【初夢】動物たちの、仁義なき戦い。
蓮華・水無月
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シナリオID:2736
オープニング
さてその日、カリンは縄張りの見回りを終えて、意気揚々と家に帰る所だった。
(今日も平和だったなー)
カリンは、シルキンス村に住む3歳になったばかりの雄猫である。3歳、というのが何なのかちょっとよく解らないが、先日おねーちゃんがそう言っていたので、とにかく3歳というものになったらしい。
ゆえに何となく強くなった気分で、ふんふんと機嫌よく歩くカリンの首元では、お気に入りのリボンが揺れる。――が、あともう少しで家だという所で、ふとカリンは足を止めた。
(――なんだろ?)
何か聞こえたような、ときょろきょろ辺りを見回してみると、畑の向こうで誰かが喧嘩しているような音が聞こえる。む、とひげをピンと立てて目を凝らすと、そこに居たのは近所の猫達だ。
何しろ狭い村のこと、餌を取った取られたに始まって、おもちゃの取り合いであったり、恋の季節に皆のアイドルを巡って熾烈な戦いを繰り広げたり、というのはままある事だ。けれどもどうも、そういうものとはちょっと様子が違う。
様子を見に行こうと足を向けかけたカリンの耳に、近所の猫達の叫び声が聞こえた。
『このウサギは俺らが見つけたんだぞ!』
『そうだそうだ、横取りすんな!』
『知らんね、早いもん勝ちだろ』
それに対する野太い声は、いつも腰の低い人間の家にいつも居る真っ黒な犬のものだ。額に白い星のような模様があるから星毛、と人間達から呼ばれている、やたら偉そうな犬である。
フゥッ、とカリンの背中の毛が逆立った。何しろあいつと来たら、村の猫達を理由もなく追っかけまわして噛みついたり、他の犬や猫が見つけたり人間から貰ったりした食べ物を横取りしたり、悪さばっかりするのだ。
これは助っ人に行かねばなるまいと、ゆえにカリンはまっしぐらに走り出す。たとえ多勢に無勢にも、雄猫には引けない戦いがあるのだった。
※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。
(今日も平和だったなー)
カリンは、シルキンス村に住む3歳になったばかりの雄猫である。3歳、というのが何なのかちょっとよく解らないが、先日おねーちゃんがそう言っていたので、とにかく3歳というものになったらしい。
ゆえに何となく強くなった気分で、ふんふんと機嫌よく歩くカリンの首元では、お気に入りのリボンが揺れる。――が、あともう少しで家だという所で、ふとカリンは足を止めた。
(――なんだろ?)
何か聞こえたような、ときょろきょろ辺りを見回してみると、畑の向こうで誰かが喧嘩しているような音が聞こえる。む、とひげをピンと立てて目を凝らすと、そこに居たのは近所の猫達だ。
何しろ狭い村のこと、餌を取った取られたに始まって、おもちゃの取り合いであったり、恋の季節に皆のアイドルを巡って熾烈な戦いを繰り広げたり、というのはままある事だ。けれどもどうも、そういうものとはちょっと様子が違う。
様子を見に行こうと足を向けかけたカリンの耳に、近所の猫達の叫び声が聞こえた。
『このウサギは俺らが見つけたんだぞ!』
『そうだそうだ、横取りすんな!』
『知らんね、早いもん勝ちだろ』
それに対する野太い声は、いつも腰の低い人間の家にいつも居る真っ黒な犬のものだ。額に白い星のような模様があるから星毛、と人間達から呼ばれている、やたら偉そうな犬である。
フゥッ、とカリンの背中の毛が逆立った。何しろあいつと来たら、村の猫達を理由もなく追っかけまわして噛みついたり、他の犬や猫が見つけたり人間から貰ったりした食べ物を横取りしたり、悪さばっかりするのだ。
これは助っ人に行かねばなるまいと、ゆえにカリンはまっしぐらに走り出す。たとえ多勢に無勢にも、雄猫には引けない戦いがあるのだった。
※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。
解説
◎目的
『星毛』をやっつける。
皆さんは、偶然にもたまたま喧嘩の現場に居合わせた動物です。
動物ですったら動物です。
カリン達と協力して、黒犬『星毛』を懲らしめてやってください。
◎具体的には?
『星毛』は気性の荒い犬ですので、興奮している間は自分以外の動物をとにかく噛みついたり、前足で攻撃したり、後ろ足で蹴り飛ばしたりします。
こういう性格なので残念ながら、村の他の動物にはあまり好かれていないようです。
そのため、途中で増援が来ることはないでしょう。
騒ぎを聞きつけた他の暇な犬達が、面白がって参戦してくることはあります。
◎つまり何をする依頼なの?
お好きな動物に成り切ったり、ご自身のペットに成り切ったりして、動物達の戦いに参加するシナリオです。
深い事は考えたら負け。
なお、戦ってる動物達を遠目に見ながら飼い主とのんびり過ごしても構いません。
高みの見物も楽しいですよね。
なお、本依頼は動物に成りきる依頼のため、飼い主は描写が薄くなる傾向にあります。
悪しからずご了承ください。
◎戦うって?
