『征竜の巫女』vs『紅蓮』
真柄 葉
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シナリオID:3045
オープニング
セルッティ商会へ訪れたヒルルクは、ヴィルジニア・テレーザ・セルッティに会うや開口一番にそう言った。
「実は最近ちょっと自分の力に自信がなくなってて……それで、鍛えてみようかなって」
「ふむ、それはいいと思うが……一体どういう風の吹き回しだい? いつもならアタシになんて相談もなしに飛び出すっていうのに」
「あー……その、いつもはごめん。でも、どこかへ行く時はちゃんと言ってから行くべきかなって思って」
「ふーん、この前のことで少しは考え方が変わったのかね」
「ん? 何か言った?」
「いや、こっちの話さね。それで、訓練ってのは何をするつもりなんだい。避難訓練をやろうって訳じゃないんだろ? 戦闘訓練をするなら、冒険者ギルドに依頼を出してあげようか」
「あ、ううん。リカルダの所へ行こうと思ってるの」
「リカルダ? ああ、『紅蓮』か。まあ彼女なら相手としては申し分ないだろうけど……受けてくれるのかい? 彼女は今もエスタル復興の旗頭として忙しいんだろう?」
「うん、いつも忙しそうにしてた。でも、息抜きは必要だと思うのよ」
「まあ、それはそうだろうけど……アンタとの訓練が息抜きになるのかい?」
「なるわ! リカルダは脳き……武闘派だもの! きっとストレスたまってるはずなの! なんとなくそんな感じがするの!」
「何となくってアンタねぇ……」
鼻息荒く拳を握るヒルルクに、ヴィルジニアは肩を落とす。
「まぁ、好きにするといいよ。それでアタシはどうすればいい?」
「いいの! ありがとう! えっとね――――」
ヒルルクは嬉しそうにヴィルジニアの元へ駆け寄ると、そっと『秘密の計画』を耳打ちした。
●
帝国東部鎮守都市『エスタル』。
大異変と先の戦いにより壊滅的な被害を受けた都市も、人々の懸命な復興作業により、ようやく人の住める場所へと変貌しつつあった。
「巫女殿から手紙?」
街の中心部に新設された行政府の一室で執務に追われていたリカルダ=C=アーレンスは、副官ロルフの報告に顔を上げた。
「正確にはヴィルジニア女史からの便りですが、なんでも巫女殿がエスタルでの訓練を所望しているとの事です」
「訓練だと? 巫女殿は今でも十分に強いだろう。それに征竜の加護もあると聞くし、わざわざ訓練など――――ああ、兵士達に訓練をつけてくれるという事か?」
「いえ、ご自身の訓練のためにエスタルを訪問したいと言っているようですね」
「うん? なおのこと話が見えないな。自身の訓練をしたいのなら、なぜわざわざここに来る必要がある。リブラネスタなら訓練相手には事欠かないだろう」
「まあそうですよね、リブラネスタには手練れの冒険者が多いですしね。ですが巫女殿は将軍と手合わせしたいそうですよ」
「私と?」
「ええ、手紙によると『リカルダ、最近ストレスたまってない?! たまってるでしょ! だからわたしと訓練して発散しましょ!』だそうです」
ヒルルクのマネをしているのだろうが、中年のロルフがやるととてつもなく滑稽に見える。そんな副官の醜態に苦笑しながら、リカルダは考えた。
ヒルルクが訓練をしたいという事は、己の力を高めるためだろう。なぜこのタイミングでと思わなくもないが、先月の件もあるし、何か思う所があるのかもしれない。自分としてもヒルルクには度々世話になっているし、訓練相手になってやりたいのは山々なのだが、今のエスタルの現状を鑑みれば訓練に時間を割く余裕は……。
「まあ、巫女殿には申し訳ないですが、現状を考えれば現実的ではないですね」
「うむ、そうだな。今のエスタルは訓練よりも優先すべき事案が山積み――――」
「リカルダ!」
と、話がまとまりかけた瞬間、突然執務室の扉が開き、渦中の人物が飛び込んできた。
ロルフが慌てて「なぜここにっ!?」と詰め寄るが、ヒルルクはまあまあと宥め部屋の奥へ。
「リカルダ、お願いっ! わたしに訓練をつけてください!」
そして、リカルダの前に立つと大きく頭を下げた。
「ふむ……私とて巫女殿の願いを聞き入れたくはあるのだが、何分多忙な身だ。私ではなく別の者が相手でも構わないか?」
「それじゃ意味ないの! リカルダと訓練しなきゃダメなの!」
「これは困ったな」
リカルダは頭を下げるヒルルク越しにロルフを見る。ドアの前に立つロルフは胸元に両手で大きな「X」を作り首を振っていた。
リカルダとて訓練が嫌なわけではない。最近、復興作業の陣頭指揮と事務作業ばかりで身体がなまっている実感もある。ヒルルク程の手練れと一戦交えることが出来るのなら、いい気分転換になるだろう。しかし、ヒルルクのこの様子を見るに、手合わせ一度で終わるような雰囲気ではない。きっと、何日もかけて本格的な訓練を所望しているはずだ。
流石にそこまで付き合うことはできない。リカルダはまだ顔を上げないヒルルクに断りを入れようとして、ふと先日聞いた『ある噂』を思い出した。
