裂く。
その一撃に耐え切れず、男爵は血霧を噴いて昏倒した。
●終
残る偽帝国兵達も冒険者達に討たれ、平野の各所に死骸の山が築かれる。
「テメェらのやった報いくれぇは受けてから死ねや……」
ハヤトは未だ息のある偽帝国兵に淡々と告げ、村人達を殺した時と同じ方法で処分した。
なお男爵はいまだ息があり、捕縛されている。
「あぁ、ですが一つ感謝を」
その男爵に対しグレイブはこう告げる。
「貴方の拙いにも程がある謀略もどきのおかげで、王国に対して我々は正当に要求ができる。何しろ王国貴族が皇族の名を騙ったのですから、ね?」
――復興の為の財源はいくらあってもいい。
リスタ子爵とサディ男爵の独断であっても、帝国――それもレイウェスト皇子の名を騙ることがどういう結果に繋がるのか、男爵達に思い知らせる必要があるとグレイブは考えていた。
「王国が我に貴様を渡すことなく殺してくれるよう素直に色々話すのだな」
ベルクはこの場へ戻ってきた王国騎士の許可を得て、王国騎士が立ち会う形で男爵への尋問を始めていた。
「貴様が痛みで発狂するのと衰弱でくたばるのはどっちが早いであろうな?」
ベルクは楽し気な雰囲気を見せながら、男爵の耳元でこう囁く。
「ああ、ところで話は変わるのだが、貴様は皮が剥けたことがあるか?」
その後ベルクより語られる内容に男爵が顔色を失い、やがて平野の隅で男爵の悲鳴が漏れ始める。
「流言を抑制する方が戦より大変なのだ」
ストレガは男爵達の所業や今回の一戦に関する内容を報告書にまとめ、王国騎士にも提出するつもりでいる。
なおストレガは検閲と許可を得た後、情報の流布を行うことも視野に入れている。
「……男爵達には感謝します。彼らのおかげで、きっと私は、これからも生き抜くことができる」
そしてやや離れた場所で、ラティアは静かに男爵達への感謝を口にしていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人
2023年10月06日 11時38分44秒 公開
相談掲示板
・・・こいつらはレイウェスト殿下の名を貶め、帝国の名を穢し、帝国騎士の誇りを傷つけたか・・・。 もはや、死すらも生温い!生け捕りを命じられている【男爵】以外は全て頸を刎ねてやる! ・・・ところで話は変わるが、皆さんもご存じだと思うがシャルガネには『達磨』というものがあるみたいだな。 一度、見てみたいと思っていたんだよな・・・
ヒーラー。グレイブ・ヤードです。 まぁ欺瞞工作はあるあるですけどちょっと質が悪いですよね。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 いやぁ、怒りが限度を越えると一周回って脳が冷えて笑みが溢れるって言うのは本当だったんだね♪ ちなみに我の前職の職務の一つに達磨作り(意味深)があってな?久しぶりに腕を振るうとしようか。 …依頼制限上達磨までしか無理そうなのが無念だが(どす黒い瘴気溢れる笑み) うっかり逃がしたり、迂闊に喋らせて自称帝国兵の出自が割れると面倒(各勢力の責任問題的な意味)になるかもだから丁寧に皆殺しにしないとね♪
ラティア・ミゼリア、シューターです。よろしくお願いします…… ……まだ、皆さんほど割り切れるわけではないですが。 然るべき時に、躊躇わず。人を殺せるようになっておかないといけないので…… 糧に、させてもらいます。
まぁやるべきことをやるのであれば割と自由、でしょうかね? 賊にしろ何にしろ、駆除する必要はありますし ああ、でも首魁は尋問やいろいろ使用できますから気を付けませんとね
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 一連の流れはゴールディとして見届けることになると思うのだ。 仕事としては淡々と、範囲攻撃で。 一応、敵がほぼ弓持ちである事には注意したいかもだ。それくらい。
では「医学・薬学」と「リジェネレーション」は準備しておきます 大丈夫です、何をやろうとそうそうお亡くなりにはなりませんので
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! それにしても胸糞悪ぃ野郎だな… ひとまず男爵は達磨にすんのはわかったが、スパッと斬り落としちまうとうっかり失血死しちまうかもしんねーから蹴り砕いて背中で結んでやるほーが確実かもしんねーぞ? ま、スパッとやっちまったらやっちまったで切り口を火でしっかり焼いてやれば血も止まるし塩でも塗りつけてやれば消毒も完璧だろーからな♪ んで、男爵だけじゃ申し訳ねーから他の帝国兵さん達も仲良く達磨ごっこさせてあげよーかと思ってんぜ!