【枯花】落とし子たちの円舞曲
炙りとろ左門
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シナリオID:2796
オープニング
鼓膜を劈く喧騒。
少女は周囲に気づかれないよう、開いた扇の下で細い息を吐く。
体に食い込むドレスが嫌だ。
まとわりつく視線が苦手だ。
けれど、それは必要なことだから割り切れる。
この歪な世界を守るために、必要なこと。
『まあ見て、彼女……』
『【枯葉令嬢】じゃないか? よくこの場に顔を出せたものだ』
『あの噂はやっぱり本当なのかしら』
『否定しないということは、そういうことだろう……』
密やかな声は聞こえないふりを。別に、彼らに悪意があるわけではないのだから。
だが、悪意がある者より、何も知らない者たちの悪意なき糾弾のほうがよほど深く刺さるものだとも、知ってしまったから。
● 枯葉令嬢
「イレイユ、僕はもう行かなくてはならないが……大丈夫かい?」
「はい、お兄様」
少女のそばに控えていた王国騎士の青年が、伏せられた瞳を覗き込む。イレイユと呼ばれた少女は、それにはっきりと返事をした。
背筋を曲げてはならない。俯いてはならない。声を震わせてはならない。幼少時より叩き込まれたそれは、思いの外役立っていた。
だが、青年は気遣わしげな表情を無防備に晒している。そしてそのまま冒険者たちを振り返った。
「……それでは、あとは頼みます」
迎賓館として生まれ変わった【藍銅宮】の開放を祝う晩餐会。それに出席する妹の警護を頼みたい――アスカロニア侯爵令息ロウエンは、冒険者へそのような依頼を出した。
別に、不届きものが現れることを危惧してはいない。冒険者たちは、待合室でのロウエンの言葉を思い出していた。
『心無い人々の言葉から、妹を守っていただきたく――』
「……よろしくお願いします」
イレイユは冒険者たちに向かって優雅に礼をする。
イレイユ=アスカロニア。パンクリアース学園の5年生であり、儚げな美貌を誇る侯爵令嬢だ。しかし、彼女は周囲から【枯葉令嬢】と呼ばれている。
銀の髪に金の瞳は、兄ロウエンのそれに比べてくすんでいる。そのことと、枯れ木のような華奢さ、そして彼女にまつわるある噂が、そのような異名を生み出した。
学園の新入生である、とある少女を手酷く虐げている――というのが、その噂の内容だ。
当初は、虐められている少女が異種族ということもあり――特に貴族学生を中心に――気に留める者は殆どいなかった。だが昨今、その内容があまりにも過激さを増してきたということもあり、イレイユに対する忌避感が蔓延し始めている。
噂は噂と言ってしまえばそれまでだが、虐めの現場を見たという証言者も多く、またイレイユ本人が肯定も否定もしない。それゆえに噂は真実味を帯びて、彼女は今、奇異の視線に晒されているというわけだ。
ロウエンが去ったあと、イレイユは改めて冒険者に向き直る。
「兄はあのように言いましたが、気遣いは不要です。私はここから動きませんので、自由にしてくださって構いません」
……そうは言うが。冒険者たちは顔を見合わせた。依頼は依頼であると伝えると、「では」とイレイユは向こうのテーブルに視線をやった。
「飲み物をお願いできますか? 少し、喉が渇きました」
● 再びの招待
冒険者ギルドの新米受付嬢、シュゼットは再びドレスに身を包んでいた。
「はゎゎ……まさか本番にお呼ばれするとは思いませんでした! どうして!?」
今宵の晩餐会に幾人か冒険者を呼びたいというウィリアム王子の意向は知っていた。が、シュゼットは冒険者ギルドの受付嬢であって冒険者ではない。シュゼットはそわそわと兎尾を揺らす。
だが実際は「職員なら経費」というギルドの都合である。かわいそうに……。
この晩餐会では、種族や出自を問われない。とはいえ、それを額面通り受け取る者はいないだろう。ゆえにそのような場に冒険者がいることが必要――そう語ったウィリアム本人は、さっさと引っ込んでしまったが。
「私たちのお仕事は、目立って、広告塔になることです。頑張りましょう、冒険者さん!」
