【再起】明日のための古い麦
馬車猪
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シナリオID:2887
オープニング
使っている麦は古く野菜はわずかで肉など最初から入っていない。
「パン食べたいよ……」
育ち盛りの子供が泣き言を言う。
食べようとしても匙を口に運ぶ気力がわかないのだ。
「わがまま言うんじゃありません」
まだ若い母親が厳しい表情で叱る。
逃げ込んだ村にいた頃は自身の食を最低限未満まで削って子に食べさせていた。
温かな食事を1日2回腹一杯食べられる今は、あの頃と比べると極めて豊かで安全ではあった。
「でも……」
「腹が減っていたら肉を獲りに狩りに行くこともできないぞ」
父親が母親を援護する。
村では母親と同じくらい食事を減らしてその上で籠城戦のために働いていたので一時は倒れる寸前だった。
最近の食事で回復はしたが、母親と同年齢なのに外見は10歳ほど老けてしまった。
それでも3人は生き延びた。
親も親類も友人知人の多くもあの日とそれ以降の混乱で死に別れてしまったが、親子3人で安全に食事できている今に彼は心から感謝していた。
「パン……」
子供が食べようとしないので母親の機嫌が急速に悪化する。
「わがまま言い続けると代官様が来るわよ!」
ひぅ、と子供が悲鳴っぽい息を吐く。
父親も声はあげないが表情が少しひきつっている。
この土地の代官は畏怖と恐怖の対象だ。
暴力と財力でこの土地を支配していることを隠そうともしない。
「ゴッチ先生が代官になればいいのに……」
子供の言葉は、両親の内心と完全に一致していた。
●
「カール氏を矢面に立ててこれを押しつけるのですか」
帝国南部鎮守都市ヴィントから派遣された文官が非難が籠もった視線を向ける。
「ゴッチ先生と呼んだ方が通りがいいわよ」
セニャは元シュタールシュヴェーアト領に送る物資の最終確認中だ。
廃棄される寸前まで非常用としてして保管されていた麦や芋、またはそれ未満の食料。
量の割に安く調達できたがその分味は悲惨そのものだ。
自弁で復興事業を進めるのは大変だとは思うが、前線部隊に怨まれることに慣れている文官でもこれはいくらなんでもあんまりだと思う。
離れていても臭いが酷いのだ。
「命の危険が去ったら優遇は終わりよ」
セニャは平然としている。
冒険者の活躍で元シュタールシュヴェーアト領の元穀倉地帯の安全は確保された。
魔獣やクリーパーが潜んでいた都市の廃墟も、復興はまだだが魔獣のクリーパーの排除は完了した。
後は治安を維持しながら麦や野菜を植え、収穫し、また植えるという日々を繰り返せばこの地の復興は完了する。帝国全土に影響するような大事件の影響を受けなければだが。
「商家との仲介や家畜の貸し出しで稼いではいるけど焼け石に水なのよ。はい報告書」
「確認します。……確認しました。輸送はご自身で?」
「冒険者ギルドに依頼するわ。住民を宥めたりするのも頼みたいしね」
セニャの価値観は王国貴族派貴族によくあるものだ。
民を大事にはしても尊重はしない。
一部の例外を除き、道具でしかない。
「後任に引き継いだ後に暴動が起きるような状況を解決させると?」
文官が目を細めて、冗談を言うときの口調で最後の警告を出す。
政治的にも物理的にも首を切られかねない状況であるのに、代官は不敵に微笑んでいる。
「私の手腕を疑問視するのはいいけど、冒険者の手腕と実績は正しく評価して欲しいわね」
セニャは、この依頼が失敗すれば首切りがあり得るのを承知した上でこの態度だ。
