【生祝】春風に桜花は靡て
一乃口
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シナリオID:2866
オープニング
厳しい寒さが移り変わる日々と共に薄らいで行く、エスト・ポーラの街並みでも雪解け水が水路を流れ海へと至る。
季節の節目を迎えた街並みは、徐々に冬から春の色を覗かせるようになって久しく、そよぐ風の香りにその訪れを強く感じるようになる。
パトラ=L=アルアータは窓の外に少し前まで見えていた氷柱が無くなって居る事に気づいて、時の流れを実感した。
年末年始や『甘輝祭』の忙しさで、時間の流れをとても早く感じる。
そうした忙しさは、大変であっても達成感と充実感を得られるのでパトラとしては良い事だ。
窓の外を、それよりも遠くをパトラは眺めるとため息をついた。
(……慌ただしくなりそうですわね)
杞憂で済めば、それに越したことは無いのだが。
備えておけば憂うこともない、先を見越して取り組んでおくべき仕事を――書類の山を改めて見て、いったん後回しにした。
(さて――)
今月もエスト・ポーラを冒険者に楽しんでもらえるようにと場所を選出する。
その作業は楽しく、気付けば鼻歌も混じる。
春に見頃を迎えた場所、港町特有の旬のアピールは相変わらず勢いが良い。
畜養されて居ない食材が、限定メニューとして謳われるお店も外せないだろう。
こうした場所の選別は、訪れた人達が楽しんでくれるだろうと思える度に、パトラの顔には微笑みが垣間見えた。
パトラは今月の開催予定地をまとめると、使いを通じて冒険者ギルドへ渡る。
楽しい作業は、ここまでで終わりだ。
目の前の書類の山に向き合えば、しばらくはデスクワークが主だ。
それが終わった後のことを、パトラは一旦考えることをやめてペンを取る。
走るペンの音と、羊皮紙の擦れる音が静かに響き続ける執務室。
窓から見える枝先には、新たに芽吹いた葉が風に揺れていた。
季節の節目を迎えた街並みは、徐々に冬から春の色を覗かせるようになって久しく、そよぐ風の香りにその訪れを強く感じるようになる。
パトラ=L=アルアータは窓の外に少し前まで見えていた氷柱が無くなって居る事に気づいて、時の流れを実感した。
年末年始や『甘輝祭』の忙しさで、時間の流れをとても早く感じる。
そうした忙しさは、大変であっても達成感と充実感を得られるのでパトラとしては良い事だ。
窓の外を、それよりも遠くをパトラは眺めるとため息をついた。
(……慌ただしくなりそうですわね)
杞憂で済めば、それに越したことは無いのだが。
備えておけば憂うこともない、先を見越して取り組んでおくべき仕事を――書類の山を改めて見て、いったん後回しにした。
(さて――)
今月もエスト・ポーラを冒険者に楽しんでもらえるようにと場所を選出する。
その作業は楽しく、気付けば鼻歌も混じる。
春に見頃を迎えた場所、港町特有の旬のアピールは相変わらず勢いが良い。
畜養されて居ない食材が、限定メニューとして謳われるお店も外せないだろう。
こうした場所の選別は、訪れた人達が楽しんでくれるだろうと思える度に、パトラの顔には微笑みが垣間見えた。
パトラは今月の開催予定地をまとめると、使いを通じて冒険者ギルドへ渡る。
楽しい作業は、ここまでで終わりだ。
目の前の書類の山に向き合えば、しばらくはデスクワークが主だ。
それが終わった後のことを、パトラは一旦考えることをやめてペンを取る。
走るペンの音と、羊皮紙の擦れる音が静かに響き続ける執務室。
窓から見える枝先には、新たに芽吹いた葉が風に揺れていた。
解説
●解説
春のエスト・ポーラを過ごす事ができます。
お祝い事はどの選択肢でも自由に行って頂いて大丈夫です。
【1】花見
花園が管理している桜が、見頃を迎えました。
花園の散策、桜並木を楽しんだり。この時期だけ営業している『桜あんみつ』の屋台と花見用の席があります。
開けた場所には茣蓙を敷いて、宴会などを楽しむことができます。
【2】レストラン
落ち着いた雰囲気のある店内。花園の桜を窓で眺める事もできる人気の個室席があります。
コース料理など、普段より少しリッチな食事を楽しめる。
定番の肉料理から、鴨のコンフィが今月の特別メニューです。
【3】旬の海鮮料理
漁港の居酒屋、桜鯛や鰆が旬を迎えた。焼き物や鮮度を活かした刺身と言った定番品も扱う。
味噌で漬けた鰆がおススメメニューだ。シャルガネの酒ももちろんある。
他にも挑戦者向けのメニューがある、あるよ。
【4】街の散策
