【信焉】這い伸びる翳り
崎田航輝
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シナリオID:2817
オープニング
シグモル火山帯、ソーレアル信仰区。
その神殿にて、依頼人――ファビアンは冒険者達へ改めて前回の労いを述べていた。
リスクも承知で作戦に挑んでくれた事。
そして情報を持ち帰ってくれた事に感謝を、と。
言いながら……ファビアンはまた、声音に真剣な色を帯びさせる。
「一層危険かも知れないけれど。今回は――貴方達に、ナダキアへ潜入して貰いたいんだ」
●依頼
前回の調査よりしばらく。
あれから件の信仰区――ナダキアの近隣に大きな変化はないという。
尤も、それは平和になった事を意味しない。
「変わらず、緊張した空気は続いているようだ」
近隣からの助力の提言も、ナダキアは全てを断って排他的な姿勢を貫いている。
「他人の力は借りない、と言わんばかりだ」
信仰を自分達で守りたいという、その気持ちは何より理解できるとファビアンは言う。
自分の道を自分で歩む為の信仰であるし、その為に神徒もいるのだから。
「それでも、やはり無視できない違和感があるように思う」
憶測を抜きにしても、賊がナダキアを狙っていたのは事実だった。
「賊はナダキアの外もうろついていた訳だし……危険は既に近隣に及んでいる」
これを放置してはおけない。
ナダキアで何が起きているのか。
それを実際に目にするしかない――そう判断したと、ファビアンは言った。
「ナダキア内で、実態の把握。それを貴方達にお願いしたい」
ナダキアは無論、表立っては入れない。
だが……潜入出来る方法はあるとファビアンは言った。
「一つは前回、貴方達が作ってくれた文字通りの“抜け穴”だ」
ナダキアの東端に通じるそれは、今もまだ見つかっておらず使用可能なはずだという。
「それからもう一つは――商人になりすます事だ」
ナダキアは数週間に一度、商人が大挙して訪れる機会がある。
区として必要な物資を一気に買い入れる為のもので……馬車も列を成す。
今回、丁度その時期が訪れるという。うまく商人になりすます事ができれば、正面から区内へ入る事が出来るだろう。
「勿論、見張りはあるから警戒は怠らないでほしい」
潜入後は、ナダキアの神徒に見つからぬように調査を、とファビアンは言う。
「神徒は数自体は多くないはずだ。うまく警戒の目を縫う事は出来ると思う」
また、ナダキアの一般信徒は共通したデザインのローブを羽織っている事が判っている。
似たものを用意する事で、住人になりすます事も出来るはずだと言った。
「区内では調べられそうな人や建物から情報を得てほしい」
一般の住人でも、不穏な中で長く暮らしていれば、ある程度事情は知っているかもしれない。
また、治安の悪さが事実なら少なからず犯罪者もいるだろう。そういった者に接触できれば、事態の把握に役立つ可能性もあると言った。
区の総本山である神殿にも、無論多くの情報はあるだろう。
ただ守りは厳重に違いない。
「神官は、区の実質的な統治者でもあるはずだ。排他的な方針を押し進めているのが彼らなら、仮に接触できても話を聞くのは難しいかもしれないな」
故に神殿に近づくのは推奨は出来ない、と言った。
「神殿以外にも区を支える場所はあるだろうし……首長が他にいるから、そちらを調べてみてもよいかもしれない」
首長とは、形の上での区の長で――渉外の場ではそちらの人物の方が表には出るという。
「ニザーブという壮年の男性だ」
最近は活動も減っているらしいというが、話せる相手ではあったとファビアンは言う。
うまく接触する事ができれば、何らかの情報は得られるだろう。
それから、とファビアンは続ける。
「賊の方面についても、調べを進めてほしいんだ」
前回捕らえた賊から、幾つもの賊の集団がアジトに使っていたという場所を聞き出す事に成功している。
「彼らは『ナダキアは良い餌場だ』、という話を又聞きしていたそうだね。その噂の出どころが、何かに繋がっていないとも限らない」
アジトに手がかりがあるかどうかは、不明だ。
ただ、そこに新たな賊が現れる可能性もあるし――ナダキアとも遠くないという。
「こちらも危険を伴う可能性があるけれど……」
皆の力を信じてお願いしたい、とファビアンは告げた。
●翳り
