【食探】華やかなるデセールを

崎田航輝

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シナリオID:2830

オープニング

「いよいよ、次でコースの完成となると思います」
 迷宮都市エドゥノーグ。
 その一角のレストラン、「クワイア」で……料理人ペッパーは冒険者達にわくわくとした表情を見せていた。
 前回、冒険者達がヴィアンドの食材とアイデアを提供して暫く。
「先行で試食して頂いたお客様にはとても好評で、『一刻も早く完成品を味わいたい』と仰って頂けています」
 だけでなく、近隣では噂が噂を呼び、既にクワイアへの客足も伸びつつあるという。
「新しくて美味しいものを作れば……楽しんでもらえるんだな、と。皆さんに出会ってから、改めて学びを得た気持ちです」
 全て、皆さんのおかげですと、ペッパーは改めて頭を下げる。
「店ではコースを提供する準備も始まりつつあります」
 言いながらペッパーは試作中のメニュー表を取り出す。
「現段階での、“選択式フルコース”の完成予想図となります」
 そこには冒険者達がアイデアを出したものが書かれている。

『~オードブル~』
 迷宮魚と色彩花の出汁のうどん、素麺
 冷製ゼリーとムース、魚介の二層仕立て
 二枚貝と迷宮魚の蒸し野菜
 貝と野菜、花の薄春巻き 
 二枚貝のワイン蒸し
 二枚貝ときのこのマリネ
 小魚のカルパッチョ
 迷宮産アクアパッツァ
 花野菜の海サラダ
 巨大魚のカナッペ
 花と海老のティーカップサラダ

『~スープ~』
 迷宮純正コンソメ
 南瓜と玉ねぎのポタージュ
 紅の葉と輝くポタージュ
 牛骨出汁と鶏油のワンタンスープ
 七色に光る煌めきミネストローネ
 香草と迷宮牛のスープ
 香草と迷宮鳥のスープ
 緑が芽吹く金のチキンスープ
 南瓜団子の蜜色ポタージュ

『~ポワソン~』
 白身魚のソテー、レモンクリームソース
 烏賊墨と蛸墨のパスタ二種盛り
 色彩魚の煮込み
 色彩魚のフリッター 各海の塩を添えて
 七色魚の冒険風味
 迷宮ブイヤベース
 色彩魚のディープフライ
 蛸と烏賊、濃色魚のカルパッチョ
 澄んだ魚の香草蒸し
 海のミキュイ
 色彩魚のエチュベ
 色彩魚のプレゼ
 多彩色のアクアパッツァ
 クリームソース煮込み(特性赤ワインソース)

『~ヴィアンド~』
 迷宮産上質肉の盛り合わせ 多彩な調味料で
 オイルフォンデュ 季節のソースで
 赤い輝きのワイン煮込み
 三層のパイ包み焼き
 特製ハンバーガー
 迷宮産上質肉のステーキ
 迷宮産上質肉のシチュー

「他に提案頂いたものや、僕が作るベーシックなものも含め……これらを季節や食材の新鮮さによって選り分けつつ、都度おすすめしていく形になると思います」
 勿論、今は最後の一皿は未定。
 そこが決まらなければ、コースは完成しない。
「ですから――」
 最後の一皿を作るため、迷宮へ潜って頂けないでしょうか、とペッパーは言った。

●デセール
「今回、皆さんに潜って頂くのは前回の枝場の続き――五階層になります」
 これまで同様、そこが如何な環境なのかは不明。
 それでもきっと、新たな味が見つかる世界が広がっている筈だ。
「今回も目利きと採取は皆さんに一任します」
 是非、素敵な味を見つけてきて下さいと言った。
 そして、とペッパーは続ける。
「今回作る料理はデセール――つまりデザートとなります」
 文字通り、甘味主体の一皿となる。
「ケーキにチョコレート、マカロン。ゼリー、クレープ……そういったものであれば、おおよそ何であっても構いません」
 最後にお腹を落ち着かせつつ、見た目でも楽しませ、心に満足感を運ぶ……そんな役割を満たす事ができれば、コースの完成度に繋がるだろう。
「食後のスイーツに相応しい、華やかさがあれば嬉しいですね」
 また、最後に“カフェ”――即ち食後の飲み物を提供する予定でもあるという。
「その辺りも何か見つけて頂けたら幸いです」
 持ち帰って貰った全てを、活かせるように頑張りますとペッパーは気合を入れる。
「皆さんも是非、無事に帰ってきて頂ければ嬉しいです」
 言ってペッパーは頭を下げた。