エスト・ポーラの街の散策ができます。
自由に買い物をしたり、買い食いをしたりと街での一時を過す事ができます。
春を迎えて新しい服やアクセサリーを扱うお店は、新商品を並べています。
大抵の事は出来ますが、特殊な内容や場所の指定等は、マスタリングの対象になる場合もございます。
マスターより
15度目まして、一乃口です!(五体投地)
暖かかったり寒くなったりする時期ですね、皆様体調等にはお気をつけてお過ごし下さい。
今回は春のエスト・ポーラでお花見を楽しんだり、街を楽しんだりできるシナリオです。
誕生日以外のお祝いも大歓迎です、沢山楽しんで頂けると嬉しいです。
皆様のご参加、お待ちしております。
リプレイ
昨日の寒さが、嘘のような心地良い陽射しが注ぐ古都エスト・ポーラの街並み。
季節の変化と共に、街の様子は咲く花のように移ろいで行く。
その中でもひと際春の訪れを感じられる場所、それが花園にある一面の桜の園だろう。
短い盛り咲きを一目見ようと、訪れる観光客の姿もちらほらと見える。
その中に、シルヴィア・A・カペルとロゼット――2人の姿もそこにある。
「ピンクの花は知っているけど、こんな一面に咲くなんて美しいわね」
金髪の髪を靡かせ、空色の瞳が一面に咲く桜を見て輝く。
「そうだね、とても綺麗だ」
ロゼットと共に桜の下を歩くシルヴィアも、見上げる桜を前に淡く微笑む。
吹く風には、春と桜の香り――そして花弁が混じる。
そんな中を2人は散策して行く。
「おや? あれは――」
桜の下を歩いているとシルヴィアの眼にシャルガネの趣濃い建物が目に留まり。
「お店かしら? 行ってみましょう」
先を少し行くロゼットにシルヴィアも頷いて続く。
それは『桜あんみつ』の屋台だ、花見ができる場所には緋毛氈が敷かれ、床几台と野天傘がある。
シルヴィアはその場所から見える、満開の桜の木々にしばらく目を奪われていた。
「お店の人に聞いたけど、満開の時期はとても短いらしいわ」
屋台で注文した品を済ませた品をお盆に乗せ、ロゼットはシルヴィアの元に来た。
「その時期に見に来れたのは、とても幸運なんでしょうね」
「そうだね、とても綺麗だ」
シルヴィアと同じように満開の桜を眺めたロゼットが隣に座り、あんみつと緑茶を置く。
自然の風が木々を撫でる音に混じって、どこからか音楽を運んで来る――静かな音色は2人の心を穏やかに彩っていた。
「ありがとう、ロゼット――これは、不思議な食べ物だね」
シルヴィアは『桜あんみつ』を見て少し驚く。餡は黒いものだと思っていたので、その意外な色彩と――また見慣れない物を見付ける。
「この透明な食べ物は何だろう?」
あんみつには桜色の餡に白玉や寒天が入っている、シルヴィアは蒼玉の瞳を丸くしながら初めてみる寒天を見つめた。
「それはカンテンって言うのよ」
シャルガネの食文化は不思議よねとロゼットがあんみつを口に運ぶ、シルヴィアも見習いながらあんみつを食べてみる。
白玉はふんわりと柔らかく、寒天はつるりとした食感の違いが面白くも楽しい。
そして蜜と桜餡のほどよい甘さと、香りが口の中に春を感じさせる。
「美味しい、桜餡の上品な甘さも良いね」
シルヴィアに頷きながら、ロゼットはお茶を一口。
「桜あんみつ、美味しいわね。お茶と合わせると甘さが引き立つわ」
それを聞いてシルヴィアもお茶を手に取って、その熱さと独特の渋みを味わい――あんみつを再び口に運ぶ。
「本当だ、とても合うね」
春風を感じながら、ロゼットとシルヴィアはゆっくりと一面に咲いた桜を眺めて、談笑に花を咲かせた。
2人が花見のひと時を過ごす、少し前の事だ。
春の陽気は、厳しい寒さを越えた人々を自然と笑顔にする優しい暖かさがある。
(春はいいね)
花園を訪れたクロンダイクもまた、春の訪れを多く感じられる楽園のような花園。左右異色の瞳はその花々を祝福するような面持ちで見渡した。
風に流されてくる桜達から降る花弁が、深い青髪にアクセントのように流れる。
(常春の理想郷が幾久しく続けば……と願ってしまうけれど)
桜の見応えも、他にも咲く花をクロンダイクは見て回る。
(人の世は不変ではないからこそ、限られた時をいとおしく思い、尊ぶ事ができるというものだ)
同じように花を愛でる人達の笑顔を見て、クロンダイクは静かに微笑む。
「おや、あれは――」
その眼に付いた行列、それは季節限定屋台『桜あんみつ』看板の文字に、そしてその列だ。
「僕も桜あんみつを賞味しに行かなくては、ね♪」
春の様に心を躍らせる言葉にクロンダイクは足軽く行く。