「私の出世欲が強いのは否定しないけど、この手法でないと餓える人間が増えるの。帝国全体が落ち着いた頃には使わないし使えなくなる手法だから、今は大目に見て欲しいわ」
セニャはセニャなりに代官という職務に忠実で、同時に帝国の足下を見て行動していた。
●
「あの女は若には相応しくないっ!」
興奮しているのはシュタールシュヴェーアト侯爵家の元家臣だ。
侯爵も嫡子も連枝もことごとく義務を果たした結果、侯爵家の生き残りはわずかだ。
残った最大の戦力は冒険者をしている青年という時点で悲惨な状況は察することができる。
「それはーそのー……」
地位としてははるかに上の、しかし侯爵家が健在の頃に何度も世話になった帝国軍高官が困り顔だ。
冒険者として活動中の帝国人を引き抜けない現在、あの女を切り捨てると代わりがいない。
帝国の人材は数も質もかつてと比べると貧弱であり、今いる人材だけだと今の帝国を維持するだけでぎりぎりなのだ。
高官が助けを求めるように剣士をちらちら見る。
剣士の名はカール・イスターツ。
帝国剣術界のビッグネームであり、冒険者が助けに来るまでこの地の生き残りを守り続けていた傑物だ。
代官とは比較できないほど住民から尊敬されている。
(1人の剣士として発言したいですが……)
胃が痛い。
(私が代官殿を批判したらこの地の復興が劇的に遅れるのは確実)
カールは剣だけの人物ではなく人材育成でも実績があるが統治は専門外だ。
「代官殿は頑張っています。彼を好いているのも間違いありません。もう少しだけ長い目で見ても良いのではないでしょうか」
カールの実績と名声で納得してしまう2人を見るのが辛い。
冒険者がこの地を解放した直後にカールがこの地を離れるのを邪魔したあの代官を、1度剣術的な意味で徹底的に扱きたいとまで思い始めていた。
●
「護衛依頼です」
冒険者ギルドの受付嬢が、帝国の一部を示す地図を広げている。
「まあ護衛といっても何度か戦闘依頼があった土地なのでほぼ安全です。遭遇する可能性があるのは野犬とか猪とかの害獣ですね」
目的地は、元は侯爵領の穀倉地帯だった土地だ。
今年の4月に麦を植えることを目指して復興作業が急速に進んでいる。
「でもちょっと問題があるんです」
運ぶのが古い麦と芋なのだ。
秋の収穫まで、これが現地住民の主食になる。
「現地にパン釜とか粉挽き所とかがほとんどないので、まっずい麦粥や芋汁で数ヶ月ってことになるわけで……」
治安が悪化するレベルの重大事である。
「良い調理方法を現地住民に教えたり、パン釜とか粉挽き所っぽいものを建てたり、害獣を狩りまくって干し肉にして秋までなんとかなるようにしたら喜ばれると思います」
とても、自由度が高い依頼であった。
解説
マスターより
リプレイ
多数の荷馬車による長大な隊列に、極少数の乳牛とミニビヒモーが混じっている。
「コレ食用として届けるのー……? 飼料用の間違いじゃなく?」
徒歩で隊列の先頭から最後尾までを行ったり来たりできる健脚ぶりを発揮しながら、アルマ・ヴァレンタインが強い困惑を露わにしている。
(これ廃棄寸前だよー……)
丁寧に保存され梱包されているのに臭いが酷い。
「うーん、ギリギリ生きてはいけるラインを攻めるのがセニャさんらしいというかなんというか……」
アルマが自前で用意した荷車には干し肉作りにも味をごまかすのにも使える塩や香料をみっちりと詰め込み、乳牛だって一時的にではあるが連れてきた。
これならなんとかなる、と思いたい。
「千里の道も一歩からとは言いますが、中々良い展望が出てきませんね。啓示では『タ=スさんでもこの辺りの短縮はまだ見つかっていない』との事ですが……」