「いい香りがするじゃないか」
 と、そこで不意に声と、扉を豪快に開く音が響く。
 そちらに目を向けたペッパーは、目を見開いて驚いた。
「師匠!?」
 冒険者達もそちらを見やる。
 そこに、風来人といった風情の大柄な男が立っていた。

●最高の味の為に
 料理人ライス。
 それは他でもない、ペッパーの師匠で……“至高の料理人”と渾名されていた、「クワイア」の前料理人だ。
「どうしてここに?」
「新しいコースが出来るって噂を聞いてな。まさかペッパーだったとは」
 ペッパーの問にライスは感心するように答えた。
「僕というよりは、こちらの皆さんの力があってこそです」
 ペッパーはそう冒険者達を紹介しながら……多少の緊張も垣間見せている。
 それは、ペッパーが新しい味を求めた発端には――「師の味に追いつきたい」という思いがあったからでもあろう。
 ペッパーにとっては届かぬ遠い目標であったのだ。
 ただ――
「皆さん。もしコースが完成したら……師匠にも試食をしてもらう形にしたいのですが、宜しいでしょうか?」
 そう告げるペッパーの顔には、緊張の代わりに自信が表れる。
 それは冒険者の協力で作り上げた新しい味の魅力を、誰より知っているから。それを師にも確認してもらおうと決心をしたのだろう。
「皆さんに協力して頂ければ……きっと誰もが喜ぶコースが出来上がると信じています」
 それは自分の師であっても例外ではない、と。
「ですから、最高の味の為に――最後にお力を貸してください」

解説

●目的  迷宮の枝場を探索し、食材を手に入れる。  ペッパーへ料理のアイデアを提供する。 ●枝場について  植物なども含め、生きているものは全て魔獣の類。  倒したり採取したりすれば人間が食す事が出来る。  今回は第5階層を探索し、食材となる獲物を探す。 ●5階層の内部について  入口は4階層の洞窟にある地下への階段。その先に森林が広がる。 ・森林  樹木や蔓など、全てが果実を実らす植物で構成される。  全体で季節が入り混じったような環境になっており、その場所によってその季節の果物を採取できる。  また、それぞれの生息地の中間に、複数の果実の特徴を併せ持つ果実も生っている(苺の風味を併せ持つみかんや、マンゴーのような桃など)。  森林の空には常に虹がかかっており、果実はその色を写したように、生る場所によって様々な色を持っている。  また、大きな果実は薄味で、小さな物は濃い味を持つ。  尚、果樹は樹木型の魔獣。近づいた相手を枝で襲う。  また、冬の気候を持つ一帯で、時折雪のような結晶が降る。  結晶は砂糖に似た淡い甘みを持っている。 ・植物園  多彩な深い色を持つ豆が自生している。  豆は焙煎して淹れるとコーヒーに似た飲み物が出来る。味はコーヒーに無い甘みや旨味が強いものもある。  また、茶の葉も生っており、乾燥して煮出した時に甘み、渋み、旨味がそれぞれ際立つものや、程よいバランスのものがある。  ハーブも自生する。複数の種類を混ぜたようなものや、果実の香りを持つものが生っている。  植物園の植物からの飲み物は短時間で作れる。ただ植物としての劣化も速く、風味がもつのは採取から半日程度の間。  これらの植物は蔓や葉を飛ばし、近づいた相手を攻撃する。 ・最奥  ボスの巨木型魔獣が一体いる。  様々な色の花をつけており、花粉による範囲魔法と、枝を飛ばす射撃を行う。  花からは多彩な色と風味の花蜜を抽出する事が出来る。 ●探索後について  ペッパーに食材を渡し、料理のアイデアを提供する。  料理はペッパーも交え、実際に制作。  試食はペッパーの師匠ライスも共に行う。 ●ペッパーの望む食材、料理  今回はデザート、飲み物に適したものを求めている。  デザートは華やかさのあるものが理想な模様。  飲み物は種類問わず、食後に適したものを想定している模様。  食材やアイデアはいくつあっても構わない。