クロンダイクは桜あんみつを食べ、まるで春を甘味にしたような品だと思う。
食べ終えた後、桜並木を一望出来る場所に茣蓙を敷き、その上で演奏を始めたのだった。
誕生日と言う特別な日に、今日感じた春を、シャルガネ風にアレンジした音で奏でる。
(また来年も、こんな長閑な景色と時間を過せる世界であるように)
その優しい音色は、桜を見に来た人々の足を止め、心地良い一時を演出する。
●
春の訪れで色彩に溢れる街並み、レストランでも普段のインテリアとは別に花瓶に春の花が飾られる。
そんなレストランの一角では、間仕切りある大部屋を貸し切ってカイン・ステラの誕生日を祝う面々の姿があった。
その個室となって居るレストランの窓からは、花園の桜が良く見える。
「俺がいた村だとミモザが咲くと春って感じだったな」
桜を眺めながら、カインが言う。
料理が運ばれてくる間に始まった談笑の中で、春の訪れを感じる話に花が咲いていた。
「カインはミモザで春の実感かー」
なるほどねと、ヴィナスがその話を聞きながら料理がやって来て店員から受け取ると、その後ろからルーンス・ラグネルが「お待たせ」と個室へ訪れる。
「沈丁花が咲くと冬物を仕舞わないといけないかなって気になるな」
「なになに? 何の話?」
ヴィナスは春商品の入替りやらの商人観点については胸にしまって、ルーンスに席を外していた間の話を語る。
その話を聞きながらルーンスも席につく。
「カインはミモザかぁ。僕はスミレかなー、景観用に店の周囲に他の花と一緒に植えてるんだよー」
「へぇ、そうなんだな」
ルーンスの挙げた花の名前を聞いたカインは、2人の話から「やっぱ大きい街だから違うみてぇだな」と言葉にすると、料理を、スープを味わう――美味しい。
そしてつい、そのレシピを想像してしまうのは癖に近いかも知れない。
ルーンスも運ばれた料理が冷める前に食べる。
その様子を伺いなら、ヴィナスは再びルーンスに『沈丁花』の話をした。
(にいさまは庭の沈丁花、なるほど)
ヴィナスの言葉を聞いて、ルーンスの頭に春商戦が脳裏を過るが、今回はナシだ。
(ルーンも同じこと考えてそう)
ヴィナスの予想は的中している。
そんな中、新しい料理が運ばれてくると、話題を変え。談笑を交えながら3人の食事は楽しんで過ごして行く。
「次はデザートか」
カインの言葉に、メインディッシュが、メインでは無いと言う気持ちで居たヴィナスとルーンスはカインにバレ無いようにアイコンタクトする。
「お待たせしました」
「ありがとう」
店員が運んで来たそれを受け取る、ヴィナスとルーンス。それは2人で共同して仕込んだサプライズの品々。
「「誕生日おめでとう! カインママ」」
ルーンスが手にするケーキは鮮やかに紅い――スライスされた苺がたっぷりと、薔薇の花のように飾られた1人用のホールケーキ。
「やっぱりママの誕生日には豪華なケーキで祝いたくて」
「サプライズは成功のようだな」
ヤグルマギクのブーケを手に、ヴィナスがカインへ贈る。
「素直に嬉しい。……ママって言われなかったら、本当に最高だった」
そのカインの言葉にルーンスはヴィナスと笑顔でハイタッチを交わす。
「性別も違うし未婚だし、ママ要素ねぇよ」
ブーケを受け取りつつ、カインは抗議する。
ハイタッチもそこそこに、ルーンスがイチゴのケーキを切り分けるとカインの前に差し出して行く。
普段はカインママがやる作業だが、今日はカインママを労う日だ。
「大丈夫、僕ら以外も言ってるよ! 18のママも良いママでいてね!」
「でも、ママじゃないって言っても……無理だと思うよママっぷりが凄いからね!」
ルーンスにヴィナスも全く譲る気が無い『ママ』扱いのカイン。
「諦めろ? ひでぇ……18の男になんてことを」
カインは口ではヴィナスとルーンスに対して抗議をしているが、その顔は祝福された喜びの色が見えている。
そのむず痒さを払うように、切り分けられたケーキをカインは口に運んだ。
甘過ぎない、上品なクリームの甘さにイチゴの爽やかな甘味がとても映える。
「うん、美味しいな。このケーキ」
ケーキの味を、レシピ等は考えずに素直に味わった。
ブーケのヤグルマギクもカインの眼に留まった、一輪一輪が見事に咲き誇っている。
(でもケーキ美味いし花が綺麗だから今日は許す)
カインママのバースディパーティは、この後も笑顔と共に続く。
●
漁港近く、潮風は冷たいと言っても春の空気は確かにそこに混じり暖かさを感じさせる。
(ひょっとして海鮮ってのは春夏秋冬いつでも何かしら旨いのか……?)