「コルシュ、何している」
詰め所を出て立ち止まっていた神徒の一人へ、仲間が声を向けていた。
その青年神徒――コルシュはああ、と答えて剣の鞘を握り直す。
「済まない」
「今日もまた、戦いが起こるかも知れない。気を抜いていれば、危ういぞ」
「判っているよ」
答えながらも、その表情には曇りが残っていた。
仲間は歩み寄って尋ねる。
「気にしているのか、以前の事を」
「……彼らの言っていた事は、正しいように思えた」
コルシュが言うのは、以前に山岳で賊を見つけた時、出会った者達の事だ。
ソーレアル信仰区からの依頼もあってあの場に居たという彼らは――賊を即時に斬って捨てる事に反対した。
コルシュにはその主張が、間違っているとは思えなかったのだ。
仲間は否定するよう首を振る。
「確かに人道は重んじるべきだ。だが、我らが戦っているのはそれが通じない相手でもある」
それは改めて自分達――聖白神座会の間で共有された意志でもあった。
あの時は、確かに賊の身柄を譲った。
だが区を害する存在が悪である事に変わりはない。
故に――敵には変わらず、毅然とした対応を、と。
ただ、コルシュはまだそれに完全に頷けない。
「俺だけじゃなく、他のやつも何人か、話し合った方がいいと言っているが……」
「お前達はまだ若い。だが、信仰を守るには剣を振らなければならない時もあると、その内判るだろう」
仲間はそうとだけ言って歩み出す。
コルシュは俯くが……すぐに前に向き直って後に続いた。
区内は静寂だ。
だが敵は今もどこかに潜んでいて……きっと今日もまた、事件が起こるのだろう。
「……いつまで続くんだ」
零れる言葉には疲れにも似た色が滲んでいた。
解説
マスターより
リプレイ
「ありがとう」
トゥーリの礼に、商人達が頷いて馬車を引く。
隊商との交渉に成功し、トゥーリはその一員として区に入っていた。
今回は皆が別行動。仲間も各々、潜入に成功している筈だ。
そんな思いと共に――トゥーリは見返りに商人の仕事を助力。外国の知識も与えつつ……売買や荷運びを行っていく。
「区を広く巡るんだね」
「物資はどこでも求められますから。あ、でも」
北東の辺りは行かない、と商人は言った。
「特に治安が悪いようで。一年以上前からそんな様子みたいです」
「そうなんだ」
トゥーリは頷きながら――
(北東、かぁ)
しかと心に留め置く。
そして広く区の空気を掴んだ後で……件の北東へ。スラムにも似た一角に着いた。
荒んだ空気の男が数人、こちらに目をつけるが――トゥーリは引かず、交渉の口火を切る。
「ねぇ、外の物資とか情報、ほしくない?」
住民から情報を得て、シンディー・ホシカも一般人が忌避する裏通りへ入っていた。
その髪はツインテール。
香る香水はどこか華やかで。
それは育ちの良さを思わせる平素のシンディーとは違う、「踊り子のツバキ」の姿。ローブを着ながら、奔放な印象も纏っていた。
すると、表とは違う空気の男が声をかけてくる。
「……お前は敬虔な信徒、じゃないな」
「あなたも?」
彼は頷いた。ここはそういう人間もいる、と。
声音にあるのは反信仰の仲間意識か。
シンディーは好機と見て――
「私も……あれもダメ、これもダメって、窮屈すぎて嫌になっちゃったのよ。男の人たちに踊りを見せるのが楽しいだけなのに」
軽く踊って見せると、彼らは長らく娯楽に触れて来なかったのだろう、半ば見惚れていた。
そして「もっと踊りを見たい人がいるなら」と――シンディーは彼らの仲間を辿り、勢力の中枢に入っていく。
ラモンは隠密しながら神殿に着いていた。
(立派なものですね)
建物はまるで権威の具現だ。
無論、見張りもいるが……解放された礼拝堂もある。ラモンは信徒に交じってそこへ入り、隙を見て内へ続く回廊へ入った。
そして素早く天井に身を隠し、エーテルを奔らせて神殿内の構造を把握する。
内部は複雑ではない。
その分、潜んで進むのは困難そうだが――
(ここから聞こえる声もありますね)
近い部屋から届く会話に、耳を澄ます。
すると――
『罪人は増えるばかりだ。グレオサ様の予見通りだな』
『ああ。裁判が重なってグレオサ様が疲労せねばよいが』
話は神官同士のものだった。
(神官も治安悪化の原因は知らず。しかし彼らの“上”は予見していた、と)
神官の長だろう、と。
それを把握したラモンは……彼らが出てくる前に、一度撤収した。
