【天馬】風花の舞いと子どもの歌と

菊華 伴

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シナリオID:2788

オープニング


●雪の歌を歌おう、風の踊りを踊ろう
「生前葬……」
 ケンタウロスの長老的存在、レミーラの話を聞きレビジュ・バトーは少ししんみりした表情で話を聞いた。
「今回は、殿下も儀式に出席される。なんでも、ケンタウロス達の文化では盛大に大運動会を行うそうだからね。それで、君たちにもいい経験になるだろうという事で見学する事になったんだ」
 上官であるセディ・キャロルが穏やかにそう言えば、レビジュも少し明るい顔になる。大運動会ならば、自分達も身体を動かす機会があるかもしれない。
 今回、社会科見学的にその他の子ども達も一緒に行くことになっている。ちょっとした旅行みたいだね、とレビジュは思った。
 冒険者達も保護者的に一緒に行くことになっている、と聞くとレビジュもまた嬉しそうに顔を綻ばせた。

 そして、その当日。
「おう! いいとこに来たな」
 レビジュ達と冒険者達を出迎えたのはいつぞやの『中立派』ケンタウロス、カロンの姿があった。傍らには髭面のアヌーと凛々しいビシュもである。
「実は、比較的幼いケンタウロスたちの踊りに参加して欲しくてな。レイウェスト殿に話をしてきたトコなんだ。レビジュたちも是非一緒に踊って欲しいとおもうんだが……」
 カロンの言葉に子ども達は目を輝かせる。よく見れば、レイウェストとセディが何か話しているのが見えた。
 カロンの説明によると、大人たちが歌う『雪の歌』に合わせ、子ども達が躍るのだという。踊りの振り付け自体は簡単で、すぐに覚えることが出来る。
 また、本番ではこの季節に咲く白い花や鳥の羽など白くてきれいな物を頭に飾って踊るそうだ。

「中々可愛い踊りだな」
「そうだねぇ」
 踊って見せるちびっこケンタウロス達を見、レイウェストがぽつりと呟けばレビジュも相槌を打つ。
 すると、ちびっこケンタウロスの一人が、冒険者達に声をかける。それをカロンはすかさず翻訳した。
「この子達も誘っているよ! さぁ!」
「それは楽しそうだね! 一緒に踊ろうよ!!」
 レビジュもまた、笑顔で誘う。レイウェストも「盛り上がるかもしれないな」と目を少し輝かせた。

 さて、どう盛り上げよう?
 一緒に踊ってもいいし、楽器の演奏や歌で盛り上げてもいいだろう。

解説

どうも、菊華です。 今回はちびっこケンタウロスたちと踊りましょう!! 次の中から1つ選び、参加することが出来ます。 1)一緒に踊る  冒険者は年齢関係なく踊りに参加できます。白い花の飾りを頭につけ、歌に合わせて踊ります。輪になって手を繋ぎ、輪を縮めたり広げたり、その場で回ったりと簡単な振り付けですのですぐ踊れるようになります。  ちびっこケンタウロス達は人懐っこいです。優しく接してくれたらすぐに仲良くなるでしょう。  踊る人は白い飾りを何か頭につけます(レイウェストとレビジュは白い花を髪に飾るようです) 2)楽器や歌で盛り上げる  歌うのが好き! 楽器を演奏するのが好き!  そんな方にお勧めなのはこちら。楽しい音楽で踊りを盛り上げましょう。  ケンタウロス達の歌とはありますが、ハミングやスキャットが中心で歌詞はないようです。 3)その他 「ちょっとしたお菓子を振る舞いたい」とか「白い飾り制作を行動の中心にるう」等踊りや歌を中心としない行動をしたい方はこちらをどうぞ! 登場NPC レビジュ・バトー 社会科見学の一環として他の子ども達ときました。 レイウェスト・バルダス 参列者ですが、誘われ一緒に踊る事になりました。 セディ・キャロル レビジュ達の上官です。彼はバイオリンで演奏に参加するそうです。 カロン 『中立派』を自称するケンタウロス達の纏め役です。今回は歌で盛り上げるようです。 ※元メドゥの指先構成員の子ども達も参加します。今まで登場したブリザラやグリッタ、ホークアイ、ネインもプレイングに記載があれば登場します。 それでは、レッツダンシング! おまけ 『メドゥの指先』の構成員になったケンタウロス、スタウトも変装して少し離れた所から見ています。彼は邪魔するつもりはなく、ただ遠くからレミーラを送る天馬葬を見守りたいだけのようです。

