【突壁】邪悪な材料あつめ

馬車猪

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シナリオID:3116

オープニング

●
「代官様。……代官様?」
 普段は取り次いでくれる代官副官の姿も見当たらず、陳情のために代官屋敷(丘の上の砦)にやって来た村長(ゴブリン)は困惑していた。
 何か事件でも起きたのかという考えに至り顔を青くする。
 レイウェスト皇子の許可が出ているとはいえ、ゴブリン(人類の新参者)を快く受けている土地も代官(統治者)も多くはないのだ。
「文字難しくて何書いてるのかわかんねぇよ!」
「報告書にあたってもしょうがないでしょ。いっそ冒険者に依頼して解読……機密に指定されてるから無理かもごめん」
 暑いので開けっぱなしの扉から声が聞こえてくる。
 村長(ゴブリン)は聞かなかった(死ぬまで思い出さない)ことにして、精一杯大きな音で咳払いを繰り返した。
「待たせてすまねぇな村長」
 数分後、リットがきっちりした服装で姿を現す。
 帝国代官には到底見えないマフィアの若頭風ファッションだがリットのセンスではこれが限界だ。
「お陰様で村の衆も……」
「お互い忙しいんだから前置きはなしにしようぜ。自慢話なら付き合うけどよ」
 リットは応接用の椅子を勧めてにやりと笑う。
「息子さんが来てから麦畑がいい感じらしいじゃねぇか。来年の納税は期待してるぜ」
「お手柔らかに……」
 村長(ゴブリン)は深く頭を下げてから本題に入った。
「他の村で最近見かけなくなった連中(ヒューマン)が多いんです」
「やべぇの(犯罪者の類い)以外は転出を認めてる……ってそういう意味じゃねぇんだよな?」
「はい」
 村長(ゴブリン)は静かにうなずく。
「どこが変か具体的に説明はできないんですが」
 村長はゴールディの出身だ。
 犯罪都市と呼ばれることもあるゴールディでは、凶悪あるいは異様な犯罪と遭遇する機会が他より多い。
「裏を通り越して闇の底みたいな事件が起きたときと似たような気配がするんです」
 村長の口調と態度が少し昔に戻っている。
 小さな組織の幹部ですらなかったが、昔のリット(路地裏の小僧)よりはるかに強く抜け目のない存在だった。
 そんな立場は迷うことなく捨てた。
 土地が貧しくても、地域社会の少数派になったとしても、真っ当な生業を是が非でも得たかった。
 子供にあの光景を見せたくなかったのだ。
「放って置くのは拙いと思います」
 だから彼は、自らの半分も生きていない小僧に誠実に仕えている。
「分かった」
 うなずくリットは、過酷な戦いを何度も生き抜いてきた戦士の風格があった。
(リットちゃん分かってないよね)
(すげーやばそうなのは分かったんだって)
 なお本音はこんな感じである。
 目配せと気配だけで会話しながら、帝国代官(正確には見習いです)とその副官(頭脳労働担当)は内心頭を抱えている。
(冒険者ギルドに依頼すればにーちゃんやねーちゃんがなんとかしてくれるって!)
(否定はできないけど情報が少なすぎるわよ!)
 結局、その日のうちに冒険者ギルドへの急使が送り出された。

●
 白い鳥がのんびりと空を舞う。
 空には厚く雲がかかり、夕と夜の合間の弱い光をさらに弱めている。
「糞みたいな場所からやっと抜け出せるぜ」
「奴隷みたいな扱いしやがって」
 彼等はリットの担当地域の住民だ。
 過酷な鉱山に送り込まれる代わりに少し大変な土地に送り込まれた元犯罪者であり、リットから受けた扱いは甘いとすらいえる。
「乗れ」
 そんな彼等を誘導するのは表情に乏しい男女だ。
 目立った武装はしていないが気配が濃い。
「急かすなよ」
「運賃は後払いでいいんだよな?」
 住民(元犯罪者)は荷馬車の行き先に気付いていない。
 運び屋からも荷馬車から漂ってくる血と死のにおいから、無意識に目を逸らしていた。