「そういえば、新たな征竜の巫女が現れたそうだな」
「え?」
リカルダの言葉に、ヒルルクは思わず顔を上げる。
「……ふーん、そうなんだ。新しい征竜の巫女が」
「なんだ、巫女殿は知らなかったのか?」
「うん、知らないわ」
ヒルルクの返事にリカルダは驚いた。征竜の巫女である彼女は征竜本人と繋がっていると聞く。ならば、征竜を介して他の巫女とも繋がっていると思っていたからだ。しかし、ヒルルクは知らないと言った。不要な情報を与えたかと思ったが、新しい巫女の話を聞いてもヒルルクの表情は変わっていない。興味がないのか、それともそんなものを気にかけている余裕もないのか……。
「……そうかすまない、いらぬことを言ったか」
「え、なんで謝るの? 別に征竜の巫女が現れたって関係ないわ。わたしはがんばって強くならなくちゃいけないの。だからお願いリカルダ、わたしを強くして。わたし、あなたみたいに強くなりたいの。わたしは本気よ」
せっかく顔を上げたヒルルクが、また頭を下げた。
リカルダはじっと返事を待つヒルルクを見つめ――――決断する。
「……そうか、そこまでの覚悟で申し込んできたのなら断るわけにもいくまい」
「将軍!?」
「言っておくが、手加減はできないぞ?」
そう言って不敵に微笑んだリカルダに、ヒルルクは飛び上がるほど喜ぶ。対照的にロルフは部屋の外にも漏れ聞こえそうなほどの盛大な溜息をついた。
●
数日後、訓練当日。
「……リカルダ?」
「なんだ?」
「これ、どういう事?」
「どういう事も何も、訓練を希望したのは巫女殿だろう」
「そうだけど……なんで、冒険者の皆が居るの?」
「はは、まさか冒険者が居るからと怖気づいたのではあるまいな。本気を所望したのも巫女殿だろう?」
こうして、限りなく『実戦』に近い『訓練』が始まった――――。
解説
マスターより
リプレイ
爆心地シルトラースよりずいぶんと離れたこのエスタルもそれは例外ではなかった。
風雨にさらされるままの廃墟が立ち並ぶエスタル近郊帝国軍旧駐屯地の一角。普段は人気もまばらなエリアには、戦前特有の張りつめた空気が漂っていた。
「リカルダ将軍、お初にお目にかかります。自分はレイウェスト殿下にお仕えする騎士アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト。帝国に名高き『紅蓮』と轡を並べる事ができ、光栄に思います」
騎士礼を取りリカルダへ挨拶したアルベルト。
「シュタールシュヴェーアト? もしかして、かの侯爵家の御子息か。そうか、生きていたのだな。リカルダ=C=アーレンスだ。こちらこそ、よろしく頼む」
そんなアルベルトに対し、リカルダも騎士礼をもって応えた。
帝国騎士の二人が挨拶を交わす横では、ヒルルクに声をかける者達もいた。
「ヒルルク様、闇落ちしかけたと聞いて心配していましたが、元気そうで何よりですわ」
戦前の空気に緊張しているのか、険しい表情のヒルルクに声をかけたバンビ。
「ですので、遠慮はしません。いつもの如く、最速で沈めて差し上げますわ」
ここ一月ほどの間にヒルルクに何があったのか詳しい事情は知らないが、バンビは前と変わらぬ姿を見せるヒルルクに最速で宣誓布告をかました。
「わたしだって負けないわっ。覚悟するのはバンビの方よ!」
「ふむふむなるほど、言うようになりましたわね。いいでしょう、受けて立ちましょう」
視線を交えた二人の間にバチバチと火花が散る。
「ヒルルクっ!」
――――ゴチーンっ!!
そんなヒルルクは突如背中に受けた衝撃にバランスを崩し、バンビとおでこをゴチーン。二人して額を押さえ蹲った。
「大丈夫、なのだ……?」
「だ、大丈夫……なんとか、うん」
額を押さえ転げまわるバンビにヒールをかけつつヒルルクは、突撃者へ向かう。
「それじゃ、改めて……ヒルルク、元気になってよかったのだ! 大福、あれから沢山聞きたいことが出来たのだ!」
「聞きたい事……?」
ちょっと赤くなった額を摩りながらヒルルクは首をかしげた。
「なんでリカルダなのだ?」
「え?」
「強くて実戦経験がいっぱいあるからなのだ? それとも征竜さんの骨の剣を持ってるからなのだ? ヒルルクは一人の戦い方を練習したかったのだ?」
「え、え、え?」
「三人目の巫女さんの事を言わなくてごめんなのだ。でも、もし偽物だったら征竜さん怒っちゃうのだ? 嫌な気持になってないのだ……?」
「大福、落ち着きな。そんなに一度に質問しても答えられないぞ」
逸る気持ちが先行してしまったのか、ヒルルクを質問攻めする大福を止めたのはルチル・プルメリア・グレイハーツだった。
「ありがと、ルチル。えっと、答えるね。わたしがリカルダに訓練をお願いしたのは、わたしの知ってる中で一番強い人だから。剣の事はよく知らないけど、それは関係ないわ。一人での戦い方を練習したいっていうのはその通りよ。わたしは強くならなきゃいけないから」
「それは、どうしてなのだ……大福たちと一緒じゃダメなのだ?」