マスターより

今回は、踊りを踊るイベシナです。 果たして、レミーラさまはよろこんでくれるのでしょうか? それではよろしくお願いします。

リプレイ


●はぐれていても、なお
(大族長殿も、そんな歳になっていたか)
 フードを目深にかぶったケンタウロスが、少し離れた場所から『天馬葬』の様子をうかがっていた。
(私は、病で家族と声を失った。理性も失ってメドゥの指先に下った)
 楽しそうに参列する者たちをどこか寂し気に見つめながら、彼は手を握り締める。しかし、ゆっくりと歩を進めながら静かに頷く。
(だが、やはり、レミーラ様のお姿だけは一目見ておきたい)
 彼は少しだけ瞳を細め、遠くにいるレミーラの姿を悲しそうに見つめた。それは、どこか祖母を見守る孫のような顔であった。

●歌い踊る送り方
 たくさんの人が集まった、ケンタウロス達の大族長・レミーラの天馬葬。その演目の一つとして、幼いケンタウロス達と踊ることになった冒険者たちは軽くレクチャーを受けていた。
 天馬葬……即ち、盛大な生前葬大運動会という文化に、驚く冒険者もいたようだが、ケンタウロス達の生き生きとした様子から少しずつ馴染んでいくようだった。
「それにしても、風土が違えばこんなに暖かい送り出しにもなるんだ」
 最初はお葬式のわりに華やかな事に驚いたアリア・ティーダがほっこりとした笑顔になっていた。
「こうやって送り出されるのは、なんかいいなぁ。僕はそう思うんだ」
 レビジュ・バトーがロバの耳を揺らし、そっと瞳を細める。視線の先では穏やかな笑顔で今行われている種目を見ているレミーラたちの姿があった。
「楽しんでもらえるといいのだが……」
 レイウェスト・バルダスが少し緊張した様子でそう呟けば、ベルク・オスマットが「殿下は踊りに参加されるのか」と目を優しく細めた。
(ならば、我も……。しかし、違和感がないことに悲しみを覚えるが……)
 ベルクは小柄(身長が113cm)であり、確かに違和感がない。しかし年齢的には淑女である為色々とあるのだろう。因みにハーフリングであるRe:Leeはベルクと身長が全く同じであり、二人揃って「高身長組と手をつないだら浮いてしまうかも」と考えるのであった。
「踊り、いいわねぇ♪ あっちの子供たちも楽しそうだし」
 Re:Leeはカロンに通訳してもらいながらケンタウロスの子供たちと交流したり踊りの練習をしたりする元メドゥだった子供達の姿ににっこりする。と、「違う文化に触れられて楽しいってわかってきたからね」とレビジュもこくりと頷いた。

