【虚夢】欺瞞の祝福、血の呪縛
明乃そら
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シナリオID:2823
オープニング
冒険者達はギルド職員でもあるドミニク・ログナーの招集に応じて、アルベール伯爵邸に足を運んだ。
麗らかな昼の陽光が射し込む邸宅の庭。そこで一行を出迎えたのは、伯爵令嬢こと、ロレッタ・アルベール。
今回、ロレッタが冒険者達を招待したのは、とある話をしたいから。それは、彼女からの依頼の話であった――。
「ようこそ、お出で下さいましたわ。遅くなりましたが、かの商会を潰して頂いたこと、心からお礼申し上げますわ」
恭しく冒険者達に頭を下げるロレッタ嬢。彼女は闇の貿易会社『ガストーニ商会』を壊滅すべく、今まで幾度も冒険者達に仕事を頼み、ようやく願いを成し遂げたとあって、感謝の言葉を口にする。
「とりあえずこれでひと段落、と言いたいところですが……まだ肝心の大物が残っていますの」
ガストーニ商会は、あくまで上流階級と接点を持つ為のパイプ役に過ぎない。その商会を裏で仕切っていたのが、悪名高いテロリスト集団『メドゥの指先』である。
「しかも捕らえたブルーノからの話では、彼と手を組んでいた相手は、組織の幹部と聞きました。少々厄介ですわね」
商会の代表を務めていたブルーノは、捕獲された後、今はブラックデスに確保されている。そこから時折、情報屋経由で商会とメドゥの指先との繋がりなど、色んな情報がロレッタの耳にも入ってくる。
「ですが、ここは絶好の機会でもありますわ。幹部の一画を崩すとなれば、組織に大きな打撃を与える事になりますから」
敵は世界に災いを齎すテロリスト達。未だに謎が多い存在だが、ロレッタは以前、幹部と思わしき女性と接触している。
更には女性の〝娘〟とやらも、今はロレッタの手の内にある。これだけの状況が揃っていれば、行動を起こさない訳にはいかないだろう。
そして何よりも、この事は貴族社会において大きな利となり、アルベール家の将来の為にも、何がなんでも功績を残しておきたい。そうした思惑が働いているのも、事実である。
「ああ、ところで……その娘、クロエさんですけど。この屋敷に来てから、大人しく過ごして下さっていますわ」
アルベール邸で身柄を預かっている吸血鬼の少女。ロレッタはお友達になりたいからと言っていたが、現時点では何事もなく、平穏に仲良くやっているようだ。
「まあ日中は部屋から出てこないみたいだけどね。だから、彼女には知られないように話を進めて行きたいんだ」
ドミニクが様子を窺うように、カーテンが締められている部屋をチラリと見つつ、今回の依頼の内容を一行に伝える。
「キミ達には、この後、ある場所への調査に向かってほしい」
テーブルに地図を広げて見せながら、ドミニクの指が示した一つの地域。
そこは王国南東部に位置する地方都市であり、その郊外にある居住区が、今回の目的の場所となる。
「商会が裏で行っていた非合法な取引。王国に密輸していた麻薬が幾つかの場所に運ばれていたんだけど、その内の一カ所がここになるんだ」
麻薬の密輸となれば、組織と関連があっても何ら不思議ではない。ただし目的までは不明だが、それらも含めて、居住区の実態の調査を行うのが今回の任務だ。
「一応、こちらでも解る範囲で調べておいたよ。そこは数百人程が生活を営む『祝福の村』と呼ばれているみたいだね」
様々な問題を抱えて行き場を失くした人々を、慈善事業の一環として受け入れ、新たな人生を過ごせるように支援する。
話を聞いた限りでは、特に不審な点はなく、むしろ社会貢献的な活動をしているように思える。
しかしそういった活動を隠れ蓑にして、裏で悪事を働いている連中が、この世界には多く存在している。
「まずは件の施設に侵入する為、不幸な境遇に遭った人を演じてほしい。理由は各自に任せるけれど、それから住民に話を聞くなど、中の様子を色々調べてくれれば問題ないよ」