不安そうに見上げてくる大福に、ヒルルクは小さく微笑んだだけで話を続ける。
「三人目さんの事はよく知らないし、征竜さまはきっとそんな事では怒らないと思う。わたしも別に気にしていないわ」
「気にしていないのなら、聞いてもいいかい?」
ヒルルクの答えに納得できないのか、何か言いたそうにしている大福の背をそっと撫でながら、ルチルは問いかけた。
三人目の巫女『イネス』の特徴を語り、彼女が語った言葉を伝えた。
ルチルはイネスが受けたとされる神託は、竜の里の民が持つ価値観とは真逆のものであったことが妙に引っかかっていた。征竜が本当にそんな事をイネスに託したのか。
イネス自身に悪意はないように感じたが、どうにも何者かに古巣を荒らされている気がする。ルチルはそう語り、ヒルルクの答えを待った。
「三人目さんの名前は知らないし、そういう特徴の人を里で見た事もないわ。それって、本当に里の人なの?」
「……そうか、ありがとう。知らないならいいんだ」
返ってきた答えにルチルは確信する。イネスは限りなく『黒』であると。そして、それと同時に、調査に手を割く必要があり、ヒルルクと会う機会が減るとも伝えた。
「回りくどい事をせずとも、ヒルルクに直接征竜へ質問してもらえばいいのではないのか? ヒルルクの証言はあくまで個人の意見だ。それだけでは証拠として不十分だろう。竜の里とてそれなりの住民が居た。ヒルルクの知らぬ顔であった可能性もあろう」
と、ヒルルク達の話を静かに聞いていたベルク・オスマットが意見する。
「ルチルの言うように、我もイネスの発言には違和感を覚えた。もし、征竜に真偽をただすことが出来れば、それこそが証明になろう」
「別に聞くのは構わないけど……征竜さまからお返事があるかわからないわよ?」
それでもかまわないと言うベルクに、ダメでも文句言わないでねと釘を刺し、ヒルルクは瞳を閉じた。
祈るように両手を組み、何やら呟いていたヒルルクが、突然顔を上げる。
「繋がったのだ……?」
「静かに」
思わず声を上げた大福の口元に、ルチルが指を立てる。
三人は北の空を仰ぐヒルルクをじっと見つめながら、その時を待った。
「――――征竜さま、知らないって」
会話が終わったのか、ヒルルクはとても穏やかで幸せそうな表情で三人にそう告げた。
「そうか、やはり奴は征竜の巫女を語るペテン師か」
「おおよそ予測はついていたけど、これで確定したね」
これで少なくとも、イネスはヒルルクが信仰する極北の征竜の巫女ではないと確定した。
ベルクとルチルは互いに視線を交えるとゆっくりと頷く。
「征竜さん、怒ってなかったのだ……? 偽物が出たって」
と、大福が不安気にヒルルクに問いかける。
「そんな事じゃ怒らないわ。征竜さまはとっても寛大なお方なんだからっ」
そんな大福とは対照的に、ヒルルクは弾んだ声で答えた。
●
「リカルダ将軍、訓練の内容について打ち合わせがしたい」
着々と『訓練』の準備が進む中、リカルダの元を訪れたナハティガル=ラーはそう切り出した。
「いくらヒルルクが強いとはいえ、将軍をはじめとする帝国精鋭にくわえ冒険者の大半を相手取っては、戦力的に不均衡だろう。下手をすれば自分の弱点や強みを理解する以前に戦いが終わる可能性が高い。だからこそ、序盤は俺達冒険者のみで彼女に攻勢をかけたい。だから、暫くの間帝国の将兵には手出しを控えてもらえないだろうか」
「……ふむ、貴殿の言い分も尤もだな。しかし、本当に巫女殿は納得するだろうか」
「それは、どういう意味だ」
「貴殿等を誘っておいてなんだが、巫女殿は冒険者と訓練がしたいわけではないのではないか? もしそうであれば、私の所になど来ずにギルドに依頼を出そう」
「……ふむ。ヒルルクはあくまで将軍と矛を交えたいと考えていると」
「そういう事だ。もちろん、貴殿の提案も理解できる。力あるとはいえ、女一人を寄ってたかって……などと考えているのだろう?」
リカルダの言葉にナハティガルは僅かに眉を動かす。
「ふっ、彼女は良き友を持ったな。では作戦はそれで行こう」
「いいのか」
「かまわんさ。貴殿等冒険者が先陣をきってくれるのだろう? 『敵』の力を測るにはもってこいの物差しだ」
そう言って不敵に微笑むリカルダに、ナハティガルは「楽しんでいるな」と肩を竦め、提案を了承した。
●
戦いを前にした不気味な高揚感が支配する空間を前に、Alexandra・Hexe・Claudiaは思考に沈んでいた。
訓練を前に意気込むヒルルクに厭な違和感を覚える。多少なりとも接点があった彼女が、まるで別人のようだ。
記憶を手繰った限り、彼女は良くも悪くも厚みの少ない人物であるように思う。
信じるものに忠実。疑うよりも先に身をもって識ろうとする。伝えるも受け止めるも真っ直ぐで、故に傷を作りやすい。
それはまるで年端も行かぬ幼い少女のようだ。
経緯は聞いた。
だが、違和感を説明するには足りなかった。
何かが重く引っかかる。
彼女が自身のみに強さを求めるのは何のため?