ルーンス・ラグネルは表から区へ入っていた。
上げていた髪を下ろし、商人らしい服を着て、香水も使って変装は十二分。通りかかった神徒の目も掻い潜り……商売を始めている。
「こちらは優しい香りで――」
と、一般信徒へ売り込むのはルームフレグランスやハーブティー。
「私も夜寝る前にリラックスできるよう使っているんですよ」
言って試供品も見せれば、評判は上々。ナダキアに無い風合いの物だけに、買い求める客も集まった。
彼らへ笑顔でセールストークを続けつつ……ルーンスは自然に話を引き出す。
「ここは日々の信仰心の賜物か、皆様落ち着いていらっしゃいますね」
「嬉しいお言葉です」
信徒達は頭を下げながら、誇らしげに区について語る。
ルーンスはそれを相槌と共に聞き始めた。
グレイブ・ヤードは賊のアジトへ来ていた。
見えるのは複数の小屋や平地。
ただ――
「判りやすい物証は無し、ですね」
尤も、それは予想済み。
ここに来たのは、新たに現れる者もいるだろうと考えたからだ。
そもそも、一定区域で動き続ける賊という存在に、グレイブは疑いを持っていた。
以前捕まえた輩は確かに、多くを知らぬ賊だった。だが次に現れる連中や――噂を齎した人物もそうだとは限らない。
「何にせよ、噂のもとは知っておかねば」
と、目を向ける先。
岩場の間から近づく、無数の足音があった。
武装、会話、足取り。
噂を聞いてきた新たなならず者らしいと見て――グレイブは祭祀刀を手に取る。勿論、“話”をしてもらう為だ。
新顔の商人として挨拶を、と。
ロゼットは首長宅の場所を人々から聞き出して……そこを訪れていた。
(不思議な雰囲気ね)
その周辺は静かで、緊張した空気もある。
それでも見張りは無いと見て、ロゼットは訪問して挨拶をした。
「商人の方か。わざわざご足労を」
そう丁寧に迎えた首長ニザーブは、剛健な印象もある壮年だ。
ただ、顔には曇りがあって――ロゼットは尋ねる。
「ナダキアは今、大変な状況だとお聞きしたのですが」
「……迷惑をかけている」
ニザーブは真摯に謝った。
「市民や商人に安全を保証できないのが心苦しい。……私がもう少し自由であればな」
呟きにあるのは現状への憂いと煩悶。
そこには民を思う心があって――ロゼットは決心してフードを取ると、自身の正体を語った。
「故あって素性を偽りました。お許しください」
エミリア・シバは男性に変装して区内へ。
信徒に紛れて神殿に近づくと……傍の裁判所へ忍び込んでいた。
法廷付近以外に人は少なく、潜むのは難しくない。警戒を続けつつ、資料部屋を見つけて書類を探った。
すると――
(これは……)
目につくのは区の規模と釣り合わない罪人の数。
その殆どが神殿への反逆、即ち“反信仰”の罪状だ。
(ここまで治安が? でも……)
記録の簡潔さに不自然を覚えながら事件を遡る。
と、ある時期から、徐々に反信仰の動きが目立ってきた事がわかった。
それは――
「賊が区に乗り込んできた事件……。騒ぎは当時、神官がその場で解決。死傷者は少数。ただ賊は全員、処刑――」
エミリアは詳細を手早く書き写すと、一旦外に出る事にした。
●真実
「美しいな。こんな踊りは見た事がない」
男の言葉に、シンディーは「ありがとう」と笑んでステップを終える。
裏通りの奥地。
犯罪者達を束ねるメットという男にシンディーは辿り着いていた。
場には犯罪者達と共に……トゥーリの姿もある。情報と物資を材料にここを探り当てたのだ。
気を良くしているメットへトゥーリは尋ねる。
「皆、今の神殿に納得いってないんだよね。今と前、どう変わったの?」
「法閃院は信仰を急進しすぎてる」
信徒を置いてけぼりだ、と。
メットが言うと、シンディーも言葉を引き出すように首肯した。
「わかる! なんだか、牢屋か何かみたい」
「ああ。実際の牢はもっと酷い」
曰く、仲間の一人が窃盗で捕まった。その仲間は重罪として処刑された、と。
「略奪を禁ずる文言が教義にある。だから“反信仰”とされたんだ」
神殿は信仰を盾に強権化している、だがそれを指摘しても信仰を否定する罪人になると彼は言った。
「ひどいわ!」
「神殿、調べてみたいんだけど」
トゥーリが言うと、メットは手伝おうと応えた。
「危なくてもあなた達はこうして動くのをやめないのね。すごいわ」
シンディーの言葉にメットは頷いた。