マスターより

連作の第五話となります。 迷宮にて、食材探しの旅と料理&実食を行います。 今回は5階層を探索します。踏破を目指しつつ食材を探してゆく形となるでしょう。 尚、この枝場は5階層が最深部になります。中層などには繋がっておらず、最奥に辿り着いた時点で踏破完了となるでしょう。 料理では上の階層の食材も使用出来ます。 不足する食材は迷宮外のものを使っても問題ありません。 料理の作業は助力すると喜んでもらえますが、ペッパーに任せても問題ありません。 今回の試食はライスも加わりますが、それによって難易度などは変わりません(おまけ的な要素です)。 これまでに美味な料理を用意出来ているので、コースが完成しさえすればライスにも喜んで貰えるでしょう。 ライス自身は方々を旅する料理人で、美味しさが正義というタイプの人物です。 今回のシナリオが成功に終われば【食探】は完結となります。 皆様のプレイングを、心より楽しみにお待ちしております。

リプレイ

●最後の探索
「美味しい食材、頑張って採ってきます!」
 迷宮入口への道。
 そこで見送るペッパーへ、ゲルダ・クラインはそう笑顔を向けていた。
 ペッパーが頷き「ご無事で」と頭を下げると……ローザリカ・L・ディオールも軽く手を振って。
「これで最後、か」
 名残惜しさもある。
 けれどここまで携われた事を誇りにも思うから。
「行こうか」
「いよいよ、最後の冒険ですね!」
 エルナ・クルプファルツも華やぐ声で前を向いて踏み出す――その目的は唯一つ。
「素敵なコースを完成させましょう!」

「今度は迷宮に虹か……」
 枝場の五階層。
 そこへ立ったカイン・ステラは感嘆を零していた。
 見えるのは空に輝く七色。そして春夏秋冬に色づく森だ。
「季節まで変わるし、ホントすげーな」
「そうですね。……あっ」
 と、エリカ・プレトリウスは懐からシマリスのネムがぴょん、と飛び出して驚く。
 駆けていくネムは何ともご機嫌だ。
 というのも、辺りには甘い芳香も漂っていて。
「木は全て、果樹なんですね――」
「綺麗なだけでなく、食材の宝庫だな」
 ローザリカも感心しながら……警戒は欠かさず、麗花傘を握っていた。
 経験上、危険があるのは疑いない。事実、エーテルの波を奔らせたヴィナスも――
「やっぱり魔獣だね」
 その樹木が動き出すのをいち早く捉えていた。
「こちらもです!」
 エルナもまた、インドオオリスのプリニウスを通して反対側の果樹の鳴動に気づく。
 頷く皆は戦闘態勢。まずはヴィナスが踏み込んで連続斬撃を与えると――
「押し切ってしまいましょう」
 素早く走るのがロゼット。
 枝を伸ばす樹木へ、逆に眩い光を纏った祭棍で痛打を加える。
 逆側の樹が傍のネムを狙う、が。
「っ、ネムに触らないで!」
 エリカが精確な射撃でその幹を穿っていた。
 よろけたその樹へ、カインも狙いすました一矢で風穴を開ける。
「当たり所で品質への影響もでかそうだ」
「気をつけて行きましょう!」
 ゲルダも応え、果実を避けて刺突を打っていた。
 別の樹木も動き出すが……エルナが矢を放つと、ローザリカも蹴りから斬撃を飛ばし――近づかれる前に勝負を決した。
 エリカはネムを手のひらに持ち上げ、マントのフードを示す。
「ネム、危ないのも寒いのも嫌でしょ? ここに居て。果物はわたしがとってあげるし、魔獣がちゃんと倒れた後ならとりに行ってもいいから」
 ネムはチュチュっと鳴いて、言う通りにそこへ。
 エリカはそんな姿に微笑みつつ、再度周囲を警戒。新たに動く樹木がいれば――皆と共に戦い、安全を確保していった。