動物ですので、武器や防具はないものとお考え下さい。
武器や防具に拠らないスキルはご使用頂けますが、何となく動物っぽい感じになります。
お任せ頂いても、プレイングで指定頂いていも大丈夫です。
多分ヒールは舐めて治してあげるとか、そんな感じになります。
◎登場NPC
カリン……
茶トラの好奇心旺盛な3歳の雄猫。
首に巻いた赤いリボンがトレードマーク。
人懐こく、人が多い場所を好む。
大好物は甘い果物。
『星毛』……
全身黒の、額の白い星模様がトレードマークの、村長さんちの雄犬。
母親は猟犬だったらしいが、特に本犬は猟犬ではない。
本名は『プレト』だが呼ぶ人はほとんど居ない。
ぼっち。
マスターより
あけましておめでとうございます。
いつもお世話になっております、または初めまして、蓮華・水無月と申します。
折角の初夢シーズンですので、蓮華もこんなシナリオでお邪魔させて頂きます。
日頃皆さまがお連れのペットになり切って遊べたら楽しいんじゃないか、そう考えていたらいつの間にか戦闘(?)シナリオになりました。
おかしい、こんなはずじゃなかったのに……
とはいえ折角なので、動物さんになり切って楽しんで頂けたら幸いです。
夢ですからね、夢。
そんなこんなでとある猫のお困りごと(?)、お気が向かれましたらどうぞお気軽に、お助け頂けますようよろしくお願い致します。
リプレイ
何しろ相手はあの悪名高き『星毛』である。村1番の乱暴者にして村中の動物たちの嫌われ者、その『星毛』にどうやらついに一矢報いるチャンスがやって来たとなれば、日頃は温厚な動物だって参戦しようという気になるものだ。
ゆえに、
『星毛にはいつも追い回されてるから、仕返しするチャンスです!』
黒猫トーラもまた小さな体を元気いっぱいに弾ませて、騒ぎの場へと駆け付けた。とはいえそのまま突っ込んでいくようなことはしない――もちろんトーラだって戦うことは出来るが、それよりは走ったり、ジャンプしたり、壁や木に爪を立てて登る方が得意なのである。
だからまずは、あえて『星毛』の目を引くようにタタタタタッと走り回る。いつも雌猫だろうと容赦なく追いかけ回してくる『星毛』は、案の定トーラの姿に『生意気なチビめ!』と鼻息荒く唸りを上げた。
その鼻先を掠めるように走り抜け、木に爪を立てて一気に登ったトーラはだが、そこで先客に出会って足を止める。ふんふん、と警戒するようにヒゲと鼻をピクピクさせた、トーラに先客の鼬、テテリカは軽く尻尾を振って敵ではないと合図した。
『むしろ貴方達の味方だ。俺もあの星毛には、餌を横取りされた恨みがあるんだ』
なあベニテング、と振り返った先では相棒の大鼬が、テテリカと同じように尻尾を振って頷いている。鼻先にしわが寄っている所を見ると、こちらも『星毛』の所業は腹に据えかねているようだ。
野生の2匹は、日頃はトーラのような村の動物達とは互いの平穏のためにある程度、距離を置いて過ごしていた。だというのにあの『星毛』ときたら、遠慮なく森までやって来てテテリカ達の餌まで奪っていくのである――『星毛』、実にろくなことをしていない。
そんな3匹の頭上から、加勢するぜ、と誰かの鳴き声が聞こえた。ひょい、と見上げればそこに居たのは1匹の野生のリスである。
ヴァン・ローラントという人間と少しばかり縁があるようだが、今は関係のない話。名無しのリスは3匹の視線を受けて、ブラシのような尻尾をワシワシ毛繕いしながら、ひょいと器用に肩を竦めた。
『騒がしくておちおち寝てられないからな』
『よし! では皆さんで協力して星毛を追い詰めましょう!』
『良い退屈しのぎだ、なぁベニテング?』
種族は違えど、打倒『星毛』の思いは同じ。ゆえに頷き合った4匹が作戦を立てる間にも、樹の下では騒ぎを聞きつけた動物達が、村の内外問わず集まりつつあった。
レピド・クロサイトの世話係ショウガも、そのうちの1匹である。こう見えて酸いも甘いも噛み分けたショウガにとって、『星毛』のヤンチャも被害に遭わなければ騒ぎ立てるほどではない。
――が。
『星毛の奴まーたやってんのか、どれ1回灸を据えてやるかね』
程度が過ぎればさすがに目に余る。ここらで1度おいたを懲らしめてやらねばなるまいと、足音を忍ばせて混戦の中を『星毛』まで近寄った。
そうしてまずは一発、強烈な猫パンチで横っ面を張り飛ばし、その勢いのまま体当たり。はっ、と気付いた『星毛』が歯を剥き出しにして唸る。
『生意気だぞショウガ!』
『は! 猫舐めんにゃよ!』
罵りながら噛みついてきた『星毛』を軽くいなし、鼻先を引っ掻いてやったショウガに『星毛』が、ガバッと後ろ足で立ち上がって襲い掛かった。これも交わして見せると目を細めるショウガの前で、だが『星毛』が横に吹っ飛ぶ。
は、と目を瞬かせたショウガの前で、『星毛』を吹っ飛ばした犯人がぴょんぴょんと楽しげに飛び跳ねた。
『うーちもいーれーてー!』
そこに居たのはご機嫌満点、実に楽しげに飛び跳ねる狸のフリューリングスルフト=ティエラである。タックルしたのも攻撃したというより、純粋に遊んで欲しかったからだ。
何しろ実に良い気分で『ぽんぽん~ぽんぽこり~ん♪』と歌っていたら、沢山の動物達が楽しげに遊んでいる所に出くわしたフリューである。これはもう全力で遊んでもらうしかないと、文字通り全力で頭突きからのタックルをかましたのだった。
ほけけ、と笑いながらフリューが実に楽しげに、ぽーんと宙返りで飛び跳ねつつ『星毛』の顔面に尻尾でバフンと一撃を食らわせる。もちろん『星毛』もやられているばかりではない、前足で身体を支えて鋭い後ろ足キックを繰り出した。
『当たらん、当たらん、当たらんなぁ~』
『おっと、ラケルの相手もして欲しい』
そんな乱戦の中で、『星毛』を懲らしめるというよりはむしろ、力比べをするかのように戦うポメラニアンが1匹。奇遇にも『星毛』と同じ黒毛の、首に濃紺と金のリボンに勿忘草のチャームをつけた、ラケルである。
『星毛』が『邪魔だ!』とラケルに怒鳴ったが、当の黒ポメは気にしない。彼女の今の目標はなんとなれば、『星毛』と仲良くなることだったので。
『星毛』が村中の嫌われ者で、暴れん坊のぼっちだという事は、ラケルも委細承知している。――が、その上でもしかしたら『星毛』は、そうやって嫌われてボッチだから余計に手の付けられない暴れん坊になっているのでは? と思ったのだ。
ならどうすれば良い? よし、仲良くなってみよう。
そんな単純明快な思考と結論により、今日のラケルは意図して徹底的に、『星毛』と共に行動してみる事にしたのだった――もちろん罪なき動物を一方的に苛めはしないけれど。
『星毛、暴れるなら一緒に暴れよう。ぼっちよりずっと楽しい』
『――ふん! 勝手にしろ!』
ラケルの申し出に、帰ってきた答えはそっけない。けれども拒絶ではないからラケルは、やっぱりと思いながら駆け回り、『星毛』を助けたり、逆に『星毛』にガチンコバトルを挑んだりする。
けれども、集まっているのは戦いに身を投じる動物ばかりではない。引っ掛かれたり噛みつかれたり蹴られたり、傷ついた動物達をエデル=マグノリアとフェミナ・ノ・リビディーネの柴犬コンビは、一生懸命走り回っては、ぺろぺろ舐めて癒して回る。
『怪我した方はこちらへ。今、治すわ』
『痛いの痛いの飛んでいけ~』
ピンクブラウンの毛並み美しいエデルと、少し銀の混じった白毛のフェミナの周りには、そうして癒された動物達が敵味方問わず集まって、大人しく舐められ、肉球でぽむぽむと撫でて貰っていた。中には擦り傷だけでもやって来て癒してもらおうとする雄犬達も居るが、もちろん分け隔てはしない。
ぺろぺろ、ぽむぽむ。そこに怪我動物が居る限り、彼女たちの癒し活動は終わることがない。
(――え、これどういう状況?)