シュゼットはえいえいおーと小さく拳を掲げてみせるのだった。
● 真実を求めて
一方会場の外では、老齢の王国騎士とひとりの少女が密談を交わしていた。
「自由な気風のマーレ育ちには、このような場は息苦しく感じるかな? エリゼ」
「まあ、そうですね」
少女は苦笑して、ドレスの裾をつまむ。
「せっかくこんな綺麗なお召し物を用意していただいて、申し訳ないんですけど……」
「良い。年頃の娘なのだから、大いに享受せよ」
王国騎士は周囲に人の気配がないことを再確認してから「さて」と本題に入る。
「【枯葉令嬢】に関する噂……君はどう考える?」
王国騎士に問われ、少女――エリゼは少し考え込んだ。
「噂の広がり方に作為的なものを感じます。シュナイデル卿はどのようにお考えですか?」
「……リーシャ、と言ったか」
王国騎士は調査対象の名を挙げた。学園にて令嬢イレイユに手酷く虐められているという、例の少女だ。
「私が学園の中に入って行くわけにもいかないからな、今宵は情報を集める良い機会だった。しかし学生たちの証言をまとめるに……イレイユ嬢が彼女にこだわる理由が見えてこない」
イレイユの兄であるロウエンは、シュナイデルの部下のひとりである。とはいえ今回は身内の境遇について相談されたわけではなく、別件の捜査中に関係者としてイレイユ兄妹が挙がり、顔見知りのシュナイデルがこの場に出向くことになったという具合だ。
そしてシュナイデルは彼ら兄妹のことを少なからず知る身として、「イレイユ嬢はそこまで苛烈な性格ではない」とも続ける。
しかしエリゼは釈然としない様子だ。
「でも、現場を見たという証言については、嘘をついているようには思えませんでしたよ」
「ふむ。教育の賜物かな。嘘を見抜くという技術は大切だ」
シュナイデルもまたエリゼと同じ意見であった。
「とはいえ、イレイユ嬢については我々が出しゃばりすぎることではない。リーシャ嬢が【メルヴィの落とし子】なのかどうか確証を得る……そのための周辺調査にすぎないからな」
そして、今宵はこれ以上の情報は集まらないだろう――そう判断したシュナイデルは、ホールから漏れる明かりに目を細めた。
「殿下のお心遣いだ。もう少しパーティーを楽しんできても構わないがね」
「では……うーん……少し休んでからでもいいですか?」
エリゼは少し屈んでふくらはぎを軽く揉む。シュナイデルはエリゼを庭園へと導くと、ベンチに彼女を座らせた。
解説
マスターより
リプレイ
だが、そこに含まれるものは穏やかな感情ではない。疑念に留まるものならばまだ、嫌悪となれば話は別だ。
あくまでこの場は、第二王子の開いた宴。それを強調するように、フリーダは優雅に笑みを作ってみせる。
続けて啓示の言葉で以て反撃を試みようとすると、ふと腕に華奢な手が触れた。イレイユだ。
「お待たせしました」
フリーダは何事もなかったかのように振り返り、イレイユにグラスを差し出す。視線はいまだに纏わりつくが、様子見のそれへと変わったため、フリーダはイレイユとの会話に意識を割いた。
他愛もない世間話をしていくうちに見えたのは――。
「お疲れですか?」
「そう見えますか?」
イレイユは表情を動かさぬままフリーダの問いに答える。顔色が悪いと思えばそう見えるのに、すこぶる元気とも思えないのは、細い躰のせいだろう。
「お疲れでないのなら、是非とも一曲。リードしますよ」
そう誘われ、イレイユは探るような視線をフリーダに向けた。ダンスの間に内緒話はよくあることだ――イレイユが身構えたように見えたので、フリーダは片目を瞑る。
「ただの気晴らしです」
「お心遣いに感謝します、ブロム……」
「フリーダとお呼びください」
「……フリーダ様」
フリーダが差し出した手を取り、イレイユは踊りの輪へと加わる。策謀渦巻く舞台の上ではなく、ただ心地よい音楽に身を任せるために。
フリーダはうまくイレイユと打ち解けたようだ。様子を見ていたルイドはそれを確認し、別のテーブルに移る。