●
「オペラ様の予知夢と帝国からの依頼が同じ日に届いたんですよ」
 冒険者ギルドの受付嬢が依頼の説明をしている。
「予知夢は誘拐で依頼は行方不明者の捜索で、どうやら同じ事件らしいんです」
 それだけならまだマシだったんですけどねー、と渇いた笑いを顔に浮かべる。
「現在帝国の一部で邪悪な武器作りが行われているみたいなんです」
 ドワーフ王国を出奔した鍛冶とメドゥの指先の一部が手を組んでいる。
 万が一にも広める訳にはいかない製法(外道of外道)を使っているが製品性能はやや優秀程度だ。
 竜鉄製装備の方が使い勝手が良いし、特別に(超高レベル向けに)造られた品も神材を使った冒険者用装備と比べると見劣りする。
「放置すると悪人の装備が充実してしまうのも問題なんですが」
 製造の過程で大量の死者や災厄が発生しかねないのも大問題だ。
「予知夢の光景が材料の調達の場面だったみたいで……。場所はだいたい分かっているので現地に向かって材料調達隊を倒して下さい!」
 口調は軽くても、非常に重く困難な内容であった。

解説

●目的  住民(元犯罪者)の救出 ●戦場  何もない平原  草も薄らとしか生えていません  目印になるのは、地面にある街道未満(荷馬車のわだちがあるだけ)です ●敵 ・メドゥの指先構成員  剣、革鎧、微かな異臭を放つマントを身につけた男女です  装備は各人のためカスタマイズされたもので、おおまかに分けて物理攻撃に超特化した者2人、近接魔法攻撃と抵抗に特化した者2人、防御力と付与術に特化した者1人の合計5人います  指揮官は防御力と付与術に特化した中年女性です  全員レベルも高く戦い慣れてもいますが、長年の陰惨な活動に加えて不浄過ぎる装備を身につけた影響で酷く鈍感・攻撃的になり判断力も落ちています  移動は3か4  冒険者に気付くと、荷物の輸送を止めて全員一丸となって迎撃を行います ●他 ・犠牲者になるかけている者達  8人。全員、リット担当地域の住民です  運び屋に依頼してリットの担当地域から逃げ出すつもりの元犯罪者(刑罰の代わりに開拓に従事していた者多数。従事させたのはリットの前任者)  授恵者はいません  冒険者が働きかけない限り、騙されたことに気づけません  騒ぐと指先構成員に無造作に斬り捨てられます ・リット  メドゥの指先が担当地域に入り込んでいることに気づかないまま、担当地域にある村で捜査を行っています  冒険者が戦場に向かう時の通り道にあるので声をかけると着いてきます  冒険者と比べて力も頭も弱いですが後片付けを任せる程度なら可能かもしれません  オープニングで読んでいた報告書は『【突壁】武器求める餓鬼の群れ』についてのものです ・他の犠牲者  リットが気づく前にも誘拐が行われているようです ・戦闘開始時点の距離  プレイングで指定がない場合は彼我の距離200メートルで戦闘開始  隠密や交渉を行う場合はプレイング内容によって戦闘開始の状況は変わります

マスターより

 初心者歓迎!  それ以外も歓迎!

