【突壁】ビヒモーおまもり作戦

馬車猪

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シナリオID:3203

オープニング

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 乳臭い巨体が突進する。
 つやつやな毛の下には既に厚い筋肉があり、そこから繰り出される力は人間1人を殺すに十分すぎる。
「いいぞその調子だ!」
 しかしリットは普通の人間と少し違う。
 見た目は身長と筋肉が足りない少年でも中身は修羅場を乗り越えてきた授恵者だ。
 成獣のビヒモーと比べれば小柄な体を柔らかく素手で受け止めて、その上でぎりぎり勝てそうと相手(ビヒモー)に思わせる手加減をする。
 脚と足が地面にめり込む。
 全力で突進したビヒモーは疲れを自覚して、自覚のないまま手を抜こうとした。
「根性入れろ! でかくなったらお前がお前のダチや子を守るんだ。外で身内ごと食われてぇのか!!」
 今のリットに優しさはあっても甘さはない。
 大きな隙があれば食い殺すほどの気合いで、この世に生まれ落ちて1年も経っていない生き物に向き合う。
 群れの中で大事に大事に育てられてきたビヒモーは、野生に生きていては決して得られない経験を得て生き延びるための力を伸ばす。
 なお、群れの長から教えて貰った技が通じたとき、笑顔で褒めてくれた人間(リット)がとても眩しく見えた。

●
「代官様は商売も上手なんですね」
 とても感じの良い表情を意図して作った商人が、数字ではなく現物の金貨をリットの前へ並べた。
 リットの護衛(一党の平構成員)がそれを見て動揺を隠せなくなる。
 しかし顔面に薄ら足跡がついたリットは真面目な顔で首を横に振った。
「悪いな。あんたの誠意は嬉しいがこっちにも事情があるんだ」
 とても丁寧であると同時に譲歩の余地が全くないことを知らせる態度だ。
 商人は拒絶されても温和なままで、リット以外には良い印象を与えたまま代官屋敷を去った。
「リット、いいのか?」
「1頭だけなのに買い取り金額も引き取り後の条件もすげー良かったぜ」
 帝国難民キャンプの頃からのメンバーが、新規メンバーの目がない場所で意見をする。
「あいつら(ビヒモー達)が警戒してんだよ」
 リット一党(代官とその部下達)の特徴である大柄ビヒモー達は、法的には家畜だが実質的には同盟相手だ。
 貰い物の中古剣と服しか持っていない小僧(リット)と、冒険者に助けられはしたが行き場のなかったビヒモーが喧嘩もしながら稼いだり戦ったりしながらそれぞれ小さな勢力を作ってここ(帝国僻地)へたどり着いた。
 だから新人代官には分不相応な重量物輸送手段(大柄なビヒモーの群れ)が存在し、だから高価な食事(豆や野菜も入ってる)を用意し続けないと群れがサボタージュを始めるし最悪の場合は新天地を求めて旅立ってしまう。
「でも今月も餌代凄いぜ」
「新入りに出す給料や維持費はあるけど俺達の分はよ……」
 冒険者に鍛えられたこともある古参メンバーは、能力と信頼もあるがその分給料が高い。
「収穫が終われば色を付けて払うって。今日の飯は奢るから勘弁してくれ」
「ビヒモーの飯より安いアレな」
「難民から成り上がったのに飯の質が下がったのはどうかと思うぜ」
 3人は、肩を落として食堂に向かうのだった。

●
「交渉は」
「完全に決裂しました。条件に該当するビヒモーは3頭です」
「3頭なら我々だけで十分だ。数日時間をおいてから仕掛ける」
「了解」
 明らかに堅気ではない授恵者数人が、大型のビヒモーが子育てをする牧場を遠くから観察していた。

●
 冒険者ギルドで新たな依頼が紹介される。
 帝国にある牧場(?)でビヒモーの健康診断をしたりブラッシングをしたり小さなビヒモーの遊び相手になるという非戦闘依頼、のはずだった。
「実はですね。帝国から急報が届いてまして」
 ギルド職員が小声で説明する。
 メドゥの指先かもしれない授恵者が、牧場(?)がある土地に土地に入り込んだらしい。
「現地勢力単独では撃退は不可能です」
 戦力でも敵わないが近くの帝国軍部隊から応援を向かわせてもおそらく逃げられてしまう。敵は強い上に慎重なのだ。
「現地へ向かい、なんとかして敵を倒すか捕らえて下さい」
 ビヒモーの警備に隙があるように見せかけて誘き寄せても良い。
 隠密能力や調査系スキルで周囲を徹底捜索して見つけ出しても良い。
「帝国には問題が山積みです。凶悪な犯罪者を倒すことで協力してあげて下さい」
 職員は、冒険者達を強く信頼していた。