ルイドは漁港の店の前に設置された看板を見て思う。
答えはYESだと、言わんばかりの店に掲示された『旬』の言葉とお品書き。
(ってことはつまり――無敵じゃねぇか)
世界の真理の一端を掴んだ思いをしながらルイドが店の暖簾を潜った。
「表のメニューの鰆の味噌漬け……それと、これ酒と合うやつだろ、合わせて注文するぜ」
――それから少し後のことだ。
「旬の海鮮料理を食べに来たぜ!!」
と勢いよく店に入るナハシュ、がやがやと騒然――いや活気の良い店内は、レストランのように肩肘を張る思いもなく振る舞えるとナハシュは笑いながら店員と話す。
いい具合に繁盛してたため、店員が「冒険者の方なら」とこの2人が店内で居合わせたのは偶々だ。
「よぉ! 邪魔するぜ」
「あぁ、構わない」
挨拶もそこそこに。
ルイドの向かいの席に座ったナハシュ、冒険者として活動して居れば互いに報告書等でも知らぬ顔では無かった。
「さてと」
ナハシュがお品書きに眼をやる頃に、ルイドの注文はやって来る。
(鰆の味噌漬け……食ったことはねぇが、なんかもう響きだけで分かってくるようになったわ)
焼き上がりたての香りがルイドの鼻孔をくすぐる。
合わせて頼んだシャルガネの酒。
ほぐした身から白い湯気があがり、その身を口に頬張る。
(――あぁ、やっぱうめぇな)
味わった口の中を、酒の辛さが精算するように喉元を通る。
向かいのナハシュの注文が終わったのは、この頃だ。
ナハシュはシャルガネ酒片手に、桜鯛の塩焼きと鰆のみそ漬けの身をほぐし舌鼓を打った。
「此処の肉料理屋はかたっ苦しいからな! こっちのが美味い」
酒が沁みる、そう表情に書いてあるような飲みっぷり。
ルイドも同じく酒を飲む。
その眼はあるメニューへ向けられていた。
挑戦者向けメニュー。
「挑戦者向けってなんだ? なんかもらえんのか?」
「どういう類いのものかこれも分からねぇが、なぁにここらの海鮮なら問題はねぇ」
ナハシュとルイドの視線が合う。
「「……いくか」」
2人の手が挙がり――オーダーは取られた。
「お待たせしました〜」
「「えっ」」
2人の顔は店員の手元を見てギョッとして固まる。
魚だけに。
それはルイドとナハシュの前で泳いでいる。
「白魚の踊り食いです、どうぞー」
食べ方の説明は簡潔に、笑顔で店員は去って行く――2人の視線はその背中から泳ぐ稚魚へ向けられる。
「え、このまま? 食うのか? コレを」
ナハシュ、引き笑い。
「海鮮、奥が深いな」
ルイド、新たな悟りを得る。
食った。
いや、飲んだ。
救いあげた稚魚を、酢の効いたタレに泳がせて啜り飲むのがサホーだと聞いたのだ。
新しい食文化に触れた。
ナハシュが持ち帰りをしているのを見て、ルイドもそれに倣ったと言う。
後悔は、してない。
●
春の陽気のようにエスト・ポーラの店々も、その品揃えを替えて行く。
そんな街を散策するアルフィー・リッパーとネーヴェ・グラヌローザは街歩きを楽しんでいた。
「へえ、春らしい服や小物が売ってるな、ちょっと見てもいいか?」
春色な店先に、アルフィーの目は留まり、ネーヴェへと声を掛ける。
「ええ、勿論。私も気になっておりましたの」
春らしい装飾品を探していたネーヴェと、部屋の模様替えを考えて居たアルフィーの足はそんな春色な雑貨屋へと向いて行く。
互いに目当ての品を、イメージを口にしながらの物色タイムだ。
「何か春らしい装飾品があるといいのですけれど」
「春らしい、ね……」
ネーヴェの言葉に、アルフィーはふっと目に留まった品をネーヴェに見せる。
「ネーヴェに似合うアクセサリー……夜桜のヘアクリップなんてどうだ?」
それは桜の石の部分が、薄いピンクからブルーに色彩の移ろう装飾品だった。
「繊細な細工が美しいですわね。折角ですし、これにします」
アルフィーの手にした装飾品を気に入ったネーヴェは、購入を決める。
「ふふ、似合います?」
「……うん、似合ってる!」
そしてアルフィーのネーヴェへ向けられた視線に気付いたネーヴェは、微笑みながら品をひとつ手に取った。
「アルフィーさんなら……シンプルなシルバーのバングルはいかがでしょうか」
アルフィーの黒毛の耳がぴんと立つ。
何度か訪れたこの街は、季節でその様相をころころと変えて行く。
リディリディ・トゥラ・イェレミースは長い金髪を揺らしながら、街を歩きを楽しんでいた。
(そういえば今月が私の誕生日でしたか。今年でいくつになったんでしたっけ……)
エルフと言えば長生きである。
長い歳月を経験すると、年齢を数えておくのも些末なことだと感じる時期があるのかも知れない。
リディリディは目に留まった石造りのベンチに、何となく腰を降ろした。
その場所は植込みの木々が青々と揺れ、陽射しを遮る。
少し歩き回ったあとの身体に、春の香り混じる潮風は心地良くリディリディの頬を撫で過ぎて行く。
(私の誕生月ということは、双子の妹のあの子も誕生月を迎えていますね)
風に揺れる木々を見上げた藍玉色の瞳が、故郷の森で過ごしているであろう妹を思い木々と、その妹の元まで繋がっている空へ向けられる。
(元気にしているでしょうか)
元気いっぱいに森を駆け回っていた姿を、思い返す。