 静寂が戻ると、皆で倒した果樹を検分。
「どれも味が良いな」
 カインは苺を試食して呟く。
 色も濃さも千差万別だが、一様に質は高かった。
「外界から影響を受けないで、のびのびと育ってるのかもな」
「こちらにもあります!」
 と、エルナは秋の景色の中にリンゴの木を見つけ……嗅覚で選別。プリニウスに果実を落として貰ってゲットした。
 近くに苺ともリンゴともつかぬ果樹を発見すると――ネムがその高所へ。
「選んでくれるの?」
 エリカはその姿に昔を想起する。
 幼い頃、ネムの母親リス――シルクがとった木の実を分けてくれた、と。
 ネムは食べ物には貪欲だけれど、シルクの影響もあってエリカになら分けてくれる――今も同じように。
 運んできてくれた果実は、艶も香りも良くて。ありがとう、とエリカは大事に保存した。
 その後も一行は果実を見つけては――
「味見よ味見、ここまで歩き詰めだったし休憩にね」
 ロゼットが楽しむ……だけでなくしかと味を確認すると、皆も試食しては採取。味も種類も多彩に揃えていく。
 ヴィナスは果実が傷つかぬよう、紙で包んで保護もしつつ。
「塩や油が見つかってるんだし、砂糖もほしいよね」
 この階層辺りにないかと見回す――と。
「? ……え、甘いの?」
 エリカがふと伝わる意思に目を向けると、ネムが冬の景色の中にいた。食いしん坊すぎて雪まで食べてしまったらしいが……それを美味しいと感じたようだ。
 エリカもそっと口に運んでみると――
「これ、お砂糖代わりになりそうです」
「丁度良いね」
 ヴィナスも味見して頷く。
「念願の砂糖か……蜜なんかも見つかりそうだ」
 それに皆も頷き、雪を確保。期待感を高め先へ進む。
 植物園に出ると――カインが鼬のファを通して、茶葉や豆植物が蠢くのを発見。
「あれも魔獣か」
「油断なくいこう」
 と、ローザリカが跳躍。翻りながら蹴撃を衝撃波にして飛ばすと――皆も攻撃を重ねて素早く勝利。早速採取へ移った。
 ゲルダは苗を確認し、通常の植物より弱いらしいと見て取る。
「劣化は速そうですけど……飲み物への抽出も短時間でできそうです」
 レストランで使うには好都合でもあろう。
「紅茶や珈琲が好きな人には、たまらない場所ね」
 ロゼットは軽く抽出の工程を行い……コクや旨味の強いと判ったコーヒー豆を選別し、採取。皆もそれぞれの種別の葉や豆を確保した。

 そして一行は最奥へ。
 先の無い行き止まりで――多色の花を持つ巨木魔獣に出遭った。
「花蜜のありそうな花だね」
 ならば倒して採取を、と。
 ヴィナスが衝撃刃を放つと、頷くカインも射撃。幹を穿ち始める。
 エリカも追随して矢を撃つと、巨木も反撃姿勢を見せる、が。
「お任せを!」
 ゲルダが先んじてエーテルの塊をぶつけ、狙いを自身に向けさせた。
 放たれる枝の一撃は強力だが……直後にはローザリカが踊るように廻り、ステップと共に癒やしの光を与えていく。
 敵にはロゼットが肉迫し、神聖な輝きを靡かせ刺突。幹に深い罅を刻んだ。
「あと少しね」
「一気に攻めます!」
 エルナは鮮やかなエーテルを揺蕩わせると、その輝きを矢へと収束。光の粒子を散らせながら射撃を放ち、巨木の体力を奪いきった。
 無事を確認した後……ゲルダは花蜜を確認。透明と白の、優しい風味のものを採取する。
「色も綺麗ですね」
「混ざらないように持ち帰らないとな」
 百花蜜より単花蜜の方が風味を楽しめると、カインも知っているから……色や風味別に整頓して確保。
 食に溢れた枝場へ感謝も抱きつつ――皆で帰還した。

