【再起】サメとともに去りぬ
馬車猪
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シナリオID:3153
オープニング
青い海!
白い砂浜!
バーベキュー!
水着姿のムキムキやムチムチな男女!
今にもサメが現れそうな陽気極まるパーティである。
「皆さんお疲れ様でした」
かつてセニアーラ・リーラントと呼ばれていた帝国代官が司会をしている。
「お陰様で無事に任期を全うすることができそうです」
アポもとらずにヴァイセントラフ砦に乗り込んでから1年と少し。
強引極まるやり方で広い土地の復興を進めて来た結果がこの場に集まった面々だ。
脳味噌筋肉で領地が破綻寸前だった貴族。
純粋に被害が酷すぎて種籾の確保にも苦心していた代官。
代官も農民も全滅した土地にセニャが入植させた農民の代表者。
全員1年前は希望もなにもないという顔をしていたのに今は心から笑っている。
「復興は未だ途中ではありますが休みは重要です。今日だけは大いに飲んで騒いで下さい。では帝国とレイウェスト殿下に乾杯!」
かんぱーい! とうぇいうぇい鳴きながら夏を満喫する女性と男性。
ヴィントダンジョンの海に途惑ったのも最初だけで、この場でとれた海の幸や最近増えてきた鶏肉を焼いては食べて飲んで苦労話で盛り上がったりで大盛況だ。
「本当に引退されるのですか」
特徴がない男が代官に飲み物を運んで来る。
「まだ復興が進んでいない土地はありますよ」
「以前ほど追い詰められていないでしょ? 王国の貴族派出身者がでしゃばっても反発されるだけよ」
セニャはこれでも歴史が長い貴族家の出身だ。
欲をかいて大失敗した先祖のことも残された記録からよく知っている。
「それにもうお金もないしね」
個人として破格の物と金を持ち込んだとはいえ復興に関わった土地は広大だ。
担当地域を維持するための資金はあるが新たな土地に投資する余裕はない。
現在行われている地域引き継ぎの際に運転資金も渡すことになるので、セニャの手元に残るのは少数の部下を雇い続ける額だけの見込みだ。
「と言う訳で配当はお願いね。私はともかく出資者に何もなしって訳にはいかないし」
「支払いは10年後からでしたか。正直助かりますがよろしいので?」
復興最初期より後だが復興が進むかどうかも不明だった時期の投資だ。
多くの見返りを求められても断りづらい。
「出資者の代表格がエルフだからね。遅く長く結果的にいっぱいがいいと思うの」
「なるほど。良いご友人のようで」
セニャは年相応の表情で微笑みグラスを傾ける。
その直後、宙を泳いできたサメにぱくりと噛みつかれた。
●
「冒険者のみなさん、依頼の説明会にお集まり頂きありがとうございます」
水着に色眼鏡に麦わら帽子という格好の冒険者ギルド職員が真顔で説明を始める。
代官殿ー! とか。
家族に手を出すなー! とか。
本人達は真剣な戦闘が元パーティ会場で進行中だ。
「パーティに参加されていた方もいるかもしれませんが最初から説明します」
傷は浅いぞー! とか
おじいちゃんがんばって! とか。
背後の戦場はとても騒がしい。
「ここはヴィントダンジョンの中でも独特な魔獣が出現することで知られています」
代官さんは知らなかったようですがと淡々と付け加える。
「普段はサケっぽい魔獣とサーモンっぽい魔獣、どれも魔獣にしては弱い種しか現れないのですが……」
調子に乗った人間がいるとサメが出るのだ。
「全長2メートルのフライングサメは高速で飛来して噛みつき継続ダメージを与えてきます。海の中には大柄なリザードマンを飲み込めるビッグサメが潜んでサケやサーモンを狙った人間を餌食にしようとします」
遠くに見える水面で代官がフライングサメの拘束を振り解き、その直後に海面から現れた巨大な頭による噛みつきを真っ青な顔で辛うじて回避する。
「ただこのサメ、安全な攻略法が既に確立されているんです」
君を助けるためなら! とか。
おじいちゃんにてをだすな! とか。
シリアスだったりハートウォーミングだったりする人々は非常に健闘している。
フライングサメは何故か尻込みして噛みつきに失敗して手痛い反撃を受け、ビッグサメは暗闇の中で閃光を直視したかのようによろめき狙い易い相手に狙いを集中させる。
「うぇいうぇい騒がず淡々と仕事として討伐すれば普通に勝てる、はずなのですが」
地形と風景と獲れる食材がパーティ会場に向いているので調子にのった人間がときどき現れるのだ。サメなんて楽勝だと考える馬鹿者達が。
「まとめます」
依頼内容はサメの撃退または討伐。
戦闘終了後に改めてパーティをしてもOK。
「おそらく放置しても死人はでませんがパーティは台無しになります。出席者が連れて来たお子さん達にトラウマを残さないよう頑張ってあげてください」
職員はそう言って、パーティー再開のための準備を始めていた。
白い砂浜!
バーベキュー!
水着姿のムキムキやムチムチな男女!