(森の皆にいじめられていないでしょうか……)
姉として妹の身を案じる。弱い子ではないと信じていても、心配をしてしまうのは幼い頃を知るからこその姉の性とも言えるだろう。
揺れる木々に、懐かしさを感じる場所で。
少し高台にあるその場所は故郷の森とはまるで違う、古都らしい建物と広がる海が遠くまで続く。
物思いに遠くを見る彼女を、画家が見かければ絵に残したがるかも知れない。
リディリディは腰を上げると再び街の散策を始める。
どこか隙間を感じる心を、満たせる何かが――歩く中でささやかな縁を手繰れますように。
春の風は、優しくその歩む先に吹く。
●
「せっかくだし花見しようぜ」
買い物を終えたアルフィーがネーヴェを誘い、2人は花園へ足を運んで居た。
「桜並木が綺麗ですわね」
夕映えの桜並木は、その淡い色と陽の色に染まり花弁は風に舞う。
「実は今日のためにお弁当を用意してきたんだ」
「まぁ、お弁当を? 嬉しいです」
唐揚げや卵焼きの入ったお弁当をアルフィーが広げてくれる。
「唐揚げや卵焼きは好きか?」
アルフィーの料理は上手だと、ネーヴェは好みの味付けの卵焼きを食べて思う。
「どれも好きですわ、特に甘い卵焼きが。……ふふ、とっても美味しいです」
美味しいと言う言葉を聞いて、アルフィーも安心したように微笑めば自身もお弁当を食べ始める。
「今度は私がお弁当を作って来ても構いませんか? 何がお好きでしょう?」
「俺は一口ハンバーグが好きだな」
そんな話を交えて2人は笑い合う。
そのアルフィーの視線の先では、桜が風に揺れていた。
「桜の花って咲く時期は短いけど、綺麗だよな」
アルフィーは舞う花弁を見上げながら思い出すように言葉を続ける。
「忘れないでって花言葉があるみたいだぞ」
「忘れないで……儚くも美しい花言葉ですね」
陽の傾いた港町の風は強い、ネーヴェの銀雪の髪は緋色を混じて揺れていた。
「今日みたいな楽しい思い出、皆でいっぱい作っていこう」
「……有難う御座います。また、ご一緒下さいね」
明日も穏やかな日々が、1日でも多くありますように。
これは波乱の予兆が起こる前の、街の一幕だ――。
季節の変化と共に、街の様子は咲く花のように移ろいで行く。
その中でもひと際春の訪れを感じられる場所、それが花園にある一面の桜の園だろう。
短い盛り咲きを一目見ようと、訪れる観光客の姿もちらほらと見える。
その中に、シルヴィア・A・カペルとロゼット――2人の姿もそこにある。
「ピンクの花は知っているけど、こんな一面に咲くなんて美しいわね」
金髪の髪を靡かせ、空色の瞳が一面に咲く桜を見て輝く。
「そうだね、とても綺麗だ」
ロゼットと共に桜の下を歩くシルヴィアも、見上げる桜を前に淡く微笑む。
吹く風には、春と桜の香り――そして花弁が混じる。
そんな中を2人は散策して行く。
「おや? あれは――」
桜の下を歩いているとシルヴィアの眼にシャルガネの趣濃い建物が目に留まり。
「お店かしら? 行ってみましょう」
先を少し行くロゼットにシルヴィアも頷いて続く。
それは『桜あんみつ』の屋台だ、花見ができる場所には緋毛氈が敷かれ、床几台と野天傘がある。
シルヴィアはその場所から見える、満開の桜の木々にしばらく目を奪われていた。
「お店の人に聞いたけど、満開の時期はとても短いらしいわ」
屋台で注文した品を済ませた品をお盆に乗せ、ロゼットはシルヴィアの元に来た。
「その時期に見に来れたのは、とても幸運なんでしょうね」
「そうだね、とても綺麗だ」
シルヴィアと同じように満開の桜を眺めたロゼットが隣に座り、あんみつと緑茶を置く。
自然の風が木々を撫でる音に混じって、どこからか音楽を運んで来る――静かな音色は2人の心を穏やかに彩っていた。
「ありがとう、ロゼット――これは、不思議な食べ物だね」
シルヴィアは『桜あんみつ』を見て少し驚く。餡は黒いものだと思っていたので、その意外な色彩と――また見慣れない物を見付ける。
「この透明な食べ物は何だろう?」
あんみつには桜色の餡に白玉や寒天が入っている、シルヴィアは蒼玉の瞳を丸くしながら初めてみる寒天を見つめた。
「それはカンテンって言うのよ」
シャルガネの食文化は不思議よねとロゼットがあんみつを口に運ぶ、シルヴィアも見習いながらあんみつを食べてみる。
白玉はふんわりと柔らかく、寒天はつるりとした食感の違いが面白くも楽しい。
そして蜜と桜餡のほどよい甘さと、香りが口の中に春を感じさせる。
「美味しい、桜餡の上品な甘さも良いね」
シルヴィアに頷きながら、ロゼットはお茶を一口。
「桜あんみつ、美味しいわね。お茶と合わせると甘さが引き立つわ」
それを聞いてシルヴィアもお茶を手に取って、その熱さと独特の渋みを味わい――あんみつを再び口に運ぶ。
「本当だ、とても合うね」
春風を感じながら、ロゼットとシルヴィアはゆっくりと一面に咲いた桜を眺めて、談笑に花を咲かせた。
2人が花見のひと時を過ごす、少し前の事だ。
春の陽気は、厳しい寒さを越えた人々を自然と笑顔にする優しい暖かさがある。
(春はいいね)
花園を訪れたクロンダイクもまた、春の訪れを多く感じられる楽園のような花園。左右異色の瞳はその花々を祝福するような面持ちで見渡した。