その2匹と一緒に動物達を癒して回りながら、けれどもアラン・スミシーは内心で首を傾げた。なぜだか、自分が狐の姿になっている気がする。
否、アランは狐なのだから、狐の姿をしているのは当たり前だ。なのになぜ、それに違和感を感じるのか。
ちょっとよく解らなかったが、まあ良いか、と考えるのを放棄した。まずは怪我を治してあげないと、と尻尾を怪我の上にふぁさり、ふぁさりと揺らしてヒールを掛けていく――なんで美犬じゃないんだ、と嫌な顔をした若犬にはちょっと念入りにパサパサと。
それはそれとして『星毛』だよねぇ、と悩ましい眼差しを向けるアランである。四方八方敵だらけ、と言っても過言ではないこの状況で、それでも暴れるあの乱暴者を、はてさてどうしたものか。
(まあ、乱暴は良くないよねぇ)
そのためにも皆には頑張ってもらわないと、と一生懸命応援するアランの声援を受け、樹の上からトーラがぴょんと飛び降りた。『星毛』の背中に飛び降りて思い切り爪を突き立て、バリバリバリッ! と引っ掻いてやる。
ギャンッ! と悲鳴を上げた『星毛』に、ラケルがチョンと鼻をくっつけヒールを掛けた。あまりやらないからうまく行くか不安だったけど、うまく行ったようで『星毛』の悲鳴がすぐに止む。
けれども樹上からの不意打ちは、それだけでは終わらなかった。
『お次は俺だぞ、っと!』
続けざまに降って来た名無しリスが、『星毛』の背中の上を走り回ったり、ぴょんぴょんと飛び回って集中力を乱そうとする。さらにはテテリカが、あちこちの枝を走り回りながらドングリや落ち葉、小枝をどんどん落とし始めた《魔矢で攻撃》。
その間にも別の樹上では、連携したベニテングがテテリカ達に攻撃がないか、さらなる増援が来ないかを警戒している。味方が増えるのは大歓迎だが、万が一にも『星毛』の増援が来たら大変だ。
文字通りのお祭り騒ぎ、大乱闘。となればその中で遊ぶフリューのテンションも、ぶっちりぎの最高潮。
『たぬりゅーあたーっく!』
『ちょ、邪魔……!』
『うちともっとあーそーんーでー!!』
心底楽しげに周りの動物達をも踏み台にして飛び上がり、ドーン! と『星毛』にアタックしては距離を取る。そうしては『ほけほけ~』と楽しげに笑うのだから、『星毛』の苛立ちも最高潮。
ラケルという(本犬にとっては)意外な味方が居たとはいえ、ここまでやられっぱなしの孤軍奮闘を続けていた『星毛』も、ただ暴れるだけで村一番の乱暴者と呼ばれるようになったわけではない。ここは1度この場を離れて体勢を立て直すべきだ、と考えた『星毛』は、ぶんっ! と大きく身を震わせて背中に幾度も張り付いてくるテテリカや名無しリスを振り落とし、ついでに大きく飛び跳ねて周囲の動物達を追い払うと、更に村外れに向かって走り出した。
あ、とラケルがその後を追いかける。一方でトーラは『星毛』をどこかに追い詰められないか、仲間達を振り返った。
そうだな、と兄貴オーラを漂わせたショウガが、少し考えて提案する。
『あっちはすぐに川にぶつかる。川沿いに左右から追い詰めるか』
『うーん、ならおじさんが抜け道を教えようか』
村の動物は知らない川までの抜け道があるらしく、アランがそう耳をぴくぴくさせた。こっち、と走り出したアランの後ろについて走り出した、動物達の最後尾を共に走りながら、フェミナはけれども心配顔。
敵も味方もなく全ての動物を癒そうとする、フェミナにとっては『星毛』もまた癒しの対象である。そんなフェミナすらも『星毛』は隙あらば襲ったりするのだが、それはそれ。
お怪我が酷くなければ良いのですけどと、憂い顔のフェミナの顔を、首元の白いハンカチを揺らしながら走るエデルが、慰めるようにぺろりと舐める。エデルもまた同じように、『星毛』の怪我を案じていた。
●
さてその頃、川べりについた『星毛』とラケルは並んで水を飲み、一息入れていた。ちらちらと物言いたげな、否、いっそ不審そうな『星毛』の眼差しを受け、きょと、とラケルは小首を傾げる。
『なに?』
『なんで俺についてくる』
そうして尋ねたラケルに、尋ねられた『星毛』がそう返してきた。なんで、と言われても一緒に行動してみると決めたから、なのだがそういえば『星毛』にはそのことを言っていない。
ゆえにラケルはそれを伝えつつ、先も乱戦の中で告げた言葉を繰り返す。
『だから星毛、今日はラケルと一緒に遊ぼう』
『――フン』
そんなラケルにそっけなくそっぽを向いた、『星毛』の耳がピクリと動いた。ラケルも耳を澄ませると、カサカサと草の動く音がする――風の音とはまた違うそれ。
そして。
『あーそーんーでー!!』
草むらからフリューが激突してきた。文字通りの全力体当たり、とにもかくにも構って欲しい一審のタックルを、紙一重で避けた『星毛』にむしろフリューは嬉しそう。
そんなフリューに噛みつこうと、大きく口を開けた『星毛』にさすがにそれはダメと、ラケルも別方向から体当たりする。友達たるもの、友達がダメなことをしたら止めるものだ。
辺りにトーラの鳴き声が響いた。
『さあみんな、今です! 一気に畳みかけますよ!』
そう言いながらトーラ自身も、黒い弾丸のように飛び出し一気に『星毛』に肉薄する。それを援護するように飛んでくるドングリは、ショウガの背中に乗ってついてきた名無しリスの投げるもの。