フリーダ=ブロムヴィストは、帝国復興事業に近道がないと解釈している。
「色んな資源が限られた状況下で救う対象が広く多くなる程、一人当たりの幸福度が下がってしまうのですよね」
ナハト・シュライバーは先頭の荷馬車の御者席にいる。
本人は移動せず双波を使えるので非常に効率が良い。
隊列の速度を維持したまま地形と敵を探ることができるからだ。
(索敵に関してはスキルより目の方が役立つ状況ですけどね)
今は昼で晴れだ。
野外において索敵術も身につけているので、ナハトは遠くから近付く害獣の群れをいくつも見つけることができた。
隊列は長く守る対象は非常に多い。
真正面から戦えば害獣相手に単独で勝てる冒険者ばかりでも楽な戦いではない。
「とりあえず、今の私達にできる事をやれる分だけ頑張っていくしかありませんね」
フリーダは剣に巨大な光塊をまとわせる。
その直後からの動きは伝統的な剣術ではなく異質な価値観を感じさせるもので、高速で駆けてきた魔獣の群れをまとめて打ち倒す。
「作物の移送中に魔獣が来るともなれば、糧食が向こうから来たようなもの」
ナタリア・フィッツジェラルドの平然とした態度と事実のみを語る言葉が普通の業者と馬達を落ち着かせる。
(運動して肉に血が混じってもあると無しでは根本的に違う。可食部位を極力残さねば)
護衛は長時間の仕事だが戦闘は短時間の連続だ。
巨大な魔力を注がれた刃紋が妖しく陽光を反射し、高速で振るわれる大鎌が一振りごとに1つの命を残骸に変えていく。
臆病な馬が怯えて脚を荷馬車にぶつけてしまう。
(ヒールは馬に使うことになるか)
返り血を避ける余裕もあるナタリアは、そんなことも考えていた。
「フォルゴーレ、すまぬが隊列の盾になるのだ」
ストレガ・L・リベルガストラの指示に従い、輝く毛並みのミニビヒモーが隊列の真横へ移動する。
「万が一に備えてなのだ」
エーテルが広がり特殊な重力場が発生する。
移動を邪魔するオブジェクトの中では、害獣は鈍足になるかそもそも移動できなくなる。
「うむ、これからは時間との勝負なのだ」
空間を氷嵐で蹂躙したり爆発を発生させたりはせず、光弾を害獣の数より1つ少なく放って戦闘不能にする。
フォルゴーレが指示を受ける前に荷車を牽いてくる。
荷台の解体道具を片手に持って、ストレガは恐怖で震える害獣に背後から近付き一息で止めを刺し血抜きを始めた。
「さすがだな」
ベルク・オスマットが自身より大きな獣の死体を持ち上げ運んで来る。
「こちらで預かるのだ。熱湯の用意をお願いできるのだ?」
ストレガが言い終える前にベルクは作業にとりかかっている。
「護衛から2人程度抜けてもなんとかなるのだ」
穀物を運ぶ隊列は先に行かせる。
これは獣の死体を食肉に変えるためでもあるが、新たな肉を手に入れるためでもある。
「肉食の獣でもないよりはずっといいのだ」
ストレガは遠くから近づいて来る気配を認識した上で、ぎりぎりまで血抜きを進め、討伐と解体もしっかりと行った。
●
「困りますわ、リーラント様」
今のアウレーリア・フォン・ネーベルベルクは伯爵令嬢として振る舞っているようにも見える。
「帝国の土地は焼き畑ではございません。民衆は与えられるより奪われることに敏感です」
今の食糧供給量そのままに質まで改善できるわけないでしょ、少しは考えなさい。という本音が礼儀で覆われた言葉である。
「代官異動までの辛抱と民に言い聞かせば、我慢させることは出来るかもしれませんが……。後任をして改善させ得る水準の見通しは立っていますか?」
ひょっとして後任に失敗させるつもり? つもりがなくても帝国中央にそう思われたら拙いのではなくて?