任務の一番の目的は、メドゥの指先との繋がりを示す情報を持ち帰る事。
特に住民達には気付かれないようにしてほしい、と忠告しながら、もう一つだけ注文を付け加える。
「後、今回の目的はあくまで調査が最優先だから、戦闘行為は可能な限り避けてほしい。どうしても、という場合は仕方がないけど、あまり騒ぎを起こさず行動する事を心掛けておいてね」
荒事などは最小限で。極力、穏便に済ませる事が大事だと。状況によっては撤退しても構わない。
そう念押しをして、後はしっかり頼んだよ、とドミニクは冒険者達を激励しながら全てを託した。
●祝福の村
――人生は、どこで躓き、道を踏み外してしまうか分からない。
生まれた境遇で全てが決まり、そうさせてしまう宿命だろうか。
親に虐げられて、友人からも裏切られ、助けてほしいと願っても、誰も救いの手を差し伸べてなどくれない。
この世のどこにも居場所がなくて。もう死にたい、生きる意味すら見出せないと、自分で自分を追い詰める。
世界はとても理不尽で、搾取されるのはいつも正直者で、嘘吐きばかりが果てなき欲望を貪り尽くす。
差別のない幸せなんて存在しない。唯一つ、〝死〟だけが、生きる全ての者に与えられた平等なのだ。
未来に絶望し、死まで願った落伍者達が、最後に夢見る〝理想郷〟。
それは誰もが等しく救われる世界。ある筈のない楽園を盲信的に信じる、迷える子羊の群れ。
そして救いの使者を騙る偽善者は、哀れな弱者を嘲笑い、今宵も贄が捧げる、生き血を啜る――。
「……ヒトとは実に愚かで、惨めなモノじゃ。これも全ては血の因果、運命は生まれた時から決まっておる、か」
更けゆく夜の薄暗闇の中、ローブを纏った女が舌舐めずりしながら、空に浮かんだ月を眩しげに仰ぎ見ていた。
解説
マスターより
リプレイ
生きる事に絶望し、行き場を失くした者が最後に辿り着く救済の地。人々はそこを――『祝福の村』と呼ぶ。
木々が生い茂る森を抜け、敷地に足を踏み入れ、門を潜ると案内人が出迎えて、訪問者を教会風の建物へと導く。
「ここは迷える心を救う場所。先ずは貴方が味わってきた苦しみを、どうか私に話して下さい」
微笑みながら出迎えるのは、眼鏡を掛けた中年男性。抱える悩みを教えてほしいと、訪問者に優しい口調で語り掛ける。
「日雇いで生計を立てていたんですが、徴収が酷くてもう限界で……。それに王国では私みたいな者は差別され、辛い思いをしてきました。風の噂で村の事を知り、藁にも縋る思いでここに来ました」
襤褸布を纏った見窄らしい姿で、クローリカが涙を滲ませながら訴える。
半獣人の耳を帽子で隠して怯える彼女に、居住区の長たる男は穏やかに、もう心配ありませんと慰める。
「今まで大変辛かったでしょう。ですがここでは、誰もが平等。何者にも囚われず、どうぞ自由に生活して下さい」
入居を許可する長の言葉に、クローリカは嬉しそうに顔を綻ばせ、一振りの短剣を袋の中から取り出した。
「……護身用に持っていたんですが、もうこんな物は要らないんですね」
丸腰である証明に差し出す短剣を、長は頷きながら受け取った。
「俺は見ての通りのホムンクルスでな。過去も殆ど覚えてねぇし、身寄りもねぇ。おまけに容姿が厳ついせいで、誰も寄り付こうとしねぇ。頼れるモンが何もねぇんで、この村に来たって訳さ」
新たな訪問者、自身の過去を告げるルイドの話を、長は親身になって黙って耳を傾ける。
「貴方のような特殊な生い立ちの方を助けるのも、私達の使命です。命は全て等しく、尊いものですから」
ルイドの左目に埋め込まれた紫色の石を見ても、長は表情を崩さず、ありのままのルイドを受け入れ、入居を認める。
「恩に着る。ところで、村の掟みたいなのはあるか? 早く馴染めるように知っておきてぇんだ」
有難いと頭を下げて礼を述べつつ、ルイドは村に関する情報をそれとなく訊ねる。
「大切なのは、住民達と尊重し合う事。そして……ここでの生活を、外の人間には口外しない事、ですね」
村では暮らしに馴染めるように住民達が助けてくれると付け加え、長は使いの者を呼んで、ルイドを住居に案内するよう指図する。