解説

●目的  ビヒモーの群れの護衛  犯罪者を撃破または捕縛できれば大成功 ●場所  帝国の僻地にあるビヒモー牧場、ということになっているビヒモーの居住地  代官屋敷から徒歩数分、民家からも徒歩数分です  害獣よけの柵も寒さを凌ぐための厩舎も特大ではありますが頑丈さは普通で、授恵者の攻撃力には全く抵抗できませんし不器用なビヒモーがたまに破壊したりもします ●敵  大型のビヒモーの盗難と、証拠を消すためにリット達の殺害を狙っています  冒険者が4人以上いることに気付くと、攻撃も証拠隠滅も諦めて撤退しようとします ・シーフ  隠密行動と不意討ちに特化した軽装シーフ。3名  十分な下調べを行ったので、この地の代官であるリットより地形に詳しいです  装備の見た目はみすぼらしいですが、武器であるナイフだけは竜鉄製装備に近い性能を持っています ・シューター  薄煙炸弾も使う物理攻撃特化シューター。1名  商家の肩書きで活動してきました  大重量物運搬手段の調達を命じられているようです ●ビヒモー  初対面でも、ビヒモーは冒険者に対しては友好的です  妊婦か子が人(?)質にとられると、他のビヒモーが降伏する確率が激増します ・子ビヒモー  うまれて数ヶ月のビヒモー  人との適切な距離感がまだ掴めていないため、非授恵者を大怪我させる可能性があります ・妊婦ビヒモー  大柄なビヒモー。妊娠中。3頭  自分自身では警戒しているつもりですが野生のビヒモーと比べると隙だらけです ・おっきなビヒモー  群れで最も大きなビヒモー。群れの長  リットと付き合いが長く、ビヒモーにしては獰猛で本気で戦えばリットと同程度の戦闘力  現在夏バテ中で、戦えば体調が非常に悪化してしまいます  日陰でのんびりしています ・大型ビヒモー  ビヒモーの成獣。体高4メートル越えの巨体で2頭います  どちらかが牧場の入り口での見張り兼門番をしています  頭も察しも悪いので、冒険者が強い信頼を得た上で言い聞かせないと敵襲発生時に暴走します  たまに侵入者と間違えてリットに体当たりします ・他ビヒモー  若いビヒモー達がリットの部下の一部と一緒に領外へ出稼ぎに出ています ●他 ・リット  冒険者より力も頭も弱い授恵者で役人っぽい仕事をしています  冒険者が呼べば来ます ・リットの部下達  授恵者も少数いますが冒険者と比べると力も頭も弱いです  牧場(?)で働いているのは授恵者です

マスターより

 初心者歓迎!  それ以外も歓迎!