アウレーリアは貴族令嬢として完璧な態度でちくちくと代官をつついて掣肘する。
(ゴッチ氏をそれなりに陥れて代官の地位を手放さざるを得なくなる状況に追い込むつもりだったのでしょうね……)
視線の温度が下がる。
代官は表情は維持しているが反論の切れ味が鈍くなっている。
天幕の外から呼びかけられる。
ヴィントから文官が到着したという報告だ。
高位授恵者達の挨拶を聞く前に文官は用意された報告書に目を通しヴィントからの指示書を渡す。
「復興案ができたら起こして」
天幕の隅で毛布に包まってから寝るまで10秒もかからない。
帝国系冒険者と代官に対する信用と帝国行政部門の追い詰められ具合が分かる行動であった。
「セニャ、あえて憎まれ役を演じているのは分かっている。けど、憎まれるだけでは統治は上手くいかないんだ」
輸送隊の護衛を終えたアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが、文官を起こさないように小声でしかし熱烈にセニャに語りかける。
(役割を果たしてはいるけど演技はしてないわよね……。セニャの交代を懲罰人事と思わせる風説を流すことで多少は状況を改善……できればいいけど)
アウレーリアは軽くため息を吐き、いちゃいちゃする2人の背後で咳払いした。
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「その節はお世話になりました」
古い麦と芋の臭いが漂う倉庫で、ゴッチとフリーダが遭遇する。
ゴッチは本当に久しぶりに胃痛の伴わない笑みを浮かべる。
(見たところお弟子さんと一緒に治安の維持や代官の補佐的業務を行っているみたいですね。とはいえお弟子さん達はお世辞にも政治的な能力・感覚に優れているとは言えないみたいです)
フリーダが予測していた以上に状況は悪いようだ。
「機会があれば次もお願いします。それよりどうでしょうか。付け焼き刃ですがこちらも多少は政治的知識はありますし、依頼期間中ではありますが人付き合いと行政についての講義ができると思います」
ゴッチの弟子達をちらりと見る。
「行政……」
その単語を理解している時点で、不肖の弟子達はもちろん一般村人よりはるかの上の政治知識持ちである。
ゴッチは弟子が反発しても全て無視してフリーダの元へ行かせる。
「ここで彼らの教育が上手く行けば今後の統治やお弟子さん達の未来に良い影響を与えてくれるでしょう。啓示にも『今も昔も力と教養を持つものが一歩先に行く。はっきりわかんだね』と出ていますし」
フリーダにとっては優しい内容も彼等にとっては非常に高度で、フリーダの教師的技術があっても依頼終了ぎりぎりで一般的村人より少し上まで持っていくのが精一杯だったらしい。
●
(難しいものなのだ)
カリスマと民衆の支持があれば有利とはいえそれがあっても政治ができるとは限らない。
(彼女は率先して悪役となり、この地が手放しで安定できると判断したならば先生にあっさり引き渡すつもりだろう。このやり方だと餓死が減る。不満は出ても死にはしない。大人は解ってしまうのだ)
それなりに政治知識のあるストレガはそれだけではないとも分かってはいるが、この土地の大変さを思いみなにお疲れ様と言いたくなる。
「猟師や革鞣しの職人は集まるのだ」
ストレガがいくら超熟練の狩人でも、材料が多すぎればまず頭数が必要だ。
ミニビヒモーが牽いてきた荷車から材料を下ろして分配と指示出しを行う。
「食事はあっちなのだ」
アルマが連れてきた乳牛も人気で、ストレガがいる場所に乳目当てで来る人間も多くいた。
「並ばなければ渡さない」
ナタリアは肉の調理を志願して担当している。
新鮮な肉、特に内臓からとれる栄養がこの地の住民には不足気味と判断しての行動だ。
無論、それだけでは足りないので協力を申し出た住人にマッシュポテト風の料理を任せてもいる。