「――――いくら考えたからと言って、私個人に出来る事など多くはありませんが」
そう静かに呟いたAlexandraは立ち上がり、戦場へと歩いていく――――。
●
「ごめん、訓練を始める前にちょっといいかな」
そう言って、ハーヴィはヒルルクに声をかけた。
「この前、聞きそびれてしまったんだけど……征竜さまって、どんな方なんだろう?」
「え、どうしたの急に。どんなって言われても、とても素敵な方よ?」
「あ、うん……そうだよね、ヒルルクさんにとっては。あのさ、ヒルルクさんの大好きな征竜さま以外の征竜さまっているのかな?」
「他の征竜さま? どうかしら、わたしが知っている征竜さまはお一人よ。なんでそんなこと聞くの?」
「……そうなんだ。変なこと聞いてごめん、ありがとう」
そう言って微笑むハーヴィに、ヒルルクは首をかしげる。
「ほら、そろそろ戦いが始まりそう。急ごう」
ハーヴィはヒルルクの手を取った。
●
「うーん、これってちょっとアンバランスじゃない?」
敵味方に分かれた人数比を見て、トゥーリは首をかしげる。
「戦場では常にフェアな戦いができるとは限りません。むしろ、アンフェアな戦いの方が多いでしょう。ですから、それを経験していただくのも彼女には必要だと思います」
そんなトゥーリに並び立つハリス・アル・ターミルは、敵陣のヒルルクを見つめながら答えた。
「確かにそうなんだけどさぁ……」
「不服ですか?」
「そういう訳じゃないんだけど……釈然としないかも」
「……トゥーリ殿は優しいですね。ですが、先日、湖畔の屋敷にて発破をかけたのは我々です。そしてヒルルク殿は決断された。であるならば、胸を貸すのもまた友の役目かと」
そう諭したハリスに、トゥーリはしぶしぶ頷く。
双方戦いの準備は整った。太陽が天頂を指す頃、ついに『訓練』の火ぶたが切って落とされる――――。
●
「ヒルルク殿! いざ、尋常に勝負!」
新調したばかりの鎧を纏い、ヒルルクと真っ向から対峙したハリスは、声高に叫んだ。
ヒルルクも受けて立つと自慢の巨槌を構え、二人は真正面からぶつかった。
(まずは我々の力、とくと御覧を)
(ああ、楽しませてもらおう)
ハリスは後詰のリカルダとテレパスでやり取りしつつ、ヒルルクとしのぎを削り合う。
「ほら、ヒルルクさん! ハリスさんにばかり意識を集中してちゃ、後ろが疎かになっちゃうよ!」
ハリスの陰からトゥーリの声がしたかと思うと、気配はすぐに背後に。
「まずっ!」
「もらったよっ!」
ヒルルクがすぐに反転しようにも、ハリスががっちりと抑え込んでおり身動きが取れない。
「ヒルルクは大福が護るのだ!」
いきなり一本取られるかと思われた瞬間、物陰に潜み息を殺していた大福が飛び出してきた。大福は槍の穂先をヒルルクに突き入れようとしていたトゥーリの服を粽に噛みつかせると、そのまま身体を引き剥がした。
「トゥーリ殿!」
「今だっ!」
大福の体当たりにバランスを崩したトゥーリに、ハリスが思わず視線を奪われる。
その隙を逃さず、ヒルルクは巨槌を回転させ、ハリスの巨体を吹き飛ばした。
「一時的に敵を退けたからと言ってそれで終わりでないのが戦場――――多対多の戦いです」
しかし、ハリスが離れた事でヒルルクが単身で戦場に残されることになる。
当然、戦巧者である冒険者達がその隙を見逃すはずはない。Alexandraはヒルルクのいる座標へ雷光球を召喚する。
Alexandraは以前に見たヒルルクの攻撃特性から、前衛的で相手との距離を詰めて戦うタイプと分析していた。ならば、その機動力さえ奪ってしまえば、ただの硬い的に過ぎない。
そう考えたAlexandraはヒルルクの脚を殺しにかかった。しかし――――。
「そうはさせないっ!」
ヒルルク側についたもう一人、ハーヴィが同じ座標へ雷光球を重ねた。
二つの光球は互いに干渉し合い対消滅。ヒルルクの脚を縛っていた枷は霧散する。
「ヒルルクさん、ハリスさんが復帰する前に、後衛を――――キャスターを狙うんだっ!」
「わかったわっ!」
枷から解き放たれたヒルルクがハーヴィの助言を受け、Alexandraとの距離を詰めにかかる。ハリスやトゥーリが急いで進路に立ち塞がろうとするが、間に合わない。
このままヒルルクが距離を詰め、Alexandraを討ち倒すかと思われた、その瞬間。
「ぶへっ!?」
突然、カエルでも踏み潰したかのような醜い悲鳴が轟く。突撃をかけたヒルルクの前に、突如鉄壁が出現したのだ。
「良い悲鳴、いただきましたわ」
そんな声が聞こえたのは帝国軍部隊の中からだった。小柄な兵士が歩み出てきたかと思うと、アイアンウォールに鼻っ柱を潰されて蹲っているヒルルクに向けてビシッと指を突きつける。
「猪突猛進は何も変わっていませんのね。そんな事だから、衝突事故なんて起こすのですわ」
そう言いつつご満悦な様子でヒルルクを見つめるのは、帝国軍服に着替えたバンビだった。
「ヒルルク、大丈夫なのだっ!?」
鉄壁を前に蹲るヒルルクに大福が慌てて駆け寄るが――――。
「進む事しか能がない猪が足を止めるという事。それがどのような結果を得るか、身をもって学んでください」
Alexandraの重力球が二人を纏めて縛った。
強烈な圧力にヒルルクと大福は大地に膝を折る。
「最初の挨拶がこの様な場面となるとは……とはいえ、これも勝負。先達の巫女殿、御免」
そんな二人を鉄壁の上から見下ろすアルベルトは巨大な黒剣を大上段に構えると――――。