今にもサメが現れそうな陽気極まるパーティである。
「皆さんお疲れ様でした」
かつてセニアーラ・リーラントと呼ばれていた帝国代官が司会をしている。
「お陰様で無事に任期を全うすることができそうです」
アポもとらずにヴァイセントラフ砦に乗り込んでから1年と少し。
強引極まるやり方で広い土地の復興を進めて来た結果がこの場に集まった面々だ。
脳味噌筋肉で領地が破綻寸前だった貴族。
純粋に被害が酷すぎて種籾の確保にも苦心していた代官。
代官も農民も全滅した土地にセニャが入植させた農民の代表者。
全員1年前は希望もなにもないという顔をしていたのに今は心から笑っている。
「復興は未だ途中ではありますが休みは重要です。今日だけは大いに飲んで騒いで下さい。では帝国とレイウェスト殿下に乾杯!」
かんぱーい! とうぇいうぇい鳴きながら夏を満喫する女性と男性。
ヴィントダンジョンの海に途惑ったのも最初だけで、この場でとれた海の幸や最近増えてきた鶏肉を焼いては食べて飲んで苦労話で盛り上がったりで大盛況だ。
「本当に引退されるのですか」
特徴がない男が代官に飲み物を運んで来る。
「まだ復興が進んでいない土地はありますよ」
「以前ほど追い詰められていないでしょ? 王国の貴族派出身者がでしゃばっても反発されるだけよ」
セニャはこれでも歴史が長い貴族家の出身だ。
欲をかいて大失敗した先祖のことも残された記録からよく知っている。
「それにもうお金もないしね」
個人として破格の物と金を持ち込んだとはいえ復興に関わった土地は広大だ。
担当地域を維持するための資金はあるが新たな土地に投資する余裕はない。
現在行われている地域引き継ぎの際に運転資金も渡すことになるので、セニャの手元に残るのは少数の部下を雇い続ける額だけの見込みだ。
「と言う訳で配当はお願いね。私はともかく出資者に何もなしって訳にはいかないし」
「支払いは10年後からでしたか。正直助かりますがよろしいので?」
復興最初期より後だが復興が進むかどうかも不明だった時期の投資だ。
多くの見返りを求められても断りづらい。
「出資者の代表格がエルフだからね。遅く長く結果的にいっぱいがいいと思うの」
「なるほど。良いご友人のようで」
セニャは年相応の表情で微笑みグラスを傾ける。
その直後、宙を泳いできたサメにぱくりと噛みつかれた。
●
「冒険者のみなさん、依頼の説明会にお集まり頂きありがとうございます」
水着に色眼鏡に麦わら帽子という格好の冒険者ギルド職員が真顔で説明を始める。
代官殿ー! とか。
家族に手を出すなー! とか。
本人達は真剣な戦闘が元パーティ会場で進行中だ。
「パーティに参加されていた方もいるかもしれませんが最初から説明します」
傷は浅いぞー! とか
おじいちゃんがんばって! とか。
背後の戦場はとても騒がしい。
「ここはヴィントダンジョンの中でも独特な魔獣が出現することで知られています」
代官さんは知らなかったようですがと淡々と付け加える。
「普段はサケっぽい魔獣とサーモンっぽい魔獣、どれも魔獣にしては弱い種しか現れないのですが……」
調子に乗った人間がいるとサメが出るのだ。
「全長2メートルのフライングサメは高速で飛来して噛みつき継続ダメージを与えてきます。海の中には大柄なリザードマンを飲み込めるビッグサメが潜んでサケやサーモンを狙った人間を餌食にしようとします」
遠くに見える水面で代官がフライングサメの拘束を振り解き、その直後に海面から現れた巨大な頭による噛みつきを真っ青な顔で辛うじて回避する。
「ただこのサメ、安全な攻略法が既に確立されているんです」
君を助けるためなら! とか。
おじいちゃんにてをだすな! とか。
シリアスだったりハートウォーミングだったりする人々は非常に健闘している。
フライングサメは何故か尻込みして噛みつきに失敗して手痛い反撃を受け、ビッグサメは暗闇の中で閃光を直視したかのようによろめき狙い易い相手に狙いを集中させる。
「うぇいうぇい騒がず淡々と仕事として討伐すれば普通に勝てる、はずなのですが」
地形と風景と獲れる食材がパーティ会場に向いているので調子にのった人間がときどき現れるのだ。サメなんて楽勝だと考える馬鹿者達が。
「まとめます」
依頼内容はサメの撃退または討伐。
戦闘終了後に改めてパーティをしてもOK。
「おそらく放置しても死人はでませんがパーティは台無しになります。出席者が連れて来たお子さん達にトラウマを残さないよう頑張ってあげてください」
職員はそう言って、パーティー再開のための準備を始めていた。
解説
この依頼はコメディとギャグの要素が強いです
うぇうぇい鳴きながらテンションを上げて参加するとよりお楽しみ頂けるかもしれません
●目的
サメをたおせ!