誘われるまま外へ出て、建物の屋根に掲げられた十字架を見つめるルイド。
教会の象徴たる十字架は、蝙蝠が羽を広げたような造形で、まるで吸血鬼の存在を誇示するような不気味さすら漂う。
この村はやはり異様だと、ルイドは他にも不審な様子がないか、警戒の目を光らせるのだった。
「結婚を誓った最愛の幼馴染が亡くなって、後を追おうとしても死に切れなくて、一人で放浪の旅を続けていたの。でも、彼を忘れられないまま孤独感が強くなり、村の噂話を聞いて、救いを求めて来てみたの……」
深い悲しみと喪失感を抱き、疲れた表情を見せるユニス・ソロアーヌ・アクエリリーア。
長は彼女の話に同情し、その悲しみを癒しなさいと、村での暮らしを承認する。
「私は医療や薬の心得があるから、少しはお役に立てるかと」
病人がいたら、簡単な治療も行えると伝えるユニスに、長は診療所を紹介し、そこでの手伝いを彼女に勧めた。
フードで顔を隠したエルフの女性、リコリス・アデュラリアは、居住区の長に淡々とここまでの経緯を説明する。
とある事情で処刑されそうになって、故郷を出奔。仲間達にも裏切られ、人間不信に陥っていた。
村に来たのは、過去を詮索されたくないから。他人と接触したくないと言うリコリスに、長は宥めるように言葉を紡ぐ。
「貴女のような訳ありの方も、この村は受け入れています。過去に囚われる事なく、ゆっくり心の傷を癒して下さい」
居住の許可を得たリコリスは、無償の施しを甘んじて受けるのは悪いから、と治安維持の手伝いを提案する。
長はその申し出に、気持ちは嬉しいですが、と言葉を濁し、まずは暮らしに慣れるようにと諭すのだった。
祝福の村に訪れた二人の姉弟。姉はエレーナ、弟はエレンとそれぞれ名乗り、父親の虐待から逃れる為に村へ来たのだと理由を話す。
「お姉ちゃんはいつもお父さんの暴力から守ってくれてたの」
「自分だけが逃げても、次は弟が虐待されるだけ。だから一緒に連れて、ここに行こうと決めて来た」
怯えて姉の後ろに隠れる弟と、そんな弟を手負いの獣の如く護ろうとする姉。
二人の必死な雰囲気に、長は憐れみながら姉弟に救いの手を差し伸べる。
「今まで受けた苦しみは、家族という名の血の宿業――古からの呪いの因果が、罪を背負わせ続けるのです。しかしご安心を。お二人のような方を救済するのが、この祝福の村に与えられた使命ですから」
呪いとはまた胡散臭い言い回しだと、姉弟は訝しく思いながらも表情に出さず、長に感謝を示してお辞儀する。
その後、住居に案内された二人は、既に潜入している仲間の姿を確認し、改めて村の調査を開始した。
●笑顔の裏にある狂気
「どうにか潜り込めたみたいだね。最初はどこから調べようか、お姉ちゃん」
他人に聞こえないよう、小声で話すエレン――に扮した、アドルフ・ジーノ。
片や、姉のエレーナは、ナハティガル=ラーが変装した姿だ。
帽子や装飾品で角を隠して、化粧を施し、更には魔法の力で性別までもが変わって見える。
外見上は綺麗な女性を装うナハティガルが、先の教会で気になった点をアドルフに告げる。
「微かだが、建物の中に妙な匂いが紛れていた。おそらく、麻薬を使った残り香だ」
教会に麻薬を隠しているなら、何らかの儀式に使われている可能性が高い。
一番怪しいのは教会か。二人は情報を探るべく、近くの住民達から話を聞き出す。
「教会では週に一回、祈りを捧げる日があるの。心に溜まった悩みを打ち明け、終わった後は不思議と気持ちが軽くなり、奇蹟を体験する事だって出来るのよ」
一人の女性が快く応じて語ってくれる。行われている事自体は普通の教会と変わらない、が、引っ掛かる点もある。
そこへ今度は青年の男性が、満面の笑顔で話し掛けてくる。
「天に見捨てられた自分でも、『イドラ様』が救ってくれる。彼女を信じれば、この世の苦悩から解放されるんだ」
空を見上げながら手を組んで、悦に浸っている青年男性。彼がふと発した名前が、村での信仰対象なのだろうか。