風に流されてくる桜達から降る花弁が、深い青髪にアクセントのように流れる。
(常春の理想郷が幾久しく続けば……と願ってしまうけれど)
桜の見応えも、他にも咲く花をクロンダイクは見て回る。
(人の世は不変ではないからこそ、限られた時をいとおしく思い、尊ぶ事ができるというものだ)
同じように花を愛でる人達の笑顔を見て、クロンダイクは静かに微笑む。
「おや、あれは――」
その眼に付いた行列、それは季節限定屋台『桜あんみつ』看板の文字に、そしてその列だ。
「僕も桜あんみつを賞味しに行かなくては、ね♪」
春の様に心を躍らせる言葉にクロンダイクは足軽く行く。
クロンダイクは桜あんみつを食べ、まるで春を甘味にしたような品だと思う。
食べ終えた後、桜並木を一望出来る場所に茣蓙を敷き、その上で演奏を始めたのだった。
誕生日と言う特別な日に、今日感じた春を、シャルガネ風にアレンジした音で奏でる。
(また来年も、こんな長閑な景色と時間を過せる世界であるように)
その優しい音色は、桜を見に来た人々の足を止め、心地良い一時を演出する。
●
春の訪れで色彩に溢れる街並み、レストランでも普段のインテリアとは別に花瓶に春の花が飾られる。
そんなレストランの一角では、間仕切りある大部屋を貸し切ってカイン・ステラの誕生日を祝う面々の姿があった。
その個室となって居るレストランの窓からは、花園の桜が良く見える。
「俺がいた村だとミモザが咲くと春って感じだったな」
桜を眺めながら、カインが言う。
料理が運ばれてくる間に始まった談笑の中で、春の訪れを感じる話に花が咲いていた。
「カインはミモザで春の実感かー」
なるほどねと、ヴィナスがその話を聞きながら料理がやって来て店員から受け取ると、その後ろからルーンス・ラグネルが「お待たせ」と個室へ訪れる。
「沈丁花が咲くと冬物を仕舞わないといけないかなって気になるな」
「なになに? 何の話?」
ヴィナスは春商品の入替りやらの商人観点については胸にしまって、ルーンスに席を外していた間の話を語る。
その話を聞きながらルーンスも席につく。
「カインはミモザかぁ。僕はスミレかなー、景観用に店の周囲に他の花と一緒に植えてるんだよー」
「へぇ、そうなんだな」
ルーンスの挙げた花の名前を聞いたカインは、2人の話から「やっぱ大きい街だから違うみてぇだな」と言葉にすると、料理を、スープを味わう――美味しい。
そしてつい、そのレシピを想像してしまうのは癖に近いかも知れない。
ルーンスも運ばれた料理が冷める前に食べる。
その様子を伺いなら、ヴィナスは再びルーンスに『沈丁花』の話をした。
(にいさまは庭の沈丁花、なるほど)
ヴィナスの言葉を聞いて、ルーンスの頭に春商戦が脳裏を過るが、今回はナシだ。
(ルーンも同じこと考えてそう)
ヴィナスの予想は的中している。
そんな中、新しい料理が運ばれてくると、話題を変え。談笑を交えながら3人の食事は楽しんで過ごして行く。
「次はデザートか」
カインの言葉に、メインディッシュが、メインでは無いと言う気持ちで居たヴィナスとルーンスはカインにバレ無いようにアイコンタクトする。
「お待たせしました」
「ありがとう」
店員が運んで来たそれを受け取る、ヴィナスとルーンス。それは2人で共同して仕込んだサプライズの品々。
「「誕生日おめでとう! カインママ」」
ルーンスが手にするケーキは鮮やかに紅い――スライスされた苺がたっぷりと、薔薇の花のように飾られた1人用のホールケーキ。
「やっぱりママの誕生日には豪華なケーキで祝いたくて」
「サプライズは成功のようだな」
ヤグルマギクのブーケを手に、ヴィナスがカインへ贈る。
「素直に嬉しい。……ママって言われなかったら、本当に最高だった」
そのカインの言葉にルーンスはヴィナスと笑顔でハイタッチを交わす。
「性別も違うし未婚だし、ママ要素ねぇよ」
ブーケを受け取りつつ、カインは抗議する。
ハイタッチもそこそこに、ルーンスがイチゴのケーキを切り分けるとカインの前に差し出して行く。
普段はカインママがやる作業だが、今日はカインママを労う日だ。
「大丈夫、僕ら以外も言ってるよ! 18のママも良いママでいてね!」
「でも、ママじゃないって言っても……無理だと思うよママっぷりが凄いからね!」
ルーンスにヴィナスも全く譲る気が無い『ママ』扱いのカイン。
「諦めろ? ひでぇ……18の男になんてことを」
カインは口ではヴィナスとルーンスに対して抗議をしているが、その顔は祝福された喜びの色が見えている。
そのむず痒さを払うように、切り分けられたケーキをカインは口に運んだ。
甘過ぎない、上品なクリームの甘さにイチゴの爽やかな甘味がとても映える。
「うん、美味しいな。このケーキ」
ケーキの味を、レシピ等は考えずに素直に味わった。
ブーケのヤグルマギクもカインの眼に留まった、一輪一輪が見事に咲き誇っている。
(でもケーキ美味いし花が綺麗だから今日は許す)
カインママのバースディパーティは、この後も笑顔と共に続く。
●
漁港近く、潮風は冷たいと言っても春の空気は確かにそこに混じり暖かさを感じさせる。
(ひょっとして海鮮ってのは春夏秋冬いつでも何かしら旨いのか……?)