リプレイ

●
 熱く激しい戦いだった。
 濃厚なエーテルとそれ以外(なんかやばいの)を漂わせるシルク・メイプルリーフの話を聞かない馬鹿(ビヒモー)達に、スキルの類いは一切使わぬ投げ技と締め付けが何度も炸裂した。
「納得してくれましたね」
 従順なビヒモーの前でふふんと得意げにポージングするシルクの肌はしっとりと汗ばみ健康的に色づいている。
 分からせられた2頭のおっきなビヒモーはよろよろしながら立ち上がり、群れの長や妊婦ビヒモーは勝者の健闘を称える感じの態度をしている。
「事情は聞きましたよ。コレ見よがしにリット君を連れてビヒモーの中心で待ってればたぶん狙って来るでしょう。あ、リット君は狙われる可能性があるので出来るだけ頭を低く……この膝の上とかで」
 シルクとリットの背丈は頭1つ分ほど違うがシルクの足は長い。
 つまりどうなるかというと、リットが頭を限界まで低くしても当たるのだ。
「うわー……」
 アルマ・ヴァレンタインが呆れ半分哀れみ半分でリットを見ている。
 元野良犬の番犬が恩義と欲の狭間で苦しんでいるというか性癖を現在進行形でこじらせているというか、ちょっと声をかけづらいことになっている。
「いえコレは囮と防衛を両立させる作戦であってけして私利私欲のためでは……」
 誤解されている気がしたのでシルクが正々堂々持論を展開する。
 モフモフに囲まれてナデナデが出来る最高の環境から追い出されるなど冗談ではない。
 真面目な表情を作る程度いくらでもできる。
「まあいいけどー……」
 アルマはため息未満の息を吐いてから仕事にとりかかる。
(目立てば(隠蔽値が高ければ)必ず正体がばれるってわけじゃないけどねー)
 アルマは変装用の道具と消耗品を取り出す。
 代官屋敷の通じる道で敵に対する囮になっているアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトに少々の化粧や偽装を施しても無意味でシルクもアルベルトとは別方向で化粧しても無理っぽい。しかし彼等以外ならなんとかなる、と思いたい。
「このにおいはだめー……? しかたないなー……」
 アルマは動物と交感可能なので意思疎通は比較的容易だ。
 自身を含めた冒険者に目立たせないための化粧と偽装を行いつつ、身振りとおやつとブラッシングの約束で以て守り易い位置へ誘導する。
「くすぐったい……可愛い感じだね?」
 ララベル・サン・ディーベルは左右の竜牙の細剣をマントの下に隠し、軽い化粧を施された自身の顔を借り物の手鏡で確認する。
 普段は純粋さと力を同時に感じさせる少女風の顔立ちが、よく言えば純朴で力の質と量が少ない印象に変更されている。
「んんっ……。ビヒモーさんのお世話、がんばりますっ」
 ララベルは素朴な村娘の演技を始める。
 元気な子ビヒモーを圧倒する速度はあるが、体格が良い大人ビヒモーも陰での活動なので外部からは違和感をもたれないだろう。
「駆け足だね」
 ディレイン・オールドケイジはしんみりとした態度だ。
 最初に会ってから今までのビヒモー達の変化が著しい。
 ヒューマンと他の生き物で育つ速度も老いる速度も違うとはいえ、手で触れるほど近い距離で接すると感じる度合いも強い。
「それに食べ過ぎだ。胃腸が弱ったところに暑さでやられたね」
 動物と交感できなくても大雑把であれば意思もなんとなく通じる。
 群れ(ビヒモー)の長は誤魔化すように明後日の方向を向いて、ディレインに優しく撫でられ少し頭を下げた。
 ディレインは群れを一通り診てから長の面倒を再び見る。
 リット達も面倒は見ているようで定期的なブラッシングはされている。しかし、ディレインほど丁寧で上手なブラッシングはされていないのでブラッシングを期待した他のビヒモーも集まりかけている。
「年齢もあるかもだけど……暑さに負けるなら少し毛を短くするって手もあるよ? 今年はもう大丈夫だろうけど」
 ブラシから毛を外して一箇所へまとめる。
「……悪者に君たちが狙われてるよ」
 態度は変えず声は小さくして要点を伝える。
 冒険者による厳重な警備を長期間するのは無理と率直に伝えて、危険は伴うが一気に解決するための作戦も伝える。
 体調がまだ万全ではない長(ビヒモー)は、全身に力を込める代わりにディレインの近くで力を抜き体力の回復に専念する。
「ところでリット君」
 ひゃい、と情けない顔でリットがディレインを見る。
「同盟相手ならさ、君たちが満足に食事もできない状態だって正直に伝えてもいいんじゃないの。一時的に彼らの食事の質を調整させてもらうとか、交渉してみるのはありだと思う。全く話を聞かない彼らじゃないでしょ? それとも……いや君もそういう歳だろうけど飲み過ぎは良くないよ。お金もかかっちゃうし」
 ディレインにあっさりと見抜かれる、最近お酒を飲み始めたリットであった。
「うむ。遊びは嗜む程度にしておくのだ」
 説得力と含蓄のある言葉がリットの耳に届く。
 しかしリットはどこから聞こえたのか分からない。
 近くの村から働きに来ているゴブリンがいるだけに見えている。
(なんか大きい?)
 埃や日光への対策で頭や顔を布で覆うのはよくある格好だ。
「気付くのは良いが賊に気付かれるのは良くないのだ」
 ストレガ・L・リベルガストラは誰よりも手際よく掃除を進めている。
(授恵者にもなってやることが家畜泥棒……。そんなに食い扶持に困ってるなら、うちに来てほしいくらいなのにね)
 帝国南東部の武家貴族ネーベルベルク伯爵家の生き残りであるアウレーリア・フォン・ネーベルベルクが態度に出さずに考えている。
 直接的にはまだ探していないとはいえ有力な冒険者8人に気付かせない隠密術を使えるというのは相当に有能だ。
(能力を間違った使い道で浪費した咎で有罪! って感じで回収できないかしら)
 モブパワーで(巧妙に人の中に紛れて)あちこちにロープを渡し鳴子を括り付ける。
 引っ掛かれば御の字、回避されても回避のための行動がアウレーリア達が待ち受ける場所への誘導になるという一石何鳥にもなる策ではある。
(けど強い授恵者には通じにくいのよね)
 自身がとても強い授恵者であるアウレーリアは良く知っている。だから部下としても駒としても欲しいのだ。
 準備は整い、時間が過ぎる。
 夕日を浴びたリット達が今日の仕事の終了を告げようとしたとき、戦いが始まった。