(調味料で味をつけ下ごしらえの際に香草で臭み消しをしたつもりだがこれでも不味いか)
肉以外が、不人気だった。
(粗食を粗食に見えないようにする工夫は大事よね)
炊き出しにはアウレーリアも参加している。
交渉と計画立案で頭と精神を酷使したので良い気分転換でもある。
「そっちは保存食よ。今食べると麦の収穫まであれだけを食べることになるから気を付けなさい」
倉庫に収めても気配とかすかな臭気があるものに目をやる。
芋は蒸かして潰し、丸めて焼き、贅沢に揚げることもある。
山野の薬草や香草類を十分な量採集する時間はなかったので、これは住民有志に任せて集まったものを刻んで混ぜ込み臭み消しに利用した。
炊き出しは華やかで基本的に味も良く、住民の士気回復に貢献した。
「みんな。飢えに苦しむ住民を助けるためにセニャはあえて憎まれ役を演じているんだ」
旨い食事で腹がくちくなった後にこの台詞である。
アルベルトは自身のカリスマを有効に活用する術を当たり前のように身につけている。
侯爵家のうまれだから知って学ぶ機会があったという理由もあるが、授恵者が格が上がるほど様々なことに通じるという理由の方が大きい。
実力と実績を兼ね備えた授恵者にして騎士であるアルベルトが憚るのを見て増長する者もいるが、馬鹿扱いされ周囲に黙らせられる。
「憎まれ役って……」
「ほんとに? 怖かったよ?」
「でも騎士様がおっしゃることだし」
アルベルトの言い分が全て認められた訳ではないが、代官への敵意が減る効果は確かにあった。
「この麦や芋でも調理の工夫次第で美味しく食べられるんです。調理方法をお教えします」
大人達に真摯に語りかけてから、少し眠そうにしていた子供達にも目を向ける。
「これで美味しいパンを食べられるぞ!」
アルベルトは調理もできるし教えるのは特別に巧みだ。
子供達は実用的な教育の時間をとても楽しく過ごせた。
●
「『人はパンのみにて生きるにあらず!』って言うらしいし? パンとお肉が基本だけどそれだけだと幅が狭いからねー」
フリーダが受け取った啓示を知っているかのか知らないのか、アルマはそんなことを言いながら圧倒的スキルの猛威を振るう。
材料と人手はあるのだ。
単純作業は住民に任せて、製粉所やパン釜、ストレガ達から要望があった乾燥小屋や燻製小屋も次々建てていく。
「いいよいいよー、うまくできてる!」
教える方はそれほど得意ではないが、作り方を実地で教えたので維持や修理もなんとかなるはずだ。
「チーズ作りは牛不足で無理かもだけど、麦からおビール様の作り方は伝授しておかないとねー……!」
特殊な材料の料理が大好きなアルマは、たぶんアルコールだっていけるのだ。
「芋は後回しです。燻製小屋へ急いで運んで下さい」
ナハトの周囲は特に真剣だ。
「燻製は食品加工技術の中では割と敷居が低い方です。さしあたって利用できそうな食材、肉やチーズや古い芋も燻製にすることで保存性も良くなりますし、何より風味が多少マシになります」
代官の不人気政策の中で最悪のものが今日から始まる拙い食糧供給だ。つまり味の改善が何より重要だ。
「できれば本格的な燻製窯を作りたいのですが」
ナハトにも建築技能は普通程度で時間にも余裕はない。
だから効率のよい部分に力を集中する。
「僕達の手で食材を増やし、マシにすることであまり手をかけずとも秋までの食生活を改善できるように尽力しましょう」
幸いなことに燃料には余裕がある。
独特の香りのする煙と熱が獲れたての肉に吸い込まれて長持ちする美味へと変わる。
この仕組みを流用すれば、間違いなく多くの人間が食欲を減退させずに済む。
「時間の制約があるので原始的というか簡易かつ小規模な面が多いですが、このあたりは開拓が進んで余力が生まれればグレードアップできるでしょう」
冒険者は戦闘力以外も超人じみているとはいえ人間だ。
当たり前だが住民も努力する必要があった。