 少し離れたところではちびっこケンタウロスたちがパヴェル・A・サムルガチェフの周りではしゃいでいた。過去にふるまった料理がよかったのか、ともに踊ってくれることを喜んでいるようだった。
「そうか、覚えていてくれたか!」
 カロンに通訳してもらったパヴェルは嬉しそうに瞳を細める。子供たちはさっそく一緒に踊ろう、というようにパヴェルを踊りの輪の中に誘っていく。
「あははっ! 押さない、押さない! 一緒に踊るから!」
「坊主ども、パヴェルに無茶させないでくれよ?」
 集まり、押していく子供たちに苦笑しながらついていくパヴェル。その様子にカロンも思わず同じように苦笑している。
「楽しそうさぁ! 一緒におーどろっ♪」
 そこに加わったのは、ハーフビーストの少女、フリューリングスルフト=ティエラ(以下、フリューと明記)。明るい彼女に子供たちも興味を惹かれ、カロンが翻訳すれば「いいよ」というように手を引いて踊りを教えてくれる。
 しばし教えを乞うパヴェルとフリューだったが、それを見ていたカロンはニヤリと笑う。
「なかなかいい動きだな! さすが冒険者といったところか」
「ふふっ、ありがとさぁ! 楽しい踊りだから覚えやすくて……」
 フリューが手をつないだ子ども達と笑顔で頷き合い、パヴェルも同意するように頷く。
「聞こえてきた歌も、清々しい。このメロディーにのって踊ると心も軽やかになる気がするよ」
 二人の楽しそうな様子に、カロンも笑みを零していると、子ども達が「もっと遊ぼう!」というようにパヴェルとフリューにじゃれついてくる。思わず転びそうになったフリューをパヴェルが支え、カロンが窘めるように声をかけるのだった。

「かなり懐かれたようだな」
「そうですね」
 ナタリア・フィッツジェラルドとキリアン・フィッツジェラルドの姉弟(きょうだい)が、その光景を微笑ましそうに見つめていた。
(しかし……、これだけの繋がりともなると、生きている内に彼らからの忠節に感謝をしておきたいのだろうか?)
 ナタリアはケンタウロスたちの様子を見ながら静かに考察し、送られる側も、送る側も楽しそうだ、と表情が自然と柔らかくなるのを感じていく。
 振り返ると、キリアンがヒューマンの特徴が濃いゴブリン、セディ・キャロルに「キリアン・フィッツジェラルド、ならびにナタリア・フィッツジェラルドの両名、ケンタウロス族が神事たる生前葬の為に参じました」と報告している声が聞こえる。
「君達からも君達なりに謝意を伝えたいのかな?」
 レミーラ殿が生前葬を以って気持ちを伝えたいように、と内心で付け加え呟けば、カロンは「そういう感じだよ」と静かに頷く。
「俺たちケンタウロスの要みたいなお方だ。偉大な方だから、天馬葬で送るんだよ」

 そして、その近くでは演奏に加わることになったエルとレティシア・レインフィール、イズル・M・ヴォルゴールの3人が、ケンタウロス達が歌う歌を聞いて楽器のチューニングを行っていた。
(子供たちの踊り、可愛い。大人、も、上手。……風みたいな、歌。とても、きれい)
 エルが瞳を細め、それに合わせてリュートを奏でてみる。一方イズルは、キリアンを連れて来たセディを見つけると駆け寄っていた。
 彼はキリアンに挨拶すると「楽器の事で……」と相談事を切り出した。
「楽器の音を聞いたけど、もしかして高音多めかな? 中音域のヴィオラも用意しているけど……」
「それはそれでいいかもしれない」
 イズルは彼の言葉に頷き、ケースからヴィオラを取り出して音を合わせる。
 最初はケンタウロスたちの歌を譜面に起こすことができればと考えたが、時間はなさそうだ。彼は聞こえた歌の旋律の寄り添うようにヴィオラを奏でてみる。
「ケンタウロスの慣習的に普通に伴奏すると音に流されて歌を乱す可能性があるかもしれないな……」
 彼は一応演奏するメンバーにも伝えておこうと思った。
 成人している身なので……と、演奏組に加わったレティシアはどこか広い草原を思わせる旋律に瞳を細めていた。
「雪が風に乗って降るような歌ですね」
 ぽつりと呟いた彼女は、それに合わせて声を出してみる。身体の力を少し抜き、ケンタウロス達の声に合わせ歌えば、自分も雪の中を風を切って走っているような気分になる。
(力強くて、胸の奥がすっきりする音……)
 彼女はその音色を覚えたうえでいくつかの曲が頭をよぎる。考えている彼女に気付いたのだろう、カロンが不思議そうな顔を見せた。
「どうした? 気になることでもあったのか?」
「ちょうどいいところに! 実は1つ提案したいことがあるのです。雰囲気に合う物で簡単な物であれば、他国の歌も取り入れてみませんか?」
 彼女の言葉に、カロンは少し考えると目を輝かせた。
「だったら、俺は帝国のがいいな。知り合った村の人が教えてくれたものが気に入っている。俺たちの仲間もそういう感じだ」
 レティシアは、笑顔で頷いた。
(王国のものも考えましたが、レビジュ様達にお伺いした方がいいでしょうね)
 そう彼女が考えていると、エルが手招きした。どうやらそろそろ音を合わせるらしい。
(みんな、いい顔してる)
 エルはすれ違うケンタウロス達の顔を見、そう思った。彼らが大族長と慕うレミーラを送るための『大運動会』だからこそ、このような晴れやかな笑顔なのだろうか、と。