「協力者もいるからな」
「協力者?」
「ああ。正体を明かしてはくれないが、そいつは物資を調達するチャンスを都度教えてくれて……神殿にも詳しいようだ」
シンディーはそっとトゥーリと見合う。
「その人の事も聞いてみたいわ」
そうして背格好や行動範囲を聞き出して……その人物が神徒らしいという結論を、シンディーは得たのだった。
その後、トゥーリは神殿へ。
犯罪者達が信徒として集団で礼拝に赴く事で、いつも以上の信者の数に、神官も数を増やして応対する――その隙に内部に潜り込んで調査する。
見つけた資料から判ったのは、統治も裁判も、全て神官長の権限で行われる事と――
『では引き続き頼むぞ、エルトル。信仰の為に』
『ええ。グレオサ様』
ひと目につかぬ中庭で会話を交わす神官と、神徒の姿だった。
トゥーリ達が作った好機を活かし、ラモンも神殿内を探っていた。
まず、部屋を空けている神官を調べるのは難しくない。
「どの神官も同一の方針で動いている、と……」
それを決めているのは神官長グレオサだ。
資料を過去に遡れば――
「今の排他姿勢を強めたのは神官長に間違いないですね」
反面、グレオサ自身の情報は乏しい。
ここで判るのは、以前はいち神官だったという事だけだ。
(こうなると本人を調べたいですが……)
考えつつも、ラモンはグレオサには悪戯に近づかず……本人が中庭に出ていると見ると、執務室の方へ侵入した。
そこで見つけたのは――
「……反信仰者の詳細ですか」
防衛の為の資料とも言えるが……如何なる反信仰を抱いたかが、執拗なまでに詳細に書かれている。
読み取れるのは反信仰者への失望、そして憎しみだ。
(断罪する為だけの資料、ですね)
そして他の資料では――
「エルトル、ですか」
神徒のリーダーらしい人物がグレオサの右手であり、秘密裏にやり取りしていると情報も得る。
あとは気づかれる前に、離脱。
(それにしても私、意外とシーフとしてやれていますね? ヒーラーではないと知ったときはどうなることかと思いましたが……)
これも神の思し召し、と。
思いと共に仲間との合流へ急ぐ。
「確かに今は苦しい時ですが……神官様や神徒の皆様が居りますから」
信徒はそう疑いの無い声で言った。
ルーンスは商売の中で彼らの話を聞いている。
知りたいのは情報統制の度合いだったが――
(治安の変化は感じているみたいだね。ただ……)
その詳細も、それ以外の事も彼らは知らない。
彼らの中にあるのは一貫して、反信仰の敵と、それを討つ神殿側という対立構造だ。
敬虔な信徒にはどこか他人事――神殿側がそうなるようにした、という事だろう。
ルーンスは頷きながら、話を引き出す。
「ソーレアルは不審者が出没して浮足立っているようでした。指導者の差でしょうか」
「グレオサ様は、素晴らしいお方ですから」
信徒は誇るように言った。
神官長であるグレオサは特に、信徒達に崇められていた。
というのも――
「過去にもグレオサ様は区を救ったのです」
曰く二年ほど前、賊の集団が区を襲った。
近隣を荒らし回っていたならず者だという。だが、最低限の死傷者で事態は解決した。
「当時神官だったグレオサ様が戦ったのです」
区は今ほど戦力もなかった。
だがグレオサが一人で獅子奮迅の戦いをし、民を守ったという。
「その勲功を始まりに、グレオサ様は神官長にまでなられたのです」
成程、とルーンスは頷く。
(神官長。区を自由に動かせる唯一の人物、か)
そこに核心があると、ルーンスが考えるには十分だった。
「ま、待て。俺らは本当に知らないんだ」
「ですが、言葉は交わしたのでしょう」
ならば知っている事を、と。
アジトに現れた男達を倒したグレイブは、その一人へ刃を突きつけていた。
彼らも噂を聞いて現れた賊だという。
噂を齎した人間について、彼らは語りたがらなかった。だがグレイブが刃を握り直すと、それでも口を開く。
「顔は見てない。ただ、俺らみてぇなのとは明らかに違った」
「確かにそれが噂の出処だと?」
「判らねぇ。だが、似た風貌の奴から話を聞いたって、別のチンピラも言ってた」
曰く、顔を隠し、帯剣し、自分を舐めてかかった賊は返り討ちにする――そんな人間だという。
「区への潜入の指南も?」
「……街の位置関係やら、神殿については多少」
「神殿も、ですか」
総合すれば、噂の出処の人物は賊を圧倒する強さで、内部事情も知っている。