今回の依頼は令嬢の護衛だが、食事をしつつ軽く見回る程度で良いと雇い主も言っていた。王子も、そこにいるだけで抑止力になるのが冒険者だと――であれば、そのようにするまでだ。
「……失礼、少しいいか?」
ふと気になる単語を耳が拾い、ルイドは強引にならない程度に話に加わる。
「そのリーシャって子、冒険者なのか?」
イレイユに関する『噂』に必ず出てくる少女がいる。金髪銀目の美しいエルフの少女であり、パンクリアース学園の新入生であるという。
パンクリアース学園への入学条件はそこそこに厳しい。それが、冒険者を聴講生として受け入れることである意味緩和されたのは記憶に新しい――としても、聴講生が学園に『入学』を果たすには、編入試験を突破しなければならないのだ。
『新入生のエルフの少女』。目立つのは、異分子として条件が揃っているからだ。
「そう聞いてるよ。冒険者生活と学生生活の両立だなんて、大変なことをしているよね」
ルイドの疑問に答えたのは、商会長の息子として学園に通っている男子だった。
「イレイユ嬢は彼女と折り合いが悪くて……並ぶと自分が見劣りしてしまうのに嫉妬してる、なんて言われてるけど」
「リーシャ嬢はなんていうか、輝いてるからな。エルフの美貌ってすげー」
「ふーん」
ルイドは適当に相槌をうちつつ、内容を頭に入れる。
「ありがとな。そうそう、今日は冒険者から出し物があるんだ。良かったら見ていってくれ」
ルイドは途中でシュゼットを誘い、出し物の準備中である冒険者たちが良く見える場所を探す。
「何が始まるのですか?」
「んー、それはみてからのお楽しみってことで」
シュゼットはそわそわとしながら、ルイドと階段上の冒険者たちを交互に見やる。そしてアステルのフルートのチューニングが終わると、大階段の下にいるキオルティスが皆に呼びかけた。
「皆様、ご注目ください」
よく通る声、そして華やかに装ったキオルティスに参加者の視線が集中する。
「これより我らから王国の民たる皆様にお贈りしますは、春を迎えるための冒険譚にてございます」
静まり返った会場にて竪琴を爪弾きながら、キオルティスはそこに、足首にくくりつけた鈴の音を漣のように刻んでいく。
「……あれ? 水?」
と、シュゼットは階段上にちらつく雨粒に気づいた。
「いや、これは……【念写】だろう」
ルイドはギャメルが中空にイメージを映し出したのだと、そう結論づける。【念写】の範囲はそれなりに広い。投影しているのはギャメルであり、いつのまにか会場の明かりも弱く落とされている。
「水は過ぎ去りしものを生み、いま、そして明日へと流れゆく――」
水の流れを時の流れに見立て、キオルティスは王国の成り立ちを歌い上げる。やがて雨は雪となり、冬の時代へ移り変わったことを観客に伝えた。
ギャメルが映し出すイメージが吹雪く雪原へと変わり、アステルのフルートの音が吹き荒ぶ風を導く。やがて吹雪の中から、過酷な時を支配する【冬の王】が現れた。
【念写】のイメージは期待するほど精細ではない。魔獣の姿もぼやけて曖昧だ。だがあまり真に迫るイメージでは、混乱を引き起こしたかもしれないことを思えば、この技能もなかなかの使い所といえよう。
アステルとキオルティスが【冬の王】との戦いを宣言すると、エミリア・シバがゆっくりと歩み出る。それまでふたりの演奏に合わせ、念写される情景を背にして踊っていたエミリアだったが、顔つきが変わっている。
それは戦いに赴く者の顔――冒険者だ。
先程までの優美で嫣然とした笑みは消えている。いや、微笑んでいることには変わりない。だがそれは、打ち倒すべき敵を前にして冷酷なものとなっていた。ともすればこの者こそが【冬の王】なのではないかと思えるほど。
しかしその瞳には、燃え盛る炎が宿る。
エミリアは一歩踏み出し、舞うように武器を振るった。もちろん模造品だが、照明の光を受けて煌めくそれは、【冬の王】の影を鋭く切り裂いていく。それを、観客たちは固唾を飲んで見守った。アステル、キオルティス、そしてギャメルはエミリアの旅の仲間として彼女を鼓舞する。
死闘の末、冒険者たちは【冬の王】を打ち倒す。