リプレイ

●
 翠の賢者の石を赤いリボンが彩り、長い金髪が風で揺れている。
 そこだけ見ればピクニック中の可愛らしいお嬢さんだが、火蜥蜴革製の部分鎧を装備し竜骨製の戦槌を背負った姿は勇ましい冒険者である。
「元犯罪者さんであっても住民さんなら救出しないとです。ご担当なさってる地域に、メドゥの指先が入り込んでること、担当者なら知っておきたいと思いますから」
 レラ・F・ギュンターの碧の瞳は真剣だ。
「うん……」
 歳も社会的立場も多分上のはずのリット(帝国代官)は頼りなく揺れている。
 見当外れの村を捜査中に、シルク・メイプルリーフに捕獲されたのだ。
「状況説明するより見たほうが早いでしょうし直感体感型の子ですからね。可愛いですし」
 常人なら人生を狂わされる域の色香を持つシルクが、リットを背後から抱きしめた上で運んでいる。
「本音を言うならもうちょっと情報を収集して欲しかったが、だが即座に頼る判断ができるだけ上出来だな」
 ベルク・オスマットは、本人としては長距離走のペースで全力のビヒモーと並走している。
「色香に負けているのは要修行じゃがな」
 宗波で奇襲の警戒と索敵を同時に行っているが結果的に杞憂になりそうだ。
 ベルクならいくらでも細工を仕掛けられる地形も、暴しかできない賊にとってはただの平坦な地形でしかない。
「なんだ?」
 元犯罪者で中身もほぼ同じの(材料として連れ去られる直前だった)地域住民がシルクに気付く。
「師匠は言いました。お前は姿だけなら一般人を黙らせる事が出来そうだな、と」
 豊穣の擬人がじみた肢体と気配は薄い装束では隠せない。
「試してみましょう!」
 リットを解放する。
 頭の後ろで腕を組み腹と足を強調する。
 艶やかな肌と見事な筋と魅力的過ぎる気配(かおり)が自制心のない男達の心を深く捉えた。
(リット君は同行してかまわないけど、戦闘には加わらないように。ただし全体を見ててもらって、保護対象が逃げそうとか狙われてるとか、そういうやばい状況の時は声に出して知らせてほしいかな)
 ディレイン・オールドケイジの言葉をリットが回想し、その通りにできないことを悔しく思いながら仕掛けようとするが敵の方が早い。
 防御は間に合ったのに賊の剣に押し込まれ衝撃をまともに受けてしまう。
 痛みに慣れているはずのリットが悲鳴をあげ、剣を取り落とすのだけは根性で耐えたが痛みが強すぎて意識も視界もぼやける。
「啓示によれば『ちょっと汚い敵ばかりですね。モザ=イクかけておきましょう』との事でしたが、こういうことですか」
 フリーダ=ブロムヴィストに武具製造の専門知識はないが、ここまで強い気配を出していたらどう作られたものか容易に推測できる。
「ふむ」
 防御技術と装甲に定評があり、術に対する抵抗にも優れたフリーダが足止め役として機能しなくなる。
 暗い目をした賊の頭が、額に汗を浮かべてフリーダの意識の一部を捉えて自身へ誘導したのだ。
 剣を不気味に光らせた別の賊が2人、強力な近接魔法攻撃をフリーダに繰り出す。
「シルク様を見もしないとは、1度ゆっくり休んで心を回復させるのをお勧めしますよ」
 フリーダは気さくに語りかけながら円盾と真っ直ぐな刀身を滑らかに操る。
 敵は剣技に優れ倫理に目を無視すれば装備にも優れ、完全に回避するのはフリーダでも無理だ。
「疲れているからこのように」
 可能な範囲で受け流し、防ぎきれなかった威力(魔法攻撃)は根性と体で受ける。
 常識的な強さの授恵者なら最低で気絶最悪で即死も有り得る左右からの斬撃を、フリーダは余裕の態度で見事に耐え抜いた。
「甘く見てたつもりはなかったんだけどなー……」
 アルマ・ヴァレンタインは指に挟んだ閃光塗弾はそのままに、使い慣れた術を使う。
 光輝を放つ六角形がもう1人の賊(剣士)を巻き込んで出現する。
 先程の魔剣(魔法)使いなら多少時間はかかっても内側から破壊できたかもしれないが、いくら強くても物理攻撃しかできない剣士には術が終わるまで足止めされるしかない。これで後衛が襲われ即死する可能性はなくなった。