アドルフ達はお礼を言って場を離れ、二人きりになって、得られた情報を整理する。
「イドラ様、か……かなり心酔していたみたいだけど、一体何者なんだろうね」
「察するに、ソイツが村を仕切っている指導者かもな。他は奇蹟の体験か……麻薬の幻覚症状とも思えるが」
やはり睨んだ通りだ。後は怪しまれないよう、他愛のない世間話などして住民達との親睦を深めるのであった。
「困ってる人を見かけたら助けるまでだ。俺に出来るのは力仕事くらいだが」
住民達と馴染めるようにと、ルイドは何でも手伝うつもりで積極的に声を掛ける。
とりあえず荷物運びなどをしつつ、村の様子に目を配る。住民達は誰もが笑顔で、まるで全員が家族みたいに互いが連帯し合っているようだ。
外の世界の苦しみから逃れ、平和な生活を手に入れた。その幸せに溢れるような、正に理想郷と呼べる村だった。
だが、対照的に感じる奇妙な違和感。ここの住民達は、喜び以外の感情を表に見せていないのだ。
笑顔も仮面みたいに貼り付いていて、自身の意思や感情すらも欠落しているように見える。
そしてもう一つ、村中の建物全てに、目の形をした紋様が描かれている事に気付く。
常に他人を監視しているような、心理的圧力を掛けられている感覚がして、ルイドは思わず顔を顰めた。
一面に広がる色とりどりの花畑。中央に屹立するのは、草花で飾った木のポール。
楽器の音色が聴こえると、花冠を頭に乗せた乙女達がポールを囲み、音に合わせて踊り出す。
弾むような音楽と、乙女の嬌声が響き合う、幻想的な花の舞い。その光景をクローリカは遠目でじっと見つめていた。
これも何かの儀式だろうかと、目を凝らして注意深く観察する。
花畑で楽しげに踊る乙女達は絵になるが、恍惚とした彼女らの笑みは、目の焦点が合っていない。
やがて、乙女の一人が気を失って倒れ込み、クローリカはすぐに彼女を介抱し、急いで診療所に運ぶのだった。
居住区内を散策しながら、不審な物がないかと人気の少ない場所を調べるリコリス。
暫く探し回っている内に、村の奥まで足を伸ばして、森の方へと入っていく。
頭上を覆う木々が日光を遮り、景色が徐々に薄暗くなる。歩みを進めるその先に、リコリスが目にした物は――入り口と同じ形の門、よく見るとこちら側には錠が掛けられている。
門より先へ入る事は出来そうもない。どうやらここには重大な何かが隠されていそうだ。
リコリスは門に手を添え、思念が残っていないか読み取ろうとするが、靄がかかったように朧げで。
ひとまず時間を変えて出直そう、と森から出ようと振り向いた時――リコリスの傍に人影が近付く。
「おや、こんな所までお散歩ですか」
声の主は、居住区の長だ。リコリスは平静を装い、色々と回っていたら道に迷ったとはぐらかす。
「この門から奥は禁足地。神託で選ばれた者のみが立ち入る事を許されます」
奥に何があるのか、リコリスの興味を見透かしたのか、長は敢えて答えを説明してくれる。
もしくは、これ以上詮索するなと仄めかしているのだろうか。ならば一旦引き下がろうと村へ戻りかかったリコリスに、長が一言、忠告する。
「貴女にも何れ順番が訪れるでしょう。ところで……先程は何か〝視え〟ましたか?」
長の微笑みは、最初に会った時と変わらない。だが笑っているのは口元だけで、眼鏡の奥の眸は、狩人のように鋭い光を放っていた。
●狂信者達の祝祭
「クローリカさんが運んでくれた女の子は、もう大丈夫。でもあの子、多分麻薬をやっているわ」
翌日の朝。診療所の手伝いで、花畑で倒れた少女を看護していたユニスが、一連の状況を報告する。
少女の状態から、麻薬の中毒症状と判断。村で常習的に麻薬が使われているのは、間違いない。
冒険者達は各自で調べた情報を互いに伝え、今後の方針を話し合う。
「村の奥にある門ですが、住民からの聞き取りでもう少し詳しい事が分かりました」
リコリスが蒸留酒を対価に仕入れた話。その内容はこうである。
――禁足地で行われるのは、血の儀式。