攻撃力こそないがひたすらに鬱陶しいドングリの礫が、縦横無尽に走り回ろうとする『星毛』の足止めをする。ちなみに踏んだら地味に痛いし滑る、だって肉球だからね。
『ベニテング! 回り込め!』
テテリカも相棒と協力して、両側から松ぼっくりやクルミの殻、小枝などを拾っては投げつけた。これまた、当たっても痛くはないがひたすらに鬱陶しい。
そんなみんなの支援を受けて、トーラはバリバリバリッと『星毛』の顔面を引っ掻いた。痛い、これは痛い。
ギャウン、とさすがの『星毛』も悲鳴を上げて鼻面を抑え、飛び上がる。けれどもその瞳は闘志を失っていない、どころか怒りに満ちた目でトーラを睨み付けていて。
噛み殺さんばかりに歯を剥き出し、飛び掛かった『星毛』を間一髪、トーラは避けた。ダンッ、と素早く体を反転させた『星毛』の前には、けれどもするりと立ちはだかったショウガが居る。
狙うのは、荒くれ者のプライドをこれ以上なく叩き折ること。既に動物達に良いように翻弄され、散々にやり込められつつある『星毛』のプライドと闘志を、完膚なきまでに叩きのめす。
ゆえにショウガもまた、あえて自身に狙いを定めさせた。なるほど『星毛』は体も大きく力も強いが、反応速度や回避はショウガの方が上だ。
だから。
『そろそろオイタは終わりだぞ、ッと!』
飛び掛かってきた『星毛』をひらりと避けて、その頭の上に両後ろ足で手痛いキックを叩き込んでみせる。ギャウン! と一際大きな悲鳴が上がって。
ついに『星毛』はその場に転がって、降参の意を示したのだった。
●
プラト様、と両脇を挟んだエデルとフェミナに優しげな、けれどもぴぃんと筋のしっかり通った鳴き声で呼ばれて、『星毛』は決まり悪そうにそっぽを向いた。けれども、どちらを向いてもエデルかフェミナ、どちらかの顔が見えるのでやっぱり決まりが悪そうだ。
その、一見すれば不貞腐れたようにも見える『星毛』の毛繕いをし、肉球を押し付けて見える傷も見えない傷も癒してやりながら、フェミナはもう1度名を呼んだ。
『プラト様が強いのは事実ですけど、どんなに強くても力を合わせられたらかなわないでしょう?』
『……』
『せっかく強いのですから皆を守るようにその力を使えば、仲間はずれにされることもなくなるのですよ?』
フェミナが言葉を重ねても、『星毛』は言葉を返さない。否、少しばかり耳がせわしなく動いているから、多分、どうしたものか困っている。
困っちゃうのですね、とエデルは大きな子どもを見るような眼差しになった。何しろ『星毛』はずっと昔からこんな調子だったから、もしかしたら本当にどうしたら良いのか解らないのかも知れない。
桜の瞳に慈愛を浮かべ、ゆえにエデルは言い諭す。
『プラト様。暴れたりいじめたり、悪いことはしてはダメよ? でないと、貴方は今以上にひとりぼっちになってしまうわ』
エデルの言葉に『星毛』は何も言わず、けれどもぺたりと両耳が伏せたから、きっと言いたい事は伝わった。ゆえに癒すのではなく励ますために、エデルは軽く頭をこすりつける。
ほらほら、とフェミナが明るく鳴き声を上げた。
『戻って皆でウサギを食べましょう。プラト様も食べたかったのでしょう? ちゃんと謝れば、プラト様の分もありますよ?』
『そうですね。素直になれば、許してあげない事もないですよ?』
いくら暴れん坊とはいえ同じ村の仲間なのだからと、告げるフェミナの言葉にトーラがこくこくと頷く。トーラとて何も、『星毛』を村の爪弾きにしたい訳ではないのだ――もちろんちゃんと謝るならだけれど。
そんな2匹の、そして周囲で見守る他の動物達の視線を一身に受けて、『星毛』はしばし沈黙した。沈黙して――そして。
『――申し訳なかった』
『俺こそ、腹に据えかねたとはいえ卑怯な真似をした。許してくれるか?』
絞り出すように、けれども存外滑らかにその言葉を口にした、『星毛』にほっと安堵しながらテテリカも自身の非を詫びる。安全圏から一方的に攻撃をするのは、幾ら彼我の力の差があれども卑怯だと感じていた。
一方でフリューはと言えば、喧嘩が終わって少しばかり残念そうな顔をしながらも、これからはもっと遊べそうだとの楽しそう。その気持ちにどこまでも素直に、ぽんぽこぽーん、とご機嫌に飛び跳ねる。
『また遊びに来るさぁ! 次はもっと楽しく遊ぶさぁ』
『ふ……その時はラケルと星毛、フリューで誰が強いか勝負』
肉球と肉球で語り合うのがダチのはじまりだろうと、ラケルが割って入って大真面目に主張した。実のところ、ラケルと『星毛』では親子ほどの大きさの差があるのだが、気の強さはもしかしたらラケルの方が上かも知れない。
その時は負けないと、『星毛』が歯を剥き出しにして唸る。だが少しも怖くはないと、胸を張るラケルにすぐに肩を落として、変な奴だとため息を吐いた――ほら、やっぱり怖くない。
とまれ、暴れたらお腹がすいた。ウサギを食べに戻ろうと、ぞろぞろと歩き始めた動物達をよそに、先ほどまで投げていたドングリを食べ始めた名無しリスに『またね』と声を掛けてから、アランは少し遅れて歩く『星毛』に駆け寄る。
――ちょっと、気になっていた事があった。
『どうしてあんな、乱暴をして回ってたの?』
『……母さんが、認められたければ強くなれと言った』
アランの言葉に『星毛』がぶっきらぼうに、だから強くなったのだと主張する。――あれ、何かお母さんの教えを深く考えないまま、素直に守っちゃった感じ?