「リット君の1番の仕事は構成員を倒してからだよ。民の不満を聞いて対処するのも民を何から守ろうとしているのか伝えるのも、今の代官としてリット君がやらないとね」
 このディレインの言動で重要なのは言葉ではなく態度だ。
 混乱しきった状態にあるリットに日常の態度で接して落ち着かせる。
「頼られるのは嫌いじゃないけど、その立場にいる者としての役割はこなしてもらいたいな」
 そっと触れて巨大な流れに繋げる。
 天地を巡るエーテルの総量と比較すれば0に近くても人間1人が扱う量としては巨大だ。
 気絶と重体の境をふらふらしている少年1人を万全な状態まで回復させることなど容易であった。
(人の命を澱源に吸い出して使うタイプの魔法。それを装備製造に使ってる、残念なほどある意味で『よく知ってる』やつか)
 アウレーリア・フォン・ネーベルベルクは敵味方がほとんど同時に動き出しても慌てない。
 思考する間もエーテルの操作の速度と精度は相変わらず高速かつ精密で、最初の攻防が終わりかけたタイミングで術が発動し大きな音と強い閃光が戦場を貫く。
 賊の頭の反応は防御の構えをとっただけだ。
 それは強力な術を防ぐに十分だが格(レベル)と装備が整った強力な術者を相手にするには不足だ。
 急ごしらえな防具が焼け焦げ、頭本人の消耗も軽くはない。
 アウレーリアは術に呪いの要素を加えている。
 格の高い授恵者でも十分に効く可能性があったが、頭は口の中を噛みきるように傷つけ辛うじて耐える。
「回復役はいないようね?」
 アウレーリアは、防がれても抵抗されても敵の手札を確実に削る戦い方をしていた。
 レラは違和感に気付く。
 最近は閃光塗弾を警戒されるらしいのに、賊達のこれに対する警戒が甘い。
(ひょっとしてこれ知らないです?)
 ただの投石に見える動作を意識して投擲する。
 夕暮れから夜に変わる時間帯は弾は見つけ辛く、そして薄闇から閃光への落差も強烈だ。
 長い間戦ってきた賊(強者)は突然の光を見ても目は閉じず動きも止めず、まともに見てしまったため動きが明らかに乱れる。
 進路を変えた直後に敵の移動速度がいきなり急減した。
「最初の重力場の位置を見抜かれていたので助かったのだ」
 レラに対しストレガ・L・リベルガストラが礼を言う。
 敵は重力場を知っていた。そしてその対処法を知っていた。
「古強者相手に油断はできないのだ」
 重力場は素早く(サブ行動で)使えるので足絡之呪(スネアアンカー)を使う時間的余裕がある。
 錨と鎖による攻撃は威力は格(レベル)の割に控えめで、鎖の絡みつく状態異常攻撃としては格(レベル)より数段上だ。
 何故ここにこれほどの術者が、という疑問の視線が移動を封じられた賊の頭からストレガに向けられる。
(荷馬車への援護はこれで限界なのだ)
 ストレガは気付いていないふりをしていた。
「代官だから逃げられねーんだよなぁっ」
 腕力と体力はあっても剣才のないリットでは、剣技も剣も凶悪な賊に対抗できない。
「今助けるのです!」
 むん、と気合いを入れるレラの仕草は可愛らしく放たれる殺意は刃を思わせる鋭さだ。
 剣使いの賊は反応してしまう(剣を守りの構えにする)。
 すぐに元に戻したが、戦歴が自らの10分の1もないようなレラを一瞬とは言え畏れたことに激高し、無理矢理に殺意の結界を踏み越え小柄なレラを正面から切り裂く。
 レラがエーテルを防御にまわしているのに効果がないように見えるのは、攻撃力が高すぎるからだ。
 反撃はまだできない。
 殺界は足止めと攻撃を兼ね備える強力なスキルではあるが、反撃(攻撃手段)に癖があるのだ。
 レラより小柄なアルマから光が飛んでくる。
 死を濃厚に感じさせる深く鋭い傷口にするりと入り込んだ直後、傷口も目に見えない傷もまるで最初からなかったかのように消える。
「よしー……!」
 ただのヒールで特性スキルめいた癒やしをしたヒーラーとは思えないほど軽い掛け声に、外道に落ちてまで力を求めた賊が真に絶望した。
「ホムンクルスでも痛いのですよっ」
 ぷんすかしたレラがハンマーから伸びる光刃を叩きつけてくるのを、かつて将来を嘱望された剣士が呆然として眺めていた。