 本番までの間に、踊り手たちは髪に白い飾りをつける。
「じゃんっ! 出来上がり!!」
「「わぁ~!!」」
 アリアは白い花で花冠を作っていた。その手際の良さに子ども達も目を輝かせる。作り方を教えてほしい、と強請った者もおり、彼女が丁寧に教えると満面の笑みを浮かべて礼を言った。
 ケンタウロスの子供たちの中にも真似して作る者もおり、実に微笑ましい。
 レビジュも幼い子ども達に作ってあげていると、アリアはレビジュの頭にもそれを乗せた。
「! ありがとうっ」
 少し照れたように笑う少年に、アリアは頷いた。
「かわいらしいな」
 パヴェルは花冠を自慢げに見せる子ども達に優しく微笑み、整えてやる。そういう彼(便宜上、ここでは彼とする)もまた自身の右角に白い花を括り付けている。つける際、ケンタウロスのちいさな少女たちが数名、「わたしがつけたい」と言ってもめていたが。
 彼がほのぼのと回りの様子をみていると、子どもたちが「お兄さんに作ったよ」、と花冠を差し出してきた。
 よく見れば、ケンタウロスの子と元メドゥの子2人の合作だったらしい。子ども同士でも身振り手振りでの交流が進み、それを嬉しく感じるパヴェル。
「いいのか? ありがとうな!」
 彼の言葉に、子ども達はにこにこ顔で頷いた。

「殿下、お似合いです」
「ありがとう」
 ナタリアに花を飾ってもらったレイウェストは少しはにかんだように笑った。鏡を持ち手伝っていたベルクは皇子の様子を見、緊張がほぐれてきたな、と感じていた。
「フィッツジェラルド殿もこちらを。我はすでに飾りました故に」
「! ありがとう、オスマット。助かる」
 ベルクが花を渡せば、ナタリアは少々照れ交じりに受け取る。近くではフリューとRe:Leeも花を髪に飾っていた。
「こんな感じかしら? 白いリボンとか、鳥の羽でもよかったみたいだけど……」
「こっちの方がいい感じさぁ~! まだつけてない人いるかな?」
「そろそろ時間だと聞いた。まだつけていない者はいないか?」
 レイウェストが確認するように問えば、みな首を振る。ちびっこケンタウロスたちの準備も整ったようで、そろそろ本番のようだ。
「こっちも、演奏、がんばる」
「盛り上げるんで、楽しんできて!」
 エルとイズルが手を振り、送り出してくれる。ナタリアは演奏担当者の中に弟を見つけると、そっと歩み寄る
「これも大事な神事だ。頼んだぞ、愚弟」
 と、彼にのみ聞こえるように耳元で囁く。キリアンは表情を引き締め、笑顔で頷いた。
 拍手で出迎えられる踊り手達を見送ったレティシアは1つ頷き演奏者組に向き直る。
「私たちも、そろそろ出番です」
 行きましょう、といえばエル達も頷き歌うケンタウロス達の中に混じった。