イドラ様に血を捧げる事で、呪いをイドラ様が一身に引き受けてくれる。
そうして罪の枷から解き放たれた魂が、浄化されて天に還っていくのだ――と。
「彼らが信じているのは、吸血鬼。村の正体が見えてきましたね」
儀式を直接目撃すれば、証拠は完全なモノとなる。
しかし深入りすれば危険が伴う。もしもの場合は撤退も視野に入れながら、冒険者達は住民が寝静まる夜を待ち、森の奥にある禁足地に向かうのだった。
昏い闇夜の森の中、目的の門の所まで来た冒険者達。錠は外されており、奥への道が開かれている。
一行は警戒しながら先へと進み、奥に入り込むにつれて、ナハティガルの表情が次第に険しくなる。
「……血の臭いがする。武器の準備を」
空気が張り詰め、緊張が走る――冒険者達は戦闘も辞さない覚悟で、遂に禁断の地へと辿り着く。
そこは広場になっていて、篝火が全体を照らし、一部の住民達が何かの儀式を執り行っている。
中央には目の紋様が描かれた円形の舞台。周りには白装束の住民達が、香炉を手にして取り囲む。
彼らの前には、司祭姿の長が立ち、背後には荊棘と髑髏で飾った大きな十字架が掲げられている。
そして舞台の上では、黒いローブを纏った謎の女が佇み、女の傍らには住民の男が跪いていた。
(相手が吸血鬼なら、男は〝贄〟といったところでしょうか)
目の前の光景を黙視しながら、冷静に状況を推察するリコリス。
今まさに、一人の男の命が奪われそうになっている。果たしてこのまま放置しておくべきなのか――。
事態を見守る冒険者達に、突然、一行を狙って矢が放たれる。
「チッ……!」
ルイドが咄嗟に盾を構えて突き出し、飛んでくる矢を弾く。
「……勘がいいですね。さて、誰に頼まれて来ましたか?」
矢を射ったのは居住区の長だ。冒険者達の行動は、最初から疑われていたという事か。
「疑念を抱く者には制裁を。この村では、従順な心の持ち主のみが生き残れるのです」
そう語る長も、住民達も、全員同じく、虚ろな嗤いを浮かべている。
正気の沙汰ではない。もはや何を言っても、彼らの心には通じないだろう。
「狂ってるわね。しかも、利用されているのも分からないなんて」
救いを求める力無き民を、都合のいいように搾取する。余りに理不尽で非道な手口に、ユニスは不快感を露わに、憤る。
「アンタがイドラだな。吸血鬼が救済者を騙っているとはな」
ナハティガルが視線を向ける相手は、ローブの女。生気を感じさせない青白い肌、本来ならば美人と思える顔や腕には、斑模様の痣が見え隠れする。
「その痣が呪いのせいだと言われれば、信じる人がいても仕方がないね」
応急手当が得意なアドルフは、女の痣が外傷に因るものではないと判別する。
何れにしても、か弱き民を欺く行為は、到底許される事ではない。
「見られたからには、生きては帰さぬ」
冒険者達を逃しはしないと、ローブの女――イドラが攻撃を仕掛ける。
虚空に手を翳すと、人の顔の形をした奇怪な蝶の大群が顕れ、耳障りな羽音を響かせながら冒険者達を襲う。
「えっ、クリーパー!?」
いきなり出現した異形の存在に驚くクローリカ。人面蝶は鱗粉を撒き散らし、浴びた冒険者達は毒に蝕まれてしまう。
アドルフが急いで治癒術を使って解毒する。冒険者達も反撃に出ようとするが、異形の蝶は既に影も形も消えていた。
「なるほど、召喚術ですか。ちなみに貴女のその痣、一服盛られましたか?」
リコリスが相手の能力だけでなく、毒の扱いに長けた経験から、痣の理由まで解き明かす。
「ここでの戦闘は一般人も巻き込む。撤退するぞ」
今回は調査が最優先だ。ナハティガルは戦況を分析し、そろそろ潮時だと村からの脱出を仲間に促す。
指示に応じて、アドルフとリコリスが吸血鬼を足止めし、ユニスが威嚇射撃をしながら、盾役のルイドが殿を務める事で敵の追撃を振り切って、冒険者達は無事に森から抜け出した。
「……逃がしたか。面倒な事になりそうじゃ」
村の秘密を知られてしまい、イドラは遠退く冒険者達の背中を苛立たしげに睨み付ける。