一瞬の静寂ののち、春を告げるべく穏やかで軽やかな旋律へと切り替わる。雪原には次々と緑が芽吹き、そこに観客の拍手が加わって、冒険譚は幕を閉じた。
「あの、気を悪くされないで欲しいのですが、私、学園でずっと話しかけたいと思っていて……」
「今のは冒険者の技能なのですか?」
「お、おう。えっと、はい!」
演目が終わるや否や、演者であった冒険者たちは興奮気味の参加者に取り囲まれていた。ギャメルもそっと隅に移動しようとしていたところを捕まり、こうして質問攻めに合っている。
(お、王国社交界って聞いてたのとはずいぶん違うな……)
無論遠からずの印象ではあり、現にギャメルを遠巻きにしている貴族子弟も多い。ギャメルを囲んでいるのは比較的市井と距離の近い面々、そして学園での顔見知りだ。
とはいえ、彼らに対して礼節が欠けるようなことがあってはならない。ギャメルは習った礼儀作法を指先までしっかり意識しつつ、必死に頭を回転させて言葉を紡ぐ。
「いや、血筋ってのは貴族にとって大切なものだから。学園でも風向きは変わってきたけど……」
そうギャメルが切り出すと、何人かの表情が曇った。おやと思えば、声が潜められる。
「それでも、あれはやりすぎですよ。この間は頭から水をかけられてました」
不穏な空気に、ギャメルは「誰がそんな目に遭ってるんだ?」と尋ねる。
学園生たちは顔を見合わせ、告げた。
「エルフの1年生、リーシャです」
アステルは興味深く、学園生らの話を聞いていた。
近頃学園内で起こっている異種族差別。その渦中にある人物がこの場に参席にしていることもあり、参加者の話題は自然とそれに移り変わる。
「リーシャさんは今、どうしているの?」
アステルは会場内を見回す。少なくともこの場にはいないようだ。いれば、彼女も視線に晒されているだろうからわかりやすい。
「リーシャは学園寮にいると思います。住み込みなので、休暇中も寮ですね。そういう意味では、休暇中は【枯葉令嬢】と衝突することはないんですけど」
皆一様に、リーシャの様子を心配している。対してイレイユには腫れ物を扱うような言動だ。
「俺、見たんだ。この間【枯葉令嬢】がリーシャの鞄を池に投げ捨ててた。リーシャは泣いてて……俺、どうしてこんなことするんだって聞いたんだけど、彼女は何も言わずに去ったよ」
「うーん……」
アステルは考え込む。リーシャと、その場に居合わせた者の証言。イレイユが是と頷けば確実だが、イレイユは否定もせずに沈黙を貫いている。ゆえに、何者かが姿を変えて三文芝居を演じている可能性も否定はできまい。
「このこと、学園側には相談を?」
と、そばで話を聞いていたキオルティスが尋ねる。と、女学生が首を横に振った。
「い、いえ……正式には。大事にしたくないからって、リーシャが」
「そうなんだ。控えめな子なんだね」
生徒間でどうにか丸く収めるには難しいと判断するなら、学園側へ助けを求めるべきだ……とはいえこれだけでは、リーシャの人となりを判断するには情報が足りない。
「まあ、あまりこういう話は長くしないほうが良さそうだ。どうかな、一曲」
キオルティスは女学生をひとり、ダンスに誘う。女学生は顔を赤らめつつ頷いた。
「リーシャちゃんとイレイユちゃんは、もともと接点があったのかしら?」
キオルティスがダンス中に女学生に尋ねたことを、エミリアもまた疑問に思っていた。エミリアとグラスを傾けながら、この春6年生となる男子学生はちょっと首をかしげる。
「うーん……接点、というか。リーシャ嬢がイレイユ嬢に話しかけたんです。かなり気さくに。彼女は王国社交界の礼儀作法に疎いようでした。当然と言えば当然ですが」
でも、と男子学生は続ける。
「イレイユ嬢は驚いていましたが、気を悪くされた様子ではありませんでした。私は同級生として彼女と付き合ってきましたが、もともと穏やかな気性の人ですし、噂は噂だと思っています」
だが、彼女の性格を知るほど近くにいない者たちにとっては、面白おかしいゴシップでしかない。
「噂に乗じて、正義を振り翳したい者が多いのでしょう」