●完成へ
 クワイアにて。
 冒険者達を迎えたペッパーは……並ぶ食材の華やかさに顔を輝かせていた。
「色も香りも豊かで、どれも素晴らしいです!」
「後は試作だな」
 ローザリカは言うと、皆と共に早速厨房で準備を始める。
 この食材なら、華やかな一皿が出来る確信があるから。
「最高のデセールを完成させようじゃないか!」

 紅に紫、橙に緑。
 ゲルダは色彩豊かな果実を並べていた。
 というのも――
「それぞれの季節のフルーツが一皿に集まったら素敵かなって思いまして……!」
 苺にさくらんぼ、桃にりんご。春夏秋冬のフルーツで、フルーツポンチを作る事を提案していたのだ。
「壮観ですね……!」
 と、ペッパーも笑顔で早速作業開始。果実を一口サイズに切ってゆく。
「シロップは、花蜜を使ったら良さそうだなって!」
 言ってゲルダが用意したのは澄んだ透明色と白色のもの。
 フルーツの色彩を活かせる色合いと、その味に……味見したペッパーも頷いた。
「優しい味で良いですね。フルーツが引き立ちそうです」
 という事で、それを使ってシロップを用意。
 蓋付きの器に並べたフルーツに、それをかければ……まるできらきらと輝く宝石箱のようで。
「これだけ綺麗なデザートを最後に楽しめたら、きっと忘れられない思い出にもなると思いますから」
 一年のフルーツを楽しめるから、特別な記念日にも合うはず、と。
 ゲルダの言葉にペッパーも頷いて。
「開ける楽しみ、食べる楽しみ――デセールに相応しい華やかさです」
 その多彩な味わいにも、満足の様子だった。

「見た目の綺麗さを考えるなら――」
 と、ヴィナスはパフェを提案していた。
「パイとかで階層を区切って、色んなものを入れると多彩になると思う」
「早速作りましょう!」
 ペッパーも期待と共に、実作業。
 まずはソルベと、牛乳も使ったアイスを用意。飾り切りしたフルーツとワッフルも加えて上層の並びを華やかにする。
「真ん中は、ムースにしようか」
「良いですね!」
 という事で、中層にはメレンゲを使ったムースを準備。ベリーにぶどうにと、こちらも多彩に味を揃えた。
「最後はフルーツソース。ゼリーも良いかもね」
 と、ヴィナスの案で下層へ充填するのは濃密な一品。
 苺なら紅、ぶどうなら紫と、食欲を刺激する艶やかな色で、他層とのコントラストを演出した。
「色も味もバラエティ豊かになりましたね……!」
 上層から食べても、途中で混ぜても美味。
 そんな完成品にペッパーも満足げだ。
「お茶やコーヒーでスイーツを作ってもいいと思うよ。あと――」
 と、ヴィナスは薄く切った果実を少し加熱し、蕾のように包めてカップへ。
 紅茶を注ぐと……それが花開く。
「こういうのもお洒落でいいかなって」
「素敵ですね……!」
 寛ぎの時間にぴったりだと、ペッパーも喜んで――ぜひ採用したいと述べるのだった。

「果物いっぱいのタルトを作りましょう!」
 と、エルナは苺にマンゴーに梨にと、彩り豊かな果実を揃えていた。
 迷宮の冒険の果てをイメージして――
「そこにある宝物のようにしたいです!」
「面白そうですね!」
 ペッパーは早速アイデア通りに制作。
 薄めの生地にのせる果実は、蜜もかけて艶めいた見た目にして。それぞれの種類を綺麗に並べ……幾つもの虹が重なったような色合いとなった。
 苺は甘酸っぱく、マンゴーは芳醇な甘みで。
 どこから食べても楽しめる、まさに冒険のご褒美の如き贅沢な一品だ。
「中央には宝箱を置きましょう!」
 と、エルナが発案したそれはタルト生地で、果実のソースで色付けもした一品。
 開けると、中には宝石にも似た結晶の砂糖。
 大粒のそれはさながら甘き財宝。思わずペッパーも笑顔を見せた。
「これはわくわくしますね……!」
「結晶は飲み物にも使いましょう!」
 エルナは紅茶にも結晶を散らす。
 それもまた美しく輝いて。
「最後まで心躍る食事になりそうです……!」
 と、ペッパーも楽しげにレシピをメモするのだった。