●
 フリーダはほんの数秒で執着から抜け出す。
 賊の頭が再度シーザーロアを試みても、強靱な対術抵抗を持つフリーダ相手に幸運は2度も続かない。
「スキルなしでマークしようとするのは自惚れだったかもしれません」
 実力で上回るフリーダを相手に、移動力が激減した状態でできることは限りなく少ない。
(指揮が乱れたー……?)
 アルマが賊の状態に気付く。
(長時間戦ってる気がするけど戦闘が始まってからあんまり(10秒も)経っていないんだよねー……)
 味方の被害と敵の攻撃力を比べて次の行動を選ぶ。
「とー……!」
 非常に強力な癒やしを行使できるヒーラーは魔力(魔法攻撃)も強いのだ。
 頭ほど守りに重視していない賊達へ、甚大な損害を与えていく。
(リット君はこっそりと後ろにまわって馬車を抑えて下さいね。もう戦力足りてますから)
 シルクも強力な魔力を込めた光の矢を放ちながら、小声で指示を出す。
(遅かったではないかリット坊)
 こそこそと移動した代官(リット)を待っていたのはベルクだ。
 地形は隠密行動に不向きとはいえ戦闘が始まった後ならできることはある。
(厳しくして黙らせたから後は面倒かもしれんがこれも代官の仕事だ。がんばれ)
 怯えて震える住民(元賊)は怯えきり、これまで内心馬鹿にしてきたリットに助けを求める者までいる。
(怪我のせいでまともに動けんから保護しかできんのだ)
(これだけできれば十分以上じゃねーかなー)
 リットは考えることを放棄し、住民の防衛に専念した。
「距離を保つのは手段で敵に攻撃の機会を与えないのが目的なのだ」
 脆くさせるエーテルを賊の装甲や肉体にぶつけていたストレガに、道連れに狙いの強烈な衝撃波が届く。
「目的(無傷)が駄目なら次善なのだ」
 砕けた別のエーテルの欠片がストレガの周囲に舞う。
 遠距離攻撃手段が乏しい相手には、超エーテルバリアは特に有効だった。
「あの触りたくない装備品、実際に使ってる人がいるとはね……」
 移動を封じても敵の手には中距離攻撃手段がある。
 ディレインは最も攻撃が少ない敵と方向を選んで積極的に仕掛ける。
「俺も授恵者だから簡単には死ねないんだよ」
 膨大な魔力の籠もった刃には自身のエーテルを集中させた上で防御して耐える。
 汎用特性(ペインキル)があっても痛みを錯覚しかねないほどの痛み(ダメージ)にも耐えて、ディレインは祭刀に魔力を込めて思い切り殴りつける。
 それは一撃で決着をつけるには軽く、余裕を消すには十分だ。
「緋色の幻日(ファイアローテ・ネーベンゾンネ)」
 起動した術が地上の一部を炎で染め上げる。
 アウレーリアの魔力と技術でも敵味方の識別はできず、しかし敵の移動がほとんど封じられた状況では欠点が欠点として機能しない。味方(冒険者)の避難が簡単なのだ。
「お前は生き残りそうね」
 アウレーリアは敵を過小評価しない。
 怨念にも似た殺意で一矢報いられるのは御免なのでもう1度炎を出現させる。
 最悪でも1人(1番情報を持っている人間)は生き残るという予測は、正しかった。