●始まる、始まる
(あれは……)
 ちびっこケンタウロス達の中に冒険者たちの姿を認めた彼は、わずかに目を見開いた。中には、先日戦った相手もいる。だが、彼はしばし考えるともう少しだけ会場に近づいた。
(冒険者が、ケンタウロスたちに接触している話は聞いていたが、よもや『天馬祭』にも参加していようとは……)
 これはこれで面白い事になってきたな、と彼はローブのフードかぶりなおしながら頷いた。

●にぎやかに、たのしく、あたたかく
「姉も奉納の為に踊りますし、僕も無様を晒す訳にはいきませんね。セディ殿や殿下の御前でもあり、レビジュ達にとっても善き指針でありたいですから」
 キリアンは楽器の手入れをしながらぽつり、と呟けば、傍らのイズルとエルもまたこくり、と頷く。
「あまり、得意、って程じゃない、けど……、頑張る」
 エルは手にしたリュートを構え、スタンバイ。指揮として立つカロンの合図を待つばかりだ。
「打合せ通り、最初はレティシア……、こちらのレディの歌に合わせてくれ。子ども達が輪を作り終えたら風をおこそう」
 カロンが蹄を鳴らし注目を向けると、歌い手達と冒険者たちにいう。
 レティシアは注目を浴び、頬を少し赤くしたが、皆楽しみにしていることを感じていた。
「さぁ、始めよう」
 イズルは、仲間たちと頷き合うと合図に合わせ身構えた。

 コン、コココン……と、木で作った楽器が鳴らされる。それに合わせ、白い髪飾りを飾ったちびっこケンタウロスたちと冒険者たちが、レミーラたちが見守る前へ現れる。
 楽器の音色に合わせ、帝国の民たちの間で語り継がれていた曲が奏でられる。王国の曲でもいいよ、とレビジュは言ってくれたが、ケンタウロス達は帝国のものの方が馴染むかもしれない、というカロンのアドバイスもあり選んだものだ。
 レティシアの歌声の合わせ、女性のケンタウロス達が声を発する。
 旋律に合わせ現れた踊り手達は徐々に大きな1つの輪を作る。そして、静かに風のような歌へと自然に変わった。

 歌と楽器の音色に合わせ子ども達と冒険者たちは一緒に踊り始める。
 踊っているうちに、アリアはレビジュと目が合って、二人でくすぐったそうに笑った。
 今回は授業でもあり、ほっこりした気分だから……と、アリアは自分からぐいぐいとはいかず、レビジュや子ども達が楽しんでいる姿に寄り添えれば、と考えていた。
(レビジュ君にエスコートしてもらえたらなぁ、なんて)
 ふとそんなことを考えながらくるり、くるり。回るとレビジュとまた目が合った。こっそりハイタッチすれば、それはそれで楽しくなる。
(思った以上に、楽しいものだな)
 ベルクがくるり、とまわり、隣の子と手を繋ぐ。また、歌に合わせて輪を縮めたり、広げたり……。ふと、隣を見るとレイウェストが普段より年相応の笑みを零しているような気がしていた。それはナタリアも同じで……。
(やはり普段は、色々と気を張っているのかもしれぬな)
 それはそうだろう。現在おそらく唯一の帝位後継者であろうし、何より情勢の移り変わりが激しい。いくら味方として心強いバルディオンや冒険者、自分たちがいたとしても父と母がこの地に齎した事などを鑑みても……。
(少しでも、『楽しむ』事ができるならば)
 祈るような思いでレイウェストを見……、やがて、ベルクとナタリアもまた踊りを楽しもうと微笑んだ。
 これは元々生前葬である。『偉大な大族長』を送るための、儀式である。
 その事を念頭に置きながらも、無邪気な子どもたちの笑い声やはにかむ顔、喜ぶ顔は見る者たちの心を擽っていく。
(殿下も見ている上多くの者も見ている。手抜きも悪ふざけも出来ん。ならば、心から楽しむのが礼儀だろう)
 ナタリアは自然と微笑み、子ども達と共にくるり、と回る。ベルクもまた、同じ思いだろう、わずかに頷いた気がした。
「ふふっ! こういうのもたまにはいいんじゃない?」
 Re:Leeが子ども達に混じり、楽し気な声を上げる。と、パヴェルが「そうだな!」というような柔らかい眼差しで答えた。
 彼は巨躯故に少し身を屈(かが)め、踊りの輪に加わっていた。
(あれ、疲れないかしら? 後でケア出来ないか考えておいた方がいいかも)
 ふとそんなことを考えたRe:Leeは、歌に合わせて踊りながらフリューと目が合う。お互い軽く手を振り、笑い合って楽しい気持ちを分かち合った。
(心が軽やかになる、いい歌さぁ~♪)
 彼女が気持ちよく踊っていると、まだ踊りに慣れていないだろうハーフリングの子を見つけた。緊張もあるのか、おどおどしているようだった。
「ちょっと行ってくる」
「! わかった。そっち頼んだわよ」
 何かに気付いたのだろう、Re:Leeはそれとなくフリューと位置を交換する。
「だいじょうぶ。踊りに一番大事なのは楽しむ心さぁ♪」
 一緒に踊ろう、と手を差し伸べればその子はおずおずと頷き、フリューと一緒に踊りだした。