連中は必ず殺さねば。これ以上嗅ぎ回られて、計画を台無しにされるより前に――。
「〝母上〟には儂が伝えておく。厄介な鼠共が紛れ込んだとな」
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2023年03月03日 15時43分02秒 公開
相談掲示板
シューターのユニスよ、よろしく。 私は結婚を約束していた幼馴染みが死んでしまい、失意のままに放浪して流れ着いたって設定で入り込むつもりよ。 ことさらに探りを入れるのではなく、自然に耳に入ってきた情報を取捨選択していくって方向性ね。
シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 >潜入 俺はフェイクカバーで若い娘に擬態しての潜入を考えている。 家族の暴力から逃れて『祝福の村』にやって来た。……という設定でいこうかと。 上記のフェイクカバーでの擬態の他、演技スキルも持って行く予定だ。 必要なら他参加者のフォローも可能かと思うので、何かあれば気軽に言ってくれ。
ウォーリアのクローリカです、よろしくお願いします。 麻薬まで持ち込まれていると……、少なくとも健全な場所ではなさそうですね。 私は「日雇い労働者をしていたが限界が来て、その時にここの噂を聞いた」という体で入り込もうかと思います。
ウォーリア、ルイド。良しなに。 俺は単純にホムンクルスだから身寄りも何もねぇ、ってのを土台にして理由付けしようかと。 潜入後は『居住区の長』とやらに接触すっかな。探りに来たってのを気取られないよう、あくまで新参者として挨拶なりに伺った感じで。
ヒーラーのアドルフだよ。よろしくね。 ナハティガルお兄さんの設定に乗っかる形になるけど、その女性の兄弟というのは大丈夫かしら?たぶん身長的に弟役になると思うけど… スキルは演技と看破を持っていくつもりだよ。 麻薬取引の現場となれば監視の目が厳しいだろうし、怪しまれない行動の範囲で見つけれる情報は見つけたいね。
ヒーラーのドミニク・ログナーだよ。今回は集まってくれてありがとう。 私で出来ることがあれば手伝わせてもらうから、何かあったらよろしく頼むよ。
キャスターのリコリス・アデュラリアと申します。 ……よろしくお願いします。 潜入の為の設定は……あまり凝りすぎても粗が出るでしょうから 故郷を出た後、組んでいたパーティに裏切られた元冒険者としましょうか。 これなら武器を隠す必要もありませんし。無論、極力戦闘は避けるようにはしますけれど。 そして調査の途中で出来れば情報交換等を行えた方が効率は良さそうですが 下手を打てばこちらの正体がバレるでしょうから 実際に行うかどうか、行うのであれば方法等も相談する必要がありますね。
行動内容を少し変更。 「夜の散歩が趣味」という理由で、夜中にあちこちを歩き回る行動も取ることにするわね。 「暗視」を持っていくわ。
>アドルフ >>姉弟 勿論構わない、姉弟という設定で了解した。 とりあえず擬態予定の『姉』の名前は『エレーナ』にする予定。 家族から逃げる際、自分(姉)の次に弟が虐待される事を懸念。一緒に『祝福の村』に逃げ込んだ……という設定はどうだろうか? >情報交換 可能なら定期報告は行いたい所だな。 居住区内の人が複数集っても不信に思われない場所(公園など)で、一日か数日置きに時間や場所を変えて行う方向はどうだろう? >連絡手段 テレパス等、緊急時の連絡手段も考えておく必要があるかと。
ありがとう。いい設定だと思うよ。 そしたら、僕は「エレン」って名前にしようかしら?近い名前なら姉弟の設定もうまくいくと思うし。 >不審に思われない場所 詳しいことはわからないけど、いろんな人が流れ着いた場所だし無秩序に建物が並んでるとかになってないかしら?(スラム街みたいな) 街の雰囲気や構造は聞いておいたほうがいいかも。
Q:祝福の村の構造や雰囲気はどんな感じですか? 住民が自然と集まるかどうかは判らずとも、開けた場所はありますか?