●
 抜き足差し足忍び足(そうっと忍び寄って)+1(3連撃)。
 襲われた側は熟練の授恵者であり、ほぼ無警戒な状態でも防御は8割方機能していた。
 が、その程度では神材が使われた刃を防ぎきることは不可能だ。
 骨と骨の隙間を三度切り裂かれ、意識を失い生きているかも分からない状態で地面に倒れ伏す。
「帝国代官以前に我らの弟分に手を出すとはいい度胸だ、死にたいらしいな」
 吐き捨てるように言うベルク・オスマットを前に固まりはせず、残り2人の賊(シーフ)が逃走を開始する。
「高速軽装シーフが2つ!」
 一般農家の娘のフリを止めてモブパワーも解除したアウレーリアがまずしたのは、言葉による情報共有では《ない》》。
 真に迫った炎が檻を形成して抵抗不能の足止めとして賊を襲う。
 賊は最短の進路で檻を突破する。
 澱嵐への対策まで身につけた敵を、アウレーリアは惜しいと思った。
「ビヒモーの家が広いのだ」
 生の牧草にまみれたストレガが複数の場所に重力場を発生させる。
 射程が少し足りないが、今を逃せば射程が全く足りなくなるのでこの判断で間違いない。
 勘と実戦経験で重力場の位置をほぼ見抜いた賊が、アウレーリアが張ったロープを飛び越えることを選択して速度を低下させる。
 どの進路を選んでも逃げることはできない、冒険者達が仕掛けた罠であった。
「それじゃ遅いよ!」
 ララベルは早く(高INI)速く(移動5)そして強い。
 常人なら一本を使いこなすのも大変な細剣を、2本の剣ではなく1対の武器として操る。
 賊(シーフ)は軽装であり非常に素早い。
 ララベルはそれ以上に素早く、狙いが鋭く、そして手数が圧倒的だ。
 回避を諦め防御を優先する賊(シーフ)に、次々と深い傷が刻まれていく。
「犯罪者共! リットにもビヒモーにも指一本触れさせやしないぜ!」
 それまで囮をしていたアルベルトが坂道を駆け下りてくる。
 彼の体格と体力があっても速度が出なさそうな重装備であるのに、優れた体幹と確かな足取りは装備ごと五体を安定させスキル(チャージング)を用いた加速が非常な速度を実現する。
 厚く大きな黒の盾がほんの少しだけ動き、恐るべき貫通力を備えた矢を斜めに受けて受け流す。
 ディレインが展開した光の六角柱が、強力ではあっても矢でしかない敵シューターからビヒモーを守っている。
「リット!!」
「こっちは任してくれにーちゃん!」
「リット君こういうときは動きながらの方がいいですよ」
 シルクがするりとリットから離れ、離れるときのふれ合いがリットを赤くする。
「というわけでよろしくお願いいたします」
 常人なら目視だけで人生が狂いかねない色気の持ち主が全力で祈る。
 神聖と評すにはあまりに生々しいピンクの光が、冒険者だけを包んでその力を複数種類2割方引き上げた。
「光縛封よーし……! スケープセイントよーし……!」
 アルマは光る六角柱を建て、次にスケープセイントの保持と宣言することで敵の選択肢を減らす(誘拐も殺害も不可能と悟らせる)。
「ふふふどうするー……?」
 神材の祭刀をぶんぶん振って挑発すると、特性スキルを使った矢がアルマ1人を狙って飛んで来た。
「あぶなっ」
 目では追えたが防具による防御が間に合わない。
「アルマ!」
 リットも当然にように間に合わず、しかしもちろんアルマによる輝甲4(エーテル使用)は完全に間に合い命の危険もあった一撃を痛いだけにする。とても痛いが耐えられる。
「ほんとにあぶなかったー……」
 ふう、と額の汗を拭う動作でアルマが使用したヒールが、深刻なはずの傷を大部分回復させた。
「逃がさん!!」
 アルベルトが再度加速する直前に地表で矢が炸裂する。
 不自然に濃い煙は追撃側の邪魔にはるが範囲は直径約5メートルしかない。
 地形を熟知するアルベルトはほぼ直前で敵シューターを追う。
(逃げるのと撤退支援のどちらを優先するのだ? それとも……)
 ストレガは思考している間も行動を止めない。
 まず普通の村人を退避させ、一応授恵者ではあるリットの部下には妊婦ビヒモーや子ビヒモーを厩舎まで護衛させる。
 普通(大きな)ビヒモーは1発当たっても死なない頑丈さがあるので今のままでもOKだ。
(私を狙うのだ?)
 ほぼ心臓の真上に矢が突き刺さる。
 破壊力を減衰するため消費された光がその周囲に散り、防いだのに残った衝撃と術による消耗がストレガを襲う。
(この状況で道連れを狙うのは普通の隠密らしくないのだ)
 ストレガは攻撃に移る。
 青藍に光る錨と鎖による打撃は強力で、それによる移動阻害はさらに強力だ。
「死にはしないわよね。授恵者は頑丈だし」
 アウレーリアは賊を指差し術を使う。
 炎を爆発させれば確実だがビヒモーの住処まで粉砕しかねないので今回使うのは天戈星墜(メテオライト4)だ。
 どこに当たっても深刻な被害を与える炎が、急所ではない場所に当たって賊(シーフ)2人を重傷兼気絶に追い込んだ。