●
「世間話……はするつもりはないでしょうし。どちらまで行くのか聞いても良いですか? 帝国の北? 西? 東? それともヴィントとか国外とか」
 死の気配が濃い戦場跡でフリーダは現実を認識した上で平常心(いつも通り)だ。
 残酷にも善良にも行き過ぎない、強者の態度である。
「なるほどね」
 アウレーリアは残留思念感応を使って情報を吸い上げる。
 最低限の治療をした上で厳重に拘束された賊達(生残3人)は抵抗しようにも手段がない。
 拘束を担当したストレガは、舌を使った自決の防止だけでなく考えつくあらゆるやり方を封じている。その結果捕虜への負担も見た面も凄まじいが事件の悪質さを考えると仕方が無い。
「他人のとこの人的資源を勿体ない使い方されては困るわ。人一人分で神材級量産できるくらいになってから出直していらっしゃい、てことよ」
 力で圧倒したアウレーリアが言うと説得力がある。
「リットもよく見ときなさいよ、こういうの時々いるから。専門の治安組織(リット一党は商家と行政が兼業)の一つもあった方が良いのでしょうけど……作る時は手を貸すわ」
 代官(リット)は、いつかそこまでいけたらいいなと遠い目をしていた。

●
 えらいひとからの許可、というふざけた題名の正式な書類(リットが大急ぎで書いた)を示してから、ベルクは保護した住民共を大型家畜小屋に放り込む。
「さて、妾がそなたらに聞きたいことはおおむね3つかの?」
 運び屋と連絡手段。
 いるなら仲介者。
 以前の犠牲者達について知ること全て(も同じ手段で消えたのか?)。
「ん? この道具をどう使うか知りたいのか? ご想像にお任せする。ああ、ちなみに我の前職はゴールディの極道でな」
 ベルクは日常の態度のまま濃厚な暴の気配を漂わせる。
 リット一党ですら怯える状況で、半端な悪党共が耐えられる訳がない。
「まったく、平原の軟弱者は甘くていかん。北壁に生きるのに比べればはるかに楽な生活だと言うのに……」
 結局、血は一滴も流れなかった。

●
「今回の逃亡は不問とするのを勧めたいのだ」
 ストレガの意見具申をリットは全く理解できていない。
「今回は許すのだ。その上でメドゥに生贄にされかけていた事は話す。今回感じた恐怖に方向性を持たせるのだ」
「えっと……」
 リットは一生懸命理解しようとはしている。
「元犯罪者をそのまま放置すればいずれ同胞に手をかける。この地をゴールディのようにするわけにはいかないのだ。恐怖を植え付け、伝播させる事で住民が逃亡の誘いを跳ね除ける効果を狙うのだ」
 リットの副官はなんとか理解してストレガの統治策の容赦のなさに恐れおののいた。
「鞭の後は飴っぽいのが効果的だと思うよー……!」
 アルマは悪戯っぽく微笑む。
「元犯罪者さんの刑罰代わりって話だからで大甘にもできないでしょ? だからもともと予定だった鉱山送りとの対比を分かりやすく、大きな絵とかで説明して理解させてから、開拓ノルマへほんのちょっとだけ手心を加えるのを恩に着せたりねー……」
 アルマは政治もできるのだ。
 長いつきあいの戦友の一面にはじめて気付いたリットが目を白黒させる。
「この武器の材料にされるところだったんだよ。命あってよかったね?」
 ディレインは具体的な証拠(禍々しい武器)を使って説得力を強化する。
 不満あるならまず伝えなよと、罪を償いきれていない面々に諭してもいた。
「1人1人に丁寧に説明した後はリット君の出番ですよ」
 シルクは暖かく見守る体勢だ。
 これまでのリットなら魔性の色香と絶大な恩の狭間で煩悶していただろうが今のリットはちょっとだけ違う。
「救出した後の住民さん達を励ましたり、後の処理をしたりは、リットさんだからこそ出来る大切なお仕事だと思います。ギュンタ、まだまだ新米冒険者ですから、リットさんのこと、たくさん頼りにしてます」
 年下冒険者からの期待の視線は、とても良い刺激になっていた。

マスターコメント

 お疲れ様でした。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 6〜8人

2023年07月30日 19時41分54秒 公開

成功

相談掲示板

  1. No.1

    シスターシルクです とりあえずリット君は連れていきましょう 可愛いですし事のあらましを知る必要がありますから。 前回と違って強力な武器をお持ちのようですので相性のいい相手を各個撃破していった方が良いですかね?