 大人のケンタウロス達が歌う、ハミングとスキャットだけの『雪の歌』に合わせバイオリンやヴィオラなどの楽器が繊細な流れを生み出す。そこに重なる声が、旋律の中に柔らかさを与える。
 イズルはその曲の中に母親の腕(かいな)を、エルはあたたかな眼差しを覚え、キリアンはふと、凛とした姉の姿を脳裏に思い描いた。そして、レティシアは、ちらり、とレミーラを見た。
(ケンタウロスの皆様は、おそらくレミーラ様を慕っているのでしょう。視線やほかの競技に挑む姿から、犇々(ひしひし)と伝わります)
 そして、この『雪の歌』からも偉大な人を称えると同時に、見守ってくれたことへの感謝が込められている、とレティシアには感じられた。
 キリアンも同じことを感じ、そっと瞳を細め……脳裏に浮かんだ言葉を胸に刻む。
(調和……。なぜでしょう、ものすごく、しっくりきますね)
 種族も立場も違う自分たちが手を貸し、
 歌に合わせ、子ども達と冒険者たちがのびのび踊る姿を見ながら、イズルはふと思う。その中にレビジュとレイウェストを見つけ、すれ違いながらも笑い合う2人に
(二人とも、確か同年代だから友達になれたら……)
 と身分的に、そして、事情的に難しい理想が頭に浮かぶ。
 それに、とイズルの脳裏にレビジュの過去が過った。それもあり、レビジュ自身が一歩下がるかもしれない、という事が予想できてしまった。
 リュートを奏でながら、エルは久々に弾いたわりに上手くいっているように思えた。笑顔が溢れる踊りの輪。それをにこにこと笑顔で見るめる者たち。その中にはもちろんレミーラの温かな眼差しもあって……。
 リュートの旋律が、より優しい物になる。慣れてきたので、踊りの邪魔にならない程度にアレンジを加えたのだ。それに合わせ、イズルのヴィオラとセディのバイオリンもそれに寄り添う。キリアンが奏でる管楽器の音色がそこに合わさった。
 そして、転調する。
 帝国方面で歌われることが多いわらべ歌のメロディーを、レティシアは歌い上げる。ソロに合わせ、子ども達が手拍子。そして、跳ね回る赤毛の乙女。フリューだ。
(体がのびのびする! 普段より軽やかさぁ!)
 大人たちが「踊ってほしい」と手を伸ばし、フリューは誘われるがまま輪の中心に飛び出す。羽のような軽やかな動きを見せれば周りからたくさんの拍手が聞こえてくる。レティシアのソロが終わると、ケンタウロス達の歌声が戻ってくる。二人が一礼し、フリューが踊りの輪に戻ると子ども達の間からも尊敬の念がにじみ出る。
(なんだか、喜んでもらったのはわかるけど、擽ったい……)
 フリューは、ほんのり赤くなった頬をそのままに、軽やかに踊り続けた。