 軽装の隠密(シーフ)が最初の攻撃に失敗すればこうなるのは当然だ。
(元よりリット殿はゴブーナ殿に目をつけられている。いずれはそうなるとしても今回1人も逃がさないのは意味があるのだ)
 既に遠く離れた、賊の生き残りとアルベルトをじっと見つめた。
「私は……」
「お前の事情など知るか!」
 皇子(レイウェスト)の騎士として公明正大に生きるアルベルトとはいえ許せないこともある。
 義弟(リット)が必死の思いで築いたものを壊そうする賊は特に許せない。
 半ば以上本気で怯えていた賊が接するような至近距離で賊が射撃する。
 アルベルトは盾で押しのける形で防いでから最適の力と向きで刃を振り抜く。
 強靱な肉体と濃密なエーテルで守られた熟練授恵者を両断するには足りないが、切っ先を致命的な部位に届かせるには十分だ。
「貴様等の罪は、死以外に償うことはできない」
「待て! 情報収集がまだ終わっていない!」
 止めようとするベルクの声にも、慈悲は一欠片も含まれていなかった。

●
「せいかくわるかったねー……」
 敵に対する言及である。
 アルマ自身はほとんどダメージを受けていないとはいえ1度スケープセイントを使った。
 かすり傷にも使ったのでヒールも結局全て使用することになってしまった。
「『商会』(リットの事業)に手出すとどうなるか、宣伝が必要なのかもね。あんまりやらせたくないけど、ビヒモー裂きの刑みたいなの。生き証人を一人だけ残すなんてのも割と定番なんですけど」
 この言動は堅気っぽくないのはアウレーリアも分かっているが有効なのだ。
「リット、いや代官殿。尋問に場所を借りるぞ」
 ベルクの態度は非常に穏やかだ。
 ただし目を見れば殺意に限りなく近いものしかないのが分かるだろう。
「お、おう、案内するよ」
「……見てもいいが慣れるなよ」
 弟分(リット)に対して配慮してやる程度の余裕はまだあった。
 数十分後。
「やべーんじゃね?」
 リットは挙動不審だ。
 1度は上司だった代官の影響下にあるはずの商会が非常に怪しいというのはかなり拙い。
「指先……間違いなくあの後方祖母面とも付き合いがあるな、その商会は」
 ビヒモーの使い道と輸送先についてベルクが攻めてみると予想より楽に情報がとれた。
「反乱っ?」
 リットの言葉にアルベルトが深刻な顔になる。
「セニャさんにそんなつもりがなくても結果で責任を負わされちゃうからねー……」
 つきあいの長いアルマも深刻な表情になっている。
 代官(セニャ)は復興させた土地を手放している最中。つまり権力を手放しているので舐められ易くなっている。
「なるほど」
 よく分からないまま冒険者を真似てシリアス顔でいようとしたリットは、長ビヒモーに『おまえ最近たるんでるぞ』という目で見られて冷や汗を流していた。