ルイドは漁港の店の前に設置された看板を見て思う。
答えはYESだと、言わんばかりの店に掲示された『旬』の言葉とお品書き。
(ってことはつまり――無敵じゃねぇか)
世界の真理の一端を掴んだ思いをしながらルイドが店の暖簾を潜った。
「表のメニューの鰆の味噌漬け……それと、これ酒と合うやつだろ、合わせて注文するぜ」
――それから少し後のことだ。
「旬の海鮮料理を食べに来たぜ!!」
と勢いよく店に入るナハシュ、がやがやと騒然――いや活気の良い店内は、レストランのように肩肘を張る思いもなく振る舞えるとナハシュは笑いながら店員と話す。
いい具合に繁盛してたため、店員が「冒険者の方なら」とこの2人が店内で居合わせたのは偶々だ。
「よぉ! 邪魔するぜ」
「あぁ、構わない」
挨拶もそこそこに。
ルイドの向かいの席に座ったナハシュ、冒険者として活動して居れば互いに報告書等でも知らぬ顔では無かった。
「さてと」
ナハシュがお品書きに眼をやる頃に、ルイドの注文はやって来る。
(鰆の味噌漬け……食ったことはねぇが、なんかもう響きだけで分かってくるようになったわ)
焼き上がりたての香りがルイドの鼻孔をくすぐる。
合わせて頼んだシャルガネの酒。
ほぐした身から白い湯気があがり、その身を口に頬張る。
(――あぁ、やっぱうめぇな)
味わった口の中を、酒の辛さが精算するように喉元を通る。
向かいのナハシュの注文が終わったのは、この頃だ。
ナハシュはシャルガネ酒片手に、桜鯛の塩焼きと鰆のみそ漬けの身をほぐし舌鼓を打った。
「此処の肉料理屋はかたっ苦しいからな! こっちのが美味い」
酒が沁みる、そう表情に書いてあるような飲みっぷり。
ルイドも同じく酒を飲む。
その眼はあるメニューへ向けられていた。
挑戦者向けメニュー。
「挑戦者向けってなんだ? なんかもらえんのか?」
「どういう類いのものかこれも分からねぇが、なぁにここらの海鮮なら問題はねぇ」
ナハシュとルイドの視線が合う。
「「……いくか」」
2人の手が挙がり――オーダーは取られた。
「お待たせしました〜」
「「えっ」」
2人の顔は店員の手元を見てギョッとして固まる。
魚だけに。
それはルイドとナハシュの前で泳いでいる。
「白魚の踊り食いです、どうぞー」
食べ方の説明は簡潔に、笑顔で店員は去って行く――2人の視線はその背中から泳ぐ稚魚へ向けられる。
「え、このまま? 食うのか? コレを」
ナハシュ、引き笑い。
「海鮮、奥が深いな」
ルイド、新たな悟りを得る。
食った。
いや、飲んだ。
救いあげた稚魚を、酢の効いたタレに泳がせて啜り飲むのがサホーだと聞いたのだ。
新しい食文化に触れた。
ナハシュが持ち帰りをしているのを見て、ルイドもそれに倣ったと言う。
後悔は、してない。
●
春の陽気のようにエスト・ポーラの店々も、その品揃えを替えて行く。
そんな街を散策するアルフィー・リッパーとネーヴェ・グラヌローザは街歩きを楽しんでいた。
「へえ、春らしい服や小物が売ってるな、ちょっと見てもいいか?」
春色な店先に、アルフィーの目は留まり、ネーヴェへと声を掛ける。
「ええ、勿論。私も気になっておりましたの」
春らしい装飾品を探していたネーヴェと、部屋の模様替えを考えて居たアルフィーの足はそんな春色な雑貨屋へと向いて行く。
互いに目当ての品を、イメージを口にしながらの物色タイムだ。
「何か春らしい装飾品があるといいのですけれど」
「春らしい、ね……」
ネーヴェの言葉に、アルフィーはふっと目に留まった品をネーヴェに見せる。
「ネーヴェに似合うアクセサリー……夜桜のヘアクリップなんてどうだ?」
それは桜の石の部分が、薄いピンクからブルーに色彩の移ろう装飾品だった。
「繊細な細工が美しいですわね。折角ですし、これにします」
アルフィーの手にした装飾品を気に入ったネーヴェは、購入を決める。
「ふふ、似合います?」
「……うん、似合ってる!」
そしてアルフィーのネーヴェへ向けられた視線に気付いたネーヴェは、微笑みながら品をひとつ手に取った。