●場所
ヴィントダンジョンの中にあるサメが出る海岸です
この依頼で登場するサメは『陽キャ』や『カップル』に強いかもしれない魔獣です
冒険者が塩対応で戦うと普通より弱い魔獣程度の強さになります
●敵
・フライングサメ
高速で飛来し巧みに噛みつき継続的にダメージを与えようとします
1度に最大4体登場。連携はしません
セニャが調子に乗っている限り増援が現れ続けます
全長2メートルほど。味はよくありません
・ビッグサメ
海に潜んでいても海面から大きな背びれが見える大型サメ
1体います
セニャが調子に乗れば乗るほど強くなる気がします
全長4メートル以上。臭くて味は最悪です
・サケ
形は普通のサケ。一応魔獣ですが非常に活きの良い普通のサケ程度の強さです
ビッグサメから逃げ回ろうとしますがどんどん食われていきます
味はなかなか
・サーモン
形は普通のサーモン。一応魔獣ですが非常に活きの良い普通のサーモン程度の強さです
ビッグサメから逃げ回ろうとしますがどんどん食われていきます
味はグッド
●他
・セニャ
黒のワンピース水着
剣は装備していますので普段には劣りますが戦闘力があります
しかし今回のサメは非常に相性が悪く苦戦中です
冒険者参戦時点で、砂浜でフライングサメに追い込まれています
・パーティー参加者
野心家が結構な割合でいて、セニャほどではないがサメに襲われています
・ご家族
出席者が連れて来たご家族です。子供と非戦闘員ばかりです
腕に覚えのある塩対応参加者によって厳重に守られているので安全です
●料理
パーティー用に作られた料理は鉄板が倒れたり既に食べられたりしています
しかしまだ未使用の鶏肉や適度に冷えた酒やジュースや予備の鉄板や炭が、セニャのマジカルポケット(正確にはその中に入った小型コンテナ)にみっちり詰め込まれています
マスターより
コメディかつ低難易度の依頼です
戦闘に関わらずに料理やパーティー再開に専念するプレイングも大歓迎です!
【再起】はこれで完結になります
ここまで来ることができたのは依頼に参加して下さった皆さんのおかげです
本当にありがとうございました
リプレイ
●
セニャは美形でしかも清楚である。
そんな彼女を男女的な意味で手に入れたアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトには、真摯な想いは勿論あるが欲もある。だって健康な男だもの。
「セニャ大丈夫か? 俺が来たからにはもう大丈夫だ!」
空飛ぶサメを漆黒の刃で両断し、セニャを窮地から救うと同時に高速で振り返る。
異様に大きなサメが大波と共に現れアルベルトの黒い盾に正面衝突する。
「アルベルト!」
細剣を手に飛び出そうとするセニャに、アルベルトは視線を向けず爽やかに笑う。
「俺に任せろ」
頼もしく響いた声に、セニャが普段はしない表情をしていた。
そんな爽やかな青春が展開する場所から徒歩で数十秒。
障害物なしで相互に目視可能な場所でトーラが戦っている。
「浮かれている人に強く出る魔獣という訳ですね。つまり、魔獣自体も浮かれているという事でしょうか」
神材製の柄から伸びる光刃2つが超高速の斬撃として振るわれる。
人1人を噛み潰すに十分な体積重量固さを持つサメ2体が深手を負って空へと逃げる。
有利な状況でも決して油断しないトーラは目を閉じず、アルベルトに守られて頬を赤らめたりしてるというか女の顔をしてるセニャに気付いてしまう。
「くっ」
黒髪の皇子の姿が自身の水着姿と隣り合って脳裏に再生された気がしたが今はいい。
放置すると魂にまで達しそうなもやもやを柄へと注ぐと、緑青色の刃と緑青色の刃が透明なまま色を暗くしながら包丁の刃の形をとった。
「サメめー!」
ぶつけて問題ない物にもやもやをぶつけるトーラは非常に身が軽く、サメがいくら反撃しても触れることすらできなかった。
「どうせ大きめのサメはアルベルト卿が狩る。だから我等はサケとサーモンを狩る!」
ベルク・オスマットが高らかに宣言すると脳筋や脳筋がノリ良く突撃を開始する。
(戦力的にはこれで万全、のはずなんじゃが)
真剣であると同時に独特な気配をベルクは感じ取っている。
「千鳥雷切斬が跳ね返されただとっ!?」
「アルベルトー!」
悲痛な悲鳴の二重奏が響く。
セロンガード・シュタインドルフは困惑している。
サメ達は強くはあるがあの2人であれば苦戦などしないはずなのだ。
パーティ用の服装をした今のセロンガードでも、遠距離では深手を負わせ至近距離では頭から尻尾まで射抜く強矢でフライングサメを追い詰めている。
仕切り直すために後退しようとしたとき、セロンガードもまたアルベルトと似た困難に直面してしまう。
「セロン! よかった、無事だったんだ」
駆け寄って来るのは初雪の白を思わせる毛並みの狐系ハーフビースト、ティトである。
ギルド職員の説明の途中までうとうとしていたらしく、微かに眠りの気配が残り隙がある。最初に会ったのがセロンガードでなければとうに完全な戦闘態勢だったろうが。
「セロンー!」
この程度なら大丈夫と冷静に判断すると同時に、だいすきな人と夏を楽しみたいという純情があった。
(職員の説明は、まさかっ)
生き様がシリアスなセロンガードでは理解が難しかったがここに至って察することができた。
無邪気に抱きついてくるティトを回避する。ティトの寂しげな表情に心が痛む。
「心配だったんだから! 遅れた僕が悪いんだけど、さ……」
表情は取り繕っても落胆が耳と尻尾に表れている。
「えっ、リア充はまずい? どういうこと?」
慌てるティトよりセロンガードはもっと慌てている。ティトを認識した結果、塩対応ではなくなりサメの蹂躙者から獲物に変わってしまったのだ。
「セロンッ!」
馬鹿と同じく空飛ぶサメに噛みつかれてセロンガードが運ばれていく。
「そんな! セニャとアルベルトも大変な事になってる!? ねえ!」