貴族的価値観の破壊、排除。そこまで計画していなくとも、簡単に優越感を得られる題材だ。エミリアは男子学生の顔を見上げた。
紫の瞳は、舞台袖にいるような、厭世的な色を映す。その下に、煮えたぎるような怒りがちらりと見えた気がした。
「……見事なものですね」
会場の視線を一手に集めた冒険者たちを見て、イレイユは感嘆の声を漏らした。彼女の声にはじめて感情が乗ったことに気づいたジュスト・ヴェルジーは、ここだと飲み物を差し出す。
「しばらくは息をつけそうですね」
イレイユはジュストからグラスを受け取る。それを躊躇いなく口に運ぶあたり、信用してくれているのか、それとも「どうでもいい」と思っているのか。
「ところで、リーシャ嬢とはどこでお知り合いに?」
「学園以外にありませんわ」
ジュストの問いに、イレイユは澱みなく答える。
リーシャは目立つ学生だ。それは生徒会副会長という立場のジュストの耳にも、当然入ってきている。
「あなたから見てリーシャ嬢は、どんな娘だろう」
『噂』でのイレイユは、リーシャに対して並々ならぬ憎悪を抱いているに相応しい態度をとっている。が、当のイレイユはリーシャの名前を出しても全く動じない。それどころか――。
「……恐怖です」
イレイユは怯えた瞳でジュストを見上げ、はっとして、伏せた。
「恐怖?」
そのような表情を向けられたことで虚を突かれたジュストは、問いが一拍遅れてしまう。
「いえ、なんでもありません……お忘れください」
「イレイユ嬢……」
イレイユがそう話を打ち切ったので、ジュストはそれ以上問いを重ねることができなかった。
迫害とは、対象への理解が及ばない恐怖から生まれる面もある。だが、イレイユ嬢が抱いている恐怖はそれとは異なる――ジュストはそのような直感を得ていた。
イレイユが浮かべていた表情は、奪われることに怯える者のそれだった。
ゲルダ・クラインはジュストと交代すると、やや落ち着かない様子のイレイユを椅子に座らせた。イレイユが防備を固めてしまう前に詳細を聞き出したい――ジュストからそう耳打ちされても、個人的に気乗りはしない。
それが、『真実』に近づくために取るべき一手だとしても。
「……イレイユ様。こうしてお話しするのは、はじめてですね」
膝の上に置かれた華奢な両手を包むように、ゲルダは自分の手を重ねる。
「わたしは……ちゃんと自分の目で見て、耳で聞いたことを、信じたいです」
イレイユは目を伏せたまま、あるいはゲルダの手を見下ろして、呟く。
「あなたは……只人では、ないでしょう」
ゲルダは目を瞬く。言葉の上では、侮蔑と捉える者もいるかもしれない。だがそこに拒絶や蔑みはなかった。ただ自身を戒める、自分で自分の首を絞めるような、痛ましく絞り出したような響きがあった。
「はい。私は平民です」
体裁という名の下に押し込められていた本意を丁寧に、掬い上げる。
「わたしと、お友達になっていただけませんか? それで、あなたが置かれている状況、抱えているものが軽くなることは、なくても……」
知りたいのです、とゲルダは続ける。
「貴女の力になりたいと……そう思ったんです」
いつの間にかきつく握り込まれていたイレイユの両手を、ゲルダはゆっくりと開いた。
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「いや、今晩はありがとう。助かったよ」
イレイユを先に帰りの馬車に乗せ、ロウエンは冒険者たちに礼を述べる。
「学園でのように騒ぎが起きないか冷や冷やしていたけれど、杞憂だったね」
それは、イレイユの素行について噂を信じているということを示すものではなかったけれど。イレイユはものいいたげに兄を見た。
「……少し疲れたのかな。ああ、君たちのせいではなくて」
ロウエンは慌てて弁明すると、人懐っこく微笑む。
「殿下のお心遣いにも感謝せねば。それでは、またどこかで」
ロウエンとイレイユを乗せた馬車が見えなくなってから、ゲルダは小首を傾げた。それにギャメルが気づき、尋ねる。