えぇー、と困惑するアランである。おいおいおい、とそれを小耳に挟んでしまったショウガが、全力で兄貴風を吹かせてきた。
『お前も世話が焼ける系か。仕方ないな、俺が面倒見てやるよ、レピドの次だけどな』
『えっ、レピド君?』
『なんだ、お前もレピドを知ってんのか? レピドはなんか危なっかしいからな、俺が面倒見てやってるんだ』
そこに出て来た何だか知っている名前に思わず驚いた、アランにショウガがドヤ顔でそう尻尾を振り、誇らしげにひげをぴくぴくさせる。あれ、そう言えばショウガくんも知ってる気がするぞ?
うーん? と首を傾げたものの、まあ夢なんだろうな、とアランは自分の中で結論付ける。そうしてふさりと尻尾を大きく振って、『おおーい、おじさんの分もウサギ残しといてくれよー』と駆け出したのだった。
ゆえに、
『星毛にはいつも追い回されてるから、仕返しするチャンスです!』
黒猫トーラもまた小さな体を元気いっぱいに弾ませて、騒ぎの場へと駆け付けた。とはいえそのまま突っ込んでいくようなことはしない――もちろんトーラだって戦うことは出来るが、それよりは走ったり、ジャンプしたり、壁や木に爪を立てて登る方が得意なのである。
だからまずは、あえて『星毛』の目を引くようにタタタタタッと走り回る。いつも雌猫だろうと容赦なく追いかけ回してくる『星毛』は、案の定トーラの姿に『生意気なチビめ!』と鼻息荒く唸りを上げた。
その鼻先を掠めるように走り抜け、木に爪を立てて一気に登ったトーラはだが、そこで先客に出会って足を止める。ふんふん、と警戒するようにヒゲと鼻をピクピクさせた、トーラに先客の鼬、テテリカは軽く尻尾を振って敵ではないと合図した。
『むしろ貴方達の味方だ。俺もあの星毛には、餌を横取りされた恨みがあるんだ』
なあベニテング、と振り返った先では相棒の大鼬が、テテリカと同じように尻尾を振って頷いている。鼻先にしわが寄っている所を見ると、こちらも『星毛』の所業は腹に据えかねているようだ。
野生の2匹は、日頃はトーラのような村の動物達とは互いの平穏のためにある程度、距離を置いて過ごしていた。だというのにあの『星毛』ときたら、遠慮なく森までやって来てテテリカ達の餌まで奪っていくのである――『星毛』、実にろくなことをしていない。
そんな3匹の頭上から、加勢するぜ、と誰かの鳴き声が聞こえた。ひょい、と見上げればそこに居たのは1匹の野生のリスである。
ヴァン・ローラントという人間と少しばかり縁があるようだが、今は関係のない話。名無しのリスは3匹の視線を受けて、ブラシのような尻尾をワシワシ毛繕いしながら、ひょいと器用に肩を竦めた。
『騒がしくておちおち寝てられないからな』
『よし! では皆さんで協力して星毛を追い詰めましょう!』
『良い退屈しのぎだ、なぁベニテング?』
種族は違えど、打倒『星毛』の思いは同じ。ゆえに頷き合った4匹が作戦を立てる間にも、樹の下では騒ぎを聞きつけた動物達が、村の内外問わず集まりつつあった。
レピド・クロサイトの世話係ショウガも、そのうちの1匹である。こう見えて酸いも甘いも噛み分けたショウガにとって、『星毛』のヤンチャも被害に遭わなければ騒ぎ立てるほどではない。
――が。
『星毛の奴まーたやってんのか、どれ1回灸を据えてやるかね』
程度が過ぎればさすがに目に余る。ここらで1度おいたを懲らしめてやらねばなるまいと、足音を忍ばせて混戦の中を『星毛』まで近寄った。
そうしてまずは一発、強烈な猫パンチで横っ面を張り飛ばし、その勢いのまま体当たり。はっ、と気付いた『星毛』が歯を剥き出しにして唸る。
『生意気だぞショウガ!』
『は! 猫舐めんにゃよ!』
罵りながら噛みついてきた『星毛』を軽くいなし、鼻先を引っ掻いてやったショウガに『星毛』が、ガバッと後ろ足で立ち上がって襲い掛かった。これも交わして見せると目を細めるショウガの前で、だが『星毛』が横に吹っ飛ぶ。
は、と目を瞬かせたショウガの前で、『星毛』を吹っ飛ばした犯人がぴょんぴょんと楽しげに飛び跳ねた。
『うーちもいーれーてー!』
そこに居たのはご機嫌満点、実に楽しげに飛び跳ねる狸のフリューリングスルフト=ティエラである。タックルしたのも攻撃したというより、純粋に遊んで欲しかったからだ。
何しろ実に良い気分で『ぽんぽん~ぽんぽこり~ん♪』と歌っていたら、沢山の動物達が楽しげに遊んでいる所に出くわしたフリューである。これはもう全力で遊んでもらうしかないと、文字通り全力で頭突きからのタックルをかましたのだった。
ほけけ、と笑いながらフリューが実に楽しげに、ぽーんと宙返りで飛び跳ねつつ『星毛』の顔面に尻尾でバフンと一撃を食らわせる。もちろん『星毛』もやられているばかりではない、前足で身体を支えて鋭い後ろ足キックを繰り出した。
『当たらん、当たらん、当たらんなぁ~』
『おっと、ラケルの相手もして欲しい』
そんな乱戦の中で、『星毛』を懲らしめるというよりはむしろ、力比べをするかのように戦うポメラニアンが1匹。奇遇にも『星毛』と同じ黒毛の、首に濃紺と金のリボンに勿忘草のチャームをつけた、ラケルである。