実年齢はサメの攻撃対象範囲内でも見た目と言動は範囲外のティトは、何が何だか分からないままセロンガードを助けるため一生懸命であった。
●
「啓示によると『世の中にはサメを殴る事に命を賭けている人々もいるから』との事ですが、あれだけでかいサメも殴りに行くのですかね?」
フリーダ=ブロムヴィストは板金鎧姿のまま海水に飛び込んでも圧倒的な体力と身体操作で地上と遜色ない戦闘能力を発揮する。
「お祭りは洒落で済む程度で終わらせましょう」
アルベルトの必殺技を受けても分厚い皮が裂ける程度で済んでいた巨大サメが、容赦のない白金の剣閃で刺し貫かれ切り裂かれていった。
「そういうことなのか」
一般人へちょっかいをかけようとしているサメを撃退していたナハシュが核心を掴んだ。
陽気な、ウェイウェイと鳴いていそうな者にとっての天敵がサメなのだ。
「つまりウェイウェイ言ってるのが多ければ、そっちに攻撃が分散したり敵を引き寄せたりできるってことだな! 理解したぞ」
無駄がそぎ落とされて細身に見える体から筋肉が隆起する。
線は美しさはそのままに禍々しさを兼ね備えて、一般人の女性陣は勿論一部男性も胸を高鳴らせているがナハシュは徹底して真剣だ。
「サメなんて楽勝だろ」
挑発で振られる指を支える腕も胴体も髪の毛一筋分も動かない。
体幹も徹底して鍛えられているのだ。
サメー! とどう考えても普通のサメではない風切り音を伴いフライングサメが飛来する。
それが2体。
3体目が時間差で死角から。
「うぇーーいうぇいうぇい!」
ナハシュの掛け声はコミカルでも神材製の短剣が振るわれる速度は圧倒的で狙いは容赦なく正確だ。
1度の攻防で1体を複数の肉塊に変え、サメ達に圧力を加え冒険者が多くいる場所へ誘導していった。
「今日の俺はパーティーの盛り上げ役に雇われたキジトラマン」
レピド・クロサイトの公演は本日3回目である。
あちらで親子連れを助け、こちらで子供達を助けを繰り返して今は避難中の人々を守るため戦っている。
「まさかこんな事になるとはな……」
本人はクールな暗殺者系男子でも、ふかふかしたキジトラ模様の猫の着ぐるみから出ているのは顔部分だけだ。
異様なほど無駄のない無駄な動きが観客へ非戦闘的な非日常の空間を提供する。
(この着ぐるみは戦闘にもバッチリ対応している。温度耐性で暑さ対策も抜かりないぞ)
子供の夢は壊せない。
レピドはキジトラマンとして意味が分からぬままうぇいうぇい鳴きながら、人を襲えずおさかなを襲いだした鮫を襲う。
「サケやサーモンをガツガツ喰うな、俺も喰いたい」
完全に、本気であった。
「セニャさんが乙女……じゃないかもだけど年頃女性がしちゃいけない表情と格好してるー……!」
アルマ・ヴァレンタインの泳ぎは圧倒的に滑らかで危なげがない。
水着とスィフトスイマーの組み合わせは、特に海では絶大な効果を発揮している。
「調子に乗るとやらかすのはリーラント家の呪いなのかもしれないのだ。ジョセフ殿もそうであるし」
ストレガ・L・リベルガストラは利用価値と潰れる可能性を比較してむむむと唸る。
「獲ったどー!」
撒き餌と祈雷による罠と職人の銛によるアルマの仕掛けは、純粋な攻撃力は普通でも塩対応という意味では完璧だ。
何故ならこれは、戦闘ではなく漁業なのだから。
「ついでにセニャさんかくほー……! 今回ほんとに相性最悪だから下がっててねー……!」
常識的には戦闘不能な傷もアルマほどのヒーラーにとっては普通に癒やせる範囲でしかない。
「パーティが終わってしまうのは特に子供に宜しくないので少し離れた場所で続行させるのだ」
だから下がれとストレガは強くセニャに指示して自身は漁に加わる。
「厄災廻呪」
サメが異変に気付く。
「絞蛇呪」
サメは身をよじるだけでなく魔獣場慣れした気合いと存在感で呪いと対抗しようとしても文字通り歯が立たない。
超絶の付与技術は強いバフをも上回るのだ。
移動を封じられ約15秒間異常からの回復も封じられたビッグサメは、至近距離に対する反撃しかできなくなる。
青と空色の刃が汚れたサメを切り裂く。
数秒遅れて大量の体液が噴き出すが、2つの刃を操るトーラは離れた場所へ着地している。
「つまらないものを切ってしまいましたね……」
サメが息絶えるのを冷静に確認するトーラは、完璧な塩対応であった。
●
平和は戻った。
バーベキュー用の鉄板や塩水を被った炭が転がっていたりはするが少なくとも命の危険はない。
「はやくコンテナを出すのだ」
勝手知ったる様でストレガが指示を出している。
疲れ切ったセニャが異空間から取り出したものには、ストレガの予想通りのものがあった。
「皆は漁に専念するといいのだ。調理しておくから休憩に食べにくるのだ」
後片付けは後回しにして、熱を通すと食べられるものを優先して焼き、その場を一般客に引き継いだ後はサメの解体にとりかかる。
「……ふむ」
味覚も調理も優れているストレガは料理人である以前に研究者であり、魔獣研究資料として必要分をまず確保していた。
「どんどん持っていって下さい」
フリーダが見事な釣り竿でどんどんサケやサーモンを釣り上げている。
針から外す際に恐るべき手際で解体までするのは、非常に高い調理技術の証明だ。
「りょうかーい……!」
焼いたり調味料をかけたりして焼けばいいのは鉄板の上へ、本格的な料理用の食材はアルマが引き取る。
「ふっふっふー。おいしい匂いしてるけど食べ頃はまだだよー……」
暖かい一品として牛乳とハーブ塩を使ったクリーム煮を。
「これならいけるよー……!」
お醤油を使って鮮度と安全が必須なシャルガネ風料理を。
味覚と調理技術に関しては現行冒険者最高峰のアルマの料理は非常に好評だ。多少のゲテモノ料理も好む者もいる。
白い料理の色と香りから、エルは帝国の田舎にいるビヒモー達のことを思い出す。
(……ビヒモーさんたち、元気、かな。赤ちゃん、もう、生まれた?)