マスターコメント

 お疲れ様でした。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2023年09月14日 11時30分22秒 公開

成功

相談掲示板

  1. ディレイン・オールドケイジ

    ヒーラーのディレィン・オールドケイジ、よろしく。 ビヒモーたちの健康診断をしに行くつもりでいるけど、これまでのことを考えるとブラッシングを要求される気がしてる。 ボスビヒモーは、できれば戦わなくて済むようにしてあげたいな。 そのためには大型に頑張ってもらう必要がありそうだけど…ブラッシングとおやつで言うこと聞いてくれるかな?

  2. No.2

    豊穣の使徒シルクです ビヒモーちゃん可愛いですよね しかしリット君は私が守護らねば

  3. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 不意打ち回避に看破か冒険者の頭数カウントされないように変装 あとはビヒモーさんたちとコミュニケーションとるのに動物交感 あたりをもってこうかなと

  4. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ・・ほほう、リットの殺害を狙っていると・・・。 奴らは命が惜しくないと・・・。 義兄の俺が斬ってくれよう。 因みに、俺は【隠蔽】が87もあるので気付かれないのは無理(「花の○次」の「前○慶○」位に派手な装備をしているからな・・・)なので、逆に派手に目立つようにして隠密行動をする仲間から目を逸らすようにするぜ。

  5. ララベル・サン・ディーベル

    僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね!

  6. No.6

    守護対象を1ヶ所に集めてコレでもかと目立っておきましょうか? その間に退路を断っておいて一網打尽と

  7. ストレガ・L・リベルガストラ

    キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ。 表立って行動できる冒険者は3人まで、と読めるからプレイングには注意するのだ。 隠蔽値が高い(目立つ者)がこちらにいてくれるとよいかもだ。 あまり隙がなさすぎるのも手を出しにくいと思うので子と妊婦だけでも集めてくれるとよいかもなのだ。 足止めの方法はシーフ3なので考え中。 今のところはアーケインとスネアジャベリンかなと考えているのだ。

  8. ベルク・オスマット

    シーフのベルクだ、よろしく頼む。 とりあえず移動・隠密特化で行こうと思う。 現状なら隠蔽2、発注してるアクセサリーが通れば最大で隠蔽5になるかな?

  9. ディレイン・オールドケイジ

    おじさんの隠蔽は55だね。 変装もちょっと自信ないなあ。 武装がなければ一般人に見えるかもだけど、ヒールの回復量はその分下がっちゃうね。 あんまり普段と違っても警戒されるだろうから、大型の片方はそのまま門番しててもらえばいいと思う。

  10. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    キャスター、アウレーリアです。宜しく。 隠蔽は38、装備次第では20台まで下げられると思います。その分、火力は落ちますが。 モブパワーの用意があるので、その場にいても授恵者でないふりができるかも知れません。 不意の一撃が結構痛そうなので、探知の策を用意しておきたいですね。 迎撃戦ですし、鳴子の一つも仕掛けておきましょうか……。

  11. No.12

    私は隠密が向いてませんのでリット君の側で護衛迎撃を行いたいと思います。 まぁ隙だらけな様子を見せて置けばよってくるでしょう

  12. ストレガ・L・リベルガストラ

    こちら隠蔽を23まで下げたのだ。火力戦は得意な者に任せるのだ。 とはいえモブともいえないゴブリンなのでコソコソしとくのだ。 うーん、直ぐに飛んでこれる場所で隠れながらも仕事できる場所、厩舎内の仕事くらいなのだ?

  13. アルマ・ヴァレンタイン

    ひとまず隠蔽は24まで下げてみたよ 某作者さんで荷台のわらから顔だけ出てる例のアレが思い浮かんだけど 隠蔽高めの人はふつーに表で活動してもらってよさそうだね いちおう自身と他者も対象っぽい説明があるので変装はそのままに 妊婦ビヒモーさんと子ビヒモーさんを守りやすい場所(厩舎?)に誘導とか 不器用なビヒモー(大型?)さんが壊したりしないように動物交感で説得 あとはビヒモーさんやリットくんの部下さんたちカバーに スケープセイントを準備してプレにとりかかるね

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0