『星毛』が『邪魔だ!』とラケルに怒鳴ったが、当の黒ポメは気にしない。彼女の今の目標はなんとなれば、『星毛』と仲良くなることだったので。
『星毛』が村中の嫌われ者で、暴れん坊のぼっちだという事は、ラケルも委細承知している。――が、その上でもしかしたら『星毛』は、そうやって嫌われてボッチだから余計に手の付けられない暴れん坊になっているのでは? と思ったのだ。
ならどうすれば良い? よし、仲良くなってみよう。
そんな単純明快な思考と結論により、今日のラケルは意図して徹底的に、『星毛』と共に行動してみる事にしたのだった――もちろん罪なき動物を一方的に苛めはしないけれど。
『星毛、暴れるなら一緒に暴れよう。ぼっちよりずっと楽しい』
『――ふん! 勝手にしろ!』
ラケルの申し出に、帰ってきた答えはそっけない。けれども拒絶ではないからラケルは、やっぱりと思いながら駆け回り、『星毛』を助けたり、逆に『星毛』にガチンコバトルを挑んだりする。
けれども、集まっているのは戦いに身を投じる動物ばかりではない。引っ掛かれたり噛みつかれたり蹴られたり、傷ついた動物達をエデル=マグノリアとフェミナ・ノ・リビディーネの柴犬コンビは、一生懸命走り回っては、ぺろぺろ舐めて癒して回る。
『怪我した方はこちらへ。今、治すわ』
『痛いの痛いの飛んでいけ~』
ピンクブラウンの毛並み美しいエデルと、少し銀の混じった白毛のフェミナの周りには、そうして癒された動物達が敵味方問わず集まって、大人しく舐められ、肉球でぽむぽむと撫でて貰っていた。中には擦り傷だけでもやって来て癒してもらおうとする雄犬達も居るが、もちろん分け隔てはしない。
ぺろぺろ、ぽむぽむ。そこに怪我動物が居る限り、彼女たちの癒し活動は終わることがない。
(――え、これどういう状況?)
その2匹と一緒に動物達を癒して回りながら、けれどもアラン・スミシーは内心で首を傾げた。なぜだか、自分が狐の姿になっている気がする。
否、アランは狐なのだから、狐の姿をしているのは当たり前だ。なのになぜ、それに違和感を感じるのか。
ちょっとよく解らなかったが、まあ良いか、と考えるのを放棄した。まずは怪我を治してあげないと、と尻尾を怪我の上にふぁさり、ふぁさりと揺らしてヒールを掛けていく――なんで美犬じゃないんだ、と嫌な顔をした若犬にはちょっと念入りにパサパサと。
それはそれとして『星毛』だよねぇ、と悩ましい眼差しを向けるアランである。四方八方敵だらけ、と言っても過言ではないこの状況で、それでも暴れるあの乱暴者を、はてさてどうしたものか。
(まあ、乱暴は良くないよねぇ)
そのためにも皆には頑張ってもらわないと、と一生懸命応援するアランの声援を受け、樹の上からトーラがぴょんと飛び降りた。『星毛』の背中に飛び降りて思い切り爪を突き立て、バリバリバリッ! と引っ掻いてやる。
ギャンッ! と悲鳴を上げた『星毛』に、ラケルがチョンと鼻をくっつけヒールを掛けた。あまりやらないからうまく行くか不安だったけど、うまく行ったようで『星毛』の悲鳴がすぐに止む。
けれども樹上からの不意打ちは、それだけでは終わらなかった。
『お次は俺だぞ、っと!』
続けざまに降って来た名無しリスが、『星毛』の背中の上を走り回ったり、ぴょんぴょんと飛び回って集中力を乱そうとする。さらにはテテリカが、あちこちの枝を走り回りながらドングリや落ち葉、小枝をどんどん落とし始めた《魔矢で攻撃》。
その間にも別の樹上では、連携したベニテングがテテリカ達に攻撃がないか、さらなる増援が来ないかを警戒している。味方が増えるのは大歓迎だが、万が一にも『星毛』の増援が来たら大変だ。
文字通りのお祭り騒ぎ、大乱闘。となればその中で遊ぶフリューのテンションも、ぶっちりぎの最高潮。
『たぬりゅーあたーっく!』
『ちょ、邪魔……!』
『うちともっとあーそーんーでー!!』
心底楽しげに周りの動物達をも踏み台にして飛び上がり、ドーン! と『星毛』にアタックしては距離を取る。そうしては『ほけほけ~』と楽しげに笑うのだから、『星毛』の苛立ちも最高潮。
ラケルという(本犬にとっては)意外な味方が居たとはいえ、ここまでやられっぱなしの孤軍奮闘を続けていた『星毛』も、ただ暴れるだけで村一番の乱暴者と呼ばれるようになったわけではない。ここは1度この場を離れて体勢を立て直すべきだ、と考えた『星毛』は、ぶんっ! と大きく身を震わせて背中に幾度も張り付いてくるテテリカや名無しリスを振り落とし、ついでに大きく飛び跳ねて周囲の動物達を追い払うと、更に村外れに向かって走り出した。
あ、とラケルがその後を追いかける。一方でトーラは『星毛』をどこかに追い詰められないか、仲間達を振り返った。
そうだな、と兄貴オーラを漂わせたショウガが、少し考えて提案する。
『あっちはすぐに川にぶつかる。川沿いに左右から追い詰めるか』
『うーん、ならおじさんが抜け道を教えようか』
村の動物は知らない川までの抜け道があるらしく、アランがそう耳をぴくぴくさせた。こっち、と走り出したアランの後ろについて走り出した、動物達の最後尾を共に走りながら、フェミナはけれども心配顔。