思考はのんびりしているが手は高速だ。
1つ1つ動かすのも大変なはずの鉄板や各種の器具を砂浜から回収して適度に洗うのを何度も繰り返す。
そのまま保管するのは駄目だがヴィントに持ち帰るまでならこれで十分以上だ。
「……小麦粉」
小型コンテナの中に砂糖と卵もあったし牛乳も分けて貰えるのでやらない理由がない。
エルは綺麗にした鉄板を熱して、その上に適度に混ぜた材料を注いで回収してチョコと果物を入れて綺麗に畳む。
調理過程だけで見ていて面白く、香りは良いし何より可愛らしい。
まだ剣も振れない子供達があっという間に集まり、きらきらした目でクレープを見つめる。
それだけならいくらでも相手はできたが保護者まで似たような表情だ。
腹が一杯になっても甘い物は別腹なのだ。
(セニャさん、仕事してない。目的、を、達して、引退、だから、浮かれて、る? 確かに、息抜き、は、必要、だけど)
セニャはパーティの主催者なのに姿を消している。
「慌てない。順番」
エルのは料理名人というほどではないが本職を名乗れるほど巧く、一般基準では過剰ともいえる質を提供可能だ。
これまでの依頼と同じように、セニャの窮地を救っていた。
猫着ぐるみなレピドが舞う。
本人としては軽く踊りながら横笛で奏でる曲が皆の耳を楽しませる。
戦闘の気配は完全に消えて、祭りに場に戻っていた。
「独特な魔獣でしたね」
激戦の後でも冷静なセロンガードは、まだ若いなのに歴戦の気配がある。
顔や体のあちこりにサメの歯型が残っているのは、凄惨と表すべきか訳の分からないトラブルに巻き込まれたと表べきか判断に迷う。
「もー、セロンってば治療はきちんとしないとだめだよー!」
体格差のあるティトが一生懸命に消毒して薬を塗っている。
某代官とその恋人なら成人した男女っぽい雰囲気になりそうだがティトは純粋だ。
優れた嗅覚で血のにおいを見つけては消毒して己の指で丁寧に薬を塗り込む。
セロンガードは、痛みにもそれ以外の理由でも声を出してしまわないよう頑張る必要があった。
「御苦労だったな」
料理名人2人作の料理をセニャ達に渡した後、ベルクは呆れの強い視線を2人へ向ける。
「レイウェスト殿下閥確定の高位授恵者とその婚約者がなんというザマだ。若さ故のあれこれは分かるが職員の話を聞け」
広域代官業が終わって調子に乗りまくっていたセニャが9割以上悪いのは触れないことにする。
「すまない。セニャにも……」
「いいのよ」
自然と距離が縮まりお互いの体温が感じたられる距離になるアルベルトとセニャ。
ここだけ切り取ると冒険譚のしっとりしたエンディングに見えるかもしれないが、今回の依頼に限れば主犯とその男である。
「後少しだけ話を聞け。重要な話じゃぞ」
いちゃいちゃするカップルの片側にだけ釘を刺す。
「部下の雇用や将来や子孫のことを考えれば中枢に伝手を築くのが最良であろう? 潜り込めそうな派閥を見つけるか作るかしないなら王女あたりに首根っこ掴んで引き込まれることになるがいいのか?」
ベルクとしては別に悪くない展開だが、セニャにとっては避けたい展開だ。
「それは……ちょっとアルベルト、まだ、んっ……」
「ここで答えなくても良いがやるべきことはやっておけよ。それもやるべきことかもしれぬがそれだけではないからな」
ベルクは野暮なことは言わずにパーティへ戻る。
「そろそろ焼けますよ」
フリーダは大きな鉄板を使って特大サーモンを焼いている。
とろけたチーズと滲み出る脂が混じった香りは暴力的とすらいえる魅力があり、アルベルト達がいる岩の影に行く可能性があった男女を根こそぎ誘引する。
(気配が普段と同じに戻りましたね)
気配は消えても魚は消えない。
(啓示では『数々の死亡フラグを回避して生き残るとか凄い奴だなお前な』と出ていましたが、概ねサクセスストーリーという形で終わった感じでしょうか? まだ彼女の人生は続きますけど)
帝国の現状を考えると、一波乱で済めば類い希な幸運の持ち主といえるだろう。
フリーダはカロリーたっぷりの魚料理をどんどん提供しながら、次の冒険について考えていた。
セニャは美形でしかも清楚である。
そんな彼女を男女的な意味で手に入れたアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトには、真摯な想いは勿論あるが欲もある。だって健康な男だもの。
「セニャ大丈夫か? 俺が来たからにはもう大丈夫だ!」
空飛ぶサメを漆黒の刃で両断し、セニャを窮地から救うと同時に高速で振り返る。
異様に大きなサメが大波と共に現れアルベルトの黒い盾に正面衝突する。