「どうした?」
「いえ……やっぱり兄妹仲はよさそうだな、と」
ただ、その兄もまた妹から何か相談はされていないようだった。兄本人に隠していることがなさそうに見えるのは、本当に何も知らされていないからだろう……ゲルダは【洞察】の結果、そう判断を下す。
その手の中には、イレイユから渡された紙片があった。そこには、私的なやり取りをするための宛先が書かれている。
「私たちが思っているより、これは根の深い問題なのかも……しれません」
その予感はこの時からすでに、イレイユと関わった者たち全員に共有されていた――。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い8 / 4〜8人
2023年02月27日 11時42分16秒 公開
相談掲示板
パンクリアース学園五年でキャスターのジュストだ、よろしくね。 今回は『【1】護衛依頼、または【2】余興依頼に分かれてください』 とのことだけど、均等に分かれる必要も無さそうだし各々好きな方を選んで良さそうだね。 俺は【1】の方に参加するつもりでいるよ。 イレイユ嬢の傍にいれば自由行動可だから【1】内でもきっちり合わせる必要は無いと思うけれど、お互いの行動が相殺しないようにしたり、動き易いようにサポートしたり連携も可能なので何か希望があれば遠慮なく表明やお声掛けして頂ければ幸いだ。
ヒーラーのギャメルだぜ! みんな、よろしくなー! 衣装は借りようっと! オレは【2】に参加してぇなぁ。 冒険者による余興は汎用スキルでなんかできねぇか考えてる。 幻影を使って紙芝居みたいな演目とか! 会場で枯葉令嬢やリーシャへのイビリの噂を耳にしたら、噂してる人と話して情報を得たい。 今回依頼されたのは調査じゃなくて余興だから、本格的にガッツリ調べはしねぇけどな。 会話がイレイユに聴こえないように気を付けるが、この行動が護衛依頼を受けた人の妨害にならないかちょっと心配。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 今回は【1】の方に参加してみようと思います。 基本的には護衛依頼に沿って危険から遠ざける役割に徹する予定ですが、 追求対策に何かしらのアクションを行いたいと考えています。 ダンスとかも楽しそうですしね。
ウォーリア、ルイド。良しなに。 【2】の方に参加すっかな。単に楽しませてもらうだけでも良いようだし。 広告ってことだから、カリスマあたり使って多少存在感出すのもありかなと考え中だ。なんか協力必要なことがあったらそっちの手伝いもいけるぜ。 件の噂関連もできるだけ気にするようにゃしておくな。
ゲルダです。よろしくお願いしますね。 【1】でイレイユ様のお傍にいる予定です。 噂の真偽と、彼女に近付く方々がどのような思惑で近付いてきたのか それらについて彼女自身がどのように考えているのか。 次につながりそうなもの、探れるところまで探ってみたいなと。
シーフのキオルティス。キオでもルティスでもお気軽に。 俺は【2】でパフォーマンス。 手の空いた隙にはリーシャ嬢について探ってみたいな…と思っているよ。 パフォーマンスは音楽関連くらいしか取り柄が無いけれど…如何しようか。 冒険者らしい…ってトコだと、アクロバティックな感じを出した演奏とか? ああ、誰か一緒にやってくれるなら、演武しつつの演奏も良いかな…。 自身の出番が終わったら、イレイユ嬢についての噂をしていた人物に接触。 ダンスに誘うも良いかな…そこで少し話を出来ればな、と。
エミリアよ、よろしくね。 おねえさんは【2】のほうで、得意の舞踏を活かして何かできれば、かしらね。 冒険者としてってことなら持ち込めるなら剣舞とか余興として踊って印象付けた後、できるなら周りに聞き込みとかしてみようかしら。
>キオルティス 挙げてくれた演武じゃねぇんだけど、もし良かったら共演できると嬉しいぜ。 キオルティスの演奏に抽象的な映像の演出をつける感じで、オレが念写でイメージを投影するってのはどうだ?