 カインが食材に選んだのは、マンゴーにも似た桃。
 まずはそれを煮て、果実感がなくなるまで濾し……甘さ控えめのフルーツソースにする。
 その後、よく篩にかけた小麦粉に、粉末状に砕いた結晶と卵、牛乳を使ってしっかりめのカスタードクリームを用意。
 そこへ先のソースを加え――フルーツカスタードクリームにした。
「香りも良いですね……!」
「ああ。あとは――」
 と、ペッパーに答えつつ作るのは……同じ果実のコンポート。
 先のクリームをココットに入れ、その上にコンポートをのせてから焼けば――
「フォンダン風迷宮フルーツケーキ。果実なら大体作れると思うけど」
 カスタードはなめらかで、コンポートは艶めいている。
 中心は火を通しすぎず――風味と芳醇さを、なめらかな食感で楽しめるようになっていた。
「蕩ける美味で……満足感の高い一皿ですね」
 共に試食するペッパーは、笑顔で絶賛。
「種類も作れるので、助かります」
「飲み物は珈琲か紅茶が合うかな」
 カインは他にも、今後の食材確保方法についてもアドバイス。
「ご助言を活かせるよう、料理も頑張りますね!」
 ペッパーは料理をメモしつつ、気合を入れて応えるのだった。

 ロゼットはチョコレートを液状に溶かしていた。
 それから花蜜も煮詰めて糖度と粘度を増し……とろみをつけていく。
 ペッパーは興味深げだ。
「こちらをどうするんですか?」
「果実を包もうと思って」
 と、ロゼットが見せるのは苺やぶどう、芯の無いリンゴや桃など、一口サイズの果実達。
 そこにチョコと花蜜を別々にかけて……氷室で冷やす。
 固まったそれをガラスのゴブレットに盛り付けた。
「最後に結晶を振りかけて……」
 甘味に合うよう、添えるコーヒーはコクの強いものにして、完成だ。
「チョコレートの方は食べるまで中身が分からない。花蜜の方は半透明で、果実の色が透けて綺麗かなって」
 共に試食してみれば……チョコのまろみと花蜜の濃密さが、それぞれ果実の瑞々しさと相性抜群で。
「美味しさと食べる楽しさに、こだわってみたわ」
「見た目も味も楽しさも、三拍子揃ったスイーツですね!」
「ありがとう。花蜜とチョコの宝石杯……さすがにちょっと大げさな名前かしらね」
「とても素敵だと思います!」
 ぜひこのままメニューに、と、ペッパーもお気に入りの様子だった。

 ローザリカは、複数の小さなデザートを円状に並べるアイデアを提案した。
「冷やした果実や、ソテー。あるいはクレープやムース……それらをリースに見立てるんだ。中心には花蜜が入ったカップを置いてはどうだろう」
 そのまま食べるのは勿論、花蜜を絡めて味を変えても楽しめる。
 題して『四季巡る花蜜リースフォンデュ』。
 早速ペッパーが用意すると……彩り豊かで、目にも鮮やかだ。
「春夏秋冬と、四季を巡るように旬の果物を並べても良いかもしれないな」
「やってみましょう!」
 ペッパーが実践して配置してみると……色彩と香りでも季節の移ろいを感じられるようだ。
「マカロンやダイス状のケーキがあっても食感の違いが嬉しい気がするな。見た目にもアレンジしやすいと思うから――隙間に花を飾ってもいい」
「常に新しい一皿にできそうですね……!」
「ああ。季節ごとにフォンデュするものの内容を変えれば、集客も期待できそうだ」
 甘輝祭の頃にはチョコを、と。
 一例を挙げるとペッパーも早速試作。
 見目の鮮やかさも相まって、華やかな気持ちになれる一皿となるのだった。