「アルベルト!」
細剣を手に飛び出そうとするセニャに、アルベルトは視線を向けず爽やかに笑う。
「俺に任せろ」
頼もしく響いた声に、セニャが普段はしない表情をしていた。
そんな爽やかな青春が展開する場所から徒歩で数十秒。
障害物なしで相互に目視可能な場所でトーラが戦っている。
「浮かれている人に強く出る魔獣という訳ですね。つまり、魔獣自体も浮かれているという事でしょうか」
神材製の柄から伸びる光刃2つが超高速の斬撃として振るわれる。
人1人を噛み潰すに十分な体積重量固さを持つサメ2体が深手を負って空へと逃げる。
有利な状況でも決して油断しないトーラは目を閉じず、アルベルトに守られて頬を赤らめたりしてるというか女の顔をしてるセニャに気付いてしまう。
「くっ」
黒髪の皇子の姿が自身の水着姿と隣り合って脳裏に再生された気がしたが今はいい。
放置すると魂にまで達しそうなもやもやを柄へと注ぐと、緑青色の刃と緑青色の刃が透明なまま色を暗くしながら包丁の刃の形をとった。
「サメめー!」
ぶつけて問題ない物にもやもやをぶつけるトーラは非常に身が軽く、サメがいくら反撃しても触れることすらできなかった。
「どうせ大きめのサメはアルベルト卿が狩る。だから我等はサケとサーモンを狩る!」
ベルク・オスマットが高らかに宣言すると脳筋や脳筋がノリ良く突撃を開始する。
(戦力的にはこれで万全、のはずなんじゃが)
真剣であると同時に独特な気配をベルクは感じ取っている。
「千鳥雷切斬が跳ね返されただとっ!?」
「アルベルトー!」
悲痛な悲鳴の二重奏が響く。
セロンガード・シュタインドルフは困惑している。
サメ達は強くはあるがあの2人であれば苦戦などしないはずなのだ。
パーティ用の服装をした今のセロンガードでも、遠距離では深手を負わせ至近距離では頭から尻尾まで射抜く強矢でフライングサメを追い詰めている。
仕切り直すために後退しようとしたとき、セロンガードもまたアルベルトと似た困難に直面してしまう。
「セロン! よかった、無事だったんだ」
駆け寄って来るのは初雪の白を思わせる毛並みの狐系ハーフビースト、ティトである。
ギルド職員の説明の途中までうとうとしていたらしく、微かに眠りの気配が残り隙がある。最初に会ったのがセロンガードでなければとうに完全な戦闘態勢だったろうが。
「セロンー!」
この程度なら大丈夫と冷静に判断すると同時に、だいすきな人と夏を楽しみたいという純情があった。
(職員の説明は、まさかっ)
生き様がシリアスなセロンガードでは理解が難しかったがここに至って察することができた。
無邪気に抱きついてくるティトを回避する。ティトの寂しげな表情に心が痛む。
「心配だったんだから! 遅れた僕が悪いんだけど、さ……」
表情は取り繕っても落胆が耳と尻尾に表れている。
「えっ、リア充はまずい? どういうこと?」
慌てるティトよりセロンガードはもっと慌てている。ティトを認識した結果、塩対応ではなくなりサメの蹂躙者から獲物に変わってしまったのだ。
「セロンッ!」
馬鹿と同じく空飛ぶサメに噛みつかれてセロンガードが運ばれていく。
「そんな! セニャとアルベルトも大変な事になってる!? ねえ!」
実年齢はサメの攻撃対象範囲内でも見た目と言動は範囲外のティトは、何が何だか分からないままセロンガードを助けるため一生懸命であった。
●
「啓示によると『世の中にはサメを殴る事に命を賭けている人々もいるから』との事ですが、あれだけでかいサメも殴りに行くのですかね?」
フリーダ=ブロムヴィストは板金鎧姿のまま海水に飛び込んでも圧倒的な体力と身体操作で地上と遜色ない戦闘能力を発揮する。
「お祭りは洒落で済む程度で終わらせましょう」
アルベルトの必殺技を受けても分厚い皮が裂ける程度で済んでいた巨大サメが、容赦のない白金の剣閃で刺し貫かれ切り裂かれていった。
「そういうことなのか」
一般人へちょっかいをかけようとしているサメを撃退していたナハシュが核心を掴んだ。
陽気な、ウェイウェイと鳴いていそうな者にとっての天敵がサメなのだ。
「つまりウェイウェイ言ってるのが多ければ、そっちに攻撃が分散したり敵を引き寄せたりできるってことだな! 理解したぞ」
無駄がそぎ落とされて細身に見える体から筋肉が隆起する。
線は美しさはそのままに禍々しさを兼ね備えて、一般人の女性陣は勿論一部男性も胸を高鳴らせているがナハシュは徹底して真剣だ。
「サメなんて楽勝だろ」
挑発で振られる指を支える腕も胴体も髪の毛一筋分も動かない。