「ヒルルクさんっ!」
エーテルバリアで身を固めたハーヴィが間に割って入るよりも早く、渾身の一太刀を振り下ろした――――。
●
こうして、最初の訓練はリカルダ率いる後詰の出番もなく冒険者達の勝利に終わった。
「ハリスさん、どうかした?」
戦後のインターバルの間、じっと自分の手を見つめていたハリスにトゥーリが声をかける。
「……トゥーリ殿、私は立っていました」
「え?」
「私は倒されずに立っていました。あのヒルルク殿を相手にです……私は強くなったのでしょうか」
「うん、そうだね。強くなったんだよ」
ぎゅっと握ったハリスの拳に、トゥーリは手を重ねる。
●
「見事な一撃だったな。あの巫女殿の防御を打ち破るとは」
「お褒め頂いて光栄です」
作戦会議でもしているのだろうか、ルチルを中心に話し込んでいるヒルルク達を見つめながら、リカルダはアルベルトの功に賛辞を贈った。
「しかし、噂通りのお方ですね」
「噂通り?」
「とんでもない力を持った世間知らずで頑固な娘、と」
「はは、言い得て妙だ。それで、貴公の相手たり得たか?」
「十分に。とはいえ、相手も対策を練ってくるでしょう。初戦のようにはいきますまい」
「そうだな。私も出る準備をしておこう」
「いよいよ将軍のお力が見れるのですか。楽しみです」
「別に大したものではないと思うが、貴公の期待に添うように努力しよう」
「はい、いずれは将軍とお手合わせできる時の為に、精進いたします」
そう言ってアルベルトは面食らうリカルダに騎士礼を取った。
●
次戦が始まった。
陣容こそ変わらないが、ヒルルク達のチームは先ほどとは打って変わって、慎重にリカルダチームの出方を窺っている。
ヒルルクは動かず、大福とハーヴィの遠距離攻撃でリカルダチームの面々に攻撃を仕掛けていた。
「遠慮しないでいいって言われたし、ヒルルクさんを見習って力任せに行くよー!」
「わたしを見習ってってどういう事っ!?」
なんて後ろから憤慨する声が聞こえるのも気にせずに、攻撃集中したハーヴィはリカルダチームに向け極大魔法を放つ。
ハーヴィはわざとヒルルクを煽るようなセリフを吐く事で、いつもヒルルクがどのように戦闘に臨んでいるのかを実践していた。それが彼女の気付きに繋がると信じ、ハーヴィは普段はまず行わない猪突猛進な戦い方をして見せる。
大福は大福で、ハーヴィの魔法を避けて物陰へと身を隠した冒険者達に向け、待ってましたと奇襲を敢行。粽との連携で物陰を高速で移動しながら、主に後衛職を狙っていった。
そして、そんな二人の活躍を見守るヒルルクはというと――――。
「ちっ……なんて硬さじゃ」
「……流石征竜の加護という所か」
ハーヴィから借りた盾を構え防御に徹する。そのおかげで物陰から奇襲を仕掛けるベルクとナハティガルは苦戦を強いられていた。
ヒルルクは避ける気がないのか攻撃自体は呆気ない程ヒットする。しかし、ベルクの嵐爪牙はヒルルクの加護を崩せず、ナハティガルの一撃はダメージを与えた隙から回復されてしまう。一方でヒルルクもカウンターを試みるが、大ぶりな攻撃は二人に簡単に見切られ、双方に決定打がないまま、実に不毛な攻防が続いていた。
「どうしたの! そんなんじゃ、わたしは倒せないわよっ!」
物陰へと退避した二人に向け、ヒルルクが声を上げる。
「回復だけではないな……防御スキルも併用しているのか」
「まったく、防御力に極振りした奴がこれほど厄介だとはの。それに……」
熟練の域に達した二人がここまでヒルルク一人に手こずるのは何も彼女が防御を固めただけが理由ではなかった。ここまで苦戦する最大の要因、それは――――。
「次、ハリスが出てくるぞ。冒険者はクリーパーや魔獣のように単細胞な攻撃は仕掛けてこない。連携を取る事で個の力を何倍にも高め合う。ベルクやナハティガルの攻撃をしのいだからと言って油断するな」
後方より訓練を『指導』するルチルの存在だった。
ルチルはヒルルクや大福たちに要所要所で的確な指示を出し、初戦にはなかった連携を構築させる。更に厄介なのは、ルチルが非戦闘を宣言している事だ。本来であれば、司令塔を叩くのが勝利の定石なのだが、これはあくまで訓練。非戦闘員であるルチルを攻撃する事はできない。
初回とは打って変わって見事な連携を見せるヒルルクチーム。初戦からこの連携を取っていれば、結果も違ったものになっただろうが、実は初戦の無計画な戦闘はハーヴィの提案によるものだった。
初戦はあえて連携せずに、ヒルルクのやりたいように戦わせ、大福とハーヴィが臨機応変にサポートに回る作戦を取った。結果を見れば一目瞭然だが、初戦はなす術無く敗れた。もちろんこの結果も想定済み。
そして、それらを教訓とし、ルチルと改めて作戦を練った第二回戦は、見違えるような連携を見せる。
初戦と変わらずバランスよく連携攻撃を仕掛ける冒険者達を相手に、完璧に近い対応をして見せた。
結果、双方決定打がないまま、戦局は膠着する。
「……頃合いだな。そろそろ私達も出させてもらうぞ」
するとついにリカルダ達帝国軍精鋭が動いた。
一旦ヒルルクチームと距離を取った冒険者達に合流したリカルダは、自分が指揮を執る旨を伝え、各々に指示を出す。
再び戦端を開く前線に前へと出たリカルダが、ヒルルクと対峙した。
「巫女殿、待たせたな」
「ようやく出てきたわねリカルダ、勝負よっ!」
「ああ、勝負をしようか」
「負けないんだから――――って、ちょっ!? どこ行くのよっ!!」