それはグレイブの推測通りだ。
(出入りも不自由な現状、神殿の情報を漏らせるのは……神殿の人間でしょうね)
その後グレイブは賊を辿る形で別の賊も捕縛。
出処について同等の証言を得て、その人物像を補完。結果として――それが神徒の一人であろうと結論を得た。
「ボルガニスクの、神官殿だったのか」
「ええ」
ロゼットはニザーブに頷いていた。
ソーレアルの依頼から、この状況を捨て置けず調査に、と。
説明すると……ニザーブも思う所はあるのか「話せる事は話そう」と、ロゼットの質問に答え始めた。
「……治安低下のきっかけについては、断言できない。一年以上前から、不穏な犯罪は皆無ではなかった」
「では、ナダキアは略奪の標的になるほど裕福なのですか?」
「いいや。資源も豊富ではない」
その事は、彼も不自然に感じていたらしい。
「ただ調べようにも、今の私には自由がなくてな」
「首長の活動が減ったと、伺いましたが」
「……神殿が主権を強めたのだ」
「決めているのは、神殿のトップですね」
「ああ。神官長グレオサだ」
曰くグレオサは敬虔。
過去、大怪我を負いながらも賊から区を守ったという。
「それは讃えられるべきだろう。だが今の彼は……」
「首長から権限を奪い、調査も許さない、と。その事と区の現状に関わりがある、とは?」
「……」
ニザーブは黙してから言った。
「考えたくはないが、否定もできない。私の自由が奪われ始めてから、数々の事件は起きている」
謀れるとすれば、神殿の人間だろう、と。
「それに――」
「気になる事が?」
「エルトルという神徒も不審なようだ。役目以外の動きをしているらしい」
エルトルは特段に信仰に厚い。
グレオサと強く共鳴をしても、おかしくはない、と。
エミリアは収容所へ潜入していた。
牢には入れないが、近くまでは行ける。そこから聴覚を活かして状況を把握した。
(それにしても――)
感じるのは囚人の多さだった。
『神殿を批判しただけで鞭で打つのか!』
『俺は盗みしかやっていない!』
『これが本当に公正な裁きなのか!』
彼らは一様に罰の重さを叫んでいる。
それはある意味、裁判記録の通りでもあった。一度捕らえられれば、訴えが通る事もなく……簡素な手続きで“反信仰者”として処理されるのだ。
(……反信仰は区では重罪。神殿の裁量で罰を定めるのだったわね)
裁判資料を思い出す。
彼らが罪を犯したのは事実のようだ。
ならば正義は神殿側にあるのかもしれないが――
(そこにもからくりがあるなら……神殿が行っているのは罪人を仕立て上げ、それを信仰のもとに裁く事)
そこに異を唱えられる人間は存在しない。
と、足音が聞こえてエミリアは離脱する。神徒が見回りにやってきたのだ。
今はただ引くしかない。
それでも――
(もし一般信徒がこの事を知らないなら、神殿側は判っていて隠しているという事)
罪人がどう生まれたか。
神官や神徒の動き。それらが明らかになれば……推測を証明できる、と。
そうして区を出たエミリアは仲間と合流。
皆で情報を交わし――噂の出処を神徒エルトルと断定。神官長と共謀していた事実を導き出し、ソーレアルへ報告に急いだ。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜8人
2023年03月08日 02時56分07秒 公開
相談掲示板
シンディー・ホシカよ。 よろしくね! 私は踊り子に扮して、「犯罪者」たちと接触して情報収集するつもりよ。 そういう人たちからしか得られない情報もあると思うから。
ロゼットよ。よろしくね。 今のところ、何者かが『ナダキアは良い餌場だ』と 賊をたきつけて、襲わせている可能性が高めかしら? その何者が外部か、内部の人間かは分からないけれど。 私はナダキア信仰区の「首長」が気になっているけど、 ある程度は手広く調査にまわった方が良いと思うから、 周りの意見を聞ききながら、考えたいわ。
ルーンス・ラグネル。 よろしくね。 現段階では、「外部か内部かはともかく、賊にナダキアだけを襲うように仕向けた存在がいる」のは間違いないと思う。 それと、前回、「そうして油断した結果、賊の侵入を許した事を忘れたか!」と言っていた。 見逃した連中が過去におり、その連中によってナダキアが何らかの被害を受けたのかなって思ったよ。 犯人が内部の人間の場合、自演で侵入を装ったり手引きしたとかはありえるけど。 僕は商人として入ってみることにするよ。 一般信徒中心になるかな。
ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 まぁほどほどに 基本軸は町の聞き込みでしょうけど、賊からも得られる情報はありそうですね? どちらを重視するか、もありそうです
シーフのエミリアよ、よろしくね。 調査対象はちょっと迷っているところね、普段だったらシンディーちゃんと同じように踊りの特技を活かして酒場とかに潜り込むんだけど……。 今回調べてみたい場所多いのよねぇ……シーフ技能活かして神殿(聖白法閃院)か賊のアジトに行ってみようかしらねぇ。 神殿のほうに行く場合は痕跡を残したくないので、抜け穴利用をさせてもらう感じになるかしら。
トゥーリだよ、よろしくね! どうしよっかな。行くとしたら街の外の、賊のアジトか……神官周りかなあ? 早い段階で行先は整理した方が良さそうだね。
ラモンと申します。よろしくお願いしますね。 さて、私はどうしましょうか。 虎穴に入らずんば虎子を得ず、と申しますし。神殿(聖白法閃院)を探ってみようかと思います。 隠蔽で隠れつつ、超聴覚で神徒の方々のお話を密かに伺ってみようかと。
>調査対象候補 シンディー:犯罪者 ロゼット:首長 ルーンス:一般信徒中心 グレイブ:町の聞き込み? エミリア:神殿(聖白法閃院)か賊のアジト トゥーリ:賊のアジトか神官周り ラモン:神殿(聖白法閃院) 今のところ、こんな感じね。 同じ対象を協力ないし、別行動で調査しても良いでしょうし。 賊のアジトはナダキアと離れるから、選択に迷いそうだけど 「餌場」の噂の出所を探るには調べておきたくもあるわね。 賊をひとり締め上げても良いし、アジトに何らかの物証が 残っている可能性とか?噂を巻いてる本人が居る可能性も。 あと、【信焉】前回の参加者は神徒(聖白神座会)に前回、 顔を合わせた人と出くわす可能性はあるから軽く注意かな。 首長は、人物によっては事情をあかして話ができる可能性が ありそうだから、人となりを見に行ってみようかなって思うわ。
>アジトについて 少なくても前回の結果から「アジトを探す必要性(盗品の確保やチンピラに流された噂の元関係)」はあると思っていますので、私はそちらを考えております。 といいますか、町の聞き込みにしても前回以上の情報は得られないんじゃないかなあと思っていまして。 であれば、恩を売るわけではありませんが、盗品関係とより多くの盗賊を彼らに引き渡して多少なりとも信頼関係を構築してもよいのではと。 噂は問題としても、流されて行動(盗賊行為)を決めたのは当人ですしね。 そこは裁かれても致し方ないかなという部分があります。
グレイブの予定は了解、今はこうね。 >調査対象候補 シンディー:犯罪者 ロゼット:首長 ルーンス:一般信徒中心 グレイブ:賊のアジト エミリア:神殿(聖白法閃院)か賊のアジト トゥーリ:賊のアジトか神官周り ラモン:神殿(聖白法閃院) 治安の低下には何か切っ掛けになる事件が町であったかも しれないし、そういうことは町で聞き込めるんじゃないかしら。 もちろん聞き方に工夫は必要になりそうだけど。
グレイブちゃんも族のアジトに行くのなら、トゥーリちゃん次第ではあるけれど3人割くほどではないとは思うので、おねえさんは神殿(聖白法閃院)のほうに行ってみようと思うわ。 裁判所のような建物や、収容所のような建物もあるってことなので、そちらで捕まってる人か何かしら書類のようなものをあされれば、と思っているわ。
正直な所、何が当たりかは分かりません。 やれることをいろいろと、です
とりあえず賊相手には「お話」をしておくつもりではあります。 主に「噂の出どころ」について。 どこで聞いた、どこの町、どこの店 ある程度条件があるのであれば捜索範囲は狭められると思いますので
動く様子はなさそうだから、私も首長を訪ねてみるわ。 商人の成りすましで。 治安が低下、賊が現れ始めた頃にナダキアで何かなかったかとか、 あと未確認な神官のトップ、神徒のリーダーについて聞いてみるわ。 立場のある人だし、神殿の偉い人とも面識はありそうだから。 明日、出発だから行動を忘れずにね。