  2. ベルク・オスマット

    シーフのベルクだ、よろしく頼む。 そして申し訳ない。 先の依頼で重体を貰ってしまった。 敵の追撃と保護対象の護衛くらいしか出来そうにない。

  3. ディレイン・オールドケイジ

    ディレイン・オールドケイジ、ヒーラーだよ。よろしく。 判断力が落ちてるってことだから、指揮官を落としたら一気に瓦解してくれるかもねえ。 ただ、物理でも魔法でもなくただ「防御力」ってことだから、どっちも固かったり? ベルクちゃんはお大事に。

  4. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー と、ベルクさんはお大事にねー 戦い慣れてるけど判断力は落ちている。をどう考えたものかだけど 指揮官を倒せたらなにかしら有利にはすすみそうな感じ? 今のところは全体バフのインフィニティロアと 物理特化な相手もいることなので光縛封でも持っていこうかなと

  5. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。よろしくなのだ。 ベルク殿はお大事に。 戦うことより、保護対象が戦闘中に逃げ出さない事のが大変かもしれないのだ。 暫く戦闘に気づいてくれない事を祈るのだ。 アーケインテンペストとグラビティの片方か両方での足止めと、デバフでいこうと思っているところ。

  6. レラ・F・ギュンター

    ギュンタのお名前はギュンターと申します。ウォーリアです。どぞ、よしなに。 ベルクさんはお大事になさってくださいですよ。 皆さんの仰る通り指揮官を倒せればよろしだとギュンタも思いますが、その前にお仲間さんが立ち塞がってくる可能性も考慮いたしまして、ギュンタは物理攻撃に特化した敵さんの抑えに走ろかと考えてます。 戦闘に気づかないよにするのは難しそな気がいたしますねぇ。 エリアサイレンスを使ったら少しは時間稼ぎになるでしょか?

  7. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    キャスター、アウレーリアです。宜しく。 ベルクはどうぞ、お大事になさって。 流石に戦闘になっても気付かない、というのは厳しいかと思います。 エリアサイレンスも戦闘中には使えない・解除される旨記載がありますし。 ですので、なるべく長引かせず速攻で対処するのが宜しいかと。 足止めを担当していただけるなら、私は火力を上げていこうかと思っております。

  8. レラ・F・ギュンター

    >エリアサイレンス はい。ですので、使うとしたら<犠牲者になりかけてる人たち>に対して、になります。 先んじてこの人達の元まで走ってってエリアサイレンスしたら、外からの戦闘音は遮断出来るのではっと思いまして。 お名前ご指名してしまってごめんなさいですけど、ベルクさんが試すのであれば一考しても良いかもしれないです。 ギュンタが使えるわけじゃないのにごめんなさい。 速攻で倒す必要がありますのは同意です。 アウレーリアさんが火力上げて頂けますのは頼もしいですね。ギュンタそこまで強くないので助かります。

  9. ディレイン・オールドケイジ

    こちらに気づいた時点で荷物の輸送を止めるみたいだし、保護対象も自分たちの乗る馬車が止まれば顔を出すかもしれないね。 位置どり的にはこう↓って認識してるよ。 馬車 構成員   冒険者 保護対象のところへ向かうには回り込む必要があるのかな。 最初から戦闘を仕掛けるのもいいんだけど、例示されてる交渉を、見せかけだけでも持ち掛ければ、回り込む隙を作れたりするのかなーって思ったよ。 おじさんはどっちも苦手なのでどうしたものか、ではあるんだけど。

  10. No.10

    いっそ目立って敵をおびき寄せましょうか?

  11. ディレイン・オールドケイジ

    シルクちゃんが目立つって色気かな…? あちらさんの動きを止められる可能性があるなら、やってみる価値はあると思うよ。 自分の行動としては、近接魔法攻撃の相手に狙いを定めようかと。

  12. No.12

    隠れる事はもはや無理なので彼らの動きを一瞬止めるもしくは引き付けることが出来ればと、うまくいけばですがまぁやってみます

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0