体幹も徹底して鍛えられているのだ。
サメー! とどう考えても普通のサメではない風切り音を伴いフライングサメが飛来する。
それが2体。
3体目が時間差で死角から。
「うぇーーいうぇいうぇい!」
ナハシュの掛け声はコミカルでも神材製の短剣が振るわれる速度は圧倒的で狙いは容赦なく正確だ。
1度の攻防で1体を複数の肉塊に変え、サメ達に圧力を加え冒険者が多くいる場所へ誘導していった。
「今日の俺はパーティーの盛り上げ役に雇われたキジトラマン」
レピド・クロサイトの公演は本日3回目である。
あちらで親子連れを助け、こちらで子供達を助けを繰り返して今は避難中の人々を守るため戦っている。
「まさかこんな事になるとはな……」
本人はクールな暗殺者系男子でも、ふかふかしたキジトラ模様の猫の着ぐるみから出ているのは顔部分だけだ。
異様なほど無駄のない無駄な動きが観客へ非戦闘的な非日常の空間を提供する。
(この着ぐるみは戦闘にもバッチリ対応している。温度耐性で暑さ対策も抜かりないぞ)
子供の夢は壊せない。
レピドはキジトラマンとして意味が分からぬままうぇいうぇい鳴きながら、人を襲えずおさかなを襲いだした鮫を襲う。
「サケやサーモンをガツガツ喰うな、俺も喰いたい」
完全に、本気であった。
「セニャさんが乙女……じゃないかもだけど年頃女性がしちゃいけない表情と格好してるー……!」
アルマ・ヴァレンタインの泳ぎは圧倒的に滑らかで危なげがない。
水着とスィフトスイマーの組み合わせは、特に海では絶大な効果を発揮している。
「調子に乗るとやらかすのはリーラント家の呪いなのかもしれないのだ。ジョセフ殿もそうであるし」
ストレガ・L・リベルガストラは利用価値と潰れる可能性を比較してむむむと唸る。
「獲ったどー!」
撒き餌と祈雷による罠と職人の銛によるアルマの仕掛けは、純粋な攻撃力は普通でも塩対応という意味では完璧だ。
何故ならこれは、戦闘ではなく漁業なのだから。
「ついでにセニャさんかくほー……! 今回ほんとに相性最悪だから下がっててねー……!」
常識的には戦闘不能な傷もアルマほどのヒーラーにとっては普通に癒やせる範囲でしかない。
「パーティが終わってしまうのは特に子供に宜しくないので少し離れた場所で続行させるのだ」
だから下がれとストレガは強くセニャに指示して自身は漁に加わる。
「厄災廻呪」
サメが異変に気付く。
「絞蛇呪」
サメは身をよじるだけでなく魔獣場慣れした気合いと存在感で呪いと対抗しようとしても文字通り歯が立たない。
超絶の付与技術は強いバフをも上回るのだ。
移動を封じられ約15秒間異常からの回復も封じられたビッグサメは、至近距離に対する反撃しかできなくなる。
青と空色の刃が汚れたサメを切り裂く。
数秒遅れて大量の体液が噴き出すが、2つの刃を操るトーラは離れた場所へ着地している。
「つまらないものを切ってしまいましたね……」
サメが息絶えるのを冷静に確認するトーラは、完璧な塩対応であった。
●
平和は戻った。
バーベキュー用の鉄板や塩水を被った炭が転がっていたりはするが少なくとも命の危険はない。
「はやくコンテナを出すのだ」
勝手知ったる様でストレガが指示を出している。
疲れ切ったセニャが異空間から取り出したものには、ストレガの予想通りのものがあった。
「皆は漁に専念するといいのだ。調理しておくから休憩に食べにくるのだ」
後片付けは後回しにして、熱を通すと食べられるものを優先して焼き、その場を一般客に引き継いだ後はサメの解体にとりかかる。
「……ふむ」
味覚も調理も優れているストレガは料理人である以前に研究者であり、魔獣研究資料として必要分をまず確保していた。
「どんどん持っていって下さい」
フリーダが見事な釣り竿でどんどんサケやサーモンを釣り上げている。
針から外す際に恐るべき手際で解体までするのは、非常に高い調理技術の証明だ。
「りょうかーい……!」
焼いたり調味料をかけたりして焼けばいいのは鉄板の上へ、本格的な料理用の食材はアルマが引き取る。
「ふっふっふー。おいしい匂いしてるけど食べ頃はまだだよー……」
暖かい一品として牛乳とハーブ塩を使ったクリーム煮を。
「これならいけるよー……!」
お醤油を使って鮮度と安全が必須なシャルガネ風料理を。
味覚と調理技術に関しては現行冒険者最高峰のアルマの料理は非常に好評だ。多少のゲテモノ料理も好む者もいる。
白い料理の色と香りから、エルは帝国の田舎にいるビヒモー達のことを思い出す。
(……ビヒモーさんたち、元気、かな。赤ちゃん、もう、生まれた?)