敵も味方もなく全ての動物を癒そうとする、フェミナにとっては『星毛』もまた癒しの対象である。そんなフェミナすらも『星毛』は隙あらば襲ったりするのだが、それはそれ。
お怪我が酷くなければ良いのですけどと、憂い顔のフェミナの顔を、首元の白いハンカチを揺らしながら走るエデルが、慰めるようにぺろりと舐める。エデルもまた同じように、『星毛』の怪我を案じていた。
●
さてその頃、川べりについた『星毛』とラケルは並んで水を飲み、一息入れていた。ちらちらと物言いたげな、否、いっそ不審そうな『星毛』の眼差しを受け、きょと、とラケルは小首を傾げる。
『なに?』
『なんで俺についてくる』
そうして尋ねたラケルに、尋ねられた『星毛』がそう返してきた。なんで、と言われても一緒に行動してみると決めたから、なのだがそういえば『星毛』にはそのことを言っていない。
ゆえにラケルはそれを伝えつつ、先も乱戦の中で告げた言葉を繰り返す。
『だから星毛、今日はラケルと一緒に遊ぼう』
『――フン』
そんなラケルにそっけなくそっぽを向いた、『星毛』の耳がピクリと動いた。ラケルも耳を澄ませると、カサカサと草の動く音がする――風の音とはまた違うそれ。
そして。
『あーそーんーでー!!』
草むらからフリューが激突してきた。文字通りの全力体当たり、とにもかくにも構って欲しい一審のタックルを、紙一重で避けた『星毛』にむしろフリューは嬉しそう。
そんなフリューに噛みつこうと、大きく口を開けた『星毛』にさすがにそれはダメと、ラケルも別方向から体当たりする。友達たるもの、友達がダメなことをしたら止めるものだ。
辺りにトーラの鳴き声が響いた。
『さあみんな、今です! 一気に畳みかけますよ!』
そう言いながらトーラ自身も、黒い弾丸のように飛び出し一気に『星毛』に肉薄する。それを援護するように飛んでくるドングリは、ショウガの背中に乗ってついてきた名無しリスの投げるもの。
攻撃力こそないがひたすらに鬱陶しいドングリの礫が、縦横無尽に走り回ろうとする『星毛』の足止めをする。ちなみに踏んだら地味に痛いし滑る、だって肉球だからね。
『ベニテング! 回り込め!』
テテリカも相棒と協力して、両側から松ぼっくりやクルミの殻、小枝などを拾っては投げつけた。これまた、当たっても痛くはないがひたすらに鬱陶しい。
そんなみんなの支援を受けて、トーラはバリバリバリッと『星毛』の顔面を引っ掻いた。痛い、これは痛い。
ギャウン、とさすがの『星毛』も悲鳴を上げて鼻面を抑え、飛び上がる。けれどもその瞳は闘志を失っていない、どころか怒りに満ちた目でトーラを睨み付けていて。
噛み殺さんばかりに歯を剥き出し、飛び掛かった『星毛』を間一髪、トーラは避けた。ダンッ、と素早く体を反転させた『星毛』の前には、けれどもするりと立ちはだかったショウガが居る。
狙うのは、荒くれ者のプライドをこれ以上なく叩き折ること。既に動物達に良いように翻弄され、散々にやり込められつつある『星毛』のプライドと闘志を、完膚なきまでに叩きのめす。
ゆえにショウガもまた、あえて自身に狙いを定めさせた。なるほど『星毛』は体も大きく力も強いが、反応速度や回避はショウガの方が上だ。
だから。
『そろそろオイタは終わりだぞ、ッと!』
飛び掛かってきた『星毛』をひらりと避けて、その頭の上に両後ろ足で手痛いキックを叩き込んでみせる。ギャウン! と一際大きな悲鳴が上がって。
ついに『星毛』はその場に転がって、降参の意を示したのだった。
●
プラト様、と両脇を挟んだエデルとフェミナに優しげな、けれどもぴぃんと筋のしっかり通った鳴き声で呼ばれて、『星毛』は決まり悪そうにそっぽを向いた。けれども、どちらを向いてもエデルかフェミナ、どちらかの顔が見えるのでやっぱり決まりが悪そうだ。
その、一見すれば不貞腐れたようにも見える『星毛』の毛繕いをし、肉球を押し付けて見える傷も見えない傷も癒してやりながら、フェミナはもう1度名を呼んだ。
『プラト様が強いのは事実ですけど、どんなに強くても力を合わせられたらかなわないでしょう?』
『……』
『せっかく強いのですから皆を守るようにその力を使えば、仲間はずれにされることもなくなるのですよ?』
フェミナが言葉を重ねても、『星毛』は言葉を返さない。否、少しばかり耳がせわしなく動いているから、多分、どうしたものか困っている。
困っちゃうのですね、とエデルは大きな子どもを見るような眼差しになった。何しろ『星毛』はずっと昔からこんな調子だったから、もしかしたら本当にどうしたら良いのか解らないのかも知れない。
桜の瞳に慈愛を浮かべ、ゆえにエデルは言い諭す。
『プラト様。暴れたりいじめたり、悪いことはしてはダメよ? でないと、貴方は今以上にひとりぼっちになってしまうわ』
エデルの言葉に『星毛』は何も言わず、けれどもぺたりと両耳が伏せたから、きっと言いたい事は伝わった。ゆえに癒すのではなく励ますために、エデルは軽く頭をこすりつける。
ほらほら、とフェミナが明るく鳴き声を上げた。