「アルフィーさんなら……シンプルなシルバーのバングルはいかがでしょうか」
アルフィーの黒毛の耳がぴんと立つ。
何度か訪れたこの街は、季節でその様相をころころと変えて行く。
リディリディ・トゥラ・イェレミースは長い金髪を揺らしながら、街を歩きを楽しんでいた。
(そういえば今月が私の誕生日でしたか。今年でいくつになったんでしたっけ……)
エルフと言えば長生きである。
長い歳月を経験すると、年齢を数えておくのも些末なことだと感じる時期があるのかも知れない。
リディリディは目に留まった石造りのベンチに、何となく腰を降ろした。
その場所は植込みの木々が青々と揺れ、陽射しを遮る。
少し歩き回ったあとの身体に、春の香り混じる潮風は心地良くリディリディの頬を撫で過ぎて行く。
(私の誕生月ということは、双子の妹のあの子も誕生月を迎えていますね)
風に揺れる木々を見上げた藍玉色の瞳が、故郷の森で過ごしているであろう妹を思い木々と、その妹の元まで繋がっている空へ向けられる。
(元気にしているでしょうか)
元気いっぱいに森を駆け回っていた姿を、思い返す。
(森の皆にいじめられていないでしょうか……)
姉として妹の身を案じる。弱い子ではないと信じていても、心配をしてしまうのは幼い頃を知るからこその姉の性とも言えるだろう。
揺れる木々に、懐かしさを感じる場所で。
少し高台にあるその場所は故郷の森とはまるで違う、古都らしい建物と広がる海が遠くまで続く。
物思いに遠くを見る彼女を、画家が見かければ絵に残したがるかも知れない。
リディリディは腰を上げると再び街の散策を始める。
どこか隙間を感じる心を、満たせる何かが――歩く中でささやかな縁を手繰れますように。
春の風は、優しくその歩む先に吹く。
●
「せっかくだし花見しようぜ」
買い物を終えたアルフィーがネーヴェを誘い、2人は花園へ足を運んで居た。
「桜並木が綺麗ですわね」
夕映えの桜並木は、その淡い色と陽の色に染まり花弁は風に舞う。
「実は今日のためにお弁当を用意してきたんだ」
「まぁ、お弁当を? 嬉しいです」
唐揚げや卵焼きの入ったお弁当をアルフィーが広げてくれる。
「唐揚げや卵焼きは好きか?」
アルフィーの料理は上手だと、ネーヴェは好みの味付けの卵焼きを食べて思う。
「どれも好きですわ、特に甘い卵焼きが。……ふふ、とっても美味しいです」
美味しいと言う言葉を聞いて、アルフィーも安心したように微笑めば自身もお弁当を食べ始める。
「今度は私がお弁当を作って来ても構いませんか? 何がお好きでしょう?」
「俺は一口ハンバーグが好きだな」
そんな話を交えて2人は笑い合う。
そのアルフィーの視線の先では、桜が風に揺れていた。
「桜の花って咲く時期は短いけど、綺麗だよな」
アルフィーは舞う花弁を見上げながら思い出すように言葉を続ける。
「忘れないでって花言葉があるみたいだぞ」
「忘れないで……儚くも美しい花言葉ですね」
陽の傾いた港町の風は強い、ネーヴェの銀雪の髪は緋色を混じて揺れていた。
「今日みたいな楽しい思い出、皆でいっぱい作っていこう」
「……有難う御座います。また、ご一緒下さいね」
明日も穏やかな日々が、1日でも多くありますように。
これは波乱の予兆が起こる前の、街の一幕だ――。
マスターコメント
ご参加ありがとうございました!!(五体投地)
素敵なプレイングをありがとうございました。
これは街がまだ、穏やかな頃の一幕です。
イベントシナリオ易しい 報酬:少ない11 / 4〜25人
2023年04月01日 17時43分32秒 公開
大成功
参加者
ナハシュ
- イェレミース トゥラ リディリディ
ヴィナス
カイン・ステラ
ロゼット
ネーヴェ・グラヌローザ
シルヴィア・A・カペル
アルフィー・リッパー
ルーンス・ラグネル
ルイド
- クロンダイク
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