>ギャメルさん わ。お声掛け、有難う。ご一緒出来れば嬉しいな! 素敵な物語が紡げそうだね。何かテーマとかあればそっちに振るけど ギャメルさんの希望とかあれば教えてやってくれれば幸い。
はわわわ……支度に手間取ってしまいました! 遅れてすみません! お集まりいただき、ありがとうございます。ご不明な点がございましたら遠慮なくお申し付けください!
>キオルティス ありがとな! いっしょに盛り上げようぜ! 今はちょっと演目の具体案は出せないけど、方向性としては、冒険者っぽく、王国で受けが良くて、政治や礼儀のあれこれに抵触しない内容が良いんだろうなぁ。
No.12
遅くなってごめんなさいっ!!アステルです。 どうぞ宜しくね! >ギャメルさん、ルティスお兄ちゃん 今からでもよければ、私もフルートで参加しても良いかな? 急だし、今更だからダメなら言ってねっっ!!
>ギャメルさん、アステル 俺はアステルが入ることに問題は無いよ。 演奏に深みが出ることで、よりギャメルさんの念写が活かされると思うしね。 ギャメルさん的にはどうだろう? >演目 甘輝祭に因むのも良いし、王国だから四季になぞらえるようなものも有りかな? あとは…王国の成り立ちと言われる、水と大地をモチーフにするのも良いね。 特に水を使えば、流れる水、気化する水、氷る水、雨、雪なんかの色々な形態を 表して行くのも面白そうかな…って思ったよ。 …とは言え、もっと冒険者らしいものも有るかもしれないんで、参考までに。
>キオルティス、アステル うん、OK! 三人で盛り上げようぜー。 オレは念写に集中するから、演奏は二人に任せた! >演目 水を題材にするアイディア、知的で上品な感じで良いな! 流れ、気化、凍る、雨、雪ときて、ラストは雪解け水で春の兆しってのはどうだ? キオルティスが挙げてくれた案で充分良い感じに思うけど、 もしここに冒険者らしさをプラスすんなら、 雪と雪解けの間に、冬を象徴する魔物を打ち倒すみたいなシーンを入れてみるか?
No.15
ギャメルさんも、ルティスお兄ちゃんもありがとう! 演奏は任せてっ!(ぐっ >演目 ルティスお兄ちゃんの案に、ギャメルさんの追加、凄く素敵!! 戦闘シーン?っぽいモノも入れるなら、演奏もそれに合わせて それまでとは一転した激しい感じにするよ。で、雪解けの春で優しい暖かな演奏に。 緩急あっていいと思うな。
>ギャメルちゃん、キオルティスちゃん、アステルちゃん 24時間切って今更なのだけれども、もし間に合うようだったら、おねえさんも3人の映像と演奏に合わせて踊りで仲間に入れてもらうことってできるかしら? 魔物を倒すイメージで剣舞とか考えていたのでもしかしたら一緒に出来るかも、と
>エミリア うん! 音楽、映像演出、舞踏とくりゃ、かなり見応えのあるパフォーマンスになりそうだな。
No.18
>エミリアさん 私も後から組だけど…一緒にできたら嬉しいな! さらに華やかになりそう!
お二人ともありがとう。 一応合わせる形として 序盤の、流れ、気化、凍る、雨、雪の部分は、水や冬やイメージした踊り。 冬の魔物を打ち倒すは剣舞的なもの ラスト雪解け水で春になる部分は春らしく華やかな踊り 上記のイメージを考えているわ。 それと、事前にフェイクカバー を使っておいて。 魔物倒して春になったときに解除するなりして衣装チェンジも狙ってみようかと思っているわ。 あと、スキルのタイミングがロングアクションだから上演中に上手くできるかわからないけれど、魔物を倒すシーンに剣士とか騎士様のような格好にチェンジとかもできたらしてみようかとも思ってるわ。
んじゃ俺は晩餐会内を回りつつ、話しかけられそうな人がいりゃ演目のこと伝えて誘導しとくか。
締切ギリギリになってしまったけれど。 エミリアさんも宜しくね。 ルイドさんも宣伝誘導、有難う。情報持ちの人が沢山集まれば良いね。 それじゃあ、現地で。良い結果を祈ってる。