しかし、リカルダは短く言葉を交わしただけで兵士達が組む陣内へと下がっていく。ヒルルクは引き留めようと手を伸ばすが――――。
「複縦陣、第一列前進!」
陣内からリカルダの声が響くと同時に、横陣となった兵士やハリス達をはじめとする前衛が一糸乱れぬ動きで侵攻を始めた。
「物量で圧す気か……ヒルルク、出るんじゃないよ! ハーヴィ!」
「うんっ!」
思わず飛び出しそうになるヒルルクを制し、ルチルはハーヴィに指示を出す。
ハーヴィは横陣で前進してくるリカルダチームに向け、魔法を放とうとするが――――。
「第二列、一斉射撃! 攪乱開始!」
リカルダの合図により放たれた無数の矢に、防御態勢を強いられた。
「ハーヴィ!」
「僕は大丈夫! それより、来るよ!」
後衛の援護を受け、さらに前進してきた前衛が既に目と鼻の先まで迫っている。
「再び胸をお借りしますヒルルク殿!」
「む、胸っ!?」
前衛の中央を任されたハリスの一言に、ヒルルクは思わず身体を押さえた。
「隙あり! ……って、なんかちょっと複雑なんだけど」
と、そんなヒルルクの隙を逃すまいと、前衛の列から飛び出たトゥーリが横撃を仕掛ける。
ヒルルクは慌てて防御姿勢を取りトゥーリの一撃を防いだ。
その後も立て続けに、ハリス、アルベルト、帝国兵達と怒涛の如くヒルルクに攻撃を浴びせていく。
更には後衛からもAlexandraやバンビ、帝国軍のシューターによる遠距離攻撃が隙を埋め、ヒルルクは徐々に追い詰められていった。
防戦一方になるヒルルクを援護するはずのハーヴィや大福はというと――――。
「はーびー! そっち行ったのだ!」
「うわっ!」
遊撃隊として瓦礫や建物の陰から奇襲をかけてくるナハティガルやベルクの対応で手一杯だった。
「将を落とすにはまず馬から――――悪いが引き剥がさせてもらう」
リカルダからの指示を受けて動いた二人は、標的をヒルルクからハーヴィと大福へ変えた。
二回戦で攻撃の主軸を担うはずだったハーヴィ達に仕事をさせないよう、二人はヒット&アウェイで絶えず攪乱し、攻撃する隙を与えない。
「まずいね……」
事態を打開しようと『観客席』からルチルの指示が飛ぶものの、帝国兵達が加わった事による圧倒的な物量とリカルダの老練な指揮により一つに纏まったチーム力を前にじりじりと削られていき――――。
「巫女殿、よく頑張った」
バンビの建てた鉄壁に退路を塞がれた隙に、冒険者や帝国兵に包囲されたヒルルクに、リカルダが歩み寄る。
「降参するならこれ以上の攻撃はしないが、どうする?」
「誰がっ!」
「そうか。では、遠慮なく」
盾を捨て巨槌に持ち替えたヒルルクが突撃してくる。しかし、リカルダは巨槌の攻撃をひらりとかわし、首刈宝剣【肆ノ剣:首削】を振り下ろした。
●
ヒルルク達の健闘虚しく第二回戦もリカルダ側の勝利で終わった。
三回戦を前に怪我人の治療が行われる傍ら、一度チームを解散し編成の見直しが行われる。
「随分苦労しているな」
「む。別に苦労してないわ、今度は勝つからっ!」
編成の話し合いから離れた場所でラトと戯れていたヒルルクに、ナハティガルとAlexandraが声をかけた。
「それはどうかな。このまま『個の武力』に固着すれは、永遠に勝利が訪れることはないぞ」
「さらに付け加えれば、貴方の動きは実に単調です。相手からしたらこれほど読みやすい相手はいない」
「Alexandraの言う通りだ。もしそれを変えたければ、やり方を見直せ。勝てないと思ったのなら意地を張らず、助けを求めろ。助力を請う事は何も恥ずかしい事ではない」
せっかくの助言にもヒルルクはゆっくりと首を振る。
「……それじゃダメなの」
「ダメとはどういう事だ。助力は請えないというのか」
そう問いかけるもヒルルクはだんまり。「もう行かなきゃ」と逃げるようにその場を去っていった。
「……悪い予感が当たりそうですね」
「悪い予感?」
「彼女は他人へ関心を持つことを諦める為にあえて距離を取っている可能性がある」
「……まさか」
Alexandraの推測に、ナハティガルは二の句を継げなかった。
●
「次はさ、ワタシ達ヒルルクさん側につくね」
そう言ってハリスの腕を引きながらヒルルクの元へ訪れたトゥーリ。
「え?」
「ほら、ヒルルクさんがいくら強いって言っても、エーテルの量にも限界はあるし、そろそろきついでしょ? だからワタシたちはヒルルクさん側でやるね」
「それに色々なパターンを経験するのは良い訓練となりましょう。敵が多い場合もあれば見方が多い場合もある。経験は掛け替えのない財産となります」
「そうそう! 基本的に単身とか少人数で多人数に挑むのは無謀だし、やりたい事があるのなら状況に応じて周囲のサポートを受けるのも大切だよっ!」
「なにより、仲間がいるという心強さは戦いにおいて大きな影響を持つと私は考えます」
「で、でも、わたしは……」
二人の熱弁に、ヒルルクはどうしたものかとルチルを見る。
「二人の言う通りだ、素直に受けるといいよ。それに二戦してアンタの手の内はほぼすべて見せてしまったからね。三戦目以降はもっと厳しい戦いになる。せめて一度くらいは勝ちたいだろう?」
「それはそうだけど……」
煮え切らない返事をするヒルルクにトゥーリとハリスが「是非」と伝えるのを、ルチルはじっと見つめる。
ヒルルクが突然訓練をしたいなどと言ったのはどういう訳か。
それを見極めるためにもルチルは訓練の間、ヒルルク本人の動きはもちろん、他の者達との会話からもその心理を窺っていた。