>情報交換 新参者が頻繁に集まってるっていうのは疑いを招きそうだし、やるとしたら数日おきにした方が良いと思うわ。
>情報交換 賛成だ、できる範囲でやっておきてぇな。 新参者があんまりに集うと怪しいってのもその通りなんで、そういう意味でもテレパスは活用したいとこか。 スキル枠との兼ね合いもあると思うが、ひとまず俺は持って行けるぜ。あと1枠は洞察の予定。 目立たないよう一斉にじゃなく2~3人程度で話す機会作って、テレパス所持者が情報を整理・統合して伝達する役目に回るのもありかね。
A:森に囲まれたのどかな村、といった印象です。 建物も全体的に質素な造りになりますが、唯一つ、村の真ん中に豪奢な教会風の建物があるのが目に付く感じです。 住民達が集まる広場のような場所ももちろんあります。 村に着いたら案内役が長に会わせてくれますので、そこで承認の手続きを済ませる流れになります。
これなら問題なさそうだね。 >ナハティガルお兄さん >>テレパス 僕は「エレーナ」と一緒に動くから、情報収集役と伝達役に分けるのはどうかしら?。 それで、クラスの特性上情報収集役はナハティガルお兄さんの方が得意だと思うから、伝達役を僕がするという感じで。 演技スキルはどうしようかしら…?家族の暴力から「エレーナ」が守ってくれてたということにすれば、後ろに隠れる癖がついてても違和感は無い…はず。
>情報交換 ルイドが述べているように、目立たないよう都度2~3人程度で合流。 テレパス所持者が情報を整理・統合して伝達する方向で賛成だ。 >アドルフ >>テレパス そうだな。では情報収集役と伝達約で分担しよう。 俺は情報収集役として、【宗波】の探波で『祝福の村』とその周辺の地形調査・罠の有無等についても調べようと思う。 >>演技 では、子連れ且つ手負いの獣のように「エレーナ」は「エレン」を過保護なくらいに護ろうとする方向で行こうか。 >汎用スキル 演技は決定。 残りの一枠は、隠蔽・看破・暗視のどれにしようかで悩み中だ。
ありがとう。とても動きやすいよ。 そしたら僕が看破でささいなことも見逃さないように、こっそりと目を凝らしておくね。 あとは、一人の時に襲われた時用にちょっとした攻撃手段と回避力のバフを持ち込むよ。 住民に気づかれないようにしたいなら、風のように逃げた方がいいからね。
>情報交換 テレパスや集まる際は少人数で、という方針で異論ありません。 あとはすれ違いざまに、あるいはぶつかったように見せ掛け 情報を記載した紙片を渡すという手もありますね。 >個人 無条件の衣食住の保証は信用出来ないという体で 治安維持の手伝いを申し出る予定ですので 何かしら揉め事を起こせば私とは接触しやすいかもしれません。 あとは立場的には一番警戒されそうではあるので 他の方々の囮代わりと考えて貰えれば。 >汎用スキル 調整中ですが、他に用意する者が居なければ 少なくとも「残留思念感応」での情報収集を予定しています。
>情報交換 私は情報収集に徹するから、テレパスは他の人に任せるわね。 夜の散歩が趣味と夜に暗視で出歩いて夜中に密かな取引とか動きがないかを確認、医療・薬学の心得がある者として相談を受けたり治療をする中で住民と交流して情報収集ね。 よろしく。
>情報交換 OKだ、そんじゃテレパスでアドルフとやり取りだな。 早く馴染むために、って体で普段は手伝い事を探して周りに話しかけていくつもりなんで、その流れで皆とも接触するか、 あるいはリコリスが挙げたみたいに情報書いた紙を渡して伝達しようかと思う。 >戦闘 万一発生した場合、ひとまずは無抵抗で誤解を訴えてみるわ。 英雄再起あるんで最悪一回なら殺されかけてもまぁ何とかなる……どうしてもダメそうなら撤退の予定。
>汎用スキル 色々と考えた結果、【演技】と【超嗅覚】を持って行く事にした。 >戦闘 止むを得ず戦闘が発生した時は、回避集中で逃げの一手となるな。 ――では、現地では宜しく頼む。