『戻って皆でウサギを食べましょう。プラト様も食べたかったのでしょう? ちゃんと謝れば、プラト様の分もありますよ?』
『そうですね。素直になれば、許してあげない事もないですよ?』
いくら暴れん坊とはいえ同じ村の仲間なのだからと、告げるフェミナの言葉にトーラがこくこくと頷く。トーラとて何も、『星毛』を村の爪弾きにしたい訳ではないのだ――もちろんちゃんと謝るならだけれど。
そんな2匹の、そして周囲で見守る他の動物達の視線を一身に受けて、『星毛』はしばし沈黙した。沈黙して――そして。
『――申し訳なかった』
『俺こそ、腹に据えかねたとはいえ卑怯な真似をした。許してくれるか?』
絞り出すように、けれども存外滑らかにその言葉を口にした、『星毛』にほっと安堵しながらテテリカも自身の非を詫びる。安全圏から一方的に攻撃をするのは、幾ら彼我の力の差があれども卑怯だと感じていた。
一方でフリューはと言えば、喧嘩が終わって少しばかり残念そうな顔をしながらも、これからはもっと遊べそうだとの楽しそう。その気持ちにどこまでも素直に、ぽんぽこぽーん、とご機嫌に飛び跳ねる。
『また遊びに来るさぁ! 次はもっと楽しく遊ぶさぁ』
『ふ……その時はラケルと星毛、フリューで誰が強いか勝負』
肉球と肉球で語り合うのがダチのはじまりだろうと、ラケルが割って入って大真面目に主張した。実のところ、ラケルと『星毛』では親子ほどの大きさの差があるのだが、気の強さはもしかしたらラケルの方が上かも知れない。
その時は負けないと、『星毛』が歯を剥き出しにして唸る。だが少しも怖くはないと、胸を張るラケルにすぐに肩を落として、変な奴だとため息を吐いた――ほら、やっぱり怖くない。
とまれ、暴れたらお腹がすいた。ウサギを食べに戻ろうと、ぞろぞろと歩き始めた動物達をよそに、先ほどまで投げていたドングリを食べ始めた名無しリスに『またね』と声を掛けてから、アランは少し遅れて歩く『星毛』に駆け寄る。
――ちょっと、気になっていた事があった。
『どうしてあんな、乱暴をして回ってたの?』
『……母さんが、認められたければ強くなれと言った』
アランの言葉に『星毛』がぶっきらぼうに、だから強くなったのだと主張する。――あれ、何かお母さんの教えを深く考えないまま、素直に守っちゃった感じ?
えぇー、と困惑するアランである。おいおいおい、とそれを小耳に挟んでしまったショウガが、全力で兄貴風を吹かせてきた。
『お前も世話が焼ける系か。仕方ないな、俺が面倒見てやるよ、レピドの次だけどな』
『えっ、レピド君?』
『なんだ、お前もレピドを知ってんのか? レピドはなんか危なっかしいからな、俺が面倒見てやってるんだ』
そこに出て来た何だか知っている名前に思わず驚いた、アランにショウガがドヤ顔でそう尻尾を振り、誇らしげにひげをぴくぴくさせる。あれ、そう言えばショウガくんも知ってる気がするぞ?
うーん? と首を傾げたものの、まあ夢なんだろうな、とアランは自分の中で結論付ける。そうしてふさりと尻尾を大きく振って、『おおーい、おじさんの分もウサギ残しといてくれよー』と駆け出したのだった。
マスターコメント
いつもお世話になっております、または初めまして、蓮華・水無月です。
この度はご参加頂きまして、本当にありがとうございました。
動物になりきって戦ったり、遊んだり、走り回ったりする物語、如何でしたでしょうか。
様々な動物さん達がころころわいわいと楽しく(?)戦っておられる様子を想像しながら、精いっぱい紡がせて頂きました。
鳴き声はプレイングから取ったり、調べたり、へーこの動物さんはこんな鳴き声なんだー、と驚いたり。
『星毛』はきっとすぐには変わらないでしょうが、少しは改心した事でしょう。
いつか『村の乱暴者』から『村の頼れる用心棒』とかになってるかもしれません、いえこれは夢ですけれども……
蓮華はたくさんの動物さん達を書けて、とっても幸せでした。
このシナリオが皆様にとって、楽しんで頂けるものでしたら幸いです。
またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします(深々と
イベントシナリオ普通 報酬:標準9 / 4〜25人
2023年01月28日 07時48分10秒 公開
大成功
相談掲示板
フリューリングスルフト=ティエラ、フリューって呼んでさぁ。よろしくね! うちは、狸になる予定?予感?さぁ!
飼い主、レピド・クロサイトだ。よろしく頼む。 今回は愛猫のショウガになる予定。
ラケル、よろしく 成立おめでとう&おめでとう 荒ぶるわんこ星毛、寂しいだけじゃないかなとおもったり んー、私はじゃあ、ポメラニアンあたりになる ぽめぽめ
どうぞよろしくだ! おじさんは狐か狸になるんじゃないかな? よろしくよろしくー!
テテリカ。よろしく。 俺は、村付近の野生の大鼬として参加する。 高所をとれれば、木ノ実か何かをポコっと当てて黒毛に仕返しでもしようか。 危ないものは投げ落とさない。
黒猫トーラです。 星毛に仕返しするチャンスと聞いて来ました!