特に先ほどラトを通じて聞いたナハティガルたちとの会話。助力を願えというナハティガルに対し、ヒルルクは明確な拒否を示した。大福やハーヴィが力を貸すと言った時にはそん事はしなかったのにだ。別にヒルルクがナハティガルを嫌ってそう言った訳ではない。ヒルルクは単に自分から助力を請う事を拒絶したのだ。
「こんな事にも気付かなかったなんて、一番の理解者が聞いて呆れるね」
「何か言った?」
「いや、何も。そういえば、この間の件、ヴィルジニアが『ツケ』にしておくと言っていたけど、どうなったんだい?」
「ツケ? え、なんのこと?」
「……なんだ、女狐も案外お人好しだね」
首をかしげるヒルルクにルチルは小さく笑う。
「ねえ、ルチルさん、ヒルルクさん、次はどんな作戦で行くの?」
そんなヒルルク達の元へ、ハーヴィと大福が駆け寄ってきた。
「そうだね。ハリス達が加わってくれるようだから、色々とやり様はあるが、相手も同じ作戦は取らないだろうし、次はどう動いてくるか……」
「大福はリカルダの部下の人が厄介だと見たのだ! さっきベルク達に攻撃を受けてる時も、あのシューターさんがこちらをじーーーっと狙ってたのだ」
「あー、それは僕も感じたかも。まるで狙撃手みたいに狙ってたもんね」
悩むルチルに二人は前戦で感じた鋭い視線について話す。
「だから、大福はシューターさんに『罠』を仕掛けてみようと思うのだ!」
「罠?」
フンスと鼻息荒く胸を張る大福に、皆の視線が集まった。
「まず手始めに……」
そう言って真剣な表情で話し始めた大福の作戦に、皆は思わず噴き出した。
なにせ「ちっちっ粽は世界一~。わんわんわわわんっ!」やら「やおよろず亭の大福なのだ! 倭桜ノ街にお越しの際は是非お立ち寄りくださいなのだ!」等々、おおよそ戦闘には関係のない話を振り付きでやるのだから、見ている者が堪えるのは難しい。
「はは、それは相手もびっくりだろうね」
ハーヴィは目に浮いた涙を拭いつつ大福の頭をポンポンした。
「意表を突くという意味では面白い作戦かもしれない。大福はその路線で動いてみるといいよ」
「わかったのだ! 大福頑張るのだ!」
ルチルの承諾を得てグッと肉球を握った大福は、ちらりとヒルルクを見る。
「大福は頼りになるのだ。だからヒルルクももっと頼って欲しいのだ」
そう言った大福に、ヒルルクは小さく微笑んだだけだった。
●
「かつて見た夢のようにはいかせぬぞ」
「何の話だ?」
リカルダの元に集まり、次戦の打ち合わせをしていたベルクとアルベルト。
ふと呟いたベルクの声に、アルベルトが問いかけた。
「……気にするな、こちらの話だ。それよりも将軍、こちらの戦力が減ったが、次戦はどうするつもりか」
「ふむ、そうだな。減ったとはいえこちらの戦力が勝っている事は間違いない。再び物量で圧す作戦も悪くないが……」
「面白くない。そうお考えなのですね」
「うむ、似通った状況ばかりでは巫女殿の成長も促せまい。何か面白い――――いや、試してみたい戦術はあるか?」
「ならば、電撃戦はどうじゃ。神速をもってあ奴を叩く。何を悩んでいるかは知らぬが、いつまでもうじうじと女々しい奴には、劇薬となろう」
そう言って悪い笑みを浮かべるベルクに、リカルダとアルベルトは肩を竦めた。
●
「40点ですわ」
「……へ?」
三回戦開始も間近に迫る中、突然やってきていきなり点数をつけたバンビに、ヒルルクはぽかーんと口を開ける。
「まだまだ精進が必要という事ですの。壁は待ってはくれませんわ」
「え、壁……? なに、どゆこと?」
「ヒルルク様の復帰をお祝いします、という事ですわ」
「…………はい?」
頭に無数の『?』を浮かべるヒルルクを置いて、バンビはリカルダの元へ戻っていった。
その顔にどこか満足げな笑みを浮かべながら――――。
●
その後も、日が暮れる――――いや、陽が落ちてからも訓練は続いた。
参加した皆がエーテルを使い果たしヘロヘロになっても、リカルダの訓練は終わらない。
「極限状態になってからこそスタートだ。気合を入れろ!」
そう豪語するリカルダの満面の笑みに絶望する帝国軍と冒険者の中にあって、ヒルルクだけは音を上げず懸命に食らいつく。
結局、訓練が終わったのは日が変わる少し前だった。
「よし、訓練はこれで終了だ。各自、明日に疲れを残さぬよう、しっかりと体のケアに務めるように」
リカルダが声を上げると同時に、参加者達は一斉に地面へとへたり込んだ。
こうして終了したリカルダの特別訓練は、ヒルルクだけでなく冒険者達にも実り多いものになった事だろう。
この訓練を経てヒルルクがどこへ進むのか。その答えはまだ彼女の心の中にしかない――――。
マスターコメント
ロングシナリオ難しい 報酬:標準10 / 6〜10人
2023年06月29日 17時02分16秒 公開
参加者
相談掲示板
(ふぬぬぬぬ……!) 冒険者の皆が相手だからって手加減しないからっ! よろしくねっ!(強がり
(やれやれ……) そう気を張っていては勝てるものも勝てないぞ。 戦いは矛を交える前から始まっている。意気込むが悪いとは言わないが、冷静に周りを見る事も大事だ。
ウォーリアのアルベルトだ。 よろしくな。 今回はリカルダ側に付いて、ヒルルクを鍛えるつもりだ。 ・・・と、言うか、メタな事を書かせて貰えば、『マスターより』に書いてある様にマスターの希望通りに、PC全員リカルダ側に付いてヒルルクと戦闘した方が良いんじゃないか?どう思う?