 音楽に合わせ、踊る、踊る。
 無邪気な子ども達の笑みと、寄り添うような冒険者たちの笑顔。
 レイウェストは、様々な立場の人々と踊りながら考える。
 レビジュをはじめとする罪人(元メドゥの指先構成員)の子ども達、色々とあったケンタウロス達の子ども達。そして、様々な考えを持つ冒険者たち。帝国が崩壊したばかりの頃は、余裕もなく、民のために我武者羅に進む日々だった、と振り返りながら。
(あの頃は、このような事になるなんて全く予想できなかった)
 これも、自分だけでなく冒険者たちと共に動いてきた結果なのだろう、とわずかに瞳を細めて。
 温かな思いに満ちた踊りの中で、彼もまた為政者としてどのようにするべきか、思うところがあるのかもしれない。
 ふと、レイウェストはベルクやナタリアが優しい眼差しを向けていることに気付いた。それは、ほかの冒険者やレビジュも同じで。
 彼が静かに頷き、レミーラを仰ぎ見みれば……、彼女は穏やかな笑みで頷き返したような気がした。

 そして静かに、踊りは終わる。
 暫くの間の後……当たりは温かな拍手の音に包まれた。

●歌と踊りは何を結び、繋ぐのか
 たくさんの拍手が鳴り響く。
 少し離れた場所で、彼もまた、自然と拍手をしていた。
(素晴らしい、踊りと歌だった。レミーラ殿も、いい顔をされているように思う)
 男は自然と微笑み、しばし立ち尽くす。

「ねぇ、そこにいるのは誰? お菓子もってきたよ!」
 ふいに声がして振り返る。と、そこにはエルフの乙女がいた。男は彼女を知っており、僅かに息をのむ。
〈あの時の、一人か〉
「もしかして、スタウトさん?」
 エルフの乙女……アリアの問いに、ケンタウロスの男……スタウトは静かに頷く。彼は腰に下げた短杖に手をかけず『攻撃の意思はない』ことを示した。
〈……どの集落の者と親しいかはわからぬ。だが、内密に頼む。私は、敵対者なのだから〉
「うん。そっちにも事情があるみたいだからね」
 アリアは頷くとお菓子をそっと彼に手渡し小さく手を振って戻っていった。
(物わかりのいい、娘だったな)
 スタウトは一礼すると、そのままどこかへと去っていった。

「おかえり」
 アリアが戻ると、ちょうどパヴェルがちびっこケンタウロスたちに七色チョコレートやチョコレートビスケットを与えていた。
 ちびっこケンタウロスたち曰く『特別なお菓子』だそうで、とても喜んでいた。
 そして、アリアが用意したお菓子も一緒に踊った子ども達と一緒に食べている。平和な光景がそこに広がっていた。
 そうして種は違えど子ども同士仲良く遊んだりお菓子を食べる姿を観察しながら何かつかめないか考えるパヴェル。だが、子ども達はそんな彼に「もっとあそぼう?」というように懐いていた。
「! ははっ、よし、時間が許す限り遊ぼう!」
 パヴェルの言葉に、何にもの子どもたちが集まる。その様子をレイウェストとナタリア、キリアン、ベルクは穏やかに見つめていた。
「みんな、ありがとうな。レミーラ殿も、喜んでくれているみたいだ。俺はそう思うね」
 カロンがそういっていると、レミーラが自分たちの方に手を振ってくれているのが見えた。そのことにケンタウロス達が安堵と喜びの表情を浮かべるのを見ていると、頑張った甲斐があった、とエルもにっこり微笑む。
(喜んでくれた)
 エルもまた照れ……そっと胸を押さえる。嬉しくて、胸の奥が暖かい物で満たされているような心地がする。
「そうか……」
 レイウェストが静かに呟き、ゆっくり頷く。その横顔が自然と優しい微笑みを浮かべていることに、3人もまた微笑んだ。
(もしかしたら、殿下の気分転換にもなったかもしれないな)
(だとしたら、嬉しいことだ。相変わらず忙しそうであったから)
 ナタリアとベルクがレイウェストの様子から安堵していると、キリアンもまた同じ思いなのか、静かに微笑んだ。
 ケンタウロスの大人たちが、演奏に加わった者達のもとに集まり感謝の意を表す。カロンが翻訳すると、レティシア達は照れてしまう。
(あの曲を譜面に起こしたら、ケンタウロスの皆様にも素晴らしい文化はあるのだと、他国の皆様に伝える切欠の一つとなるかもしれません。それに、あのままでも素敵ですが、カロス様経由で歌の由来や込められた想いをケンタウロスの皆様に伺って、共に歌詞を考えるのもいいかもしれません)
 レティシアは色々と考えながらカロンを経由してケンタウロス達と交流するのだった。