「ハーブと、フルーツを組み合わせてみてはいかがでしょうか」
 と、エリカはブレンドティーを提案していた。
 多様な香りのハーブに、それぞれ相性の良いフルーツを合わせて淹れる。すると風味から薬っぽい癖がなくなって――
「美味しく薬効を得られるなら……健康志向の常連さんが、これを目的にリピートしてくれるかも知れません」
「確かにフルーティで美味しいですね!」
 試飲したペッパーも、太鼓判。
 ハーブの種類に合わせ、各種メニューに加えたいと述べるのだった。

「後は師匠が評価してくれるかですが……」
「これまでみなさんが作り上げてきたコース! きっと認めて貰えますよ!」
 ペッパーの不安に、エルナが答えれば皆も頷く。
 そしてそれは――言葉通りになる。
 前菜からデザートまで、皆が考案した一連の品を見て、味わったライスは――
「はっはっ! 最高じゃないか! もうこの店の味は俺を超えたな!」
 そう笑顔で美味を褒め称えた。
「一件落着か。コース完成、楽しかったな!」
 カインの言葉には、皆も同じ気持ち。
 ペッパーやライスの料理も振る舞われる中、皆で新しい味の完成を喜び……宴を楽しんでゆくのだった。

マスターコメント

お疲れ様でした。 枝場の最奥までを探索し、多様な食材を手に入れる事ができました。 また、ペッパーのフルコースも完成に至る事ができました。クワイアでは完成したコースがメニューに並び、人々に広く認知されていく事でしょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜8人

2023年03月14日 10時39分08秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ロゼット

    ロゼットよ。よろしく。 オードブルから始まったコースも、デセールを残すのみね。 私はスープからの参加だったけど、楽しめたわ。 最後の一品、終わりまで綺麗に仕上げましょう。 私も何か一品、考えてみるけど他のも期待しているわ。 デザートと聞いたら、色々と食べたいもの。

  2. エリカ・プレトリウス

    シューター、エリカ・プレトリウスです。今回もバックパックやマジカルポケットなどをお持ちしますのでよろしくお願いいたします。 甘みを持った結晶については私のネム(リス)が気づいてくれるかもしれません。隙あらば頬袋に収めるか私のフードやポケットに溜め込む食いしん坊ではありますが、美味しく熟した物を選ぶのも私などよりは余程上手ですから力を借りたいなと。 植物園の植物が持つ風味は劣化が早いそうですが、気づけるものなのでしょうか。気づいた所で特殊な対処が出来るかも微妙とあればハーブ飲料は果汁を直接混ぜるフルーツティーの様な形にしてカバーすることも視野に入れて良いかもしれませんね。 最奥のボス…何やら後ろの者が「花粉ダメ絶対」などと言っていますけれども。討伐後の採取という認識で良ければ私がバスターアローや流星射などの大技で早々に仕留めに掛かってしまいましょうか?

  3. ロゼット

    >植物園の植物が持つ風味は劣化が早いそうですが~ マジカルポケットに収納したモノは劣化しないそうだから、 ポケットで保存すれば、採取した時点の状態は保てると思う。 「気づけるか」は厳密に言うと、知識の問題だから採取系の 「採集」や植物系の「造園」とかの、関連づけられそうな 汎用技能で、一般知識の判定に成功できるかもって感じかな。 難易度「普通」で、そこまでシビアに見るかは分からないけど。 >ボス戦 討伐後の採取で良いんじゃないかしら。 あえて言えば、花ごと駄目にしそうな燃やす系の 攻め方は抑えた方が良いかも。討伐が本題じゃないしね。 花粉は、敏感な人には地獄のような苦しみと聞くわね…(汗) そういえばハーブティーには、症状の緩和に効くのもあるとか。