●
「……さすが元侯爵領、たかが飯がまずい程度で腹いっぱい食えるのに暴動だ内紛だと騒げるとは余裕があって羨ましいことだ」
ベルクは感情を殺すことには慣れてはいる。
しかし今回は口に出してストレスを発散しないと少々きつい。
「こっちは木の根や皮をかじって飢えをしのぎ、それでも足りんから奉公奴隷としてゴールディに身売りしたぐらいなんだぞ。まずくても腹いっぱい身売りもせずに食えるだけいいだろうに」
血抜きを含む最低限の処理をした害獣を引き渡すときには口を閉じていたが、兵士経験のある住民が怯えてしまうほど迫力があった。
「次は、もう、本当にな……」
アルベルトとセニャが入って言ってから非常に不穏な気配とときどき怒声が響く天幕を見る。
セニャの声に皮肉の色が薄いのは、側に婚約者がいるから猫を被った結果だろう。
1人の男が天幕から顔だけ出す。
ベルクに気付き、すがるような目で助けを求めてくる。
(軍とは別部署の我が深入りするのは……。今の我は冒険者、か)
覚悟を決めて中に入る。
「ぶつくさご託をほざくだけなら誰にもできるな、代官の性格は……褒められるところが実に少ないのは事実だが、その行いなくして今が無いことも分からんのなら、貴殿等が亡き侯爵殿達のマトリクス界への供回りになれんかったのも実に納得な話だな」
非常な侮辱ではあるがこのくらい強い言葉でないとセニャから意識を引き剥がせない。
「ただでさえ帝国崩壊で物流や穀倉地帯が壊滅している中で、住民の腹を満たせる食料をかき集めるのに金の問題だけでなくセニャ嬢やその配下がどれだけ駆けずり回っているかの想像もできんような輩しか残っていないのか」
本音でもあるので嘆く様に説得力がある。
(まぁもう少し慰撫を考えるべきとは思うがな)
セニャよりのベルクですら、この評価であった。
「悪くはないのだろうが」
ナタリアは畑だけでなく広い土地を見て回っている。
(土壌・風土・季節に最適な作物の見極めが不十分ではないか?)
合格点ではあるが決して優秀とはいえないというのが正直な感想だ。
ナタリアが情報収集と分析を行い修正するのでマシにはなるだろうが、元が良くないので改善しきれない。
様々な場所に軋轢を生じさせてはいるが、シュタールシュヴェーアト侯爵領と呼ばれた地の復興は破綻せず前へ進んでいる。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2023年04月08日 17時44分30秒 公開
参加者
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回は各地を見回るセニャの護衛、セニャへの説得、住民への説得、ゴッチ先生への説得、古い麦・芋を美味く食べるための調理法の伝授、パン窯の作成・・・ やる事が多くて身体が幾つあっても足りない。どうすれば良いんだ。
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 古い麦や芋の調理は、マッシュドポテトにでもして調味料やおかずをマシマシにしなければ食べられたものではないんじゃないのか?と思っている。 栄養学の面でも、住民の舌を満たす意味でも。 あとは相応に手が必要になるかもしれないが、魔獣が芋とかに釣られてくるのなら、肉が向こうからやってきた事にもなる。 魔法で吹き飛ばそうとしても、可食部位が減ってしまうから困った所だが、出来る限り近接戦闘とかで仕留めるとかな。 という訳で、現段階では私からはリーラント卿の護衛を兼ねて地質学という見地で彼女の補佐が1つ。 もう1つは栄養学的見地で調理法を伝授する事だが……医療薬学と、調理のどっちを持って行ったものか。