キャスター、クラウディアです。よしなに。 今回は実戦形式、ですか… 目的はヒルルクさんの実力向上ですから、ただ物量で圧殺…というわけにもいきませんね。 キャスターとしては…ふむ。メタを刺すところから、でしょうか? 聴覚に爆音、サーマルに焔の合わせ撃ちと。 …それはそれとして、なぜ彼女は急に、独りでに"冬支度"を始めたのでしょう? なんといいますかその…彼女の在り方の変わりようにモザイクじみた何かを感じる…。 ─できれば、なのですけれども。 彼女の過去を私が識る上で、切っ掛けがほしい…要は掛け合いに付き合っていただける方がいると助かります。
トゥーリだよ、よろしくね! もともとヒルルクさんとリカルダさんでほぼ五分のところに、帝国精鋭×10に、授恵者×10ってさすがにバランス悪くない? ヒルルクさんの訓練になる前にさすがに戦力差でどうにもならない気がするんだけど? ここまで戦力差があるとリカルダさんチームが多少脳筋したとしても粗は無視してすり潰せる気がしないでもない……
ハリスと申します、どうぞ宜しく。 >戦力差 まあ、まともに考えればこれほどの差では明らかにバランスが悪いのは確実でしょうね。 我々は一見してそれがわかりますから、自分がヒルルク殿の立場なら文句も言いましょうが…。 今回はむしろ「不公平だ」「こっちも協力できれば」と【ヒルルク殿に思わせる】こと。 ……大変心は痛みますがそれを目的としても良いのかもしれません。 今まで一人で戦ってきた彼女に、一人でできることの限界を教え、手を取る切っ掛けとする。 よって最初は我々全員で彼女を攻撃し、彼女からの申し出があればそれに応じてチームを組む。 そのような形で如何でしょうか。
―…まあ、初手と以降の様子によってチームを作り替え というのは私もよいと思います。 あとは…、全体で意思を統一できるなら第三勢力化 という手も。 こちらも集団の力を再認識する切っ掛けとしては、同等以上の効果が得られそうです。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 第三勢力化も全員で一度フルボッコも捨てがたい…。 あと我はヒルルクに新しい巫女は同じ郷の出身か聞いてみようかの。 同じ郷でないなら征竜にどの征竜の巫女か確認してもらうのも一興だろう。
情報屋のルチルだ。よろしく。 まあ、既に言われているがリカルダ≧ヒルルクとなっている所に 更に冒険者をリカルダ陣営へ追加してしまえばオーバーキルとしか言えないだろう。 後、「全員で一回ヒルルクをボコる」という案が出てるとこ悪いがアタイは戦闘員として訓練に関わる気はないよ。 慣れてないのに「頭を使って戦う」をやろうとしても上手く行かないだろうし、訓練も一戦で済ませるつもりはないようだから戦場を客観的に見てアドバイスする役になる予定だ。 >第三の巫女 折角リカルダが名前を出してくれたから、アタイも聞いてみるつもりでいたよ。 イネスは自分がヒルルクと同じ郷出身のような口ぶりをしていたが、裏を取るならここだろうと。 ベルクも尋ねるつもりなら少し字数を預けてみようかね。
大福と相棒の粽なのだ。よろしくなのだ 大福はヒルルクチームに入りたい気持ちだったけど、ヒルルクは自分一人でやってみたい感じなのだ? ヒルルクと友情必殺技とか考えてみたかったのだ >第三の巫女 じ、実は…ヒルルクを助け出した後、ヒルルクの心が落ち着くまで第三の巫女の事は言わないでおこうって事になってたのだ ヒルルク、いっぱい我慢しちゃうから心配なのだ あの時、皆が傍にいたタイミングで伝えておけば良かったのかと大福ぐるぐるしてるのだ 大福もちょっと聞いてみようかな…なのだ
キャスターのハーヴィだよ、宜しくね。 まず、ハリスさんの案は個人的にとても良いなって思ってて……んん、でも、数日悩んだんだけど、やっぱ自分の気持ちと言葉に嘘は吐きたくないから、ごめんなさい、今回はヒルルクさん側に着いても良いかな……? 代わりに、と言っては何だけど、今までのヒルルクさんの戦い方に合わせて、僕も脳筋寄りの動きをしてみようと思うよ。何も考えず力任せに戦ったらどうなるか、自分以外の他人の動きを見ることで学べることもあるのかなって思って。 まぁ後は戦力差が正直あり過ぎて一方的フルボッコになるのもなぁ……と。範囲攻撃の手が少しはあってもいいのかなと思ったのが理由。 勿論僕自身もフルボッコされる覚悟は決めてるんでそこは良いとして、いやちょっとその動き方はまずい、とか、それならこう動いた方が良いのでは?なんて意見があれば遠慮無く。出来るだけみんなの意見に沿うようにするよ。
遅参申し訳ない。 シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 >方針 今回はヒルルクに『どこを伸ばしどこを直せば強くなれるのか』レクチャーするのが課題の一つだと思うが…… 既に言及されているように『リカルダ&帝国精鋭10名』+『冒険者10名』VSヒルルクでは、戦力が偏り過ぎていて弱点や強みを理解する以前に戦いが終わりそうではあるな。 ある程度拮抗させた状態で戦うか、ハリスが述べているように序盤は敢えてヒルルクが不利な状態で戦い、『数の力』に『個の武力』で抗うのは難しいと痛感させて助力を要請されるのを待つか、だろうか?(助力要請後は戦力を拮抗させる) 個人的には集団で女一人を集中攻撃するのは好かんが―― 実戦においては格上相手になら普通にやる事ではある。
>ルチル殿 それは有難い!訓練において客観的な視点をもとにした反省会は相互に有益です。 今回はどうしても訓練が重点されてしまい、情報面に割ける行動が少ない方もいるはず。 そこを補って頂けるならば、どうかお願いしたく。 >大福殿、ハーヴィ殿 ええ、もちろんヒルルク殿に協力することを止めは致しませんとも! むしろ要点を理解した上でヒルルク殿の側について頂けるなら私としては願ったりです。 ただあまりの絵的な悪役感で多少なり攻め手が弱まる方が出てくる可能性もありますが…( >ナハティガル殿 見栄えとしては大変よろしくないのは理解しております。申し訳なく( ですがヒルルク殿と以前数回戦った身としては、加減を考えられるような強さではありません。 恐らく私が一人で立ち会い、彼女が加減をしなければ数合持たずに殺されるでしょう。 「バランスが悪い」というのはあくまで彼女と並ぶ女傑たるリカルダ殿の存在あってこそ。 我々は個人としては蹴散らされる側ですし、彼女の強さからこちらが学ぶこともあるかと。
最遅参のバンビですわ。 リカルダ様の方に与力して戦闘参加する予定ですわ。 もっとも大した戦力にはなれないでしょうが。
情報収集は得意だからね。任せてくれ。 さて、時間が経つのは早いものだ。 忘れないようにしっかり書いておこう。
では、俺はリカルダチームで行動するとしよう。 ヒルルクから助力要請があった時は、戦力が均衡になるように戦術眼で調整してバラけるつもりだ。 >ハリス そうだな。ヒルルクが俺達よりも格上なのは確実であり、俺達の相手をするだけならば戦力が偏りすぎという事もないかもしれん。 とりあえず、序盤は手出しを控えて欲しい旨をリカルダに要望として伝えておこうと思う。