思考はのんびりしているが手は高速だ。
1つ1つ動かすのも大変なはずの鉄板や各種の器具を砂浜から回収して適度に洗うのを何度も繰り返す。
そのまま保管するのは駄目だがヴィントに持ち帰るまでならこれで十分以上だ。
「……小麦粉」
小型コンテナの中に砂糖と卵もあったし牛乳も分けて貰えるのでやらない理由がない。
エルは綺麗にした鉄板を熱して、その上に適度に混ぜた材料を注いで回収してチョコと果物を入れて綺麗に畳む。
調理過程だけで見ていて面白く、香りは良いし何より可愛らしい。
まだ剣も振れない子供達があっという間に集まり、きらきらした目でクレープを見つめる。
それだけならいくらでも相手はできたが保護者まで似たような表情だ。
腹が一杯になっても甘い物は別腹なのだ。
(セニャさん、仕事してない。目的、を、達して、引退、だから、浮かれて、る? 確かに、息抜き、は、必要、だけど)
セニャはパーティの主催者なのに姿を消している。
「慌てない。順番」
エルのは料理名人というほどではないが本職を名乗れるほど巧く、一般基準では過剰ともいえる質を提供可能だ。
これまでの依頼と同じように、セニャの窮地を救っていた。
猫着ぐるみなレピドが舞う。
本人としては軽く踊りながら横笛で奏でる曲が皆の耳を楽しませる。
戦闘の気配は完全に消えて、祭りに場に戻っていた。
「独特な魔獣でしたね」
激戦の後でも冷静なセロンガードは、まだ若いなのに歴戦の気配がある。
顔や体のあちこりにサメの歯型が残っているのは、凄惨と表すべきか訳の分からないトラブルに巻き込まれたと表べきか判断に迷う。
「もー、セロンってば治療はきちんとしないとだめだよー!」
体格差のあるティトが一生懸命に消毒して薬を塗っている。
某代官とその恋人なら成人した男女っぽい雰囲気になりそうだがティトは純粋だ。
優れた嗅覚で血のにおいを見つけては消毒して己の指で丁寧に薬を塗り込む。
セロンガードは、痛みにもそれ以外の理由でも声を出してしまわないよう頑張る必要があった。
「御苦労だったな」
料理名人2人作の料理をセニャ達に渡した後、ベルクは呆れの強い視線を2人へ向ける。
「レイウェスト殿下閥確定の高位授恵者とその婚約者がなんというザマだ。若さ故のあれこれは分かるが職員の話を聞け」
広域代官業が終わって調子に乗りまくっていたセニャが9割以上悪いのは触れないことにする。
「すまない。セニャにも……」
「いいのよ」
自然と距離が縮まりお互いの体温が感じたられる距離になるアルベルトとセニャ。
ここだけ切り取ると冒険譚のしっとりしたエンディングに見えるかもしれないが、今回の依頼に限れば主犯とその男である。
「後少しだけ話を聞け。重要な話じゃぞ」
いちゃいちゃするカップルの片側にだけ釘を刺す。
「部下の雇用や将来や子孫のことを考えれば中枢に伝手を築くのが最良であろう? 潜り込めそうな派閥を見つけるか作るかしないなら王女あたりに首根っこ掴んで引き込まれることになるがいいのか?」
ベルクとしては別に悪くない展開だが、セニャにとっては避けたい展開だ。
「それは……ちょっとアルベルト、まだ、んっ……」
「ここで答えなくても良いがやるべきことはやっておけよ。それもやるべきことかもしれぬがそれだけではないからな」
ベルクは野暮なことは言わずにパーティへ戻る。
「そろそろ焼けますよ」
フリーダは大きな鉄板を使って特大サーモンを焼いている。
とろけたチーズと滲み出る脂が混じった香りは暴力的とすらいえる魅力があり、アルベルト達がいる岩の影に行く可能性があった男女を根こそぎ誘引する。
(気配が普段と同じに戻りましたね)
気配は消えても魚は消えない。
(啓示では『数々の死亡フラグを回避して生き残るとか凄い奴だなお前な』と出ていましたが、概ねサクセスストーリーという形で終わった感じでしょうか? まだ彼女の人生は続きますけど)
帝国の現状を考えると、一波乱で済めば類い希な幸運の持ち主といえるだろう。
フリーダはカロリーたっぷりの魚料理をどんどん提供しながら、次の冒険について考えていた。
マスターコメント
【再起】はこれにて完結です。
お疲れ様でした。
イベントシナリオ易しい 報酬:多い11 / 4〜25人
2023年08月18日 09時15分37秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ・・・セニャを傷つけたサメ共を斬りまくる予定だ。 当然塩対応だ。ガチで斬り捨てる。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 緩そうなふいんきだしてきとうに回復とか飛ばしつつ 使う機会がめっきりなくなった銛で「獲ったどー!」でもしてるね