シューターのナハトです、よろしくお願いします。 やることが多い分手分け出来ると良いですね。 僕は護衛がてら沢山害獣を狩って干し肉にしますね。 あと骨で出汁をとったスープや脂など使えば古い麦や芋も多少はマシに食べられるかもしれませんし、狩猟知識でうまく解体して有効活用出来るようにしようかと。 そんなわけで調理そのものより食糧調達が主になりそうです。 余裕があればただの干し肉ではなくく燻製に出来ればと思うので、燻製釜と一緒にパン釜も作れたらなぁと。
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 私はまぁ、少しセニャと相談しましょう。 ここは別に私の領地ではありませんが、あまり各地で禍根を残すような統治をされても困ります。 担当から外れるのが決まっているなら、そういう前提で方針転換する筋道も考えないとですし。 暴発しない程度に住民の宣撫や家臣団の説得もやっておきましょう。 とりあえず安定化を図るまでで、彼女の印象改善とかは追々お願いします。 外国から嫁いでくる女は大体評判が悪いものですが、放置すると大抵碌なことになりませんので。 その辺は私が口を出すより、婚約者兼次期領主様の責任で語ってもらった方が良いでしょう。 質の悪い食糧の消費方法は、何か思いついたら案を出しておきます。 これが肉とかでしたら幾らか手はあるのですが、麦や芋が臭いのは宜しくないですね……。 健康を損ねたりするようなものでなければ良いのですが。
ストレガなのだ。宜しくなのだ。 多分ひたすら肉を解体することになるのだ。塩や香草がほしい。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 道中で返り討ちした獲物の回収と運搬をしようとおもう。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 建築・土木で施設関係とか乳牛さん連れていって醸造とあわせてチーズ作りとか 今回は質に期待できないかもだけどノウハウ伝授も兼ねて お酒(おビール様!ほか)作りに手を伸ばしてみようかなと 食べ物関係にまわってくれる人多いからそっち方面はおまかせ気味になるけど 荒地あたりに穴掘り紋具で落とし穴(あっこの穴、深いッ!)を掘って 餌で釣ったり追い込んだりの狩りで独力でもお肉が獲れるようにできればいいなと
俺の背後の都合で明日・明後日とプレイングを提出できるか分からないんで、先ほど以下の通り仮プレイングを提出した。 何か意見があれば遠慮なく言ってくれ ・心境及び目的 古い麦と芋を新都市(仮)に運び込むぜ! 各地を見回るセニャの護衛をするぜ! 住民と作業や料理の伝授を通じて交流するぜ! ・台詞 「セニャ、あえて憎まれ役を演じているのは分かっている。けど、憎まれるだけでは統治は上手くいかないんだ」(セニャを護衛しながら) 「さあ皆、俺と一緒に粉挽き所とパン窯と燻製窯を作ろう!」(住民に対して) 「この麦や芋でも調理の工夫次第で美味しく食べられるんです。調理補法をお教えします」(住民に対して) 「これで美味しいパンを食べられるぞ!」(住民(子供達)に対して) 「みんな。飢えに苦しむ住民を助けるためにセニャはあえて憎まれ役を演じているんだ。」(住民や家臣団やゴッチ先生に対して) ・全体的な行動(数字の順に行動する予定) 1:古い麦や芋を新都市(仮)に運び込む 2:各地を見回るセニャの護衛をする(セニャが拒否しても護衛につく) 3:護衛が終わったら、住民と一緒に粉挽き場・パン窯・燻製窯を作る 4:住民に対して古い麦や芋でも美味しく食べることができる料理を伝授する 5:住民や家臣団を可能な限り慰撫する 6:1から5の行動はどれだけ疲労がたまろうとも必ず実行する 7:1から5の行動は『カリスマ』『教導』のスキルを使用する ・戦闘での行動 セニャへの攻撃は『カバリング』で庇う セニャに襲い掛かる住民には攻撃しない 相手に近づくときは『チャージング』を使用 仲間との連携を重視