  4. カイン・ステラ

    シューター、カイン・ステラ。 よろしくな。 持っていくスキルは調理とマジカルポケット。 動物は大鼬、今回は弓系のスキル編成にするつもり。 >甘みを持った結晶 今までの階層のことを考えると、俺達が試食してみるかってなっても不思議はないから、特に知識無くてもいけるかと思うが。 >植物園の植物 俺もマジカルポケット収納でいいかなと思う。 あと、植物園で採取できるものは麻袋とかで纏めないといけないだろうこともあるし、劣化の件がなくともマジカルポケットに入れておいた方が安全かなと思う。 >ボス 討伐後の採取になるんじゃねぇかな。 あっちは敵と判断して襲ってくるだろうし。

  5. エリカ・プレトリウス

    お2人ともありがとうございます。 >マジカルポケット はっ、そうでした、私すっかり仕様を忘れて…お恥ずかしい限りです…。 申し訳ありません、ではそれで(気づける気づけないどちらにせよ)解決ですね。 ああ、結晶については何かしらしなければ気づけないと思って工夫しましょうかという提案をしているのではなく、単にネムが食に関して貪欲過ぎて気づくのが早いと思うので他の皆様の気づきに利用して頂ければ(≒気づきにかかる為のプレイングの文字削減)というぐらいでした。 勿論私達で気づくのも良いと思います。言葉足らずですみません。 >ボス 私は日頃から短弓固定でございまして、スキル的にも燃やす恐れは恐らくない…筈。とはいえ助言に感謝します。花を無暗に散らさない為にも炸光矢みたいなものは控えて、やはり幹狙いでバスターアロー等を使う方向にしますね。 個人的なお話ながら薬草茶には美味しいイメージがなく良薬口に苦し程度に思っておりましたが、逆に言えばこれが美味しく出来ればメニューとして人気が出そうですね。今回は少しばかりアイデア出しもしてみようと考えています。お役に立てますように。

  6. ゲルダ・クライン

    ウォーリアのゲルダです。 ついにデザート……! フルコースの完成まであと少しですね! 引き続き、よろしくお願いしますね!! >結晶について 今までの経験から気付ける可能性は大いにあると思いますが、ネム様が気付くパターンもとても可愛らしいので、ぜひ見てみたいなとっ 個人的な願望で申し訳ないのですが……えへへ……。でも、雪を頬張るネム様、絶対に可愛らしいと思うんです……! >ボスについて ――に関わらず、『植物なども含め、生きているものは全て魔獣の類』『果樹は樹木型の魔獣。近づいた相手を枝で襲う』『これらの植物は蔓や葉を飛ばし、近づいた相手を攻撃する』とありますので、基本的に倒した後の採集になりそうですね。 ボスについてですが、シーザーロアで敵を引き付けて、範囲攻撃の花粉攻撃を皆様に向けないようにできないか頑張ってみますね!

  7. ロゼット

    >結晶について エリカのような、気づき方の描写は全然OKよ。私も見たいわ。 雪と戯れる動物は、例外なく可愛らしいわ…! 私はあまり工夫はないけど果実は肉や野菜と違って、そのままでも 食べやすいから森林では、つまみ食い…じゃない、味見したいかな。 料理に使うなら、味の違いは確かめておかなくてはね。 >魔獣戦、ボス戦 物魔打撃や魔矢での近接、射撃の攻撃スキルを用意しておくわ。 ローザリカもいるけど、回復スキルもいくつかは用意しておくわね。

  8. ヴィナス

    ヴィナス。よろしくね。 今回は食材のことも考えて接近系のスキル。 毒とかのデバフは使わない予定だよ。 マジカルポケットは俺も持っていくね。

  9. ローザリカ・D・ケレス

    ローザリカ、今回もよろしく。 ……ここまで関われたことが誇らしくもあり、最後というのが寂しくもあり。 花粉を被るのはいささか気が引けるが、特異な攻撃を叩きこむために前に出ようかな。 幹を蹴るなど近接攻撃の予定だ。 あとは勿論回復も。範囲魔法攻撃後の立て直し用にハイパーヒーリングオーラは持っていこう。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0