 少し離れたところにいたイズルは、子ども達の世話をしていたレビジュをそっと呼び寄せた。
「なぁ、そういえばラルジャンから返事来たか?」
 と、ユールフェスのカードの事を問いかけた。
「来たよ。……ラルジャンが、僕を気にかけてくれていたのは、ホントみたい、だね」
 レビジュはちょっとだけ微笑んでそっと教えてくれた。複雑な心境はぬぐい切れないようだが、少しは警戒が薄れている気がする。
 そんな様子にちょっとイズルが安堵していると、ひょっこりとRe:Leeが二人の傍に現れる。そしてレビジュを見上げくいくいと肘で突っついてくる。
「ちょっとレビジュ~、あんた私より背が高いなんて生意気ね。身長が縮む薬とか作れないの?」
「いや、それレベルになると薬草とかじゃどうにもならない気がする」
 レビジュが苦笑し、イズルが「まあまあ」と窘めていると、楽し気な声が聞こえてくる。パヴェルだけでなくフリューが様々な種の子ども達と遊んでいた。
 3人の視線に気づいたのだろう。パヴェルが手を振る。そしてフリューが手招きした。
「楽しいさぁ~! レビジュさんもイズルさんもRe:Leeさんもおいでさぁ~!」
「うん! 二人ともいこっ!」
 その声に誘われ、レビジュが駆け出す。
「えっ?! ちょっと待ってよ!」
「ははっ、相変わらずすばしっこいな」
 Re:Leeがちょっと慌て、イズルは苦笑交じりに走り出す。「仕方ないわねぇ~」なんて言いながらもRe:Leeも釣られて走り出した。

「こんな風に、楽しく子ども達が遊べる国にしたいものだな」
 無邪気に遊ぶ子ども達や、ケンタウロスと交流する冒険者たちを見て、レイウェストが呟く。
「そのために、努力しましょう。し続けましょう」
「我々も、そのためにこの力を……」
 傍に控えていたキリアンとベルクが頷き、思いを確かにする。そして、ナタリアもまたいい笑顔で頷いた。
「殿下、お供します」
 風に乗ってレイウェストを呼ぶ子ども達の声がする。駆けつけ、窘めようとしたセディを止め、皇子は子ども達へと駆け出す。今だけは、少しだけは、いいかもしれない、とナタリア達はレイウェストを追いかけたのだった。

(終)

マスターコメント

おまたせしましました。 皆さんの提案などのお陰で、大成功です。 ケンタウロス達も皆さんのおかげでいい踊りと演奏ができたと喜んでおります。もしかしたら、カロン達とはより仲良くなれたのかもしれません。 今回はこのあたりで。 また縁がありましたら宜しくお願いします。
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準10 / 5〜25人

2023年02月21日 11時32分57秒 公開

大成功

相談掲示板

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0